平成14年12月13日に「平成15 年税制改正大綱」が与党 3 党の合意を得て発表されました。現在、 法案が通常国会に上程され審議中です。従って、まだ詳細が決まったわけではありませんが、今回の税制 改正の大枠を正しく理解し、十分にそれを活用していただければとおもいます。 今回の相続税・贈与税及び金融・証券税制の改正は減税となります。一方、消費税の改正は増税となり ます。それぞれ納税者に対する影響は異なりますが、特に、相続税・贈与税及び消費税は事前の検討が重 要です。十分理解したうえで対応策を練る必要があります。 改正項目は多岐にわたり一般的に重要でないものもあります。主要な項目のみをピックアップして以下 の項目別に解説をします。 (1) 相続税・贈与税 - 相続時精算課税制度の創設、相続税・贈与税の税率変更等の減税措置に より相続を容易にして子世代の消費を促進し、経済活性化を促す改正が なされています。 (2) 消費税 - 免税点制度及び簡易課税制度の適用上限の引き下げによる不公平の是正、 いいかえれば、実質増税がなされています。 (3) その他 - 金融・証券税制、土地・住宅税制については、減税による経済活性化の 促進、個人所得課税については配偶者特別控除の上乗せ部分の廃止によ る課税公平化(実質増税)が図られています。 (1) 相 続 税 ① 適用対象者 65 歳以上の親から 20 歳以上の子である推定相続人(代襲相続人(孫)を含 む)となります。 ② 適用手続 最初の贈与を受けた年の翌年の贈与税の申告書に受贈者(子)が、制度を 利用する旨の届出書添付する必要があります。 ③ 適用対象財産等 適用対象財産の種類、金額、贈与回数に制限はありません。 ④ 非課税限度額 総額2,500 万円となります。複数年に渡った場合、その合計額が 2,500 ま では非課税となります。 ⑤ 税率 合計額が2,500 万円を越える部分に一律 20%の税率が適用されます。 【相続時精算課税制度の創設】 消費振興のため、生前贈与について大幅な減税がなされました。 従来の贈与と相続それぞれ別々に課税されていた制度に加えて、一定の条件を充たした 場合、贈与財産を相続財産と合算して相続税の計算が行われる制度が創設されました(贈 与税は相続時に精算されます)。また、この制度を選択した場合の生前贈与には贈与者1 人あたり 2,500 万円の非課税枠が設けられ、贈与合計金額が非課税枠を越える場合には 超えた部分に一律20%の税率が適用されます。
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【具体的な設例】 ※下記は理解をして頂くための例です。実際は新制度が必ずしも有利とはなりません。 前提 ①親一人、子一人 ②贈与金額 X0年 1,000万円 (贈与累計 1,000万円) X1年 1,400万円 (贈与累計 2,400万円) X3年 1,000万円 (贈与累計 3,400万円) ③相続金額 X10年 3,000万円 税額 税額計算 税額 税額計算 (贈与税) (贈与税) 贈与税額=(贈与金額-基礎控除額)×累進税率-控除額 X0年 0万円贈与累計が2,500万円以下なので無税 231万円=(1,000-110)×40%-125=231万円 (贈与税) (贈与税) 贈与税額=(贈与金額-基礎控除額)×累進税率-控除額 X1年 0万円 〃 420万円=(1,400-110)×50%-225=420万円 (贈与税) (贈与累計-2,500)×20% (贈与税) 贈与税額=(贈与金額-基礎控除額)×累進税率-控除額 X3年 180万円=(3,400-2,500)×20% 231万円=(1,000-110)×40%-125=231万円 ①相続税額 =(贈与累計額+相続額-基礎控除額)×累進税率 (相続税(還付)) =(3,400+3,000-6,000)×10%=40万円 (相続税) ②精算金額=相続税-贈与税累計 相続金額は3,000万円で基礎控除金額6,000万円より X10年 △120万円 =40-180=△120万円(還付) 0万円少ないため相続税は発生しません。 