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鹿児島の未来遺産 ―…自然・歴史・文化…―

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Academic year: 2021

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提題発表者  寺田仁志氏  松尾千歳氏  小川学夫氏 特定質問者  古木圭介氏  小島摩文氏

… (於…鹿児島純心女子短期大学 2012.…7.…21)

平成24年度、当センター地域人間科学研究所が主管となって、シンポ ジウム「鹿児島の未来遺産―自然・歴史・文化―」が開催された。その 具体的な実施概要については巻末の活動報告(P.104~)に譲り、その内 容について概観する。

まず提題発表として、自然・歴史・文化の3部門それぞれを代表して、

3名の方々が登壇した。

寺田仁志氏は「黒潮,火山,人によって多様化した南北600km のみ どり」と題し、南北600km、標高差2000m という地理的条件がもたら す鹿児島県の豊かな自然について、専門の植生学の視点から幅広く網羅 的に紹介された。屋久島と奄美大島との間にひかれる渡瀬ラインの意 味、世界遺産屋久島にみる植物の垂直分布、長い歳月をかけた桜島の植 生の変遷、黒潮がもたらした熱帯性植物、神山・里山・牧野など人との 関わりにおける自然等を例に、豊かな自然に囲まれて当たり前のように 生活するわれわれに一定の自然の見方を教示し、大自然の持つ驚異と厳 シンポジウム

鹿児島の未来遺産

―…自然・歴史・文化…―

         

コーディネーター 

河 野 一 典

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5 鹿児島の未来遺産 かな感動を与える発表であった。

松尾千歳氏は「海洋国家薩摩―異国情緒あふれる薩摩の文化―」と題 し、ザビエル上陸以来幕末に到る薩摩藩に見られる、知られざる先進的 な文化一般について語られた。日本の南の玄関口として、異国情緒あふ れ開放的な海洋国家(貿易立国)としての特徴を実証的な資料・文化財 に基づいて論じられた。薩摩はブタ肉食・サツマアゲ・ニガウリ等の食 文化をはじめ、近代化・工業化においても日本の最先端を走っていた。

これらの誇るべき歴史・文化を再認識し、それを活かした人材育成・地 域活性化を図るべきと力説された。

小川学夫氏は「奄美の島唄を通して見た生きた文化の伝承―この50年 の島唄の変遷―」と題し、氏が学生時代からいわば中に入って関わり続 けた島唄について愛情豊かに論じられた。近年島唄は、その音楽性が認 められ全国的にポピュラーとなり、奄美の宝として自信を回復してい る。ところが一般的に、生きた文化をそのまま継承するには困難がとも なうのが宿命である。若者の方言離れとともに歌掛け(複数の人たちに よる唄の文句の応酬)という島唄の原型を残した伝承が困難である。し かしながら言葉の変化はあるにせよ、若者の間に歌掛けを復活させる動 きもあり、原型に回帰することによって島唄が継承されていくことに希 望を見出していると主張された。

パネルディスカッションでは、古木圭介氏と小島摩文氏が特定質問者 として加わり、三名の提題者とともに「どう活かす、鹿児島の未来遺産」

という主題のもとに議論が行われた。フロアーからの質問状も取り上 げ、議論は一層具体化・詳細化した。

古木氏は欧米諸国と比べて、日本の観光産業の未発達ひいてはその可 能性の大きさについて述べられた。いわば日本の観光産業のパイオニア かつスペシャリストとして、トイレや入山規制の問題を抱える屋久島の 将来についての懸念、ザビエルゆかりの地を利用した鹿児島の観光事業 の開発についてアイディアはないか等々、具体的に質問された。

自然保護と経済発展が両立しえないことは明らかである。両者のバラ ンスをどのように取っていくかに苦心しているのが現状であろう。その 中で「明日の飯より未来」(古木氏)と言われるように、観光資源とし ての自然・歴史・文化遺産を保全し観光事業を育てていくことが、長い

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6 想林第4号

目で見て経済的な効果も期待できるのである。鹿児島が持つすばらしい 遺産を大切にする教育・啓蒙活動の必要性を感じている点でパネリスト の意見は一致した。

小島氏は、いわば「外から見た鹿児島」の視点で議論に加われた。鹿 児島の未来遺産(特に歴史や文化)の継承も一筋縄ではいかない複雑な 様相がある。すなわちそもそも継承すべき自然・歴史・文化遺産とは何 であるのか。風土(県民性)や文化論的側面から見れば、一概に「すば らしいから残そう」と単純に割り切れない思いがある。言葉の変容は免 れない島唄を島唄たらしめているものは何か、それを知らなければ、ど のように島唄を継承するかはわからない。歴史的に先進的で異国情緒豊 かな海洋国家が今の鹿児島にどう活かされているのかが問題ではない か。またそれを遺物ではなく遺産として未来に向けてどのように継承し ていけばよいのか。鹿児島(薩摩)が誇るべき歴史も文化も、奄美や沖 縄の文化との関係性を抜きにして語れないのではないか。それらが鹿児 島の歴史や文化にどのような影響を与え、またどこに鹿児島の独自性が あるのか。鹿児島の内にいては気づきにくい問題点を指摘された。

フロアーからも「今の鹿児島人には革新的な意気込みや現状への批判 心が弱いように思うが、その原因は何か」、「薩摩の幕末の活躍において 奄美や沖縄が貢献したことは何か」、「島唄の歌掛への回帰はいかにして 可能なのか」という、深層を突く質問があった。

登壇くださった方々は皆、知見を惜しみなく披露してくださり、聴衆 も新たな情報・見識に唸らされることがしばしばであった。未来遺産を どう活かすかという重要で難しい問題提起であったが、皆その問いの深 い意味を知り、問題意識も深まったのではないかと思う。

以下本書では、提題者および特定質問者の方々に、当日の発表・発言 に基づきながらも何の制約もなく、各々の主張を存分に取り入れた論 文・エッセイを執筆していただいた。

最後にパネリストをはじめご来場いただいた皆様のご協力のもと、有 意義な時間を持てたことを、感謝申し上げる次第である。

… (鹿児島純心女子短期大学教授)

参照

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