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クオリティを高める学校の組織マネジメントと学校 評価政策

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クオリティを高める学校の組織マネジメントと学校 評価政策

著者 八尾坂 修

雑誌名 奈良教育大学紀要. 人文・社会科学

巻 51

号 1

ページ 171‑181

発行年 2002‑10

その他のタイトル Organization Management of School for Quality Improvement and School Evaluation Policy

URL http://hdl.handle.net/10105/411

(2)

Bull.  Nara  Univ.  Educ.,  Vol.  51,  No.  1(Cult.  &  Soc.),  2002

クオリティを高める学校の組織マネジメントと学校評価政策

八尾坂   修

奈良教育大学学校教育講座(教育経営学)

(平成14年4月30日受理)

Organization Management of School for Quality Improvement and School Evaluation Policy

Osamu YAOSAKA

(Department of School Education, Nara University of Education, Nara 630-8528, Japan) (Received April 30, 2002)

Abstract

The strategy establishment for every school quality is further required to carry on char- acteristic  school  structuring  open  for  the  regional  community.  therefore,  in  this  paper,  the writer has intended first to seek features related with quality by finding the process of quality control. Next, a question was made on the leadership, that is, a major building factor from the current standpoint while grasping the concept of organization management to raise the quali- ty.  Then,  concerning  unavoidable  evaluation  policy  to  promote  the  quality  of  school,  while attention was made on the movement of other corporate(business company and governmental employee), the writer has studied through examples self-evaluation policy of school, the char- acteristics and lessons of teacher's personal assessment as ability development.

Achievements made so far are summarized as follows.

First, the concept of the Total Quality Management(TQM) has been introduced with suc- cess not only to private corporations but also to local autonomous body. The concept of TQM is that of QC(Quality Control), development of organization management related with the man- agement cycle of PDCA, clear basic policy, leadership of top management, self-enlightenment of staff, ability development based on mutual enlightenment. Second, leadership required from current standpoint is a symbolic and human revolutionary one to stimulate and move staff as subordinate. Third, the point to be emphasized is this:we must stady how to grasp as action the  individual  vision  of  school  reform(early,short,medium  and  long  standpoints).  Under  the school culture, consideration must be made and according to case we must not neglect a sup- port  from  the  educational  committee.  Fourth,  as  one  of  governmental  employee  system reforms,  there  is  a  forecastability-development  type  personnel  evaluation  system  which  will spread.

This  system  is  based  on  the  self-appraisal  and  work  achievement  evaluation  system.

These  evaluation  results  are  utilized  for  those  who  wish  personal  transfer  and  decision  of work  share,  screening  for  transfer  to  educational  manager.  Also,  as  regards  teachers  who have an excellent ability in guiding student's study and behavior, it is desirable to place these teachers to such leader's post as supervisor.

(3)

1.本稿の意図

教育委員会の施策として,たとえば児童・生徒のいじ め・非行等の問題行動の減少をめざして,「いじめ・非 行等の件数について,当面は1割減,21世紀初頭は半減 に近づけ,また悪質ないじめ・凶悪犯罪・薬物乱用等に ついては0に近づける」「全国トップレベルの教養教育 を実現する基盤となる高い水準の国語力(表現力,理解 力,コミュニケーション能力,漢字の読み書き能力等)

の育成をめざす」こと,また,児童・生徒の不登校対策 の推進として,「不登校の減少をめざす(不登校の件数 については,当面は1割減,21世紀初頭は半減に近づけ る)」との目標を掲げている自治体も出現している(1) このような視点は,本来危機意識を前提とした経営感 覚をもつ企業にとっては当然であるが,概して大学や学 校としては無関係の位置にあった.しかしながら,今後 いっそう地域社会に開かれた,特色ある学校づくりを推 進するためにも,各学校がクオリティに向けたストラテ ジーを発揮することが求められてこよう.

このような問題意識のなかで,本稿ではまずわが国に おけるクオリティ・コントロールの推移をとらえること によってクオリティをめぐる特徴を探ることにしたい.

次に,クオリティを高めるための組織マネジメントの概 念を把握しつつ,主要な構成要因であるリーダーシップ の今日的視点を考えることにしたい.続いて,学校のク オリティを促進する上で不可欠な評価政策について,他 の組織体の今日的動向をふまえつつ,学校の自己評価政 策,能力開発としての教員の人事評価政策の特質と課題 を事例をとらえつつ考察することにする.

2.わが国におけるクオリティ・コントロール

(品質管理)の歴史的特徴

(1)品質を求める時流とTQC活動

クオリティは元来「優れている」ことを意味し,優れ ていることは製品や技術,生産プロセスのみならず,サ ービス面,組織面,人材等あらゆる領域にかかわる活動 に該当する.一般的な「品質」よりも広域にとらえるの がクオリティの概念である.

この点,わが国においてクオリティを求める品質管理

(Quality  Control)の歴史的な推移をみると,第二次大 戦後から50年を経過している(2)

まず1945年から1954年は品質管理導入の時代であっ た.生産者志向の品質管理を経て,統計的品質管理

(Statistical  Quality  Control:SQC)と称される統計的考 え方や分析の仕方が企業における品質の維持・向上のた めの手法として活用されたのである.

次は,1955年から1969年における日本的品質管理の基 礎づくりの時代であった.わが国における品質管理が経 営者のリーダーシップのもと,全部門にわたって全員参 加の活動へと進展する.TQC(Total Quality Control:

総合的品質管理)の基礎をつくった.しかも品質管理の プロセスにおける重要性が求められ,技術者とともに第 一線現場における監督者・作業員の品質意識の自己啓 発,相互啓発を図るQC(品質管理,Quality  Control)

サークル活動も誕生した.このQCサークルは,第一線 の職場で働く人々による継続的な製品・サービス・仕事 などの質の管理・改善活動であるが,今日のわが国にお ける品質管理活動の国際的評価を高めることに貢献した とされる.メイド・イン・ジャパンの汚名から脱却し,

世界的にも主導的立場に成長する契機となった品質管理 におけるエポック・メーキングの時代だったのである.

