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Lipids of Seeds Manjiro NODA Department of Agricultural Chemistry, College of Agriculture, Kyoto Prefectural University (Sakyo-ku, Kyoto)

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Academic year: 2021

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708 油 化 学

京都府立大学農学部農芸化学科(京 都市左京区下鴨半木町)

Lipids

of Seeds

Manjiro NODA

Department of Agricultural Chemistry, College of Agriculture,

Kyoto Prefectural University (Sakyo-ku, Kyoto)

現 在 植 物 油脂 と して利 用 され て い る もの の 大部 分 は, 高 等 植 物 の種 子 か ら採 られ た もの で あ る。 した が って植 物 油脂 の脂 肪 酸 や グ リセ リ ド組 成 に つ い て は,従 来 油 脂 化 学 の立 場 か ら詳 しい 研 究 が な され て き た 。 しか し複 合 脂 質 そ の他 の微 量 成 分 ま で を も含 め た脂 質 全 体 の 立場 か ら,特 に生 化 学 的 な観 点 も考 慮 して植 物 の種 子 脂 質 を見 直 す こ とも,ま た今 後 の植 物 油 脂 利 用 の上 で意 味 あ る こ と と思 わ れ る。 こ の 解説 で は,ま ず そ の よ うな 見方 か ら 種 子 脂 質 の特 徴 をつ か む よ うに努 力 し た。 第 二 に,植 物 種 子 脂 質 の領 域 で の最 近 の成 果 で重 要 と思 わ れ る も の を,で き る だ け盛 り込 むべ く努 め た。 た だ し個 々 の脂 質 の構 造 や 一 般 的 な代 謝 に関 し て は,別 項 で 解 説 され る こ と と思 われ る ので,こ こで は大 部 分 を省 略 して い る。 そ れ らは該 当す る項 目を参 照 し て本 項 を理 解 す る助 け とし て い た だ き たい 。 1 脂 質 組 成 上 の 特 徴 植 物 種 子 の脂 質 組 成 の全 般 的 な 特 徴 を知 る た め に表-1 を例 示 す る。 も ち ろん 植 物 の 種 類 に よ って 脂 質 組 成 は か な り変 化 す るが,貯 蔵 栄 養 で あ る ト リグ リセ リ ドが他 の 脂 質 に比 べ て非 常 に多 い こ とが まず 指 摘 され,し か も種 子 全 体 に対 して 脂 質 の 含 有 量 の高 い も のが 多 い 。 こ の こ とが 古 来 種 子 を油 脂 原 料 と して 重 用 して い る理 由 と な っ て い る。 表-1で 見 られ る よ うに,ホ 乳 動 物 の 内臓 で は, 表-1 脂質組成 の全般的特徴(%) a) 少 量 の ジ グ リセ リ ドも含 む 。 b) 葉 緑 素,カ ロ チ ノ イ ド,キ ノ ン類,ロ ウ エ ス テ ル,高 級 ア ル コー ル,炭 化 水 素 な ど 。 一 般 に複 合 脂 質 が 多 く,コ レステ リンもかな り存在 し, ま た植 物 で も,光 合 成 器 官 で あ る葉 の 脂 質 が,葉 緑 体 の 色 素 と,光 合 成 系 の複 合 脂 質 とで ほ とん ど 占め られ,ト リグ リセ リ ドが わず か で あ るの と対 照 的 で あ る。 遊 離 脂 肪 酸 は種 子 の リパ ー ゼ活 性 と も関係 が あ っ て, か な り多 量 に定 量 され る種 子 もあ る。 ス テ リ ンは動 物 組 織 よ り もは る か に少 な く,し か もス テ リ ン配 糖 体 型 の も の が多 い の が特 徴 で あ る 。 ま た トウモ ロコ シ の よ うな有 ハ イ乳 種 子 の場 合,ハ イ(胚)と ハ イ乳 の脂 質 組 成 の間 に か な りの差 がみ られ,ハ イ で は トリグ リセ リ ドが大 部 分 を 占 め る が,ハ イ乳 部 で は,ト リグ リセ リ ドと とも に 遊 離 脂 肪 酸 が相 当量 存 在 す る。 ま た種 子 成 熟 期 に お け る脂 質 組 成 変 動 の一 般 的 傾 向 と し て は,成 熟 初 期 で は複 合 脂 質 が そ の主 体 で あ るが,種 子 の急 速 な充 実 期 に は い る と,ト リグ リセ リ ドの絶 対 量 と比 率 が 増 大 し,複 合 脂 質 や 遊 離 酸 の比 率 は急 減 す る。 ま た ステ リンお よび ステ リン エ ス テル,炭 化 水 素,モ ノ お よび ジ グ リセ リ ド な ど の 割 合 も,減 少 す る傾 向 に あ る23),30),31)。なお 複 合 脂 質 部 の組 成 上 の特 徴 につ い て は 後 述 す る° 2. 脂 肪 酸 一 般 の 植 物 種 子 で は,ヤ シ,ヒ マ,ナ タネ,ア ブ ラギ ヤ リな どの 例 外 を除 き,飽 和 酸 と して は パ ル ミチ ン酸,つ い で ス テ ア リ ン酸 が 多 く,不 飽 和 酸 と し て は オ レイ ン 酸,リ ノー ル酸,リ ノ レ ン酸 な どのC18不 飽 和 酸 が 主 体 で あ って,お もな 脂 肪 酸 の 種 類 は 比較 的 限 られ て い る。 しか し近 年Wo1ffお よび そ の共 同 研 究 者,Gunstone, Morris,Hopkinsら に よ り,新 しい機 器 分 析 法 を用 い て,多 数 の植 物 種 子 の 脂肪 酸 分 析 が行 な わ れ た結 果,特 殊 な植 物 の種 子 成 分 ま た は一 般 種 子 の微 量 成 分 とし て, 種 々 の変 わ った構 造 の脂 肪 酸 が 多数 発 見 さ れ る に 至 っ た1)∼3)。 98

