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処理質問における応答内容の量的および質的分析

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

処理質問における応答内容の量的および質的分析

著者 玉瀬 耕治, 井上 由美子

雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学

巻 43

号 1

ページ 189‑204

発行年 1994‑11‑25

その他のタイトル Quantitative and Qualitative Analysis of Verbal Response to Process Question

URL http://hdl.handle.net/10105/1666

(2)

奈良教育入学紀要 第43巻 第1‑ぢ  (人文・社会) 、1;‑成6年 Bull. NaraUniv. Educ., Vol.43, No. 1 (Cult. &Soc). 1994

処理質問における応答内容の量的および質的分析

玉 瀬 耕 治・井 上 由美子'

(奈良教育大学心理学教室) (平成6年4月30日受理)

カウンセリングにおいてクライエントの問題を的確に把握し、適切にその問題に対処すること は、カウンセラーに求められる基本的な要件である。しかし、自分ではそのように振舞っている つもりでも、実際は問題を歪めて捉えていたり、クライエントに適さない対応の仕方をしている 場合がないとはいえない。例えば、 FullerandHill (1985)は、実際の面接の過程をカウンセラー とクライエントの双方にビデオ再生によって評定させ、カウンセラーが意図したこととクライエ ントがカウンセラーの応答から知覚したこととがいかにずれているかを報告している。カウンセ ラーは常にカウンセリングの過程において、実際に何が生じているのかを内省し、科学的にその 過程を捉える目を養っていかなければならない(Hill, 1993)c そうでなければ、単なる一人よ がりであたかもクライエントが自分の意のままになったと誤解したり、都合のよい解釈でカウン セリング過程を意味づけてしまう危険をおかすことになろう。カウンセリング過程を客観的に捉 え、科学的に分析する視点は、カウンセリングを実践するのに無用であると考えるならば、それ は誤りであろう。むしろ、実践の場において冷静に事態に対処できるためには、このような科学 的、分析的視点を持つことが必要であるといえよう。このことは、実践においてクライエントと 主体的もしくは主観的なかかわりをもつことと矛盾するものではない。とりわけ大学院生などを 中心とする初心者にとっては、カウンセリング過程について自ら研究し、分析する経験をもつこ とがきわめて有益であると考えられる。

ところでIvey (1971)がカウンセラー養成をねらいとした技法習得のプログラムとしてマイ クロカウンセリング(アイビィ/福原他訳編, 1985 を提唱してから、すでに20年以上の歳月が 経過している。マイクロカウンセリングではカウンセリングの基本的技法が階層的に構成され、

学習者はビデオモデルを見ながら実習することによってこれらの技法を効果的に習得することが できる(Ivey, 1994)。ここで用いられる技法はいずれもカウンセラーにとっては重要な技法で あるが、最も基礎的なものとして基本的かかわり技法、とりわけ基本的傾聴の連鎖をあげること ができる(Ivey, Gluckstern & Ivey, 1993)c 基本的傾聴の連鎖は、開かれた質問、閉ざされた 質問、最小限の励まし、言い換え、感情の反映、および要約という6つの技法から構成されてい る。これらの技法は単に初心者に必要なだけでなく、実際のカウンセリング場面を分析するため の技法分類の一部としても広く認められているものである(Hill, 1978 ; Hill, Carter&O'Farrell, 1983 ; Hill, Charles&Reed, 1981 ; Hill, Thames& Rardin, 1979 。この中でも質問技法は、

単にクライエントからの情報を収集するという意味だけでなく、その使い方次第ではカウンセリ ングの質そのものを大きく左右する重要な技法であるといえる。たとえばIvey (1986, 1991) の提唱する発達心理療法(DCT)では、クライエントの発達水準の査定および発達的介入を行う 際に、質問技法が巧みに用いられ、応答にどの程度の自由度を与えるか、発達のどの水準に焦点

'現在 三重大学大学院教育学研究科修士課程

189

(3)

190 玉 瀬 耕 治・井 上 由美子

をあてるかによって面接の内容が大きく変化することが示されている(Ivey&Ivey, 1990;

Rigazio‑DiGilio&Ivey, 1990)。このようなことから、カウンセリング研究に取り組む際に、ま ず質問技法にかかわる基礎的研究を深めることは意義あることといえる。

質問に関する研究は、教育、臨床、医療、法廷、矯正などさまざまな領域で進められてきてお り(Dillon, 1990)、多くの領域に共通する問題とそれぞれの領域に固有の問題があるといえる。

カウンセリング領域における質問形式の分類の最も代表的なものとして、開かれた質問(open question)と閉ざされた質問(closed question)に分けるわけ方がある(Hargie, Saunders & Dickson, 1987; Hill, 1978; Ivey&Authier, 1978)< 開かれた質問とは、クライエントがその質問を手 がかりとして、自分の思いを自由に話すことができるような質問である。たとえば、 "そのこと についてあなたはどう思っているのですか。''とか、 "お子さんが遠くへ行かれて今のお気持ちは いかがですか。"などである。閉ざされた質問とは、はい、いいえもしくは1語か2語の短い言 葉で答えられるような質問である。たとえば、 "お子さんはいらっしゃいますか。''とか、 "相談 に来られるのは初めてですか。"などである。これらの質問形式については、これまでにわれわ れも若干の基礎的研究を行ってきた(玉瀬, 1991;玉瀬・荒木, 1993;玉瀬・田中, 1988;

