博 士論文
レンコンネモグリセンチュウの
発 生生態 と防除 に関す る研 究
Studies on the
population
occulrence andcontrol of Hirschmanniella diversa
平成 29年 3月 石川 県立大学大学院 生物資源環境学研 究科 自然人間共生科学科専攻
植松 繁
目次
序論・・ ・・・ ・・ ・ ・・・ ・・ ・・ ・ 1 1)本研 究の背景・・・ ・・・ ・・・・・・ ・・・・・ ・ ・・・ ・ 1 2)本研 究の 目的・・・ ・・ ・・・・・・ ・・・・・ ・ ・ ・・・ 3
レンコンネモグ リセ ンチュウの生活環の解明に関す る研究・ ・ ・・・ ・ 4 1 レンコンネモ グ リセ ンチュウの発生消長の解明 。・・・ ・ ・・・・ ・ 4 1)緒言・ ・ ・・・・ ・・・・・・・・・・・ ・・・・ ・・ ・・・・・ 4 2)材料お よび方法・・ ・・・ ・・・・ ・・・・・・ ・・ 5 3)結果お よび考察・・ ・ ・・・ ・・・・ ・ ・・・・・ ・・ ・ 6 2 レン コンネモ グ リセンチュウの雑 草への寄生状況の調査・・・・ ・・・・12 1)緒言・・ ・ ・・・・・ ・・・ ・・ ・・・・ ・ ・・・12 2)材料お よび方法・・・・ ・ ・ ・・・ ・・・・ ・・・・・・12
3)結果お よび考察・・・・ ・ ・ ・・ ・・・・・ ・13
レン コンネモ グ リセ ンチュウの レンコンヘの感染機構の解明に関す る研究 ・・・18 1 レンコンネモ グ リセ ンチ ュウ感染細根 の細胞学的解析 ・・・・・ ・・・ ・18
1)緒言・・ ・・・・・・・ ・・ ・・・・ ・ ・ ・・・ ・・・・18 2)材料お よび方法・・・・ ・・・・・・・・・・・ ・・ ・・・・ ・・19 3)結果お よび考察・・・・ ・・・・・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・ ・・20 2 レンコン塊茎 にお ける黒皮症発生部位 の細胞学的解析・・ ・ ・・ ・・・25 1)緒言 ・・・ ・・・・・・・ ・・・・ ・・・・・・・ ・・・ ・・ ・・・25 2)材料お よび方法 。・ ・・・ ・・・・ ・・ ・・ ・ ・・・ ・・・ ・・・25 3)結果 お よび考察 ・・ ・・・ ・・・・ ・・・・・・ ・27 3 レンコンネモ グ リセンチュウの レンコン月巴大塊茎への侵入過程の解析・ 35
1)緒言・ ・・・・・ ・・・・・・・・ ・・・・ ・・ ・・・・35 2)材料お よび方法・・ ・・・・ ・・・・・・ ・・・・・ ・・ ・・・ 35 3)結果お よび考察・・ ・・・・・・・・・・ ・・・・・ ・・ ・・・・ ・37 4 レンコンネモ グ リセンチュウの レンコン若芽への侵入過程 の解析 ・・・ ・42 1)緒言・ ・・ ・・・・ ・ ・・・・・ ・ ・・・ 42 2)材料お よび方法・・ ・ ・・・・・・・ ・・・・・ ・・・・・・42
3)結果お よび考察・・ ・・・・・・・ ・・・・ ・・・・・・44
Ⅳ 石灰窒素 を用いた レンコンネモ グ リセ ンチュウ密度低減技術の開発・ ・・ ・55
1)緒言・・ ・・ ・ ・ ・ ・ ・・ ・・・55 2)材料お よび方法 ・・ ・・ ・・・・ ・・・・ ・56 3)結果お よび考察 。・・・ ・ ・・・ ・・ ・ ・・ ・ ・58
V 総合 考察 ・・・ ・・ ・・・ ・・・67
Ⅲ
Ⅵ
Ⅷ
Ⅷ
謝辞 ・ ・ ・・・・ ・・・・・・ ・・・・・・・・・ ・・・・ ・・・ ・ 77
引用文献・・ ・・・ ・・ ・・ ・・・ ・・ ・・・・・・・ 78
摘要・・・・・ ・・・・ ・・・・・・・・・・ ・・・・・ ・・・ ・ ・・・・・・85
I序 論 1)本研究の背景
ハス ル 麟 わοηcψraは,日本国内に古来より在来する植物であり,「 日本書紀Jや 「古 事記」,「万葉集」な どにも記載が見 られ る (渡辺 1994)また,ハスは観賞価値が高い花 ハスと月巴大塊茎を食用 とする食用ハスとに大別 され (南川・田中 1958),食用ハスは レン コンとして 日本国内で広 く栽培が行われている レンコンの平成27年産における国内での 栽培面積は 3,950ha,収 穫量は56,70∝,出荷量は47,400tに のば り(農林水産省大臣官房統 計部 2016),国内の根菜類を代表す る重要品 日の一つになつている また,石川県内にお
