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子どもをとりまく消費文化の変遷にみる生活課題

おく

たに

 めぐみ

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こ** *東京学芸大学大学院連合学校教育学研究科(博士課程)・**家政教育講座 (平成23年3月31日 受付)  アニメやテレビゲーム,漫画,音楽,ファッションといった幼児期から青年期をターゲットとした子どもをとりまく消費文化は 1980年代以降,顕著に発展した文化である。  そこで,本研究では高度情報社会における消費文化の変遷や,これらのマーケティングや市場の動向,メディアツール,イン ターネットの発展がもたらす,子どもの消費文化との接触のあり方を生活課題の一つとして捉え検討することを目的とする。調査 方法として,消費文化が発展し始めた1970年代から2000年代にかけて,消費文化に関する特徴的な事象,環境の変容を先行研究等 から整理した。  その結果,子どもをとりまく消費文化の時代的特徴が把握できた。1970年代後半から,子どもをふくめ大衆は同じ欲求をもって 消費文化に関するモノ・サービスを消費してきた。1990年代以降,モノ・サービスの多様化,メディアの発展,価値観の多様化が 生じ,消費文化においても細分化が生じていることが明らかになった。こうした消費文化の変遷や,メディアツールの変化といっ た子どもの周辺で起きている環境変化から,4つの生活課題を抽出した。  まず,メディア,消費文化への没頭が挙げられる。次に,消費文化やサービスに関わっていない第三者には見えにくい,新しい 価値観が生じている点である。さらに,SNSを中心とするインターネットコミュニケーションが宣伝としての役割を持ち始め,子 どもを中心に強い影響を与えている可能性が指摘できる。最後に,消費の場面がバーチャル化したことで,金銭に対する価値が見 えにくくなっている。そのため,従来とは異なる金銭教育の必要性があることが明らかになった。  子どもをターゲットにした消費のなかで生じている問題は第三者から見えにくいものであり,子どもと共に解決の方向性を問い 直し気づかせる必要性が不可欠であると考える。 キーワード:消費文化,変遷,生活課題,メディア Ⅰ はじめに アニメやテレビゲーム,漫画,音楽,ファッションといった幼児期から青年期をターゲットとした消費文化 は1980年代以降,顕著に発展した文化である。経済産業省文化情報関連産業課はアニメーション産業がもたら す国際的な市場規模の拡大に注目し,国内アニメーション産業の支援に関する施策を提言している[2003]。さ らに,同課は2011年に,国内アニメーション産業に対し,その国際展開の強化を目指した委託事業を開始して いる。国際的にもこれらの文化の評価は高く,国内においてもいわゆるオタクと呼ばれていたマイノリティの 文化から,マジョリティの文化となりつつある。 これらの文化は若年層をターゲットにしているため,特に消費文化との関わり方が子どもの情操面の発達に 及ぼす影響について児童心理学,教育学等の多様な学際領域で検討されている。例えば,社会現象として取り

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上げられた「ゲーム脳」[森2002]問題や,オンラインゲームに昼夜問わず没頭する問題を抱えた人々を「ネト ゲ廃人」[芦崎2009]と表現するなど,消費文化との関わり方が問われている。これらの論の真偽には慎重な姿 勢を示すべきであるが,事象として子どもをとりまく消費文化が子どもたちの生活環境に及ぼす影響は看過で きない。 さらに,子どもの消費文化との関わり方は,メディアやインターネットとの関わり方と合わせて問題視され てきた。特に藤川[2008]は子どもがメディアを通して受ける影響として,「生活習慣,被害,加害」(pp.14-18) を挙げ,メディアとの関わりが避けられない現代における課題を指摘している。これらの課題に基づき,子ど もがどのようにメディアとの付き合い方を身につけるべきなのか,実践及び教材の開発を通して検討している。 さらに,1970年代以降の消費文化の変容が子どもの生活や人々の価値意識にどのような影響を与えてきたの か社会学等の分野でも注目されている。 東[2007]は子どもをとりまく消費文化を「オタク系文化」と位置づけ,その文化の流れから,その文化の担 い手を「六十年前後生を中心として『宇宙戦艦ヤマト』,『機動戦士ガンダム』を十代で見た第一世代,七十 年前後生まれを中心とし,先行世代が作り上げた爛熟し細分化したオタク系文化を十代で享受した第二世代, 八十年前後生まれを中心とし,『エヴァンゲリオン』ブームの時に中高生だった第三世代」(p.13)と,3つの世 代に分類している。また,これらのグループには異なる趣向があり,メディアの発展などの影響を受け,文化 の流通経路,表現方法も異なることを示している。これらの世代分類は趣向の違いだけでなく,サービスの多 様化などに応じて,それらに対する消費行動や消費行動に対する価値意識も異なると考えられる。 また,中西[2008b]は1970年代以降の消費文化の変容と,1980年代の消費社会化について着目し,1990年代 の子どもの生活環境の変容や家族,学校,社会との関連性の変容を読み解いている。しかし,教科教育の中で どのように扱うべきか明確ではなく,題材化の検討はまだ不十分である。そのため,消費文化との接触のあり 方を題材化できるよう子どもの生活課題として捉える必要性があると考えられる。 著者ら[2010]はこれまで,中学生に焦点を当て,2008年に調査を実施し,消費文化との接触状況を明らかに してきた。その中で,既に子どもたちの消費生活において,消費文化は切り離せない存在であることが明らか になっている。この現象から,子どもの生活課題を捉える上で,消費文化の変遷とメディアも大きな関連性が あると考えられる。 そこで,本研究では高度情報社会における消費文化の変遷や,これらのマーケティングや市場の動向,メ ディアツール,インターネットの発展がもたらす,子どもの消費文化との接触のあり方を生活課題の一つとし て捉え検討することを目的とする。 なお,本論においては,“音楽,ゲーム,アニメ,漫画,玩具等の幼児期から青年期の消費者をマーケティ ングターゲットとし発展した文化”を“子どもをとりまく消費文化”と位置づける。一般的には“サブカル チャー”と表現されることもあるが,既にメインカルチャーとのボーダーレス化が進んでおり,両者の概念 を明確に区別して定義することは困難である。また,“ユースカルチャー”といった言葉も使用されているが, 20 ∼ 40代の親世代の許容度,関心も高く,東[2007]の分類からも,マーケティング対象として含まれている と考えられる。そこで,本論においては誤解を招く表現を控えるため,“子どもをとりまく消費文化”という 表現を使用することとした。 Ⅱ 先行研究の調査と子どもをとりまく消費文化の変遷 1. 調査方法 中学生,高校生の親世代が10代あるいは20代であった1970年代の消費と併せてその変遷を概観した。 そのため,次項以下,様々な分野にわたる先行研究から,1970年代から現在までの子どもをとりまく消費文 化の変遷を整理した年表を作成し考察した。 主に年表作成にあたって参考にした先行研究の一覧を,以下に示す。 ● 中西 新太郎,子どもたちのサブカルチャー大研究,労働旬報社,1997 ● 中西 新太郎,1995年−未了の問題,大月書店,2008