現行制度 新制度(相続時精算課税制度) ◆ 非課税枠は贈与者の父・母それぞれについて適用になると思われます。従って、両方の 非課税枠を使った場合、最高5,000 万円までが贈与時に非課税となりますので要注意! ◆ 新制度は、そんなにお金がかからない老齢世代から、お金が必要な子育て世代への相続 財産の早期移転をはかる制度です。ライフステージにあわせた有効活用をしましょう! ◆ 新制度において、将来価額が高騰すると考えられる財産を贈与にまわしたほうが有利と なります。なぜならば、贈与財産は贈与時の時価で相続時の精算がなされるからです。 保有財産の分類表を作成してみてはいかがでしょうか? ◆ 新旧両制度の有利不利は、対象資産の種類・金額、相続人の数等の様々な条件によって 判断する必要があるため、一概には言えません。十分な検討が必要です? ◆ 新制度は、いったん選択した場合には他の制度に変更はできません。ご注意を! 現在の相続税・贈与税の課税方式のイメージ (非課税枠・基礎控除等は省略) 現行方式 (暦年課 税) 贈 与 A 贈 与 B 相 続 C 納付税額(a) 納付税額(b) 納付税額(c) =A×贈与税率(累進) =B×贈与税率(累進) =C×相続税率 選択可能 新制度 (相続時精算 課税制度) 贈 与 A 贈 与 B 贈 与 A 贈 与 B 相 続 C 納付税額(ア) 納付税額(イ) 納付税額(c) =A×贈与税率(定率) =B×贈与税率(定率) =(A+B+C)×相続税率-(ア+イ) 贈与発生 贈与発生 相続発生 時間の経過
① 適用期間 平成15 年1月1日から平成 17 年 12 月 31 日までの贈与により取得する金銭に ついて適用があります。 【住宅取得資金等に係わる相続字精算課税制度の特例の創設】 住宅取得資金又は自宅の増改築等の資金の贈与について、相続時精算課税制度の特例とし て以下の2点が設けられました。 ① 非課税枠が1,000 万円増額され合計贈与者 1 人あたり、3,500 万円となります。 ② 65 歳未満の親からの贈与も適用対象とされます。 【その他の相続税・贈与税の改正】 ◆相続税の税率構造の見直しがなされました。 税率区分が9→6 区分に簡素化され、最高税率も 70→50%に引き下げられました。 ◆贈与税の税率構造の見直しがなされました。 税率区分が13→6 区分に簡素化され、最高税率も 70→50%に引き下げられました。 ◆養子となっている孫への2 割加算が適用されることになりました。 相続税において、原則、1親等の血族でない者が相続等をした場合、その人の相続 税に 20%の加算がなされます。従来、孫を養子とした場合には民法上1親等の血 族にあたるため20%加算から除外されていました。 ◆生命保険契約に関する評価方法が変更されました。 生命保険契約の権利の評価が、払込保険料ベース評価から解約返戻金評価への変更 がなされました。これは、保険の運用損益を保険契約の評価に反映させるための措 置としておこなわれたものです。 ◆特定同族会社株式等特例の要件が緩和されました。 一定の同族会社株式等の相続税評価額について、事業継承を考慮して減額する特例 の適用範囲が若干広がりました。 ◆特定同属会社株式等特例と小規模宅地特例の併用が一定の範囲で認められました。 平成15 年1月1日以後に、従来の生前贈与にかかわる住宅資金贈与特例(*2)を受けた人はその 後5年間相続時精算課税制度の選択ができません。従って、相続時精算課税制度の特例も使え なくなってしまいますので要注意! (*2)550 万円までの贈与が無税となり、1,500 万円までの贈与に軽減税率が適用される現行の制度 取得家屋及び増改築等の要件は詳細に決まっています。事前に十分にチェックしてください! 特例を受ける場合、贈与財産は金銭に限定されますので要注意!
