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チャネル乱流における流体線の伸長

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Academic year: 2021

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(1)

チャネル乱流における流体線の伸長

東京理科大学大学院

塚 原 隆 裕

† ∗東京理科大学 理工学部

河 村   洋

†† チャネル乱流において受動的に移流される流体線の伸長について,直接数値シミュレーションを用 いて解析を行った.流体線の伸長率d(L/L0)/dtは初期位置(壁面からの高さ)に依存し,y+= 15の 流体線が最も強く伸長された.摩擦レイノルズ数Reτ = 180及び395とし,Kolmogorov時間τη当 りの流体線の伸長率は0.10 ∼ 0.18となった.特にKolmogorovスケールが一定と見なせるほど狭い 領域にある流体線の伸長率は,壁近傍を除き,等方性乱流に近い値が得られた.また,初期高さに依 らず,チャネル全体に広がった流体線の伸長率は約0.065τη,min−1程度と評価できた.

Stretching Rate of Material Lines in Turbulent Channel Flow

Takahiro TSUKAHARA

,Faculty of Science and Technology, Tokyo Univ. of Science

Hiroshi KAWAMURA

,Faculty of Science and Technology, Tokyo Univ. of Science

(Received 27 January, 2005; in revised form 22 September, 2005)

The evolution of passive material lines in turbulent channel flow is studied by the direct numeri-cal simulation. The Reynolds numbers based on the friction velocity, the channel half width and the kinematic viscosity are 180 and 395. The deformation of a line for the higher Reτis more rapid espe-cially at y+ = 15. The line length increases exponentially in time as exp[γt], with the stretching rate γ = 0.10 ∼ 0.18τη−1 in the range of the present Reynolds numbers. This is reasonable because the lines are deformed efficiently by the Kolmogorov-scale eddies with the Kolmogorov time-scale (τη). The obtained value ofγ is close to that of homogeneous isotropic turbulence.

KEY WORDS): Material Line, Direct Numerical Simulation, Turbulent Channel Flow

1 緒言 乱流の主な特徴の一つとして,強い混合・拡散 作用があげられるが,混合の程度の定量化とし て,流体粒子の集合から成る曲線や曲面(流体線 及び流体面と呼ぶ1))の変形を定量化する方法が ある.乱流によって移流される流体線(面)の運 動やその統計は,乱流中での渦管の伸長の問題 や,乱流燃焼等における熱・物質の乱流混合の問 題などと深い関連があり,古くから理論的,実験 的あるいは数値的な研究が盛んに行われてきた. 無限小の流体線や流体面(線素や面素)の乱流 における変形の研究は,Batchelor1)の先駆的論 文に始まり,線素eは指数関数的に伸ばされるこ とが示された.その時間的な伸長(de/dt)は次 ∗〒 278–8510 千葉県野田市山崎 2641E-mail: a7599109@rs.noda.tus.ac.jp ††E-mail: kawa@rs.noda.tus.ac.jp 式の様に,速度勾配テンソルui, jを用いて, dei dt = ui, jej (1) と表せる.これより,速度勾配が定常な領域内 (単純な一様せん断乱流等)では,線素がある程 度発達すると初期状態によらず伸長率は一定とな ると述べている.また彼は,一様かつ定常な乱流 中であれば,流体線(面)は統計的に一様な伸長 を受け,十分時間が経ったのちでは流体線(面) は統計的に等価な流体線素(面素)の集合と見な せるとした.この仮定に基づき,無限小線素の 指数関数的な伸長は,直接数値シミュレーション (以下,DNS)によって数値的にも確かめられて いる2, 3).一方,近年の大型計算機の発達に伴い, Kidaらのグループ4, 5)は,無限小線素ではなく 有限長さの曲線の追跡を行い,流体線の真の伸 長率を求めている.彼らによれば,流体線に沿っ 〔原著論文〕

(2)

1 Numerical parameters; number of grid points Ni, grid width∆i, sampling time period ∆T, time step ∆t,

threshold length of line segment∆L, Kolmogorov scaleη and time-scale τη.