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●  中西 新太郎,子どもの生活実態に基づく家庭科のカリキュラム構想,日本家庭科教育学会誌,46冊第2 号,pp.163−170,日本家庭科教育学会,2003 ●  西本 裕輝,子どもの生活とゲームの現状−いくつかのゲーム関連調査報告書を中心に,児童心理, 62(2),pp.88−94,金子書房,2008 ●  富田 英典,後期青年期のメディア戦略とサブカルチャー,教育社会学研究,第76集,pp.77−94,日本 教育社会学会,005 ●  久保 千恵子,情報産業社会の中で生きている子どもたちについての一考察−インターネット接続端末 機を扱う子どもたち−,東北大学大学院教育学研究科研究年報,第57集第1号,pp.25−48,東北大学大 学院教育学研究科,2008 ●  新宅 純二郎・柳川 範之,フリーコピーの経済学 デジタルコンテンツビジネスの未来,日本経済新聞 社,2008 また,関連するサービスやマーケティング動向などの情報については適宜,他の文献などを参照し,付け加 えた。参照した文献に関しては,その都度明示する。 2. 調査結果及び考察 1)1970年代の動向と特徴 1970年代の子どもをとりまく消費文化の動きを表 1に示した。中西が指摘する70年代の大きな特徴は, 子どもたちの成育環境が家庭,学校の直線的な関係 から,消費文化を加えたトライアングル型に変化し たことである[2003]。コンビニエンスストアやファ ストフード店が,学校や家庭以外で10代,20代の若 者の集まる空間となり,消費文化につながる環境と して確立していった。子どもが自分の娯楽のために 金銭を使う場が増え,若者の消費文化がマーケティ ングの対象として成立することが示されたのである。 また,「ブレイクアウト」や「スペースインベー ダー」などは,ゲームセンターに長蛇の列ができる 様子が社会問題として取り上げられた。さらに「少年ジャンプ」「少年マガジン」「少年サンデー」「少年チャ ンピオン」といった少年漫画は,全体で1,500万部発行されていた。テレビアニメにおいても,1979年に放映 された機動戦士ガンダムは,現在もシリーズ化され放映されている。 このように,1970年代は,子どもをとりまく消費文化が市場を形成し,あらゆる人がその市場に関わる環境 が徐々に形成され始めた時期であったといえよう。インベーダーゲームや少年漫画のように,子どもたちが同 じものを同じように欲求し享受していた年代である。消費文化が子どもたちのコミュニケーションの場に入り 込み,子ども独自のコミュニティを作る基盤となっていたことが伺える。爆発的なヒットを記録した漫画や TVアニメの出現は1970年代後半からであり,マーケティングの層としても狙いやすい対象となっている。そ のため2000年代には,当時アニメや漫画に熱中した親世代を狙って,その作品をテーマにしたデジタルコンテ ンツやグッズ等の市場が活発化していると考えられる。 2) 1980年代の動向と特徴 1980年代はそれまで「オタク」の文化とされてきたアニメやゲームが一般的に受け入れられ始めた時期であ る(表2)。 1983年にファミリーコンピュータが発売され,家庭用のゲーム機は入手しやすいものになった。発売当初 はソフトウェアがまだ充実しておらず,普及には至らなかったが,1986 ∼ 1988年にかけてエニックス社から 「ドラゴンクエスト」シリーズが発売されると,ファミリーコンピュータは急速に家庭に普及し始めた。1986 表1 1970年代の消費文化の変遷 年 子どもの消費文化における出来事 1971 「コンピュータースペース」製作・販売開始アーケードゲーム版コンピューターゲーム 1972 世界初の家庭用ゲーム機「オデッセイ」販売 開始 1975 第一回コミックマーケット開催 1976 アタリ「ブレイクアウト」販売 1977 ロッテ「どっきりシール」販売開始 1978 タイトー「スペースインベーダー」販売・大流行 1979 ゆでたまご「キン肉マン」連載開始 TVアニメ「機動戦士ガンダム」放送開始

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年には,ファミリーコンピュータの販売台数が1,000 万台を超え,ゲームはアーケードゲームのように屋 外で遊ぶものから,気軽に家庭内でも遊ぶことので きるものへと認識が変化し始めた。この時期,「ド ラゴンクエスト」の人気に便乗し,ゲームソフトと 他の玩具との抱き合わせ商法が行われたり,偽造さ れたソフトが流出したりといった消費者トラブルも 発生した。 また,1983年には漫画「キン肉マン」のキャラク ターを消しゴムにした「キン肉マン消しゴム」が, 1985年には「ビックリマン」1)の10代目である「悪 魔vs天使シリーズ」が販売された。どちらも,安価 で購入できる子どもの文具,菓子として販売された。 「キン肉マン消しゴム」は,模造品も含めて様々 な種類が流通し,文具よりも収集を楽しむ玩具とし ての意味合いが強くなっていった。「ビックリマン」 はそのゲーム性やストーリー性,キャラクターの個 性が人気を集め,販売の翌年には,毎月1,300万個 が販売され,出荷金額は1,000億円を超えた。菓子 のおまけに付いてくるシールは種類によって希少性 が異なり,特に希少性の高いシールは高値で売買さ れていた。「キン肉マン消しゴム」と「ビックリマ ン」の共通点は,子どもにとって身近な消費財であ り安価で入手できる一方,希少性の高い消しゴムや シールには高値が付けられて売買されている点であ る。現在でも,販売店やインターネットオークショ ンにおいて消しゴムやシールに100円から20万円前 後の値がつけられるケースもみられる。 ま た,1985年 か ら ア バ タ ー2) の 前 身 と も い え る サ ー ビ ス の 提 供 が 行 わ れ た。1987年 に はMMORPG (Massively Multiplayer Online Role-Playing Game, 集団参加型オンラインロールプレイングゲーム)の基礎