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表-2 種 子 の 不 飽 和 脂 肪 酸a) a) 本表は各種植物種子中に発見 された不飽和脂肪酸 を,全 炭素数 と メ チ ル末端側の飽和連鎖炭素数 との関係 で分類 した ものであ る。欄 内の数字 は,該 当不飽和酸 の不飽和結合位置 を示 す。なお,tはtrans,yは 三重結合 を示 し,他 はcisま た は末端 メチ レン基 の二重結合 である。太字は種子で最 も普通 にみ られ る不飽和酸 であ る。 表-2 は今 まで 種 子 中 に 発 見 され た 偶 数炭 素 不 飽 和 脂 肪 酸 の大 部 分 を,炭 素 数 と二 重 結 合 位 置 に基 づ い て分 類 表 示 した もの で,種 子 の不 飽 和 酸 は9-不 飽 和C18酸 が 最 も一 般 的 で あ る こ とが一 見 し て 明 らか で あ る 。 ま た不 飽 和 結 合 の位 置 に規 則 的 な傾 向 が強 い こ と も 看 取 され る。 才 レイ ン酸,リ ノ ール 酸,リ ノ レン酸 の 間 で み られ る よ うに,9-不 飽 和 結 合 よ リメチ ル 末 端 側へ=CHCH2CH= 型 のcis-非 共 役 二 重 結 合 が 生成 し,ω9,ω6,ω3型 不 飽 和 酸 を つ くる か,エ レオ ス テ ア リン酸 の よ うに,同 じ く メ チ ル末 端 側 へ共 役 不 飽 和 結 合 を増 加 させ て い った と考 え られ る構 造 の もの が 多 く,こ れ らの構 造 的 な 関係 は, 植 物 種 子 に お け る不 飽 和 脂 肪 酸 の最 も一 般 的 な生 合 成 の 特 徴 を示 唆 す る もの で あ る4)。エ ル カ酸(ω9型)の13-不 飽 和 結 合 も、9-カ酸(ω9型)の13-不 飽 稲C18酸 か ら,カ ル ボ キ シ ル側 へ のC4の 鎖 長 延 長 の結 果 とみ る こ とが で き る 。 た と えば,成 熟 中 の ア マ種 子 のハ イ に つ い て行 な わ れ た酢 酸 塩-1-14Cの 取 込 み の実 験5)で も,ま ず オ レイ ン酸 とパ ル ミチ ン酸 に高 い放 射 能 が現 われ,こ れ が次 第 に リ ノー ル酸 や リ ノ レ ン酸 の方 に移 っ て ゆ くこ とが認 め られ た 。 ま た マ ロ ン酸 塩-2-14Cを 基 質 とす る と,オ レイ ン 酸 や パ ル ミチ ン酸 よ りス テ ア リン酸 の方 に多 く取 り込 ま れ た 。 した が って,こ れ らの脱 水 素 と炭 素 鎖 延 長 の反 応 は,そ の種子 固有 の酵 素 系 や そ の ほ か の諸 条 件 に応 じて 方 向 が決 定 づ け られ てい る よ うで あ る。 サ フ ラ ワー(ベ ニバ ナ)種 子(キ ク科,し た が っ て正 確 に はそ う果 で あ る)中 の リノ ール 酸 を オ レ イ ン酸 で置 き か え た高 オ ルイ ン サ フ ラ ワ ーや,ナ タ ネ種 子 の エル カ酸 を オ ルイ ン酸 と リノ ール 酸 で 置 き か え た無 エル カ酸 ナ タ ネ な ど の新 品 種 が近 年 作 出 され た が,こ れ らの事 実 も、 上 記 諸 脂 肪 酸 の 生 合 成 上 にお け る密 接 な連 関 性 を裏 書 きす る も の で あ る。 一 方 種 子 の発 芽 の場 合 は,著 者 ら の得 た 結 果 に よれ ば,脂 肪 酸 が無 選択 的 に分 解消 費 さ れ て い く傾 向 が 強 く,一 般 に発 芽 に よ る脂 肪 酸 組 成 の変 動 は軽 微 で あ り, わず か に発 芽 終 期 に お い て,生 成 し た葉 緑 体 の 脂 質 に基 づ く リノ ル ン酸 の増 大 が とき に見 られ る程 度 に す ぎ な い。 植 物 種 子 中 には 、 そ の ほ か に種 々 のオ キ シ酸,エ ポ キ シ酸,ケ ト酸,環 式 酸 な どが発 見 され て い るが,こ れ ら の酸 も,一 般 の不 飽 和 酸 と構 造 的 に も生 合 成 的 に も密 接 な関 係 を持 つ 。 表-3で は,最 も広 く種 子 中 に存 在 す る 9-不 飽 和C18酸 を例 に と って,近 縁衡 係 と思 わ れ る脂 肪 酸 を配 列 して み た 。 前 記 オ レイ ン酸,リ ノー ル酸,リ ノ レ ン酸 相 互 の 関 係 の ほか に,代 謝 的 関 係 が 明 らか に な っ

