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金属加工学教室向井楠宏

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(1)

液体錫による固体鉄のぬれについて

(昭和54年9月14日 原稿受付)

金属加工学教室向井楠宏

 金属加工学(大学院)日   塚   健   治 金属工学教室 沢 村 企 好

On the Wetting of Solid Iron by Liquid Tin

      by Kusuhiro MUKAI        Kenji HIZUKA

       Kiyoshi SAWAMURA

      Abstract

   Time variations of contact angleθand diameter 40f the tin drop on the polycrystalline iron plate were observed for 40 minutes after releasing the drop on to the iron plate at temperatures 513〜763Kin hydrogen and argon atmospheres.

   In hydrogen,θand 4 showed smooth changes with time, finishing their relatively steep changes by ten minutes after releasing the tin drop. The tin drop spread faster along the surface micro grooves than across them. Wettability was generally good in this experimental condi−

tion, and mass of the tin drop, tinning temperature 7㌦, oxygen content of the iron plate, and heating procedure of the plate had a little effect on initial and final wetting.θ一2㌦relation showed a tendency to have the best wettability in the vicinity of 663 K.

   In argon, wettability was generally worse than that in hydrogen. H owever, the wettability was rather good, that is,θ<90°and better s㏄ondary spreading was obtained at the higher temperatures,613〜713 K. The improvement of the wetting at the higher temperatures is pre−

sumably attributed to the reduction of the surface oxide layer of the iron by liquid tin and also the peeling of the oxide layer by the growth of FeSn2 compound at the interface between the oxide layer and the iron. The improvement of the wetting at the higher temperatures was not observed for the oxidized surface of the iron plate with grey or dark brown.

      観察など速度面からの詳しい研究は皆無に近い。本研究

1・緒言        はこのF,.S。系のぬれ}、つ、、て,比醐良好なぬれが得

 ろう接,溶融メッキでは,近年,公害,省力化による   られるとされる水素雰囲気Dを中心にして・速度面を含 量産性の問題などから,フラックスを用いないプロセス   めて,雰囲気,温度などいくつかの因子の影響を調べた に関心が高まり,ろう接においては雰囲気ろう接,真空   ものである。

ろう接など縞望視されている・このようなプ゜セスで 2.実験方法 は,フラックスのない場合のぬれ性が重要な因子になる。

Fe−Sn系はろう接,溶融メッキの基本系の一つとして重    ぬれの測定には・いくつかの方法があるが・本実験で 要な系であるが,この系のぬれについてはこれまでに   は図一1に示す多結晶鉄表面上の錫滴の直径4と接触角θ Turkdogan ら1}の研究が見当る程度である。 Turkdo一  とを測定する方法を採用した。

ganら1)はそこにおいて,表面酸化膜が拡がりを著しく   実験装置は・測定用加熱炉・ガス精製装置(アルゴン 妨害することを報告しているが,ぬれの経時変化の直接   と水素・いずれも純度99・99999%以上)・写真撮影装置に

(2)

52

Tア

o   液体錫       7㌔

 ∂ 固体鉄

図一1 固体鉄面上の錫滴の直径4と接触角θ

,麺

還元温度

測定温度

錫の融点

室温

60 τr 40 40 25

日寺 間 (分)

ガス出口  ↑

石英反応管

錫滴

       図一3 測定時における鉄  コック      試料の保持時間と        温度の関係

豊纏棒  ガス入口        をはじめた。鉄試料の温度履歴を同じにし・測定時の鉄

黒鉛板 固体鉄試料       アルミナ支持台

1        試料面の状態を一定にする目的で,試料の温度と時間と     フ     の関係は,図一3に示すようにまず測定温度7 mより高い          温度の7 ,に保持したのち,Tmに下げて測定を行なっ アスベスト

透明石英板    た。Tmは513〜763K,τ.は763〜963Kとし,水素雰囲 熱電対 ニクロム線水冷キャップ      気では石英管からのSiによる鉄試料の汚染2)を少くす     、       るため7 ,を913K以下とした。錫滴の滴下直後から40分 図一2測定炉概略図 @  まで写真撮影を行ない,ネガフィルムの像より場顕微

