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国際連結 における外貨換算会計の在 り方

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(1)

国際連結 における外貨換算会計の在 り方

松 本 康一郎

Ⅰ.序

「モ ノを輸出するだけでなく、海外 に資本 を投 じ工場 を作 り現地坐 産する時代が始まっている。 この海外直接投資 は相手国にとって雇用 の増加 にな り、輸入の一部が国内生産 に振 り替わるので貿易収支の改 善 となる。一方、日本 は貿易摩擦 を回避するとともに、国際社会の中 で共存共栄の道 を拡大することにもつながる

。 1 ) 」

以上の記事 が示 す ように, 日本の海外 直接投資 (

f o r e i gndi r e c t i vei nve s t ‑ me nt

,以下,

FDI

という)も本格的な段階にきている。とくに

,1 9 8 0

年代 に 入 ってか らの増加ぶ りは目ざま しく

,8 4

年度 は

1 0 2

億 ドルという

『FDI

百億 ド ル時代』 を迎 え

,8 5

年度 は前年度比

2 0. 3%

増 の

1 2 2

億 ドルとな り,毎年の投資 額 およびこれまでの累積残高 において,米国,英国に次 ぐ世界第三位の地位 を

占めるに至 っている。

この

FDI

の中身 は多様 であるが2),ともか くも,たんなる資産運用ではな く, 外国での事業運営 ・経営参加 を目的 とした投資であるとすれば,わが国の企業 活動 も,本格的な国際化 ない し多国籍化の道 を歩みつつあると言えよう。そこ で,わが国の企業会計 (制度 )も, こうした環境変化への対応 を顧慮する必要

1

)日本経済新聞

( 1 9 8 6

6

1

日付 け)の特集記事 「海外 直接投資①」の序文 より。

2

)大蔵省の対外 直接投資届出統計 によると,わが国が

FDI

を行 う目的は,次 の

3

りに分かれる。

外国法人の株式ない し持分の10%以上 を取得する証券取得

出資比率10%以上の外国法人 に対する貸付

支店の設置ない し拡張

〔3 2 9 〕

(2)

330 37巻 1 ・2 ・3

が ある。

企業会 計 が この ような環境 に直面 したときに論 じられ るべ き点 は種 々あろ う が, と くに財務会計 の観点 か ら検討 され るべ き重要 な対象 と して,国際的 な連 結 財 務 諸 表 の作 成 と外 貨換 算 (

t r a ns l a t i onoff or e i gncur r e nc i e s)

2

点 が 挙 げ られ よう。 わが国 において も,一般 に公正妥 当 と認 め られ る会計基準 と し

て, 昭和

5 0

年 に 『連結 財務諸表 原則

』 3 )

が公表 され,次 いで5

4

年 には 『外貨建 取 引等会 計処理基準』4)が公表 されて いる。

本稿 で は,以上 2つ の課題 に関 して,国際連結 のために行 われ る外貨換算 の 在 り方 を検討 す る。す なわ ち,在外子会社 の作成 した外貨表示財務諸表 を連結 財務諸表 へ組 み入 れ る際 に行 われ る外貨換算 とい う行為 が, いか なる性格 ない し目的 を持つ ものであ り, その結果 と して どの ように会計処理 され るべ きなの か を考 えてみたい。と くに,その際 には,国際連結 に向 けて上述 の 『外貨基準

が採 った考 え方 を明 らか にす るとと もに,そ こでの問題点 にも言及 してみたい。

Ⅰ.

企業の 「国際化」の意味 と国際会計

今 日, わが国 において も,企業 の国際化 とそれ に対応 す る会計 (国際会計 ) の在 り方 が問われてい る。 しか し, そ こでの会計課題 を連結財務諸表 の作成 と これ に関連 す る外貨換 算 に限定 した と して も,企業 の 「国際化」 の意味 が明確 にされな けれ ば,つ ま り,企業 が採 る国際化戦 略 の諸類型 を分類整理 して初 め て,各類型 に応 じて,国際連結 お よび これ に係 わ る外貨換 算 の論点 が明 らか と な る。

3)企業会計審議会は,この原則 (以下

,

連結原則』 という)の発表 (昭和506月) に先立って,連結財務諸表の制度化に備えてガイ ドラインを示す目的で 「連結財務 諸表の制度化に関する意見書」(以下,「連結意見書」という)が出されている。そ して

,

連結原則』の発表後 これまでに,一部字句の修正はあったが,実質的な修 正は行われていない。

4)この基準 (以下

,

外貨基準』という)は,発表 (昭和546月)の後,58年12 に注解

4‑ 2

が追加されただけで現在に至っている。

(3)

国際連結における外貨換算会計の在 り方

331

1

.国際化戦略の過程

国内生産 および国内市場 での販売か ら,外国市場 を求めて企業が採 る国際化 戦 略 の諸類型 を段 階的 に見 れ ば,先 ず大 まか に次の ように分額 され るであろ

5)0

(1) 外国市場への販売拡大

( 2 )

生産体制の再編成

( 3)

サー ビス分野の外国進出

企業が最初 に採 る国際化戦略 は,国内生産 の販売拡大 を目的 とす る外国進出, つま り輸出戦略 さらにこれの拡大である。ひとくちに輸出戦略 といって も,初 めは,基本的に本国内 (親会社 )の立場か ら,次の ような段階で展開 される。

<本国内での活動> <現地国での活動>

輸出部 の創設 l

輸出専 門会社 の設立

(診現地 国代理店 との提携 1

④在外撃墜垂 の創設

(連絡事務所‑出張所‑在外支店 )

(f or e i gnbr a nc h)

しか し, この段階では,投資額すなわち事務所経費や代理店手数料 に見合 う 販売拡大 には限界がある。そこで,本格的な輸出拡大 のためには,商業投資 を 現地 国へ直接行わぬばな らない。つ ま り, この商業投資 (前方垂 直的投資 )に よって,本 国 内 で の生 産 給 付 を当該 現 地 国 で販 売 す る た め の在 外 子 会 社