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710 油 化 学 表-3 種 子 に 含 まれ る9-不 飽 和 酸 系C18酸 の 不 飽 和 結 合 位 置a) a) tはtrans二 重 結 合,ほ か は す べ てcis結 合 で あ る 。 また 水 酸 基,ケ トン基,エ ポ キ シ基,シ ク ロ プ ロペ ン環 な ど の位 置 も示 した 。 b) ス テ ル ク リン酸 はC19酸 で あ るが,生 合 成 の上 で はC18酸 と関係 が 深 い の で,特 に こ こに 記載 した 。 て い る も の も多 い2),4)。た と えば 成 熟 中 の ヒマ種 子 中で は,リ シ ノ ー ル 酸 はオ レイ ン酸 か ら生 合 成 され る こ と が6),ま た ア オ ギ リ科,ア オ イ 科 植 物(ゼ ニ アオ イ,ワ タ な ど)で は,ス テ ル ク リン酸 が オ レイ ン酸 また はオ ク タデ シ ン酸 と メ チオ ニ ン とか ら 生 合 成 され る こ と7),8)が そ れ ぞ れ 証 明 され て い る。 な お 奇 数 炭 素 脂肪 酸 もい くらか 発 見 され て い るが,一 般 に微 量 で あ る。 ま た ア レ ン型 不 飽 和酸 や,主 と して葉 緑 体 脂 質 に存 在 す るtrans-3-不 飽 和 酸 な どが,特 殊 な 種 子(主 として キ ク科 のそ う果)9)に 発 見 され て い るの も 注 目 され る。 同一 植 物 種 子 で も,グ リセ リ ドと複 合 脂 質 の 脂 肪酸 組 成 は必 ず し も類 似せ ず,両 者 の生 体 内 に お け るア シ ル化 の 特 異 性が 認 め られ る 。 ナ タ ネ種 子 グ リセ リ ドで は エ ル カ酸 が 主成 分 で あ る が,そ の リ ン脂 質 部 で は エ ル カ酸 含 有 量 が微 量 で あ り,リ ノ ー ル酸,オ レイ ン酸,パ ル ミチ ン酸 が 主成 分 で あ る10),11)。ま た ヒマ種 子 で も,グ リセ リ ドの 主構 成 脂 肪 酸 で あ る リシ ノ ール 酸 は,リ ン脂 質 部 で は存 在 しな い と報 告 され て い る10)。 3 グ リ セ リ ド お よ び ジ オ ー ル 脂 質 3・1 グ リセ リ ド トリグ リセ リ ドは種 子 の主 要 成 分 で あ っ て,そ の グ リ セ リ ド組 成 に 関 して は以 前 よ り詳 細 な研 究 が な され て き た12),13)。近 年 にな ってBrockerhoff14)そ の他 の研 究 者 に よ り トリグ リ セ リ ド の立 体 特 異 分 析 法 が 開発 され, 5n-グ リセ リン のC-1,C-2,C-3各 位 置 に結 合 す る 脂 肪 酸 の組 成 が 明 らか に され る と とも に,グ リセ リ ド分 析 で,薄 層 お よ び ガ ス ク ロマ トグ ラ フ ィ ー が効 果 的 に用 い られ た結 果,種 子 油 の グ リセ リ ド型 分 布 を容易 に知 る こ とが で き る よ うにな っ た13)。 そ れ らの 結 果 を要 約 す る と,植 物 種子 トリ グ リセ リ ドで は,一 般 的 傾 向 と して,1,3位 置 に飽 和酸 ま た は長 鎖 酸(3位 置 の方 が1位 置 よ り長 鎖 酸 が多 く結 合 し て い る 場 合 が多 い),2位 置 に 不 飽 和 酸 が集 ま る 傾 向 が 強 い。 しか も動 物 油 脂 の 場 合 と異 な り,1,3両 位 置 の脂 肪 酸 組 成 は比 較 的 類 似 し てい る15)。 た だ し両 位 置 の脂 肪 酸 組 成 が完 全 に同 一 組 成 とい うわ けで はな く, や は り そ れ ぞ れ 特 異 的 で あ り,ま た 個 々 の ト リグ リセ リ ド分 子 自 体 が 対 称 型 グ リセ リ ドで あ る と い うわ け で も な い 。 ス イ 臓 リパ ー ゼ お よ び ホ ス ホ リパ ー ゼA以 外 にGeo-trichum candidumの リパ ー ゼ を 併 用 す る 新 し い 立 体 特 異 分 析 法 に よ っ て,カ カ オ 脂 の 主 成 分 ト リ グ リ セ リ ド はrac-glyceryl-1-palmitate-2-oleate-3-stearateで あ る こ と が 明 ら か と な っ た16)。 そ の 他 ヤ シ 油 で は ラ ウ リ ン 酸 は2位 置 に 比 較 的 多 く17),ま た ベ ル ノ ー ル酸(cis-12, 13-epoxy-cis-9-octadecenoic acid)を 含 む 種 子 油 は, 一 部 の もの を除 き,主 と して2位 置 に ベル ノ ール 酸 が集 ま る傾 向 が あ る18)。 特 殊 な グ リセ リ ドと して,1,2-ジ ア シル-3-ア セ チ ン (モ ノ ア セ ト トリグ リセ リ ド)が ニ シ キ ギ科 植 物 種 子 グ リセ リ ドの主 成 分 と して広 く分 布 す る19)。オ キ シ酸 を含 む グ リセ リ ドの 中 に は,オ キ シ酸 の水 酸 基 の一 部 が ア シ ル 化 され た もの が あ る。 た とえ ば ジ ャニ ン ジ ン(ア ブ ラ ナ 科)種 子 はC18∼C24の オ キ シ-ア セ トキシ 脂 肪酸 をd 位 に結 合 し た トリグ リセ リ ドを含 む20)。 ま たMonnina emarginata(ヒ メハ ギ科)種 子 に は,グ リセ リ ドのd 位 に(S)-13-hydroxy-cis-9,trans-11-octadecadienoic acidを 結 合 し、 そ の13-水 酸 基 が さ ら に ほか の長 鎖酸 と エ ステ ル 結 合 し た"四 酸 基"型 グ リセ リ ドが 存 在 す る21)。 成 熟 過 程 にお け る種 子 中 の ト リグ リセ リ ドは,通 常 外 観 的 に種 子 の急 激 な成 長 が 起 こ る時 期 に,そ の 急速 な増 加 が認 め られ る。 開 花 後 間 もな い 成 熟 初 期 段 階 で は,複 合 脂 質 や 遊 離 酸 な どが 脂 質 の 主 体 をな して お り,グ リセ リ ドは微 量で あ るが,こ の 急 激 な 成 長 の 時 期 以後 で は, 比 率 的 に も,ま た 絶 対 量 の 上 で も ト リグ リセ リ ドが圧 倒 的 に多 くな り,ト リグ リセ リ ドの 組 成 自体 も顕 著 な変 化 を示 す こ とが 多 い 。 この 時 期 は 品 種,生 育 条 件,気 候 な 100