となるシステムが開発され,インターネットコンテンツの発展の兆しがみえ始めている。 以上のように80年代はアニメや漫画,ゲームといった消費文化に関連する商品が戦略的に開発,販売される ことが定着しだした年代といえる。さらに,消費文化に関する消費財が子どもの小遣いの範囲で自由に購入で きる程安価になり,子どもの自由裁量範囲内の消費行動が容易になり始めた年代といえよう。しかし,本来子 どもをターゲットとして販売された安価な玩具や菓子を大人が高額で売買するようになったことが,子どもの 持つ消費材の資産価値を高めることにつながり,現在もそうした傾向は継続していると考えられる。 加えて,急速に消費社会化が進んだ年代でもある。馬居[2000]は,消費社会を「消費という行為が,消費対 象の商品が持つ直接的な機能の必要性ではなく,社会的位置とセットになった自己自身を象徴する記号を獲得 するためのものに変わること」とし,消費行動とアイデンティティ形成は密接に関わりがあることを指摘して いる。消費社会化の展開と共に消費文化が子どものアイデンティティ形成に影響を与えていた時代でもあると 考えられる。 3) 1990年代の動向と特徴 1990年代はバブル経済が崩壊し,松本サリン事件や阪神淡路大震災等が発生した。中西[2008a]はこれらの 社会問題によって,「経済,政治,社会の全面にわたる変動期の到来」であり「これまでと同様の社会は続か ない」という事実が印象づけられた年代であると述べている。このような不安定な年代に,子どもたちがどの 表2 1980年代の消費文化の変遷 年 子どもの消費文化における出来事 1983 任天堂「ファミリーコンピューター」販売 バンダイ,丸越他「キン肉マン消しゴム」販 売開始 1984 鳥山明「DORGON BALL」連載開始 1985 任天堂「スーパーマリオブラザーズ」発売開 始(売上250万本) アートディング「A列車で行こう」販売開始 ビジュアルチャット「ルーカスフィルムズ・ ハビタット」サービス運営開始(アバターサー ビス) 週刊ジャンプ400万部突破 1986 エニックス「ドラゴンクエストⅠ」販売開始 任天堂「ファミリーコンピューター」販売1,000 万台突破 TVアニメ「聖闘士星矢」,「ドラゴンボール」 放送開始 1987 エニックス「ドラゴンクエストⅡ 悪霊の 神々」販売開始 スクウェア「ファイナルファンタジー」販売 開始

T&E SOFT「ハイドライド3 THE SPACE MEMORIES」販売開始 エニックス「ドラゴンクエストⅢ そして伝 説へ…」販売開始 1988 任天堂「スーパーマリオブラザーズ3」販売 開始 任天堂「ゲームボーイ」販売開始

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ような消費文化と接触していたのか,表3に1990年 代の消費文化の変遷を示した。 1994年ごろには,家庭用ゲーム機の次世代機戦争 として,それまで普及してきたゲーム機の後継とな る新しい製品が次々と販売された。この当時には, 家庭用ゲーム機は一家に一台まで普及し,当時の小 学生,中学生にとっては,家にあって当たり前のも のになり始めた。一方でゲームのデータ容量が増え たことにより,ゲーム機は1台2万円前後,ゲーム ソフトは5千円∼ 1万円前後と子どもの小遣い程度 では購入が困難な高価な消費材となっていた。 また,1993年にはアメリカのウィザーズ・オフ・ コースト社から「マジック:ザ・ギャザリング」が 販売された。これは,トレーディングカードゲーム (以下TCG)の先駆的な商品であり,戦略が求めら れるゲーム性が高く評価された。国内では,1996年 に,ポケットモンスターを題材とした「ポケモン カードゲーム」が,1999年に「遊☆戯☆王オフィ シャルカードゲームデュエルモンスターズ」が発売 され,TCGが消費文化の中に定着していった。アニ メや漫画の作品のTCGなども販売され始め,メディ アミックス展開の媒体の一つとして注目され出した のもこの時期である。 こうしたカードは,1つのパックに5枚前後の カードが封入され150 ∼ 300円程度で販売されてい る。パッケージの中にどのようなカードが入っているのかは外観から判断できないようになっているため,希 少性の高いカードを狙ってサーチ行為3)が横行したり,希少性の高いカード欲しさに学校で盗難が発生した りする等の問題が起こった。 また,1995年には「Windows95」が発売され,パーソナルコンピュータが家庭にも普及し始めた。2年後 の1997年には,国内で初めてのMMORPG「ウルティマオンライン」がサービス提供を開始した。オンライン ゲームがインターネットコンテンツとして普及し始める一つの契機になったとも考えられる。しかし,当時, インターネットの接続はナローバンドが中心であり,現在のような大容量のデータを高速で通信するには限界 があった。そのため,オンラインゲームが普及し始めたのは2000年代であった。 インターネットと関連した出来事として,1996年には「Yahoo! JAPAN」がサービスを開始した。1999年に はi-modeが発売され,携帯電話はインターネットにアクセスする端末ツールとして大きく変化した。ポケット ベルのメッセージ機能の限界を克服したメール送受信など,電話としての機能よりもその周辺の付加機能が注 目を集めるようになった。同年,巨大掲示板2ちゃんねるがサービスを開始し,様々な社会現象を引き起こし ながら,掲示板という匿名性の高いメディアの定着の契機になったと考えられる。 1990年代は,テレビゲームが高価になった一方で家庭の中に定着し,子どもの生活に「あって当たり前」の 存在となった年代である。さらに,TCGやテレビゲームは,野外で遊ぶ空間が失われた子どもにとって,屋 内で仲間とのコミュニケーションが取れるツールとして機能し始めた。また,インターネットコンテンツの普 及には,携帯電話の所有率の上昇が関与することになる。インターネット端末化した携帯電話は,子どもをと りまく消費文化を発信する重要なアイテムとなるが,この時期はまだ子どもの生活に定着するまでには至って おらず,その危険性も認識されていなかった年代であるといえる。 また,消費文化の細分化が起きた時代でもあり,みんなが同じものを消費する年代から,個別の文化が発達 し,子ども達の中でも,共通の趣向を持つ少人数の仲間との付き合いが顕著に見られた年代でもある。 表3 1990年代の消費文化の変遷 年 子どもの消費文化における出来事 1990 任天堂「スーパーファミリーコンピューター」販売開始 1992 TVアニメ「美少女戦士セーラームーン」放送 開始 1994 次世代機戦争(家庭用ゲーム機) SONY「Play Station」販売開始 セガ「セガサターン」販売開始 任天堂「スーパーゲームボーイ」販売開始 1995 TVアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」放送 開始 スーパーファミリーコンピューター用ソフト の大容量化+価格の高騰 アトラス「プリント倶楽部」販売開始 1996 コンビニエンスストアでゲームソフトの販売 開始 任天堂「ポケットモンスター 赤と緑」販売 開始 バンダイ「たまごっち」販売開始 TCG「ポケモンカード」販売開始 1997 オリジン・システムズ「ウルティマオンライ ン」販売開始 TVアニメ「ポケットモンスター」放送開始 1999 TCG「遊☆戯☆王デュエルモンスター」販売 開始 i-mode発表

