授業における指導者発話のイメージ評価
著者 吉田 誠, 吉田 武尚, 山尾 文夫, 福田 誠
雑誌名 教育実践総合センター研究紀要
巻 13
ページ 41‑48
発行年 2004‑03‑31
その他のタイトル The image evaluation of the leader utterance in the teaching
URL http://hdl.handle.net/10105/57
1.はじめに
授業は、指導者・学習者間の相互活動作用であり、
そこには、「常に改善がつきまとう」という視点に立 ち、筆者らは実習形式の授業における指導者の発話状 況をカテゴリーとして定義づけ
(1)、(2)、時系列的に捉 える研究を積み重ねてきている
(3),(4),(5)。様々な実習 授業のVTR録画からの観察で、授業中における発話 量が多いのは、指導者である。授業時間に対する指導 者の発話時間の平均を計測すると、47.5%とほぼ半数 に近い値であることが判明している
(3)。また、講義形 式(座学)の授業においても、指導者の発話時間の割 合は、実習形式の授業とほぼ同じであることも判明し
ている
(3),(5)。それと同時に、指導者は、学習理解に
結びつくよりよい説明をともなわせていることが観て 取れる。これらのことから、指導者は、授業における 進行やメディアの役割を大きく担っていると言える。
指導者が何気ない言葉で発する説明が、学習者に
様々な心理的イメージの理解をもたらす。授業はコミ ュニケーション過程を考えると、指導者は、より分か りやすい適格な言葉を選択し、系統だてた説明を加え ていかなければならない。指導者が自らの発話に対し て、常に受け手がどのような捉え方をするのか、事前 に把握することの大切さと必要性を認識しておかなけ ればならない。このことから分析を行うことの意味が 明示され、指導者は、この分析結果をふまえて、授業 へのフィードバックに常に心掛けることが重要である。
前稿の研究
(3),(5)において、授業時間内における指 導者の発話時間の計測結果とカテゴリーを用いた授業 の分析結果から、授業内の指導者発話が、学習者にと って、心理的に重要な重み付けになることが認められ ることから、授業内における指導者発話に注目し、学 習者にどのような心理的イメージの理解をもたらすか を意味微分法で測定し、授業評価を行った。特に、こ の授業評価は、指導経験が少なく、発話訓練が十分に なされていない教育実習を必修とする教育実習生への 吉田 誠・吉田 武尚
(奈良教育大学)
山尾 文夫
(奈良教育大学教育学部附属中学校)
福田 誠
(学習塾 誠)
The image evaluation of the leader utterance in the teaching
Makoto YOSHIDA/Takehisa YOSHIDA
(Nara University of Education)
Fumio YAMAO
(Nara University of Education Attached Junior High School)
Makoto FUKUDA
(Private school Makoto )
要旨:授業内の指導者発話は、学習者にとって、心理的重み付けの大きいことがよく知られている。指導者発話が、
学習者にどのような心理的イメージや理解をもたらすのか、発話に注目して、意味微分法で測定し、授業評価を行 った。その結果、 「学習目標」 、 「説明の順序」 、 「説明のしかた」 、 「説明の理解」 、 「発話の内容」など、質問の項目に よって、評価方式の比較に大きな有意差が認められた。このことから、指導者の「学習目標の確実な伝達」や「言 葉による説明」は、学習理解度を左右する、非常に重要な要因となることが判明した。本イメージ評価は、教育実 習生に対する指導視点の追究や授業へのフィードバック手法、教育実習生への指導の手段として有効である。
キーワード:指導者発話、イメージ評価、授業評価、教育実習生指導
授業後の指導で特に効果があると考え、本校附属中学 校の教育実習期に実施した。