(f or e i gns ubs i di a r y)

が設立 されるのである6)

この ように商業投資 と しての

FDI

による輸出拡大戦略 を通 じて獲得 した外 国市場 を維持 ・拡大するためには,次の段階 として,本国内の生産 だけにとど

5

)以下の分類整理に当たっては,田中拓男

( 1 9 8 5)

,島田克美

( 1 9 8 6)

および宮崎義

( 1 9 8 2)

を参照0

6)1 9 7 0

年代に日本が行った先進国向け投資は,まさに,輸出拡大に本腰を入れ始めた 日本企業によるこの商業投資が中心であった。

(4)

3 3 2

商 学 討 究 第

3 7

巻 第

1・2・3

まるのでな く何 らかの形で生産体制 の再編成 を図 らねばな らない。具体 的にそ こで採 られる戦略 を動機別 に分類すれば,次の諸類型が考、え られ よう

低生産 コス ト地域への生産進 出 (水平的投資 )

(動機 ) :輸出拡大戦略 にともなう本国内経済の成長 によって生 じる生産 コス トの上昇 か ら, リスク (競争力の低下,市場 の喪失 )が増大 す るのを回避す る7)0

外国資源開発のための子会社設立 (後方垂 直的投資 )

(動機 ) :資源産出国の資源ナ ショナ リズムによる資源価格上昇 に対処す 8)0

技術革新 に対応 した生産体制 の再編成

(動機 ) :いったん獲得 した研究開発成果 を国際化戦略 と して積極 的に活 用する。

外国市場防衛のための生産体制の再編成

(動機 ) :輸出拡大戦略 に対す る当該現地国での各種 の圧迫 に対処 する9)

部品の安定的な調達のための生産進 出

(動機 ) :現地生産成功 の前提条件 である,良質で適切 な価格 の部 品を必 要充分 に調達できるようにす る。

生産体制の再編成 を動機別 に見れば以上 のとお りであるが, ひとくちに現地 生産のための

FDI

といって も, リスク回避 との係 わ りで,直ちに完全 な現地 生産 を行 うと は限 らな い。例 え ば,上 記③ で は, いわ ゆ る ライセ ン シ ング

(l i c e ns i ng

)といった特許料収入 だけを見込 む消極的 な戦略が考 え られ る。

また,上記④ では,当該現地国以外 の第三国市場 の開拓 といった消極策 も考 え られ る。 さ らに,上 記⑤ で は, い わ ゆ る ノック ・ダウ ン (KD )の ための

7)1 9 6 0

年代後半から

1 9 7 3

年頃までの日本繊維産業による東南アジア諸国への進出が,

これに該当する。

8)1 9 7 0

年代後半に起きた原油価格上昇にともなって,日本の石油エネルギー多費消型 の装置産業 (アルミ・石油化学)が生産工場の外国移転を図ったのがこれに当たる。

9

)米国市場における日本の場合,1

9 7 0

年代後半のカラーテレビや

1 9 8 0

年代の自動車に おける輸出急増によって輸出自主規制に追込まれ,その結果,現地生産のための

FDI

が行われたのである。

(5)

国際連結 における外貨換算会計の在 り方

33 3

FDI

か ら,本国内の部品産業 による現地生産 のための

FDI

IO)まで,採 りうる 戦略は多様である。

この ように,何 らかの形の

FDI

を通 じて企業 とくに製造業が現地活動 を始 めるにともなって,次の新 たな段階の国際化現象が現れる。すなわち, これ ら 製造業 を支援するために,サ‑ ビス分野の諸企業 が,現地活動のための

FDI

を行 うのである これに属する産業部門としては,金融業 (銀行,証券会社 ), 流通業 (商社 ),情報産業,建設業そ して不動産業などが挙 げられる。

以上の ごとく,

FDI

は,企業の 「国際化」 を示す重要 な指標 と見 なす こと ができる。 もっとも,本節 において比較的詳 しく取 り上 げた製造業の

FDI

, つ ま り現地生産 を始 めるための

FDI

を見て も分かるように,その結果 と して の在外支店 ない し子会社 は,どのような戦略 に基づいて設立 されたのかによっ て,企業集団内の位置や本国 (親会社 )との関係 を異 にする。さらに,企業 は, この国際化 を押 し進 めることによって多国籍企業11)ない し世界企業への道 を 歩 むのであろうが,その場合で も,各在外子会社 に対する親会社の経営支配力 が どの程度であるのかによって,さまざまな レベルの多国籍企業が考え られる。

例 えば,現時点における日本企業 は,総 じて言えば,あくまでも本国の生産体 制 を中心 に して,国内販売 ・輸出 ・現地生産 による販売の

3

つの戦略を適当に 組み合わせる戦略 を採 っている12)0

2.国際連結の意義

企業 は,

FDI

を通 じて国際化 を押 し進 める。その結果,法的には別個 の複 数の個別会社か ら成 る企業集団が形成 される。こうした企業集団化現象下では, 個々の法的実態 (会社 )が開示 する個別財務諸表 だけでは充分 でない。「連結

1 0)

例 えば,"ホ ンダ"の場合 には,親会社工場の米国進出にともなって, 日本の部品 下請各社が共同出資 して"KTHパーツ社" を現地 に設立 した0

ll)これについては,さまざまな呼び方があるが,例 えば国連の多国籍企業委員会 では,

Tr a ns na t i ona lCor por a t i ons

と定義 している。

1 2)

"日産 自動車" でさえも, これ ら

3

つの戦略を各

3

分の 1ずつの大 きさにもって行 くのを,現時点での最終 目標 に しているという。

(6)

334 37 1 ・2 ・3

意 見書」 で触 れ られて い る ように13),企 業 集 団 を構成 す る親会 社 お よび各子 会社 の個別財務諸表 を結合 した連結財務諸表 を作成 す る意義 は,企業集 団 と し

