アメ リカの雇用主提供退職者医療保険
中 浜 隆
(小樽商科大学助教授)
はじめに
アメ リカにおける公的医療制度 は、おもに
6 5
歳以上の高齢者 と障害 者 を対象 とする医療保険 としてのメディケアと、低所得者 を対象 とす る医療扶助 としてのメディケイ ドである。
こうした公的医療制度の対 象 とならない大部分の国民だけでな く、その対象 となる多 くの国民 も 私的医療保険に加入 しているO そして私的医療保険 によって保障されている大部分の国民 は、雇用主提供医療保険を通 じて医療給付 を受け ている。
他方、近年におけるアメ リカの医療制度は、医療費の持続的な上昇 によって基本的に特徴づけられている。それは、国民医療費支出の増 大 と国内総生産 に対するその比率や、消費者物価指数の上昇 (一般的 インフレ) を上回る医療の消費者物価指数の上昇 (医療費インフレ) にあらわれている。
こうした医療費の上昇は企業が支払 う医療費の増大 をもた らしてい る。そのために企業 は、医療保険に対 してさまざまな措置 を講 じるよ うになっている8従業員に対す る医療給付の制限や自己負担 (定額控 除 ・共同負担)の引 き上げ、管理型医療制度の導入、自家保険の採用
1) などである
。
‑9 9‑
アメリカの雇用主堤供退職者医療保険
表
8
メディケアの入院保険税 ・自己負担 ・保険料入 院 保 険 補足医療保険
入院保険税 定 額 控 除 共同負担a) 共同負担b) 月払保険料
0 , 7 % 40ドル 1 0
ドル
1. 2 5 2 1 3 18 9 2 2 3 21 1 8 0 4 5 2. 7 4 0 0 1 0 0 2. 9 4 9 2 1 2 3 2, 9 5 2 0 1 3 0 29 5 4 0 1 3 5 2. 9 5 6 0
C)2. 9 5 9 2 1 4 8 2. 9 6 2 8 1 5 7 29 6 5 2 1 6 3 2. 9 6 7 6 1 6 9 2. 9 6 9 6 1 7 4
5
0ドル3. 0
ドル65 5. 3 l l5 6. 7 2 2. 5 9. 6 5 0. 0 1 5. 5 6 1. 5 1 5. 5 6 5. 0 1 7, 9 6 75 2 4. 8 2 55 d) 2 7. 9 7 4. 0 2 8. 6 7 8. 5 2 9. 9 8 15 318 8 4. 5 3 6. 6 8 7. 0 4 1. 4 a ) 6 1
日日〜
9D日日の入院医療で患者が負担する1
日あたりの医療費b )2 1
日日〜1 0 0
日日の熟練看護施設医療で患者が負担する1
日あたりの医療費C) 1 9 8 9
年は適用されずd )1 9 8 9
年の最初の8
日間に対する共同負担ケアの補足医療保険の給付 については
、1 9 8 9
年包括財政調整法( O mni ‑ bu sRe c onc i l i at i onAc to f1 9 8 9 )
によって、医師の診療費 に対 して 診療報酬明細表( f e es c he dul e )
が採用 され、実際の診療費 と診療報酬 明細表によって算定 された診療費のうちの少ないほうが給付 されるようになっている。 こうしたメディケアの給付 を抑制する措置によって、
メディケアが認定 しない (したがって給付 しない)医療費 も企業 (戻 用主提供医療保険)や退職者に転嫁されることになる。
他方、65歳以上の現職者の医療費 も雇用主提供医療保険に転嫁 され
‑1 2 0‑
アメ リカの雇用主提供退職者医療保険
るようになっている。65歳以上の現職者 は、雇用主提供医療保険が第
1
順位であ り、メディケアが第2
順位である。そして企業は、 こうし た従業貞 (とその配偶者)に対 して65歳未満の従業員 (とその配偶者)と同 じ医療保険 を提供 しなければならない。 これ まで、従業員の退職 16)
年齢の引き上げ ・撤廃 にともなって、医療保障を受 けることので きる 従業貞 とその配偶者の範囲が拡大 されている
。1 9 8 2
年税負担の公正 と 財政責任 に関する法律( Ta xEqui t ya ndFi s c a lRe s po ns i bi l i t yAc t o f1 9 8 2 )
によって、従業員2 0
人以上の企業 は、6 5
歳か ら6 9
歳 までの従 業員 とその配偶者 に対 して65歳未満の従業員 と同 じ医療保障を提供 し なければならないことになった。そして、1 9 8 4
