公益社団法人 北海道勤労者医療協会 勤医協中央病院
2018.11
47
No.
血管内治療
を開始
脳梗塞をカテーテルで治療する
2018年8月 脳神経内科 開設
3 2
脳梗塞治療は
時間との戦い
一刻も早い
受診が大切
2018 年 8 月 脳神経内科 開設
脳梗塞
を
カテーテルで治療する
を
開始
t-PA による血栓溶解療法
血管内治療
(血栓回収療法)
血栓を絡め取る
血栓を吸引する
血 内
管 治療
脳卒中(脳血管疾患)の約 7 割が脳梗塞です。脳血管が詰まり、脳 の組織が壊死するために、穏やかな日常を突然奪い、手足の麻痺で 寝たきりになったり、言葉を失ってしまうなど重篤な後遺症が引き 起こされます。発症すれば一刻を争う疾患ですが、血管内からの治 療で血栓の迅速な除去が可能になりました。 厚 生 労 働 省 が 発 表 し て い る、 2014 年 の 患 者 調 査 の 概 況 で は、 脳 血 管 疾 患 の 患 者 総 数 は 117 万 9000 人 に の ぼ り ま す。 年 々 減 少 傾 向にあるものの、寝たきりの状態になる原因の第 1位となっています。 日 本 で は 急 性 脳 梗 塞 に 対 し 2005 年 10月 か ら、脳の血管に詰まった血栓を溶かし血流を再開 通させる血栓溶解療法が行われています。発症か ら 4・ 5時間以内に「組織プラスミノーゲン活性 化 因 子( t ‐ P A )」 を 静 脈 か ら 点 滴 投 与 す る 有 効な治療法ですが、治療開始時間に制限があるこ と か ら、 多 く の 症 例 が 適 応 外 に な っ て い ま し た。 また、脳の太い動脈に詰まった血栓の溶解作用は 高くなく、もろい血管があると出血しやすいとい うリスクもありました。血管内治療は
8時間まで
発症から
4・
5時間以内なら
血栓溶解療法を
脳卒中
(脳血管疾患)
の分類
ラクナ梗塞
アテローム血栓性
脳梗塞
心原性脳塞栓症
くも膜下出血
そうした中、 新たな治療法として登場したのが、 2010 年 10月に保険適用になった 「血管内治療」 です。 血栓を溶かすのではなく、 カテーテルを使っ て物理的に回収します。 治療の対象となるのは、発症から 8時間以内の 脳主幹動脈閉塞(比較的太い血管の閉塞)の患者 のうち、診察や画像検査で急性期血行再建の適応 があると判断された症例です。血栓溶解療法が可 能な症例では、血管内治療を併用することもあり ます。 t-PA ステント 吸引カテーテル 血栓 血栓 血栓8
時間以内
4.5
時間以内
脳梗塞発症!
脳梗塞
心臓でできた血の塊が頭 頸部の太い血管に詰まる 主幹動脈が動脈硬化によって 細くなったり、詰まったりする脳内出血
細い血管が破れて出血する 脳動脈瘤が破裂 し、くも膜下に 出血が広がる 細い血管が動脈硬化に よって詰まる カテーテルで送 り込んだステン トに絡めて血栓 を回収する 吸引カテーテル で掃除機のよう に血栓を吸引し て回収する 屈曲血管に適応救急搬送による受診、他医療
機関からの紹介を
全て受け入
れ対応
します
点滴で投与した薬剤 t-PA が血栓を溶かす 出血 くも膜86.0
万人
脳梗塞
4.2
万人くも膜下出血
13.8
万人脳内出血
(2014 年)脳血管疾患の
種類別総患者数
厚生労働省「平成 26 年患者調査」から作成 14.1万人 その他 出典:厚生労働省「平成 29 年 人口動態統計 (確定数)主要統計表(最新データ、 年次推移)」札幌市での
脳血管疾患死亡者数
(2017 年)1,441
人
◦
ろれつが回らない
◦
顔半分がゆがむ
◦
片側の手足に力が入りにくい
◦
視野の片側が欠ける
◦
うまく歩けない
◦
言葉が理解できない
◦
意識がもうろうとする
◦
言いたいことが言えない
脳梗塞を疑う症状
脳梗塞の割合は
年々増加して
います
約
7
割
背景には、食生活の欧米化と運動不足 による動脈硬化症の増加があります血管が詰まる
血管が破れて出血する
他院
との連携
他科
との連携
血管造影装置シネアンギオ
脳梗塞の血栓を回収する
症
例
血管内治療
急性期脳梗塞における
後遺症軽減
へ
迅速な再開通で