て投資情報 を開示 す る ことにある。すなわ ち,各会社 の債権 ・債務 はもちろん の こと,配 当可能利益 それ 自体 を開示 す るのが 目的で はない。この ことは

,

結 原則』 が14),連結 損 益 計算 書 の作 成 につ いて当期未処 分利益 で な く当期純 l

利 益 の表 示 しか求 めて いない点 か らも明 らかであ る。 したが って,連結財務諸 表 の作成 は,個別財務 諸表 だ けで は知 りえない企業集 団 と しての投資情報 を提 供 す るとい う意 味 にお いて, よ り良 いデ ィス クロー ジャーの遂行 (情報 開示主 義 )とい う立場 か ら求 め られ るものである。

さ らに, 『連結原則

で は,連結財務諸表 の 目的 を次 の ように定 めて いる。

連結財務諸表 は、支配従属 関係 にある二以上 の会社 か らな る企業集 団 を 単一 の組織体 とみ な して、親会社 が当該企業集 団の財政状態及 び経 営成績

を総 合的 に報告 す るため に作成 す るものであ る

」 (連結原則 ,第一 ) ここで は,次 の

2

点 に注意 しな けれ ばな らない。第

1

に,連結財務諸表作成 の 対象 である企業集 団が,単一 の組織 体 と見 な され ている点 である。 もちろん, ここでい う単一 とは,法的 にでな く経済的 な意味 においてである。したが って, 経 済的のみな らず法的 に も単一組織体 で ある支店 とは,明確 に区別 して取 り扱

われね ばな らない。 これ に関連 す る ことで あるが,第

2に,連結財務諸表 の報

告主体 を親会社 に置 いている。一方 で は,企業集 団 を構成 す る親会社 お よび各 子会社 を単一組織体 と見 な しなが ら,他方 で は,連結財務諸表 を親会社 の立場 か ら作成 す る ことを求 めてい る。つ ま り,親 会社株主 を会 計主体 と見 る ことが, 連 結 の基 本 的視 点 とな って い るの で あ る15)。 したが って, その よ うな連結 財 務 諸表 に真 実 な報告 を求 め る と して も16), それ は, あ くまで親 会社 か ら見 た

1 3)

連結意見書」の前文,「‑ 制度化について」の

1

において言及されている。

1 4)

連結原則

,第五の‑を参照。

1 5)

このような視点を親会社概念 (

pa r e ntc ompa nyc onc e pt)

という (武田隆二 (1977)

pp. 6 8‑7

1を参照)0

1 6)

連結原則』 は,一般原則の第

1

に,次のような真実性の原則を挙 げている。「連結 財務諸表は,企業集団の財政状態及び経営成績に関 して真実な報告を提供するもの でなければらない。

(7)

国際連結 における外貨換算会計の在 り方

3 3 5

企業集団全体 に関 してであ り,各子会社の財政状態および経営成績 を,それ ら の活動 どお りに報告することにはつなが らない。

以上 において,連結財務諸表作成の意義 ない し目的およびそこでの留意点が 明 らかにされた。 このことは, 日本企業 (親会社 )が在外子会社 を擁する場合 にも当てはまることであ り,よ り重要性 を持つ ことになる。なぜな ら, この親 会社 の株主 たちが,本稿 ですでに見てきたような多療 な在外子会社 を抱 える親 会社 の収益力予測 を決定するのに,そうした国際連結財務諸表 は重要な1つの 判断資料 とな りうるか らである17)0

Ⅱ.

外貨表示財務諸表の換算

1.外貨換算の諸方法

企業の国際化 にともなって,在外子会社 をも含む連結財務諸表すなわち国際 連結 が1つの重要 な情報開示手段 になって くると18),それの作成 に際 して, 在外子会社の個別財務諸表 につ いて測定単位 を統一 しなければならない。すな わち,連結財務諸表か ら見て,外貨表示財務諸表 をいかに換算するかという会 計課題が生 じるのである。

外貨表示財務諸表の換算方法 として これまで表明されてきた諸方法 は,従来

4

つ に代表 されるという。歴史的に挙 げれば,次のとお りである19)。

① 流動 弓 巨流動法 (

c ur r e nt ‑ nonc ur r e ntme t hod)

: 流動資産 ・負債 に決算 日の為替 レー ト20)を適用 し,その他 の資産 ・ 負債 には,当該資産 ・負債 の取得 日ない し発生 日の レー ト21)を適用す

1 7)

ただ し,以上の言明は,投資者が配当指向 (短期的な投資情報の欲求)だけでなく, キャッシュ ・フロー中心の長期的な観点に投資判断の基準 を求めることが,前提 と なる (中村忠

( 1 9 8 6) pp . 1 2 7‑1 2 8

を参照)0

1 8)

国際化 の最 も進 んでいる米国では,上場企業が証券取引委員会

(SEC)

に提出す る財務諸表 は,連結の ものが主であり,個別財務諸表 は補足情報 として位置づ けら れている. この点 につ いては,明日山俊秀

( 1 9 7 9) pp. 5‑7

を参照.