年財政赤字削減法( De f ‑ i c i tRe du c t i onAc tof1 9 8 4 )
によって、6 5
歳未満の従業員の6 9
歳から
7 0
歳 までの配偶者 にも拡大され、 こうした配偶者 に対 してメディケ アは第2
順位 になった。 さらに、1 9 85
年包括財政調整法( Cons ol ・ i dat e dO mn i bu sRe co nc i l i a t i onAc tof1 9 8 5 )
によって、7 0
歳以上 の 従業員 とその配偶者 にも拡大 され、メディケアの受給資格 を有する現 職者 とその配偶者 に対 してメディケアは第 2順位 になっている (ただ し、メディケアの受給資格 を有する現職者 はメディケアを第 1順位 と して選択す ることができるが、その場合には雇用主提供医療保険か ら の給付はまった く受けられない)。なお、1 9 8 6
年包括財政調整法によっ て、障害者 になった65歳未満の従業員に対 してもメディケアは第 2堰 位になっている。注
8) Levi t ,Kat har i neR.,e t .al
,"Nati onalHe al t hExp endi t ur es ,1 9 93
,"He al i hCbT l eFt ' nan ci 瑠 Re v i e w,Vol . 1 6No. 1 ( Fa ll1 9 9 4 ) ,pp2 7 9‑2 8 0,p. 2 8 4 ̲ 9) 消費者物価指数 は 、U. S.De par t me n tofLa bor ,Bur e auofbbor St at i s t i cs ,
MonL hl y
上皿b orRe v i e w 各号 による。
‑
121‑
アメ リカの雇用主提供退職者医療保険
1 0 )
医療保険 を提供 している雇用主の大部分 は民間企業であるが、その他に政府 (政 府職員の医療保険) と自営業者 もある。1 9 9 1
年において、雇用主提供医療保険によっ て保障 されている従業貞 は7 0 2 5
万人であ り、内訳は民間企業5 4 5 5
万人( 7 7. 6 %)
、政 府1 3 8 2
万人( 1 9. 7 %)
、自営業者1 8 8
万人( 2. 7 %)
である。 また、政府 と自営業者が提 供する医療保険によって、全政府職員の6 6. 6 %
と自営業の全従業員の1 7. 7 %
が保障 されている( Le vi t ,Ka t har j n e
氏.,Ga r
yL. 01 i n,a ndSu z anneW.Le t s c h
," Ame r ic ans 'He al t h I n s ur a n c eCo ve r a g e,1 9 8 0‑9 1
,''He a l t hC br 7 eFt na nc t n g Re v i
aL1 ,Vol . 1 4No. 1 ( Fal l1 9 9 2 ) ,p. 3 8)
l l ) Ch ol l e t
,De bo r ahJ .andRo be r tt 】 .Fr i e dl a nd
,̀ L Empl o ye rPa i dRe t i r e e He a l t hI ns ur a nc e:Hi s t o r ya ndPr o s p e c t sf o rGr ow t h, " i nTheCh an gi n g He al t hC bT l eMaT k e i ,e di t e db yFr ankB Mc Ar dl e .Wa血i ngt on,D. C. :Em‑
p】 O y e eBe n e f i tRe s e ar c hl ns t l t ut e ,1 9 8 7 .p. 2 0 7,U. S.De par t me nto fCom一 me r c e ,Bur e a uofEco noml CAna l ys i s ,Sur v e yo fCur r l e ntBw' ne s s ,Vol . 6 6 No. 7 ( J ul y1 9 8 6 ) ,p. 6 9 . ,Vo l . 7 0No. 7 ( J ul y1 9 9 0 ) ,p. 8 3
‥Vol . 7 4No. 7 ( J ul y 1 9 9 4 ) , p. 9 2 .
