授業外学修におけるスマートデバイスの活用の可能 性
著者 陳 那森, 山下 泰生, 窪田 八洲洋
雑誌名 研究紀要
号 17
ページ 101‑108
発行年 2016‑03‑31
URL http://id.nii.ac.jp/1084/00000452/
- -101
授業外学修におけるスマートデバイスの活用の可能性
Abstract
In recent years, the use of the Internet through the smart device that is the representation of smartphones is rapidly increasing. On the other hand, in the ICT environment of the university, place and time for the use are still largely constrained, which is a problem for its easily-used spread. In this study, we examined the possibility for the use of smart devices while learning outside the classroom in order to complement the ICT environment offered by the university. As a result, the following two points have been showed. ① The main time zone and the place used by the majority of the students are suitable for the learning outside the classroom. ② It is clear that it is without reference to the anxiety about the use of the Internet that the students have a positive attitude to use actively smartphone while learning. Based on the above, it is suggested that the possibility of the learning environment through the smartphone can be availably utilized to the learning outside the classroom, including the "flipped classroom".
キーワード:授業外学修,スマートデバイス,ICT環境,反転授業 関西国際大学研究紀要 第17号,2016年,101-108
Ⅰ はじめに
大学が提供するICT環境では,場所や時間的制約は依然大きく,利用しやすさの面で課題があ る1)2)。一般的に,大学等におけるICT環境は,導入業者との契約形態により,3~4年利用し てからでないと更新されない。そのため,日進月歩のICT環境の技術的変化に追いつかない場合 がほとんどである。このことはハードウェアの更新とソフトウェアのバージョンアップの両方に 言える。また,大学等のICT環境におけるパソコンなどのクライアントマシンは,不特定多数の ユーザに利用されるため,利用時間と利用場所に制約が設けられている場合が多い。そのため,
ユーザにとっては,必ずしも利用しやすい環境になっていないのが現状である。
授業外学修におけるスマートデバイスの活用の可能性
The Possibility for the Use of Smart Devices while Learning Outside the Classroom
陳 那 森* 山 下 泰 生** 窪田八洲洋***
Nasen CHEN Yasuo YAMASHITA Yasuhiro KUBOTA
* 関西国際大学人間科学部
** 関西国際大学グローバル教育機構
*** 関西国際大学教育総合研究所客員研究員
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関西国際大学研究紀要 第17号 授業外学修におけるスマートデバイスの活用の可能性