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全 エステル型脂 質に対す る各庸質の 占める割合 を,ユ ステル結合量 の比 率 として表 示 した。N3,リシノール 酸以外の η脂肪 酸だけか ら戚 るトリグ リセ リ ド;N2R,モ ノリ シノ レオトリグリセリド;NR2,ジ リシノレオ トリグリセ リド;R3,ト リリシノレイン;MG, モノグリセリド;PL,極性脂 質(複合脂質)。 図-1 成 熟期における ヒマ種子 エステル型脂質の組成変化23) どに よ って も ちろ ん 差 異 が あ るが 、 た と えば 大 豆 で は開 花 後50日 前後22),ヒ マ で は14∼21日23),ベ ニ バ ナ(サ フ ラ ワー)で は7∼10日,ヒ マ ワ リで は7∼14日 の こ ろ で あ った 。 た しか に成 熟 過 程 にお い て,生 合 成 され て く る 脂肪 酸 の 種類 と量 の 変 化 に応 じて,個 々 の ト リグ リセ リ ドの 量 や 比 率 も変 化 して ゆ く こ と が 認 め られ る22),23) (図-1)。 プ レ ー ト,Silica gel G-硝 酸 銀; 溶 媒,ベ ン ゼ ン-エ ー テ ル(8:2); 検 出,2',7'-ジ ク ロ ル フ ル オ レ セ イ ン;グ リセ リ ド構 成 脂 肪 酸 略 号: S,飽 和 酸;O,オ レ イ ン 酸;L,リ ノ ー ル 酸;Ln ,リ ノ ル ン酸 。 しか し ト リグ リセ リ ド 分 子 中 に お け る各 脂 肪 酸 の 位 置 特 異 的 な そ の 種 子 個 有 の 分 布 傾 向 は,各 成 熟 段 階 を通 じ あ ま り変 わ らな い よ うで あ る22)。 一方 種 子 発 芽 過 程 にお け る ト リグ リセ リ ドの組 成 変化 は 顕 著 で な く, 種 々 の ト リグ リセ リ ド型 の もの が 一 様 に消 費 され て ゆ く傾 向 が 強 い 。 た だ 量 的 に は 種 ま き後1週 間 ほ どの 間 に急 速 に 減 少 し,代 わ って 複合 脂 質 や 遊 離 脂 肪 酸 の 比 率 が 増 加 す る。 種 子 の グ リセ リ ド組 成 分 析 法 ど して は,前 述 の よ う に薄 層 お よ び ガ ス ク 図-2 大豆油 トリグ リセ リ ドの ロ マ トグ ラ フ ィー と リパ 薄層 クロマ トグラフ ィー ー ゼ 分 解 と を組 み 合 わ せ た方 法 が と くに有 効 で あ る。 グ リセ リ ドを そ の ま まで 昇 温 ガ ス ク ロ マ トグ ラ フ ィ ーで 分 離 す る方 法 は,と くに低 級 酸 を含 む ト リグ リセ リ ドの相 互 分 離 に効 果 的 で あ り24) 硝 酸 銀 薄 層 ク ロ マ トグ ラ フ ィ ー は不 飽 和 植 物 種 子 グ リセ リ ドの相 互 分 離 に広 く利 用 され てい る22),25),26)(図-2)。 3・2 ジ オ ール 脂 質 動 物 界 に広 く存 在 す る エ ーテ ル 型 結 合 を持 つ 中 性 脂 質 (た とえ ば ジ ア シル グ リセ リル エ ーテ ル な ど)は,植 物 種 子 で は きわ め て まれ に しか 発 見 され てい な い 。 ま た 最 近 脂 質 成 分 と して の 存 在 が 認 め られ て きた ジ オ ー ル 脂 質 (diol lipid)27)の 発 見 例 も少 な い が,ジ ュズ ダ マ(イ ネ 科)種 子 中 に存 在 す るerythro-butane-2,3-diolの 脂 肪 酸 エ ステ ル28),ヒ マ ワ リ,ト ウモ ロ コシ種 子 中 のneutral diol Plasmalogen(I)27),29)そ の ほ か が 報 告 され て い る。 H2C-O-CH=CH-R H2C-O-CO-R' (I) 4 複 合 脂 質 4・1 リン脂 質 お よび 糖 脂 質 組 成 種 子 の リン脂 質 お よ び 糖 脂 質 組 成 の特 徴 を示 す た め, 表-4お よ び 表-5を 掲 げ る。 動 物 組 織 と比 べ て の 顕 著 な 差 は,ま ず ス フ ィ ン ゴ脂 質 が 少 な く,グ リセ ロ脂 質 が 大 部 分 を 占 め る こ とで あ る。 つ ぎ に グ リコシ ル グ リセ リド 型 の 糖 脂 質 とス テ リン配 糖 体 類 が 比 較 的 多 量 存 在 す るこ とが 注 目 され る。 ま た 葉緑 体 の 脂 質 を主 とす る葉 の複 合 脂 質 との 差 異 と して,sulfoquinovosyl diglycerideや ホ ス フ ァチ ジ ル グ リセ リン(phosphatidyl glycerol)が 種子 で は ほ とん どな い か,ま た は 非 常 に 少 な く,他 方 ス テ リン配 糖 体 類,セ レブ ロシ ド,phytoglycolipidな ど が 葉 よ り多 い こ とが 指 摘 で き る。 ま た,ガ ラ ク ト脂 質 の う ち,ジ ガ ラ ク トシル ジ グ リ セ リ ド(digalactosyl diglyceride)の 比 率 が か な り大 で あ る31)こと も,葉 との 表-4 複 合脂質組成の特徴(%) a) リン 脂質 組 成 の詳 細 は別 に 表-5で 示 す 。 b) Phytoglycolipidは リン脂 質 の一 種 と して も分 類 で ぎ るが, こ こで は そ の 他 の 脂質 と と もに別 項 に 記 載 した 。 と くに種 子 に 多 い 。 c) チ オ配 糖体 系 糖 脂質 を も含 む 。