続いて,1970年から1979年は,製造業における品質管 理確立,TQC確立の時代とされる.この時代は,内外 の経済社会情勢の激動(変動相場制の導入,石油ショッ クによる物価高騰等)や消費者主義の台頭による企業責 任・倫理を問われる受難の時代でもあった.しかし,こ のような危機的状況は,品質管理活動において開発・設 計段階の品質重視,製品の安全性(欠陥商品に対する責 任),公害への配慮に向けた経営姿勢を強く求めること になった.

さらに,1980年から1989年までの80年代は,品質管理 の対象拡大の時期であり,TQC充実の時代でもあった.

すなわち,品質管理の対象も業種では製造業部門のみな らず,建設業,流通・金融等サービス部門に,企業規模 としても中小企業への拡大の動きがみられたのである.

しかも,70年代の不況期を克服し,企業の体質改善,高 度経済成長をもたらす日本的経営の本質を支えるTQC やQCサークル活動が確認されたのである.

しかしながら1990年代以降はよりグローバルな視点か ら品質管理をとらえようとする方向にある.つまり,90 年代から21世紀の今日は品質管理の社会化,国際化進展 の時代であり,TQCの変革の時代を迎えたのである.

企業経営において,地球環境や安全性等に配慮した社会 Key Words: quality,  organizational  management,

school  evaluation,  personnel  evalua- tion.

キーワード: クオリティ,組織マネジメント,学 校評価,人事評価

(4)

的品質の重視,顧客満足(Customer  Satisfaction:CS)

志向の徹底,国際標準化機構(International Organization for  Standardization)が定める品質保証規格である ISO9000Sによる品質保証システム,ISO14000S  による 環境マネージメントの適用などにより品質管理あるいは TQCに対するパラダイムシフトを求められたのであ る.

(2)TQMとアカウンタビリティ

この点,90年代に入り米国産業において,特に製造業 の再生が顕著になった.アメリカは80年代に日本のTQ Cを徹底的に探究し,90年前後にTQCという土台の上 にTQM(総合品質経営,Total  Quality  Management)

という戦略経営システムを構築した.わが国でも1996年 に品質管理の学術団体や実践活動の主導的推進機関にお いてTQCをTQMと呼称を変更しているが,多くの企 業で組織や活動名をTQMに切り替えている.

従来のTQCは経営資源の有効活用(ムリ,ムダ,ム ラ)に固執してきたのに対し,TQMは経営の再構築,

革新にまで対象を拡大し,経営中枢とQCサークル部門 の合体のもとに経営施策をQCサークルで支える役割を 果たす概念である.TQCが経営の一手法であったのに 対し,TQMは経営そのものという考えがとられている.

40年間定着したTQC概念が歴史のなかでマンネリ化し たこと,経営・品質活動のグローバル化,国際規格化の なかで再構築を図ったわけである.

それゆえ,TQMは製品・サービスの品質だけでなく,

経営のすべての側面における品質を高め,顧客を含んだ すべてのステークホルダー(利害関係者)に認められる 価値をつくりだすことをねらいとする考えのモデルなの である.TQCとTQMのキーワードを比較してみる(3)

〔TQC〕 〔TQM〕

「全員参加」 「一人ひとりのコミットメ ント(何々をなし遂げようと いう強い確約をもった参加)

「品質優先」 「社会環境に調和する品質 優先」

「事実管理」 「事実による説明・結果責 任(アカウンタビリティ)

「顧客志向」 「顧客を含むすべてのステ ークホルダーとの信頼関係」

「いかにうまく作るか 「何を作るか(What)−

(HOW)−内部改善志向」 革新的経営志向」

このようなTQMの考え方は,多くの民間企業のみな らず,いくつかの地方自治体で導入され,効果をあげつ つある.TQMの発想・手法による行政運営で期待され る効果は以下の点にある.第1に,全職員がQC(品質 管理)的発想をふまえて活動することである.このこと は,行政サービスの質の重視,住民第一主義,お役所仕

事の打破,科学的,客観的な事実の把握により住民ニー ズをふまえた政策形成が期待できる点である.

第2に,PDCA(計画,実施,評価,行動,Plan, Do,  Check,  Action)のマネジメントサイクルをふまえ た事業の展開,すなわち,計画的に事業を実施し,事業 の達成状況をふまえた組織マネジメントの展開である.

第3に,明確な基本方針とトップのリーダーシップに 基づく計画的な事業の展開である.目的,目標,達成方 針・手段の明確化とこれらに合わせた組織,人事,予算 の管理が可能になる.しかも各職場における目標,計画 策定への職員の参画,役割分担,責任の明確化によって 職務への主体的取り組みが可能になる点である.

このことは,第4の効果として,QCサークル活動を 通して職員の自己啓発,相互啓発に基づく能力開発,さ らには第一線の職場(係等)の活性化に連結する点にあ (4)

それでは,実際に学校においてクオリティを高めるT QMの考え方がどのように反映しているかを組織マネジ メントと評価政策から検討してみよう.

3.組織マネジメントとリーダーシップ

(1)マネジメントサイクルとストラテジー

マネジメント(management)という言葉は,本来,

企業,行政,学校などの組織体の目的達成のためのさま ざまな行為を意味する.幾多の手段を講じることによっ て,直面するさまざまな課題を乗り越えて,当初の目的 を達成することであり,単に「管理」などと解しない.