一方で,若者のスマートフォンの所持率が2011年を境に,初等中等教育段階から増加の一途を 辿っている。そしてこの傾向と相まって,LINEのような人気アプリが若者を中心に絶大な支持 を集め,今や彼らにとっては不可欠なコミュニケーションの手段とまで普及してきている。そう した中で,これらのデバイスやツールの特性を十分に理解せずに利用しているがゆえに,トラブ ルに発展し社会的関心を集めるなどの個別事例が起きているのも事実である。しかしながら,総 務省情報通信政策研究所(2014.7)の調査では,「総合的に見ればインターネットや情報通信機器 は,日常生活でも,さらには教育の分野でも,適切に利活用することにより,(「ネット依存」な どの)負の部分を圧倒的に上回るメリットをもたらすものである」と分析している3)。また,教 育活動への有効活用という観点からすれば,初等中等教育段階から利用し始め,大学に入学する 段階では,ほとんどの若者は,既にこれらのデバイスやツールを使いこなし,高い操作スキルを 自然に身につけているという点は注目に値する。
そこで,本研究では,大学が提供するICT環境を補完すべくスマートデバイスを活用した授業 外学修の可能性について検討した。まず,大学生はどのような通信機器を所持し,どういったア クセスツールを入れて,どのような場所で,どの程度の頻度や長さで利用しているかについて調 べた。その結果,大学生のほとんどはスマホの利用者であり,アクセスツールではLINEが他と 比べて圧倒的に利用頻度が高いことや,大多数の学生の主となる利用時間帯や利用場所は,授業 外学修をするのに適していることが分かった4)。次に,大学生は,スマホやその上で動作するツー ル(アプリなど)を学習活動への有効活用について,どのように捉えているかについて調べた。
その結果,今の大学生は,インターネット利用に対する不安の程度に関係なく,スマホの学習活 動への有効活用に関しては積極的に捉えていることが分かった5)。
本稿では,こうした結果を踏まえた上で,授業外学修におけるスマートデバイスの活用の可能 性について考察する。
Ⅱ 調査概要
(1)調査目的・内容
調査は,2回に分けて実施した。1回目の調査の目的は,主に大学生はどのような通信機器を 所持し,どういったアクセスツールを入れて,どのような場所で,どの程度の頻度や長さで利用 しているかについて調べるためであった。調査内容は,①よく使う情報通信機器,②よく使うア クセスツール,③よく使う場所と時間帯,④インターネット利用上の不安,の4つの部分から構 成されている。
2回目の調査は,1回目の調査結果に対する検討を踏まえ,大学生がスマホの学修活動への有 効活用をどのように捉えているかについて明らかにするために,新たに「詳細なスマホ利用時間 帯と利用場所」,「Web上で情報源としている具体的な内容」,「スマホの学修への利用の可能性」
に関する項目を追加して実施した。
(2)調査対象・方法
何れの調査も,Google社が提供するフォーム機能を利用して作成し,Webアンケートの形式 により無記名で実施し,回答結果は自動回収した。
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関西国際大学研究紀要 第17号 授業外学修におけるスマートデバイスの活用の可能性
1回目は,2014年春学期の授業期間中に,A大学1年生72名とB大学1~3年生74名の計146名
(男71名,女75名)を対象に実施した。2回目は,2015年春学期の授業期間中に,A大学1年生 180名とB大学1~3年生163名の計343名(男135名,女196名,性別未記入12名)を対象に実施し た。ここで,1回目と2回目の被験者の数が異なっているのは,調査実施の年度が異なるため,
実施クラス数に増減があったことによるものである。また,何れの調査も授業中に集団で実施し たため,回収率は2回とも100%であった。
Ⅲ 結果
一回目の調査結果は,図1~図4に示している。
図1から分かるように,よく使う情報通信機器はスマホで,「ある程度使う」を入れるとほぼ
100%に近い。続く「よく利用する情報源」へのアクセスにおいて,スマホによるHP閲覧がPC
のそれを20%も上回っていることが読み取れる。また,図3から最も頻繁にアクセスするツール ではLINEが断トツ首位で,こちらも「ある程度使う」を入れると97%にのぼる。続くtwitter は「ある程度使う」を入れると8割を超すが,Facebookは3割にも満たない。