Tamase, &Tanaka, 1988;玉瀬・鳥巣・井川, 1991 c

玉瀬・田中(1988)は、開かれた質問と閉ざされた質問について、それぞれ40項目の質問を作 成し、短大生を被験者として予想される答えの長さと答えにくさを調べた。その結果、従来仮定 されているように開かれた質問は閉ざされた質問よりも応答が長く、より答えにくいとみなされ ることが分かった。 Tamaseand Tanaka (1988)は実際に大学生に面接を行ってさらにこのこと を確認している。玉瀬・鳥巣・井川(1991)は、質問を続けていくつか行う場合に開かれた質問 と閉ざされた質問をどのように組合せるとどのような効果が生じるかを問題にしている。具体的 には、続けて先に開かれた質問または閉ざされた質問を繰り返すことによって、最後の開かれた 質問または閉ざされた質問での応答の長さに、どのような影響が見られるかを調べた。彼らの実 験では先に続けて開かれた質問を行うと後の質問への応答が長くなり、先に続けて閉ざされた質

問を行うと、後の質問への応答は短くなることが示された。さらに、内容に関連性のある質問が 続いた場合の方が、関連性がない質問が続いた場合よりも後の応答は長くなることも示された。

玉瀬(1991は、聴き手と話し手の間の親密性と質問内容の答えにくさが、質問の長さおよび 応答するまでの時間にどのように影響するがを調べた。その結果、親密性の如何にかかわらず開

かれた質問は閉ざされた質問よりも応答の長さおよび応答するまでの時間(潜時)が長くなった。

さらに開かれた質問において、聴き手の自己開示(Jourard, 1971)の有無の影響を調べたところ、

聴き手の自己開示がある場合の方がそれがない場合に比べて応答が長くなり、その傾向は答えに くい質問でより顕著であった。玉瀬・荒木(1993)は、連続する3つの質問で、初め2つの質問 を開かれた質問または閉ざされた質問のいずれかにし、それらが難しい質問である場合と易しい 質問である場合を設けて、 3つ目に難しさが中位の開かれた質問を行った。その結果、難しい質 問でかつ開かれた質問を行った場合に応答はもっとも長くなり、初めの2つの質問が閉ざされた 質問の場合は、応答が短くなった。

これらの研究は、開かれた質問と閉ざされた質問について、いくつかの観点からその性質を検

討したものである。玉瀬・田中(1988)は調査的方法を用いており、玉瀬(1991)、玉瀬・荒木(1993 、

TamaseandTanaka (1988)、玉瀬・鳥巣・井川(1991は実験的方法を用いている。実験的方

法では応答の長さを調べるために、応答時間と応答音節数を測定し、応答の難しさを調べるため

(4)

処理質問における応答内容の量的および質的分析 191 に応答潜時を測定している。これらの研究結果から導かれる結論として、かなりさまざまな条件 の下で一貫して開かれた質問は閉ざされた質問に比べて応答が長くなるといえる。

ところで、従来のわれわれの研究では、 2つの形式の質問の定義に関連して、応答の長さにか かわる量的分析に焦点をあててきた。しかし、質問への応答の質的側面についてはほとんど何も 検討されていない。米国では実際のクライエントとの面接事例について開かれた質問と閉ざされ た質問がどのように受け取られているか、あるいはそれらが望ましい結果を導くのに効果があっ たか否かなどの観点から検討が加えられている(Hill, 1989 ; Hill, Helms, Tichenor, Spiegel, 0'Grady & Perry, 1988)。しかし、特定の形式の質問によってどのような応答が導かれるかにつ

いて、応答内容に踏み込んだ確たる証拠はまだ示されていないように思われる。これに関連して、

Hill, Corbett, Kanitz, Rios, Lightsey and Gomez (1992)は、クライエントの言語行動全般に ついて分類している。彼女らの分類では抵抗、一致、要求、詳述、認知行動的探索、感情的探索、

洞察、変化という8つのカテゴリーが設けられている。質問に関しても何らかの形で応答内容に まで踏み込んだ質的分類を行う必要があるといえる。

先述の質問研究では、開かれた質問と閉ざされた質問という2つの形式だけが取り扱われてい る。この分類はカウンセリングの領域では最も一般的な分類であり、広く使われているのは事実 である。しかし質問の分類には他にも想起質問と処理質問、直接質問と間接質問などいくつかの ものがある(Dillon, 1990 ; Hargieetal., 1987)c 他の質問形式にも着目し、開かれた質問、閉 ざされた質問との関連を多面的に研究していくことは、質問そのものをよりよく理解する上で重 要であり、カウンセリング場面で、より効果的に質問技法を使う意味でも役立つと考えられる。

Hargieetal. (1987)によれば、想起質問(recall question)とは、単に情報を想起させる質問 形式であり、それは低い水準の認知過程の中で応答できるものである。たとえば、 "あなたはど こで生まれましたか。"というような質問である。想起質問に対する応答は、ある特定の答えで あり、応答者がその答えを想起することさえできれば答えられるものである。一方、処理質問

(process question)とは、応答者が想起された情報の分析、解釈、判断などの内的な処理をし なければ答えられないものである。つまり情報を単に想起するという枠を超え、その情報につい て深く考えることが必要とされる質問形式である。例えば、 "もし日本がパールハーバーを爆撃 しなかったら、何が起こっていたと思いますか。"のようなものである。このような質問は、高 い水準の認知過程のもとで情報を処理する能力を査定するために用いられる(Hargieetal.,

1987 。

以上のことから考えて、想起質問を行うか処理質問を行うかによって、応答者の質問に対する 内的処理の仕方に違いが出てくることが予想される。またその違いは応答内容の量的および質的 側面に現われるものと考えられる。しかし、われわれの知るかぎりでは、現時点において想起質 問と処理質問について実証的にその機能を検討した研究は見当らない。想起質問と処理質問を、

