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現代 の少 年 法制 の在 り方

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現代 の少 年 法制 の在 り方

一 少 年 法改 正 論 議 を契機 と して一

寺 島 建 一・

1.は じめに

(1)最 近,青 少年 をめ ぐる諸 問題 の 中で,中 学生 に よる殺 人等 の凶悪犯 罪 が多発 し,そ れ ら事件 の犯行 動機 の異 常 さ とマス コ ミに よるセ ンセ ーシ ョナ ル な報 道 と相 侯 って,少 年犯 罪 が大 き くク ローズ ア ップ され てい る。昨年 か ら今 年 にか けて,い

わゆ る神 戸 須 磨 区 にお け る 「 酒鬼 薔薇 聖 斗事 件」,栃 木県黒 磯 にお け るナ イ フに よ る 「 黒磯 北 中女 性教 師刺殺 事件 」,さ らに は東 京江 戸川 区 の短 銃 欲 しさか らの ナ イ フ に よる 「 警 察官 襲撃 事件 」 な ど全 国各地 で 中学 生 のバ タフ ライ ナイ フに よる犯 罪 が,連 鎖反応 的に起 きて い る。

特 に神 戸須 磨 区 の事 件 で は,そ の犯 行 の猟 奇性 と被 疑者 を逮 捕 してみ た ら中学3 年生 の少年(事 件当時14歳)で あ った こ とか ら 日本 国 中 を揺 るが した こ とは記憶 に 新 しい。 しか も,被 疑者少 年が 中学3年 生で,少 年 法上彼 に刑 罰 を科 す こ とがで き ない(法20条)こ とが明 らか にな った。 少年 逮 捕 の直後,梶 山官房 長官 は,談 話 の 中で現 行少 年 法 におい て この よ うな 凶悪 な少 年犯 罪者 に対 し刑 罰 を科 す こ とがで き ない こ とは不合 理 であ る とい う点 か ら少年法 『 改 正』 の ア ドバ ル ー ンを上 げた。 こ れ に同調 す るか の よ うにマ ス コ ミ,識 者,世 論 が沸 き上 が って きた こ とは周 知 の通 りで あ る。 その後,黒 磯 のナ イフ刺 殺 事件 を契機 に連鎖 反応 的 に発生 した中学生 の ナ イフ に よる殺傷 事件 は,「 少 年 法見 直 し」 の世 論1)を いやが うえ に も盛 り上 げた。

この ような世論 を受 けた形 で,下 稲 葉 法務 大 臣 は少年 法 『 改 正』 に強 い意欲 を示 し た談話 を発 表 した2)。 これ に よ りわが 国の 『 少 年 法改正 論議』 は,0気 に加速 され

るこ とが予 測で きる。

(2)少 年3)が 国家 の次代 の担 い手,す なわ ち,少 年 は人格 の 「 可塑 性」 に富 み, 人格形 成途 上 にあ る将来 の国家 を背負 う人材 で あ るこ とは,自 明 の理 で あ る。発 展 す る国家 の 中心 をなす もの は,常 に青少年 のバ イ タ リテ ィー浴れ る力 で あ り,少 年 の健全 な育 成 を図 る こ とは,世 の親 の願 いで あ る と ともに,国 家社会 に課 せ られ た 責 務 で あ る。 この よ う な観 点 か ら少 年 の健 全 育 成 を図 る た め に,児 童 福 祉 法,学 校 教 育 法,教 育基 本法,民 事 法 あ るい は行 政法等 広 い領域 にわた って少年 が,厚 く保 護 され てい る。 したが って,た とえ その少年 が犯罪 ・非行 少年 で あ った と して も, 少年 が厚 く保護 され なけれ ばな らない こ とは明 らかで あ る。た だ犯 罪 ・非行 少年 は, 他 の少年 と違 って社 会逸脱 行動 を行 った とい う点 に,そ の特異 性 があ る。 この よ う

