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香川県の爬虫類-香川大学学術情報リポジトリ

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Academic year: 2021

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香 川 県 の 爬 虫 類

川 田 英 則

762 坂出市王越町 香川県自然科学館

A List of Class Reptiliain Kagawa Prefectur’e,Japan

HidenoriKAWATA,Kagawa丹efectwalScienoeMuseu勒Ogoshi,Sakaide762,]卸α耽

香川県の爬虫類については,特定種や特定地 域における浦上(1939),金閑(1974),立石 (1974)および川田(1979a・b,1980a・b, 1981a†b・C∵d・e)の断片的調査や記載だけで あり,爬虫粁全般に関する記載は,皆無である。 筆者自身も現在のところ香川県全域にわたっ て爬虫類相を調査していないが,若干の標本を 集積しつつある。そこで,本報では不十分であ るが,これまでの調査と香川県自然科学館およ び香川大学教育学部生物教室所蔵の標本の計測 等も行ない,あわせて従来の報告を加え,県下 の爬虫類について知見を総括した。これによっ て,今後の研究の基礎とすることを試みた。 本文に入るに先立ち,懇切な校閲を賜わった 香川大学教授植松辰美博士,助教授金子之史博 士および県下の爬虫類に閲す・る情報を提供して いただいた高松市立紫雲中学校教諭,立石 清 氏に対し感謝の意を表する。

カメ目 TESTUDINm

香川県で記載されているカメ類は,海産のア カウミガメ,淡水産のイシガメ伽●β仇y8 ブ叩0ケも宜¢α,クサガメ,スッボンの4種である。 浦上(1939)は,イシガメが各地に生息する普 通の種類であるけれども,香川県には特別に多 くいると記している。また,金関(1974)は平 野部に生息しているカメで,クサガメ10頭∼20 頭に対して,イシガメは1頭の割合で見られる。 クサガメはくびすじなどに緑黄の斑があり,イ シガメは黒−・色だから,一・見してすぐ区別でき るとしている。しかし,クサガメには,頭部か ら頸部にかけて黄色の不規則な縦粂がなく,黒 化した個体が混じっている。また老熟した個体, 特に雄にとっては,この黒化はむしろ普通に出 る現象であるという記載がある(千石,1979)。 そこで,筆者が県下で−・般に“イシガメ”とい われている個体を同定した限りではすべてクサ ガメであった。筆者の今までの調査では,イシ ガメの生息は確認されていない。 ウミガメ科 Cheloniidae アカウミガメ α8γβ≠吉αβαγβ£才αg宜gαさ 1977年に備讃瀬戸区域で,漁業用の網にかか ったものが3個体確認された。次の標本は,香 川県自然科学館に所蔵されている(KSM。AR O247)。1977年10月9日,丸亀市土器川河口で 描獲。体重1133kg,全長120cm,甲長86cm,甲 幅70cm。背甲に8cmと6cmのカメ■7ジッポ CんβgOケもゐ宜α才βg£触窟壱ヶ狙わα 2個体が付着して いた。また,解剖の際胃内には多量の貝類がみ られた。 カメ科 Testudinidae クサガメ C九古雅β竹材さγβ印¢β宜 県下の溜池,水田および河川の支流等に生息 しており,寺や神社の掘にいるものも本種であ る。クサガメの特徴は,後頭部から後方にかけ て皮膚が細かい鱗に分かれている。背甲軋 幼 ガメでも3本の隆粂がはっきりしている。また, イシガメの背甲の後緑がギザギザしたのこぎり 状を呈しているのに対して,クサガメはわずか な凹凸があるだけである(千石,1979)。川田 (1980b)では,夏期,夜間になると,水溜り に隣接する畑に出現し,スイカやウリを盛んに 食べていた。与島で採描した9個体(KSM.A ROOOl∼KSM。AROOO9)のうち,1個体(K SM.AROOO2)は頸部に黄色の縦条がない異 化塾であった◇ スッポン科 Trionychidae スッポン 7サゐ叩∬8勿β彿βゐJαpOナ乙宜¢≠さ −29−

(2)