カウンセリング場面においてより効果的に使うためには、それらの基礎的研究を深める必要性が あるといえる。

先述のように、質問の処理の過程にはその最初の段階に必要な事象の想起が含まれる。実験的

に想起と処理を比較することの難しさはここにあるといえる。すなわち、直接的に想起と処理を

比較しても、両者の過程が異なるので比較にはならないのである。そこで本研究では、処理質問

への応答の仕方に焦点をあてて検討することにした。具体的には、被験者に対して想起と処理を

同時に行わせる群と、想起だけを先に行わせてその後に想起内容について処理させる群を設けて

(5)

l!<2 玉 瀬 耕 治・井 上 由美+

比較した。ここでの主な関心は処理段階にある。処理質問には、従来から研究されている開かれ た質問と閉ざされた質問を用いて、応答にどのような違いが見られるかを量的および質的側面か ら分析した。被験者に想起だけを先に行わせる場合は、処理に必要な事象を先に放出させること になるので、被験者は処理段階でその事象の処理に専念することができる。それゆえ、質問に対 して想起したことをより深く処理することが可能であると考えられる。一方、想起と処理を同時 に行わせる場合は、質問内容を処理する際に、必要な事象を想起しながら同時にその事象を処理 しなければならない。したがって、そのような処理には情報の錯綜や混乱が生じる可能性がある。

それゆえ想起と処理を同時に行わせた場合は想起された内容が十分に処理しきれないことになる と考えられる。このような実験条件による差異は、応答の長さ(応答時間、応答音節数)、応答 の難しさ(応答潜時)などの量的測度、および応答内容の具体性、精敵性、的確性などの質的測 度に現われるものと期待される。

方   法

実験計画 2×2×3の要因計画が用いられた。第1の要因は質問の仕方(想起と処理を同時に 行う、別々に行う)で、第2の要因は質問形式(開かれた質問、閉ざされた質問)であった。両 者とも被験者間要因である。第3の要因は質問の内容(クラブ活動の意義、受験勉強の評価、友 人関係の特徴)で、被験者内要因であった。

被験者 大学生60名(男子20名、女子40名)が被験者として実験に参加した。これらの被験者は、

実験者の求めに応じて自発的に参加した者である。彼らは来室の順に、想起処理同時間質問(想 処同時開)群、想起処理同時間質問(想処同時間)群、想起処理別開質問(想処別開)群、想起 処理別閉質問(想処別閉)群の4つの実験群‑、それぞれ男子5名、女子10名、合計15名ずつ割 り当てられた。被験者の質問に対する応答の内容を評定するために、心理学専攻生16名(男子2 名、女子14名)が評定者として参加した。

材料 (1)質問項目の作成 質問項目として、想起と処理を同時に行わせる質問と、想起と処 理を別々に行わせる質問を作成した。処理段階では、開かれた質問と閉ざされた質問の形式を取

り入れた。この想起と処理を同時に行わせるか別々に行わせるかということと質問が開かれた質 問であるか閉ざされた質問であるかということを組み合わせた4つの質問形式(同時別々×開閉) に、それぞれ3通りの質問内容を取り入れた。第1の質問内容はクラブ活動の意義を問うもので あり、第2は受験勉強の評価を問うものであり、第3は友人関係の特徴を問うものであった。表

1は、本実験で使用したこれらの質問項目を示したものである。

(2)測定装置 被験者の応答を録音するために、テープレコーダーが使用された。応答時間を 測定するためにストソプウオッチ、応答音節数を測定するためにカウンターが使用された。

(3)内容評定基準の作成 被験者の応答内容を評定する際の観点として、具体性、精敵性、お よび的確性の3つの観点を採用した。これらの観点はいずれも応答の質の高さを表す指標である とみなされる。まずこれらの観点を定義し、それぞれの観点について、 "あり"、 "少しあり"、

"なし''の3段階で評定できるように評定基準を作成した。これらの基準をもとにして、被験者 60名に行った質問のうち、すべての処理質問‑の応答の逐語記録について、評走者に具体性、精 敵性、的確性の3つの観点で3段階評定を行わせた。表2は、応答の内容評定のための具体性、

精級性、的確性の定義と評定基準を示したものである。

(6)

処理質問における応答内谷の量的および質的分析

表1 本実験で使用した質問項目 想処同時開群(A)

1.中学・高校時代のクラブ活動を思い出してください。

あなたの中学・高校時代のクラブ活動は、今のあなたにとってどんな意義があったと 思いますか0

2.中学・高校時代の受験勉強を思いIP,してください。

あなたは、中学・高校時代のあなたの受験勉強への取り組みについてどのように評価 できますか。

3.中学・高校時代の友人関係を思いけ'Lしてください。

あなたの中学・高校時代の友人との付き合い方は、今のあなたから見てどんな特徴が あったと思いますか。

想処同時閉群(B)

1.中学・高校時代のクラブ活動を思い出してくださいo

あなたの中学・高校時代のクラブ活動は、今のあなたにとって意義があったと思いま

t‑J:I

2.中学・高校時代の受験勉強を思い出してください。

あなたは、中学・高校時代のあなたの受験勉強への取り組みについて、良かったと思 いますか0

3.中学・高校時代の友人関係を思い出してください。

あなたの中学・高校時代の友人との付き合い方は、今のあなたからみて特徴があった と思いますか。

想処別間群(C)

Ll.あなたは中学・高校時代のクラブ活動で、どんな思い出がありますか0

ト2.あなたの中学・高校時代のクラブ活動は、今のあなたにとってどんな意義があった と思いますか。

2‑1.あなたは中学.高校時代の受験勉強で、どんな思い出がありますか。

2‑2.あなたは、中学・高校時代のあなたの受験勉強への取り組みについて、どのように 評価できますか。

3‑1.あなたは中学・高校時代の友人との付き合い方で、どんな思い出がありますか。

3‑2.あなたの中学・高校時代の友人との付き合い方は、今のあなたからみてどんな特徴 があったと思いますか。

想処別閉群(D)