民間企業 と州 ・地方政府の従業員凍報酬 (賃金 ・給与 と諸給付)の コ ス トについては、Br ad e n.Br a dl e y良 a ndSt e pha l l i e
L.Hyl a nd
," Cos tof Empl oy e eCompe ns at i oni nPu bl i candPr i v at eSe c t or s
,"Mo nt hl y上丘b o r Re v
2'e
w,Vo
L1 1 6No5 ( May1 9 9 3 ) ,pp. 1 4‑2
1.,を参照。1 2 ) Ur ut e dSt a t e sGe ne r alAc c o u nt i n gOf f i c e , 血 Y l yRe i i r e eHe al t hIHe a l t hSe
‑c un' 抄Ac iWo ul dSh
lf tBi l l i o n si nCo s t st oFe d e 和IGo z J e mme nt .Wa s h i n gt o n ,
nC . ・Uni t e dSt a t e sGe ne r alAc c o u n t i ngOf f i c e ,J ul y1 9 9 4 ,p. 1 2 .
1 3 ) Wa r s ha ws k y,Mar kJ,TheUnc e r おi nPr vm2 ' s eo fRe t 2 7 1 e eHe a l t hBe ne J i t s AnEv al u a t i o no fCo 坤o 昭t eOb h ‑ ga l l o ns .Wa s h l ngt On ,D. CH Th eAEIPr e ss,
1 9 9 2 ,p p7 6‑7 8 . ,Ame r i c a nCo un c i lo fL if eI ns ur a nc e,1 3 94Lz f eZ n s uy u nc e Fac i ao k .Was hl n gt O n,D̲ C . : A m e r ic a nCo un c ) Io fL if eI ns ur a n c e ,p. 1 1 3 . 1 4 ) Un i t e dSt a t e sGe n e r alAc c o u nt i n gOf f i c e , 血 T I yRe L me He al t h. ・He a l t hSe
・‑
1 22
‑アメ リカの雇用主提供退職者医療保険
c un' &AdWt ) ul dSh
lf tBi l l i o ns l nCo s t s t oFe d e m J Go v e mmg nt ,p1 2
1 5)
一治療項 目別料金事前設定方式が入院治療 に与 える影響 については、Gl 】 t er ma n , St uar tandAl l e nDobs on , " i mpa c toft heMe di car ePr os pec t i vePayment Sys t em f orHos pl t al s
,' 'He aZ L ha r eFf nanc i n gRe u z '
ew,Vol , 7No3( Spr ing 1 9 8 6 ) ,pp. 9 7‑1 1 4
‥ を参照。1 6 )
従業員の退職年齢の上限 は、1 9 6 7
年雇用年齢差別禁止法( AgeDI S C r i mi nat i oni n Empl o yme ntAc to f1 9 6 7 )
では、従業員2 0
人以上の企業の場合、退職年齢の上限 は6 5
歳であった。 しか し、1 9 7 8
年 における同法 の修正 によってそれが7 0
歳 に引 き上 げ られた。 さ らに、1 9 8 6
年 における同法の修正 によって退職年齢 の上限その ものが 撤廃 されている (ただ し、適用除外の職種が若干 ある)。第 3
節 退職者医療保険の変更増大する医療費 を抑制するために、多 くの企業 は退職者医療保険、
とりわけ将来の退職者の医療保険を変更するようになっている。現行 法 と近年の裁判所の判断によって、企業 (雇用主)は制度規約
( pl a n do c u me nt )
また は労働協約( c ol l e c t i veba r ga i ni ngag r e e me nt )
にお いて現在 と将来の退職者に対する退職者医療保険を変更 または終了す る権利 を留保 している場合 には、企業 はそれを変更 または終了するこ17)
とがで きるようになっている。 大多数 の企業 は医療保険 を変更で き る権利 を留保 している。
退職者医療保険の変更 は大部分の場合、企業が医療費 を退職者 に転 嫁 しようとするものである
。
カープ ・アウ ト方式の採用や退職者が拠 出する保険料の引 き上 げ、退職者の自己負担 (定額控除 ・共同負担) の導入 ・引き上 げ、医療内容審査の実施である。 また、わずかではあ るが退職者医療保険 を終了させた企業 もある。‑ 1
23‑
アメ リカの雇用主提供退職者医療保険