大別できる。測定用加熱炉(図一2)は内径30mm長さ280   鏡によって接触角θ(2 まで読取可能),4(1/1000 mm mmの石英管にニクロム線を巻いた電気抵抗炉である。   まで読取可能)を測定した。測定誤差はθで1.5°以内,

炉の中央の枝管のコックの操作により,黒鉛板上の錫滴   4は1/100mm以内にあった。鉄試料の酸素は真空溶融 を鉄試料面に滴下する。測温にはクロメルーアルメル熱   法により分析した。

電対を用い,熱電対の先端が鉄試料の直下に位置するよ

う定めた.この測温位置と試料の位置との温度差は,炉 3・実験結果と考察

内の垂直方向の温度分布の測定によって補正した。炉の    水素雰囲気のもとで以下の項(3.1〜3.3)の因子につ 軸方向の温度分布は20mmの範囲でlK以内であった。   いて調べた。

錫滴の写真撮影は135mm望遠レンズにベローズを装着    3.1.θ,4の経時変化

したモータードライブカメラを用いて,光学的に歪みの    θ,4の経時変化の一例を図一4に示す。鉄試料面はパフ ない透明石英板の窓を通して後方より散乱光をあてて行   研磨仕上げ,錫滴の質量は0.35〜0.459である。図のよ なった。撮影倍率は錫滴と同じ位置で撮影した鋼球(JIS   うにθと4は,時間の経過に対してほぼ滑らかな変化を 規格上級)の像から求めた。       示す。θ,4は錫滴滴下後数分から十分間以内に大部分の  錫試料は粒状の錫(99.999%)を鉄ヤスリで表面を削   変化を終え,その後の変化は非常に緩やかになる。θは時

り,四塩化炭素で脱脂した。鉄試料は電解鉄(99.9%以   間の経過とともに減少し,4は反対に増加するが,それぞ 上)を精製アルゴン,水素混合気流中で高周波溶解し,   れの減少,増加の速さの経時変化の様子は互いに類似し 酸素含有量を調整したものを約15mm角,厚さ約3mm   ている。経過時間τが零秒の値は,錫滴滴下直後約0.5秒 の板状に切り出し,一部はエメリペーパーによる研摩ま   以内の値とみなせ,θ゜,4°で示す。θ゜,4°は滴下後の錫 で,大部分は最終的にパフ研摩まで行なったのち四塩化   滴が鉄試料面に静力学的にほぼ安定な滴を形成するまで 炭素で脱脂洗浄したものを直ちに実験に供した。      の短時間内のぬれあるいは拡がりの尺度とみなすことが  錫,鉄両試料を炉内に入れ,鉄試料面を水平に調節し   できる。これに対して滴形成後のθ,4の変化は,その後 たのち炉内を水素あるいはアルゴンガスで置換して昇温   に続く比較的ゆるやかな二次拡がり3)の範囲とみなすご

(3)

 3.0

〒2 °

、1.0

L∠ T13K」40

Q0

゜一゜^° 1 ●1 ●一●V13K」

θ I   l 713K1

4−4°

Tr=913 K f.=0分

613K

0

  / 11●==〇− 10      20

●     ●

1 .輿1     30      40

@丁ア=913K, ・=0分 S0

Q0

〜● ◆  °  ヤ

@         1

●     ●     l

@    l

∂一

一d°

    ●φ一一一一●

^ ・  ●一●一●一●

O      lO       20       30       40

40こ

       4.0       毛       二2・o       〔       、

.=。一=コ      O  lO  2・  30  4°

  時 間 (分)

図一4

ヤ竺鑑霊4の 図一5㌔羅羅轍.