表1から分かるように,利用場所については,「ある程度使う」を入れた上位3項目は「自宅
(下宿)」が91.8%,「キャンパス内」が86.3%,「電車・バスの中」が54.0%となっている。また利 用時間帯の上位3項目は,「学内の空き時間」の80.8%と「帰宅後寝るまで」の78.7%に,「帰宅 途中」の38.4%が続く。また,図4から,「インターネット利用上の不安」については,「非常に 不安」と「少し不安」の割合を合わせた場合,約6~8割の学生は,ネット利用の際に何らかの 不安を抱えていることがうかがえる。特に,コンピュータウイルスや個人情報の漏えい,個人デー タの改ざんや盗聴への不安が大きいことが読み取れる。
図1 情報通信機器の利用状況
III
結果一回目の調査結果は,図
1
~図4
に示している。図
1
から分かるように,よく使う情報通信機器はスマホで,「ある程度使う」を入れるとほぼ100%
に近い。続く「よく利用する情報源」へのアクセスにおいて,スマホによる
HP
閲覧がPC
のそれ を20
%も上回っていることが読み取れる。また,図3
から最も頻繁にアクセスするツールではLINE
が断トツ首位で,こちらも「ある程度使う」を入れると97%
にのぼる。続く8
割を超すが,3
割にも満たない。表
1
から分かるように,利用場所については,「ある程度使う」を入れた上位3項目は「自宅(
下 宿)
」が91.8%
,「キャンパス内」が86.3%
,「電車・バスの中」が54.0%
となっている。また利用時 間帯の上位3項目は,「学内の空き時間」の80.8%
と「帰宅後寝るまで」の78.7%
に,「帰宅途中」の
38.4%
が続く。また,図4
から,「インターネット利用上の不安」については,「非常に不安」と「少し不安」の割合を合わせた場合,約
6
~8
割の学生は,ネット利用の際に何らかの不安を抱え ていることがうかがえる。特に,コンピュータウイルスや個人情報の漏えい,個人データの改ざん や盗聴への不安が大きいことが読み取れる。図
1
情報通信機器の利用状況図
2
よく利用する情報源へのアクセス手段.95 .68 .30
.36 .11 .04
.04
.04
.17 .31
.06 .14
.06 .05
.00
.14 .26
.06 .30 .14
.11
.01 .02 .13 .51
.45 .76 .81
0% 20% 40% 60% 80% 100%
スマートフォン テレビ ノートPC 携帯電話 デスクトップPC
タブレットPC PHS
よく使う ある程度使う たまに使う 全く使わない
.51 .68 .31
.09 .04
.03
.34 .17 .28
.23 .08
.03
.08 .14 .28
.46 .37
.15
.06 .02 .13 .22 .51 .79
0% 20% 40% 60% 80% 100%
スマホでHP閲覧 テレビ PCでHP閲覧 雑誌 新聞 ラジオ
よく使う ある程度使う たまに使う 全く使わない
N=343
N=343
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関西国際大学研究紀要 第17号 授業外学修におけるスマートデバイスの活用の可能性
図2 よく利用する情報源へのアクセス手段
III
結果一回目の調査結果は,図
1
~図4
に示している。図
1
から分かるように,よく使う情報通信機器はスマホで,「ある程度使う」を入れるとほぼ100%
に近い。続く「よく利用する情報源」へのアクセスにおいて,スマホによる
HP
閲覧がPC
のそれ を20
%も上回っていることが読み取れる。また,図3
から最も頻繁にアクセスするツールではLINE
が断トツ首位で,こちらも「ある程度使う」を入れると97%
にのぼる。続く8
割を超すが,3
割にも満たない。表
1
から分かるように,利用場所については,「ある程度使う」を入れた上位3項目は「自宅(
下 宿)
」が91.8%
,「キャンパス内」が86.3%
,「電車・バスの中」が54.0%
となっている。また利用時 間帯の上位3項目は,「学内の空き時間」の80.8%
と「帰宅後寝るまで」の78.7%
に,「帰宅途中」の
38.4%
が続く。また,図4
から,「インターネット利用上の不安」については,「非常に不安」と「少し不安」の割合を合わせた場合,約
6
~8