Reτ Nx× Ny× Nz ∆x+, ∆y+min-max, ∆z+ ∆T+ ∆t+ ∆L+ η+,min τ+η ,min

180 256× 128 × 256 9.00, 0.200∼5.93, 4.50 900 0.0360 2.25 1.57 2.47 395 512× 192 × 512 9.88, 0.148∼6.51, 4.94 1200 0.0395 2.47 1.48 2.19 た統計を考える際には,その曲線に沿った非一様 な伸長の効果が無視できず,Batchelorの一様伸 長の仮定は,実際の乱流中では成立しないと述べ ている.したがって,流体線の非一様な伸長を正 確に評価するために,有限長さの曲線の追跡が必 要である.ちなみに,一様乱流中における流体線 の伸長率は,Batchelorの仮定が成り立つとする と,0.13τη−1(ここで,τηはKolmogorov時間)程 度2)と評価されるが,実際の伸長率は0.17τη−1 程度であると,Kidaら4, 5)は報告している. これら流体線や流体面の乱流混合における数 値的な研究の多くは,一様乱流中の追跡であり, 筆者の知る限り壁乱流においての解析例はない. 本研究で対象とする平行平板間(チャネル)乱 流のDNSについては,その単純な形状と壁乱流 の基礎的特徴を有することから,最初にKimら6) がReτ= 180の流れ場の計算を行って以来,様々 な計算が行われてきた.最近では,比較的高いレ イノルズ数のDNS7-10)やスカラー輸送を伴った 計算11, 12)が多く実施され,流れ場及びスカラー 場における実用的で重要な各種統計量,及び乱流 構造に関する知見が高まってきている.本研究で は,DNSにおけるチャネル乱流中の流体線の変 形・伸長を追跡することで,壁乱流における混合 作用の定量化を目的としている. 2 計算手法 2.1 流れ場 解析対象となる流れ場は,十分に発達した無限 に広い平行平板間乱流である.ここで,流れ(x 軸)方向に一様な圧力勾配が付加されることに より流れが駆動されているものとし,ポアズイ ユ乱流を想定している.計算対象の概略図を図1 に示す.水平方向には周期境界条件,壁面におい ては滑りなし条件を付加している. 支配方程式は,連続の式,及びNavier-Stokes 図1 Configuration 方程式 ∂ui ∂xi = 0, (2) ∂u+ i ∂t+ u+j ∂u+ i ∂xj = −∂p+ ∂xi + 1 Reτ ∂2u+ i ∂xj 2 (3) である.ここで,添え字の+は摩擦速度uτ及び 動粘性係数νで,∗はチャネル半幅δで無次元し ていることを意味する.また,レイノルズ数は Reτ = uτδ/ν = 180及び395としている.表1 に,格子点数Ni,格子幅∆i+,及び流れ場におけ る統計量の積分時間∆T+を示す. 計算アルゴリズムには,Fractional step法を用 いた.時間進行は,壁垂直(y軸)方向の粘性項 に対しては,2次精度Crank-Nicolson法を,そ の他の項は2次精度Adams-Bashforth法を用い た.他方,空間的離散化の手法には,有限差分法 を用いた.差分精度としては,流れ方向,スパン (z軸)方向にはMorinishi13)の提唱する4次精度 中心差分を用い,壁垂直方向は不等間隔格子を用 いており2次精度で扱った. 2.2 流体線 流体線は,常に同じ流体粒子の集合より構成 された仮想の曲線である.すなわち,流体線上の 任意の点xp(t)は,その点における流速u(xp(t), t) チャネル乱流における流体線の伸長

(3)

Particle Imaginary radius Wall 図2 Boundary treatment によって, dxp(t) dt = u(xp(t), t) (4) と移流される.粒子の速度ベクトルは,各計算セ ル内で,一次補間によって求めた.ただし,壁面 においては,粒子の仮想半径( ∆ymin)を導入 し,境界から半径分の距離において,完全弾性反 射されるものとした(図2).但し,後に示すよ うにこの境界条件にあてはまる流体粒子は殆ど 無いことが分かった.流体粒子間の相互干渉は考 慮せず,また流体中を運動することによって生じ る抵抗力も無視するものとし,流体線は流れ場の 時間発展に影響を与えないものとする. 一方,流体線は,十分短い間隔で置かれた点の 集合で表現され,隣り合う流体粒子2点間の距 離がある閾値∆Lを超える度に,2点間中央に新 たな点を追加し,流体線を十分滑らかに補完して いく.閾値をKolmogorovスケールη程度に設 定することで,微小渦による流体線の変形も十分 捉えられるようにした.また,流れ場および流体 線の時間ステップ∆tはKolmogorov時間τηに対 し十分小さく設定した(∆t  τη).Kolmogorov スケールη及び時間τηは次式から得られる. η = ν3 4ε− 1 4, τη= ν 1 2ε− 1 2 (5) ここで,εはエネルギー散逸率を示す. ε = ν∂ui ∂xj ·∂ui ∂xj (6) 表1に,本計算のレイノルズ数における最小の Kolmogorovスケールη及び時間τη,曲線補完に おける2流体粒子間距離の閾値∆Lと時間ステッ プ∆tを示す. 100 101 102 0 5 10 15 20 y+