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712 油 化 学 表-5 リン脂 質 組 成 の特 徴(%) 相 違 点 で あ る 。 し た が っ て 種 子 の 複 合 脂 質 は,リ ン脂 質 と し て は ホ ス フ ァ チ ジ ル コ リ ン(phosphatidyl choline レ シ チ ン),ホ ス フ ァ チ ジ ル エ タ ノ ー ル ア ミ ン(phos-phatidyl ethanolamine),ホ ス フ ァ チ ジ ル イ ノ シ ッ ト (phosphatidyl inositol)の3種,糖 脂 質 と し て は モ ノ-お よ び ジ ガ ラ ク トシ ル ジ グ リ セ リ ド お よ び ス テ リ ン 配 糖 体 類(ア シ ル ス テ リ ン 配 糖 体 を 含 む)の3種 が 主 体 で あ り,そ の ほ か セ レ ブ ロ シ ド,phytoglycolipidな ど が い くぶ ん 目 だ っ た 存 在 で あ る と い え よ う32)。 こ れ ら の 種 子 複 合 脂 質 の 大 部 分 は,ト リ グ リセ リ ド と は 違 っ て,細 胞 の 各 種 膜 構 造 部 に,い わ ゆ る 機 能 脂 質 と し て 存 在 し て い る も の と 見 ら れ る 。 お そ ら く複 雑 な 構 成 の リポ タ ンパ ク 質 や リボ 多 糖 類 の 形 で 存 在 し て い る と 思 わ れ る が,現 在 な お そ の 実 態 は ほ と ん ど 明 ら か で な い 。 最 近 種 子 に 広 く分 布 す る 特 徴 あ る リ ン脂 質 と し て,N-ア シ ル ホ ス フ ァ チ ジ ル エ タ ノ ー ル て,N-ア ミ ン(N-acyl phos-phatidyl ethanolamine)が 大 豆,小 麦,エ ン ド ウ,カ ラ ス ム ギ,ア ブ ラ ナ 科 植 物 な ど の 種 子 よ り発 見 さ れ た33)∼35)。 こ の リ ン脂 質 は エ ン ド ウ種 子 の 発 芽 初 期 に 急 速 に 消 失 し て ゆ く こ と が 認 め ら れ て い る33)。 そ の ほ か 小 麦 粉 よ り6-O-ア セ チ ル ガ ラ ク トシ ル ジ グ リ セ リ ド(6-O-acetyl