企業 は、メディケア と雇用主提供医療保険の給付を調整す ることに よって、退職者の医療費 を抑制 している。前節で、メディケアの給付 との調整方式として、一般的に医療費給付の調整、控除、カーブ ・ア ウ トの
3
方式が採用されていることを述べておいた。
メディケアは定 額控除や共同負担の規定によって、保障 した医療費について も一般的 にその全額 を胎付することはない。そのために、雇用主提供医療保険 で自己負担が規定 されている場合、企業が退職者医療保険で どの調整 方式 を採用するかによって、メディケアが給付 しない医療費 について 企業 (退職者医療保険) と退職者 (自己負担)が分担する程度が大 きく異なることになる。
企業は、一般的に退職者の自己負担がきわめて少ない医療費給付の 調整方式か らそれが きわめて大 きくなるカープ ・アウ ト方式 に変更 し ている。すでに述べた ように、医療費給付の調整方式では、退職者医 療保険で保障 されている医療費のなかで、メディケアの給付 はまず退 職者が支払わなければならない自己負担額 (メディケアで規定 されて いる定額控除 と共同負担によって退職者が負担する医療費)にあて ら れる。メディケアの給付額が退職者の自己負担額 を上回る場合、その 残額 は退職者医療保険が支払 う医療費 にあて られる。 したがって退職 者医療保険の給付額 は、 この保険で保障されている医療費か らメディ ケアの給付額 と退職者が実際に負担する医療費 を控除 した ものとなる0
それに対 してカーブ ・アウ ト方式では、まず退職者医療保険で保障 されている医療費に対 して定額控除 と共同負担が適用 される。そして メディケアの給付額 は退職者医療保険が支払 う医療費 にあて られる。
そのために、退職者は自己負担額 を全額 (退職者医療保険で保障 され ている医療費全額 に対 して適用 される定額控除 と共同負担 による医療 費全額) を支払わなければならない。 したがって この方式の場合 に、
‑1 2 4‑
アメ リカの雇用主捷供退職者医療保険
退職者の医療利用度が もっ とも大 きく抑制 され ることになる。 また、
退職者医療保険 に管理型医療
( Ma n a g e dCa r e )
が導入 されている場合 には、 この保険で保障されている医療費 と要 した医療費 との差額 も退 職者 は支払わなければな らな くなる。従来は医療費給付の調整方式が一般的に採用 されていたが、現在で はカーブ ・アウ ト方式が多 く採用 されている
O
表9
は、1 9 8 8
年 に米国 健康保 険協会( He a l t hl n s u r a n c eAs s o c i a t i o no fAme r i c a )
が民間 企業3 2 7
社 を対象 に、雇用主提供退職者医療保険によって保障 されて いる退職者の年齢構成 と調整方式の割合 について行 った調査 を示 した表
9
雇用主捷供退職者医療保険の調整方式 (1 9 8 8
年)退 職 者 メ デ ィ ケ ア との調 整 方 式
6 5
歳 革 満65
歳 以 上 医療費の謂塵控 除
カーブ.アウト企業虜模
1 0 0
人未満0 . 4 % ̲ 0. 6
%6. 酵 5♂̀ 7 5.
3%1 0 0 ‑9 9 9
人9. 5 52 1 0̲ 0 3. 5 3 6. 3
1 0 0 0
人以上導入年数
4
年以下9 0. 2. 6% 1 9 4. 2. 2 4 % J 2 1 6. 7̲ 2 6 % 5. 4. 7 7 % 4 6 9. 4. 1 7 %
5′ ‑1 0
年4 05 4 5. 2 1. 4 0. 2 9 7̲ 1 l l ‑2 0
年2 8. 3 2 9. 4 1 46 1. 9 81̲ 4 2 1
年以上2 8, 6 2 3. 0 2 5. 0 1 14 3 5. 7
[注]調整方式の全棒の割合は、以下の理由のために合計 して も
1 0 0%
にはな らない。( 1 ) 7. 2 %
の退職者 は異なった調整方式を採用 している複数の医療保険によって保 障されているため( 2 ) 4. 7 %
の退職者の医療保険は調整方式 を採用 していないため( 3) 0. 1 %
の退職者 はメディケアの受給資格がないため( 4 1 0. 9%
の退職者の医療保 険 は調整方式を分類できないため。[原典]1
9 88He al t hI ns ur anceAs s oc i at z l onofAmer i caRet i r e eFol 一 ow‑ up SuⅣe y
l出典]
Mor r is e y,Mi c hael A・ ,Gal lA・J e ns e n,andSt ephe n耳 ・Hender l i t e , ' ' Empl oye r ‑ Spons or e dHea lt hhs ur a ncef orRe t i r edAme nc ans , " He al t h A Hm'
TS ,Vol , 9No. 1 ( Spr i ng1 9 9 0 ) ,p67 .