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4)2000年以降の動向と特徴 2000年以降は,鈴木[2008]が「私たちが生きてい るいまも相変わらず大量消費の社会ですが,誰もが 共有する確固たる価値観が社会全体にあるとは,到 底思えない」(pp.40−41)と述べているように,社会 全体が共通の何かを消費するのではなく,より個別 化が進んだ点に特徴がある。つまり,社会全体が共 通で有する価値観は廃れ,自分自身の中にある価値 が優先される社会へ移行したといえよう。このよう な年代の消費文化はまさに多様化し,1970 ∼ 80年 代の傾向とは異なっていることが伺える。2000年代 の消費文化の変遷を表4に示した。 まず,2000年代において特徴的なのは,無形のイ ンターネットコンテンツが,パソコン,携帯電話, 家庭用ゲーム機等,多様なメディアを介して消費し やすくなった点である。ゲームや音楽といった娯楽 目的のコンテンツだけでなく,スケジュール管理, 家計簿,地図閲覧のアプリケーションなど,そのカ テゴリーは大きく広がった。これらのコンテンツは 携帯電話が個人的な所有物であり,常に持ち運びが 可能である点を十二分に活かして設計され,安価も しくは無料で提供されている。 その中でも,消費文化と密接に関わったサービス として,オンラインゲーム,アバターの発展が挙げられる。2005年には,韓国が「ハンゲーム」を開発し,ア バターサービスがネット市場に参入した。無料のアイテムもあるが,有料のものでも一般的に1アイテムにつ き100 ∼ 300円と安価であり,低年齢層の顧客拡大を狙ったマーケティングが展開されている。また,2003 ∼ 2005年にかけて,インターネット回線はブロードバンドが主流になり,パソコンも大容量のデータ通信が可能 になったため,オンラインゲーム市場が急速に拡大した。 同時に,これらのアバターアイテムやオンラインゲームサービスで利用するアイテム,ゲーム内通貨が金銭 的価値を持ち始めた。入手しにくいアイテムに関してはリアルマネートレード(以下RMT)4)の対象となり, TCG同様,稀少価値の高いアイテムは高額で取引が行われている。これらのアイテムやゲーム内通貨をだま し取るために不正アクセスや違法ツールを使う個人,業者が出現し,トラブルや犯罪の被害も多発した。 音楽や動画といった,メディアコンテンツが増えたこともインターネットコンテンツを利用することに対す る精神的ハードルを下げている。2003年にはApple社がiTune Music Storeをオープンし,音楽の有料配信が一 般化した。2006年以降はKDDI等が開発した「LISMO」によって携帯電話に音楽プレーヤーとしての機能が付 けられ,携帯電話での着うたダウンロードも定着した。 2005年には動画投稿サイト「You Tube」がサービスを開始し,2007年には「ニコニコ動画」がサービスを 開始した。これらのサイトには,Amazon等の通信販売の広告スペースがあり,動画と関連するグッズ等の宣 伝が行われている。2008年に日本版サービスを開始した「twitter」「Face book」との連動も実施されている。 これらのコンテンツは複合,連動してサービスを展開しているため,その利用の幅は確実に広がっており, コミュニケーションツールとして,消費文化発展のターミナルの役割を果たしていると考えられる。さらに, 2008年にはsoft bank社から「i phone3G」が展開され,スマートフォン市場の拡大と共に,これらのコンテン ツの専用ブラウザが組み込まれ,消費文化がメディアツールの商品販売戦略として用いられ始めた。 国内のソーシャルネットワーキングサービス(以下SNS)に注目してみると,2004年に「GREE」,2006年 に「モバゲータウン」といったSNSとインターネットコンテンツを連動させたサービスを提供し始めた。2004 年にサービスを開始したSNSの「mixi」も,近年アバターやオンラインゲーム等のインターネットコンテンツ 表4 2000年以降の消費文化の変遷 年 子どもの消費文化における出来事 2000 SONY「Play Station2」販売開始 「ハンゲーム」サービス開始

2002 「三国志対戦」「WOLD Champion Football」 アーケードトレーディングゲーム,サービス開始 2003 「甲虫王者虫キング」「おしゃれ魔女 ラブandベリー」小学生向きアーケードTCGサービス開始 2004

携帯ゲーム機戦争

任天堂「Nintendo DS」販売開始 SONY「Play Station Portaple」販売開始 2005 動画投稿サイト「You tube」サービス開始 2006

