電子シラバスの実現の可能性に関する調査研究
鹿子嶋 仁* はじめに 前年度の『香川大学教養教育調査研究』(香川大学教養教育調査研究委員会編集発行、1999年)にお いて筆者は工学部の加藤大志朗助教授との共同調査として、「シラバス電子化に関する調査研究」を執 筆担当した.。本稿は、前年度の続行調査として行ったものである。前年度の調査は、体内的な側面か ら、シラバス電子化に伴うメリット・デメリット(主に加藤教官担当部分)および、対外的な側面か ら、当時における国立大学ホームページのシラバス公開の進捗具合(主に筆者担当部分)を調査内容 とした。本稿は、前年度調査結果を踏まえ、実際にシラバス電子化を実施に移すとすれば、いかなる 方法が現実的であり、また、どのような問題点が生じるかという点に焦点を当でたものである。 1 前年度調査の小括 シラバスの電子化の意義は、大別すれば、対外的な側面と体内的な側面に分けられる。対外的には、 いうまでもなく大学の情報公開にその第一・の意義が認められる。体内的な側面の主たる意義は、学生 の履修支援および事務の効率化等が挙げられてきたところである。前年度の調査も、体外的側面と体 内的側面の両面からシラバス電子化問題を検討したものであるが、ここでは、その結論部分の概略を まとめて提示しておこう。 (1)体内的側面からみた場合 体内的な側面からみた場合、学生向けの情報教育体制やインフラ整備等、十分な措置を大学側が 講じておかないと、シラバス電子化の実施が無用な混乱を招くという結果に陥りかねないという点 に十分留意する必要がある。この部分は加藤教官が検討された部分であるが、筆者も基本的に同意 見である。しばしば、電子シラバスが従来の電話帳型の印刷シラバスにとってかわり、学生の履修 (および付随する業務量や費用‥・例えば印刷コスト問題)において利便やメリットをもたらすと いわれる。が、実際にはそう単純なものではない。たしかに、学生側は、端末操作で履修したい科 目のシラバスのみを取り出せばよいという点で簡便ではある。しかし、新入生に対する情報処理教 育を早期に実施する必要があること(平成14年度からは高等学校教育課程で情報処理科目が実施さ れるため、将来において状況が変化することはあるかもしれない)、履修申し込み期間には全学生の 端末操作が集中すること等は、前提問題として解決しておかねばならない。また、読み易さという 点での印刷物シラバスのメリットは捨てがたいことも否定できない。このような、学内インフラの 問題、および学生の利便性からすれば、シラバスを電子化し、印刷物以外のなんらかの形態で学生 * 助教授 法学部(公法生活と法)に提供するにしても、おそらく、当面は印刷物シラバスと電子シラバスの2本立ての状況が続かざ るをえないであろう。 (か 対外的側面からみた.場合 大学の情報公開という側面からは、一・般的に、シラバスをホームページで外部公開することは、プ ラスの評価材料となることは間違いない。実際の効能としては、入学希望者や学外者に対し、当大 学の教育内容を知る簡便なアクセス手段を提供できるということが期待される。加えて、対文部省 といった視点もここに加えることができるであろう(あくまで副次的なものにすぎないが)。このよ うな対外的な意義から、前年は、国公立大学のホームページにおいて、シラバス(全学共通・教養 科目のみを対象)の公開がどの程度進捗しているかを調査した。結果は、いまだ展開途上にあると いう状況であり、シラバスのHTML化により生じる作業負荷・コスト増がネックとなっているも のと容易に推察できる。なお、前回の調査は、1999年1月時点のもので、対象とした大学の約3分 の1(32大学)が、全学的なシラバスのページを(少なくとも項目として)設けていることが確認 できた。前回の調査から約1年が経過したため、今回も同様の調査を試みたが、4大学が新たに確 認できた。着実に増加していることは確かだが、いまだ、その伸びは鈍いものといわざるをえない。 なお、調査方法や基準は前年度と同様であり、前年度の調査結果の詳細については、昨年度版『香 川大学教養教育調査研究』57頁以下を参照していただきたい。 β)シラバス電子化の方法(データベース化問題) 以上のように、前回調査においては、対外的なメリットは否定できない一・方で、体内的には様々 な問題を十分考慮して臨む必要があるとの結論となった。シラバス電子化を進めるべきかという点 では、一見相反するように思われるかもしれない。