この点,先述のTQMと同様,ニュー・パブリック・

マネジメント(New  Public  Management,NPM)と呼 称され,民間における経営理念,手法,成功事例などを 行政などの公共部門に導入することで,効率的なサービ スを住民に提供し,組織の活性化を図る考え方が,我が 国の自治体でも進められつつある.特に,1990年代から OECD諸国など多くの先進国で取り入れられているが,

このマネジメント・システムの原理は以下の点にある.

q 組織内のマネジメント単位ごとの,責任者の権限と 責任の明確化.

w 成果目標を明示して,必要な権限と行政資源をマネ ジメントの責任者へ付与(権限委譲)

e 成果に対する顧客への説明責任(成果主義,顧客主 義)

このような観点のもと,各学校がマネジメント・シス テムを意識化,行動化することによって,学校改善を図 ることが求められる.

図1に,学校運営・教育活動のマネジメント・サイク ルに外部評価・内部評価を取り入れつつ,学校組織のパ ワーアップを図る学校活性化ストラテジーを示した(5)

(5)

この図1が示すように,子ども,保護者,地域住民とい った学校のステークホルダー(利害関係者)の意見やニ ーズを,学校の自己点検・自己評価等の活用によって反 映しつつ,学校教育目標や重点目標を設定することがい っそう重視されてくる.

その際,上記の目標のみならず,下位目標としての校 務分掌や学年・教科の目標・各種委員会の年間指導計画 等は,自己評価結果を受けて学校として問題提起をしつ つ,具体性のあるビジョンを示したものが望まれてくる.

そのためには,カスタマーである子どもを主眼とし,

学校を支えるスタッフである教職員にとっても共通理解 できる目標を,PDCAサイクルを通して実現し,かつ 創造的付加価値を与える組織マネジメント能力が,校長 にとってリーダーシップを発揮する上で求められてく る.しかもリーダーである校長は,自校の教育活動の実 践,校務分掌,学年間の連携・協力体制を進める際に,

全体的な視野でプロセス・マネジメントに注視し,的確 な指導・助言で行う能力を発揮することが期待される.

(2) 組織に期待される変革的リーダーシップ

ところで,組織マネジメントにおいてリーダーシップ は最優先のカテゴリーである.今日では指図をし,監督 をし,報告を受け,評価を行うだけの管理・監督型のリ ーダーシップは不要である.求められるのはナレッジ・

マネジメントとしての知識・情報の共有促進,活気に満 ちた対話と支援,個々の組織を超えた戦略的思考である.

リーダーシップに対するいくつかの学説を以下に若干 まとめるが,これまでリーダーシップのタイプ・類型等 は,これを研究する人の数だけ存在し,多様であるとも 考えられる.大別すると,次のとおりである.

q リーダーの特性・資質理論

活動力,知能,支配性,自信,達成意欲,社交性など が要因.

w リーダーの形態(タイプ)理論

専制的,民主的,自由放任的タイプ,あるいは権威的 リーダーシップと参加的リーダーシップの形態.

e リーダーの行動(スタイル)理論

人間中心的リーダーか仕事中心的リーダーかのバラン スによるリーダーシップ・スタイル.ブレーク(Blake, R. R.)とムートン(Mouton, J. S.)の研究によるマネジ リアル・グリッド(managerial  grid)に依拠したリー ダーシップ・スタイルが典型的であり,実践的で知名度 の高い研修プログラムとして活用されている(6)

縦軸に「人間に対する関心」,横軸に「業績に対する 関心」を9×9=81の座標軸をとって,グリッド(格子)

を作り,リーダーシップ行動(スタイル)を類型化した.

実践的には,81の格子では複雑すぎることから,座標の 四隅と中央の計五つの基本的な格子を代表的スタイルと して取り上げている.9・9型であるチーム型(仕事に 打ち込んだ部下によって業績がなしとげられる.組織目 的という「1本のスジ」を通して各人の自主性が守られ 信頼と尊敬による人間関係ができあがる.)が理想とさ れる.

r ハ ー シ ー ( Hersey,  P.) と ブ ラ ン チ ャ ー ド

(Blanchard,  K.  H.)の研究による状況(situation)

理論

リーダーシップを部下の成熟度・マチュリティ,すな わち達成可能な,しかし,できるだけ高い目標を設定し ようとする本人の基本的な姿勢(成就意欲),責任負担 の意思と能力,ならびに対象となる相手又は集団が持つ,

教育なり経験なりの程度との関連でとらえる(7) 以下の四つのタイプがある.

ア.教示的リーダーシップ(高指示・低協労的リーダ ー行動)

部下のマチュリティが低い場合で,部下の役割を明確 にし,いつ,どこで,何を,どのように,といった方法 で,ワーキングの手順を一方的に教えるという特徴を持 つ.

イ.説得的リーダーシップ(高指示・高協労的リーダ ー行動)

部下のマチュリティが普通に近い場合で,情報交換,

支援を通して心理的抵抗なしに,部下がリーダーの指示 を受け入れるよう留意するという特徴を持つ.

ウ.参加的リーダーシップ(高協労・低指示的リーダ ー行動)

部下のマチュリティが普通を超えている場合で,部下 に職務遂行に必要な知識と技術が備わっていることか ら,相互の情報交換,リーダーによる促進奨励的行動を 通して,双方による意思決定への参加が期待されるとい

(6)

う特徴を持つ.

エ.委任的リーダーシップ(低協労・低指示的リーダ ー行動)

部下の課題関連マチュリティや心理的成熟度が高い場 合で,部下に責任権限を大きく委譲し,自由裁量を高め るリーダーシップである.部下の成熟度が高くなるにつ れ,理想的リーダーシップとして教示的リーダーシップ から説得的リーダーシップ,参加的リーダーシップ,委 任的リーダーシップというルートになることを明らかに している.

t リーダーシップ・イメージ理論

ボルマン(Bolman,  Lee  G.),ディール(Terrence, Deal  E.)が1990年代初期に開発したもので,学校指導 者や企業経営者等対象のリーダーシップ次元として,次 14の四つの次元(各次元8項目,計32項目)から 構成される.