いては,藩政時代には薬用植物 として レンコンが栽培 されていたとされ,明治20年代か ら は食用 としての栽培が本格化 した (金沢市農産物ブラン ド協会 onlhe)現在では,「力o賀
レンコン」の名称でプラン ド化 され,高付加価値化が図 られてお り,「加賀野菜」を代表す る最重要品 目になつている。県内での主な栽培地区は,金沢市才田地区,森本地区お よび 河北潟千拓地内であ り,栽培 され る品種は主 として 「支那 自花J種である
石川県を含めた 日本国内の レンコン栽培においては,以前か ら各種の土壌病害虫の発生 が問題 となってお り,時折深刻な被害を及ぼ してきた F4arl
"属菌や ゥ 励 属菌など
によつて引き起 こされる レンコン腐敗病は,葉の枯死や塊茎部の褐変が生 じ,収量・ 品質 低下につながる古くか らの重要病害である(南川 ら 1959)ま た,近年,三平・永井(1996) は, レンコンの肥大塊茎の表皮に起 こる多数の黒褐色斑点症状が,植物寄生性線虫の力Π害 によつて生 じることを初めて報告 した。この線虫害は,「レンコン黒皮線 虫病J(三平 2002) や 「レンコン黒皮症」 と称 され (以下,「黒皮症Jとする), レンコンの商品価値を著 しく 低下 させ る要因 となつている 黒皮症の発生は,生産物の落等や等外品の頻出によつて,
生産者の所得を低下させ るため大きな問題 となっている。三平 (2002)は,黒皮症を引き 起 こす原因 となる線虫がイマムラネモグ リセンチュウI1/s赫 ガ′rraレタα″ ″であるこ とを接種試験によつて明 らかにした しか しなが ら,後に徳島県や千葉県の被害根茎から
分離 された線虫種については,国内未確認の ″ ″ッαゞαであると同定 され,その和名が「レ ンコンネモグリセンチュウJと命名 された (水久保 2002)その後,黒皮症の被害は 日本
全国の レンコン産地で報告 され るよ うにな り (水久保 2015),現在ではイマムラネモグリ セ ンチュウとレンコンネモ グリセ ンチュウの2種の Httch″αη″たrra属線虫が黒皮症 を引き 起 こす加害種 と考えられている (Koyalnaeta1 2013)
″パ ″ ″
̀77a属線虫は,多くが水田や湿地などの水生環境に適応 してお り,様々な水
生植物の根部に寄生する (Siddip1 2∞0)これまでに,全世界の ぉ ″α″″セ腸 属線虫は 35種に整理 されてお り (SIddlpi 2000,‐ Ley d J 21X17),日 本国内ではイネネモグリセン チュウHc″ ,イマムラネモグ リセ ンチュウ,レンコンネモグリセンチュウの3種が報 告 されている (水久保 2002)こ の内,イネ0″ κ″ッαに寄生 し,根腐れや病害の発生 を助長するなどの被害を及ぼすイネネモ グリセンチュウおよびイマムラネモ グ リセンチュ ウについては,その生活環や発生消長,寄生様式な どの発生生態に関す る研究結果が数多 く報告 されてお り,これ らに基づいた防除技術が開発,提示 されてきた 一方, レンコン ネモグ リセンチュウについては,Shcr(1968)が本種の記載 を行つて以降, レンコンヘの 加害が報告 され るまでに農業害虫 として認識 されてお らず,発生生態や防除に関する知見 は非常に乏 しい このことか ら, レンコンの生産現場では レンコンネモ グ リセンチュウヘ の対応に苦慮 してお り,発生生態の解明および防除法の開発が強 く求め られてきた。
これ らに応えるため, 日本国内では レンコンネモグリセ ンチュウの防除に関す る研究が 開始 され始めている 近年,Koyama ct J(2013)は ,レンコンネモグ リセンチュウの検 出法 として,種特異的なプライマーを開発 し,リ アルタイムPcRによる士壌 中密度の測定 結果 と黒皮症被害 との関係か ら経済的被害許容水準の推定を試みた また,具体的な防除 法 としては,種レンコンの温湯消毒法 (高木 ら 2012)や太陽熱土壌消毒 (久恒 ら 2014) な どが検討 されている 一方で, レンコンネモグ リセンチュウの発生生態については未解 明な点が非常に多く,被害に対す る根本的な対策を確立するためには, これ らの解明が必
要不可欠であると考えられる また, レンコン栽培では水田を利用するため,施設園芸作
物や他の露地園芸作物に比べ,圃場の面積が非常に広大であることが多い このため,大