1‑1.あなたは中学・高校時代のクラブ活動で、どんな思い出がありますかO

卜2.あなたの中学・高校時代のクラブ活動は、今のあなたにとって意義があったと思い mma

2‑1.あなたは中学・高校時代の受験勉強で、どんな思い出がありますか。

2‑2.あなたは、中学・高校時代のあなたの受験勉強への取り組みについて、良かったと 思いますか。

3‑1.あなたは中学・高校時代の友人関係で、どんな思い州がありますか。

3‑2.あなたの中学・高校時代の友人との付き合い方は、今のあなたからみて特徴があっ たと思いますか。

193

手続き 実験は被験者ごとに個別に行われた。被験者は実験室に案内され、ソファーに実験者と

ほぼ90度の角度で向き合って座るよう求められた。その後以下のような教示が与えられた。 "こ

れからあなたにいくつかの質問をします。それらの質問に対して、あなたが思った通りにお答え

ください。質問に対する答えには、よい答えや悪い答えといったものはありません。また資料作

成のため、この面接の様子をテープに録音させて頂きたいと思っておりますが、よろしいでしょ

(7)

194 玉 瀬 耕 治・井 上 由美子

表2 内容評定観.,'.1の定義と評定基準 'E丸

具体性:意義、評価または特徴の根拠を具体的に述べている。

精微性:個々の事柄について、詳しく細かいところまで述べている。

的確性二意義、評価または特徴について的をはずさず、的確に述べている。

..蝣r.u墓蝉̲

具体性 あ  り 2) 意義・評価・特徴の根拠を具体的に述べている。

少しあり(1) 意義・評価・特徴の根拠をやや抽象的に述べている。

な  し 0) 意義・評価・特徴の根拠を全く述べていない。

精微性 あ  り 2) 意義・評価・特徴に関すること及びそれらに関係しない単なる 思い出などを、詳しく細かく述べている。

少しあり(1) 意義・評価・特徴に関することまたはそれらに関係しない単な る思い出などを、ある程度述べている0

な  し 0  応答が簡単で、意義・評価・特徴に関することを全く述べてい

>ara

的確性 あ  り 2) 意義・評価・特徴を的確に述べている。

・意義・評価・特徴が何であるかを応答者自身が分かっていると 思える表現で述べている。 ※

少しあり(1) 意義・評価・特徴を、やや暖味な表現で述べている。

・意義・評価・特徴が何であるかを応答者自身があまり理解して いないと思える表現で述べている。

な  し(0  意義・評価・特徴が何であるかを、全く答えていない。

・たずねていることからずれた応答をしている。

※はい、いいえで答えられるような質問に対して、はい、いいえで答えている場合は的確性 ありと見なされる。

うか。あなたのプライバシーは絶対に守りますので、どうぞ安心してお答えください。ではよろ しくお願いします。"教示の後、実験者によりテープレコーダーのスイッチが入れられ、質問が 開始された。質問の順番は、どの群においても質問内容に関して、クラブ活動、受験勉強、友人 関係の順であった。

実験者は、被験者が応答しやすく、かつ会話が自然になるように、被験者と視線を合わせたり、

相づちをうつなどの最小限の励まし(Ivey, Gluckstern& Ivey, 1993)を行った。被験者が質問 の繰り返しを求めた場合は、実験者はもう一度質問文を読み上げた。各質問への応答には制限時 間は設けられておらず、応答が終わったと思われる時点から3秒程度後に次の質問が行われた。

3つの質問が終わった後、テープレコーダーが止められたO その後、被験者からの内省報告が求 められた。被験者が内省報告用紙に記入すると、その時点で実験を終了した。

応答内容の評定については、すべての被験者の実験が終わった後、テープに録音された全処理 質問‑の応答をワープロによって逐語記録に直し、それを印刷したものを評定者16名に配布した。

評定者には、これらの応答内容について具体性、精敵性、的確性に関する3段階評定ができるよ う、評定用紙、および3つの観点の定義と評定基準を示した用紙を配布した。逐語記録を渡す際 に、評定の慣れなどの効果が全体の結果に影響しないように、提示順序を次の8通りに変えた。

すなわち、想処同時開群をA群、想処同時閉群をB群、想処別間群をC群、想処別閉群をD群と

(8)

処理質問における応答内谷の量的および質的分析 195 すると、 CABD, ACBD, DBCA, BDAC, ABCD, BADC, CDAB, DCAB の計8通りで、それぞれ2名に評定させた。

測定と分析 録音された仝応答が逐語記録に変換され、各被験者の3つの応答内容について応答 時間、応答音節数、応答潜時が測定された。ここで応答とは、応答を始める前の間投詞(例: "うー ん"、 "え''、 "あ"など、)および、質問を繰り返すことの要求は応答として含めなかった。しか しいったん応答が始まってからの間投詞、質問を繰り返すことの要求は応答として認められた。

応答時間については、被験者が応答をし始めてからその質問について応答し終えるまでを応答時 間とし、各質問毎にそれぞれ3回ずつ測定した。応答音節数については、応答すべての音節数を カウンターで測定した。応答潜時については、実験者が質問をし終えてから、被験者が答え始め るまでの時間とし、各質問毎に3回ずつ測定した。

応答時間、応答潜時の測定には、 1/100秒単位で測定可能なデジタル式ストップウオッチが使 用された。応答時間、応答潜時の測定は、 1つの質問につき3回ずつ行われた。その平均値を1 /1000秒単位で四捨五入したものが測定値として使用された。

応答内容の評定については、各質問‑の応答を評走者が段階評定したものに基づいて、 "あり"