割の学生は,ネット利用の際に何らかの不安を抱え ていることがうかがえる。特に,コンピュータウイルスや個人情報の漏えい,個人データの改ざん や盗聴への不安が大きいことが読み取れる。図
1
情報通信機器の利用状況図
2
よく利用する情報源へのアクセス手段.95 .68 .30
.36 .11 .04
.04
.04
.17 .31
.06 .14
.06 .05
.00
.14 .26
.06 .30 .14
.11
.01 .02 .13 .51
.45 .76 .81
0% 20% 40% 60% 80% 100%
スマートフォン テレビ ノートPC 携帯電話 デスクトップPC
タブレットPC PHS
よく使う ある程度使う たまに使う 全く使わない
.51 .68 .31
.09 .04
.03
.34 .17 .28
.23 .08
.03
.08 .14 .28
.46 .37
.15
.06 .02 .13 .22 .51 .79
0% 20% 40% 60% 80% 100%
スマホでHP閲覧 テレビ PCでHP閲覧 雑誌 新聞 ラジオ
よく使う ある程度使う たまに使う 全く使わない
N=343
N=343
図3 アクセスツールの利用状況
図
3
アクセスツールの利用状況表
1
スマホのよく使う場所と時間帯よく使う ある程度使う たまに使う 全く使わない
自宅(下宿) 87.7% 4.1% 1.4%
キャンパス内 82.2% 4.1% 0.7%
電車・バスの中 48.6% 3.4% 1.4%
屋外(道路上) 16.4% 0.7%
駅・バス停 16.4% 0.7%
公共施設 10.3%
商業施設 1.4%
学内の空き時間 78.1% 2.7% 1.4%
帰宅後寝るまで 75.3% 3.4% 1.4%
帰宅途中 37.7% 0.7% 0.7%
起床から家を出るまで 32.2% 3.4% 0.7%
通学途中 30.8% 0.7% 0.7%
その他 2.7%
アルバイト中 2.1%
場 所
時 間 帯
図
4
インターネット利用上の不安.92 .74 .16
.10 .03
.04 .04 .01 .01
.01
.05 .10
.13 .16 .09 .06 .02 .03 .02
.01
.01 .01
.13 .47 .21
.09 .15 .07 .07 .07
.14 .02 .57
.27 .68
.81 .78 .89
.89 .90
0% 20% 40% 60% 80% 100%
LINE twitter Facebook 携帯メール PCメール Skype blog mixi Gree Mobage
よく使う ある程度使う たまに使う 全く使わない
.48 .36
.42 .30
.34 .25 .23
.35 .39
.28 .40
.35 .36 .36
.08 .15 .19
.21 .21 .23
.30
.09 .10 .11 .08 .10 .16
.12
0% 20% 40% 60% 80% 100%
コンピュータウィルス 個人情報の漏えい 個人データの改ざんや盗聴 ネット操作履歴の漏えい ネット利用による不当請求 ネット上の中傷や悪口 ネット上のデマ・有害な情報
非常に不安 少し不安 あまり不安を感じない 全く不安を感じない
N=343
N=343
表1 スマホのよく使う場所と時間帯
よく使う ある程度使う たまに使う 全く使わない
場 所
自宅(下宿) 87.7% 4.1% 1.4%
キャンパス内 82.2% 4.1% 0.7%
電車・バスの中 48.6% 3.4% 1.4%
屋外(道路上) 16.4% 0.7%
駅・バス停 16.4% 0.7%
公共施設 10.3%
商業施設 1.4%
時間帯
学内の空き時間 78.1% 2.7% 1.4%
帰宅後寝るまで 75.3% 3.4% 1.4%
帰宅途中 37.7% 0.7% 0.7%
起床から家を出るまで 32.2% 3.4% 0.7%
通学途中 30.8% 0.7% 0.7%
その他 2.7%
アルバイト中 2.1%
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関西国際大学研究紀要 第17号 授業外学修におけるスマートデバイスの活用の可能性
図5~図7は,2回目の調査結果である。図5は授業に関する項目におけるスマホの利用状況 についての結果である。それによると,「教員への連絡」以外のいずれの項目においても,半数程 度あるいはそれ以上の学生が授業に関連する事項においてスマホを利用していることがわかる。