陽熱土壌消毒をは じめとして,これ までにレンコンネモグ リセンチュウヘの対策 として検 討 されてきた防除技術では多大な労力 とコス トを要 し,生産者が広 く実施す ることは容易 ではない このことか ら,生産現場の実情に合つた現実的な防除技術の開発が必要である
2)本研究の目的
本研究ではまず, レンコンネモ グ リセンチュウの生活環 を解明す るため,植物体内での 発生消長 を明 らかにす るとともに, レンコン栽培圃場周辺の雑草種への寄生性を調査 した
(Ⅱ ‑1,Ⅱ ‑2)
次 に, レンコンネモ グ リセ ンチ ュウに よる黒皮症の発生 メカニズムお よび植物体への感 染機 構 の解 明 に貢献す る こ とを 目指 して, レンコンの細根 ,1巴大塊茎お よび若芽にお ける 本種 の寄 生様 式 を電子顕微鏡観察 によつて明 らかにす るとともに,黒皮 症 の発 生部位 を詳 細 に解析 した (■‑1,皿 ‑2,Ⅲ ‑3.皿 ‑4)
さらに,生産 現場 で実施 可能かつ現実的な防除技術 を開発す るため,石灰 窒素を利用 し た本 回での レンコンネモ グ リセ ンチ ュウの土壌 中密度低減対策 について検討 を行 つた(Ⅳ)
最 後 に,今回得 られ た知 見に基 づ き, レンコンネモ グ リセ ンチュ ウの発生生態お よび防 除技術 について総合 的 に論 じた (V)
Ⅱ レンコンネモグリセンチュウの生活環の解明に関する研究
1 レンコンネモグリセンチュウの発生消長の解明
1)諸言 Ilr 励 α
"″
″77a属線虫の多 くは,水生植物の根部に侵入 し,摂食,成長,繁殖な どの生
活環 を送つている この内,イ マムラネモグ リセンチュウ,イ ネネモ グリセ ンチ ュウ,I
ψレ あたは,イネを加害することが知 られてお り (Siddlpi 2000),防 除対象になる重要 な種 として,生態的特徴から応用的な防除法の開発まで全世界で様々な研究がな されてき た 特に, 日本国内で発生するイマムラネモグ リセンチュウ,イネネモグリセンチュウの
2種については,1960〜1970年 代にかけて全国で盛んに研究がな されてお り,発生消長な
ど(桑原・弥富 1970)の 生態的特徴が詳細に明 ら力ヽこなっている(り‖島 1992)こ れ らは,
防除対策を検討する際の重要な知見であ り,川島 (1992)は秋耕,水日の乾日化,栽培の 早期化,栽培品種の変更などが耕種的防除法 として有効であると指摘 している
一方,同属に分類 されるレンコンネモグ リセンチュウについては,2002年に初めて国内 での発生が確認 されてお り (水久保 2002),比較的新規の病害虫であると言える 世界的 には,中 国において本種のレンコンヘのカロ害が報告 されているが(Chong and Ⅵang 2002), 生態的側面については未解明な点が非常に多い 一方,植物寄生性線 虫に対す る主要な防 除手段である土壌消毒や化学合成農薬を利用す る際,実施適期を決定するためには発生時 期や繁殖時期,経時的な齢構成な どの情報が必要不可欠である
そこで、本研究では,防除技術を開発す るための基礎的知見を得 るため,2014〜 2015年 にかけて レンコンネモグリセンチュウが発生 しているレンコン栽培圃場か ら経時的に レン コンを採集 し,その根部に寄生す る本種の頭数や齢構成の推移などを詳細に調査 した ま た,雌成 虫の既交尾率・卵保有率について経時的に調査を行い,繁殖時期な どについても 検討を行 つた
2)材料および方法
レンコン根茎の採集および線虫の分離
レンコン根茎の採集は,被害が レンコンネモグ リセ ンチュウによる被害が確認 され る石 川県金沢市の レンコン栽培圃場で行 つた 2014年は 5月 7日 .6月 19日 ,7月 18日 ,8
月 22日 ,9月 29日,10月 31日,12月 10日 の計7回 (29〜43日 間隔),2015年は 4月 22 日,5月 29日 ,7月 2日,8月 13日,9月 11日,10月 8日,■ 月 26日 の計7回 (27〜49 日間隔)根茎の採集 を行つた 採集 には レンコン根茎を収穫する際に利用する水圧ポンプ を用い,各調査 日ごとに圃場の全体か ら任意の5株を採集 した 採集後,根茎の節か ら伸 長す る細根 を株 当り50g以上切 り取 り,株毎に十分に混和 した 細根は流水で十分に洗浄 した後,20〜 30 mmの長 さに切断 した その後,切断 した細根58を調査株 ごとに 25℃,