u

+ u +=(1/0.41)ln(y+)+5.6 u +=y+ Present Reτ =180 Reτ =395

Wei & Willmarth et al.14)

Reτ

Iwamoto et al.8)

Reτ =180

Reτ =395

3 Mean veloctiy profile

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 Present Reτ =180 Reτ =395 y /δ Iwamoto et al.8) Reτ =180 Reτ =395 0 10 20 0 1 2 3 4 5 y+

Turbulent kinetic energy

k

y+=15

4 Turbulent kinetic energy

3 結果及び考察 3.1 流れ場における統計量 平均流速分布を,wall-unitで無次元化し,図 3に示す.スペクトル法によるDNSの値8)や Wei-Willmarth14)の実験結果と比較しているが, よく一致している. 図4に,乱流強度エネルギーk+= (ui+ui+)/2 を示す.スペクトル法による結果8)とも良い一 致を示すが,チャネル中央部に見られる微小な差 異は,本計算の統計時間が短いためである.ピー ク値はReτ= 395の方が高いが,ピーク位置は レイノルズ数に依らずy+= 15付近であること が分かる.また,チャネル中心に近づくにつれて 乱流エネルギーが弱くなり,チャネル中心部で極 小値となっている. 3.2 流体線の可視化 Reτ = 180及び395のチャネル乱流中に,図 5の様にスパン方向に伸びた流体線を放し,そ れら流体線の時間発展の様子を図68に示す. 流体線の初期長さL0 は,3.2δ(Reτ = 180), =169

(4)

5 Material lines at t=0; the lines are generated along lines parallel to the z-axis.

1.6δ(Reτ= 395)とした.また,壁面からの距 離の依存性を評価するため,初期高さを壁近傍 (y+s = 5),乱流エネルギーのピーク位置(y+s = 15),mid-height(ys= 0.5δ),及びチャネル中 心(ys= 1.0δ)とし,計4本の流体線を同時に 移流させた.壁近傍からの流体線を図6に,他 の高さからの流体線は図7Reτ = 180)と図8Reτ= 395)に示す. 3.2.1 内層の流体線 図68において,平均流は左下から右上に向 かって流れており,各高さによる平均流速(図3) の違いにより,チャネル中心部の流体線は壁近傍 のものより速く移流されていることが分かる.一 方,図6に示す壁近傍における流体線の移流速 度は平均的に遅いが,相対的に速く移流される部 分と遅い部分が交互に現れていることが分かる. 結果,流れ方向に一次元的に拡がる波状の流体線 に変形している様子が見られる.これは壁乱流 でよく知られるストリーク構造に起因しており, その構造のスパン方向平均間隔(低∼低速領域間 隔∆z+≈ 100)と,変形した流体線に現れる波形 の波長は良く一致している. y+s = 15から放出された流体線も同様な変形を 呈するが,さらに間欠的に壁垂直方向にも伸び 上がり,スパン方向にも変形している領域が観 察される.これは,間欠的に生じる吹き上がり (ejection)によって運ばれた流体線が,バースト 現象(burst)によって複雑に変形・伸長されてい ると考えられる.また,吹き下がり(sweep)に よって壁近傍に運ばれた領域の流体線は,平均速 度勾配によって流れ方向に伸びているが,乱れは 少ない.初期段階(tuτ/δ = 0.08)のこれら内層 における流体線の変形の様子は,境界層におけ る実験結果とも良く相似している15).過去の数 (a) (a’) (b) (b’) (c) (c’) (d) (d’) (e) (e’)