勤医協中央病院では発症 8 時間以内の脳梗塞に対して、血管内治療 の適応を検討します。詰まった血管を一刻も早く再開通させること が、梗塞巣の拡大と後遺症を最小限に食い止めることになります。 脳の血管内治療は、開頭するこ となく脳血管内の病変にアクセス する治療法です。 まず、大腿の付け根の動脈や肘 の太い血管からカテーテルを挿入 し、 頭蓋内の病変に到達させます。 血 栓 を 回 収 す る デ バ イ ス( 道 具)には数種類がありますが、当 院で使用しているのは「ステント レトリーバー」と呼ばれる自己拡 張型のステント(やわらかい金属 でできた網目状の筒)と吸引型の カテーテルです。 ステントレトリーバーは、血栓 内を貫通したマイクロカテーテル から送り込み、血栓を絡めて回収血栓を
物理的
に
回収す
る
テ
レ
ビ電話
で
リ
ア
ルタ
イ
ム
に
情報共有
脳梗塞を発症した患者には、高血 圧や糖尿病などの生活習慣病を抱え ている方が少なくありません。 他科 の疾患 に治療が必要な場合も、 院内 の専門医 が関わり、必要な治療を適 切な時期に提供しています。 診断の結果、開頭手術が必要な場 合は、 脳神経外科病院 への転送を迅 速に行います。長期にわたるリハビ リテーションが必要となった場合は 回 復 期 病 院 や 療 養 型 病 院 へ つ な ぎ、 必要な医療を継続的に受けられるよ うにします。 ● 自室で 右麻痺 と 失語 を呈して倒れているところを 家族が発見し、救急要請 ● 最終未発症確認時刻 (症状がなかったと確認され ている時刻)は、 救急要請の 4時間前 【脳梗塞】 ● 右上下肢完全麻痺 (右の手足が全く動かない) ● 全失語 ( 言葉を理解することも話すこともできない ) ● N I H S S は 26点 ● 頭部 M R I で左中大脳動脈の近位部での閉塞を認 めたが、梗塞巣は中大脳動脈の灌流域の一部のみ ● 来 院 時 点 で 発 症 か ら 5時 間 が 経 過 し て い た た め、 血栓溶解療法は禁忌 ● 症 状 と M R A に よ る 血 管 の 閉 塞 部 か ら 想 定 さ れ る脳梗塞の範囲よりも、拡散強調像で実際に確認 できた脳梗塞の範囲が小さかったため、再開通に よって症状の軽減が期待できると判断し、 ステン トレトリーバーを用いて血栓回収 を施行完全血行再建(再開通)が得られた
脳の血管内治療は適応患者を 厳 密 に 選 択 す る 必 要 が あ る た め、設備や技能を満たした医療 機関でしか行うことができませ ん。当院では、日本脳卒中学会 の脳卒中専門医・河野龍平医師 を 中 心 と し た、 多 職 種 が 連 携・ 協働するチーム医療で、脳梗塞 の急性期治療に積極的に取り組 んでいます。 します。吸引型のカテーテルを用 いる場合は、吸引用ポンプで血栓 を吸い出します。どちらも、太い 血管や大量の血栓に威力を発揮で きます。 血栓溶解療法単独の再開通率は 30%程度で、血管内治療の再開通 率は 80%を超えています。 当院では、脳梗塞を扱う急性期 病 院 と し て、 E R や 夜 間 当 直 の 医師らが継続的に院内での研修を 重ね、脳梗塞治療のスキルアップ に努めています。 また、治療開始までの時間を最 短 に す る た め、 E R に い る 医 師 と院外にいる脳卒中専門医が携帯 端末のテレビ電話を使い、患者の 様子や検査画像をリアルタイムに 共有しながら、治療方針を決定す ることもあります。 急 性 期 脳 梗 塞 の 検 査 や 治 療 が、 24時間いつでも迅速に実施できる ように、多職種がチームを組んで 取り組んでいます。 血管や挿入された カテーテルをモニ タで観察します 医師は血管内に挿入した デバイスを使い一刻も早 く血流を再開通させます当院へ救急搬送
問診・病歴聴取、診察、臨床検査、 脳卒中スケール( N I H S S )の実施発症
診断
治療
治療直後から失語は改善した。麻痺は残存し ていたものの、その後のリハビリで自力歩行 は可能となり、自宅退院となった。経過
MRI 画像 血管造影画像 術前 術後内科副科長
救急副センター長
脳神経内科
脳卒中専門医
河
こ う の
野 龍
りゅうへい
平
脳神経内科
井
いのうえ
上 智
ともゆき
之
連携
血
管 内
治
療
脳神経内科
勤医協中央病院
80 代
男性
局所麻酔で施行するた め、患者の意識や自発 呼吸はあります 診療放射線技師が 血管造影装置を管 理し、医師の治療 をサポートします カテーテル挿入口 ステント を展開 大腿動脈 大動脈 内頸動脈脳血管閉塞部への順路
血栓 梗塞巣 カテーテル 再開通6 7