1「目標達成」(下位二次元,分析的,組織的)

2「人間性重視」(下位二次元,支援的,参加的)

3「対処的活動」(強力的,機敏的)

4「自己象徴」(鼓舞的,カリスマ的)

近年は,4の自己象徴(シンボリック)次元の項目例 にみるように,組織に対して新たな試みを実行し,革新 的方策をつくり出したり,個性を発揮し,教職員を引き つける存在であるリーダーシップ,すなわち従来の組織 文化を望ましい方向に影響力を与えることを意味する,

文化的(変革的)リーダーシップの概念が重視されてい (8)

この点,筆者は,これまでのリーダーシップ行動のア プローチにおける集団の目標達成(Performance)機能 と集団の維持(Maintenance)機能の二次元からなる三 隅二不二教授によって提唱されたPM理論(9)は,対内 的,動機的行動に視点が優先され,代表者として対外的 行動を行うといった次元や集団の中で革新的,主導的な 行動をとるといった次元が,ややもすると無視されてい たのではないかと考える.

そこで,PM理論における二次元の固定的枠組み(構 造づくりのタスク志向と配慮の人間志向)から先述の四 つの次元(1〜4)構成の質問項目を作成し,学校指導 者(校長)の行動の視角から意味ある形で把握しようと 試みた(10)

調査結果から摘録すると,上記四つの次元すべてが校 長のリーダーシップ行動として必要かつ不可欠で,重要 な次元であるが,より重視されるべき次元は,校長自身,

教員側の意識双方からみて,「人間性重視」の次元であ ったことである.このことはPM理論あるいは,フライ シュマン(Fleishman,  E.  A.)らのオハイオ州立大学の 研究におけるHi-Hi型のリーダーシップ・スタイルの命 題である,タスク指向と人間指向の両次元,さらには先

述のマネジアル・グリッドにおける両次元の加算的効果 ではなく,むしろ両次元の交互作用への示唆を与えてく れる.

つまり,第一義的に求められるのは人間性重視の次元 であり,この次元の高低によって,特に目標達成次元,

自己象徴次元,対処的活動次元といった指導者層のリー ダーシップ行動,及び学校革新風土に対して教職員が感 じる意味合いも,異なっているのではないかと考えるわ けである.また,質問紙調査ではとらえられない「指導 者としての言葉づかい」「ユーモアのあるセンス」「言い 回しのタッチ」等といった微妙で,シンボリックな影響 力といった側面も,観察の対象に入れることも肝要であ る.

以上の点から,上記に示したリーダーシップ理論を踏 まえつつ,今日的状勢のもとで求められるリーダーシッ プを考えると,御神輿経営的リーダーシップ,つまり一 定の概略的方向性は指示しても,細部は部下である教職 員に任せ,あとはよきに計らう放任的,以心伝心的タイ プでは,信頼関係において危ういであろう.

日本の「村社会」における「思いやり」「察し」とい った家族的人間関係を大事にしつつも,常に前向きに学 校改善の意欲を持ち,教職員を導くリーダーシップが求 められているのではなかろうか.

また,校長自身が意識化するリーダーシップ行動の理 念は,人間性重視次元(74%)が圧倒的であったのも確 かである.この傾向は,実はボルマンらが行ったアメリ カ,シンガポールでも同様で,指導者層は人間性重視を 優位に置いている.

続いて,目標達成次元(48%),自己象徴次元(24%)

で,対処的活動は理念として使う傾向が少なかったので ある.しかも,校長の自己象徴次元における行動を考え る際に,校長が示した言葉は「率先垂範」でもあった.

これに対し,教職員が校長に望むリーダーシップも人 間性重視の次元に焦点化され,「教職員への関心事への 支援的働きかけ」「学校効果・改善に向けての献身」「配 慮」「信頼蓄積」「公平性」「意思決定における参画」「模 範」が,主たるキーワードとして望まれていたのである.

このことは,「部下である教職員を感じさせ,動かす シンボリックでしかも人間味のある変革的リーダーシッ プ」が,今後の指導性の基盤と考えられる.

4.学校の自己評価政策

(1)導入される学校自己評価

ところで組織マネジメントによる学校改善を促進する 上で,学校の自己点検・自己評価を各小・中・高校,幼 稚園が実施して,その結果を公表するよう,省令上の努 力規定が2002年3月に設けられ,同年4月1日に施行さ

(7)

れることになった.今後,教育委員会の判断によっては 学校評議員制と同様,実質的に義務化されることも予測 される.

この点,学校評価,すなわち組織体としての学校がそ の機能をどの程度果たしているかを総合的・客観的に評 価して,その結果,好ましいと判断できる事項について は,継続的に進展できるよう共通理解を深めるとともに,

改善すべきと判断される事項については,全教職員一体 となって方策を講じること,の基本的素地は今から50年 前の1951年の文部省内学校評価基準作成協議会編『中学 校・高等学校学校評価の基準と手引(試案)』に示され ていたのも事実である.

しかし,この試案やこれに依拠した都道府県の学校評 価基準は普及の努力にもかかわらず,ほとんど各学校段 階で利用されることはなく,昭和20年代の一潮流として 立ち消えてしまったのである.

この理由として,詳細は幸田三郎氏の著書『学校評価』

(1964年)に示されているが(11),当時の我が国の学校が 直面している特殊な条件を考慮することなく,アメリカ 即輸入型のアクレディテーション(基準認定)の性格を 有する学校評価を持ち込もうとしたことにある.