‑ 1
2 5‑アメリカの雇用主提供退職者医療保険
ものである。 退職者の内訳 は
、6 5
歳未満の早期退職者が3 7. 2 %、6 5
歳 以上の退職者が6 2. 8 %
である。6 5
歳以上の退職者のうち、9 4, 2 %
の退 職者 は従業員1 0 0 0
人以上の企業 を退職 し、1 0 0
人未満の企業 を退職 した退職者はきわめてわずかである。 また
、5 2. 4 %
の退職者が1
1年以上 前に導入された医療保険によって保障されているように、多 くの退職 者 は比較的以前か ら医療保険を導入 している企業から医療保障を受け ている。そして、6 6. 3 %
の退職者がカープ ・アウ ト方式 を採用 してい る医療保険によって保障 されている。 また、自家保険は州法の規制 を 受 けないために、 この方式は自家保険で採用 されている。3
つの調整方式 を比較すると、退職者医療保険 による医療費の支払 いは、一般的にカープ ・アウ ト、控除、医療費給付の調整の順で大 きくなる。そこで、控除方式や医療費給付の調整方式 を採用 している医 療保険では、退職者が拠出する保険料や自己負担 (定額控除 ・共同負 担)の引 き上 げによって、医療費が退職者 に転嫁 されるようになって いる。
1 9 8 7
年か ら1 9 9 2
年にかけて、企業福祉 コンサルタン ト会社7
社は、民間企業 を対象に、雇用主提供退職者医療保険 についてそれぞれ独 自 に調査 を行っている (
7
社の調査対象企業数 は最少の7 2
社か ら最多の18)
1 3 8 6
社 までの範囲にわたっている)。 企業福祉 コンサルタン ト会社7
社の調査結果のうち、 ここ数年のあいだに退職者が拠出する保険料 を 引 き上 げた企業の割合は
、3 7 2
社 を対象 とした調査がその1 4 %
で もっ とも小 さく、7 8 0
社 を対象 とした調査がその4 8 %
でもっとも大 きくなっ ている。つまり、企業福祉 コンサルタン ト会社7
社の調査結果 による と、調査対象3 7 2
社の1 4 %
か ら調査対象7 8 0
社の4 8 %
までの割合の企業 で、 ここ数年のあいだに退職者が拠出する保険料が引 き上げられてい る。 また、企業福祉 コンサルタン ト会社7社のうちの3社の調査結果‑1 2 6 ‑
アメ リカの雇用主提供退職者医療保険
によると、調査対象
37 7
社の1%
か ら調査対象1 7 3
社の6%
までの割合 の企業で、退職者 はその企業の団体保険料率による保険料 を全額拠出 している. そして、企業福祉 コンサルタン ト会社2
社の調査結果によ ると、調査対象1 7 3
社の41 %
と調査対象7 8 0
社の4 4%
の企業で、自己負 担が導入 されるか引 き上げられている。退職者の自己負担 をメディケアの給付 との調整方式別でみると
、1 9 8 8
年の米国健康保険協会の調査によると、定額控除の医療費を負担 し なければならない退職者の割合 は、医療費の調整方式で7 4. 0%
、控除 方式で9 8. 9 %
、カープ ・アウ ト方式で4 8. 2 %
であ り、大部分の医療費 の調整方式 と控除方式で定額控除が規定 されている。 また平均でみて、定額控除額 はカーブ ・アウ ト方式 よりも医療費の調整方式のほうで高 19〉
くなっている。そして企業は、退職者が拠出する保険料や定額経除 ・ 共同負担の上限を消費者物価の変動 に基づいて毎年引き上 げるように なっている
。
また、医療費 を抑制するために、退職者医療保険で医療内容審査が 実施 されている。退職者医療保険によって保障されている退職者のな かで医療内容審査 を受けなければならない退職者の割合は、セカンド・
サージカル ・オ ピニオ ン
( s e co nds u r g ica lopi ni on
,'緊急 を要 しない 手術 を受 けることをまたはそれを受けるか どうかの選択 を患者が医師 か ら勧められた とき、別の医師の診断を受 けて手術 を受ける必要性が あるか どうかの意見 を求 めるもの)61%
、入院事前審査( pr e admi s ‑ s i o nr e vi e w
;入院の必要性や入院 日数 を事前に審査するもの)7 6 %