1 9)

換算方法 に関する諸見解 の歴史的経過 につ いては,宮田達郎

( 1 9 8 4) pp ・ 2 2 9‑

2 3 9

および隅田‑豊

( 1 9 8 2) pp. 2 8‑2 9

を参照。

20)

c u r r e n tr a t e

ない

Lc l o s i n gr a t e

。以下,

CR

という。

2 1)h i s t o r i c a lr a t e

。以下,

HR

という。

(8)

3 3 6

商 学 討 究

3 7

1・2・3

る換算方法。

② 貨幣 ・非貨幣法 (

mone t a r y‑ nonmone t a r yme t hod)

: 貨幣性資産 ・負債 に

CR

を適用 し,その他 の資産 ・負債 には

HR

を 適用する換算方法。

③ テンボ ラル法 (

t e mpor a lme t hod)

: 現金,金銭債権 ・債務および現在 ない し将来の価額で表示 されている 資産 ・負債 に

CR

を適用 し,その他 の資産 ・負債 には,

HR

を適用す

る換算方法。

④ 決算 日 レー ト法 (

c ur r e ntr a t eme t hod)

: 総 ての財務諸表項 目 (も しくは資本諸勘定 を除 く)に

CR

を適用す る換算方法。

以上

4

つの換算方法 について述べた特徴 は,決算 日現在の貸借対照表項 目の うちどれ に

CR

を適用す るのか による相違 である。要 す るに,換算諸方法の 相違 は,為替 変動 に さ らされている外貨項 目つ ま り最終 的 にはそれの純額

(e xpos ur e :

(為替 )エ クスポ‑ジュアという)を, どれに規定するかの相 違 に帰着するのである。 この ことは,換算 それ自体 をいかなる会計行為 と見 る のかに係 わることである。

一般 に換算方法 と言 えば上の

4

つが挙 げられるが, これ らは,総て同次元で 並列 されるものではない。先 に述べた特徴 か らも明 らかなように,テンボラル 法 は,貨幣 ・非貨幣法の延長 ない し改良 と見なす ことができる22)

これとは逆 に,(資本諸勘定 を除 く)決算 日レー ト法 と貨幣 ・非貨幣法 とは, 全 く対立する関係 にある。とくに,企業の通常の財務構造である,金銭債務が 金銭債権 を超過する場合 (これを

s hor tpos i t i on

:ショー ト・ポジシ ョンとい う),「‑貨幣債務超 というエ クスポ‑ジュア (貨幣 ・非貨幣法の場合)と純資 産 というエクスポ‑ジュア (決算 日 レー ト法の場合)とは,常時,借方 ・貸方

2 2)

宮田達郎

( 1 9 8 4)

p

・ 1 7

によれば,‑貨幣 弓 巨貨幣法 とテンボラル法 とは,同根 のものであ り,‑後者 は・前者がその中に発展的解消を遂 げたものと考えて いい」

という。

(9)

国際連結における外貨換算会計の在 り方

337

が相反 し,為替相場変動 の影響 が常 に逆方 向 になるとい う宿命 的 な対立 関係 に ある23)」 のである。

2.

外貨換算方法 の国際的動 向

以上 の ごと く, 国際連結 に際 しての外貨表示財務諸表 の換 算 には

4

つ の方法 が考 え られ るが,今 日国際的 に見 て, いずれの方法 を選択 す る方 向 にあるの だ ろうか。 この ことに関 して,諸外 国が連結 に当 たって採用 している通常 の換算 方法 は,

Pear cy

(

1984)

に よれ ば次 の とお りである24)

決算 日レー ト法 (純投資法) の適用,もしくは,子会社の 経営 が親会社 と不可分 ならば

テンボラル法の適用 (流動 ・非流動法およ び貨幣 弓巨貨幣法の適 テンボラル法の適用 決算日レー ト法の適用 用を含む)

オース トラリア ベルギー

デンマーク

イ ン ド オランダ シンガポール 南アフリカ スペイン ス イ ス

アルゼンチン ブラジル フランス 西 ドイツ メキシコ パキスタン

フィリピン スウェーデン

この分類整理 が示 す ように,諸外 国 にお ける襖 算方法 の採用 は多様 であ る.

もっ とも,一般的趨勢 と して少 な くと も次の方 向 にあ るだろ う。第

1

に,流動 ・ 非流 動法 の み を外貨表 示財務諸 表 の換 算 に使 用 す る方法 は

,

「‑理論 的 に支持

を失 いつつ あ り,実務的 に も漸 次使用例 が な くな りつつ ある」 と言 え よう。一 般 に貨 幣 ・非貨 幣法 の提 唱者 と見 な され る

Hepwor t h

は, 「流動性 区分 は,宿

2 3)

宮田達郎

( 1 9 84) p. 20

1 2

〕。

2 4)J・ Pear c y ( 19 8 4) p・ 1 31

を参照oなお,以下の図の左のグループにおいて,決算 日レー ト法 (純投資法)

(c l os i ngr a t e/ ne ti nve s t me ntme t hod)

とは,資本諸勘定 を除く決算日レー ト法を意味する。

(10)

33 8

3 7

1・2・3

用分析 に用 い られる技法であって, この区分 を換算 に持 ち込 む ことは,人 を誤 らせ る もので ある25)」 とい う。つ ま り,

Hepwor t h

に よれ ば26),非貨 幣性項 目は直接的に確定 しうる外貨量 を有 しない項 目であるか ら,それの うちの流動 性項 目 (例 えば,棚卸資産 )に

CR

を適用す るのは妥当でないというのである。

第 2に,貨幣 ・非貨 幣法 は,先 にも述べ たようにその役割 をテ ンボラル法 に 引継 がれ,取 って替わ られていると言えよう。というの も,そもそも, テンボ ラル法の最初 の提案者 である

Lor ens en

27),

Hepwor t h

の主張 における理論 的欠陥 を埋めようとしていたのである28)0

したが って,外貨表示財務諸表の換算方法 と して今 日考 え られ る選択 の余地 は,基本的 に, テンボ ラル法 と決算 日レー ト法の

2

つ に絞 られる。 この一般的 趨勢 にいわゆる先進諸 国はどの ような対応 を しているのであろうか。

先 に示 した

Pear c y

による分類か らも分 か るように,米 国や英 国では,在外 子会社の置かれている状況 に応 じて, これ ら

2

つの方法 を使 い分 けている。周 知 の ごと く,米 国では,財務会計基準審議会 (

FASB

)が

1981

12

月 に基準 書第

52

号 (

SFAS No. 52

)を公表 し29), それ以前 の

SFAS N。. 8

30)が勧告 し

たテ ンポ ラ)I,法 か らの転換 を図った。すなわち,

SFAS No. 52

は,機能通貨

(f unct i ona lcur r ency

)つ ま り 「ある事業単位 が事業 を行 っている第

1

次的 に重要 な経済環境通貨31)