しかし,21世紀初頭の各学校における自己評価を考え る際の本質的示唆が,いくつかこの試案に残されていた と考える.

例えば一つは,評価の要領として試案は,「アラ探し をするような気持ちが評価する側に起こったり,アラ探 しをされているような気持ちが評価される側に生ずるよ うでは,学校評価は失敗である.終始なごやかなふん囲 気を持ち,その学校の教育を,よくするためという一点 に両者の気持ちが結集して,信頼と友愛にみちた建設的 な態度で評価が進められなければならない」(12)と述べ る.

この点,2000年4月に学校評議員制が制度化される前 に懸念していたことは,学校に対する圧力団体化であっ た.この試案は,各学校が学校評議員から意見をいただ く際の心得についても的確にとらえていたのである.

つまり,学校と地域の知力を双方的に受けとめ,発展 的,建設的に活用する姿勢が当時の試案に求められてい たわけである.

もう一つは,協同評価の発想や保護者や児童生徒の参 加も期待していた点である.

「できるだけ客観的評価を可能ならしめるために,外 部の人達によって構成された訪問委員会が,学校に協力 して評価を行い,改善のための示唆を与える.いうまで もなく,訪問委員会は学校を被告とする検察官の立場に あるのではない.学校の自己評価を援助する協力者であ る」「父兄や生徒の代表を適当な部分に参加させること は,学校評価をいっそう意義あらしめる結果に導くかも

知れない」(13)と示していたのである.

このことは今日,学校評議員や教育委員会の学校の自 己評価に果たす役割も学校を支援し,協力することが基 本的視点にあるといえるし,開かれた学校づくりに向け ての嚆矢とも受けとれる.

現在では,大阪府,東京都,高知県など20都道府県以 上で,各学校が独自性を発揮しつつ,保護者や児童生徒 あるいは学校評議員等を含む外部評価をも活用しつつ(14) 自己評価を実施し,全国に普及することが予測される.

今後,このような外部評価を含んだ本格的な学校評価 の実施が始まるにつれ,考えられることの一つは,内部 評価,外部評価の基盤醸成として,まず各校の自主性に よる簡便な方法で試行することも方途である(15)

例えば,次のような手順が考えられる.

q 各校で教育目標を踏まえ,現状認識・分析に基づき,

具体的で分かりやすく取り組みやすい年間実践項目

(共通目標)を一つ以上決定する.

その際,全教職員で協議して,意思統一を図りながら 決めるとともに,共通目標に対する生徒の意思を把握す る.

w 教職員と生徒が目標達成の計画を立案し,どのよう な手段で達成するかを具体化する.

e 例えば,目標の数値化(指標)−個人や組織で目標 値を設定する.

r 実践(教科・分掌)−生徒と教職員の計画を基にし て,目標の数値化達成のために教科や分掌で実践する.

t どのような方法で,実践項目を評価するか明らかに する.例として,ア.教職員の満足度,イ.生徒の満 足度,ウ.保護者の満足度,エ.生徒の状況把握,オ.

各教科・分掌における実施状況把握.

y 年度を通じての評価(実践状況の中間評価を含む.

実践項目作成時との変化,実践による効果)

u 課題(意図の妥当性,手続きの妥当性,成果向上の 余地や問題点・方法の改善策への対応)

ちなみに上記の視点で,三重県下の県立学校77校が学 校自己評価の実行取組みの項目として取り上げたもの に,多い順から見てみると,次のとおりである(一校で 2項目,3項目の学校もあり,77項目を超える)

「遅刻防止・時間厳守」(24校)「環境美化」(20校)

「挨拶の励行」(13校)「授業内容・教材の開発」(8校)

「光熱水費等の削減」(7校),「退学減少」(5校),「人 権教育」(3校),「生徒指導」(3校),「交通安全指導」

(3校),「その他(18校.例えば,読書の習慣化,バス マナーの向上,図書貸出数の増加,一般社会人の入学を 推進)

(2)学校評価実施において求められる視点

筆者も,これまで学校評価の試みに参画したが,今後

(8)

の学校評価実施に向け求められる課題を指摘したい(16) まず基本的観点として,学校評価を進めるにあたって,

学校の自己評価の中核的役割を担う機関として,東京都 の学校運営連絡協議会モデルにみるように,学校評価委 員会を設置することも求められる.

学校評価委員会は,次のような職務を行うことになる.

第一に,学校評価のための組織計画づくり,学校評価の ための学校評価基準案,評価結果に基づく全体改善案の 作成といった各種の原案作成である.第二に,学校評価 に必要な記録・文献・資料等の収集とともに,整理・保 管,情報提供の役割がある.第三に,学校評価結果の集 計,分析,問題点の把握とともに,各分掌との連携等が ある.

学校評価の実施時期については,一般に実施調査結果 をみると年度末に行われていることが多いが,評価項目 によっては各学期末,あるいは学期の途中で随時弾力的 に行うことも必要になってこよう.学校評価を行うため の組織編成と実施のフロー図を作成することも必要であ る.

いずれの時期に実施するとしても,各時期に行うねら いを明確にするとともに,校長のリーダーシップのもと 学校評価委員会等が中心となって,組織的な活動を行い,

教職員の共通認識を深めることが求められる.