しかし、筆者と加藤教官に共通の認識であり、か つ、最も重要な点と考えることに、”シラバスの電子化においては、これをデータベース化しないと 意味がない”という点がある。筆者は、シラバス自体の形骸化という観点から、教官が随時シラバス の内容をリアルタイムの授業進行にシンクロできるようなものでなければ、意味がないと考え、こ れを実現するには、データベース化は不可欠であると考えた。実際に幾つかの先進的な大学では、そ のようなシステムを構築している例が既にみられるのである。同様に、加藤教官も、検索機能等の 活用による学生の履修支援・履修意欲の向上という観点から、シラバス電子化のキーワードは、シ ラバスのデータベース化であることを強調されている。 2 今回の調査の基本視点 前回調査における結論を踏まえ、今回は、シラバスの電子化を一・歩現実的な観点から検討を進めて みることを意図した。ただ、「シラバスの電子」と一言でいっても、データ形式、配布・公開形態等々 において様々な態様が含まれることになる(この点の全般的検討は前記加藤教官担当部分を参照され た.し)。そこで、本稿は、シラバス電子化の現実化策を検討する上で、以下のような基本的視点・条件 を設定して臨むことにした。 (1)印刷物シラバスとの並存 上記のように、シラバスを電子化するにしても、従来の印刷物シラバスは並存することが、現状
からすれば望ましいと思われる。本稿も、印刷物シラバスとの並存を前提にシラバス電子化の問題 を検討する。それゆえ、まず想起されたことは、従来、印刷物シラバスの作成を依頼してきた外部 印刷業者との関係を利用できないかということである。この点は¢)を参照のこと。 の 配布・公開の態様 筆者個人は、対外的側面からみて−、シラバスの電子化およびその外部公開は避けられない社会的 要請であると考えている。学生の履修支援のみを目的とするなら、イントラネット上での公開等で 十分ともいえるが、上記のようにその現実的効果には疑問点ないし問題点が残る。コストをかけて シラバスを電子化する作業を急ぐ必要があるとすれば、対外的な部分からの要請が大きな比重を占 めているのが現状ではなかろうか。 外部公開を目的としてシラバスを電子化するとなれば、その表現形式としては、ホームページに おける公開が、現状最も簡便で効率的な選択肢であろうと思われる。本稿でも、最終的な表現形式 がホームページに搭載されうるものとなることを前提として調査を進めることにした(元データが はじめからHTMLなのか、いったんデー・夕べ−ス化されたものかという別はある)。 β)短期的問題と長期的問題 調査を始めるにあたって、現行の印刷物シラバスをHTML化し、これを自大学のホーームページ で公開することは、さほど困難な作業とは思われなかった。HTML化自体がかなりの作業量であ ることは間違いないが、印刷物シラバスとの並存を考えれば、まず簡単に思いつくのが、印刷業者 に、シラバスのHTML化を追加発注するということであろう。これは、予算の手当てさえつけば、 直ちに実施しうるものであるから、短期的な実施手段と位置付けてみた。 短期的な処理は、従来の印刷物を単にHTML化するという手法であるが、しかし、先に述べた ように、−・過性のHTML文書では、データの使いまわしが困難といった欠点があり、対外的効果 は別として、体内的にどれほどのメリットがあるのか疑問となる。そこで、シラバスをデー・夕べー ス化し、データの流用や簡便な更新が可能となるようなシステムを組み上げる方策が考えられる。 データベース用にシラバスデータを加工するという処理自体は、上記のようにシラバスをHTML 化することと本質的に相違はなく、印刷業者に発注するということも十分考えられる。しかし、デー タベースの構築が前提となる問題であるから、専用サーバの設置・管理といったハード面、データ ベースソフトの導入に係るソフト面での業務等、大学側の対応も必要となる。単純なHTML化と は異なり、インフラ整備等も必要となる以上、このような手法は、長期的なものと位置付けること ができよう。 本稿は、即座に着手できる短期的視点と、−・定の状況整備を前提とする長期的視点の両面から、シ ラバス電子化の実現可能性について検討を進めてみることとする。なお、筆者の基本的考えを示し ておくなら、「まず着手できる範囲から実行に移す」というものである。再三述べたように、 印刷物 シラバスを単にHTML化することが、体内的にどれほどの意味があるのか、かなり疑問である。し かし、対外的なメリットが存在することは、これまた否定できないところである。よって、まずは、 もっとも簡単なシラバスのHTML化に着手することから始め、加えて、将来、いかなる形態に移 行させるか(内実を如何に充実させていくか)を併せて検討するというのが、現実的な路線ではな