、 病院滞在審査( c o nc ur r e ntr e vi e w;
入院中の患者に対 して入院治療 を 継続する必要性があるか どうかを判断 し、適正な入院 日数 を審査する もの)7 8%
、高額症例管理( c at as t r o p hi cc a s ema na ge me nt
;高額医 療費 を要する可能性のある症例 を早期 に指定 して適切な治療 を計画 ・‑1 2 7‑
アメ リカの雇用主提供退職者医療保険
実施 し、医療費 をできるだけ効率的に管理するもの)
74 %
となってい る。調整方式別でみると、入院事前審査 を受 けなければならない退職 者の割合は、医療費の調整方式で2 0. 6 0
/O、控除方式で7 6̲ 20
/.、カープ・2O) アウ ト方式で
8 7. 3%
である。企業が医療費 を退職者 に転嫁する一般的な方法 として、受給資格要 件 (勤続年数や勤務時間)の強化 も行われている。先 に述べた企業福 祉 コンサルタン ト会社
7
社のうちの6
社の調査 によると、調査対象1 3 8 6
社の11 %
か ら調査対象7 80
社 の29%
までの割合の企業で、受給資格 要件が強化 されている。 また、1 9 8 8
年の米国健康保険協会の調査によると、退職者医療保険 を提供 している企業の
7 4%
は、早期退職者に対 して所定め最低限の年数、企業に勤務することを要求 している (91.521)
%の退職者はこの要件 を満た している)0
さらに、退職者医療保険 を終了 させた企業 もある
。1 9 9 0
年 における 会計検査院の推計 によると、1 9 8 4
年以降、2 5 0
万社の1%
未満の企業 が退職者医療保険を終了させ、それによって退職者が医療保障 を失 う22)
か現職者が退職時点での医療保障の資格 を失うている
。
企業が退職 者医療保険を終了させると退職者 は医療給付を受 けることができな くな り、保険料の比較的高い個人医療保険 を購入 しなければならな くな る
。
しか し、契約前発病( p r e e xi s t i n gc o n d i t i o n )
のある退職者 は個 人医療保険 を購入できない場合 もある。 また、6 5
歳未満の早期退職者 はメディケアの受給資格がないために、退職者医療保険の終了はとり わけ早期退職者に大 きな影響 を与 えるものとなっている。ただ、早期 退職者 は、1 9 8 5
年包括財政調整法 によって雇用主提供医療保険に加入 で きるが、医療保障の継続期間は一般的に1 8
か月 と一定の期間に限定されている。
‑1 2 8‑
ア メ リカの雇 用主提供退職 者医療保 険
注 1 7 )
退職者医療保険の変更 または終了に関する裁判所 (連邦地方裁判所 ・連邦巡回控 訴裁判所)の判断については、以下の文献 を参照oChol 】 etandFr i e dl and , " ET n‑
pl oyer ・ Pai dRe t i r e eHeal t hl ns ur a nc e・Hi s t or yandPr o s p∝t sf orGr ow
れ "pp, 21 5‑21 8 . ,Fi nke 】 ,Mad e l onLub i na ndHi r s c hS.Ruc hl i n,TheHe al t h Cby l eBe n e f2 ' bo fRe t Z r e e SBa l t i mo r ea ndLond on:TheJ oh nsHopki nsUni ver ‑ S i t yPr e s s ,1 9 9 1 ,pp. 8 2‑9 0 . ,War s ha ws ky,TheUnc e r
加nPl l Vmt S eO fRe
b'r‑e e胞 l 肋 Be ne P t g ,pp3 2‑4 4,Unz t e dSt at esGe ne r a l Ac c ount i n gOf f i c e,Re
‑i i y ; e eHL 2 0l i hl y msIHe al t hBc ne jE i sNo tSe c yy l eUnde rE
mpL o ye r 一 触 e dS ̲ v s t e m.