1

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な少年 に対 して少年 自 らが 「 連帯 性 あ る社会 の一員 と して風 雪 に耐 えて生 き抜 く」

とい う積 極 的 な内容 を もった教育 を施 す責務 が,国 家 に課せ られて い る。

少年 の社会 逸脱行 動 に対 す る社 会統 制 の法 的枠組 み を 『 少 年法 制』 とい う。少 年 法 制 には,少 年法,児 童福 祉 法,少 年 院法 さ らに は犯 罪者予 防更 生法等 の法律 が存 在 す る。 この よ うな少年 法制 は,刑 事政 策的側 面 と福 祉 政策 的側 面の交差 す る特殊 領域 にあ る。 したが って,た とえその少 年が犯 罪 ・非行少 年 であ った と して も,少 年 に対 す る処遇 が成 人犯罪 者 のそ れ と同 じレベ ルで考 え られ ない ことは言 うまで も ない。少 年 法 制 で は,少 年 の犯 罪 ・非行 か ら社 会 を防衛(刑 事政策的側面)す る こ と と少年 を犯 罪 ・非 行 か ら立 ち直 させ る(福 祉的側面)と い う二つ の効 果 が期 待 さ れて い る。 この二つ の側 面 を体現 してい るのが少 年法 で あ る。 したが って,こ の少 年 法 制 の 中心 とな る基 本 法 が少 年 法(昭 和23年 制定)で あ る。少 年 法 第1条 は 「こ の法律 は,少 年 の健 全 な育成 を期 し,非 行 のあ る少年 に対 して性格 の矯 正及 び環境 の調 整 に関 す る保護 処分 を行 うとと もに,少 年及 び少年 の福祉 を害す る成人 の刑事 事件 につ い て特 別 の措 置 を講 ず る こ とを 目的 とす る」 と規定 す る。 この 「 少 年 の健 全 な育成 を期」 す る とい う規定 が,上 の二つ の側面 を体現 す る もので あ り,少 年法

を貫 く指導 理念 で あ る4)。

(3)わ が 国 の少年法 制 の枠 組 みの 中で,最 近 の少 年 に よる凶悪犯 罪 の多 発化 は, 政府 ・自民党 あ るいは 「 極悪 非道 な少 年 に は厳 罰」 に とい った国民世 論 の主張 の よ

うに,少 年 の健全 育成 を 目的 とす る少 年法 の枠組 み を変 えな けれ ばな らない ほ ど切 迫 した状 況 で あ ろ うか 。 また,こ れ ら少年 に よる一連 の事 件 は,「 特殊 な事件 」 な のか,「 一般 的 な事件 」 なの か。 これ には事 件 の分析 が必要 で あ る。

少年法 の改正 は,少 年 法制 の根幹 にかか わ る もので あ る。 したが って,そ の改正 論議 は,事 件 の残虐性 あ るい は極悪 非道 とい った表層 だ けを見 た感 情論 で は,将 来 の国家 また少年 に とって も大 きな禍根 を残す こ とにな る。 そ こで本稿 で は この よう な問題 意識 の もと,「 最近 の少年 に よる非行 ・犯 罪 の動 向」,「少 年 法改 正論 議 の変 遷 ・経 過」 そ して 「 い ま少 年法 改正 は必要 か」 とい う点 を検 討 してみ たい。

2.最 近 の少 年 に よる非 行 ・犯罪 の動 向

(1)い まや少年 に よる非行 ・犯 罪 の問題 は,ひ と りわが国 の問題 だ けで はな く, 先進諸 国 に共通 した社 会病理 現 象 とな ってい る。 イギ リス にお ける10才 の2人 組 少 年 に よる幼児 誘拐 殺人事 件 はロ ン ドン市民 だ けで はな く,イ ギ リス 国民全体 を少 年 た ちに対 す る非難 と興奮 の土 甘禍 に陥 れ た ことは記1意に新 しい。 さ らに最近,ア メ リ カ社 会 を震 憾 させ た学 校 内 にお け る生徒 の銃乱 射事 件 は,ア メ リカ銃社 会(米 国合 衆国憲法修正2条5))の 見 直 しと少 年犯 罪者 に対 す る厳 罰主義 の要 求 を もた ら した。