いかと思えるのである。 魯)印刷業者との関係 シラバスをHTML化するにせよデータベースを構築するにせよ、デー・タ処理をどこが担うのか という問題がある。ひとつには、電子化およびデー・タ変換処理を大学自前で行うという選択も考え られる。しかし、シラバスの物量を考えると、これは現実的ではないと思える。個々の教官に任せ るというのも、全教官が対応できることは期待薄である。−・部局が処理するとなると、現在の体制 を考えればオーーバーワークとなろう。加えて、紙ベースでのシラバス並存を前提とすれば、印刷業 者により−\旦電子化されるはずのデータを利用しないというのは効率が悪い。 一・番簡便なのは従来シラバスの印刷を委託していた印刷業者にシラバスのHTML化等を追加依 頼する方法である。そもそも、シラバスの原稿(糸氏べ−・ス)を受け取った業者は、活字起こしによっ て電子化するのであるから、電子化されたデータを使い回してもらうのが合理的といえる。なお、今 回取材した印刷業者によると、この点の大学側の対応もまだ混乱状況であり、印刷とHTML化を 別々の業者に依頼するケー・スも稀に存在するとのことである。しかし、これは極めて不経済といわ ねばならない。また、HTML化を印刷業者以外の専門業者に依頼するケースにおいては、費用の 面でも大きな差となることに注意しなければならない。HTML化処理込みで、シラバスの印刷を 同一・印刷業者に依頼するのが、もっとも合理的な選択といえる。 ところで、単純なHTML化であるならば、少なくと電子化されたシラバスデータさえ入手でき れば、なんらかのプログラムー・括処理で流してしまう可能性も考えられなくはない。印刷業者にH TML化等の処理を追加発注することは、いずれにせよ費用の増大となる。この費用とHTML化 のメリットとの間における費用対効果比からみて、データの電子化(たとえばテキストデータで貰 い受ける)までを業者に依頼し、このデー・タを元に大学側でHTML化等の処理を行いコストを抑 えるという選択も、ひとつの検討対象となるであろう(業者から電子データを貰い受けるといって も、これは新たな処理の追加ではなく、印刷物シラバスを作成する過程で、当然ながら派生するも のであるから、費用はほとんど無視できるのではなかと考えた)。 いずれにせよ、印刷物シラバスの並存を前提とすれば、データの有効利用の観点から、印刷業者 と大学間でどのようなデータの受け渡しがありうるかを検討することが、まずは現実的な入り口で あろうと考えた。 以上のような観点は、実際の調査以前に、個人的に考えてみたことである。もう少々有体に言え ば、印刷業者が作成するシラバスの電子データを流用すれば、HTML化等の作業は、さほど困難 なものではないのではないかと単純に考えたわけである。しかし、実態がそのようなものであるの か確認の必要があると思えた(そのように簡単なことならば、もっと多くの大学がシラバスの公開 を実施に移しているはずである)。そこで、今回は、印刷業者に対する聞き取り調査等をまじえ次の ような項目を具体的な検討項目とした。 ●短期的対応として、シラバス印刷業者にHTML化を追加発注した場合に、処理に要する時間と 費用の面での変化、その他考慮すべき問題としてはどのようなものがあるか。
●長期的対応として、デー・夕べースの構築を視野に入れた場合、考慮すべき問題としてどのような ものがあるか。 3 短期的視点から(シラバスのHTML化) 印刷物シラバスについては、製本までを業者に外注しているが、シラバスのHTML化処理につい ても同時に委託する場合をまずは検討してみる。実際に、このような要請は近年増加してきており、印 刷業界でも、この種の注文への対応が話題となっているとのことである(技術的な問題も含むため、印 刷業着でも対応がまちまちであるらしく、特に技術的対応が即座にとれない業者にとって−は深刻な問 題となっているそうである)。 ところで、本学では、研究者総覧につき、製本処理とは別途ホー・ムページへの掲載が検討され、2000 年度よりホームページ上での公開の方向で具体的な作業が進行中である(3月現段階では、サンプル 版が業者から送られてきた状態‥・なお他大学でも研究者総覧をホームペー・ジで公開している例は 既にみられる)。実際には、印刷を委託した業者に、同時にHTML化の処理を追加発注することによ り処理している。