とができる。

も,図一4に示すように,拡がりの後期ではη=1とみな

蒜蕊魏魏㌫あ蒜㌶塩蒜翻三鴛     二汁1.η

れるようなη=21) 6) 7)・9)あるいは48) 1°)でも近似的に

成立つとみなせ,測定誤差を考慮すれば,どの値が妥当

であるかの判定はむつかしい。したがって,4とrの関係       (b)粗面・傷に平行方向 の定量的把握とそれに基づく拡がり機構の解明は,本測

定法では測定精度の点から無理があり,しかも理論的な      ,}

解析に必要な本系の物理化学的な性質も,現段階では不       亡←

+分な状態にあるので・これ以上の詳し・・酬は行なわ  ξ葺一

      む     ぎ ミ なかった。      実   (c)平滑面(パフ研磨)

接触角θは,ぬれの直接の目安になるものであり・ろ  NL

う接後の耐久性とも密接な関係にあるなど実用的にも重        ゜ 1×10−lcm 要な値である。その上,図一4より,鉄試料面上の滴形成

までの速い拡がりあるいはぬれの程度はθ゜によって・   図一6塁麟料の

また実用的に終局的なぬれに近いとみなせる値は40分

後のθ∫によって特徴づけられることがわかる。そこで   法)で測定した結果を示す。滴の質量は0・419である。

3.3以後については,簡単にθ・とθ∫のみを示して結果   θの減少速度・拡がり速度は・鉄表面上の傷(微小な溝と を整理した。       みなせる)に直角方向の方が平行な方向より小さい。θ゜

 3.2.表面の粗さ       は直角方向の方が平行方向より小さいが,この程度の差  エメリ_ぺ_パ_で鉄試料面に一方向の傷をつけた場   は後述するθ゜のばらつきの範囲内にある。このような

合のθ,4の経時変化を図一5に示す。図一6には,その場合   傷があると拡がりは・いずれの方向においても滑らかな の表醐さを小坂SE−3C型万能表面形状測定機(触針 (パフ研摩仕上げ)表面より悪くなり(図一8参照)・この

 ♪一  f一一p

い二

i _     ]

ピ←一.

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 ロー一「三に 一,_   二  .f一

?D:_ 一1

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  《F 一一]一 {一.

←十一ぷ一」一

_rfi   一

_≒一 三Eゴ

_」

(4)

54

傾向は拡がり初期において顕著である。また・直角方向      鉄試料の

では・拡がり初蜘・θ,4の繍変イヒ鵬らかでなく停滞  、。  _蔑盟冒⊆留;K

する部分があらわれた。凝固後の錫滴は傷に沿う方向に      ◎209τ。=0分

 3.3 錫滴の質量       o  錫滴は図一2に示すように鉄試料面より4mm高い黒

鉛板から落下するので,θ゜は錫滴の質量に依存する可能     40 −9

性がある。図一7より,θ゜,θ∫は錫滴の質量に殆んど依存    こ       1 しないが,θ゜は0.29以下でわずかに上昇する傾向が認    、

㌶;:論㌶蕊嘉:㍊、鷲 1・・6・㌦(K)… 8・・

〜0.459の間の質量にした。

 100      図一8 種々の酸素含有量の鉄試料       に対する測定温度Tmとθ゜,

      θノとの関係(水素雰囲気)。

  75

喝50

25

Oθ゜,τゲニ913K 怎ニ, ・=o分

・−8へ゜\●/●/°

0     0.1    0.2    0.3    0.4    0.5

       錫滴の質量(g)

80

も40●

G    へ

欲゜

      む

    図一7錫滴の質量とθとの関係    8°(、)  ・θ・,・。−763K

        (613K,水素雰囲気)。      ●θゾ, .ニo分         ノ:滴下後40分の値。       _

      ξ・・⊆』

3・4・臨雰囲気との関係    G  >

 接触角θと温度石との関係およびそれに対する鉄試料

の酸素含有量,τ。,》,の影響を水素雰囲気中で調べた。図一     宅00     600     700     8 8,9にその結果を示す。θ゜は65°以下,θプは55°以下の比較的      Tm(K)

良好なぬれ性を示し,温度,酸素含有量,7↓, ,はぬれに大

きな影響を与える因子でないことがわかる.ただ,563K付  図一9τmとθゾとの関係(水辣囲気)・

00

近でθ゜,θゾは最大値を示し,663K付近で最小値を示す傾   ぬれ性を示し,θ゜一〆も小さく二次拡がりが小さくなっ 向にある。また,酸素含有量が209ppmの鉄試料が最も   ている。