2.方法
2.1.調査方法
教育実習生(指導者)の授業内発話が、学習者にど のような心理的イメージや理解をもたらすかを調査す るため、2002(平成14)年度〜2003(平成15)年度の 教育実習期間中、教育実習生の担当する授業内で学習 者が調査票に答える。
調査票の各質問項目は、過去に技術科の教育実習生 が行った、比較的学習者の理解度が高いと思われる授 業のVTRの視聴から、カテゴリー項目として抽出さ れたものをもとに作成した。その質問内容には、学習 者が授業内で回答しにくいもの、学習者によって内容 の捉え方が異なるものなどが抽出されたことから、年 度によって若干の変更を加えている。また、学習者の 心理やイメージを細密に評価するため、意味微分法で 測定する。調査票の評価尺度は7段階で、「大変よか った」という認識の回答を7点、 「大変悪かった」と いう認識の回答を1点とする得点方式とした。
大変よかった 大変悪かった
教育実習生の担当授業は、 「技術とものづくり」に おける 木材の特徴 、 「情報とコンピュータ」におけ る ソフトウェアの使い方 及び 情報の発信 である。
2.2.調査項目
調査項目は、次の観点から、6項目で21の質問設定 となっている。
項目Ⅰは、指導者が授業の開始から動機づけが終わ るまでに、本授業では何を学習するのかを学習者に的 確に伝える必要があることから、『指導者の学習目標 の提示について』とし、①の質問を設定している。
①授業の学習目標は、わかりましたか。
よくわかった ― まったくわからなかった 項目Ⅱは、指導者が授業を行うにあたり、授業内容 を系統立てて説明をする必要があることから、『指導 者の言葉による説明について』とし、②〜⑬の質問を 設定している。
②指導者が説明に使用した専門語の量は、どうでし たか。
大変多かった ― 大変少なかった
③指導者が説明するスピードは、どうでしたか。
大変速かった ― 大変遅かった
④〜⑦指導者の言葉の調子は、どうでしたか。
④大変丁寧だった ― 大変乱暴だった
⑤大変強かった ― 大変弱かった
⑥大変明るかった ― 大変暗かった
⑦大変楽しかった ― 全然楽しくなかった
⑧指導者の説明の順序は、どうでしたか。
順序よくされていた ― まったくされていない
⑨指導者の説明のしかたは、どうでしたか。
大変よかった ― まったくよくなかった
⑩指導者の説明は、理解できましたか。
よく理解できた ― まったく理解できなかった
⑪指導者の説明された内容は、わかりましたか。
よくわかった ― まったくわからなかった
⑫指導者は、OHPや資料などを用いられましたか。
よく用いられた ― 全然用いられなかった
⑬OHPや資料であなたの学習は、進みましたか。
よく進んだ ― 全然進まなかった
項目Ⅲは、指導者が学習者に対して、説明以外に 様々な問いかけをする場合があることから、『指導者 の問いかけについて』とし、⑭〜⑮の質問を設定して いる。
⑭指導者が問いかけた質問の量は、どうでしたか。
大変多かった ― まったくなかった
⑮指導者の解答説明は、わかりましたか。
よくわかった ― まったくわからなかった 項目Ⅳは、指導者が授業内において、机間巡視など の活動を行う場合があることから、『指導者の活動に ついて』とし、⑯〜⑰の質問を設定している。
⑯指導者は、学習者の間を行き来されてましたか。
よくされていた ― まったくされていなかった
⑰指導者は、各々の学習者に説明をされていました か。
よくされていた ― まったくされていなかった 項目Ⅴは、指導者が学習内容を概念的に学習者に捉 えさせるため、授業内容をまとめる必要があることか ら、『指導者のまとめの仕方について』とし、⑱の質 問を設定している。
⑱指導者は、学習者の学習した内容をまとめられて いましたか。
よくまとめられていた―まったくされていなかっ た
項目Ⅵは、学習者が授業を受け、その学習の内容を 理解していなければならないことから、『授業を受け た後の感想や理解度について』とし、⑲〜嬰の質問を 設定している。