72hの条件でベルマン法に供試 し,細根に寄生す る線虫を分離 した 分離後,ウォーター バス (ALB 120,IWAKI社製)に 60℃ の温湯を準備 し,バイアルを振 とうしてから温湯に 30秒間浸漬す ることで線虫を熱殺 し,TAF液で固定 した
齢構成および寄生頭数の推移
分離 した線虫の うち,任意の 100頭 を光学顕微鏡 (MICROPHO■ FX,NikOn社製)を用 いて観察 し,調査 日ごとの齢構成を調査することで,その経時的な変化について検討 した 線虫の齢期は,体長や 口針長,性器の発達程度な どの特徴を総合的に勘案 し,大別 した 調査は 2014〜2015年の 2カ 年実施 した また,2015年に関 しては,分離 された レンコン ネモグ リセンチュウの総数について も調査 日ごとに光学顕微鏡下で計数 し,細根に寄生す る本種の頭数を調査 した
レンコンネモグリセンチュウ雌成 虫の既交尾率お よび卵保有率の推移を経時的に調査す
ることで,本種の繁殖時期について検討 した 熱殺,TAF固定を行つた線虫の うち,任意 の30頭の雌成虫を調査 日ごとに光学顕微鏡下で観察 した 既交尾率の調査では,雌成虫の 貯精嚢内における精子の保持の有無によつて,当該個体が既交尾か未交尾個体かを判断 し た また,卵保有率の調査では,雌成虫体内の卵の保持の有無を調査 した いずれの調査
も 2014〜2015年の 2ヵ 年実施 した
3)結果および考察
レンコンネモグリセンチュウの齢構成の推移は2014年お よび2015年で概ね同様の傾向 を示 した (第 1図)すなわち,4月 下旬〜5月 上旬にかけては3期幼虫の占める割合が最 も高 く,次いで4期幼虫,成虫の占める割合が高 くなった 5月 上旬〜6月 中下旬にかけて は,これ らの個体の齢期が進み,4期幼虫や成虫の割合が高ま り,新世代 と考えられ る2 期幼虫も初めて確認 された 成虫の割合は,7月 上中旬に最 も高ま り,同時期に2期幼虫 の割合 も増加 した 8月 中下旬になると,成虫の割合は減少に転 じ,2期幼虫が占める割合 が ピークに達 した 9月 以降は,齢期の進行す ることによって2期幼虫の割合は減少 し,
再度3期・4期幼虫および成虫の割合が高まつていった 細根内の個体数全体は,2015年
において 9月 上旬にピークを迎えてお り,本種は年1世代の発生消長 を持つ線虫種である ことが明 らかになった (第 2図)。 また、これ は新世代である2期幼虫が 8月 中下旬にピー クを迎えることによって,個体数全体が増加 した結果であると考えられ る。
雌成虫の既交尾率および卵保有率についても,2014年と2015年で概ね同様の結果 とな った (第 3図)。 2014年は 5月 上旬には既交尾率が85%を上回つてお り,6月 下旬および7
月下旬には967%と最 も高 くなつた 8月 以降は経時的に低下 したものの,12月下旬でも
333%の雌個体が貯精嚢内に精子を保有 していた また,卵保有率は 5月 下旬にはOo%で
卵を持った個体は全 く見 られなかつたが,6月 中下旬には 167%とな り,7月 中下旬には 633%と ピークを迎えた 8月以降は減少に転 じ,10月 下旬には卵 を保有 した個体が全 く
見られなくなつた 2015年については,4月 下旬の既交尾率が633%,5月 下旬は8000/●と な り,春季の既交尾率は高かつた また.7月 中下旬には 933%と最 も高くなった 2014
年同様,8月 以降は低下 したものの,11月 下旬においても300%の雌個体が貯精嚢内に精 子を保有 していた 卵保有率は5月 下旬頃か ら増加に転 じ,7月 上旬には467%と ピーク
に達 した 8月 以降は低下 し,10月 上旬には卵 を保有 した個体は全 く見 られなくなつた 以上のことか ら, レンコンネモ グリセンチュウの野外条件 における交尾,産卵期間は比 較的長 く,交尾に関 しては 4月 〜7月 頃,産卵に関 しては5〜8月 頃に盛期があると考えら れ る このため,野外での齢構成 には一定のバラつきがあるが,主に3期,4期,成虫体
で越冬を行つてお り,産卵による新世代2期幼虫の出現は6〜9月 頃である その後.2期
幼虫は主 として細根内で成長 し,3期 ,4期幼虫または成虫体 となつて,再度越冬すると考 えられ,石川県の野外条件では年1世代の発生消長 を持つ ことが示唆 された