(2)消費税 適用時期 平成16 年 4 月 1 日以後開始する事業年度からの適用となります。 【消費税の免税点の引下げ及び簡易課税の適用縮小】 消費税の免税点が課税売上高3,000 万円以下から 1,000 万円以下に引き下げられました。 また、簡易課税の適用上限の課税売上高が2 億円以下から 5,000 万円以下に引き下げら れます。 免税点及び簡易課税の適用上限の引き下げは、一般的には、実質増税となる上、事務手 間の増大をもたらします。この対象となる事業者は十分な注意が必要となります。 [新たに納税義務者となる場合の留意点] ◆ 売上と仕入れに関する事務処理を必ず行わなければならず、事務負担も増えます ので事前に対策が必要となります。 ◆ 上記にからみますが、消費税の課税のしくみを理解する必要があります。 ◆ 納税業者になった場合、原則課税方式と簡易課税方式の選択適用ができます。ど ちらが得か事前に検討する必要があるでしょう。 ◆ 簡易課税が有利な場合、適用する事業期間の開始する前日までに「簡易課税制度 選択届出書」を税務署に提出する必要がありますのでご注意を! [簡易課税の適用がなくなる場合の留意点] ◆ 売上と仕入れに関する事務処理を必ず行わなければならず、事務負担も増えます ので事前に対策が必要となります。 【その他消費税の改正】 ◆ 平成16 年 4 月 1 日以後開始する事業年度から、直前の課税期間の年間消費税額が国 税・地方税合わせて6,000 万円を越える事業者は、従来、3 ヶ月毎であった申告納付 が毎月となります。納付する税額は原則前年の確定税額の1/12 相当額となります。 ◆ 平成16 年 4 月 1 日から、消費者への商品販売やサービスの提供における表示方式が、 消費税を含めた価格を表示することが義務づけられます。表示方法の検討及びシス テム対応等が必要となってくることが考えられますので事前に十分検討を行ってく ださい! ・ 3 月決算法人の場合は、基準期間である前々期の平成 15 年 3 月期が免税、或は、 簡易課税適用可否の基準となります。 ・ 個人事業者の場合は、基準期間は平成15 年(平成 15 年1月 1 日~12 月 31 日) が免税、或は、簡易課税適用可否の基準となります。
(3) その他 - 金融・証券税制、個人所得課税、土地税制他 適用時期等の概要を示せば以下の通りとなります 1/1~3/31 4/1~12/31 1/1~3/31 4/1~12/31 上場株式等 20% 10% 10% の配当課税 所得税 所得税 (所得税7%、住民税3%) 源泉徴収 源泉徴収 源泉徴収 (35%) 源泉分離選択課税 株式投信の 収益分配金 課税 10% (所得税7%、住民税3%) 源泉徴収 上場株式等 の譲渡益 課税 19年分 21年分 源泉徴収 源泉徴収 20% (所得税15%、住民税5%) 20% (所得税15%、住民税5%) 源泉徴収 10% (所得税7%、住民税3%) 源泉徴収 (所得税15%、住民税5%) 20% 源泉徴収 20年分 平成15年分 20% (所得税15%、住民税5%) 16年分 17年分 18年分 【金融証券課税の軽減】 金融証券市場の活性化のための期間限定の減税及び将来の利子・配当・株式譲渡益に対 する課税の一体化を目指し、以下の改正がなされました。 ◆ 上場株式等の配当・公募株式投信の収益分配金及び上場株式等の譲渡益について 20%(所得税 15%、住民税 5%)の源泉徴収で納税が完了することとなりました(現 状の確定申告制度も残ります)。 ◆ 公募株式投資信託の償還(解約)損と株式等の譲渡益との損益通算が可能となりま した。 ◆ 投資市場の活性化のため、上場株式等の配当・公募株式投信の収益分配金及び上場 株式等の譲渡益に対して、今後、5年間10%(所得税 7%、住民税 3%)の優遇税 率が適用されます。 【土地・住宅税制】 不動産取引活性化のための減税措置として以下の改正がなされました。 ◆ 不動産の登記にかかわる登録免許税の税率が引き下げられました。特に、平成 15 年4 月 1 日から平成 18 年 3 月 31 日に登記されたものにはさらに軽減された税率 の適用があります。 ◆ 新増設にかかわる事業所税が平成15 年 3 月 31 日をもって廃止されます。 ◆ 不動産取得税の軽減が、平成15 年 4 月 1 日から平成 18 年 3 月 31 日に行われた不 動産の取得に適用されます。 ◆ 転勤等によって住宅ローン控除の要件を充たさなくなったため控除を受けられな くなっていた人が、再びその住居に入居した場合には一定の条件の下、再入居以降 再び控除の適用を受けることができるようになりました。
【個人所得課税】
平成16 年度分から、配偶者特別控除のうち配偶者控除の対象者に対する上乗せ部分(控 除対象配偶者の収入が年間103 万円以下の場合に認められていた上乗せ部分)が廃止され ます。