6 Temporal evolution of passive material lines in the turbulent channel flow for Reτ=180 (a-e) and

395 (a’-e’). The straight lines are released from y+s=5. The color of the line indicates a height

from the lower wall (blue: bottom, red: center). The mean flow direcion is from bottom-left to top-right. (a,a’) tuτ/δ=0.08, (b,b’) 0.16, (c,c’) 0.32, (d,d’) 0.48 and (e,e’) 0.64. 値的研究から6, 10, 16),壁面からy+≈ 20付近に 半径がd+≈ 15 (≈ 10η+)程度の縦渦が生じる準 秩序構造は知られているが,この微小要素渦に よってy+s = 15の流体線が支配的に変形・伸長さ れていると考えられる.図9に,Reτ=395にお チャネル乱流における流体線の伸長

(5)

(a)

(b)

(c)

(d)

(e)

7 Temporal evolution of passive material lines in the turbulent channel flow for Reτ=180. The

straight lines are released from y+s=15, ys=0.5δ

and ys=δ. The color of the line indicates as

Fig. 6. The mean flow direcion is from left to right. (a) tuτ/δ=0.08, (b) 0.16, (c) 0.32, (d) 0.48 and (e) 0.64. (a) (b) (c) (d) (e)

8 Temporal evolution of passive material lines in the turbulent channel flow for Reτ=395. The

straight lines are released from y+s=15, ys=0.5δ

and ys=δ. The color of the line indicates as

Fig. 6. The mean flow direcion is from left to right. (a) tuτ/δ=0.08, (b) 0.16, (c) 0.32, (d) 0.48 and (e) 0.64.

(6)

9 Dual-view (top-front) of material line and fine-scale vortices in the near-wall region of the tur-bulent channel flow, Reτ=395. The deformed line is a part of the line shown in Fig. 8 (y+s=15, tuτ/δ=0.08). The color of the line indicates a stretching rate (blue: not stretched, red: strongly stretched part). Iso-surface indicates the sec-ond invariant of deformation tensor II+≤-0.04, which corresponds to a vortical position.

けるy+s = 15から放出された流体線とその周辺 の渦を可視化し,流体線の伸長と微小要素渦の 関係を示した.ここで,渦位置は速度勾配テンソ ルの第二不変量における負の等値面によって表 しており,壁近くで微小要素渦が発生している様 子が分かる.流体線が強く伸長されている箇所 (薄赤色の丸で示した)の周辺には,要素渦が密 集しており,それら渦群がスパン方向や高さ方向 に流体線を変形させている.また,渦が疎の領域 では,流体線の変形は小さく,流れ方向の伸長が 支配的となっている.伸長の方向が流れ方向のみ である場合は,高さ方向の平均速度勾配に起因 する流体線の伸長と考えられ,図9の左端から z= 0.1 ∼ 0.2の領域の流体線の様に,その部分 で伸長率は小さくなっている. 一方,壁近傍に運ばれた流体線や先に述べた y+s = 5から放たれた流体線は,要素渦の影響を 殆ど受けない壁のごく近傍にあるため,3次元的 な変形は少なく,ただ平均速度勾配によって一次 元的に(流れ方向に)伸ばされるのみである.し かし,当然ながら,流体線は次第にチャネル全体 に拡がっていくので,y+s = 5から移流された流 体線も時間が十分経つと,y+s = 15のものと同じ

10 Deformed material line from y+s=15 in the

tur-bulent channel flow for Reτ=180. The color of the line indicates as Fig. 6. The length of the line is Lt ≈ 104× L0at tuτ/δ=1.6. 10-2 10-1 100 101 102 10-6 10-5 10-4 10-3 10-2 10-1 ys+=15 f ( yp ) tuτ/δ=0.08 tuτ/δ=0.16 tuτ/δ=0.64 tuτ/δ=1.20 tuτ/δ=1.60 ∆ymin Imaginary radius yp+ Reτ =180 (ys+=15) 10-4 10-3 10-2 10-1 100 yp/δ 10-2 10-1 100 101 102 tuτ/δ=0.08 tuτ/δ=0.16 tuτ/δ=0.32 tuτ/δ=0.48 tuτ/δ=0.64 ∆ymin Imaginary radius yp+ Reτ =395 (ys+=15) 10-4 10-3 10-2 10-1 100 yp/δ