Was hi n gt o n,D. C . : Uni t e dSt at esGe ne r alAc c o unt ingOf f i c e ,J ul y1 9 9 3,pp, 1 7‑2 0
1 8) 7
社 は、Wi l l i am H.Me r c erl nc . ,Towe r s ‑ Per r inCompany,A Fos t er
・Hl ggi n
S良 Co ln c ̲ ,Bl l CkCons ul t a nt sl nc,TheWyat tCompa ny,He wi t t As s ∝i at e s ,Ha y/ Huggi n島Co mpanyl n c
̲である。会計検査院は以下の文献で、これ ら
7社 と、米国健康保険協会 とブルークロス ・ブルーシール ド協会が行 った調 査 を論評 している。Uni t edSt a t e sGe ne r a lAcc ount i ng O f 5c e.Re i i r l e e H e al t h Pl ans.He al t hBe ne J t bNotSe C 3 E r eUnde rEm p k) y e r 一 触 c d軸 i e
m,pp. 1 0‑1 6 ,
以下本文で述べる企業福祉 コンサルタン ト会社 の調査岩泉 は同文献によるものである0
1 9 ) Mor r i s ey,Mi c hae l A. ,Gai t A. J e ns en,a ndSt e p he nE.He nder l i t e , "Em
・pl oy er ‑ Spons or e dHe a lt hI ns ur anc ef orRe t i r e dAme r i c ans , " He al t hA酔i n, Vo19No
,1 ( Spr i n g1 9 9 0 ) ,p. 7 0 .
2 0 ) I b i d. ,p.
68, p. 70 . 2
1) I a i d. ,p , 6 9
2 2 ) Uni t edSt at e sGene r alAc count i ngOf f i c e,Empl o y e eBe ne j i t s:Edmto f Co ゆ ni e s 'Re b ' r l e eHal t hCo v e nye ,p. 8 .
‑1 2 9‑
アメ リカの雇用主提供退職者医療保険
おわ りに
現在、多 くの現職者 は雇用主提供医療保険によって退職後の医療給 付 を保障 されそいる
。6 5
歳以上の退職者 はメディケアの受給資格 を有し、 またその多 くは雇用主提供医療保険にも加入 している
。
しかし、退職者の医療費 を抑制するために、企業 は退職者医療保険 を変更 または終了するようになっている。 こうした企業の措置に対 し て、現在医療保障を受 けている退職者や退職後 に医療保障を受 けるこ
とになる現職者 は、現行法の もとではあまり保護 されていない。
従業員給付制度
( e mpl oy e ebe ne f i tpl a n )
を改革するために制定 さ れた1 9 7 4
年従業員退職所得保障法( Empl o ye eRe t i r e me ntI nc ome Se c ur i t yAc tof1 9 7 4 )
は、企業年金制度 に対 して加入資格 や受給権.付与、積み立て基準、制度の終了などについて境定 している。 しか し、
医療給付 を含む従業員医療 ・福利厚生制度
( e mp l o ye ewe l f a r ebe n e f i t
23)
pl a n)
に対 しては、報告 ・開示基準( r e po r t i nganddi s c l o s ur es t a n‑
da r ds )
と受託者責任( f i du c i a r yr e s po n s i bi l i t y)
を規定 しているのみで あり、加入資格や受給権付与、積み立 ては規定 していない。その後、退職者の医療給付 を保護するために、立法上の措置が講 じ られている
。1 9 8 5
年包括財政調整法( Co ns o l i da t e dOmn i busBud ge t Re c o nc i l i a t i o nAc tof1 9 8 5 )
は、従業員の死亡、著 しい違法行為 を 除 くすべての理由による雇用の終了 (辞職 ・退職 ・解雇)、勤務時間 の減少 (レイオ フ)、離婚 な ど、医療保 障の喪失 となる認定事 由( qua l i f i nge ve nt )
が生 じた場合、雇用主 は従業員 とその扶養家族 に 対 して医療給付を継続 しなければならないことを規定 している。 しか し、医療保障の継続期間は、雇用の終了 または勤務時間の減少 (レイ オフ)の場合1 8