島・手島・粟島の6つの島から記録されている (川臥1981d)。未調査の他の島々にも生息 している可能性は大きい。 近縁種のこホンヤモリの鱗には,大きい鱗が 混じっているのに対して,タワヤモリの.それは, −・様に細かいど−・ズ状の鱗におおわれているの が特徴である。また,人家密集地に多く生息し ているニホンヤモリに対してタワヤモリは,自 然海岸の比較的乾燥した海食産や低山地のマツ 林の露岩地に生息している(川田,1981d)。 柴田(1980)は,この種が自然海岸(岩崖)の 自然度指標種となる可能性を指摘している。 ニホントカゲ 助刑βCβさ 払£宜8¢つ戚α£%さ 県下での目撃場所は,日当りのよい林周辺の 石垣,畑のあぜや基地である。島し上部でも生 息しており,与島では五色台より単位時間あた りの目撃個体数が多い。土器川水系地域の目撃 回数はカナへどに比べて少なく,それらと同一 地域内で確認された(川軋1981e)。 カナヘビ 7b細か囲も鵬 fα¢吻dγ0仇0滋gβ8 分布はニホントカゲより広くまた個体数も多 い。県内ではニホントカゲと混同して‘‘トカゲ’’ といわれている。生息地は,アカマック勿祝さ dβ那研0γα・ヒサカキ林助γ釘αJαpOケも壱βαア ベマキQ%βγ¢%gγαγ宜αゐ宜gゐ・クヌギ林Q. αβ%f由∂五〝犯やその周辺の草地,住宅地の庭園 内の草地などである。五色台の山道で,ほぼ同 じ場所(約1m2)で4∼5個体の幼体を同時に 目撃するときがある。 1980年10月3日,仲多度郡琴南町石篭でシマ へどが本種を捕食しているところを目撃した。 タカチホヘビA¢九αg宜雅%∂さpわ犯∼ゐ 本種は,立石(1974)によって香川県ではじ めて生息が記録された。香川県では,珍種に属 し,標本を授示して聞き込みをおこなっても, −・般の人々は知らない。石や倒木の下に潜み, 夜間に活動するので人目につきにくいためと考 えられる。夜間,山麓や山中の道で単にひかれ て死んでいるへどの中にときどき混じっている。 我国における全長の最大記録53cⅢ(千石,1979),

本県産の最大記録46cm(KSMいARO177,1981年

9月3日,五∵色台古田で採捕)が示すように小 県下の各地の溜池では秋から冬にかけて,水 を抜き,コイC財pγ五彿%さCαγが0・フナ(九γαβざ− あばSpl・等を漁獲する。その際,まれにスッボ ンが採挿される。標本として保管されているの はまれで,ほとんどスッボン料理として食用に なっているらしい。 1974年7月,塩江町の溜泡で描獲されたホル マリン液演標本(香川大学教育学部生物学教室 所蔵)の本種の計測値を次に示しておく。体重

1850g,甲長243mm,甲幅206mm。

トカゲ目 SQUAMATA

ヤモリ科 Gekkonidae ニホンヤモリ Gβ丘加ブ叩0彿宜¢祝さ 本種は,夏期人家の窓・門灯等の建造物周辺 でよく見かける。川田(1981d)の調査による と,都市部の人家密集地では普通に目撃できる。 港のある人家密集地をもつ観音寺市,仁尾町, 多度津町,坂出市,津田町等での目撃率が高い。 しかし,山間部では極めて低いか皆無である。 筆者は,その要因として,この種が人為的に荷 物などに付着して中国大陸から侵入したのでは ないかと考えた。 産卵数は2個で,本土では戸袋などに産みつ けられる(千石,1979)。高松市香西西町,神 宮寺山(標高78m)の頂上から約20m南へ下り たところに巨岩(径約3∼6m)が散在したギ ョウカイ岩の露岩地がある。その周辺には,5 つの小さい岡が点在している。1981年11月30日, 頂上に最も近い両(60cmX44cmXlOOcm)の扉の 内側・内部(花コウ岩)に着付した309個の卵 殻や卵殻の付着した跡を観察した。同じ岡から