多少の量的相違があるとはいえ、研究者総覧において−HTML化が実現して−いるな らば、同様の手段をシラバスにも適用できるのではないかと考えられる。そこで、実際に、本学がシ ラバスや研究者総覧の製本を委託している業者に聞き取り調査を行った。 調査にあたっては、前もって幾つかの状況を想定しておいた。主に出費増加をできるだけ抑えると いう観点からのものであるが、第一・に、紙原稿でデータを渡すか、テキストファイル化された状態で 渡すかの違いが考えられる。第二に、HTML化を業者に委託するか、あるいは、電子化までを業者 で処理してもらい、受け取ったデー・タを大学側でHTML化するか、という違いが考えられる。以上 2つの要素の組み合わせで、基本的には4パターンの関係が考えられる。 (A)紙原稿で外注し、製本およびHTML化を業者に委託するパターン (B)紙原稿で外注し、HTML化は大学側で処理するパター・ン (C)電子データで外注し、製本およびHTML化を業者に委託するパターン (D)電子データで外注し、HTML化は大学側で処理するパター・ン ちなみに、研究者総覧は第3パターンに基本的には該当する(もっとも、すべてのデータが電子化 されて業者に渡されたわけではないが)。このようなパター・ンの存在を念頭に置き、以下においては、 業者間き取り調査の結果を交えながら、検討を進めてみる。 1)HTML化処理の追加に伴うコストの増大 そもそも、従来の製本のみの発注に加え、HTML化処理を委託した場合、かかる時間と費用に おいてどれほどの差がでるものであろうか。これについては、次のような説明を受けた。 まず、処理に要する時間の面については、さほど懸念する必要はなく、従来の(印刷製本のみの) 場合とほぼ同様のスケジュールで対応できるとのことである。なお、付言すれば、タグの埋め込み などは、何らかのプログラム処理による一・括処理ではなく、すべて手作業で行われているという現 状であるらしい(印刷業者サイドは複数スタッフの動員や下請けにより対応している)。
次に費用の面であるが、これはかなりの追加出費を覚悟しなければならない(具体的に見積もり を依頼したわけではないが、概していえば、製本のみと製本+HTML化では「軽自動車と大型バ ス」くらいの違いのイメージで考えてもらうといいそうである)。もっとも、時間と費用は、要求さ れるHTMLの内容にもよる。印刷物をまるごとスキャンして画像として提示するもの(簡便だが ファイルサイズで問題)、印刷物の体裁をそのままに再現するもの、印刷物の体裁とは異なり例えば 特定の項目だけを抜き出すもの(より手間がかかる)等により異なるものとなる。以下では、印刷 物シラバスに近いか、あるいは、その簡略版ということを念頭において考えている。 2)電子データ取得可能性 先に述べたように、HTML化そのものを業者に依頼するのではなく、シラバスの電子化された データを大学側に提供してもらえるのかについて質問した。大学側でHTML化を行う場合を想定 したものである。そもそも紙原稿を活字起こしする段階で何らかの電子データ化が行われているは ずであるから、たとえばテキストデータとして受け取ることは容易なことではないかと想像してい たのである。しかし、実際に話を聞いてみると、以下のような問題があることが判明した。 まず、紙原稿として操出されたデータから、業者が活字起こしを行うが、その際には、大学側が 指定した特定のワープロソフトに直接起こされる(既に従前より印刷物の納入と同時に、ワープロ ファイル形式で渡されているとのことである・・・ファイル形式の問題を別にすれば、実はシラバ スの電子化は既に行われていたわけである)。したがって、特定のワープロ専用ファイルとして電子 化されたデータが直ちには、HTML化処理に適したデータ形式ではないという問題が生じる。な お、この処理は、印刷仕上がり状態を基準とする以上、合理的なものといえる。JIS非対応の特殊な 漢字や、欧文特殊文字については、テキストベースでは対応できないため、ワープロの機能による 必要があるからである。結局、現在ある電子データをHTML化するにおいて、 ワンクッション挟 まることになるが、この点にかかる作業コスト等については後に触れることとする。 3)紙原稿で外注し、製本およびHTML化を業者に委託するパターン 前記(A)パターンは、大学側からみれば、最も選択が容易なものである。シラバスの従来の作 成プロセスに変更を加える部分がほとんどない。しかし、他のパターンと比較すると、作業完成ま での時間と費用の面でデメリットがあるように思える。