を2点、 "少しあり"を1点、 "なし''を0点として得点化し、各被験者の具体性、精微性、的確 性の得点を算出した。

結   果

応答時間 表3の上段は、想処同時開群、想処同時閉群、想処別間群、想処別閉群それぞれの応 答時間の平均とsDを示したものであり、図1はこれらの平均値を図示したものである。応答時 間について、繰り返し要因を含む2×2×3の分散分析を行った。その結果、質問形式(開閉) の主効果(F‑19.14, df‑1,56, /><.Ol)、および質問内容の主効果(F‑8.61, df‑2,112, /><.Ol)がともに有意であった。質問形式(開閉)の主効果については、閉ざされた質問より

も開かれた質問の方が応答時間が長くなることを示している。質問の内容については、誤差項を 用いて検定を行ったところ、クラブ活動の意義よりも受験勉強の評価の方が(t‑2.03, df‑56, /><.05)、クラブ活動の意義よりも友人関係の特徴の方が(t‑4.14, d/‑56, /><.Ol),また受 験勉強の評価よりも友人関係の特徴の方が応答時間が長くなる(f‑2.15, d/‑56, 6<.05)こ

とを示している。つまりこれは、友人関係の特徴、受験勉強の評価、クラブ活動の意義の順で応 答時間が長いことを示している。その他の要因については、有意差は見られなかった。

応答音節数 表3の中段は、各群の応答音節数の平均とsDを示したものである。応答音節数に ついて2×2×3の分散分析を行った結果、質問形式の主効果(F‑13.91, df‑1,56, p<.01)、

および質問内容の主効果(F‑6.00, df‑2,112, p<.01)が有意であった。質問形式(開閉) の主効果については、閉ざされた質問よりも開かれた質問の方が応答音節数が多いことを示して いる。また、質問内容については、誤差項を用いて検定を行ったところ、クラブ活動の意義より も友人関係の特徴の方が(t‑2.32, d/‑56, /><.05)、またクラブ活動の意義よりも受験勉強 の評価の方が(t‑3.39, df‑56, p<.01)が応答音節数が多いことを示している。その他の要 因については、有意差は見られなかった。

応答潜時 表3の下段は、各群の応答潜時の平均と∫βを示したものであり、図2はこれらの平

均値を図示したものである。応答潜時について2×2×3の分散分析を行った。その結果、質問

(9)

196 玉 瀬 耕 治・井 上 由美子

表3 各群における処理質問の内容ごとの応答時間(秒)、応答音節数(音節)、応答 潜時(秒)の平均と標準偏差

内容     クラブ活動     受験勉強      友人関係 平均   sD   平均   sD

応答時間 想処同時間群 想処同時閉群 想処別間群 想処別間群

17.30  13.20   24.74   21.63 6.58  10.39    8.28   8.73 18.53  12.26   26.04  18.55 6.51  11.93    6.34    9.04

応答音節数

想処同時間群  87.33  73.07 124.93 109.88 想処同時閉群  32.67  47.54   48.00  47.69 想処別間群   98. 13  69.80 122.40  93.35 想処別閉群   34.73  60.37   38.67  46.81 応答潜時

想処同時開群 想処同時閉群 想処別開群 想処別閉群

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30.44   24.17 14.04  11.71 28.80   27.32 9.81  10.24

117.93   95.39 69.73   58.51 133.33  132.52 50.07   45.31

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12.35  17.10 4.72    3.91 7.23   6.00 3.29   1.53

(秒)

35

30

25

29

15

18

5

a

クラブ活動     受馳強

EB想処同時屍群 臣ヨ憩処同時閉群 国想処別間群 図憩処別訂群

図1 質問内容毎の応答時間

(10)

処理質問における応答内容の量的および質的分析 197 形式(開閉)の主効果(F‑22.31, d/‑l,56, ♪<.Ol)、および質問内容の主効果(F‑4.32, df‑?,112, p<.05)、質問形式と質問内容の交互作用(F‑3.44, d/‑2,112, p<.05)がそれぞ

れ有意であった。質問形式(開閉)の主効果については、閉ざされた質問よりも開かれた質問の 方が、応答潜時が長いことを示している。また、質問内容については誤差項を用いて検定を行っ たところ、受験勉強の評価よりも友人関係の特徴の方が応答潜時が長いことを示している(J‑

2.94, d/‑56, /><.01)t 交互作用が有意であったため、質問形式(開閉)ごとの質問内容の差 を検定した。開かれた質問では受験勉強の評価よりもクラブ活動の意義の方が応答潜時が長く(∫

‑2.69, d/‑56, p<.01)、また受験勉強の評価よりも友人関係の特徴の方が応答潜時が長くなっ ている(t‑3.45, d/‑56, pく.01)< 閉ざされた質問では3つの質問内容で応答潜時に差が見 られなかった。また、質問内容ごとの質問形式(開閉)の差を合成誤差項を用いて検定したとこ ろ、クラブ活動の意義では開かれた質問の方が閉ざされた質問よりも応答潜時が長く(t‑4.21, d/‑56, pK.Ol)、友人関係の特徴でも開かれた質問の方が閉ざされた質問よりも応答潜時が長

かった。 (t‑3.44, d/‑56, /><.01)。しかし、受験勉強の評価では開かれた質問と閉ざされた 質問の間で応答潜時に差が見られなかった。

応答の内容分析 表4は想処同時間群、想処同時閉群、想処別間群、想処別閉群それぞれにおい て、 16名の評定者が被験者60名の応答に対して、応答の内容を評定した評定得点の平均とsDを 示したものである。また図3はこれらの得点について図示したものである。これらの債について 繰り返し要因を含む2 (質問の処理)×2 (質問形式)×3 (評定観点)の分散分析を行った。そ