任天堂「Wii」販売開始

SONY「プレイステーション3」販売開始 SONY「Play Station Network」サービス開始 2007 任天堂「Wii Fit」販売開始 携帯小説「恋空」配信 ニワンゴ「ニコニコ動画」サービス開始 2008 Twitter社「Twitter」日本版サービス開始 Facebook Inc「Facebook」日本版サービス開始 任天堂「Nintendo DSi」販売開始 2009 SONY「プレイステーションポータブルgo」販売開始 2010 任天堂「Nintendo DSLL」発売開始

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の提供を盛んに行っている。 また,従来のテレビゲームやTCGもその他のサービスと連動し,マーケットが多様化している。 例えば,1990年代に定着したTCGはアーケードゲーム型が開発された。2003年にサービスが開始された「甲 虫王者虫キング」と「おしゃれ魔女 ラブandベリー」は,当初小学生を対象にしたTCGとして販売数を伸 ばした。特に「おしゃれ魔女ラブandベリー」は,リカちゃん人形で遊んだ親世代もターゲットにしたマーケ ティングの結果,大きなヒットを記録している[ITmedia+D 2006 ]。子どもの消費行動の出資源である親の存 在を見据えた商品開発や販売戦略が注目され始めた。 また,2000年代に開発された家庭用ゲーム機は,いずれもインターネットへの接続が可能となっている。携 帯電話ほど普及はしていないが,ゲーム会社各社はネットワークを通して,ゲームソフト,アプリケーション ソフト,動画,画像データ,デジタル漫画や雑誌等を送受信できるような環境を整えている。ゲーム会社が ネットワークを利用して販売しているソフトウェアは最新の商品だけでなく,1980 ∼ 90年代にヒットした商 品も扱っている。これは,当時小学生,中学生であった20代後半∼ 30代をターゲットにした販売戦略である と考えられる。 2000年代はインターネットというバーチャルな空間を,子どもにとって1970年代のコンビニエンスストア, ファストフード店同様,身近な消費行動の場として位置づけたと考えられる。子ども向けの有料コンテンツ等 も次々に商品化され,子どもにとって仮想世界におけるデータ,情報等の売買が消費形態として既に受け入れ られ始めた年代であるといえよう。インターネット接続メディアの多様化からも,SNSやインターネットサイ トを利用した,マーケティングも積極的に行われている。 また,消費文化への許容度が高い世代が広がったことで,経済的に自由裁量の幅が広い単身者や親子2世代 を狙ったマーケティングが積極的になされている。子どもが消費文化に触れる契機を親が与えているという構 造は,1990年代から変化せず,その親も消費文化に取り込む方向に向かっていることが伺えた。 多様化し分散する消費行動をさらに拡大するために,従来とは異なるマーケティング様式が出現していると 考えられる。 以上のように,子どもをとりまく消費文化は,一部の「オタク」層の消費から,一般的,大衆的なものへ変 化し,社会経済においても非常に大きな影響力を持つようになったことが伺える。また,1970年代以降,様々 な社会問題,消費者問題と関わりながら発展していった文化ともいえる。特に,インターネットコンテンツの ように,子どもの消費文化を中心として新しいサービスが発展した場合,そのサービスに関するトラブルおよ びリスクは社会的に認識されにくいことが懸念される。 Ⅲ 多様化する消費文化が及ぼす影響 以上,1970年代以降から発展してきた子どもをとりまく消費文化の変遷を整理し,特徴について考察した。 これらの消費文化は様々なマーケティングや,子どもの価値変容に影響を及ぼしていると考えられる。以下, 消費文化との関わり方をどのように生活課題として捉えるのか検討する。 1.消費文化,メディアとの接触方法 1970年代までの消費文化の動向を概観した結果,子どもをとりまく環境も,子どもが接触する文化も急速に 変化していた。特に,親世代が消費文化に触れていた1970年代と,2000年代にはその流れの速さも,消費文化 の嗜好性の多様さも異なっていることが明らかになった。また,多様な消費のあり方に,消費生活のスタイル や趣向に応じて形成される,子ども同士のコミュニティの規模が縮小していった。流動性が高く多様なサービ スに強く影響を受ける子ども達の消費動向が,細分化し,拡散していった結果と考えられる。 馬居[2000]は,このように流動性の高い消費文化との接触がアイデンティティ形成を不安定なものにしてい る可能性について触れている。子どもたちは,マーケティング展開が多様になるなかで,商品の機能そのもの ではなく,商品に含まれる“記号”を消費し,自分を表現しようとている。反面,その中で周辺の友人と共通