ga-lactosyl diglyceride)が 発 見 さ れ た36)。 種 子 の セ レ ブ ロ シ ド は 主 と し て グ ル コ セ レ ブ ロ シ ド (N-acyl-β-D-glucopyranosyl(1-1')-phytosphingosine) で あ る 。 ま たphytoglycolipidの 構 成 長 鎖 塩 基 も フ ィ ト ス フ ィ ン ゴ シ ン(D-ribo-1,3,4-trihydroxy-2-amino-octadecane)で あ っ て,一 般 に 種 子 の ス フ ィ ン ゴ 脂 質 の 長 鎖 塩 基 はC18の フ ィ ト ス フ ィ ン ゴ シ ン ま た は デ ヒ ド ロ フ ィ トス フ ィ ン ゴ シ ン35)を 主 体 と す る が,C16∼C20の 類 似 の 長 鎖 塩 基 も 少 量 発 見 さ れ て い る37)。 種 子 の 複 合 脂 質 の 分 離 定 量 に は,カ ラ ム11),35),39),薄 層35),40),41)お よ び ガ ス ク ロ マ トグ ラ フ ィ ー が 効 果 的 に 利 用 さ れ て い る 。 薄 層 ク ロ マ トグ ラ フ ィ ー に よ る 分 離 例 を 図-3 に 示 す 。 4・2 脂 肪 酸 分 布

プ レー ト,Silica gel H;発 色,K2Cr2O7-H2SO4噴 霧 後 加 熱 脂 質 略 号:NL,中 性 油 脂;FA,脂 肪 酸;PA,ホ ズ7ア チ ジン酸; ESG,ア シル ステ リン 配 糖 体;APE,N-acyl phosphatidyl ethanolamine; MGD, monogalactosyl diglyceride; SG,ス テ リン配 糖 体;CE, セ レブ ロ シ ド;PE,phosphatidyl ethanolamine;PG, phosphatidyl glycerol; DGD, digalactosyl diglyceride; SL, sulfoquinovosyl diglyceride;PC,phosphatidyl cboline(レ シチ ン);PS, pbosrbatidyl serine;PI, pho3phatidyl inositol;X,未 確 認 化 合物;O,原 点

図-3 未 成 熟 大 豆 複 合 脂 質 の 二 次 元 薄 層 ク ロ マ ト グ ラ フィ ー35) ナ タ ネや ヒマ種 子 に見 られ る よ うに,種 子 リ ン庸 質 の 脂 肪 酸 組 成 が,同 一 種 子 の トリグ リセ リ ドの脂 肪 酸 組 成 に影 響 を受 け ない 独 自の組 成 で あ るこ とはす で に前 述 し た10),11)。ま た 同一 種 子 の 複 合 脂 質 個 々 の 種 類 に よ っ て も脂 肪 酸 組 成 に差 異 が見 られ る31)のは,そ の機 能 脂 質 と して の 役 割 や,生 合 成 にお け る ア シル 化 また は脱 水 素 反 応 の 特 異 性 に よ る も ので あ ろ う。 た と えば 一 般 にガ ラ ク ト脂 質 部 には リノ レ ン酸 また は リノー ル 酸 が 多 く集 ま る 傾 向 が 強 く,ま た ナ タネ 種 子11)や落 花 生42)でみ られ た よ うに,ホ ス フ ァチ ジ ル イ ノシ ッ ト,ホ ス フ ァチ ジ ル エ タ ノー ル ア ミ ン,ホ ス フ ァチ ジル セ リン(phosphatidyl serine)な どが他 の成 分 脂 質 よ り も パ ル ミチ ン酸 を と く に 多 く含 む傾 向 が あ るな ど,脂 肪 酸 組 成 の特 異 性 が認 め られ る。 が い して種 子 リ ン脂 質 で は,同 一 種 子 の トリグ 表-6 レシチンの脂肪酸分布45)(wt%) a) 構 成 脂 肪 酸:S ,飽 和 酸:M,モ ノエ ン酸:D,ジ エ ン酸: T,ト リエ ン酸 102