よくぬれる傾向を示す。さらにちを30分とした場合(図    次に,θと丁仇の関係に対する鉄試料面の状態の影響 一9・(a))・およびT・を763Kに下げた場合(図一9,(b))に   を調べるために,アルゴン雰囲気および,アルゴン雰囲 は・図一8に示される563Kから613Kにかけてのθ一7 幼曲   気ではあるが,微量酸素を混入させて表面が酸化により 線のふくらみが殆んど認められないことが注目される。   灰色または黒褐色に変色した鉄試料(以後単に酸化試料 また・513Kを除く全温度で,図一8の場合より比較的良い   と呼ぶ)を用いての測定を行なった。その結果を図一10に

(5)

示す。また以上の各種条件下でのθとT.との関係の概   なるものがあり,ぬれ牲は悪いが,613K以上では著しく 略図をまとめて図一11に示す。酸化試料ではθ゜,θゾは115  良くなり,θ゜一θ∫も殆んど20°以上の値を示し,二次拡が

゜以上で,二次拡がりも殆んどなく,ぬれ性は非常に悪   りもかなり進行していることがわかる。563K以下のぬ い。アルゴン雰囲気でも,全測定温度で水素雰囲気より   れ性は悪く,θ゜一θゾは513Kで0〜2°,513Kで一4〜16°と ぬれ性が悪いが,613K以上では,θ゜はすべて90°以下に   小さく二次拡がりがわずかであり,しかも7 ,が低くな なり,酸化試料よりは良い。θノも563Kまでは90°以上に   るほどぬれ性が悪くなる傾向を示す。

150

(a)        150

.  ♂イ\Φ  …

 100      し       ●       qき

も . ° .〜 1      5°

50       。    τア(K) ア(分)

       Φ*913   0       ヨ    

       ・9・3 ・    宅。。  6。。  7・・  8・・

       ●963   30       Tη(K)

0

500       600       700       800

         Tm(K)

150

100

・       、 100

(a)

A

B

N

C       D

50

,。°

m  .   ☆ 梛_㎜ 棚

      (b)

̀

B

    C

D

       ●  °       図一11種々の拡がり条件下での       θ゜−Tγπ (a), θf−T?π(b)

      関係の比較。

500    600    700    800      A:灰色又は黒褐色に変色         翫(K)      した酸化試料(アル       ゴン雰囲気)

      B:アルゴン雰囲気 図一10 Tmとθ゜(a),θr(b)との      C:水素雰囲気

    関係(アルゴン雰囲気)。      (τrニ913K,τ.=0分)

     *:酸化により鉄試料面が       D:水素雰囲気(Tグ=763K,

    灰色又は黒褐色に変色した      ∫。=0分又はτγ=913K,

    試料。       。=30分)

(6)

56

 3.5.鉄試料面の酸化      囲気では,酸化物は測定操作中に増加する傾向にあり,

 3・4・と同一の装置・温度履歴で得られた鉄試料面の状   さらに変色を伴なった酸化試料の表面は少くとも 態をESCA(DUPONT−650B)で分析した。MgKα線を   ESCAの分析深さ10−3μm程度以上の厚さになってい 励起X線源とし・結合エネルギーはAu4f7/2軌道電子の   るものと考えることができる。

結合エネルギー(932eV)を基準として調整した。それ    水素雰囲気でも鉄酸化物のピークは明瞭に認められ それの条件下におけるFe2P3/・スペクトルを図一12に示   る。炉内から試料をとり出すときには,直接空気に触れ す。Feのピーク(706・5eV)は・水素雰囲気,アルゴン   ないように,炉内と同じ水素あるいはアルゴンガスを満 雰囲気の順に小さくなり・酸化試料を用いたアルゴン雰   たしたビニール袋中でトリクレン中に浸漬し,ESCAの 囲気では痕跡程度になる。パフ研摩直後の測定前の試料   分析に供した。しかしESCA装置内へのセット時などで は,水素とアルゴン雰囲気の中間にある。鉄酸化物*の   酸素分圧の高い雰囲気への接触はさけられず,その際に ピーク(710.5eV付近)はFeのピークとはおおよそ逆   表面が酸化された可能性もある。しかし, Turkdogan の順に変化している。またそれぞれの鉄試料の01sスペ   ら1)の結果でも,水素雰囲気での錫の拡がりが,軟鋼試料 クトルでは,鉄酸化物に対応するピーク(530.OeV)が   の前もっての1023Kでの保時時間が100分を越えてもな 観察された。       お,保時時間の増加とともに拡がりがよくなる傾向にあ       ることを考えると,本実験の水素雰囲気でも表面の酸化       物を完全に除去するのが容易でないことが推定できる。