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した“記号”を見出すことができない,あるいは共通の“記号”を持った友人以外とのコミュニケーションが 困難な,不安定な環境に置かれていることが懸念される。 そのため,オンラインゲームやSNSといったコミュニケーションを中心とするネットワークサービスでは, 共通の“記号”に価値を見出す仲間が作り易い環境にある。共通の価値観を持った仲間と出会うことで,強制 的に異なる価値観を持つ他者と出会わなければならない学校や社会の中での生きづらさから逃避し,インター ネット上に居場所を形成するため,ゲームやメールといった仲間同士でのコミュニケーションに没頭している と考えられる。こうしたインターネットを通じたコミュニケーションに対する依存症は既に海外においては中 毒症状として認識され,ティーンが抱える課題として注目されている。国内においても,ようやくその症状が 病理として取り上げられ,少年期,青年期の課題として注目され始めている [牟田2010]。 また,2000年代,mixiの利用者拡大に伴って,こうしたネットワーク上で,実名を用いたインターネットコ ミュニケーションが一般化した。しかし,実名を記すことでトラブルに巻き込まれたり,発信した情報が誤り であった場合,匿名の第三者からの攻撃の対象になったりとリスクも大きい。実名でのコミュニケーションが 一般的になった現在,リスクを認識していないケースも多々見られる。情報の流出のリスクや,インターネッ ト上での発言がもつ意味を十分理解した上で,実名でのコミュニケーションに触れる必要性があると考えられ る。 メディアツールや消費文化との適切な距離の取り方は,日常の生活リズムや家庭との関連性の高い生活課題 である。また,高校生にとって,生活リズムとメディア,消費文化との関わりは自分自身の課題でもあり,自 分が親になったときの課題でもある。著者らが2008年に実施した調査では,テレビゲームやオンラインゲーム で遊んだ最長時間の平均は中学生,高校生,大学生において8時間を超えていた。12時間を超えるケースもい くつか確認された。生活のなかでゲームやメディアとどのように付き合うのか,将来の自分の子どもにどのよ うにメディアとの接触の機会を与えるべきか,消費文化と関わらせるべきかを,児童・生徒自身の体験に基づ いて,検討することも可能であろう。 2.多様な価値への理解と適切なトラブル対応 また,消費行動が細分化したことにより,何に金銭的,経済的価値を見出すかは,その細分化した消費者の 中で決定されていると考える。 鈴木[2008]は,2000年代に見られる限られた消費者を対象にヒットした商品を「姿の見えないヒット商品」 としている。この傾向はモノだけではなく,サービスにも見られる傾向である。子ども同士のコミュニティを 対象に発展したモノやサービスの場合,対象外となる大人や親世代の消費者にとっては,そのモノやサービス に対する価値が見えにくいものである。つまり,子どもが持っているモノやサービスの価値が損なわれた際, 価値を理解出来ない第三者にとっては,被害としては捉えられないことが考えられる。 例えば,2000年代以降のインターネットコンテンツサービスは,特に子どもにとって身近なゲームを中心に 発達した。そのため,子どもが消費者トラブルに巻き込まれるケースも少なくない。2000年代にユーザーの増 加に伴いタイトルが急増したオンラインゲームに関しては,運営会社の杜撰なトラブル対応や管理体制が問題 としてとり上げられている[国民生活センター 2005]。また,同センター [2009]から無料ゲームサイトにおけ る消費者トラブルが多発している実態も公表されている。どのトラブルも社会的に認知される前から,既に生 じており,経済的な損失があると客観的に認められてから対応がなされている。 価値が理解出来ない第三者がこのトラブルに対応した場合,トラブルに直面した子どもにとっては大きな 経済的損失であるにも関わらず,軽微な問題として対応されてしまう可能性がある。実際に,子どもが持つ TCGのカード,食玩,インターネットコンテンツの一部は,高値で取引されるケースもある。新しい商品・ サービスが展開されるなかで,このような未だに認識されていないリスクも子どもの身近に存在していること が懸念される。モノやサービスに対して決定される価値が不安定な状態にあるなかで,経済観念の未熟な子ど もたちが何を被害と感じ,何を問題として感じているのか検討する必要性がある。 3.インターネットのコミュニティを利用した新たなマーケティング 消費文化及びインターネット接続メディアが多様化する中で,先述の通り,各種メディアは共通の“記号”

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をもつ仲間と繋がるためのツールとして活用されている。例えば,モバゲー,GREEといったSNSと連動した ゲームサービス,簡易なコミュニケーションに特化したtwitter,実名でのコミュニケーションを主体とした mixi,Face bookが挙げられる。1990年代のインターネットコミュニケーションは,匿名を原則とする2ちゃ んねるをはじめとする掲示板,チャットルーム,PCメールといったものが中心であったが,2000年代以降の SNSでは,利用者が実名を使って,同級生やサークルの友人等,素性の知れた相手とのコミュニケーションに 利用しているケースも見られる。 SNSは,企業からの情報や宣伝をリアルタイムで提供するという側面だけでなく,商品やサービスを実際に 使用した利用者の生の声がクチコミとして拡散する側面もある。見知らぬ第三者や企業の情報よりも,新しい 商品やサービスの情報を身近なコミュニティの中でユーザーが発信することで,信憑性が高まることも期待で きる。SNSサービスの中には,新規ユーザーを誘い込むことで,既存のユーザーにメリットがある仕組みが導 入されているケースもある。同じ価値観を持つ仲間同士でインターネットコンテンツの紹介やゲーム攻略,情 報の交換などのコミュニティが生まれ,新規ユーザーを巻き込みながら,その消費拡大を促進する効果がある と考えられる。 また,You Tube,ニコニコ動画といった動画投稿サービスでは,投稿された動画と関連する漫画やアニメ, ゲームの商品の宣伝も,ページ内で確認することができる。また,SNSなどとも連動しており,mixi,twitter などを通じて関心のある動画のURLにコメントを添えることも容易にできる。 多様化した消費文化によって,動画や音楽といった情報は膨大な量が存在している。その中で,特定の動画 や音楽にアクセスするユーザーは,関連する消費文化に関心の高いユーザーである。関心の高い消費者に向け られた宣伝効果は,テレビや雑誌など大衆に向けたメディア以上に効果が期待されている。特に,メディアリ テラシー能力が低く,欲求のコントロールが困難な子どもにとって,新しい消費文化や関連するモノ・サービ スへの関心,及び消費欲求をさらに高め,過度の消費行動を導く可能性がある。 以上のように,新しい消費文化や関連する商品・サービスへの関心を高める宣伝媒体として,あるいは関心 のなかった新規ユーザーを取り込む手段として,これらのSNSが巧みに活用されている。消費文化の多様化, メディアの多様化と連動して,消費行動や関心が分散する一方で,その関心ある方向に集中させるシステムが 存在していると考えられる。そうしたメディアと適切な距離を保つ情報処理の能力のみならず,それらを使っ て容易に情報発信できる立場であることを理解し,管理することのできる能力を身につける必要性が求められ ている。 4.大人に見えない消費行動 1990年代以降のメディアツールの変化は,子どもの生活だけでなく日常の消費生活にも大きな変容ももたら した。それは,2000年以降の携帯電話の普及,家庭用ゲーム機の主流が家庭で据え置くタイプの物から,個別 なポータブル機種に移り変わった点と密接に関わっていると考えられる。また,これらの個別性の高いメディ アを通じて,第三者との接触やコミュニケーションだけでなく,インターネットコンテンツの売買契約も可能 となった。物を買うという行為が,第三者とのコミュニケーションを不要にし,金銭を行き来する場面も見え にくくしている。 七海[2000]は,あらゆる手続きがバーチャル化する中で,消費生活のバーチャル化は子どもたちの金銭感覚 も意識や消費生活のスタイルを変容させる可能性を指摘している。物を購入し,金銭を支払う,という場面で さえ子どもたちの目の前から消えつつある。現金よりもプリペイド機能を持ったカードでの買い物が子どもた ちにとって当たり前になっている現実もある。しかし,なぜカードで商品を購入できているのか,そのシステ ムや仕組を使用している児童・生徒が十分理解しているかどうか,判別することは困難である。 一般的に,店舗や商品,通貨でさえバーチャルなインターネットを介した売買において,第三者が意思決定 の場に介入しにくくなっている。現状では,これらのコンテンツは倫理観や経済観念が未成熟な,高校生や中 学生,あるいは小学生でも第三者の目の届かない環境で,容易に利用できるようになっており,リスクの高い 消費から子どもを守ることは困難である。また,1970年代∼ 1980年代に青年期を過ごした親世代は,消費文 化に対する許容度も高く,それを狙った積極的なマーケティングも実施されている。携帯電話のコンテンツや,