同時に本種の成体(KSM.ARO248)を採描し

た。 タワヤモリ Gβノ挽0 £α卿α¢耽8ゐ 本種は,Okada(1956)が大川郡長尾町多和 で採補した標本をもって新種として発表された。 タワヤモリは県内の方言で“イワバミ’’,‘‘ト ビハミ”,“ヒチブ”および“ヒチプクサレ’’ などと呼び,寿をもつと信じて恐れているが, 無毒である。県下の生息地は,長尾町・白鳥町 (白鳥神社)・五剣山・屋島・五.色台・琴平山 および島し上部の小豆島・構石島・岩黒島・与 一議)一

(3)

さいへどである。 体の背面が褐色あるいは線褐色で光沢がある。 背面中央には1本の黒粂が走っているので,他 のへどとすぐ区別がっく(第1図の1)。 採集記録地は,五色台大崎奥,五色台古田, 大滝山および三木町小葉である。 シマヘビ ガZαpん¢す肌戚γゐかgα£α シマへどは方言で“ナミシャ” (満濃町炭所 西),“ナミ シャコ(善通寺市地下),ナミ シャオ’’(善通寺市山南)などと呼ばれ,讃岐 山脈から海岸近くの水臥 草地,林周辺等に生 息する普通のへどである。県下で「カラスへど」 といって別種と考えているのは,本種の黒化塾 である。黒化型のシマへどは,4本の黒褐色の 縦粂がはっきりわからないが,アルコール液潰 標本(約809ら)にしておくと鮮明になってくる。 本種は,成長に伴ってかなり色彩が変化する。 シマへどの幼蛇は,普通見たことのない模様を しているため,毒へどではないかと思っている 人々もいる。幼蛇は赤味を帯び,頸に三味線の バチ形の模様と,背面にあずき色の横帯がある (第1図の2)。 ジムグリ 都叩舶(冊即血加地 このへどは,‘‘ィモチ”(仲南町買田),“ギ モチ”(善通寺市山南),‘‘ヒメミミズ,’ (満 濃町炭所西),‘‘ヒメミズ” (善通寺市在所) と呼ばれている。 平野部の水田では,目撃することはなく,丘 陵地や山地に生息し,山麓近くの人家に入り込 むことがある。 アオダイショウ βgαp九βCg勿協COpん0γα アオダイショウは,方言で“ケクマリ”‘‘ネ ズミ トリ”といわれている。このへどが人家に 住みつき,家の桁や梁の上にいたり,ネズミを 掃えて食べる習生からつけられたものといえる。 幼蛇は成蛇に比べて模様や色がかなり異なるた め,よく他のへどとまちがわれたりすることが 多い。幼蛇は,中央に濃褐色の横斑が並んでい るため,マムシやシロマダラとまちがわれるこ とが少なくない。 第1囲 香川県産のヘビ4種 1:タカチホへど(KSM.ARO177) 2:シマへどの幼蛇(KSM.ARO181) 3:ジムグリの幼蛇(KSM.ARO159) 4:シロマダラ(KSM.ARO144) −31−

(4)