とい う概念 を通 じて, それが現地 国通貨 なのかそ れ とも本 国通貨 なのかによって,前者 には決算 日 レー ト法 を適用 し,後者の場

2 5)S. R. He p wor t h ( 1 9 5 6)p.8

を参照。

2 6)S. R. He pwor t h ( 1 9 5 6)p. 2 0 3

を参照。

2 7) L Lor e ns e n

,1 9 7

2年に米国公認会計士協会

(AI CPA )

の会計調査研究叢書

(ARS)

1 2

号を著し,その中でテンボラル法を提唱した。

2 8)L Lor e ns e n ( 1 9 7 2)

Di r e c t or ' sSt a t e me ntp. i x

を参照。

2 9) SFASNo. 52

外貨換算

」 (For e i gnCur r e nc yTr a ns l a t i on)

,1 9 8 1

1 2

月に 公表された。

3 0) SFASNo.8

外貨表示財務諸表換算の会計処理

」(Ac c ount i ngf ort heTr a ns l a ‑ t i ono fFor e i gnCur r e nc yFi na nc i A ISt a t e Te nt)

,1 9 7 5

1 0

月に公表されたが, 公表以来各方面から多くの批判が寄せられたために,先述の

No. 5 2

によって,換 算方法としては

1 8 0

度転換の改定が行われたのである。

3 1)SFASNo. 52,pa r . 5

0

(11)

国際連結 における外貨換算会計の在 り方

339

合 にはテ ンボ ラル法 を適用 す ることを定 めたのである32)。英国において も,

SFAS N。. 5 2

とほぼ同様 の方法が,会計実務基準書第

2 0

号 (

SSAP 2 0

)33)に よって採 られた。ただ し,

SSAP 2 0

では,機能通貨ではな く,在外子会社等 の経営成績が親会社通貨の経済環境 に依存 している (場合 には,テンボラル法 を適用)か否かによって,

2

つの方法 を使 い分 けている。 これと同様の見解 を 示 したのが,国際会計基準委員会 (

I ASC)

による基準書第

2 1

号 (

I AS21

)34)

である。 ここでは,在外企業体 が親会社 と不可分の関係 にある (場合 にテンボ ラル法 を適用 )か否かによって,

2

つの方法 を選択適用 している。

この ように,米 国,英 国および

I AS

Cでは, テンボ ラル法 と決算 日 レー ト 法の2つの換算方法 について,一定の規準の下 に使 い分 けをしているように見 える。 しか し,その使 い分 けに際 して用 いられる規準の表現 こそ違 え,実質的 にはいずれも決算 日レー ト法 を原則的換算方法 としていると言える。というの も,テンボラル法の適用対象 となる在外子会社 は,その経営上 において本国 (親 会社 )に依存的ない し従属的な性格 を有 してお り,そうした子会社 は,本稿の 初 めに見 たように,

FD

Iの本来の意図 を未 だ充分 に反映 していないか らであ る。換言すれば,テンボラル法が適用 される子会社 は,企業集団として重要性 の比較的乏 しい事業体なのである。

さらに,その他 の先進諸外国 とくにヨーロッパ諸国では,主 として決算 日レー ト法 を採用 していると言われている35)。 もっとも,

Pear cy

による分類 を見 る と,あながちそうとも言えず,西 ドイツではテンボラル法が,そ してフランス では貨幣 ・非貨幣法が支配的に適用 されているようである36)0

とは言え,外貨表示財務諸表の換算 に関する国際的動向 としては,とくに多 国籍企業集団 に係 わって

I AS

Cの決定 を尊重 すれば,原則的 に決算 日 レー ト

3 2)SFAS No. 5 2,pa r :1 0‑1 6

を参照.

I

3 3)SSAP 20

外貨換算

」(For e i gnCur r enc yTr a ns l a t i on)

,1 9 83

4

月 に,イ ングラン ド・ウェールズ勅許会計士協会

(I CAEW )

によって公表 された。

3 4) I AS21

外国為替 レー ト変動の影響の会計処理

」(Ac c ount i ngf ort heEf f e c t sof Cha ngesi nFor e i gnExc ha ngeRa t e s

)は

,1 9 83

7

月 に公表 され た。

3 5)

例えば,隅田‑豊

( 19 8 2)p.3 2

および宮田達郎

( 1 9 84)pp. 23 8‑23 9

を参照.

(12)

3 4 ( )

3 7

1・2・3

法の適用 が支配的であると結論づ けるのが,妥当であろ う。

3

.外貨換算 の意味

わが国では, 『外貨基準』 の設定 に当 たって,「決算時の外貨換算 に際 してい かなる為替相場 を選択 ・適用 すべ きかにつ いては、流動 ・非流動法 、貨 幣 ・非 貨幣法、 テンボ ラル法 、決算 日 レー ト法等 があるが、 これ らの うちいずれの方 法 を採 るべ きか3

7 ) 」

が,問題 の 1つ とされ た。 しか し今 日で は,本稿 ですで に見 て きたように,外貨表示財務諸表 の換算 につ いて,少 な くとも理論 的 には, テ ンボ ラル法 と決算 日 レー ト法 の2つ に,その選択余地 が限定 され るI 国際的 動 向 と しては,先 に述 べ たように,原則的 に決算 日 レ‑ ト法 の適用 が支配的で ある。 けれ ども,その ことが,今 日の企業会計 (制度 )における外貨換算 の本 来の 目的 に即 したものなのか につ いては,今一度検討 され る必要 が ある。