      それゆえ,観察された水素零囲気での鉄酸化物は,測定       中に水素ガスに接してもなお環元されずに残ったもので       ある可能性も十分に考えられる。図一8でθ゜,θプのばらっ       きが大きいのは,鉄試料面の研摩,温度履歴等の条件の       わずかの変化によって,測定毎に残存酸化物量が一定し  趣       ないことによると考えることもできる。

 網       3.6.錫滴の拡がりと鉄酸化膜

       3.5より,量の多少はともかく鉄酸化膜が存在する鉄       試料面を錫滴は拡がるものと考えられる。しかも,3.4と       3.5との対応より,接触角と温度との関係が鉄酸化物の       量と温度履歴によって明瞭な変化を示すことから,鉄酸       化膜は拡がりに対して重要な役割を果しているものと考       えられる。この場合の拡がりには,(1)錫とぬれ性の悪い       715     710     705     鉄酸化膜の除去,(2)酸化膜の上を乗り越えて拡がる,の          結合エネルギー(eV)        二つの過程が主なものになるであろう。

       (1)では, (i)水素ガスまたは錫による鉄酸化膜の還    図一12鉄試料面のFe 2p%スペクトル      元。

       こ蕊㍑携㌶    (ii)錫の浸透・F・S・・層の生成によ繊

      化膜の剥離。

 以上の結果より,鉄試料の作製時にすでに生成した鉄    (2)では,(i)鉄酸化膜一錫界面での錫とのぬれ性の良 酸化物が表面にあり,水素雰囲気では測定操作中にこの       いFeSn,の生成。

酸化物は還元されて減少することがわかる。アルゴン雰        (ii)島状の鉄酸化膜の周りへの錫の拡がり       による島の沈没。

驚㌶ご二曝腰濃瓢 1聯三 以上の過程を図一11と対応させて考察する・

 のFe3・とFe・+の量的評価はむずかしいので単に鉄酸化物     図一11のA→C,D, B→C,Dへの移行は,水素による  と記すことにする。      鉄酸化膜の還元によるものとみなせる。

水素雰囲気

Aルゴン雰囲気

̲化試料*

1パフ研摩直後

P1㎏

(7)

 C→Dは,563〜663Kでのθ一丁沈曲線のふくらみの減   きないのか,あるいはFe203等とFeSn・の反応性等に 少消滅に対応する。実験条件の比較より,Cすなわちτ。  よりFeSn2が鉄酸化膜面を十分に覆えない状態にあり,

が913K, r,が零分では,ウスタイトの安定な温度範囲   そのためにぬれ性が悪くなっているものと推定できる。

(883K以上)を経過した未環元の鉄酸化膜が表面に残   一方Bでは,鉄酸化膜が均一な薄膜状か,島状かによっ 存し,その酸化膜がふくらみに関係しているものと推定   て拡がり機構は異なってくる。もし,Aと同様の均一薄 される。      膜でAより薄くしかもFe・03が少ない状態にあると考  A→Bは,鉄酸化膜の減少に対応する。Bでの613K以   えるならば,613K以上での高温部のぬれの促進は・温度 上の高温側のぬれの促進は,錫滴と鉄酸化膜の相互作用   の上昇によって,反応(1)等が速くなり・FeSn・の生成・