そして,図6はスマホの学修活動への利用をどう思うかを問うた設問であるが,9割近い学生が 授業外学修において積極的にスマホを使いたいと考えている姿勢がはっきりと読み取れる。図7 は図6の項目をさらに細分化して具体的な学修場面でスマホは有効利用できるかを問うたもので あるが,ここでも,授業外学修においては,図6とほぼ同様な傾向が見られるほか,授業中にお いても,利用する場面によっては,スマホを利用することによる有効性をかなり積極的に捉えて いることがうかがえる。
しかし,以上の結果と対照的に,「インターネット利用上の不安」項目においては,約6~8割 の学生は,何らかの不安を抱えていることが図4で示されていることから,これらの「インター ネット利用上の不安」項目と「スマホの学修への利用の可能性」項目との相関分析を行ってみた。
その結果,両者の間には相関が認められなかった(r=.047, n.s.)。このことから,キャンパス内 の空き時間や帰宅後就寝まで,比較的長時間にわたり,スマホを利用している今の大学生は,ネッ
図4 インターネット利用上の不安
図
3
アクセスツールの利用状況表
1
スマホのよく使う場所と時間帯よく使う ある程度使う たまに使う 全く使わない
自宅(下宿) 87.7% 4.1% 1.4%
キャンパス内 82.2% 4.1% 0.7%
電車・バスの中 48.6% 3.4% 1.4%
屋外(道路上) 16.4% 0.7%
駅・バス停 16.4% 0.7%
公共施設 10.3%
商業施設 1.4%
学内の空き時間 78.1% 2.7% 1.4%
帰宅後寝るまで 75.3% 3.4% 1.4%
帰宅途中 37.7% 0.7% 0.7%
起床から家を出るまで 32.2% 3.4% 0.7%
通学途中 30.8% 0.7% 0.7%
その他 2.7%
アルバイト中 2.1%
場 所
時 間 帯
図
4
インターネット利用上の不安.92 .74 .16
.10 .03 .04 .04 .01
.01
.01
.05 .10
.13 .16 .09 .06 .02 .03 .02
.01
.01 .01
.13 .47 .21
.09 .15 .07 .07 .07
.14 .02 .57
.27 .68
.81 .78 .89
.89 .90
0% 20% 40% 60% 80% 100%
LINE twitter Facebook 携帯メール PCメール Skype blog mixi Gree Mobage
よく使う ある程度使う たまに使う 全く使わない
.48 .36
.42 .30
.34 .25 .23
.35 .39
.28 .40
.35 .36 .36
.08 .15 .19
.21 .21 .23
.30
.09 .10 .11 .08 .10 .16
.12
0% 20% 40% 60% 80% 100%
コンピュータウィルス 個人情報の漏えい 個人データの改ざんや盗聴 ネット操作履歴の漏えい ネット利用による不当請求 ネット上の中傷や悪口 ネット上のデマ・有害な情報
非常に不安 少し不安 あまり不安を感じない 全く不安を感じない
N=343
N=343
図5 授業関連項目におけるスマホの利用状況
図
5
~図7
は,2
回目の調査結果である。図5
は授業に関する項目におけるスマホの利用状況に ついての結果である。それによると,「教員への連絡」以外のいずれの項目においても,半数程度あ るいはそれ以上の学生が授業に関連する事項においてスマホを利用していることがわかる。そして,図
6
はスマホの学修活動への利用をどう思うかを問うた設問であるが,9
割近い学生が授業外学修 において積極的にスマホを使いたいと考えている姿勢がはっきりと読み取れる。図7
は図6
の項 目をさらに細分化して具体的な学修場面でスマホは有効利用できるかを問うたものであるが,ここ でも,授業外学修においては,図6
とほぼ同様な傾向が見られるほか,授業中においても,利用す る場面によっては,スマホを利用することによる有効性をかなり積極的に捉えていることがうかが える。しかし,以上の結果と対照的に,「インターネット利用上の不安」項目においては,約
6
~8
割の 学生は,何らかの不安を抱えていることが図4
で示されていることから,これらの「インターネッ ト利用上の不安」項目と「スマホの学修への利用の可能性」項目との相関分析を行ってみた。その 結果,両者の間には相関が認められなかった(r=.047, n.s.