L。r 。ns enに よれば

38),換算 (

t r ans l a t i on)とは,測定 (

通貨 )単位 (のみ ) を転換 す る過程 (

meas ur ementconver s i onpr oces s

)で ある。 それ ゆえ,換 算 を行 うことで,元 の外貨表 示財務 諸表 の属性

( at t r i but es)を変 え る もので

あってはな らない。外貨換算 の本来 の目的が この ことにあるとすれば,換算 と いう会計行為 は,財務諸表 の測定尺度 をたんに変更す る行為 に過 ぎず,間違 っ て も,換算後 の通貨単位 にお ける貨 幣価値 を示 す評価行為ではないと言 える0 換算 に関す る以上 の定義 を前提 とす るな らば,決算 日 レー ト法 が採 られ ること

はあ りえないだろう。 なぜな ら,決算 日 レー ト法 が適用 されるとい うことは, と くに非 貨 幣性 項 目に係 わ る外貨建 取 引 (

f or ei gncur r encyt r a ns act i on)の

換 算 を考 え た場 合, そ れ が 決 算 日現 在 い ま だ 未 決 済 で あ るつ ま り転 換

3 6)∫. Pe a r c y( 1 9 8 4)p.1 3 0

を参照。また,西 ドイツについては,連結財務諸表 (

Konz e r n

Abs c hl i i s s e

)において在外子会社を,これまで株式法上

( 3 2 9

条)連結範囲に含め ていなかった。けれども,例えばわが国でも有名な多国籍企業である

Da i ml er

Be nz

社やVol

ks wa ge n

社の年次報告書

(Annua lRe por t)を見れば (

前者につい ては

1 9 8 3

年度,後者については

1 9 8 4

年度のものを参照)/,国際連結財務諸表が示さ れかつテンボラル法が適用されている。

3 7)『

外貨基準』の前文

(

外貨建取引等会計処理基準の設定について」)の二

(

外貨建 取引等会計処理会計基準」の性格)の1(1)

3 8)L Lor e ns e n ( 1 9 7 2)pp. 17‑1 8

を参照。

(13)

国際連結における外貨換算会計の在 り方

3 41 (。。nv。 r s i 。n

)39)が行 われていないに も拘 らず,為替変動 の影響 を会計上積 極的 に把握 しようとす ることにつ なが るものだか らである。吉田 寛教授 によ れ ば40),換算 を以上 の ように捉 える限 り,決算 日 レー ト法 の適用 は 「為替変 動会計」 で あ り, 「為替換算会計」 とは区別 される。 しか も, こう した為替変 動会計 は,少な くともわが国における企業会計の根底 をなす取得原価主義の見 地か らも,認 め られないであろう。

以上の ごとく,外貨換算の本来的意味か らすれば,外貨表示財務諸表 の換算 に決算 日 レー ト法 を適用することはあ りえない。 もっとも, この ことが,先 に その特徴 を述べた本来 の意味でのテンボ ラル法 を適用 することに,直ちに結 び つ くものではない。テンボ ラル法 によれば,金銭債権 は総 て

CR

で換算 され る。

しか し,長期金銭債権 につ いて もその ように扱 うことは, この項 目の属性 を変 えることにつ なが りかねない。 この点 について,わが国の 『外貨基準』 は,巧 妙 な取扱 いを定 めたと言 えよう。すなわち, 「貨幣 ・非貨幣法 に流動 ・非流動 法 を加味 した考 え方 を採択 し4

1 ) 」

たので ある。 したが って,わが国で は,外 貨建 お よび外貨表示 の金銭債権債務 の うち,短期 の もの は

CR

で, そ して盲 期の ものは

HR

で換算 されることになる。

さらに,テ ンボ ラル法 を外貨表示財務諸表 の換算 に適用 した場合 に,外貨表 示の当期純損益 お よび期末留保利益 につ いて,その属性 を変 える恐 れがある。

いわ ゆる 「換算 のパ ラ ドックス」 の発生 である42)。 テ ンボ ラル法 (貨 幣 ・非 貨幣法 をも含 めて)によれば,換算 にともなって生 じた換算差額 は,当期 の為 替差損益 と して当期純損益 に含 め られ る。 この結果,在外事業体 (支店 および 子会社 )について,外貨表示財務諸表で は利益 なのに,連結時ない し本支店合 併時 には欠損 とい う事態 を招 きうるのである。 この点 につ いて も, 『外貨基準

3 9)SFASNo. 5 2

によれば,転換とは 「ある通貨を他の通貨と交換すること」であり,

他の通貨で建て.られたり,または測定されている金額を企業の報告通貨に表示替 えするための手続き」である換算とは,区別されねばならない。(

FASB( 1 9 81 ) pa r .1 6 2

を参照)0

4 0)

吉田 寛

( 1 9 8 4)p p.4‑1 0

を参照。

41

)

外貨基準』前文の二の1

4 2)

換算パラドヅクスの発生例については,隅田‑豊

( 1 9 8 2)p. 6 7

を参照。

(14)

3 4 2

3 7

1 ・2 ・3

は,1つの工夫 を施 している。すなわち,在外子会社 について 「外貨表示財務 諸表上の当期純利益 (筆者 :純損失 の場合 も含む)及び期末留保利益 について

は、決算時の為替相場 による円換算額 を付する43)」 こととしたのである。

このように,わが国の 『外貨基準

では,いくつかの工夫あるいは修正 を加 えてはいるが,基本的には,外貨表示財務諸表の換算 にテンボラル法 を適用す ることを意由 している。 この ことか ら, 『外貨基準』 において適用 されるテン ポ ラ)I,法 は、一般 に 「修正 テンボラル法」 と呼ばれている。『外貨基準』 にお けるこうした修正 に対 して

,

現実の会計基準 (筆者 : 『外貨基準』)はそれ ら (筆者 :複数 の換算方法 )を組合せているため,非常 に複雑44)」 であるとか,

「各種取扱 いが錯雑 して しまった嫌 いが ある45)」 といった批判 がある。なる ほど,わが国の 『外貨基準』 は典型的な複数 レー ト法であろう。 しか し,それ は,単 に政策的配慮 によるというよりも,む しろ,本節で述べてきた外貨換算 の本来的意味 を貫 こうとした結果であると解 されよう。