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リセ リ ドよ り も飽 和 酸 の比 率 が 多 い よ うで あ る31),42)。 種 子 複 合 脂 質 に お け るsn-グ リセ リル 基 の1,2位 置 (α,β 位 置)に 結 合 す る脂 肪 酸 の分 布 もき わ め て特 異 的 で あ る。 一 般 に β位 は ほ とん ど不 飽 和 酸 で 占 め られ,飽 和 酸 は α 位 に集 ま る傾 向 を持 つ43)∼45)。した が って表-6 の よ うに,リ ノ ール 酸 を主 体 とす る種 子 で は,α 位 に飽 和 酸,β 位 に不 飽 和 酸 を持 つ レ シ チ ン と,両 位 置 に不 飽 和 酸 を持 つ レ シチ ン とで そ の大 半 が 占 め られ て い る 。 ま た ガ ラ ク ト脂 質 で も類 似 の 傾 向 が み られ る。 この よ うな 脂 肪 酸 分 布 は,前 述 の植 物 種 子 トリグ リセ リ ドの 脂 肪酸 分 布 と軌 を一 に す る もの で,生 合 成 の面 で の グ リセ ロ複 合 脂 質 とグ リセ リ ドとの 密 接 な 関 係 を物 語 る もの で あ る。 しか し,こ の よ うに 特 定 位 置 に特 定 脂 肪 酸 が導 入 され る機 構 に つ い て は,ア シ ル化 酵 素 の 特 異 性 に よる もの と想 像 され て い るが,種 子 に お け る具 体 的 な 証 明 は現 在 ま で な され て い な い 。 4・3 成 熟 中 の組 成 変 化 一 般 的 傾 向 とし て,複 合 脂 質 の全 脂 質 に 占 め る 比 率 は,前 述 の よ うに 開花 直 後 が最 高 で,グ リセ リ ドの 生成 と と も に急 減 す る が,そ の絶 対 量 は む し ろ種 子 の充 実 が 盛 にな る こ ろ に最 大 と な り,以 後 完 熟 期 に は い って低 下 す る。 こ の量 的 に最 大 とな る時 期 は リン脂 質 の方 が い く らか 早 い 。 た と えば トウモ ロ コ シで は受 粉 後30目 で リ ン脂 質 量 は最 高 とな り,45日 で 糖 脂 質 量 が 最 高 とな っ た31)。 こ の傾 向 はベ ニ バ ナ(サ フ ラ ワ ー),ヒ マ ワ リな どで も同 様 に見 られ た 。 これ らの 変 動 は種 子 に お け る フ ィチ ンお よ び デ ンプ ンの 生 合 成 とそ れ ぞ れ 関 係 が あ る の で は な い か と想 像 され て い る31)。 ま た 開花 後30日 の 大 豆 未 成 熟 種 子 を 使 っ た33Pと 14Cの 取 込 み の 実 験 で は,33Pは ま ず最 初 ホ ス フ ァチ ジ ン酸 に 多量 に 取 り込 ま れ,つ い でN-ア シ ル ホ ス フ ァ チ ジル エ タ ノ ール ア ミン(APE)の 方 に放 射 能 が 急 速 に Na2H33PO4注 入 後 の未 成熟大 豆種 子 リン脂 質部 の もつ全 放 射 能(cpm)に 対 す る,各成分 リン脂 質 の放射 能 を百分 率 で表 わ した。 リン脂 質 の略号 は図-3と 同 じ。 図-4 リ ン 脂 質 間 に お け る 放 射 能 分 布 の 時 間 的 変 化35) 移 行 して い くこ とが認 め られ(図-4),APEが 未 熟種 子 に多 く,成 熟 す る に つ れ て減 少 す る事 実 と も考 え合 わせ て,こ の リン脂 質 が種 子 の成 熟 中 の代 謝 に 関係 深 い もの と推 定 され て い る。 一 方 糖 脂 質 の方 へ の酢 酸 ナ トリ ウム -1-14Cの 取 込 み は ,代 謝回転の速 い リン脂質 に比べ て 非 常 に遅 い こ とが わ か った35)。 4・4 シ ア ン脂 質 最 近Mikolajczakら46),47)に よっ て,ム ク ロジ科 お よ び ム ラサ キ科 植 物 の種 子 油 か ら新 しい型 の脂 質,シ ア ン 脂 質(cyanolipid)が 発 見 され,そ の構 造 が 明 らか に され た。本 脂 質 は不 飽 和 イ ソ プ レ ノイ ドーオ キ シ ニ トリル の脂 肪 酸 エ ス テ ル で あ って,(II)∼(V)の4種 の構 造 の もの が あ り,含 有 量 は全 油 脂 中 の13∼55%に 達 す る(種 子 油 中 の 含 有 量(%)は,た と え ば ム ク ロ ジ科 植 物 の フ ウ セ ン カズ ラで は(II)49%,(III)6%;モ ク ゲ ンジ で は (III)25%,(W)17%)。 脂 肪 酸 はC20の モ ノエ ン酸 が と くに 多 い の が 特 徴 で,そ の ほ か にC18-モ ノエ ン酸 お よ び ア ラ キ ン酸 をか な り持 っ てい る も の も見 られ る。 以 上 の よ うな イ ソプ レ ノイ ド骨 格 を持 つ 脂 質 は,グ リセ ロ 脂 質 や ス フ ィ ンゴ脂 質 とは生 合 成 的 に も別 系 統 の脂 質 と 考 え られ る 。 (II) (IV) (III) (V) そ の ほか,ク ス ム油 に も構 造 未 確 定 の別 種 の グ リセ リ ド含 有 シ ア ン脂 質 が 存 在 す る とい われ る48)。 5 ロ ウ,ス テ リ ン,そ の 他 ロ ウの含 有量 は 葉,茎,果 皮 に比 べ て,種 子 で は 比較 的少 な い 。 ロ ウエ ス テ ル の ほ か,炭 化 水 素,高 級 ア ル コ ー ル 、脂 肪 酸,長 鎖 カ ル ボ ニ ル化 合 物,ス テ リ ン,テ ル ペ ン な ど と共 存 す るの が普 通 で,お もに種 実 表 面 の保 護 に あ た る。C20以 上 の 長 鎖 で 飽 和 の もの が 多 い 。 た とえ ば ヒマ ワ リ油 中 に見 い だ され る ロ ウエ ス テ ル は,脂 肪 酸 はC20:0,C22:0,長 鎖 アル コ ール はC24:0,C26:0を それ ぞ れ 主 成 分 とす る49)。 これ らの長 鎖 アル コ ール やn-パ ラ フ ィ ン は,脂 肪 酸 鎖 の鎖 長 延 長 と,そ れ につ ぐ還 元 ま た は脱 カル ボ キ シル に よ っ て生 成 され る と考 え られ てい る50)。な お,き わ めて まれ に種 子 の細 胞 内 成 分 と して も ロ ウ を多 量 含 む も の が あ る。 ス テ リン類 はお も に遊 離 ス テ リン,ス テ リン脂 肪酸 エ ス テ ル,ス テ リン配 糖 体 お よ び そ の脂 肪 酸 エ ス テ ル,フ ェル ラ酸 エ ス テ ル な どの 形 で 細 胞 内 成 分 ど して 広 く分 布 し,種 子 で は ス テ リン配 糖 体 系 の もの が 多 い51)。種 子 に