)。このことから,キャンパス内の空 き時間や帰宅後就寝まで,比較的長時間にわたり,スマホを利用している今の大学生は,ネット利 用に対する不安の程度に関係なく,スマホの学習活動への有効活用に関しては積極的に捉えている ことが分かった。図
5
授業関連項目におけるスマホの利用状況図
6
スマホの学修活動への利用をどう思うか.16 .32 .16 .11
.26
.58 .34
.36 .36
.16
.23
.23 .42
.27 .37 .28
.31
.13 .08
.05 .12 .46
.21 .07
0% 20% 40% 60% 80% 100%
授業内容 宿題・課題 試験情報 教員への連絡 教員からの連絡 受講生同士の連絡
よく使う ある程度使う たまに使う 全く使わない
.22 .12
.19
.66 .42
.68
.11 .34
.11 .01 .11
.02
0% 20% 40% 60% 80% 100%
予習に利用 授業中に利用
復習に利用
とてもよい よい あまりよくない よくない
N=343
N=343
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関西国際大学研究紀要 第17号 授業外学修におけるスマートデバイスの活用の可能性
ト利用に対する不安の程度に関係なく,スマホの学習活動への有効活用に関しては積極的に捉え ていることが分かった。
Ⅳ 考察
まずは,1回目の調査結果を示す図1と図4及び表1から,約6~8割の学生はインターネッ ト利用において何らかの不安を抱えながら,キャンパス内の空き時間あるいは帰宅後就寝まで,
比較的長時間にわたり,スマホを利用しているというのが,今の大学生のネット利用の姿が浮き 彫りになった。また,人気SNSアプリLINEの利用率の高さは,ほかを大きく引き離している ことから,大学の教育活動の中で活用可能なツールとしては最も有力であると考えられる。しか しながら,LINEのような無料アプリには,優れたリアルタイム性や既読機能,気軽さなどメリッ トが多い一方で,教育活動へ活用する場合における利用者情報管理の不便さなどのデメリットも 指摘されていることから,最近では学内SNSを導入する動きが活発になっているものと推測され る。
次に,上述の結果に2回目の調査結果を反映させてまとめると,キャンパス内の空き時間や帰 宅後就寝まで,比較的長時間にわたり,スマホを利用している今の大学生は,インターネット利 用に対する不安の程度に関係なく,スマホの学習活動への有効活用に関しては積極的に捉えてい ることがうかがえる。したがって,この結果は,スマホを用いた学修環境は,授業外学修活動へ の活用が可能であることを示唆したものと受け止めることができる。そして,スマホはその優れ た可搬性から,講義科目や演習科目,実習科目を問わず,授業の進行を妨げない範囲の中におい
図6 スマホの学修活動への利用をどう思うか
図
5
~図7
は,2
回目の調査結果である。図5
は授業に関する項目におけるスマホの利用状況に ついての結果である。それによると,「教員への連絡」以外のいずれの項目においても,半数程度あ るいはそれ以上の学生が授業に関連する事項においてスマホを利用していることがわかる。そして,図
6
はスマホの学修活動への利用をどう思うかを問うた設問であるが,9
割近い学生が授業外学修 において積極的にスマホを使いたいと考えている姿勢がはっきりと読み取れる。図7
は図6
の項 目をさらに細分化して具体的な学修場面でスマホは有効利用できるかを問うたものであるが,ここ でも,授業外学修においては,図6
とほぼ同様な傾向が見られるほか,授業中においても,利用す る場面によっては,スマホを利用することによる有効性をかなり積極的に捉えていることがうかが える。しかし,以上の結果と対照的に,「インターネット利用上の不安」項目においては,約
6
~8
割の 学生は,何らかの不安を抱えていることが図4
で示されていることから,これらの「インターネッ ト利用上の不安」項目と「スマホの学修への利用の可能性」項目との相関分析を行ってみた。その 結果,両者の間には相関が認められなかった(r=.047, n.s.