実際に、この点はどうなのか、業者サイド からは次のような説明を受けた。 まず、作業の手間という点からすれば、電子データを持ち込まれたほうが確かに作業時間節約に なる(体裁のみの編集で済む)。もっとも、シラバス程度の分量であれば、紙原稿から起こしても 1ケ月くらいの期間でHTML化は可能で、支障のでるような遅延とはならないとのことである。 次いで費用の面であるが、単純に電子データによる依頼が安く上がるというわけではないようで ある。一・定のフォーマットに則して作成された電子データが提出されれば、幾分安くなると一般的 には考えられそうである。しかし、競争入札制度のもとでは、業者間の見積価格設定の競争が激烈 であり、シラバスの製本なども原価割れの状態で受注しているのが現状とのことである。したがっ て、電子データによる依頼であることを理由に経費を抑えられないかとの要求は、業者サイドから すれば簡単には受け入れ難いものであるらしい。
以上のことを勘案すれば、HTML化に要する費用増大さえクリアできるならば、大学側にかか る作業負荷が最も抑えられるという点で、現状、最も現実的な選択のように思える。 4)紙原稿で外注し、HTML化は大学側で処理するパターン 前記(B)パターンは、HTML化を大学側で処理することにより費用を節減できないかという 点を眼目としたものである。しかし、2)で述べたように、 本学の現状では、特定のワープロ専用 ファイルとして電子データ化されているため、これの再加工が必要となる。ここにおいて次のよう な問題が生じる。 −・つには、プレーンなテキストに変換した後、HTML化という手段が考えられる。しかし、元 データが印刷された状態を想定したものであるため、変換されたテキストに余計な罫線等が付加さ れる等々、修正作業がなお必要となる(もちろん、HTML化の作業も更に必要)。他には、ワープ ロに内蔵されたHTML化機能を利用するという手も考えられる。首尾よく変換されれば、作業の 手間はかなり節約できるが、現状では変換結果が必ずしも思わしくない場合があり、やはり最終的 な修正がどうしても必要となるというのが現状である。従来型の印刷発行ベースのシステムでHT ML化を目論むと、この種の問題が不可避的に発生することになる。 ところで、一・定のフォーマットを備えたプレー・ンなテキストファイルが手に入るならば、PeI・1や AWK等のスクリプトで−・括変換ができるのではないかと当初は考えた。そこで、業者側に、現状で プレーンなテキストファイルだけを返してもらうと費用の面でいかがかという質問をした。これに ついては、HTML化する場合とプレー・ンなテキストのみを作成する場合とでは、費用の面でさほ ど変わりはないとのことである。つまり、ワープロファイルに活字起こしを行うことを前提とする 以上、上記のようなテキスト変換後における修正作業が必要となり、これにかかるコストは、直接 にHTML化する場合と大きな差はないというわけである。 5)電子データで外注し、製本およびHTML化を業者に委託するパター・ン 前記(C)パターンおよび(D)パター・ンは、テキストファイルを大学側で準備するものである。 費用と処理時間の節減を念頭においたものであるが、確かに、処理時間の面では若干のメリットが ある。しかし、費用の面では、3)でみたようにあまり期待できない。研究者総覧の場合、フロッ ピーでのやり取りが行われているが、これは、過去分のデー・タに若干の修正を施せばよいことによ るものであり、毎年度ごとに内容が異なるシラバスのケースとは事情が異なる。そもそも、フロッ ピーの枚数だけでもかなりのもであり、また、各教官のOS環境等も考慮に入れるとなると、逆に 煩雑な作業が増えるだけかもしれない。加えて、シラバスの場合は、非常勤講師への対応も考慮し ておかねばならない。プレーンなテキストでのデータ収集方法としては電子メールが簡便な手段で あるが、これも、全教官がネットを利用できるということが前提となる。いずれにせよ、大学側で、 完全な形でテキストデータを揃えることは、付随するフォローイ乍業を考えれば、残念ながらかなり 困難な状況である。特に(C)パターンのように、結局、HTML化を印刷業者に依頼するのであ れば、電子データとしてデータ提供を行うことに費用の面でメリットがほとんど見込めない以上、こ の選択には、ほとんどメリットが認められない。