⑲授業を受けた感じは、どうでしたか。
大変楽しかった ― 全然楽しくなかった
⑳授業の内容は、どうでしたか。
よくわかった ― まったくわからなかった 嬰授業で学習した内容を説明することができます
か。
充分できる ― まったくできない
2003年度は、 調査の質問内容についての事後調査で、
(
7 6 5 4 3 2 1
)
学習者の捉え方に差があったことが判明したため、質 問⑫以下を変更し、6項目で22の質問設定とした。ま た、授業前に質問内容についての簡単な説明を加える こととした。2003年度の調査項目は次に示す。
(項目Ⅰ) 『指導者の学習目標の提示について』
①授業の学習目標は、わかりましたか。
(項目Ⅱ) 『指導者の言葉による説明について』
②指導者が話された専門語の量は、どうでしたか。
③指導者の話すスピードは、どうでしたか。
④〜⑦指導者の言葉の調子は、どうでしたか。
④大変丁寧だった ― 大変乱暴だった
⑤大変強かった ― 大変弱かった
⑥大変明るかった ― 大変暗かった
⑦大変楽しかった ― まったく楽しくなかった
⑧指導者の説明の順序は、どうでしたか。
⑨指導者の説明のしかたは、どうでしたか。
⑩指導者の説明は、理解できましたか。
⑪指導者の説明された内容は、わかりましたか。
⑫指導者は、掛図や機器(OHP、VTR、コンピュ ータ)などを使われていましたか。
⑬指導者は、プリントや模型などの資料を用いられ ていましたか。
⑭指導者が使われた掛図や機器、資料などで、あな たの学習の理解度は、どうなりましたか。
(項目Ⅲ) 『指導者の問いかけについて』
⑮指導者が問いかけた質問の量は、どうでしたか。
⑯指導者が問いかけた質問の答えが、指導者の説明 で理解できましたか。
(項目Ⅳ) 『指導者の活動について』
⑰指導者は、 学習者の間を行き来されていましたか。
⑱指導者は、各々の学習者に説明をされていました か。
(項目Ⅴ) 『指導者のまとめの仕方について』
⑲指導者は、学習した内容をまとめられていました か。
(項目Ⅵ) 『授業後の感想・理解度について』
⑳授業を受けた感じは、どうでしたか。
嬰授業の内容は、どうでしたか。
影授業で学習した内容を説明することができます か。
2.3.教育実習生に対する授業評価
2002年度は、授業中、学習者に調査票を書かせるこ とで、問題はないのか、学習者が調査項目や質問内容 を理解しているのか、などといったことの調査も行っ たが、特に問題点はなかった。教育実習生Aの評価結 果を次に示す。
2.3.1 教育実習生Aの評価
・実施校:奈良教育大学附属中学校
・日 時:2002年9月10日(5限目)
・対象者:3年1組
・単 元:ワープロソフトの使い方
・結果と考察
教育実習生Aの各質問に対する平均値と標準偏差 を表1に、各質問に対する平均値を図1に示す。
教育実習生Aの評価平均は、⑫が高く、⑭の評価 が低い。標準偏差から、⑬、⑭、⑰、嬰で学習者 の捉え方にバラツキがあったと考えられる。有意を 検定(検定条件:比較値=4.0、両側有意、有意水 準=0.05)した結果、評価平均の中央値である 4点 より多くの項目で勝っていたことが立証できた。授 業観察記録から、教育実習生Aは、コンピュータ画 面を使って、効率よく学習目標や学習内容を把握さ せ、コンピュータの操作がうまくできない学習者に 対しては、個々に指導を行っていたことが伺える。
ただ、一部の学習者に対して説明時間が長くなって しまったため、全員に対する説明が疎かになり、学 習のまとめを充分にすることができなかったことが わかる。項目Ⅱの各質問に対する評価があまり高く ないのは、これらのことが原因だと思われる。学習 指導案の構想段階で、時間配分に留意させる必要性 がある。
2003年度からは、前述のように、調査の質問内容を 一部を変更した。また、教育実習生が、
表1 教育実習生Aの評価平均
図1 教育実習生Aの各質問に対する評価平均点
(1)同一学級を連続して担当した評価平均