毒をもつため,有名で恐れられている。シマへ どやアオダイショウに比べて動作は緩慢で,性 質はおとなしい。夜間,単にひかれたへどの中 にはマムシがかなり多い。1981年10月19日,満 濃町炭所西から坂出市王越町木沢までのアスフ ァルト舗装の紛40kmの道路区間で2個体,単に ひかれたものを確認した。 五.色合での活動期の最初の月日は,4月16日 (1980年の例)で,最も遅かったのは11月15日 (1981年の例)である。土器川水系での聞き込 みの情報によれば,分布範囲が広く,下流域の 青ノ山をはじめ,中・上流域で生息している(川 田,1981e)。 引 用 文 献 金関正彦.1974− カメ“香川の動植物・氏家由 三(編):32−33.高松市役所。 川田英則巾1979a.動物分布調査報告書(両生 類・は虫類),香川県。日本自然保護協会; 1−34。 1979b 香南台地の両生類と爬虫類 (附高山)。香川動植物の会:63−74・ .1980a香川県下のタワヤモリ.香 川県自然科学鹿研究報告 2:9−16. 1980b.植石島および与島周辺地域 における淡水魚類,両生類および爬虫類につ いて.昭和54年慶一・般国道30号(香川県側) 自然環境調査報告書:47−60 。1981a。国市池及び周辺地域におけ る淡水魚類・両生類・他虫類に関する基礎調 査。国市他生物調査報告書1(香川県):51−58。 1981b..小田池及び周辺地域におけ る両生類・爬虫類の基礎調査小田他生物調 査報告書(香川県):55−56. 1981c。聖通寺山・角山周辺の両生 ・爬虫類および与島のヒキガ・エル。昭和55年 慶一・般国道30号(香川県側)自然環境調査報 告書:39−46. .1981d.香川県におけるヤモリ類2 種の分布,粟島でのニホンヤ、モリとクワヤモ リの生息場所を中心として.香川県自然科学 館研究報告書 3:9−16. 土器川水系の区滅で払 中・上流域の丘陵地 や山間部の樹林内に生息している。目撃個体数 はシマへど,ヤマカガシに比較して少ない。 シロマダラ β宜雅Odo彿0γ宜飢孟αJゐ 柴田(1970)では,香川県からの記録はなく, 立石(1974)ではじめて記載された。 シロマダラは,非常に珍しいへどのように思 われている。それは,夜行性のため−・般の人々 の目につきにくいからと考えられる。背面は淡 褐色で50∼60個の黒褐色の横斑がある(図1の 4)。数は少ないといわれている(千石,1979) が,1981年に綾歌町,飯山町および坂出市王越 町で捕獲したり,夜間単にひかれたものを4個 体確認することができた。 1981年8月9日,飯山町東坂元(大原)の約 3m幅のアスファルト舗装道に沿った花コウ岩 の露頭のわれ目に磨んでいるのを,捕獲した(K SM。ARO171)。露頭の周辺は,アカマツ・ヒサ カキ林で道の反対側は水田であった。 ヒパカリ.1J′∼〆J・・射′!・′′・′、ん亜・け′J、′ん′Jた(け/ ヒバカリの名は,喫まれたらその日ばかりの 命,といった迷信によるらしい(千石,1979)。 背面は褐色で,頸部に黄色の斑がある。 1979年8月26日,大野原町萩原で午後9時, 約4mのアス■ファルト舗装道に出現していた個

体を捕獲した(全長48cm,KSM。ARO249)。他

の描獲記録は,1967年9月19日(曇り),琴平 山(象頭山)の幼蛇(全長25c血)だけである(香 川大学教育学部生物学教室所蔵)。 ヤマカカシ 人●ん′拓か函′バト■〃J●ハ=′音 県下の水臥 溜池および山林周辺で最も普通 に見かけるへどである。体色は変異が大きい。 褐色か暗褐色の地に不規則な黒斑が左右交互に 並び,その間に赤い模様が混じっている。若い 個体は頸部に黄帯が目立つ。まれには,異化型 もある。 普通,本種に喫まれても軽い傷がつくだけで あるが,深く喫みつかれた場合は,奥歯に沿っ て毒が注入され,死亡した人もある(千石,1979)。 毒へどの1種であるから注意が必要である。 マムシ Agゐ宜8≠γOdoヶb鋸0仇如朗鋸0ケ}娩0∬£ 本種は,‘‘ハミ,“ハメ”と方言でいわれ, −32−

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1980.タワヤ・モリ.第2回自然環境 保全基礎調査,動物分布調査報告書(両生類 ・は虫類,全国版(その2)日本自然保護 協会:201−206. 立石 清.1974.へど.香川の動植物.氏家由 三(編):34−35.高松市役所 浦上仁一・1939動植物と自然的条件との結合 関係。近森幸衛・井原豊彦(編).香川県綜 合郷土研究:36−44.香川県師範学校・香川 県女子師範学校..(名著出版KK。1978.復 刻版) +.1981e.土器川水系における両生・ は虫類の分布香川県自然環境保全指標策定 調査研究報告書(土器川水系):83−91

Okada,Y19561A new species of

gekko fr・om Shikoku,Amot。Zool・ JαpOケも.29:239−241・ 千石正一・(編).1979・原色両生・爬虫炉 家 の光協会. 柴田保彦.1970.隠岐より新しく記録されるシ ロマダラ,並びに日本におけるシロマダラの 分布とその由来についての考察(爬虫類・へ ど類)自然史研究 1:35−44 −33−−

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