6)電子データで外注し、HTML化は大学側で処理するパターン 前記(D)パターンは、大学側で確保したテキストデータを元に、自らHTML化を行うもので ある。費用においては大幅な節減が期待できるが、問題は、テキストデータの収集方法およびHT ML化処理の作業量である。後者については、単純に手作業でタグを挿入となると、これを大学側 で処理することは現実的ではないが、提出されるテキストのフォーマットを定め、これを基にフィ ルターツール等で流せば必ずしも不可能ではないようにも思えなくもない。もっとも、HTML化 処理には、JIS非対応の漢字(特に氏名等で)、外国語特殊文字、インターネット上で使えない文 字などへの対応も考えねばならず、当該問題箇所のみ画像を使うとすれば、作業はそれほど単純な ものではない。ちなみに、本学の研究者総覧のケースであるが、発注先の印刷業者は、表示できな い文字を画像で処理する方向で進めているということである(WWW公開においては略字体等でよ いという了解がとれればある程度作業は簡略になるであろうが)。この種の技術的問題が解決できる ならば、−・定のプログラム処理によりシラバスのHTML化は大学独自で不可能ではない。しかし、 最大のネックとなるのは、5)同様に大学側で−・定の期間内にテキスト形式の原稿を揃えることが困 難ということである。加えて、従来においても活字起こし段階で(ファイル形式の問題はあるにせ よ)電子化されたデータが存在するにもかかわらず、これが利用できないというのは、いかにももっ たいない。 7)小括 今回の調査を行うにあたり、個人的には、印刷業者が作成する(派生的な)シラバスの電子デー タを流用し、これを大学側でHTML化することにより、経費が抑えられた理想的な処理が可能と なるのではないかと考えていた。だが、現実には上記のとおり、もっぱら印刷物シラバスの仕上が りを基準にデータの作成等が組み立ててられてきた従来のシステムがネックとなり、面倒な問題を 抱えている。結果、即座の対応を迫られるとなれば、大幅なコスト増を覚悟しつつも、大学側にか かる作業負担との兼ね合いを考えれば、現状では、前記(A)パターンが現実的な選択肢とならざ るをえないように思える。より効率的で低コストの方法を構築するには、根本的なシステムの見直 しが必要と患える。 4 長期的視点から(シラバスのデータベー・ス化) 前節は、短期的な対応として、シラバスの(直接の)HTML化のみを念頭に置いた検討を行った が、先に述べたように 、単年度ごとの処理で終わり、データの使い回しがあまりできないとすれば、費 用対効果費の観点から、特に体内的なメリットという点からすれば、いかがなものかという疑問も湧 いてくる。そこで、次に考えられるのは、デー・夕べース化の方途である。少なくとも、国公立大学で、 全学的なシラバスのデータベースを整備している例はまだ少数である。まずは、現状の動向を検討し てみることとした。 (1)現状 刷業者サイドからすれば、HTML化するのも、データベース用の形式に整形するのも、作業の 手間や費用の面ではさほど違いはないとのことである。もちろん、データベース用のフォーマット
変換作業においては、業者の有するノウハウも問題となるが、話をきけた業者につい ては、依頼が あれば問題なく対応できるとのことである。 全国的な現状はどうかという点であるが、今のところ、デー・夕べース用のデータ変換依頼はそれ ほど例がなく、従来提出されていたシラバス原稿をHTML化できないかという依頼がほとんどで あるとのこと。既にシラバスのデー・夕べ−・ スを組んでいる大学では、外注によらず自大学ですべて の処理を行うことが可能というところが多いという事情もあるかもしれないが、一・般的には、デー・ 夕べ−ス構築に伴う作業コストの問題で直ちに対応できないケースが多いのではないかと思われる。 そのような中で、シラバスのデータベース化に関する最近の話題として、以下のような動向は、興 味深いものがある。 Q)最近の動向 昨年における目立ったなトピックであるが、印刷会社と大学との提携作業によるシラバスのデー・ 夕べ−・ ス化作業が行われ、報道等でも取り上げられるところとなった。主だったところでは、凸版 印刷と東京理科大学の提携、大日本印刷と立教大学の提携の例である。両印刷会社は、今後も他大 学に同様の方法によるデー・夕べ−ス化を提案していくとのことで、今後も同様の手段でシラバスの 公開を行う例が増えるのではないかと予想される。 ここでみられる印刷業者との提携によるデータベース構築のケースの特徴を挙げるとすれば次の ような点が指摘されよう。 