わが 国の場合 も少 年非行 ・犯 罪 の発 生 の状況 は,こ れ ら先進 諸 国 と同 じレベ ルにあ る とし,少 年 法 の見 直 し論 ・少年 犯罪 者 に対 す る厳 罰主 義 の主張 が,活 発 にな され る傾 向 が 出て きた。

すで に述べ た ように,青 少 年 は将来 の 日本 を担 う人材 で あ る。青 少年期 は,自 分 と社会 のかか わ りや ものの見 方 ・考 え方 な どを養 い,社 会 に適 応 す るため の試行錯

2

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誤 の期 間 であ る。 その ため には,青 少 年が健 全 に成長 す るた めの環境 が不可 欠 であ る。 この意 味で 国家 は,青 少年 の福 祉 を増進 し,国 家 の将 来 の担 い手 にふ さわ しい 青少年 に育 成す るための環境 整備,社 会保 障 の充実 に努 め る積極 的義務 を負 ってい る。 しか し,青 少 年 を取 り巻 く日本 の現状 は,彼 らが健全 に成 長す るための環境 と は程遠 い と言 わね ばな らない。現 在 ほ ど社 会構造 ・教 育 シス テム ・青 少年 に対 す る 福 祉等 の観 点 か ら,青 少年 に対 す る総 合 的 な施 策が 考 え られ な ければ な らない時期

はない6)。 そ うだ とす れば,青 少年 を取 り巻 く環境 と して,現 代社 会 の恥 部 とい わ れ る政 治家 ・高級 官僚 ・銀 行 さ らに証 券会社 首脳 に よるス キ ャ ンダル,い わゆ るホ ワイ トカ ラー犯 罪,そ して この よ うなエ リー ト養成 を志 向す る教 育 システ ム等 の青 少年 に与 える影 響 とい う視 点が,新 た に考 え られ な ければ な らない。

少 年 の非 行 ・犯罪 の要 因 は,も ち ろん少年 自身 の個人 的要 因が存在 す る こ とは否 定 で きない が,少 年 に与 え る この ような社 会 的環境 も見 逃せ ない要 因(社 会的要因) で あ る。 この意味 で非行 ・犯 罪少年 は現代 社 会 ・教 育制 度 にお け る犠牲 者 であ る と い って も過言 で はない 。

そ こで,少 年法 の枠組 み を変 え る とい う 「 少年 法改正 の必 要性 」 を検 討 す る前提 と して,少 年 非行 の実態 つ ま り最近 の少 年非行 の動 向 を検 討 してみ よう。

(2)少 年非行 の動 向 を見 る前 に非 行少 年 の概 念 を確認 してお こう。 この概 念 は少 年 法上 の もの であ り,非 行少 年 は犯罪 少年(罪 を犯 した14才以上20才未満 の少年),触 法 少年(刑 罰法令に触 れる行為を行 った14才未満の少年),虞 犯 少年(保 護者の正当な監 督 に服 さない性癖があること等 の性格,行 状等か ら判断 して,将 来罪を犯 し,ま たは刑罰法 令 に触れる行為 をす るおそれのある20才未満の少年)を い う(法3条)。 非行 とは これ ら の少年 が 行 った行 為 で あ る とい うこ と を前提 と して,以 下刑 法 犯少 年(犯 罪少年 の うち刑法犯の交通関係 に係 わる業務上過失致死傷罪,特 別刑法犯は除 く)を 中心 に少 年非 行 の動 向 を見 てみ よう。