次に,「学校評価票」を作成し,学校評価を行うこと も十分予測できる.大阪府の学校教育自己診断結果から も明らかになったと考えられるが,次のような視点を学 校評価実施に向けて考慮に入れる必要がある.

q 学校の教育目標や教育方針と,それを具体化するた めの組織運営・校務分掌等を踏まえ,個々の領域や分 掌の有機的な連携として評価される基準であるかどう か.

w 全域的・一般的な内容と,必要によっては地域性・

特殊性を踏まえた内容を取り入れた評価基準となって いるかどうか.

e 各学校の実情に応じて適合できる,機動性のある弾 力的な評価基準となっているかどうか.

r 評価基準や実施方法の策定にあたっては,平易性・

利便性・経済性・有効性等を考慮し,しかもできる限 り評価者の視点に立った簡便で利用しやすいものとな っているかどうか.

t 学校内の教職員による自己評価のみならず,外部の 保護者,児童生徒,地域住民等による評価との比較を 考慮に入れた評価基準になっているかどうか.

y 評価を蓄積することによって,より実態に整合し,

客観的な評価基準となるような工夫が考えられている かどうか.

さらに,学校評価に限らず,行政評価にとっても共通

することであるが,今後,一番求められていることは,

評価結果を踏まえて学校として問題提起をしつつ,学校 改革の個性的なビジョンをどうアクションとしてとらえ るかである(早急,短期,中期,長期の視点).教職員 の創造性,協働性をベースにした学校文化のもとで検討 し,状況によっては地域協議会などからの協力,教育委 員会からの支援も無視できない.

また,日頃から学校に対するアンケート(目安箱),

授業公開等の積み重ねを地道に行うことにより,内と外 に開く軽快さが重要である.

5.能力開発型人事評価の展望

(1)公務員制度改革における新人事制度導入の背景と 特徴

2001年12月25日に国家公務員の公務員制度改革大綱が 閣議決定したが,2003年度中に公務員法改正案を行政改 革推進事務局が中心になって国会に提出し,2006年度を 目途に新たな公務員制度に移行する計画である.

それでは,なぜ公務員制度改革が必要になってきたの か.大別すると,「公務員自体に対する批判」と「現行 人事制度の問題」が背景にある.すなわち,前者の背景 として,第1に,「縦割り行政」「予算・権限の維持拡大」

などにみられるように,必ずしも国民の利益を最優先し た行政運営が行われていないことである.第2に,「お 役所仕事」と言われるように,業務効率が低く,コスト 意識・サービス意識が欠如していることにある.第3に,

前倒踏襲主義にみられるように,時宜を得た有効な政策 提案ができず,政策立案能力に対する信頼の低下が指摘 されている点である.

また,本稿における論点でもある後者の現行人事制度 の問題は,個人尊重の理念に基づいた環境の整備,効率 的で質の高い行政への転換,公正で透明性,納得性の高 い,しかも合目的性のある評価システム(17)を確立する こと等の視点から以下の側面において浮上してくる.

すなわち,q採用試験区分や年次に基づいた硬直的な 任用管理(昇進,配置,退職)が行われ,能力と適性に 基づいた任用が実現できていないことである.

w現行の職務給原則の下,年功的な昇格や昇給が行われ,

能力向上や成果創出に対する給与上のインセンティブに 乏しい点である.

e職員の能力・成果を適切に評価する仕組みが十分でな い.

r職員ひとりひとりの意欲や能力・適性に基づき,長期 的な視点に立ち計画的に人材育成を行う仕組みが整備さ れていないため,能力開発が十分に行われていない.

t事前かつ詳細な規制のために,各省におけるその時々

(9)

のニーズに即した機動的・弾力的な組織・人事マネジメ ントが阻害されている.しかも,組織・職員の目標や行 動基準が不明確で徹底する手段もないことである.

そのような背景に基づく新人事システムの基本的枠組 みを明らかにすると図2のようになる.すなわち,この 制度の趣旨として,1つは,能力等級を中心とする新た な人事評価システムの構築である.

国民に対して良質な行政サービスを効率的に提供する 観点から,公務員の職場に能力と成果に基づいた健全な 競争原理を醸成するため,新たに能力等級制度を導入し た上,これを基礎として人事評価システムを再構築する ことで,採用試験区分や年次にとらわれない真に能力本 意の弾力的人事配置と能力・成果・職責を適切に反映し 得る給与処遇を実現することをねらいとしている.

もう一つは,組織目標・行動基準の明確化と目標管理 による徹底である.職員ひとりひとりに自らの使命を明 確に認識させ,これを全うさせるため,各行政機関にお いて組織の目標及び職員の行動基準を定め,これに基づ き個々の職員が設定した業務目標,職務行動を通じて実 践する仕組みを設けることにある.

この点,職務遂行に必要な具体的行動の有無程度を評 価することにより職務遂行能力を判断する行動評定のメ リットは次の点にある.

q評定要素が具体的な行動で示されるため,評定要素の 趣旨,内容について疑義が生じにくく,評価の客観性が 確保されることにある.

wどのような行動が評価されるのかを明示的に被評価者 に伝えることとなるので,評価に対する納得性が高まる 点にある.しかも期待する行動を明らかにすることによ って,効率的な業務展開の実現が予測できることである.

ただ,このような職務遂行能力評価にあたっては,評 価者間での評価をばらつきがなく公正なものとするため の手順等を十分の踏んだ上で行うことが重要となる.つ まり特定の職員を例にとって実際に評価を実施し,その 結果について評価者の協議のもと,すり合わせを行う場 を設ける必要がある.しかも過去の評価傾向を評価者に フィードバックする仕組みを組み込むことも,評価のば らつきを小さくする上で効果的であろう.