1)クロスメディア展開への対応 いずれの例も、SGML文書にてデータベース化を行うという点で共通している。これにより、イ ンターネットでのシラバス配信はもとより、従来から配布していたシラバスの製本作成まで−・元管 理が実現されているところが特徴である。この点は、印刷物シラバスの作成をベースに、付加的追 加的にシラバスのHTML化を行う場合と大きく異なることに注意しておかねばならない。すなわ ち、データベース用にデジタルデータ化されたシラバスを元に、その配倍形態として、印刷物やイ ンターネット配信用、CD−ROM化等が位置付けられているのである。印刷ベースのシラバスを HTML化するケースでは、印刷仕上がりを基準としたファイル形式からHTML形式への変換が 大きなネックとなるが、このようなプロセスにかかるコストが大幅に軽減されることが期待できる。 2)シラバス作成の簡便化 従来、シラバスの制作は年末から翌3月末までの短期間に集中しており、大学の教職員には執筆・ 校正・進捗管理などかなりの作業負荷がかかっている。これに対し、データベースのシステムが構 築された状況では、主たる処理はネットを介した端末処理で可能となる。シラバス執筆者は端末か ら原稿を入力し、大学の教務部門では端末上で入力された内容の確認・登録及び進捗管理が可能と なる。印刷業者も、専用サーバのデータベースから必要なデータを引き出し、印刷物・Web・CD− ROM等目的に合わせて編集を行うことになる。もちろん、以上のような環境は、あくまで理想であ り、インフラの整備はもちろんのこと、個々の教官がこのような環境に対応できるかという問題が 現実には生じる。この点を考慮してか、上記のような印刷会社では、シラバスの入力・修正作業を 代行する受託サポート体制を整備しているケースがみられる。
3)付加価値 一・過性のHTML文書では、学生の履修・学習支援において、必ずしもシラバスが有効に機能しな いという問題がある。本来、シラバスとは、各授業ステップでの予習・復習の指針になることが期 待されているはずである。もちろん、現状でも、個々の教官が設けるホームページにおいては、担 当講義科目についての様々な情報が提供されてはいる。しかし、これも各教官の対応如何により内 容も様々というのが現状であり、加えて、教養教育に対する対応は専門科目と比すれば手薄となり がちである。労を割いてシラバスを全開設科目分揃えるのであれば、当該シラバスのペー・ジがより 有効に機能するほうが効率的である。この点で、データベース化を前提とするなら、デー・タのリア ルタイムの変更がスムー・ズとなり、あるいは、検索機能などの付加価値を情報提供に加えることが 容易となり(HTMLでも検索が実現できないわけではないが、ノイズ文書の抽出を制限するのが 困難である。この点、たとえば、SGMLやⅩMLによれば、構造化された文書であるため、構造単位 での検索が可能となり、多様な検索が実現できる。特に全文検索においても、精度の高い検索結果 が期待できる)、シラバスの有効利用の可能性が広がる。 β)データベース化における留意点 いうまでもなくデータベース化を試みる場合には、ハード・ソフトの両面から、相当の費用を見 込んでおく必要がある。加えて、単にシラバスのデータベース化のみを目的として、システムを構 築することも、費用対効果費の観点から慎重な検討が必要に思える。なるほど、シラバスがデータ べ−・ス化されれば、上記のようなメリットは期待できるし、特に学生の履修・学習によい刺激を与 える契機になることは大きなメリットといえよう。しかし、学生の履修・学習支援という側面につ いてみても、実際に学生が頻繁に端末で情報を取得するような環境が成立していなければ意味がな い。大学側のインターネット環境の整備強化、情報処理教育の促進も同時に検討する必要があり、よ り広く教育支援システムの−・部としてシラバスのデータベース化が位置付けられるような体制作り が必要と考えられる。実際に、上記のような大学では、学生に提供するインターネット環境を大幅 に強化する作業が同時に行われており、これに応える形で提携先の印刷業者も教育支援システムと の連携を視野に入れている。 また、シラバスのデータベース化は、事務処理における電算化の−・環として位置付ける必要もあ るであろう。現状、大学においては事務の簡素化および電算処理化が図られているところであるが、 いうまでもなく、シラバスのデータベース化は、事務処理にかかる負担の軽減に資する必要がある (負担を増大させるだけならば導入には慎重とならざるをえないであろう)。事実、上記のように導 入大学では、シラバス作成に係る業務あり方が簡素化の方向へ変化している。が、その際、シラバ スの処理のみが突出して電算化されたとしても、他の業務における電算化進行度合いとの関係で逆 に混乱を招きかねないという点が危倶される。事務電算処理化の一・環としてシラバスのデータベー ス化が位置付けられるならば、事務処理のより効率性なシステムの構築という観点からも、その意 義は十分にあるように思える。 (の 参考:SGMLについて 欧米では、文書の電子データ処理における言語仕様としてはかなりの普及がみられる。アメリカ