によると考えることができ,水素の環元反応を除く(1),   錫による鉄酸化膜の地鉄面までの還元等が可能となるこ

(2)のすべての過程を考えなければならない。        とによると考えることができる。

 錫による鉄酸化膜の還元とFeSn、層の生成:錫と共    鉄酸化膜の剥離その他:B, C, Dで・鉄酸化膜が島状 存する錫の酸化物は1373K以下ではSnO、であることが   か,均一な薄膜の形で鉄試料面を覆っているのかは,

示されていると2)鉄酸化膜と錫が接触した場合の反応は,   ESCA分析だけではわからない。島状酸化膜が小さく・

たとえばFe30、の場合,      量も少ない場合には,錫による島状酸化物の沈没によっ  Fe30、(s)+2Sn(1)=2SnO、(s)+3Fe(in l Sn)…(1)  て拡がりが容易に進行しうる可能性がある。しかしそれ 平衡定数κ=α菩,/αξ,≒謡eとなる。α、は成分i  以外の島状酸化物が拡がりを著しく妨害するような場合 の活量である6本測定温度付近での活量αF,の実測値は   には,鉄酸化膜一鉄界面への錫の浸透とそれに伴なう酸 見当らない。そこで1820Kでの無限希薄状態における   化膜の剥離i過程が重要になる・水素雰囲気の結果より鉄 Feの活量係数γβ,=6.65013}を用いて,正則溶液を仮定   と錫とのぬれ性は良い。また錫滴の拡がり先端の断面の

し,伽eの標準状態を純液体から純固体に変換して測定温度   観察より,錫は生成合金層FeSn・をよくぬらすので・鉄 におけるαF,を見積った。この値と各種酸化物の標準生

成自由エネルギー、4G8x14}より,反応(1)等における鉄の

平衡濃度ぱ,を求めた。∠G8xの誤差およびγ9,(1820      60 K)=8.3713)のあることを考慮しても,513〜713Kで

は,Fe,0,, Fe,O、, FeOと液体錫との反応におけるκ ,

は,鉄の溶解度(FeSn,と平衡)κ葺:l l5)と,κ ,≧κ書:1      50 の関係にあることがわかった。したがって,伽・の計算    _        ヨ での正則近似という大きな仮定はあるものの,以上の結    こ}

果より,F,S。、と平衡する鉄灘を越えても,反応(1)は 欝;

右側に進むことができ,それに伴なってFeSn、が生成す    轟

麟鷲驚ご㌶㌫㌫㌫:園・

       のでの核生成,FeSn2と鉄酸化膜が接触した場合のFeSn・    』 の熱力学的安定性等の問題を考慮しなければならない。

      0上記反応(1)の考察のところで用いたのと同じ熱力学的諸 数値を基にした見積りによると,FeO, Fe304では明確

伽=40_

励:保持時間(分)

/1

 ///

つニ ー三

   /  /

言m=80/

 /1/

 =60  /   一

/!

_L_一

//寸/ん

 / =20

ケ『一一

  ,=〇 一

なことはいえないが・F・…}まF・S・・と反応してS…  §11。

とFeになる傾向が大きい。実験結果でも, Fe203の存

、\

 \\\

 \人一2・

   \

=40

在の可能性の大きいAでは,FeSn、合金層は光学顕微鏡       650    700    750    800        保持温度(K)

では観察されなかった。以上の考察より,Aでは,反応

速度が遅くてFeSn、が生じる鉄濃度まで反応(1)が進ま        図一13 錫滴一鉄界面でのFe−Sn        _      合金層の成長方向

ないのか,錫が鉄酸化膜を地鉄面に到達するまで還兀で

(8)

58

酸化膜一鉄界面への錫の部分的な浸透は可能である。一    謝 辞

方合金層は図一13に示すように733K以下では錫側に優    終りに,表面形状測定機を使わせて頂きました本学,

先的に成長する傾向が明瞭である。合金層の組成は   中島克洋助教授に深く感謝致します。また,本実験に終 XMA分析から733 K以下ではFeSn・を示し,平衡状態   始協力された小手川文裕,高橋茂,松本和真の諸君に深 図の組成16)と一致した。813KではFe2Sn3に近い組成で   く感謝致します。