レンコンネモグリセンチュウと同属に分類 されるイネネモ グ リセ ンチュウやイマムラネ モグ リセンチュウでは,野外条件での発生消長等の生活環が解明 されている すなわち, イネネモグ リセンチュウは老熟幼虫およ●我虫体で越冬を行い,8月 下旬頃までに2期幼 虫が出現する年1世代の発生消長が主 となるが,一部では年2世代の発生消長 となる地域 も存在する (川島 1992)また,イマムラネモグリセンチュウについては,3期,4期幼虫 体で越冬を行い (川島 1992),8月 には2期幼虫の出現が終息する年 1世代の発生消長を 示す (横尾 1948)一方, レンコンネモグリセンチュウについては,齢構成や雌成虫の既 交尾率,卵保有率 といつた個体群動態に関す る詳細な検討はなされてお らず,本研究が初
めて となる 木研究での結果か ら,野外条件におけるレンコンネモグ リセンチュウの発生 消長や個体群動態はイネネモグ リセ ンチュウやイマムラネモグ リセンチュウと類似点が多 いものの,交尾時期や産卵時期,2期幼虫の出現時期等の時期的な若千の違いも確認 され た この点については, レンコンネモグリセンチュウの主要な寄主がハスであり,イネと は栽培様式や生育時期等が大きく異なることや各種の発育有効積算温度が異なることなど
が考えられる 発育有効積算温度については,これまでにイマムラネモ グリセンチュウで は発育零点が77℃であ り,有効積算温度が 145日 度であることが既に報告 されている(後
藤 1970)ま た,イ ネネモ グリセンチュウについて も幼虫期間が 27日 であることが知 られ ている (西澤・百田 1970)一方, レンコンネモグ リセンチュウについては,3in(2003) が恒温および常温条件下において成 虫が2世代発生 した と報告 しているが,この実験の温 度条件については記載がなく,詳細は不明瞭なものである このため, レンコンネモグリ センチュウの発生消長に関す る基礎的な動態解明に向けては,実験室内等で温度条件を一 定 とした上で本種の齢構成の推移を詳細に検討す るな どして有効積算温度を明 ら力ヽこする 必要があると考えられ る
100,̀
麟 75%
の 構 罰 50%
△
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0%
lKXl●/●
75%
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25%
口2期 幼 ■ 03期幼 虫 ●4期 幼 虫 ■成 虫
口2期幼虫 D3期幼 虫 日4期幼 虫 ■成虫
2014■│
20151F
齢 期 の 構 成 割 合
︵%
︶
4月22日 5月29日 7月2日 8月 13H 9月 11日 10月8日 11月26日
第 1図 レン コン細根 内 にお ける レン コンネモ グ リセ ンチ ュ ウの齢構成 の推移 (上 :2014年, 下 :2015年)
5月 7日 6月 19日 '月 18日 8月22日 9月2,日 10月31日 12月 10日
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´
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︑
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一一
・二
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. 一
一
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ヽ
ヽ
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一一 一・ 一¨二
∞ 00
^υ
︐●
線 虫 数
︵頭
′ 細 根 5
﹀g
4/22 5′29 772 8113 ツ11 108 1126
第2図 2015年におけるレンコン細根内でのレンコンネモ グリセンチュウの発生推移 図中のバーは標準誤差を示す
1011
―●― 既 交尾 率 ―●― 卵保 有率
6′19 7′18
― 既 交尾率 ―■― 卵保有率
2014年
10731 12/10
2015年
′ス ヽ
′ ヽ
/
`` ヽ、
′