)。このことから,キャンパス内の空 き時間や帰宅後就寝まで,比較的長時間にわたり,スマホを利用している今の大学生は,ネット利 用に対する不安の程度に関係なく,スマホの学習活動への有効活用に関しては積極的に捉えている ことが分かった。図
5
授業関連項目におけるスマホの利用状況図
6
スマホの学修活動への利用をどう思うか.16 .32 .16 .11
.26
.58 .34
.36 .36
.16
.23
.23 .42
.27 .37 .28
.31
.13 .08
.05 .12 .46
.21 .07
0% 20% 40% 60% 80% 100%
授業内容 宿題・課題 試験情報 教員への連絡 教員からの連絡 受講生同士の連絡
よく使う ある程度使う たまに使う 全く使わない
.22 .12
.19
.66 .42
.68
.11 .34
.11 .01 .11
.02
0% 20% 40% 60% 80% 100%
予習に利用
授業中に利用
復習に利用
とてもよい よい あまりよくない よくない
N=343
N=343
図7 各学修場面でスマホは有効利用できるか
図
7
各学修場面でスマホは有効利用できるかIV
考察まずは,1回目の調査結果を示す図
1
と図4
及び表1
から,約6
~8
割の学生はインターネッ ト利用において何らかの不安を抱えながら,キャンパス内の空き時間あるいは帰宅後就寝まで,比 較的長時間にわたり,スマホを利用しているというのが,今の大学生のネット利用の姿が浮き彫り になった。また,人気SNS
アプリLINE
の利用率の高さは,ほかを大きく引き離していることか ら,大学の教育活動の中で活用可能なツールとしては最も有力であると考えられる。しかしながら,LINE
のような無料アプリには,優れたリアルタイム性や既読機能,気軽さなどメリットが多い一 方で,教育活動へ活用する場合における利用者情報管理の不便さなどのデメリットも指摘されてい ることから,最近では学内SNS
を導入する動きが活発になっているものと推測される。次に,上述の結果に2回目の調査結果を反映させてまとめると,キャンパス内の空き時間や帰宅 後就寝まで,比較的長時間にわたり,スマホを利用している今の大学生は,インターネット利用に 対する不安の程度に関係なく,スマホの学習活動への有効活用に関しては積極的に捉えていること がうかがえる。したがって,この結果は,スマホを用いた学修環境は,授業外学修活動への活用が 可能であることを示唆したものと受け止めることができる。そして,スマホはその優れた可搬性か ら,講義科目や演習科目,実習科目を問わず,授業の進行を妨げない範囲の中において,さまざま なシーンで活用できるものと考えられる。例えば,講義科目と演習科目では,文章やビデオによる 授業内容の事前学習や,授業内容に関連するその場での情報収集,授業内容の事後学習(確認テス ト等),宿題や簡単な課題の作成などが想定される。実習科目においては,さらに現場での写真や映 像による記録や,それらを用いた繰り返し学習により理解を深めることも考えられる。
しかしながら,学修活動は,学習者と教授者の相互作用によって成り立っているため,学習者だ けでなく,教授者にもスマホを教育活動で活用したい意向があることが必要である。また,それだ けでは不十分で,教授者にはスマホを活用するためのスキルとそれらを活用した授業の準備(例え ば,授業外で学修用教材コンテンツの制作,対面授業の再設計など)や授業展開の力が求められる。
ここまでは,主としてスマホの授業外学修への活用の可能性について,学習者がどのように捉えて いるかについて問うてきたが,教授者の意向やスキル等の実態についても調べることが必要であろ う。このほかに,スマホの授業外学修への活用を積極的に捉えていない約1割の学生を,如何にし て学修活動に仕向けるか,「授業外」という教授者の目が届かない状態での学修活動を如何にして把
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文章による事前学習 ビデオによる事前学習
ノートテイクや記録 授業内容の情報収集 問題や質問への解答・回答 授業内容の事後学習 宿題や簡単な課題
有効に利用できる ある程度は有効利用できる あまり有効利用はできない 利用は有効ではない
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関西国際大学研究紀要 第17号 授業外学修におけるスマートデバイスの活用の可能性
て,さまざまなシーンで活用できるものと考えられる。例えば,講義科目と演習科目では,文章 やビデオによる授業内容の事前学習や,授業内容に関連するその場での情報収集,授業内容の事 後学習(確認テスト等),宿題や簡単な課題の作成などが想定される。実習科目においては,さら に現場での写真や映像による記録や,それらを用いた繰り返し学習により理解を深めることも考 えられる。