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オンラインゲームの利用者の大半を20 ∼ 30代が占めており,携帯電話のサービスに関しては40代の利用者も 多い。親世代も消費文化と密接に関わるサービスを享受しながら,そのリスクを認識していない可能性が高い。 大人も子どもと共にサービスを利用する中で,そこにあるリスクや問題点を認識する必要性があるだろう。 Ⅳ まとめ 以上,消費文化の変遷とそれに密接に関わるメディアツールの変遷に着目し,子どもにとってどのような生 活課題として位置づけられるか検討してきた。 まず,1970年代以降の大量消費時代と呼ばれる,誰もが一緒に消費した時代から,1990年代後半から2000年 代にかけて,その価値は細分化し,消費文化に関わるモノ・サービスも多様化を遂げたことが明らかになった。 また,2000年代以降のマーケティングには,子どもや大人が形成するインターネットコミュニティの利用や, 子どもの背景にいる親世代を焦点化しているケースもみられた。もはや,子どもだけの文化ではなく,消費文 化とのかかわりは,保護者や周囲の大人とも密接に関わる問題になっていると捉えられよう。 これらの環境の変化から,以下4つの子どもの生活課題が捉えられたと考えられる。 まず,消費文化が細分化し,共通で消費する“記号”が見えにくくなったことが,子ども同士のコミュニ ティ形成や消費行動に影響を与え,消費文化やメディアへの強い傾倒につながると考えられた。次に,子ども をとりまく消費文化に関する新しいモノ・サービスが展開されていくなかで,新しい価値が生み出されている という点である。その消費文化に関わっていない第三者からは価値が見えにくく,トラブルへの対応,リスク の把握が困難であると考えられる。また,共通の“記号”を持っていた親世代に対して,子どもの価値の変容 が見えにくいことも懸念される。こうした個別に分散した“記号”を持った消費者に焦点をあわせて,SNS等 のインターネットコミュニティを利用したマーケティングが展開されている。また,実名を使ったコミュニティ だからこそ,共通の“記号”を持たない新規ユーザーを獲得する場としても有効に働いていることが伺えた。 さらに,これらのマーケティングの影響は,メディアリテラシーや情報拡散に対する抵抗の低い子どもの方が より強く受ける可能性があり,過度の消費行動に結びつくことが懸念された。最後に,消費行動のデジタル化 が進み,モノ・サービスと金銭のつながりが見えにくくなっており,子どもたちの経済観念や金銭感覚に影響 をおよぼすことが懸念されるという点である。特に,子どもの身の回りの消費文化を通じて,インターネット を介した商品の売買がより一層身近になっていることが,そうした影響に拍車をかけていると推測される。 以上の点から,子どもをとりまく消費文化や生活環境の変化を把握し,子ども達の消費に対する価値意識の 変容を理解する必要があると考える。多様化する価値観の中で,他人と異なる価値観を受容することの重要性 は,従来から指摘されていることである。しかし,ただ受容するだけではなく,異なる価値観を交換しあい, 自らの消費行動や消費に対する価値意識を見直すきっかけを与える場面が求められる。 また,これら生活課題は,特定の子どもだけではなく,全ての子どもが直面するものでもある。そのため, 全ての子どもを対象とした学校教育における題材としての取り扱いは必須である。また,これらの題材を扱う 教員の養成は喫緊の課題であると考えられる。特に生活時間や,家族関係,消費行動といった生活全体に関わ る課題であり,生活を扱う家庭科において,取り上げるべきテーマであり,授業実践,教材開発の提案につな げる必要がある。 特に,これらの生活課題を取り上げる際に使用するデータや情報は,教員が慎重に吟味する必要がある。 七海[2003]は社会現象となった「ゲーム脳」仮説の問題を取り上げ,子どもに及ぼす消費文化の影響に関す る研究報告が,子育てを担う保育者の混乱につながる可能性について指摘している。その中で,「メディアが 子どもの心身の発達に与える影響の研究はスタートラインに立ったばかりであり,単独の研究領域だけでは科 学的実証に基づき一般化できる知見を提示するのは難しい」(p.32)と述べ,子どもと消費文化の接触に関する 多様な分野からの研究の必要性を提示している。教員に対しても,これらの情報を批判的に読み解く能力の育 成が求められているといえよう。 メディアや消費文化との接触はもはや不可避な環境にあり,児童・生徒の体験を基に,どのような関わり方 が適切であるのか,何に価値をおき,他者とどのように関わり合うべきなのか,子ども同士の意見交換や認識 の共有から課題解決の方法を検討することが求められていると考える。