4

.本国主義 と現地主義

・少な くとも,外貨換算の本来的意味が上述のごとくであるとすれば,外貨表 示財務諸表の換算 に決算 日 レー ト法 を適用することはあ りえず,基本的 には, テンボラル法の適用が考え られる。ところが,見方 を変えて,本国 (本店ない し親会社 )において行 われる外貨建取引の換算 との違いという点 に注 目すれば, 以上の結論 を直ちに受 け入れることはできない。

テンボラル法の基本的思考 は,すでに述べたように貨幣 ・非貨幣法であり, そ、れは,本国の外貨建取引項 目の換算方法 にはかならない。貨幣 ・非貨幣法の 延長上 にあるテンボラル法 を外貨表示財務諸表の換算 に適用することは,基本 的 に本 国 と同一の換算基準 に従 うことになる。白鳥庄之助教授 によれば46),

4 3)

外貨基準』三の

5

4 4)

中村

( 1 9 8 6) p. 1 5 7

4 5)

宮田達郎

( 1 9 8 4)

p

. 1 9

0

4 6)

以下 に述べ られる本国主義 および現地(国)主義 については,白鳥庄之助

( 1 9 7 9)

pp. 2 4‑26

を参照。

(15)

国際連結における外貨換算会計の在 り方

3 4 3

こうした換算方法の根底 には,次の ような考 え方 がある。すなわち,本来 は在 外事業体 の行 った取引 を,本店 ない し親会社 があたか も取引のつ ど本国通貨 で 記帳 し,その記帳 に基づいて本国通貨表示の財務諸表 を作成 したとすれば得 ら れるであろう本国通貨額 に換算することが考 え られているのである。 この考 え 方 を,一般 に 「本国主義」 という。 したがって,外貨表示財務諸表 の換算 にテ ンボラル法 を適用することは,在外事業体の経営 を本国内の経営の延長上 に位 置づ けることになる。

この本 国主義 とは逆 の考 え方が, 「現地 (国)主義」 である。すなわち,在外 事業体が現地国通貨で行 った記帳,およびその記帳 に基づ いて作成 され る現地 国通貨表示の財務諸表 を尊重 して,外貨表示財務諸表の形 を崩 さないように各 項 目を換算 しようとす る考 え方である。そ して, この考 え方 に合致 した換算方 法 と して挙 げられるのが,決算 日レー ト法である。

本稿 の初 めに述べたように,企業集団にとって在外事業体 はさまざまな レベ ルで設 け られる。それ故,当該事業体 が文字通 り本国の経営支配下 にあるな ら ば,採 られ るべ き換算方法 は, テ ンボ ラル法 にあると言 え よう。 けれ ども,

FD

Iつ ま り在外子会社 の最終 的 な姿 は,企業集 団 と しての全体 的 な経営戦略 の下 で,本国内の経営 それ 自体 とは独立 して活動することにある。先 に触 れた, 外貨表示財務諸表 の換算 に関する国際的動向, とくに米国,英国および

I ASC

のそれは, この ことを顧慮 したものであろう。

もっとも,外貨表示財務諸表の換算 に関す るこうした考 えは,最近 になって 示 されたものではない。テ ンボ ラル法の提唱者で ある

Lor e ns en

と時 を同 じく して, カナ ダにおいて,

Ra r ki ns on

が カナ ダ勅許会計士協会 (

CI CA

)の調 査研究叢書 (

as e r i esofRes ea r chSt udi es)

を著 し,その中で彼 は,親会社

か ら独立 してかつ安定 した通貨国内で活動 している在外子会社 (

f or ei gns ub‑

s i di a r i eswhi c hca r r yonoper a t i onsi nhar dc ur r enc ycount r i esi ndependent oft he i rpa r ent s

)につ いて,決算 日 レー ト法の適用 を主張 していたのである47)0

4 7)

R

. M. Pa r ki ns o n( 1 9 7 2 )Cha p t e r 7

を参照。

(16)

3 4 4

3 7

1 ・2 ・3

Ⅳ.

国際連結における外貨換算の役割

‑ 結語 にかえて ‑

以上 において,外貨表示財務諸表の換算 についてその在 り方 を考察 してきた が, さらに結論づ けるためには,国際連結会計それ自体の中で外貨換算 にいか なる役割 を求めるのかが考え られねばならない。

すでに見てきたように, 『連結原則』 によれば,連結財務諸表 の作成主体 は 親会社である。すなわち,親会社概念が基礎 に置かれている。 この前提の下で は,在外子会社の作成 した財務諸表の換算 は,本国主義 に基づいて行われるこ とになろう。 したがって,換算方法 としては,テンボラル法が適用 される。 し か も, このことは,換算の本来的意味にも合致 し,かつ本国 (日本 )の企業会 計の基本原則 (取得原価主義 )にも即 したものとなる。

もっとも, この ことが,連結財務諸表の作成対象である企業集団それ自体 を 的確 に捉 えているかどうかについては,疑問が残 るであろう。企業の国際化が 進展 し,いわゆる多国籍企業集団となれば,各子会社の経営 は,なるほど1つ の統一的な世界戦略の下 に置かれるが,しか し同時に,実際に行 われる経営 は, それぞれ独立的である。 したがって, もし当該企業集団がそうした多国籍企業 であるな らば,国際連結 に際 して採 られるべ き換算方法 は,現地国主義 に基づ し「た決算 日レー ト法に帰着するであろう。

しかも,こうした選択 は,連結財務諸表の作成意義 にもかなうものと考える ことができよう。連結財務諸表の作成 は,そもそも情報開示主義の立場か ら求 め られるものである。そこで開示 ざれるべ き情報 とは,親会社の株主が行 う投 資判断つ まり親会社の将来の収益力予測のための情報であ り,具体的には,長 期的なキ ャッシュ ・フローの予測 に役立つ情報である。独立的な在外子会社 に