´′´´´J
ち
m
25
0
既 交 尾 率 お よ び 卵 保 有 率
︵%
︶
既 交 尾 率 お よ び 卵 保 有 率
︵%
︶
25
0ビ
″22 5′29 7′2 9′ll 1018 1126
第3図 レンコン細根 内にお ける レンコンネモ グ リセ ンチュ ウ雌成 虫の既交尾率お よび卵 保 有率の推移 (上 :2014年,下 :2015年)
5′7
2 レンコンネモグ リセンチュウの雑草への寄生状況の調査
1)諸言
有害な植物寄生性線虫の多 くは,被害を及ぼす農作物以外の植物種に対 しても寄生可能 な場合が多 く (例えば,近岡 1979,百田 後藤 1980な ど),防除対策を行 う上で対象種 の寄主植物 を特定す ることは非常に重要である これ らを明 らかにす ることで,対象種の 寄主植物を回場内か ら排除 し,越冬および増殖源 を断つ ことができ,線虫密度の低減 を図 る耕種的な防除の実施が可能 となる また, 日本国内では寄主値物でない植物種や積極的 に土壌中の線虫密度を低減 させ る対抗植物を回場内に混植 あるいは間植するよ うな防除対 策が とられ る場合 もあ り,生産現場において多 くの線虫種でその取組みが行われている(佐 野 1990,水久保 ら2004)
レンコンネモ グリセンチュウについて も,寄主植物を明 らかにす ることは防除対策を確 立す るための第一歩 と位置付けられ る すなわち, レンコン以外の増殖源 となる植物種を 圃場内か ら排除す るとともに,体関時などに寄主植物でない植物種を植えることで耕種的 に密度低減を図ることが可能 となるためである しか しなが ら,本種の寄主植物について
は,高木 ら (2011)が 2種の植物を報告 しているのみであ り,その他の報告事例は見 当た らない
そ こで,本研究では, レンコンネモグリセンチュウの寄主植物の解明を目的 として,石
川県内の本種が発生 しているレンコン回場お よびその周辺に自生す る雑草種で本種の寄生 状況をFyB査した
2)材料および方法 雑草の採集
2014年 10月 7日,24日お よび2015年 7月 2日 ,11月 26日 に,黒皮症の被害が見 られ る石川県金沢市の レンコン栽培回場お よび隣接す る休閑圃場 (落水 して休関を行い,線虫
密度 の低減 を図 つてい る圃場)で自生す る雑 草 を採集 した レン コンネモ グ リセ ンチ ュウ は,植物 体 の根 部か ら分離 され ることが知 られ ているため (水久保 2002),根部 は特 に丁 寧 に掘 り取 つた 採 集 した雑 草種 は,第 1表に示 す6科 11種 で,ミ ズアオイについては4 株,他の雑 草種 は種毎に3株ずつ採 集 した
レンコンネモグリセンチュウの分離
ベルマ ン法 (佐野 2014)によって,雑草の根部か らレンコンネモグリセ ンチュウを分離 した 根部の表面に付着 した土壌か ら線 虫が分離 され るのを防 ぐため,採集 した雑草の根 部を流水で丁寧に洗い流 し,土壌を落 とした その後,地上部から切除 した根部を約 20〜
30 mmの長 さに切断 して,ベルマン法 (25℃,72h)に供試 した 分離 した線虫を光学顕 微鏡下で観察 し, レンコンネモグ リセンチュウのみを計数 した
3)結果および考察
雑草への レンコンネモグリセンチュウの寄生状況の調査結果を第2表に示す 6科 11種 の雑草を調査 したところ,4科 7種の雑草種か ら本種が分離 された (第 2表)寄生が確認 された雑草種は,ミ ズアオイMttοθ力ο″laあ rsab″″(ミ ズアオイ科),ミ ズハ コベcall,1「icル
′α話 ″お (アワゴケ科),アゼガヤ ι´♂χみあα″
"̀"sお, タイヌ ビエ 動
" ″ 9″οtts,
イヌ ビエEc・ル ο″ゎαα 黎
==i Var ん (以上.イネ科),ヒ デ リコF17ら rlsヴお″′″ ,
タマガヤツ リの ″パのヵ囃 お(以上,カヤツ リグサ科)であった 特に、本 田内に自生す るミズアオイは他の雑草種 と比較 して分離頭数が有意に多 く,本種にとって好適な寄主植 物であることが示唆 された また,各雑草種か ら分離 された本種の発育ステージは,2〜4 期幼虫お よび成虫と様々であった このことか ら,本種は雑草の根部内で も生活史を全 う できることが示唆 された 一方で,キク科のアメリカセンダングサ ′滋 ぉ ′ d α,セイ タカアワダチソウ 滋″″ ¨ ぉぉVar scαレα,セイ ヨウィンポポbα 吻 αra″″お