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謝辞 なお,本研究の一部は財団法人社会安全研究財団の助成金によって実施された。 引用及び参考文献 ・ gooリサーチ,子どものゲーム利用に関する調査,gooリサーチ結果(No.160),(2007) http://research.goo.ne.jp/database/data/000649/(2011.03現在) ・ 芦崎 治,ネトゲ廃人,リーダーズノート, (2009) ・ 東 浩紀,動物化するポストモダン オタクから見た日本社会,講談社現代新書(2007) ・ 馬居 政幸,生きる場への知的謙虚さを−変化流動する消費社会に育たざるを得ない子どもたち,現代教 育科学,43(5),pp.8-10,明治図書(2000) ・ 奥谷 めぐみ・鈴木 真由子,子どもをとりまく消費文化の実態とリスク−求められる消費者教育の視点−, 消費者教育,第30冊,pp.25-34,中部日本教育文化会,(2010) ・ 久保 千恵子,情報産業社会の中で生きている子どもたちについての一考察−インターネット接続端末機 を扱う子どもたち−,東北大学大学院教育学研究科研究年報,第57集第1号,pp.25−48,東北大学大学院 教育学研究科,2008 ・ 経済産業省文化情報関連産業課,アニメーション産業の現状と課題,経済産業省(2003) http://www.meti.go.jp/policy/media_contents/downloadfiles/kobetsugenjyokadai/anime200306.pdf, (2011.03参照) ・ 経済産業省,ゲーム産業戦略の策定に向けて,経済産業省(2006) http://www.meti.go.jp/committee/materials/downloadfiles/g60428c03j.pdf ,(2011.03参照) ・ 国民生活センター報道資料,オンラインゲームに関するトラブルが急増,国民生活センター (2005) http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20051207_2.pdf(2011.03参照) ・ 国民生活センター,「無料」のはずが高額請求,子どもに多いオンラインのトラブル,国民生活センター, (2009) http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20091216_2.pdf (3011.03参照)

・ 今藤 弘一,「ラブ and ベリー」に母娘がはまる理由, ITmedia+D Games (2006.8.31) http://gamez.itmedia.co.jp/games/articles/0608/31/news113.html, (2011.03参照) ・ 新宅 純二郎・柳川 範之,フリーコピーの経済学 デジタルコンテンツビジネスの未来,日本経済新聞社, 2008 ・ 鈴木 謙介,わたしたち消費 カーニヴァル化する社会の巨大ビジネス,幻冬舎新書,(2008) ・ 鈴木 良介,どものネット利用に関する新たな問題と対策 「加害者化」と「攻撃価値の増大」に対する備 えを,知的財産創造,15(12),野村総合研究所広報部,(2007) ・ 富田 英典,後期青年期のメディア戦略とサブカルチャー,教育社会学研究,第76集,pp.77-94日本教育社 会学会(2005) ・ 中西新太郎,雨宮処凛他,1995 未了の問題圏,大月書店,(2008a) ・ 中西 新太郎,子どものサブカルチャー大研究,労働旬報社(1998) ・ 中西 新太郎,子どもの生活実態に基づく家庭科のカリキュラム構想,日本家庭科教育学会誌,第46巻第2 号,pp.163−170,日本家庭科教育学会,(2003) ・ 中西 新太郎,若者たちに何が起こっているのか,花伝社,(2008b) ・ 七海 陽,メディアと子どもをめぐる研究リテラシー∼ゲーム脳仮説が浮き彫りにした新たな課題,月刊 民放,33(6),pp.28-33,コーケン出版(2003) ・ 七海 陽,デジタル・メディア社会どうなる?子どもたち6 銀行が変わる!お金が変わる!,子どものし あわせ,592,pp.38-43,草土文化(2000) ・ 西本 裕輝,子どもの生活とゲームの現状−いくつかのゲーム関連調査報告書を中心に,児童心理,62(2),

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pp.88 ∼ 94,金子書房,2008 ・ 藤川 大祐・塩田 真吾,楽しく学ぶメディアリテラシー授業 ネット・ケータイ,ゲーム,テレビとの正 しい付きあい方,学事出版(2008) ・ 森 昭雄,ゲーム脳の恐怖,日本放送出版協会(2002) ・ 牟田 武生,ネット依存の恐怖 ひきこもり・キレる人間をつくるインターネットの落とし穴,教育出版, (2010) ・ 山口 浩,オンラインゲーム利用における子どもの安全−リアルマネートレード(RMT)の問題から考える, 児童心理,62(2),pp.187-192 ,金子書房,(2008) 注 1) 「ビックリマン」とは,ロッテの販売する商品でおまけシールの同封されたウェハースのお菓子である。 シリーズごとにストーリー,キャラクターが変更されたり,前シリーズとの関連を持たせたりする等, 新しい消費者の拡大と従来から購入を続けている消費者の維持を図っている。現在でも販売されている。 2) アバターとは,インターネット上の着せ替え人形のようなものである。人型のキャラクターの顔や髪型, 服装等をコーディネートするコンテンツである。 3) 「サーチ行為」とは,トレーディングカードゲーム等の未開封パックの中から,希少性の高いカードが 封入されているパックのみを抜き出して購入する手口である。 4) 「RMT」(リアルマネートレード)とは,インターネットコンテンツ等の無形なデータをリアルなお金で 売買することである。企業から販売されたコンテンツをユーザー同士,あるいはRMTの仲介業者が売買 を行う等,様々な形態がある。入手困難なアイテムが高値で取引される傾向にあり,詐欺などのトラブ ルに巻き込まれるケースもある。

The Problem in Daily Life of Children Through Consumer Culture

OKUTANI Megumi* and SUZUKI Mayuko**

* Doctoral Course, The United Graduate School of Education, Tokyo Gakugei University, Koganei, Tokyo, 187-8501, Japan

** Department of Home Economics, Osaka Kyoiku University, Kashiwara, Osaka, 582-8582, Japan

 Japanese youth culture, animation and computer games, music, fashion, has expend remarkable since 1980s. The purpose of this paper is taking up influence of consumer culture around children, and marketing for young consumer as problems in daily life.

 So, based on precedence research, it is sorted out the change of consumer culture from 1970s when consumer culture start to expend to 2000s.

 The general public had same desire and expanded same materials and service on consumer culture from 1970s to 1980s. But, diversification of materials, service and value, and development of media ware happened from 1990s. Four problems are picked up from change of consumer culture.

First, children are absorbed in consumer culture and media. Second, value of material and service are change, outsiders of consumer culture or service can’t understand these values. Third, social networking service functions as advertisement. And children who can’t control desire and information are greatly influenced. Finally, people trade various materials and service on virtual. Therefore, it is necessary to focus on sense of the value of money.

参照

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