の結果、評定観点の主効果(F‑257.70, d/‑2,112, p<.Ol)および、質問形式と評定観点の 交互作用(F‑20.05, df‑2,112, ♪<.Ol)が有意であった。そこで誤差項を用いて、評定観 点の主効果について検定を行ったところ、精微性よりも的確性U‑20.20, d/‑56, p<.01)、

具体性よりも的確性 {t‑9.82, d/‑56, p<.(n)の方が得点が高いことが示された。また交互 作用が有意であったので、合成誤差項を用いて観点ごとの質問形式(開閉)の差を検定したとこ

S   O

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1

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*

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田想処同時開群 国想処同時閉群 国想処別間群 囲想処別閉群

図2 質問内谷毎の応答潜時

(11)

198 玉 瀬 耕 治・井 上 由美子

ろ、具体性では、開かれた質問の方が閉ざされた質問よりも得点が高く(t‑2.85, df‑56, p

<.Ol)、精敵性でも、開かれた質問の方が閉ざされた質問よりも得点が高かった(t‑3.49, df

‑56, ♪<.Ol)。しかし逆に、的確性では、閉ざされた質問の方が開かれた質問よりも得点が高 かった(f‑2.18, d/‑56, /><.05)c その他の要因については、有意差は見られなかった。

圭的側面と質的側面との関係 本研究では、応答の量的側油iについては応答時間、応答音節数、

応答潜時を用いて測定した。また質的側面については応答の具体性、精敵性、および的確性とい う3つの観点から測定した。これらの量的測定と質的測定との関係について調べるため、各測度 間のPearson相関係数を算出した。表5はその結果を示したものである。群別の量的3測度と質 的3観点の相関係数において(表5‑1)、 4群とも応答時間と具体性、応答時間と精微性、応 答音節数と具体性、応答音節数と精敵性の相関は有意であった 0><.01)。特定の群だけで有意 であったものは、想処同時開群における応答潜時と的確性(p<‑01)、想処別閉群における応答 潜時と具体性、および応答潜時と精敵性であった 0><.05)t 全群込みの、量的3測度と質的3 観点の相関係数を見ると(表5‑2)、応答時間と具体性、応答時間と精微性、応答音節数と具

表4 評走者による応答内容の質的評定得点の平均と標準偏差 具体性     精敵性     的確性 平均  sD  平均  sD  ‑1;・均  sD

2  

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処 処 処 処 想 想 想 想

EZl想処同時間群 田想処同時間群 囲想処別間群 国想処別間群

図3 蝣!蝣蝣蝣」呂・にユニー相川納品.ri‑1・、

(12)

処理質問における応答内容の量的および質的分析 199 体性、応答音節数と精敵性、応答潜時と的確性の相関が有意であった(/><.01)t そのほかの相 関は有意ではなかった。

表5‑1 量的測度と質的測度におけるピアソンの相関係数(群別) 具体性   精微性    的確性 応答時間  想処同時間群  0.82* *

想処同時閉群  0.95* * 想処別間群   0.93* * 想処別閉群   0.96* *

0.87**  ‑0.19 0.95**  ‑0.ll 0.93**   0.37 0.97**   0.16

応答音節数 想処同時間群  0.95* * 想処同時間群  0.97* * 想処別間群   0.93* * 想処別閉群   0.97* *

0.99**   0.12 0.97* *  ‑0.16 0.97**   0.34 0.98**   0.18

応答潜時  想処同時間群  0.01 想処同時閉群  0.05 想処別開群  ‑0.38 想処別閉群   0.55*

0.06    ‑0.66**

‑0.01    ‑0.22

‑0.44     ‑0.29 0.59*    0.08

**♪く.01, *♪<.05

表5‑2 量的測度と質的測度におけるピアソンの 相関係数(仝群)

具体性  精敵性   的確性 応答時間  0.88** 0.91**  ‑0.20 応答音節数 0.93** 0.97**  ‑0.08 応答潜時  0.13   0.16   ‑0.62* *

**♪<.Ol

請 読

想起質問と処理質問 予想に反して、想起と処理を同時に行うか別々に行うかによって、量的測 痩(応答時間、応答音節数、応答潜時)では統計的に有意な差は見られなかった。本研究の予想

では、想起と処理を同時に行わせる方が想起と処理を別々に行わせる場合よりも、応答時間、応

答音節数、応答潜時ともに長くなると考えられた。これは想起と処理を同時に行わせた場合、想

起部分と処理部分に情報の錯綜や混乱が生じ、応答潜時を長引かせるとともに応答時間をも長引

かせると考えられたからである。しかし、結果的には量的測度において両条件間には何らの差も

認められなかった。このことは想起部分を切り離しても切り離さなくても、処理質問に対する応

答はそれほど変わらないことを意味している。逐語記録を見る限り想処同時群でも応答の内容は

事象の想起よりもそれらの処理を中心に述べられているように思われる。本研究の被験者は健常

な大学生であり、高次の認知水準で想起した事象を抵抗なく処理することができたと考えられる。

(13)

200 玉 瀬 耕 治・井 上 由美子

しかし、悩みをかかえたクライエントの場合は、処理質問に答えることはかなり難しいと予想さ れる。その意味で、本研究の結果をそのままカウンセリング場面に当てはめることには慎重でな ければならない。このことに関連して、 Ivey (1991)はクライエントの認知発達の水準を正し

く把握し、その水準に合わせた関わり方をすべきであることを強調している。処理質問は想起質 問に比べて応答することが難しいと考えられ、カウンセラーはその質問によってどのような認知 的処理を行わせようとしているのかを十分考慮して質問を行わなければならないといえる。