では、情報システム機関の大手ユーザーである公的機関や業界団体の積極的支持を受け、SGMLの ISO化(ISO8879)の翌年には全米出版協会がいち早く基本的なDTDを公開している。欧州では古 くからオックスフォード大学出版局が研究図書のSGML化を推進している。わが国でも、学術分野 では慶応義塾大学の図書館が出版社と共同で論文要約のSGML化に着手した例などが知られる。 SGMLは、文章を内容(インスタンス)と、構造を記述する部分(DTD)に分け、厳密に定義され た文書構造が確立されている点に大きな特徴がある(文書のレイアウトは各システムのフォーマッ タ、ビューアによって決定されることになる)。その点で、文書構造が−・定であるシラバスなどは、 SGML化に適した対象文書といえる。また、構造部分が分離されることにより、データベースとの 連携がスムーズである点もシラバスのデータベー ス化等を考えると大きなメリットである。反面、仕 様が複雑でかつ汎用的であるため、アプリケーションの実装化が容易ではないことや、Wめによる 情報伝達を想定した機能を標準ではサボー・トしていないといったデメリットも指摘される。なお、 HTMLやⅩMLは、いずれもSGMLを言語母体として生まれたものである。 5 本稿のまとめ 1)即座の対応としては、従来のシラバス印刷をベースに、HTML化を加えるということになる。 これにも幾もかの選択妓が考えられるが、基本的には、大学側が負う出費と作業負担の兼ね合いか ら判断せざるをえない。当初、筆者は出費の抑制を目論み、大学側での処理の可能性を考えていた が、実態に基づけば、必ずしも妥当な選択とはいえないようである。もっとも、全学部に渡るデー タが−・部局に集中する教養教育関連の科目については、大学側での自前処理という選択が現状とり えないとしても、各学部の専門科目のシラバスについては、学部での独自の処理に任せるとしても 極端に無理なものとはならないであろうから、−・定程度の経費の節減は可能であろう。 2)これまでの印刷主体の(ネット上でのシラバス公開など考慮にいれていない)時期に確立した データ作成システムが、シラバスの電子化においてはネックになっている。本学のケースでいえば、 従前より電子データは簡単に拾えたのであるが、最終的な印刷体裁の仕上がりが基準となっている ため、HTML化において幾つかの問題が生じている。この点に関し、業者サイドからは次のよう な示唆を得た。まず、単年度ごとの契約では、どうしても場当たり的な処理になりがちである。大 学と業者との間で、将来も見越した協萬がもたれ、−・定の方向付けが示されたほうが、後々の処理 においてもよい結果が期待できる。たとえば、HTML化を前提にシラバス処理の依頼を受ければ、 HTMLのイメージから逆に辿り、使用するソフトも異なる選択になりうるとのことである。また、 将来的にはデータべ−・スへの移行も考えるなど−・定の方針が立っていれば、後々にデータの流用が 容易な方向での処理も考えられる。 3)シラバスのデータベース化は、シラバスの電子化において極めて重要な視点である。インフラ 整備等において、単純なシラバスのHTML化のケースよりもコストがかかることは確かだが、電 子シラバスの有効活用の可能性が広がるという点で、真の意味での費用対効果比は、よりよいもの となると考えられる。ただし、これも、学生のネット利用環境・情報処理教育、あるいは、事務電 算処理化といった総合的な視点において位置付けを考えねば、メリットは十分に生かされないこと
に注意しておく必要がある。 <付記> 当初、他大学数校よりシラバスのデータベース化に関する技術情報の提供を受けていたが、種々の 制約でここに掲載することを見送ることとなった.。これにより、内容が乏しいものとなり、加えて脱 稿が期限を大幅に徒過し、関係者各位にご迷惑をおかけすることとなってしまった。この場を借りて お詫び申しあげたい。