平衡状態図の組成と一致せず,鉄試料側への成長も認め

られた。FeSn・合金層のこのような錫側への優先的な成      参考 文 献

長は,鉄酸化膜一鉄界面での浸透錫によるFeSn2層の生   1)E・T・Turkdogan and Miss Susan Zador:JISI,197 成・成長}・伴なって・鉄酸化膜を アること}・なり・21《1綴i、nd H. kim。,a、S,。 M,、、ll.1。(1976Σ701 鉄酸化膜の剥離を促進させる可能性を不すものと考える   3)G.LJ. Bailey and H.C. Watkins:J. Inst. Metals,

ことができる。       80(1951〜52),57

       4)Yu. V. Goryunov, N.V, Pertsov, B.D. Summ and E.D.

 4.結言       Shchukin:Dokl. Akad. Nauk SSSR,146(1962),638        5)M.Nicholas and D, M, Poole:Trans, Met, Soc,

 多結晶鉄表面に錫滴を滴下し,水素雰囲気(以下の(1)   AIME,236(1966),1536

−(4))・アルゴン雰囲気((5))・513−713Kの間℃滴の 61」㌶P and PL G「uzin:FiちKhim°v「abMate蛤,

接触角と直径の経時変化を40分間にわたって測定し,以   7)Yu. V, Naidich, V.M, Perevertailo and G. M. Nevo.

下の結果を得た。       dnik:Poroshkovaya Metallurgiya,115(1g72),51

(1)接触角は時間の経過とともに減少し・直径はその反 8L:1蒜漂va andSI・P°pe1 :Izv BUZ°v・Che「

対に増加した。両者の値の経時変化はほぼ滑らかであり,   g)V.N, Eremenko, N. D. Lesnik, T.S. pest皿and V.R.

滴下後10分以内で急激な変化を終え,後は緩やかに変化    Ryabov:Poroshkovaya Metallurgiya,127(1973),58 した。      10)恩沢忠男・秋岡真人・田村博:溶接学会全国大会講演概        要,18(1976),344

 (2)鉄表面に微小な傷があると・滴は傷に直角な方向よ   11)浅見勝彦,橋本功二,下平三郎:日本金属学会誌,40 りも傷に平行な方向により速く拡がった。両方向とも傷     (1976)・438

がない(パフ研摩)場合に比べて,初期のぬれ性は悪く   12)Ca「bo Nove「and F D Richa「dson:T「ans Inst      _      Mining MetalL,81(1972), C63

なる傾向を不した。      13)R.Hultgren, p.D. Desai, D. T. Hawkins, M. Gleiser,

 (3)接触角は,錫滴の質量,温度,鉄試料の酸素含有量,    and K・K. Kelley:Selected Values of the Thermody・

鉄試料の温度履歴によって,大きな変化を示さず,本測    namic P「oPe「ties of Bina「y Alloys Ame「ican Society 定範囲内で比較的良好な雌を示した.  14;°;=㍑㍑Gl,i,e,, Th,,m。、h,mi,、,y f。,

 (4)短時間内のぬれの目安としての錫滴滴下直後の接触    Steelmakin9, Vol.1,Addison−Wesley,(1960)

角θ゜,および終局状態のぬれに近い値である40分後の値   15)RP Elliott:Constitution of Bina「y Alloys Fi「st

θ・の温度に対する変化の様子は,両者ともほぼ同様であ16iu霊㍑6¥;::蕊=㍑All。y。2。dEdi.

り,663K付近で最もよくぬれる傾向を示した。       tion, McGraw−Hill,(1958),718  (5)アルゴン雰囲気では水素雰囲気に比べて全般にぬれ

性は悪いが,613K以上ではすべて90°以下となり,二次 拡がりもあり,比較的良いぬれ性を示した。高温側での このようなぬれの促進は,錫による鉄酸化膜の還元とと もに,鉄酸化膜一鉄界面で生成,成長するFeSn、層によ る鉄酸化膜の持上げ,剥離作用がその可能性として考え られる。鉄試料面に変色を伴なう程度の厚い鉄酸化膜が 生成した場合には,上記のような高温側でのぬれの促進 は観察されなかった。

参照

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