(2)同一指導内容を異学級で担当した評価平均 を継続的に実施し、授業へのフィードバック効果の適 応性を試みた。
2.3.2 同一学級を連続で担当した教育実習生B の評価
・実施校:奈良教育大学附属中学校
・日 時:2003年9月17日(2限)・10月1日(2限)
・対象者:1年2組
・単 元:木材の特徴と性質
・結果と考察
教育実習生Bの各質問に対する評価平均値と標準 偏差値、母集団の差検定([有意水準]=0.05)結果 を表2に、各質問に対する評価平均点のグラフを図 2に示す。
表2 同一学級を連続担当した教育実習生Bの評価平均
図2 教育実習生Bの各質問に対する評価平均点
教育実習生Bの発話に対する、学習者からのすべ ての質問項目の評価平均は、2回の授業とも5点上 のため、概ね良好な授業であったと言える。詳細な 点については、次のようなことが指摘できる。
(1)1、2回の授業とも⑫、⑬の評価が低い。これ は、木材の特徴を教科書中心に説明をしており、
適切な教材を準備していなかったことが原因であ る。この授業内容については、木材の実物標本教 材を準備し、それをもとに木材の特徴を説明した り、実験や観察を行い、その結果をプリントなど に記入させると、学習者の理解度向上への効果が 大きくなると思われる。また、②の評価が低いの は、分かりやすく説明しようという意識が強かっ たためである。しかし、指導内容から判断すると、
もう少し専門語を使って説明しても、中学生でも 十分理解できる内容だと思われる。
(2)④の評価が、項目Ⅱの中では低く、指導者の言 葉の乱暴さが目立つ。同一学級を連続して担当し たためか、学習者への接し方に慣れがあったとは 言え、指導者のイメージ全体にあまりよい印象を 与えていない。ぜひとも改善する必要がある。
(3)1回目の授業では、⑰、⑱の評価が低く、指導 者の活動があまりなされていないと、学習者は捉え て い る 。 し か し 、 2 回 目 の 授 業 で は 、 1 回 目 の 反省が授業に生かされ、指導者の授業に対するフ ィードバックへの努力がよくなされていると判断 される。
2.3.3 同一内容を異学級で担当した教育実習生 Cの評価
・実施校:奈良教育大学附属中学校
・日 時:2003年9月12日・9月19日
・対象者:(9/12)3年1組(2限目)
(9/19)3年4組(4限目)
・単 元:ホームページの作成
・結果と考察
指導した学級や時限などの条件が異なるため、母 分散比の検定後、母集団の差の検定を行った。母分 散比の検定結果は、すべての質問項目において母分 散が同じであった。
教育実習生Cの各質問に対する評価平均値と標準 偏差値、母集団の差検定( [有意水準] =0.05)の結 果を表3に、各質問に対する評価平均点のグラフを 図3に示す。
教育実習生Cの発話に対する1回目の評価平均を
みると、評価点が4点以下の質問が約半数の10問あ
る。また、項目Ⅱの評価が低い。教育実習で、初め
て3年生の授業担当だったことを考慮しても、指導
者の発話内容が学習者の理解に至っていないと推測
できる。ただ、項目Ⅳの評価が高いことから、全体
指導よりも学習者個々への指導に配慮した授業であ ったと言える。2回目の授業では、学級は異なるが、
1回目と同じ学習内容であったため、各質問に対す る評価平均点や授業観察から判断すると、1回目の 授業の反省がよく生かされており、全般にわたって 指導へのフィードバックへの努力がよくなされてい ると判断される。詳細な点については、次のような ことが指摘できる。
(1)指導者自身の性格もあるが、学習者に対する話 し方や説明のしかたなど、学習者とのコミュニケ ーションの取り方を第一の課題として、教材研究 を進めていく必要がある。
(2)授業後の反省で、1回目に授業を進めた学級の 方が、2回目の授業を行った学級より、授業がや りにくかったと指導者は述べている。しかし、母分 散 に 差 が 認 め ら れ な か っ た こ と か ら 、 指 導 が 困 難と感じる学級であっても、苦手意識を持たず、
学習効果を向上させる指導方法の研究や工夫が今 後必要である。