圭的分析 (1)応答時間 応答時間については、質問形式に関して閉ざされた質問よりも開か れた質問の方が、応答時間が長く、また質問内容では友人関係の特徴、受験勉強の評価、クラブ 活動の意義の順で応答時間が長くなった。開かれた質問の方が閉ざされた質問よりも応答時間が 長くなったことは従来の研究と一致している(玉瀬, 1991;玉瀬・田中, 1988;王瀬・鳥巣・井 川, 1991)c 質問内容について、友人関係の特徴、受験勉強の評価、クラブ活動の意義の順で応 答が長くなったことは興味深い。このことは応答音節数とも関連して、友人関係の特徴について 話す場合の方がクラブ活動の意義について話す場合よりも、より多くのことを話す必要があるこ とを示唆している。本研究では3つの質問内容の提示順序を固定して実験を行っているので、順 序効果が影響しているか否かは不明であり、厳密にいえば提示順序を複数にして順序効果を相殺 する手続きをとってこの点を確かめる必要があるといえる。

(2)応答音節数 応答音節数における結果は、応答時間に関する結果とほぼ一致している。す なわち、閉ざされた質問よりも開かれた質問の方が応答音節数が多いという結果が得られた。ま た質問内容ではクラブ活動の意義よりも受験勉強の評価および友人関係の特徴に関する応答の方 が応答音節数が多いという結果が得られた。応答音節数とは、応答者が話した言葉の量を示すも のである。応答時間と同様に応答の長さを示す指標となるものであるが、被験者の中には時間を かけてゆっくり話す人もいれば非常に早口に話す人もいる。したがって、応答時間と応答音節数 の2つの測度を用いることによって、応答の長さの異なる側面を補完的に捉え、より多くの情報 を得ることができるといえる。応答時間では、友人関係の特徴、受験勉強の評価、クラブ活動の 意義の順でそれぞれの間に有意差が見られたが、応答音節数では友人関係の特徴と受験勉強の評 価の間には有意差が見られなかった。このことは、友人関係の特徴と受験勉強の評価について述 べる場合は、クラブ活動の意義について述べる場合よりもより多くのことを述べる必要があり、

また友人関係の特徴を述べる場合は受験勉強の評価について述べる場合よりも応答中の処理によ り多くの時間を要することを示唆している。

(3)応答潜時 応答潜時では、質問形式に関しては開かれた質問の方が閉ざされた質問よりも 応答潜時が長くなった。また質問内容に関しては、友人関係の特徴の方が受験勉強の評価よりも 応答潜時が長くなった。質問形式と質問内容との交互作用に関しては、友人関係の特徴、クラブ 活動の意義では開かれた質問の方が閉ざされた質問より応答潜時が長くなったが、受験勉強の評 価については質問形式(開閉)による差は見られなかった。

まず開かれた質問は閉ざされた質問よりも、答えにくいということは従来の研究で繰り返し示

されており(玉瀬, 1991;玉瀬・田中, 1988)、本研究でも応答潜時においてこのことが迫証さ

れたといえる。また質問内容では友人関係の特徴やクラブ活動の意義のような対人関係を含む話

題の方が、受験勉強の評価のような個人的話題よりも答えにくいことが示唆される。開かれた質

問では受験勉強をどのように評価するかと尋ねている。これに対する答えは良かったとか悪かっ

たという二者択一的な答え方でも十分答えられる。すなわち開かれた質問でありながらこの質問

(14)

処理質問における応答内容の最的および質的分析 201 はかなり閉ざされた質問に近く答えやすかったために応答潜時が短くなったのではないかと考え られる。ただし、受験勉強の評価に関する応答はクラブ活動の意義に関する応答よりも応答時間 は長いので、二者択一的な答えだけで終わっているとはいえない。質問内容に関して、ここでは 友人関係の特徴、受験勉強の評価、クラブ活動の意義という話題の領域を中心に考察してきたが、

それぞれに付随して問われている特徴、評価、意義に答えることの難しさと区別されていない点 は本研究の問題点として残されるであろう。処理質問の問題をより深く検討するためには、所与 の問題の特徴を述べる場合と評価を述べる場合と意義を述べる場合の処理の違いについてさらに 詳しく調べていくことも有意義であると思われる。

質的分析 応答内容の質的分析はこれまでにあまり行われておらず、今回の実験においてもっと も関心がもたれた点であった。とりわけ注目したことは、想起と処理を同時にするか別々にする かで応答にどのような質的差異が生じるかということであった。今回、質的分析のために3つの 観点を設定した。応答が具体的な方が応答の質が高いと考えこれを具体性とし、詳しく細かく述 べられていることも質が高いと考えこれを精敵性とし、本質的に的確に答えているものほど質が 高いと考えこれを的確性とした。つまりこれらの3つの評定得点が高いと応答の質が高いと判断 したわけである。本研究では想起と処理を別々に行った場合の方が同時に行う場合よりも、処理 すべき内容が捉えやすくなるので十分な処理がなされ、具体性、精敵性、的確性のいずれの側面

においても評定得点が高くなると予想した。しかし、結果的には質的分析においても想起と処理 を同時に行わせる場合と別々に行わせる場合とでは、質的測度において有意差は認められなかっ た。

今回、想起と処理を同時に行わせる条件では、 i ・ ・について思い出してください。"と言って その後すぐに処理質問に入る手続きをとった。このような尋ね方によって、結果的に被験者は想 起よりも処理に重点を置き、処理部分を多く答えることになったのではないかと考えられる。