11 Probability density function of the height of the particles on the material line (y+s=15) in the tubulent channel flow. The height of the low-est grid point∆yminand the imaginary radius as

the wall-boundary condition are also shown for comparison, cf. Table 1. ように3次元的に乱された複雑な曲線になって いる.平均流がチャネル内を2回程度流れきる ほどの時間(t∗= 1.6)が経つと,y+s = 15の流体 線は初期長さの104倍程度にまで伸び,図10 見るように極めて複雑な形状を示し,チャネル全 体に拡がっている様子が見受けられる. 流体線を構成する流体粒子の壁面からの高さ ypにおける確率密度関数を図11に示す.時間発 展に伴い,初期高さy+s = 15から流体粒子が壁側 とチャネル中央側の両方向に拡がり,Reτ= 395 においてはtuτ/δ = 0.64程度でチャネル中央付 近まで達している(図12).両レイノルズ数と も,分布のピークがy+p ≈ 3 ∼ 5にあることから, 粘性底層に流体線が多く集まっていることが示唆 される.また,本計算ではy+p < 0.3の壁にごく 近い領域には流体粒子が全く侵入していないこ と(f (yp)= 0)が図11から分かる.これは流れ チャネル乱流における流体線の伸長

(7)

(a)

(b)

12 Deformed material line from y+s=15 in the tur-bulent channel flow for Reτ=395. The color of

the line indicates as Fig. 7. The length of the line is Lt ≈ 104× L0 at tuτ/δ=0.65. (a) top

view; (b) bird’s eye view.

場の最小格子幅よりも高い位置である.よって, 本解析で流体粒子の境界条件にある仮想半径に 関して,その人為的な影響は無視できる. 3.2.2 外層の流体線 外層から放たれた流体線(ys= 0.5δ, 1.0δ)に見 られる変形は,内層の流体線に比べて緩慢である が,3次元的に拡がっている(図13参照). 図78より,初期の流体線の変形(局所的な 変形)は,壁近傍では一次元的,チャネル中央 部で3次元的であることが視覚的に確認できる. Antoniaら17)の不変量マップから,乱れが壁近 傍において一次元的,チャネル中央部では等方性 乱流に近くなることが知られている.これより, ys= 0.5δ, 1.0δの流体線は,等方性乱流に相似し た3次元的な変形・伸長を呈することが首肯で きる.壁近傍での挙動を詳しく比較してみると, Reτ = 180はReτ = 395に比べて一次元性が強 い.これは,レイノルズ数の高い方が,壁近傍 での乱れの再分配がより活発に行われるためで ある.また,乱れが最も一次元的になる位置は, y+ ≈ 8付近17)であるため,y+s = 5における流 体線は比較的単純(一次元的)な伸長を伴うこと が分かる.

13 Deformed the material line from ys=δ in the

tur-bulent channel flow for Reτ=180. The color of the line indicates as Fig. 6. The length of the line is Lt≈ 102× L0at the same time as Fig. 10.

3.3 流体線における統計量 スパン方向に伸びた初期長さL0の流体線を,前 節と同様に,各初期高さ(y+s = 5, 15, ys= 0.5δ, δ) から移流させ,それら流体線の全長の時間発展を 図14に示す.水平方向に異なる位置から流体線 を放ち,各高さで16回の試行(16本の流体線) についての統計値である. 横軸を時間t,縦軸は初期長さL0に対する流 体線の全長Ltの比を対数で表している.図14(a) から伸長の傾きが一定,つまり,チャネル乱流中 の流体線は指数関数的に伸ばされていることが 分かる.また,壁から離れるにつれ,流体線の伸 長が非常に緩やかになり,チャネル中心で伸長が 最も遅いことが分かる.この初期高さに依存する 伸長速度の違いは,乱流エネルギー分布(図4) と良く一致している.乱流エネルギーのピーク位 置(y+ = 15)で流体線は最も効率的に伸ばされ, 乱流エネルギーの低下に伴い流体線の伸長速度 も低下している. レイノルズ数依存性に関しては,Reτ= 180に 対してReτ= 395の方が速く伸長されているこ とが分かる.また,Reτ = 180は時間が十分に 経つと(tuτ/δ > 1.5),初期高さに依らず伸長 速度(傾き)が等しくなってくるが,これは流 体線がチャネル全体に拡がってくるためである. Reτ= 395では伸長速度が早いにも拘らず,本計 算時間(tuτ/δ = 0 ∼ 0.65)では流体線はチャネ ル全体に十分拡がっていなかった(図12).つ まり,より高いレイノルズ数(Reτ= 395)にお いては局所的な混合が効果的に行われるが,チャ