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714 油 化 学 お け る ス テ リン の種 類 とし て は,β ーシ トステ リン が最 も 広 くかつ 多 量 に分 布 し,つ い で スチ グ マ ステ リン,カ ン ペ ステ リン が多 く,ア ブ ラナ 科 植 物 種 子 で は,そ の ほか に ブ ラ シ カ ステ リンが 相 当量 存 在 す る。 コ レ ステ リンそ の ほ か の ステ リン も微 量 発 見 され る場 合 が あ る。 ステ リ ンが ト リテ ル ペ ン と とも に通 常 種 子 のハ イ 部 に多 く52), 発 芽 に際 し てそ の比 率 が 増 加 して ゆ く傾 向 が あ る こ と は 注 目す べ き点 で あ る。 ト リテ ル ペ ン類 も案 外 に多 く,ス テ リンの 数 分 の一 な い し同 量 程 度 広 く種 子 に含 ま れ て い る52)。一 般 に植 物 ス テ リン生 合 成 中 間 体 の シ ク ロ アル テ ノー ル と24-メ チ レ ン シ ク ロ アル タ ノー ル が 主 体 で,シ ク ロア ル タ ノー ル そ の ほ か が 少 量 存在 す るの が普 通 で あ る。米 ヌ カか らは そ の ほ か に シ ク ロブ ラ ノー ル(24-methyl cycloartenol) ほ か 数 種 の新 ト リテ ル ペ ンが 発 見 され た54),55)。ま た 種 子 に は α-およ び β-アミ リン も広 く存 在 す る52)。 米,小 麦 な どの イ ネ科 植 物 種 子 のハ イ に は,こ れ らの ス テ リ ンや トリテ ル ペ ン類 の フ ェル ラ酸 エ ス テ ル お よび フ ェル ラ酸 メチ ル が広 く 分 布 す る53)∼56)。ま た高 級 ア ル コー ル の フ ェル ラ酸 エ ス テル もア マ ニ油 とナ タ ネ 油 か ら 発 見 され て い る57)。さ らに ナ タ ネ種 子 に は,フ ェル ラ酸 に近 似 した構 造 を も つ シ ナ ピ

ン酸(4-hydroxy-3,5-di-methoxy cinnamic acid)と そ の メ チル エ ス テル,お よ

び シ ナ ピン酸 含 有 チ オ配 糖 体 型 糖 脂 質 が発 見 され た58)。 ス テ ロイ ド生 合 成 中間 体 と して重 要 な ス ク ワ レン は, 少 量 な が ら広 く種 子 中 のイ ソ プ レノイ ド系 炭 化 水 素 と し て分 布 し,種 子 の不 飽 和 炭 化 水 素 の主 体 を なす52)。 種 子 の カ ロチ ノイ ドは,た とえ ば ワタ の場 合 は,ル テ イ ン(全 カ ロチ ノイ ドの40.7%)が 種 子 で 最 も多 く, イ ソル テイ ン,ネ オ ク ロ ー ム が これ につ い で お り,カ ロ チ ン炭 化 水 素 が少 な い。 これ は ワ タ の葉 が β-カロ チ ン (21.2%)と ル テ イ ン(25.2%)を 主 とす る の と対 照 的 で あ る。 し か しこ の種 子 が 発 芽 す る と,カ ロ チ ノイ ドの生 合 成 中間 体 で あ る フ ィ トエ ンが 急 増 し,同 時 に βーカロ チ ン も増 加 す る59)。落 花 生 未 成 熟 種 子 で も同 様 にル テ イ ン が多 い60)。ま た カ ロチ ノイ ド生 合 成 中 間 体 の一 つ で あ るgeranyl geraniolが,フ ィ トー ル と と も に ア マニ 油 お よび 落 花 生 油 不 ケ ン化 物 中か ら発 見 され て い る61)。 種 子 の トコ フ ェ ロ ール 類 の 分 布 につ い て トウモ ロ コ シ 種 子 で 調 べ た 結 果 に よ る と,全 トコ フ ェ ロ ール の70∼ 86%ま で がハ イ に あ り,し か も α-トコ フ ェ ロ ール の 94∼96%ま で が ハ イ に集 中 して い る こ とが わ か っ た62)。 そ の ほか,セ サ ミ ン,セ サ モ リン,ゴ シポ ー ル な どの 特 殊 成 分 につ い て は,す で に よ く知 られ て い るの で 省 略 した 。 (昭和46年5月10日 受理) 文 献

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参照

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