質的分析に関するその他の結果であるが、質問形式に関して、閉ざされた質問よりも開かれた 質問の方が応答の具体性、精敵性が高く、逆に開かれた質問よりも閉ざされた質問の方が応答の 的確性が高かった。開かれた質問で具体性、精微性が高いのは、開かれた質問は自由に答えるこ とができ、応答も長くなるので、それだけ被験者は詳しく丁寧にかつ具体的に述べることができ るためだと思われる。その反面、自由に答えられる特性を持つ開かれた質問は、答えにくく明確 な答えを出しにくいので、的確性が低くなったといえる。一方閉ざされた質問では、具体性、精 敵性よりも的確性が高い。これは閉ざされた質問は、わざわざ具体的に述べたり詳しく言わなく ても、はい、いいえといった短い応答で的確に答えることができるためだと考えられる。

量的測度と質的測度の関係 このことに関する主な結果は、応答時間と具体性、応答時間と精敵

性、応答音節数と具体性、応答音節数と精敵性において正の相関、応答潜時と的確性において負

の郷関が見られたことであった。応答時間と具体件の高い正の相関は、応答時間が長くなればそ

れにともなって具体的根拠も応答に多く見られるようになることを示している。また応答音節数

でも具体性と高い正の相関が見られ、これも応答の言葉が多くなればなるほど、具体的根拠も多

くなることを示唆している。したがって応答の量が増えれば、具体的な根拠が多く話されるとい

うことになる。一方、応答時間と精敵性にも高い正の相関が見られ、応答音節数と精微性にも高

い正の相関が見られた。これらの結果は応答の量が増えれば、それに伴って詳しく細かいところ

まで述べられることを示している。以上のことから、応答が長くなれば、具体的根拠を交えた細

かく詳しい応答が返ってくると期待できる。逆に応答潜時においては的確性と負の相関が見られ

(15)

202 玉 瀬 耕 治・井 上 由美子

た。これは、応答潜時が長くなる、つまり答えにくくなると、的確な答えが返ってきにくいとい うことである。おそらく質問が答えにくいということは、その質問は答えを処理するのが難しい 質問であると考えられる。そのため答えにくい質問は、長く考えてもうまく処理しきれず、結局 的確な答えができなくなってしまうと考えられる。具体性、精微性、的確性という質に関する3 つの測度は、今後さらに質問研究を行っていくうえで有用であると思われる。たとえば開かれた 質問だけに限定して、さまざまな開かれた質問でどのような質的差異が見られるかを調べること

も興味深い。

要   約

本研究では、想起と処理を同時に行わせる場合と想起と処理を別々に行わせる場合を設け、さ らに処理質問に開かれた質問と閉ざされた質問を用いて、応答の量的および質的測度にどのよう な差異が見られるかを検討した。大学生男女60名を被験者とし、想処同時開(想起処理同時間質 問)群、想処同時閉群、想処別間群、想処別間群の4群に割り当てた。処理質問‑の応答を分析 するための量的測度としては、応答の長さを示す応答時間と応答音節数、答えにくさを示す応答 潜時が用いられた。質的測度としては、処理質問への応答の具体性、精敵性、および的確性を16 名の評定者が評定した得点が用いられた。

その結果、量的および質的測度において想処l司時群と想処別群の間で予想された統計的な有意 差は見られなかった。量的分析では、開かれた質問は閉ざされた質問よりも応答が長くなり答え にくいことが示された。また質問内容に関しては、友人関係の特徴を述べる場合はクラブ活動の 意義を述べる場合よりも応答が長くなることが確認された。友人関係の特徴とクラブ活動の意義 は開かれた質問で尋ねられる方が閉ざされた質問で尋ねられるよりも答えにくいが、受験勉強の 評価では質問形式(開閉)による答えにくさの差は見られなかった。質的分析では、開かれた質 問への応答は具体性、精敵性が高くなり、閉ざされた質問‑の応答は的確性が高くなることが示 された。量的測度と質的測度の関係では、応答の量が増えるほど具体性と精微性の評定得ノSfま高 くなり、応答の量が少ない場合は的確性の評定得点が高いことが示された。本研究は、応答の量 的分析だけでなく、従来研究されていない応答の質的分析に踏み込んだところに意義があると言 えよう。

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(17)

204

Quantitative and Qualitative Analysis of Verbal Response to Process Question

Koji Tamase and Yumiko Inoue

(Department of Psychology, Nara University of Education, Nara 630, Japan) (Received April 30, 1994)

To examine the difference of internal process in responding to recall and process ques‑

tions (Hargie et al, 1987) two experimental conditions were compared under open and closed forms in process questions. Twenty male and forty female undergraduates were assigned to one of four groups (5 males and 10 females in each cell) as the subjects. Half of the subjects were run under the condition in which process question was presented after recall question about the same issue asked. The other half were run under the condition in which process question was presented without any help of recall question about the same issue in advance.

Contrary to our expectation, results showed that length of response as well as response

一atency (a measure of difficulty for responding) to process questions in the recall‑plus‑pro‑

cess condition and the process‑only condition did not differ. Consistent with previous studies, length of response as well as response latency was longer under open questions than under closed questions. A tentative measure for rating response quality was developed in the pre‑

sent study. That is, the degree of concreteness, elaboration, and fitness for every transcribed response was rated by sixteen raters using a rating manual. Results showed that the rating score did not differ in the recall‑plus‑process condition and the process‑only condition. Re‑

sponses to open question were rated as higher in concreteness and elaboration than those to

closed question, whereas responses to closed question were rated as higher in fitness than

those to open question.

参照

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カウンセリングや面接などの会話において、質問は欠くことのできないものである。質問を行

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2

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I.  規定度や酸の価数について、定義を覚えていなかったことが主な原因のようであっ たが、下記の問題

1.試薬の濃度は%で与えられていたが、それがモル%なのか、質量%または容量%なのかによって計算方 法が異なるので、質量 % であるとして、計算方法を、質量 %