都市と不動産経済の基礎最終レポート
駒井正晶研究会1 総合政策学部3 年 江藤文昭 学籍番号:70401114 首都圏マンション市場のダイナミズム 今回、首都圏におけるマンション市場について分析し、考察を試みた。 マンション:3階建て以上の民間分譲マンション 供給戸数:新築マンションの供給戸数 平均価格:新築マンションの平均価格 総供給戸数:供給戸数+前年の年末残戸数 まず、{図1}を見てもらいたい。このように新築マンションの供給戸数は毎年変化し、その推移は波打っている。この なかで、マンション市場で供給戸数が高い値で推移している状態を“マンションブーム”と呼ばれている。このマンショ ンブームは全体を通し景況に大きく影響され、主に好景気の時期に割安感から需要が高まり起きた現象である。以降、マ ンションブームを中心に時系列で、約30年間のマンション市場について分析、考察をしていく。1973年~1984年
この期間は、マンション市場の拡大・成長期であるといえる。それは、{図1}からわかるように供給戸数、平均価格 ともに安定して上昇し続けているからである。供給戸数は 37382 戸から 44116 戸、平均価格は 1171 万円から 2562 万円と 上昇している。これは、景気の基本的な安定成長によるものと思われる。 マンションブームは、第3次と第4次マンションブームが起きている。第3次においては、購入主体の変遷から一般の サラリーマンにもマンション購入という選択が始めて生まれたということがわかる。このことから、今まで都心で起きて いたものが、初めて郊外でブームが起きたと思われる。第4次は、人口増加と団塊の世代が職場に近い都心で住みたいと いう都心での住居の需要の高まりから、都心で起きた。この需要の高まりと都心中心の供給が行われたことから、平均価 格の上昇が起きた。1985年~1993年
この期間は、マンション市場の変動時期といえる。好景気にわいた90年まで(前半)と、バブル後の調整が行われた 90年以降(後半)とに分けることができる。一方、総供給戸数は5.5万戸以下と低い値で推移していたのも特徴的だ。 前半は、第5次と第6次のマンションブームが起きている。特筆すべきはともに住居としての需要の高まりから起きる ブームではなく、資産運用から起きたブームであったことだ。これは、{図1}の平均価格の異常な上昇に裏付けられる。 このように、平均価格が上昇し続ければ「今買っておけば、後々高値で売り抜けられる」という心理が働き、住むためで はく、資産運用として需要が高まった。また、好景気により地価が高騰したことで、都心での供給が難しくなり郊外中心 の供給となった。ディベロッパーがこの郊外でのマンション建設に将来性を見出さなかったのか、高い契約率にも関わら ず供給戸数が上昇せず、それに伴って総供給戸数も低い値で推移している。 後半は、バブル崩壊後の不景気に見舞われ供給戸数が15年ぶりの低い値で推移した。また今までの平均価格の上昇が バブル経済に裏づけされていたことが顕著に現れたように、大幅な下降を続けた。しかし、{図2}の年間契約率は87 年から下がり続けていたが、92年には上昇に転じた。萎縮傾向と思われたマンション市場に、転機が訪れたと思われる。1993年~2006年
この時期は住居としてのマンションの安定・拡大期と言える。バブル崩壊後に始まった平均価格の下落も収束し、10 年以上にわたり安定している。また、{図2}の年間契約率も04年までのデータではあるが、80%を超えた高い値で 推移している。一方、供給戸数はブームに伴い上下しているが、終始今までにないような大量供給が行われ続けている。 しかし、超過供給に伴う価格の下落が起こっておらず、先に述べたように安定している。よってマンション市場の安定・ 拡大期といえる。 この期間に第7次、第8次のマンションブームが起こっている。この2つのブームに共通するのが、地価の下落などに 伴う建設環境の良化だ。今回詳しいデータを集められなかったのが残念ですが、バブル崩壊後から05年まで地価は下落 し続けていた。この建設環境の良化に伴い、都心でのマンション建設が急増している。それは、{図1,2}の供給、総供 給個数の高水準での推移と、{表1}の立地から説明できる。このことから、都心での住居の需要が高いことがうかがえ る。また、低金利による住宅ローンの低さが住居の需要を後押ししている。以上のように、供給と需要がともに高まりブ ームが起こった。 また、この期間では{表2,3}{図3}に見られるように、他の期間と比べより詳しい資料が揃ったので、より深い 分析をすることができた。 まず{表2,3}だが、これから1993年以降の価格の安定は不動産ディベロッパーのバランスの取れた供給が行わ れているからであることがわかった。それは、{表3}から「供給戸数」と「平均価格」の相関係数は、-0.88と強 い負の相関関係があることがわかる。それにも関わらず、{図1}のように1993年以降平均価格は安定した推移を見 せており、供給戸数は上下している。このことから供給戸数を調節して、平均価格が安定していることがうかがえる。 この供給戸数には、「前年の契約率」が影響していることがわかった。それは、年間の契約率と供給個数との相関は0. 71であるのに対して、前年の契約率と供給戸数との相関は0.80である。ちなみに前々年の契約率とは0.65であ る。このことから、供給戸数と契約率に関して前年の契約率が強く関係していることがわかった。 次に{図3}についてだが、これは1991~2006年の16年間の平均面積と㎡当たり平均価格の散布図である。 91年以降、基本的に価格は減少し、面積は上昇し続けていたが、2000年からは、ほぼ同じ地点で推移している。こ のことから、2000年以降のマンション供給は安定的であり、価格と面積の面で変動が極めて少ない。また、{表2}か ら見て取れるように2000~2004年までではあるが、90%を超える高い契約率を維持している。つまり、「都心 にあり、面積が75㎡くらいで、㎡あたり価格が54くらいのマンションには、継続した需要がある」ということが言え る。結論