『 青 少 年 白書 』(平 成9年 度版)は,「 最 近 の少年 非行 の質的特 徴 と して は,平 成8 年 に強 盗 で補導 された刑法 犯少年 の うち非行 少 年 と して補 導 され た経 験の ない者が 50%を 超 え るな ど,そ れ まで非行 を犯 した こ との ない少年 が い きな り重大 事件 に走 るケース が 目立 ってい る。 また,カ ラオケ代 やゲ ー ム代欲 しさの強 盗 や性 の逸 脱行 為 とい った遊興 費 を得 るた めの非行 が 目立 って お り,『遊 び,ス リル や好 奇心』 を 動 機 とす る非行 は減少 して い る」(128頁)と 最 近 の非行 少年 の特徴 を総括 して い る。

平成8年 の警 察 に検 挙 され た刑 法犯 少 年 の数 は,133,581人 とな り8年 ぶ りに増 加 した。 そ こで,こ の ような刑 法犯 少年 の増加 の推移 を見 るため過去10年 の警 察 に よ り検 挙 ・補導 された非行 少年 の数 の推移 を示 した ものが,表1で あ る。表1が 示 す とお り,昭 和63年 を ピー クに平 成7年 まで の警 察 に検挙 ・補 導 され た各 非行 少年 の 数 は,減 少傾 向 を示 して きた。 そ して平 成8年 は,刑 法 犯 少年 が前 年度 よ り約 7,300人 増加 したの であ る。 そ こで,刑 法 犯少 年 の動 向 を分析 す る前 提 と して,主 要 刑法 犯少 年7)の 戦後 の推 移 を示 した ものが,図1で ある。

図1か ら も明 らかな ように,戦 後 の刑 法犯少年 の推 移 に は,昭 和26年 をピー ク と す る第1の 波,同39年 を ピー ク とす る第2の 波,そ して増 加傾 向 に若干 のup‑down

3

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表1警 察 に補 導 され た非 行 少 年 の 推 移(昭 和62〜 平 成8年) 年

区分

昭和 62 63

平成

元 2 3 4 5 6 7 8

刑 法 犯 少 年 187,192 193,206 165,053 154,168 149,663 133,882 133,132 131,268 126,249 133,581 特 別 法 犯 少 年 29,318 30,264 27,260

...

26,331 20,183 14,552 12,270 10,436 9,369 触 法 少 年(刑 法) 40,780 38,004 34,591 28,!60 27,434 23.2$5 25,168 23,811

......

23,242 触 法少 年(特別法) 584 587 462 426 365 277 239 233 261 245

ぐ 犯 少 年 3,770 3,528 3,540 3,106 2,773 2,365 1,892 1,630 1,567 1,652

資 料:『 警 察 庁 』

(注)1刑 法犯 少 年 とは,「 刑 法 」(明40法45>,「 盗 犯 等 ノ 防 止 及 処 分 二 関 ス ル法 律 」(昭5法 9),「 暴 力 行 為 等 処 罰 二 関 ス ル 法律 」(大15法60),「 決 闘 罪 二 関 ス ル 件 」(明22法34),

「 爆 発 物 取 締 罰 則 」(明17太 政 官 布 告32),「 航 空 機iの強 取 等 の処 罰 に関 す る法 律 」〈 昭45 法68),「 火 炎 び ん の使 用 等 の 処 罰 に 関 す る 法 律 」(昭47法17),「 航 空 の 危 険 を生 じ させ

る行 為 等 の 処 罰 に 関す る法 律 」(昭49法87),「 人 質 に よる 強 要 行 為 等 の 処 罰 に 関す る 法 律 」(昭53法48),「流 通 食 品 へ の毒 物 の 混 入 等 の 防 止 に 関す る特 別 措 置 法 」(昭62法103),

「 サ リ ン等 に よ る人 身被 害 の 防 止 に 関 す る法 律 」(平7法78)に 規 定 す る 罪(交 通 事 故 に 係 る業 務 上(重)過 失 致 死 傷 を 除 く。)で 警 察 に 補 導 され た14歳 以 上20歳 未 満 の 者 を い