(2)教員人事評価に求められる視点

このような目標管理に基づく業績評価の考えは,実は 一般公務員や企業のみならず,教員の世界にも浸透する ことが予想されるのである.この先導的試みである東京 都の人事評価制度の状況をとらえつつ,今後の人事評価 システム運用上の課題を述べることにしたい.

q東京都の能力開発型人事考課の有効性

東京都において教員人事考課制度が全国で初めて導入 された(2000年4月).特徴は先述の公務員制度改革と 同様,能力開発型をめざした人事考課制度であり,自己 申告制度と業績評価制度を柱としている.これらの結果 に基づき,校長・教頭が適切な指導・助言を行い,しか も研修や自己啓発,適切な給与面での処遇(たとえば,

昇給期間の3ヵ月,6ヵ月および12ヵ月の短縮,勤勉手 当への成績率の導入)等を行うことを通じて,各職種に おける教育職員の資質・能力やモラールの向上,適材適 所の人事配置や学校組織の活性化等を図ろうとしてい る.

この点,昭和30年代初頭より実施されていた勤務評定 の形骸化がこの制度導入の背景にある.また,昭和31年 から昭和35年にかけての全国的な勤評阻止闘争の下で評 定結果をこれまで人事異動,処遇に反映させない取り扱 いとした運用上の問題もあったのである.

それゆえ,画一的・年功序列的な人事管理の下で教職 員の資質・能力の向上は個々の自主性に委ねられてい た.

しかし今日直面するさまざまな教育課題に対して,自 主性に委ねるだけでは限界に達し,むしろ学校組織が一 丸となって対処していくためには,能力と業績に基づく 新たな人事管理の確立が求められたのである.

(10)

人事考課の一つを構成する「自己申告」は,自ら目標 設定することで,より主体的に職務に取り組むとともに,

自己評価を行い,自己の能力や改善すべき点等を把握す ることにより,職務遂行能力の開発・向上をめざすこと を目的としている.

この自己申告は双方向的な仕組みのなかで行われるの が特徴である.校長・教頭が教育職員一人ひとりとの対 話を通じて,個々のよさを認め,生かし,励ますといっ た支援的コミュニケーションを取り入れ,しかも親和的 雰囲気を構築できるかどうかによって自己申告の機能も 変容してくると考える.

他方,「業績評価」は教育職員の職務遂行状況を的確 に把握し,教育職員一人ひとりの資質・能力向上への指 導育成方策を見出すことを目的としている.

この業績評価は,連携・協力のなかで進められている 教育活動において,一人ひとりの教育職員が担当の職務 にどのように取り組み,学校の課題解決に貢献したかを 把握するものである.また,教員の教科の内容自体を評 価するものではなく,子ども一人ひとりの実態に合った きめ細かい指導,児童・生徒の反応を的確にとらえた指 導を行っているかといった総合的な観点から学習・生 活・進路指導,学校運営,特別活動などの職務遂行状況 を評価する性格となっている.

このようなことから,まず校長の対応としては,加点 主義を基盤に置いた業績評価を通じて,むしろ教員一人 ひとりの資質・能力や適性,持ち味を把握し,適材適所 の校務分掌,異動希望,指導育成に生かすことが望まれ よう.

次に,これまで教員評価において危惧されていた点と して,公正で客観的評価が可能なのかということが挙げ られる.評価者が評価要素,着眼点,評価基準を理解し,

評価能力を向上させ自信をもって評価にあたることが前 提であるが,少なくとも評定の際に陥りやすい誤差を認 識する必要がある.また,評価結果について規則に従い 本人に開示をする場合を除き,知り得た評価結果につい て秘密を保持することはもちろんである.

さらに,今後の有効性を確立するためにも2001年度に 導入した人事考課制度の実施状況について,区市町村立 小・中学校,都立学校の校長及び教頭を対象に行った,

自己申告,授業観察及び業績評価の無記名による調査に ついてみてみよう(2001年5月実施).主な成果,課題 として次のように指摘できる.

第1に,自己申告書は98.0%が提出(2000年7月調査)

していることは注目される.しかも書き直しの指導にお いては,「職務目標の設定を具体的に記入すること」で 9割,「経営方針との整合性を図ること」で6割を各々 指導している〈複数回答〉.しかし,自己申告書の記入 にあたって,管理職は事前に教育職員が職務目標を具体

的に記入できるよう,学校経営方針の具体化,明瞭化に 努めるとともに,経営方針と整合性を図れるよう指導す る必要があったことである.

第2に,面接で職員理解が深まり,特に日常活動の中 ではわかりにくい,経営方針に対する理解や協力する姿 勢を持っている教員の把握ができた点が挙げられる.し かし,管理職の教育職員に対する面接は,理解を深める にとどまらず,「自己評価の甘い教育職員に対する問題 点の指摘や,克服すべき課題の提示」「組織の一員とし ての自覚を持たせる」等,職員の指導育成の役割も担う ことの認識を徹底することが求められたことである.

第3に,授業観察を通じて指導技術に関すること,生 活指導に関することが把握でき,また,自己申告による 学習指導の実施状況を確かめることができた点が挙げら れる.ただし,授業観察において教育職員を的確に評価 するためには,「教員に対し,授業観察の視点を明確に 示したり」「事前に指導案の提出を求めたりする」等の 工夫をすることが必要であり,そうしたことを授業改善 や校内組織の活性化に結びつけることが求められること である.

第4に,授業観察を受けることにより,「管理職に授 業内容や指導方法に対し指導,助言を積極的に求める者」

等,資質向上に意欲的な教員もでてきたことである.し かし,教育職員の姿勢の改善は,管理職による授業観察 の対応と関連していると考えられることから,授業観察 後,速やかにその結果に対して個々の具体的な指導助言 を行う必要も指摘される.

第5に,学習指導以外の業績評価において「評価場面 をあらかじめ設定したり」「日常の場面で評価できなか った」とする回答が合わせて9割近くあり,学習指導以 外の場面においても具体的な事実をもとに評価を行って いることである.ただし,「具体的事実に基づく評価が できなかった」とする回答が,少数ではあるが存在する のも確かであった.家庭,地域からの評価や,主任の意 見等を活用して,評価の客観性を高めていくことが求め られているのである.