約30年間を通して、マンション市場は景況に影響されながらも成長を続けてきた。それは、毎年の供給戸数も全体と して右肩上がりであることから上げられる市場規模の拡大と、近年のマンション市場の動向から、よりライフスタイルに 見合った、高い需要のあるマンションが供給されていることなどからだ。 その成長過程では、都心部の高級物件としのマンションから、一般市民の需要も汲み取ったマンションとなったり、都 心→郊外→都心と、経済状況に見合った需要が多いマンションとなるための軌跡が見て取れる。また、バブル期には資産 運用の対象として扱われ、市場が大きく上下したことで、その後の洗練された市場として生まれ変わっている。このよう にして、マンションは日本において多くの需要を汲み取るとため、変化し続けることで規模を拡大してきた。 これからも、マンションは変化を続けマンション市場は拡大していくと思われる。また、近年に特徴的な安定したマン ションに対する需要は、まだまだ都心マンションへの内在的な需要があることをうかがわせるものがある。よって、じわ じわではあるが、平均価格が上昇している。よって、近い将来において2003年から2005年において第9次マンシ ョンブームといわれるようになるかもしれない。{表1} 第1 次 第2 次 第3 次 第4 次 第5 次 第6 次 第7 次 第8 次 期間 63~64 年 68~69 年 72~73 年 77~80 年 86~87 年 89~90 年 93~96 年 99~01 年 景況 オリンピック いざなぎ 列島改造 技術革新 内需拡大 バブル 生活大国 資産デフレ 公定歩合 5.90~6.50% 6.00% 4.25~9.00% 3.50~9.00% 2.50~4.50% 3.25~6.00% 1.75% 0.50~0.25% 住宅ロー ン金利 10.20%S36 年 4 月スタート 9.12~9.60% 9.00~9.60% 7.62 ~9.00% 6.12~7.50% 6.60~8.28% 6.12~4.00% 3.80~3.65% 人口(首都 圏) 1904 万人 (1963 年) 2211 万人 (1968 年) 2534 万人 (1973 年) 2786 万人 (1979 年) 3076 万人 (1988 年) 3127 万人 (1990 年) 3188 万人 (1992 年) 3345 万人 (2000 年) 分譲マン ション着 工戸数(全 国) 63 年 1,776 戸 64 年 9,672 戸 68 年 26,975 戸 69 年 45,758 戸 72 年 89,737 戸 73 年 154,806 戸 77 年 14,967 戸 78 年 122,448 戸 79 年 129,513 戸 80 年 140,960 戸 86 年 119,745 戸 87 年 133,776 戸 88 年 167,876 戸 89 年 113,873 戸 89 年 177,834 戸 90 年 238,600 戸 93 年 135,416 戸 94 年 222,501 戸 95 年 206,804 戸 96 年 196,470 戸 99 年 184,668 戸 00 年 217,703 戸 01 年 215,301 戸 年 収(勤労 者世帯)(万 円)[倍率] 57.9~62.4 [9.2~11.5] 106.7~ 122.7 [5.5~5.7] 200.8~ 238.6 [3.85~4.9] 399.8~ 492.7 [4.1~5.0] 662.7~ 682.2 [4.2~7.0] 89 年 730 90 年 767 [7.4~8.0] 91 年 828 92 年 850 [6.1~5.3] 98 年 859 01 年 813 [4.85~4.95] 新規販売 戸数 (首都圏) 72 年 30,303 戸 73 年 37,382 戸 74年 32,301 戸 77 年 471,71 戸 78 年 54,700 戸 79 年 53,772 戸 86 年 40,477 戸 87 年 41,057 戸 88 年 32,080 戸 89 年 39,352 戸 90 年 39,548 戸 93 年 44,270 戸 94 年 79,896 戸 95 年 84,885 戸 96 年 82,795 戸 99 年 86,297 戸 00 年 95,635 戸 01 年 89,256 戸 新規契約 率 (首都圏) 72 年 50.5% 73 年 59.0% 74 年 26.7% 77 年 70.3% 78 年 73.9% 79 年 80.5% 80 年 65.4% 86 年 76.8% 87 年 91.2% 88 年 74.9% 89 年 77.4% 90 年 73.9% 93 年 83.3% 94 年 85.4% 95 年 78.5% 96 年 83.1% 99 年 79.0% 00 年 79.6% 01 年 78.1% 年末残戸 数 (首都圏) 72 年 4,135 戸 73 年 8,971 戸 74 年 19,230 戸 77 年 8,714 戸 78 年 