2.4.ベテラン教師に対する授業評価
教育実習生の指導教官は、多くの示範授業を観察さ せ、授業終了後、その授業における指導の要点を説明 するのが一般的である。ところが、教育実習生は、授 業中の学習者の理解度が分からなかったり、指導者と して、正しい授業の評価ができないため、自分が行う 授業に、示範授業の観察結果が生かされない場合が多 い。そのため、指導教官の授業と教育実習生の授業評 価の比較から、視覚的に教育実習生が行った授業の結 果を提示し、指導することが重要である。
また、ベテラン教師が、自分の授業を顧みる場合、
ビデオテープに記録するのが一般的である。しかし、
ビデオテープに授業記録を撮る場合、ビデオカメラが 固定されていることが多く、授業を受けている学習者 表4 同一内容を異学級で担当したベテラン教師の評価平均
図4 ベテラン教師の各質問に対する評価平均点 表3 同一内容を異学級で担当した教育実習生Cの評価平均
図3 教育実習生Cの各質問に対する評価平均点
個々の様子を知ることは容易ではない。ビデオテープ の記録だけでなく、 本稿の評価方式を併用することで、
授業中における学習者の理解程度がより深く追究され る。
2003年度に、教育実習生への指導助言のため、教育 実習生とほぼ同じ内容の授業を、勤続17年のベテラン 教師に実施してもらい、評価方式の比較を進めた。
2.4.1 同一内容を異学級で担当したベテラン教 師の評価
・実施校:奈良教育大学附属中学校
・日 時:2001年10月17日
・対象者:3年3組(1限目) 、3年1組(2限目)
・単 元:ホームページの作成
・結果と考察
指導した学級や時限などの条件が異なるため、母 分散の比の検定後、母集団の差の検定を行った。母 分散の比の検定結果は、②、⑱、⑳、嬰で、母分 散が異なっていた。
ベテラン教師の各質問に対する評価平均値と標準 偏差値、②、⑱、⑳、嬰を除く、母集団の差検定
([有意水準]=0.05)の結果を表4に、各質問に対 する評価平均点のグラフを図4に示す。
教育実習生との比較では、項目Ⅰ、項目Ⅱ、項目 の評価平均値が高く、評価のばらつきも少ない。
各時限とも、学習目標が学習者に徹底され、丁寧に 説明がなされている。また1限目の指導結果が、2 限目の授業に大きくフィードバックされていること がわかる。
⑬、⑮の評価平均値が極端に低いのは、授業がH TMLの命令文の説明と、それをコンピュータに打 ち込む内容といったことから、学習者への質問がほ とんどなされていなかったのが原因とも言える。
3.学習理解の考察
指導者が授業を行うとき、常に念頭におかなければ ならないことは、学習者の学習理解度である。学習者 が学習内容を理解するためには、指導者の説明の仕方 が最も有効で、重要となる。そこで、嬰「授業の内容 は、どうでしたか」に対して、5〜7点の評価(以 降+評価と表記する)をしている学習者に注目した。
この質問の評価が行われる要因となっているのは、①
「今日の授業の学習目標は、わかりましたか」 、⑧「説 明の順序は、どうでしたか」、⑨「説明のしかたは、
どうでしたか」 、⑩「説明は、理解できましたか」 、⑪
「話された内容は、わかりましたか」であると考えら れる。そこで、嬰に対して+評価をしている学習者が
①、⑧、⑨、⑩、⑪でどのような評価をしているかを、
9月12日に情報基礎の授業を行った教育実習生B、 C、
10月17日の1時限目に情報基礎の授業を行ったベテラ ン教師とで検討した。学習単元は、ホームページの作 成である。
3.1.教育実習生B
嬰と⑨の評価に相関があり、嬰と①、⑧、⑩、⑪に 弱い相関が認められる(表5)。嬰1の+評価は26名
(72.2%) 、+評価の平均点は 5.84である。嬰に+評価 をした学習者の75〜80%が①、⑧、⑩、⑪に+評価を 行っている(表6) 。⑨は、+評価の割合は小さいが、
中間点( 4点)の割合が大きいため、説明のしかたに、