よびキンポ クゲ科のタガラシR c ′浴racrα
=4 Levでは,本種の寄生が全 く認められな かった
今回の調査で, レンコンネモグ リセ ンチュウの寄生が確認 された雑草種の うち, ミズア オイお よびイヌビエについては,高木 ら (2011)│こ よつて既 に寄生す ることが報告 されて いる しか し, ミズハコベ,アゼガャ,タィヌ ビエ, ヒデ リコ.タマガヤツ リに関 しては 未報告で,本報告が初めてである 他方,アゼガヤ.イヌ ビエおよびタマガヤツ リについ ては,近縁種のイネネモグリセンチュウでも寄生が確認 されている(り‖島 1963)し かし,
ヒデ リコとミズハコベにはレンコンネモグリセンチュウが寄生するのに対 し、イネネモグ リセンチュウでは寄生が確認されてお らず,近縁種ながら両種の寄主植物の範囲には相違 があると考えられる さらに, ミズアオイはレンコン栽培における難防除雑草の一つであ り, レンコン栽培圃場の本田に自生する最も重要な雑草種である 今回の調査で, ミズア オイでの寄生頭数が他の雑草種 と比較 して有意に多かったことから, レンコン栽培を行 う 本国内において,雑草としてはミズアオイが本種の重要な増殖源になっている可能性が高 い
一方で,生産現場において, レンコンネモグ リセンチュウが多発 してい る圃場では落水 し,休閑 させることで圃場内を乾燥 させ,線虫密度の低減 を図つている事例が 日本全国で 散見 され る しか しなが ら,このよ うな画場内での雑草の繁茂は,本種の増殖 を促 してい る可能性がある また,黒皮症発生回場において除草された雑草の残液が圃場周辺に放置 され ることで,被害が拡大す る可能性 もあ り,被害回場における雑草の適切な処分は被害 拡大防止のために非常に重要であると考えられ る
本研究では, レンコン栽培園場周辺に 自生する雑草種を対象 として,本種の寄生の有無 を調査す ることで寄主植物の一端を明 らかに した 一方で,本種の寄主範囲をより多 くの 植物種の中か ら特定することは,被害の拡大防止や対抗植物 を利用 した耕種的防除技術の 開発な どに向けて極めて重要である 実際に,イ ネに寄生 し,被 害を及ぼす H●xh″ ″た77a
属 の植 物 寄生性線 虫の 中 には既 に こ うした取 り組みがな され,防除的 な利用に応用 した報 告 も見 られ る (Mohandas et a1 1981,Rinaudo 1988,PrOt et a1 1992)こ のため,今後 は さ
らに多種の植物種について検討 を行 う必要がある と考え られ る
第1表 黒皮症発 生 レン コン圃場 お よび休 閑固場で採集 した雑草種
科 種 採 集 月 曰 採集場所
: A7 t'-.1 t+ ミズア オ イ
1イθЮcたο″αたοrsaんθ■ll
2014自こ10月 7 日 栽培 圃場 内
ア ワ ゴケ科
Callidc眈cac Callitiche palusttis
2014年 !0月 24日 栽培 圃場 内 アゼ ガ ャ
レ
"ε
″ω ルでおお 2014年 10月 7日 栽培 圃場 内 (畦畔際)
I ti+
Grdmineae
, -l av:.
Echiruchloa oryzoides
2014年 10月 24日 休 閑回場 内
イヌ ビエ
Ec力=駆‖∝ α閻 ■″″var cα あ ″
2014年 10月 24日 休 関回場 内
tit a
Finb.istylis niliacea
2014年 10月 24曰 休 閑 圃場 内 カヤツリグサ科
Cコ¨薇Кcac タマガヤツリ
C″り■5′′ら′7"お 2014年 10月 24日 休 閑 圃場 内 アメリカセンダングサ
B=とヽ 力 赫 α
2014年 10月 7日 栽培 圃場 内 (畦畔際)
キ ク科 Composltac
-Y.( r 179 yAy,
Solidago cakade$is var. scabru
2014年 10月 24曰 休 開 同場 内
z.l 3 r r r,ftr
Taraxac n oficirule 2015年7月 2日 休関 圃場 内
キ ンポ ウゲ科 Ranunculaceac
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Ranmculus scelerutus Lev .