6,665 戸 79 年 5,082 戸 80 年 10,872 戸 86 年 2,580 戸 87 年 1,405 戸 88 年 4,225 戸 89 年 4,222 戸 90 年 8,014 戸 93 年 6,749 戸 94 年 8,583 戸 95 年 10,447 戸 96 年 8,330 戸 99 年 8,712 戸 00 年 8,903 戸 01 年 9,571 戸 平均価格 (万円) 63 年 531 64 年 718 68 年 606 69 年 688 72 年 774 73 年 1,171 77 年 1,646 78 年 1,711 86 年 2,758 87 年 1,405 89 年 5,411 90 年 8,014 93 年 4,488 94 年 4,409 99 年 4,138 00 年 4,034
(首都圏) (東京都) (東京都) 74 年 1,657 (首都圏) 79 年 1,992 80 年 2,477 88 年 4,225 95 年 4,148 96 年 4,238 01 年 4,026 立地 都心 都心 郊外 都心 準都心・郊外 遠郊外 準郊外 都心回帰 購入主体 会社役員 会社管理職 会社職員 団塊の世代 買換え・資産 運用 法人 ニューサー ティ 共働き 低金利需要 シングル <不動産経済研究所> {表2} 年度 供給戸数 新築マンション平均価格(万円) 平均面積(㎡) ㎡当たり価格(万円) 新規契約戸数 年間契約率(%) 年間総供給戸数 1991 26422 5900 64.9 90.9 18215 70.3 33924 1992 26853 5066 63.3 80 22026 83.9 37952 1993 44765 4488 63.8 70.3 40455 91.4 53100 1994 79897 4409 64.6 68.2 73255 91.7 86646 1995 84885 4148 66.7 62.2 77037 90.8 93468 1996 82795 4238 69.5 61 76596 92.5 93242 1997 70543 4374 70.3 62.2 62084 88 78783 1998 66308 4168 71 58.7 57054 86 76195 1999 86297 4138 71.8 57.6 78757 91.3 97404 2000 95635 4034 74.7 54 87741 91.7 104347 2001 89256 4026 77 52.3 80571 90.3 98159 2002 88516 4003 78 51.3 77930 88 98087 2003 83183 4069 74.7 54.5 74936 99.1 94794 2004 85429 4104 74.6 55 78071 91.4 95157 <矢野経済研究所、長谷工総合研究所> {表3} 1991~2004 年 供給戸数 新築マンション 平均価格(万円) 平均面積(㎡) ㎡当たり価格 (万円) 新規契約戸数 年間契約率 (%) 年間総供給 戸数 供給戸数 1 新 築 マ ン ショ ン 平均 価格 -0.88202 1 平均面積(㎡) 0.736392 -0.66702 1 ㎡当たり価格 -0.90727 0.962092 -0.84343 1 新規契約戸数 0.997831 -0.88931 0.707602 -0.9017 1 年間契約率 0.710606 -0.85498 0.392433 -0.75574 0.741124 1 年間総供給戸数 0.998126 -0.89204 0.750517 -0.91951 0.996315 0.726606 1
{図1} 新築マンションの供給戸数と平均価格の推移 0 20000 40000 60000 80000 100000 120000 1 9 7 3 1 9 7 4 1 9 7 5 1 9 7 6 1 9 7 7 1 9 7 8 1 9 7 9 1 9 8 0 1 9 8 1 1 9 8 2 1 9 8 3 1 9 8 4 1 9 8 5 1 9 8 6 1 9 8 7 1 9 8 8 1 9 8 9 1 9 9 0 1 9 9 1 1 9 9 2 1 9 9 3 1 9 9 4 1 9 9 5 1 9 9 6 1 9 9 7 1 9 9 8 1 9 9 9 2 0 0 0 2 0 0 1 2 0 0 2 2 0 0 3 2 0 0 4 2 0 0 5 2 0 0 6 新 築 マ ン シ ョ ン 供 給 戸 数 0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000 新 築 マ ン シ ョ ン 平 均 価 格 (万 円 ) 供給戸数 平均価格 <不動産経済研究所> {図2} 年間契約率と年間総供給戸数の推移 0 20 40 60 80 100 120 1 9 8 2 1 9 8 3 1 9 8 4 1 9 8 5 1 9 8 6 1 9 8 7 1 9 8 8 1 9 8 9 1 9 9 0 1 9 9 1 1 9 9 2 1 9 9 3 1 9 9 4 1 9 9 5 1 9 9 6 1 9 9 7 1 9 9 8 1 9 9 9 2 0 0 0 2 0 0 1 2 0 0 2 2 0 0 3 2 0 0 4 契 約 率 (% ) 0 20000 40000 60000 80000 100000 120000 総 供 給 戸 数 年間契約率 年間総供給戸数 <矢野経済研究所、長谷工総合研究所>
{図3}1991年~2006年