特に問題はなかったと考える。⑧と⑪の割合が特に大 きいことから、この授業では、順序立った説明や、学 習者にとってわかりやすい説明が、授業内容の理解に 結びついていると判断される。これらのことから、こ の授業における指導者の説明は適切で、学習者の約 70%が授業内容を理解していると言える。
3.2.教育実習生C
嬰と⑨、⑪の評価相関があり、嬰と⑩の評価に弱い 相関が認められる。嬰と①、⑧の評価には、相関が認 められない(表7) 。嬰の+評価は17名(56.7%) 、+
評価の平均点は 6.05である。⑨の説明のしかたの+
評価が47.1%で極端に低く、3点以下の評価をしてい る学習者も多い。説明のしかたを、すでに学習内容を 熟知している生徒にあわせたため、このような結果に 表5 教育実習生Bの嬰に対する①、⑧、⑨、⑩、
⑪との相関関係と母相関係数検定
表6 教育実習生Bの嬰の+評価に対する①、⑧、
⑨、⑩、⑪の得点分布
なったと考えられる。学習者の既習の知識に左右され ない、わかりやすい説明のしかたを心がける必要があ る。また、嬰の評価と①、⑧に相関が認められず、+
評価の割合も大きいとは言えない。はっきりとした学 習の目標提示や順序立てた説明の研究が是非とも必要 である。この授業における指導者の説明は、不適切な 部分が多く、学習者の50〜60%程度しか授業内容を理 解していないと言える。
3.3.ベテラン教師
嬰と⑩の評価に相関があり、嬰と①、⑧、⑨、⑪に 弱い相関が認められる(表9)。嬰の+評価の割合は 26名(83.8%)、+評価の平均点は 6.38である。当然 とは言え、 教育実習生より+評価の割合がかなり高い。
嬰で1〜4点の評価をしている学習者は5名であり、
全員が中間点( 4点)以上の評定をしている。嬰に+
評価をした学習者の90%以上が①、⑧に+評価を行っ ている(表10)。この授業における指導者による①お よび⑧〜⑪の説明は、すべて適切であると言えると同 時に、学習者の約80〜90%が、学習内容を充分理解し ていると解釈できる。
この評価の結果だけで、ベテラン教師と教育実習生 の授業を単純に比較することはできない。しかし、ベ テラン教師は、無意識のうちに授業の学習目標を学習 者にはっきりと理解させることや、説明の順序立てな
ど、言葉による説明がいかに大切であるかを認識して 授業に望んでいることを、教育実習生に理解させるこ とができる。
4.おわりに
本稿の授業評価は、教育実習における実習生の指導 視点を深く追究したり、教育実習生と現職指導者との 比較が行えるなど、教育実習生を指導する場合に活用 すれば、有益な効果をもたらすことが判明した。しか し、イメージ評価の結果は、指導者の立場とその学習 者の関わりによって異なるため、指導者同士を比較す ることは難しい。また、調査前に学習者に対して、調 査の意義や質問内容の意味など、ある程度の説明を行 うことが必要である。また、この授業評価は、学習者 に指導者発話からのイメージから評価させているた め、指導過程や指導内容などの細かい分析をすること はできない。これらを行うには、VTR視聴などを併 せて行う必要がある。
本研究の結果から考察すると、 教育現場の指導者は、
自身の授業中の発話について、次のような点に留意す る必要がある。
(1)指導者が授業を行う場合、よりわかりやすい言葉 を選択し、系統立てた説明をするなど、常に自分の 発話に対して受け手がどのような捉え方をするかを 表7 教育実習生Cの嬰に対する ①、⑧、⑨、⑩、
⑪との相関関係と母相関係数検定
表9 ベテラン教師の嬰に対する ①、⑧、⑨、⑩、
⑪との相関関係と母相関係数検定
表10 ベテラン教師の嬰の+評価に対する①、⑧、
⑨、⑩、⑪の得点分布
表8 教育実習生Cの 嬰の+評価に対する①、⑧、
⑨、⑩、⑪の得点分布
事前に調査しておく。
(2)指導者は、授業中の自分の発話内容を検討し、絶 えず授業へのフィードバックを心掛ける。
(3)指導者が授業中に何気なく発している言葉は、学 習者に様々なイメージや理解をもたらす。そのため、
指導者は学習過程において、常に学習者とのコミュ ニケーションをはかる。
参考・引用文献