(8)

0 0.5 1 1.5 100 101 102 103

L

t

/L

0 ys+= 5 ys+=15 ys =0.5δ ys =1.0δ Reτ =395 Reτ =180

tu

τ

(a) 0 100 200 300 100 101 102 103

t

+

L

t

/L

0 ys+= 5 ys+=15 ys =0.5δ ys =1.0δ (b) 0 20 40 60 80 100 101 102 103

L

t

/L

0 ys+= 5 ys+=15 ys =0.5δ ys =1.0δ Homogeneous isotropic turbulence (Reλ=84, Kida et al.4))

t /τη(ys)

(c)

14 Average total length of the material lines. The time t is normalized by the outer-scale [in (a)], by the wall-unit [in (b)] or by the mean Kol-mogorov timeτη of the each height [in (c)]. Black line: Reτ=180, gray line: Reτ=395, red line: Kida et al.4).

ネル全体の混合に要する時間はレイノルズ数に

ほとんど依存せず,tuτ/δ > 1.5程度は必要と考

えられる.

14(a)(c)は時間tの無次元化に,それぞれ

outer-scale,wall-unitまたはKolmogorov時間を

用いている.ここで,乱流エネルギーの散逸率ε から,式5を用いて得られるKolmogorovスケー ルη及びKolmogorov時間τηの分布を図16に 示す.壁面近傍で最小値,つまり最小スケール・ 0 0.5 1 1.5 0 5 10 15

γ

=(

γδ/

u

τ

)

Reτ=180 0 0.5 1 1.5 0 5 10 15 395 ys+= 5 ys+=15 ys =0.5δ ys =1.0δ

tu

τ

(a) 0 100 200 300 0 0.02 0.04 0.06

t

+ Reτ=180 0 100 200 300 0 0.02 0.04 0.06

t

+

γ

+

=

(

γν

/u

τ 2

)

395 ys+= 5 ys+=15 ys =0.5δ ys =1.0δ (b) 0 20 40 60 80 0 0.1 0.2 0.3 Reτ=180 0 20 40 60 80 0 0.1 0.2 0.3 t /τη(ys)

γ τ

η

(y

s

)

395 ys+= 5 ys+=15 ys =0.5δ ys =1.0δ Homogeneous isotropic turbulence (Reλ=84, Kida et al.4))

(c)

15 Average stretching rate of material lines. The time t and the stretching rateγ are normalized by the outer-scale [in (a)], by the wall-unit [in (b)] or by the mean Kolmogorov timeτηof the each height [in (c)]. Legend as Fig. 14. 時間となり,壁からの距離が増すにつれ,スケー ル・時間共にほぼ線形に増加している.このため, 壁乱流においては,流体線が高さ方向に発達する につれ,線の伸長に関わるKolmogorovスケール を一意に決めることが難しいことが言える. 図14より,流体線が指数関数的に伸長してい るのが確認でき,全長Ltが時間tに対し, Lt= L0exp[γt] (7) チャネル乱流における流体線の伸長

(9)

0 10 20 0 1 2 3 4 5 y+ η + Reτ =180 Reτ =395 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 y/δ (a) 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 y/δ (b) 0 10 20 0 10 20 τη + Reτ =180 Reτ =395 y+

16 Kolmogorov scale (a) and time-scale (b)

の関係が成り立つ.ここで,γは指数伸長率で, γ = d dtlog Lt. (8) 伸長率γは,図14の傾きに相当し,各ケース について求めると図15が得られる.ここで,図 14(c)15(c)には,Taylor長によるレイノルズ数 Reλ= 84における一様等方性乱流中の流体線の 解析結果4, 5)を合わせて示す. 前節で述べた様に,チャネル乱流における流体 線は,その高さによって異なる変形・伸長を伴う ため,一様乱流の様に伸長率がすぐに一定値を とらない.十分時間が経てば(tuτ/δ > 1.5),流 体線がチャネル全体に広がり,初期条件に依らず 伸長率は一定値に収束すると考えられる.また, 流体線がチャネル全体に広がり,伸長が初期条件 に依らず定常となったときの伸長率の大まかな値 を表2に示す.Outer-scaleで流体線の伸長を観 察すると,レイノルズ数が高いほど全高さで伸長 率は大きくなるが,wall-unitにおいてはレイノ ルズ数依存性が弱くなっていることが分かる. ここで,各初期高さにおけるKolmogorov時 間τη(ys)当たりの伸長及び伸長率を見ると(図 14(c)15(c)),レイノルズ数及び初期高さysに 対する依存性が特に弱くなっていることが分か る.このことから,チャネル乱流中の流体線の変 形において,高さによって異なるKolmogorovス ケール程度の微細な渦運動が支配的であることが 示唆される.また,流体線が放出されて初期の段 階tη < 5に注目すれば,壁近傍(y+s = 5)を除 いて,一様等方性乱流と似た伸長を呈することが 分かる.つまり,流体線が高さ方向に殆ど拡がっ ていない間の,Kolmogorovスケールが一定と見 なせる十分狭い領域に注目すれば,壁乱流の流体 線の変形のメカニズムは,一様等方性乱流と同