しかしながら,学修活動は,学習者と教授者の相互作用によって成り立っているため,学習者 だけでなく,教授者にもスマホを教育活動で活用したい意向があることが必要である。また,そ れだけでは不十分で,教授者にはスマホを活用するためのスキルとそれらを活用した授業の準備
(例えば,授業外で学修用教材コンテンツの制作,対面授業の再設計など)や授業展開の力が求め られる。ここまでは,主としてスマホの授業外学修への活用の可能性について,学習者がどのよ うに捉えているかについて問うてきたが,教授者の意向やスキル等の実態についても調べること が必要であろう。このほかに,スマホの授業外学修への活用を積極的に捉えていない約1割の学 生を,如何にして学修活動に仕向けるか,「授業外」という教授者の目が届かない状態での学修活 動を如何にして把握しコントロールするか,なども解決すべ課題として挙げられる。
当然ながら,組織的に本格的に導入して活用する場合には,スマホなどスマートデバイスの BYOD(Bring Your Own Device)という側面を想定した相応の管理上セキュリティ上の対策を 講じることが必要となる。例えば,安全性と利便性の両立を目指し,柔軟に対応できるセキュリ ティポリシーの策定や,デバイスの認証,情報漏えい防止などのセキュリティ対策,スマートデ バイス向けに安全な無線LANアクセスポイントの設置などが挙げられる。
何れにせよ,学修活動におけるICTの活用においては,利用者が日常的に使っているデバイス やツールをそのまま活用できることが利用者への負担が小さく,高いユーザビリティにつながる と考えられる。各種調査データから,2015年を境にスマホなどスマートデバイスの出荷台数がPC のそれを超えることが確実視されており,BYODの導入と活用を積極的に進めている企業も増え る傾向にあることが明らかである。そうした流れからすれば,最も多くのデジタルネイティブを 擁する高等教育機関においては,スマホなどのスマートデバイスによる学修環境は、「反転授業」
を含めた授業外学修に止まらず、教育活動全般における様々な形での活用が,今後確実に増える ものと考えられる。
Ⅴ おわりに
本稿では,大学生のスマホを主役としたスマートデバイスによるインターネット利用の増加の 現状,および大学のICT環境が直面してきた利用しやすさの面での課題を踏まえ,大学が提供す るICT環境を補完すべくスマートデバイスを活用した授業外学修の可能性について検討した。そ の結果,①大多数の学生の主となる利用時間帯と場所は,授業外学修をするのに適していること と,②ネット利用に対する不安の程度に関係なく,スマホの学習活動への有効活用に関しては積 極的に捉えていることが分かった。これにより,スマホによる学修環境は「反転授業」も含めた 授業外学修への活用が可能であることが示唆された。
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【引用文献】
1)大谷誠・江藤博文・渡辺健次・只木進一・渡辺義明,シングルサインオンに対応したネットワーク利用 者認証システムの開発,情報処理学会論文誌Vol. 50 No. 3,pp.1-9,(2010)
2)中島ゆり,お茶の水女子大学の課題:平成22年度「お茶大生の学習環境と生活・意識に関する調査」報 告,お茶の水女子大学教育機構紀要『高等教育と学生支援』第2号,pp.64-76,(2012)
3)[総務省情報通信政策研究所,高校生のスマートフォン・アプリ利用とネット依存傾向に関する調査報告 書,(2014.7)http://www.soumu.go.jp/main_content/000302914.pdf
4)陳那森・山下泰生,情報環境の社会的進展を重視したユーザビリティの高い新たな教育環境の可能性に 関する提案,日本教育情報学会第30回年会論文集,pp168-169,(2014.8)
5)陳那森・山下泰生・窪田八洲洋,「授業外学修におけるスマートデバイスの活用の可能性について」,日 本教育情報学会第31回全国大会予稿集,pp.314-315,(2015.8)
【参考文献】
・入江公啓,SNSによる教育・学習支援の試み,志學館大学研究紀要 Vol.30,No.1(2009)pp.93-104.
・村上正行・山田政寛・山川修,SNSを活用した教育・学習の実践・評価,教育システム情報学会誌 Vol.28,
No.1,pp.36-49,(2011)
・村田和也,藤本貴之,スマートフォンの授業利用を実現させつつ“授業目的外使用”を制限させる授業補 助環境の構築,情報処理学会,2013-Interaction(1EXB-34)pp.267-269,(2013)
・和田康宏・大西克実・中野秀男,BYODを活用した授業支援システムの開発と評価,情報学 Vol.11,No.2,
pp.1-18,(2014)
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