あっては,在外支店のように本国へ利益の送金が直接行われるわけではない。

しか し,長期的 ない し究極的 に見て,各子会社 の経営成績 は,本国へ向か う キャッシュ ・フローの環流 と して反映 されると考 えられる。だとすれば,決算 日 レー ト法の適用 は,まさに当を得 たも のと言えよう

(17)

国際連結における外貨換算会計の在 り方 345

この意 味 か らす れ ば, 『外貨基準にお ける修正 テ ンボ ラル法 の適用 は,紘 果 的 に決算 日 レー ト法 の適 用 と同 じ効 果 を有 す る ことにな る48)。 なぜ な ら, 企業 の経営成績 はその期 の利益 に集約 され るので あ り, その当期純利益 に

CR

を適用 す る ことは,上述 の 目的 を満 たす ことにな るか らで ある。

ただ し

,

外貨基準』にあって は,テ ンボ ラル法 の適用 に際 して換算 のパ ラ ドッ クス を回避 す るのが 目的 であった。それ故,これの結 果生 じる換算差額 は

,

替換 算調整勘定」 に計上 され,換算差損益 とは区別 され たので ある。 この勘定 につ いて は, その位置づ けお よび活用 に関 して議論 の余地 の あると ころで ある が, この点 につ いて は,筆者 の次 の検討課題 と したい。

(昭和

61

1 0

1

日脱稿 )

48)

このことは,勝島敏明

( 1 9 7 9) No. 22 2

pp. 2 2‑2 3

において,具体例をもって示 されている。

(18)

346

学 討

3 7

1・2・3

〔1〕明 日山俊秀 ・白鳥栄一

( 19 7 9)『

新訂実践連結財務諸表

,第一法規出版。

〔2〕 FASB ( 1 975)Ac c o unt i n gfo rt h eTr a ns l a t i o no fFo r e i g 7 1Cur r e nc yTr an s a c t i o n s a ndFo r e i g n Cur r e nc yFi na nc i alSt a t e me nt s . St a t e me ntofFi na nci a lAccount i ng St a nda r dsNo. 8,Fi na nc i a lAc c ount i ngSt a nda r dsBoa r d.

〔3〕 FASB( 1981 )Fo r e i gnCur r e nc yT7 1 a nS l a t i o n. St a t e me ntofFi na nc i a lAc count i ng St a nda r dsNo. 52, Fi na nc i a lAc c ount i ngSt a nda r dsBoa r d.

〔4〕 S. R. He pwor t h( 1 956)Re po r t i n gFo r e i B

71(

砂e r at i o ns . Mi c hi ga nBus i ne s sSt udi e s

,

Vol .1 2,No. 5,Uni ve r s i t yofMi c hi ga n,AnnAr bo

r,

[5] I ASC ( 1983)Ac c o unt i n gfo rt h eEf fe c t so f Ch an ge s

i

nFo r e i gnExc h an geRa t e s . I nt e r na t i ona lAcc ount i ng St a nda r d 21,i nt e r na t i ona lAc count i ng St a nda r ds Commi t t ee,London.

〔6〕 I CAEW ( 1 983)Fo r e i gnCur r e nc yTr a ns l at i o n. St a t e me ntofSt a nda r dAc count i ng Pr a c t i c eNo. 20,TheI ns t i t ut eofCha r t e r e dAc cou nt a nt si nEngl a nda ndWa l e s .

〔7〕勝 島敏明

( 1 9 7 9)

新 しい為替換算会計の実務」,シリーズ解説

・3,4, 7 ,

理情報

』 No. 2 2 0,2 21 ,22 4

0

〔8〕 L. Lor e ns e n ( 1 972)Re po r t

in

g Fo r e i gn Ope r at i o nso f

U.

SCo mpa ni e si n U . S .

Do l l aT l S . AI CPA Ac c ount i ng Re s e a r c h St udy No. 1 2,Ame r i ca n I ns t i t ut e of Ce r t i f i e d ,Publ i cAc c ount a nt s ,Ne w Yor

k.

〔9

〕宮田達郎

( 1 9 8 4)『

外貨建取引等会計処理基準十講』東銀 リサーチインターナショ ナル編,同文舘。

〔 1 0

〕宮崎義一編

( 1 9 8 2)『

多国籍企業の研究

,筑摩書房。

〔 1 1

〕中村 忠編

( 1 9 86)『

対談 ・会計基準 を学ぶ』,税務経理協会。

〔 1 2

〕 日本公認会計士協会東京会編

( 19 82)『

為替換算会計の実務 (改訂版

) 』

,中央経 済社。

〔 1 3 〕

R

. M. Pa r ki ns on( 1 972)TT T a nS l a t i o no fFo r e i gnCur 7 T e nC i e s . CI CARe s ea r c hSt udy

,

TheCa na di a nI ns t i t ut eofChar t e r e dAc c ou n t a nt s ,Tor ont o.

〔 1 4 〕 J. Pe a r c y( 1 984)Ho w t oAc c o untfo rFo r e i gnCur r e nc i e s . Ma c mi l l a nPubl i s he r s .

〔 1 5

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〔 1 6

〕 白鳥庄之助

( 1 9 7 9)「

外貨表示財務諸表項 目の換算」

,

企業会計』第3

1

巻第

9

号,

pp. 2 4‑35 .

〔 1 7

〕隅田‑豊

( 1 9 8 2)「

外貨換算会計の概要」,吉田 寛 ・隅田‑豊編著 『国際会計概 説』第

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〔 1 8

〕武田隆二

( 1 9 7 7)『

連結財務諸表』,国元書房。

〔 1 9

〕田中拓男

( 1 9 8 5)「日本の海外直接投資」,貿易研修センター≪貿易大学≫編 『

際企業経営入門』第1章, 日本貿易振興会。

〔 20

〕吉田 寛

( 1 9 8 4)「

為替変動 と外貨会計基準」,吉 田 寛 ・隅田‑豊編著 『国際会 計要説』第1章,税務経理協会。

参照

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