2 Estimated value of the stretching rate for the fully developed line in the turbulent channel flow

Reτ γ∗ γ+ γτη,min 180 4∼ 5 0.023∼0.027 0.057∼0.067 395 11∼12 0.028∼0.031 0.061∼0.068 様なものと考えられる.壁近傍は,前節で述べた 様に非等方性が強く,一次元的なせん断(du/dy) が支配的なため,指数関数的な伸長ではなく,む しろ線形的に伸ばされるため,伸長率γτη(ys)が 低くなっている. 乱れが等方的なチャネル中央部では,5< t/τη< 10の範囲で伸長率γ =0.16-0.18τ−1η が得られる. これは,一様等方性乱流における値γ = 0.17τ−1η と良く一致している.外層における流体線におい て,tη > 10で,Kolmogorov時間当たりの伸 長率γτηが増加するのは,流体線が高さ方向に 広がり,壁近くのより細かいスケールの渦で効果 的に変形・伸長されるため,固定値τη(ys)による スケーリングが困難になるためである.同様のこ とが内層の(y+s = 5, 15)の流体線にも当てはま り,徐々に伸長率は減少すると考えられ,また, 図1012に見るように流体線がチャネル中央ま で十分発達するため,伸長率は定常に近づいて おり(図15(c)参照),γ ≈ 0.1τη(ys) −1と評価 できる.一様等方性乱流(γ = 0.17τ−1η )よりも 低い値となる.これは,チャネル内に発達した流 体線が,高さ方向に変化する複数のKolmogorov スケール渦(図16参照)によって伸長され,壁 近くでは小さいKolmogorov時間でスケーリン グすると伸長率が低く評価されるためである.ま た,最小Kolmogorov時間によってスケーリング を行うと,チャネル内に十分発達した流体線の伸 長率は,初期位置に依らずγ ≈ 0.065τη,min−1前 後に収束すると考えられる(表2). 4 結論 Reτ = 180及び395におけるチャネル乱流の DNSを実行し,このチャネル乱流における流体 線の変形・伸長を調べ,下記の結論を得た. 微細渦構造が活発で,乱流強度エネルギーの大 きいy+ = 15付近において流体線の伸長が著し

(10)

い.流体粒子分布の確率密度関数より,流体線が 多く存在するのはy+≈ 3 ∼ 5付近であり,線の 伸長が強い領域と一致しない点は興味深い.内層 (y+= 5, 15)から放たれた流体線の伸長率は,レ イノルズ数に依存せず,Kolmogorov時間τηで スケーリングすればγ ≈ 0.1τη−1と評価できる. これは一様等方性乱流における伸長率0.17τη−1 よりも低いが,壁乱流中の流体線の運動において も,Kolmogorovスケール程度の微細渦構造が支 配的であることが示唆される.外層の流体線は, 緩やかに伸長し,等方的な変形を示す.また,流 体線はチャネル全体に広がる一方,Kolmogorov スケール・時間は高さ方向に変化するため,発達 途中の流体線の伸長率を,初期高さに依らず一 意に決めるのは困難である.しかし,壁近傍を除 き,Kolmogorovスケールが一定と見なせる領域 にある流体線の伸長率γτηt< 5τη)は一様乱流 2-5)と近い結果が得られた. 謝辞:本研究の計算は,東北大学情報シナジーセ ンター大規模科学計算システム,及び九州大学情 報基盤センター研究用計算機システムを利用し て行った. 引 用 文 献

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参照

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