2015年 H月 26日 休 関 圃場 内
第2表 ベルマ ン法で各雑草種か ら分離 された レンコンネモ グ リセ ンチュウの頭数
科 種 分 離頭 数
(頭上SE′根503)
ミズ ア オ イ 科 ミズ ア オ イ
633■117 a Pontedenaceac M,ヵ み0"α あ ぉαあ ッ″
7 V trt+
Callitrichac€ae
ミズハ コベ Ca″′″に
"″′郎″お
33±19 b アゼ ガヤ
37■23 b
ιttχχ″θ
̀c力"沼ls
イネ科 Granuncac
,-1 acJ.
Echi,nchloa otwides 5は23 b
イ ヌ ビエ
73■44 b
̀θ
ル: c″οα α雪
=α″ival cα ″●
ヒデ リコ
57■09 b
カヤ ツ リグサ 科 F赫 ヽりi87=:: 8α
ClTeraceae タマ ガヤ ツ リ
物 富 どわ ″
"お
123±32 b アメリカセンダングサ
00■00 b B議ヽF品Sa
キ ク科 セ イ タ カ ア フ ダ チ ン ウ
00■00 b Composltac SaFldaga c赫 ′容おVar stabra
セイヨウタンポポ
0¨ O b τ″α αc吻′ ″″ ι
キ ン ポ ウグ 科 タ ガ ラ シ
00■00 b RanuIIculacFaC Rα
"
ヵ
"″ぉsc′erαむ Lcv
3株または4株調査 の平均値
表 中 の 異 な る小 文 字 を付 した 平 均 値 に は 5%水準 で 有 意 な 差 異 が あ る こ とを示 す (Tukey Cmer法 )
Ⅲ レンコンネモグリセンチュウの レンコンヘの感染機構の解明に関する研究
1 レンコンネモグ リセ ンチュウ感染細根の細胞学的解析
1)諸言
農作物 に対 して侵入お よび加害 を行 う有害植物寄生性線 虫の多 くは,植物の根に寄生 し,
生活史を全 うする ネ コプセンチュウ類やシス トセンチュウ類などに代表 される定住型の 内部寄生性線虫は,幼虫が植物根内に侵入後,根内の一定の部位に留ま り,摂食,成長,
繁殖,産卵を行 う 一方,ネグサ レセンチュウ類などに代表 され る移住型の内部寄生性線 虫は,植物根内に侵入後,根内を移動 しなが ら摂食,成長 し,繁殖,産卵を行 う ネモグ
リセ ンチュウ類については,①ネグサ レセンチュウ類 と同 じ ′認ヮienc力ldà科 に分類 され ること,②これまでのイネネモ グ リセンチュウなどの研究事例な どか ら後者の移住型性内 部寄生線虫であると考えられ, レンコンネモグリセンチュウについても同様であると推察
され る
レンコンネモグリセ ンチュウは, レンコン塊茎の節から伸長する細根に寄生す ることが 経験則的に知 られてお り,本種に関する既報においては,いずれ もベルマン法を用いた細 根か らの分離が試み られている (Sher 1968,水 久保 2002,Koyalna et J 2013)し か しな が ら,本種の細根内での寄生様態 を報告 した事例はこれまでに見当たらない すなわち,
本種が細根内で どのような移住型 の寄生行動を行つているのか,細根内における寄生部位 はどこなのか,などの寄生様式については全 く未解明である これ らの知見は黒皮症の発 生メカニズムを解明す る上で非常に重要である また,細根内での寄生部位 を特定するこ とは防除手法を決定す る上で極めて重要であ り,特に化学的防除では浸透移行性のある化 学物質が必要かを図るための重要な知見 となる
そこで、本研究では レンコンネモ グ リセンチュウによる黒皮症被害が発生 している圃場 か らレンコンの細根を採集 し,本種が侵入 した細根における寄生様態 と寄生による細根組 織の変化を光学顕微鏡および走査電子顕微鏡 を用いて詳細に観察す ることで、本種の植物