第6に,管理職だけではカバーしきれない部分におい て,主任の意見が参考になっている.このことから,管 理職が組織として主任から意見を得られる状況作りや,

学校における主任の位置づけ,各主任においても自己の 職責と役割の理解が一層望まれること,また主任の職責 の明確化を早急に確立する必要がある点が課題である(19)

(3)人事配置や処遇,表彰制度への活用

上記の東京都の例のみならず,近年,大阪府,神奈川 県,埼玉県なども人事評価をはじめとする人事管理のあ り方を検討してきた.人事評価の活用として,まず,優 秀な教員に対する人事配置への活用が考えられる.人事 評価を通して,教員の能力,適性を的確に把握すること

(11)

により,評価結果が人事異動希望や校務分掌の決定,教 育管理職への昇任選考に積極的に活用される必要があ る.また,生徒指導や教科指導において優れた能力を有 する教員については,指導主事等の指導的立場の職に配 置することも望まれる.

次に給与面での処遇はどうか.今後,人事評価システ ムが有効に機能するためには,給与上の処遇と効果的に 連動することができるよう,評価の精度,評価結果の適 切な反映の仕組みについて,いっそう検討の余地がある.

さらに表彰制度については,教職員のモラール(志気)

向上に資するうえで,学校という協働組織体制のなかで,

長年にわたり教育的活動に意欲的に取り組み実践してい る教員の功績を称えることは考えられてよい.

表彰に際しては,単に表彰状や記念品のみではなく,

能力開発に連結する休暇システムの活用,指導的立場と しての指導・助言活動の機会を導入することも必要であ (20).また,教育委員会による表彰はむろん,身近な 校内(校長,児童・生徒,保護者)による表彰などの機 会も検討されてよいであろう.

6.むすび

学校が今後いっそう地域社会に開かれた,特色ある学 校づくりを推進するためにもクオリティ(品質)向上に 向けたストラテジーを発揮することが期待されている.

このような視点に立って,本稿では,まずクオリティ・

コントロール(品質管理)の推移をとらえた.特に90年 代以降の今日では品質管理の社会化,国際化進展の時代 にあり,品質管理あるいはTQCに対するパラダイムシ フトが求められ,TQMという戦略経営システムが内実 化していることが見出される.この点,TQMの理念は,

民間企業のみならず自治体,学校にも拡大することが予 測されることから,学校においてクオリティを高めるT QMの考え方がいかに反映されるかを組織マネジメント と学校評価,人事評価政策の視点から検討した.明らか になった点を摘録し,今後の研究課題をふまえることで むすびとしたい.

まず学校の組織マネジメントにおいては,学校を支え る教職員にとっても共通理解できる目標を,PDCAサ イクルを通じて実現し,かつ創造的付加価値を与える組 織マネジメント能力が,校長にとってリーダーシップを 発揮する上で求められてくる.しかもその際期待される リーダーシップの特性を筆者が行った実態調査から踏ま えると,「部下である教職員を感じさせ,動かすシンボ リックでしかも人間味のある変革的リーダーシップ」が 今後の基盤であると考えるのである.

次に,組織マネジメントによる学校改善を促進する上 で,学校の自己点検・自己評価が努力義務として省令上

制度化された(2002年3月)が,学校評価のねらいは,

あくまでもその学校の教育をよくするためという一点 に帰するのである.学校と地域の知力を双方的に受けと め,発展的,建設的に活用する姿勢が求められる.この 考えは,戦後の1951年に出された学校評価文部省試案の 意図が50年を経た今日において通用すると指摘できよ う.このような考えのもとで今日一番求められているこ とは,ステークホルダーの意見やニーズを踏まえた評価 結果をもとに学校として問題提起をしつつ,学校改革の 個性的ビジョンをどうアクションとして,早急,短期,

中期,長期の視点からとらえるかである.教職員の創造 性,協働性をベースにした学校文化のもとで検討し,状 況によっては,学校評議員,教育委員会等からのサポー トも必要となってこよう.

さらに,クオリティを高める組織マネジメントにおい ては,人事制度改革も重要な視点となっている.この改 革は公務員制度改革として位置づけられており,特徴は 能力開発型人事評価である.つまり,職員の能力と業績

(成果)を適切に評価する公正で納得性の高い新たな評 価システム(能力評価と業績評価システム)である.そ の際,職員ひとりひとりに業務目標の達成に努めさせ,

組織目標を着実に達成させることを目指す目標管理シス テムが導入されているわけである.

このような目標管理に基づく業績評価の考えは企業や 一般公務員のみならず,教員の世界にも浸透しつつある.

東京都ではすでに,2000年4月に自己申告制と業績評価 を柱とした能力開発型教員人事考課制度が導入され,成 果,課題も明らかになりつつある.評価者である管理職 側からすれば,「具体的事実に基づく評価ができなかっ た」とする回答もみられることから,子どもや保護者な どの意見,主任の意見等も活用しつつ,評価の客観性を 高めることが課題の一つであろう.他県の人事評価計画 を顧みても人事評価結果が人事異動希望や校務分掌の決 定,昇任選考,指導主事等の指導的立場の職への配置に 活用されることが望まれてくる.給与面での処遇は公務 員制度改革の定着過程のなかで適切な反映の仕組みにつ いて検討する余地は残されていよう.

今後の研究課題としては,各県における学校の自己点 検・自己評価の定着状況とそこから見出される特質,成 果,課題を集結することによって学校評価の有効性を探 ることにしたい.また,教員の人事評価システムを企業 で導入されつつあるコンピテシー成果主義,コンピテシ ーマネジメントの視点から再考し,今後の望ましい教員 人事評価のあり方を探る一助とすることが残された課題 である.

参照

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