か月であ り、その他の場合 は3 6
か月 と一定の期間に限 定 されている。‑1 3 0‑
アメリカの雇用主授供退職者医療保険
また
、1 9 8 7
年退職者保険給付保障法( Re t i r e eI n s u r a n c eBe n e f i t s S e c u r i t yAc to f1 9 8 7 )
によって、破産法第1
1章 に基づいて登録 した 企業は、すべての退職者 と配偶者、扶養家族 に医療 ・生命保険給付 を 継続 しなければな らな くなった。同法では、退職者 は無担保の債権者 よりもむ しろ管理費用 とみなされ、それによって無担保の債権者 に先 だって退職者 に支払いが行われることになった。 また、退職者の給付 の変更を当事者が同意 しない場合 または裁判所が命令 しない場合には、企業 は退職者の給付 を継続 しなければならな くなった。
さらに
、1 9 8 8
年退職者給付破産保護法( Re t i r e eBe n e f i t sBa n kr u p t ‑ c yPr o t e c t i o nAc to f1 9 8 8 )
によって、企業が破産 した場合に退職者 の医療 ・福利厚生制度 を保護するために、破産法第1
1章 にあらたに1
秦 (第1 1 1 4
条)が付 け加 えられた。同条によって、退職者の給付の変 更を退職者の委員会が同意 しない場合 または裁判所が命令 しない場合 には、企業 は退職者の給付 を継続 しなければな らず、 また退職者の給24)
付は管理費用 と同等の地位が与えられた。 しかし、こうした規定によっ 25)
ても、退職者 はそれほど保護 されていない。
多 くの大企業 と中企業は、おもに
1 9 6 0
年代半 ばにおけるメディケア の実施以降、退職者 に医療保険を環供 している。 しか し、高齢者医療 費の上昇やメディケアか ら企業への医療費の転嫁 は、雇用主提供退職 者医療保険 に大 きな影響 を与 えるようになっている。そのために、退 職者医療保険 を変更 または終了する企業 もでている。 また、多 くの小 企業 はとりわけ退職者 に対 して医療保険 を提供 していない。65歳以上 の国民 はメディケアの受給資格 を有 し、雇用主提供医療保険にも加入 している場合 には給付順位 はメディケアが第1
順位である。そのため に、メディケアに対する嘩置は退職者医療給付に大 きな影響 を与える0また、雇用主提供医療保険はメディケアを補足 し、多 くの退職者 はそ
‑ 1
31‑
ア メ リカの雇 用 主提 供退職 者 医療保 険
れに加入 している。雇用主提供医療保険 による退職者医療給付が確保 され るか どうかは、従業員に対 して受給権 を付与 し、将来の医療給付
i)b)
の事前積み立てを促進するためにそれに対 して税制優遇措置 を拡大 し、
要件 ・制限 を緩和する といった措置に依存 している。
注
2 3 )
従業員給付制度( empl oye ebe n号 f i tpl a n)
は、賃金 ・給与以外 の退職年金や生命 保険、医療保険、労働者災害保障保険、失業保険等、 さまざまな給付 を含 んでいるD 従業貞医療 ・福利厚生制度( empl oye ewe l f ar ebe ne f i tp一 an)
は、従業員給付制度 のなかの年金給付 を除いた諸給付 を指 してい る。2 4 ) Fi nkelandRu chl l n,TheHe al t hCue&ne Pt so fRe l l 柁e S . p p8 2‑8 4 . ,Unl ' t ‑ e dSt at e sGe ne r alAc c ou nt i ngOf f i c e ,Re t Z r e eHe al t hPk z nsIHe al t hBe ne j i t s NoISe c 2 i r ; CUnde yEmpl o ye r ‑ BI S e dS y s t e
m,p1 8
2 5 )
この点については、Un l t e dSt at esGe n e r alAc c ount i ngOf f i c e,EW l o y e eBe 7 t ‑ e J i L sIEHe c Eo fj おnkr u♪t c yonRe t i r e e He al t hBe ne j i t S . Was hi ngt o n,D. C . ・ Uni t e dSt at e sGe ner alAc count i ngOf f i c e ,Aug us t1 9 91
,を参照。2 6 )
税制優遇措置を受 けることのできる退職者医療給付の事前積み立て方法 として、内国歳入法第
4 01
条h
項 に基づ く信託(s e ct i on4 01 ( h)t r us t )
と内国歳入法第5 01
条C
項