う。

2特 別 法 犯 少 年 と は,上 記1以 外 の 罪(交 通 事 故 に係 る業 務 上(重)過 失 致 死 傷 や 「 道 路 交 通 法 」(昭35法105),「 自動 車 の保 管 場 所 の確 保 等 に 関す る 法 律 」(昭37法145)に 規 定 す る 罪 を除 く。)で警 察 に補 導 され た14歳 以 上20歳 未 満 の 者 を い う。

3触 法 少 年 とは,刑 罰 法 令 に触 れ る行 為 を した14歳 未満 の 者 を い う。

4ぐ 犯 少 年 とは,性 格,行 状 等 か ら判 断 して,将 来,罪 を犯 し,又 は 刑 罰 法 令 に 触 れ る行 為 を す る お そ れ の あ る20歳 未 満 の 者 を い う。

図1主 要 刑 法 犯 少 年 の 人 員 及 び 人 口比 の 推 移(昭 和24〜 平 成8年)

(万 人) 20 19 18 17 16 15

補14 導13 入 貝12

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(注)主 要 刑 法 犯 の 統 計 を 用 い た の は,少 年 非 行 の推 移 を一 貫 した統 計 に よ っ て と ら え る た め で あ る 。

資料:警 察 庁 『 警 察 白書 』

が あ っ た が,昭 和58年 か ら 昭 和63年 の 第3の 波 の 形 成 と い う 三 つ の 山 が 見 ら れ る 。

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それ以後,平 成7年 に至 る まで刑 法犯少 年 の数 は一貫 して減 少傾 向 にあ った。

平成9年 度,同10年 度 の刑 法犯 少年 の推移 が発表 されて い ない現 在,確 実 な とこ ろ は不 明で あ るが,平 成8年 度 の刑 法犯 少年 の増加 率 は,い まだ第3の 波 が形成 さ れ る昭和48年 以 降 のそ れ よ りも小 さい と思 われ る(末 だ,刑 法犯少年の増加が突出 し たとい う発表 もマスコ ミ報道 もない)。 そ うだ とす れ ば,こ こに大 きな疑 問が沸 いて く る。す なわ ち,最 近 の少年 非行 の増加 は,少 年法 の枠組 み を変 え る 『 少年 法 の改正』

が なけれ ば対 処 で きない ほ どの状 況 にあ るのか,と い う疑 問 で ある。第3の 波 の ピー ク時 の193,206人(昭 和63年)も の刑 法犯 少年 の発生 数 にあ って も少年 法 を改正 す る こ とな く,平 成元 年以 降 の一貫 した刑 法犯 少年 の減 少傾 向 を もた ら した。 この こ と は,少 年非行 ・犯 罪 の増 減 は少 年法 改正 の問題 とは相 関関係 にない こ とを示 して い る。 したが って,最 近 の少年非 行 にお け る凶悪 犯増 加が 少年 法改正 の理 由 に な らな い こ とは明 らかで あ る。 少年 法改正 論議 の主 眼が,す で に 「は じめ に」 で も述べ た ように,神 戸事件 とそ の後相次 いで起 きた中学生 の ナイ フ に よる殺 傷事件 の よ うな 凶悪 犯罪 に対 して も 「 刑 罰 を科す こ とがで きない」 ことにあ った こ とは明 らか であ る。 しか も,殺 人 の ような凶悪犯 罪が 中学 生 とい う年 少少年 に よって行 われ た とい う点が,世 論 に大 きな シ ョック を与 え,少 年法見 直 し論 を後 押 しした。

刑法犯 少年 にお ける平成8年 度 の年 齢別検 挙 ・補導状 況 を見 て み よ う。 これ を示 した もの が,図2で あ る。 まず,年 少 少 年(14・15才 の少年)の 動 向 は,昭 和58年 の第3の 波 と軌 を一 に して他 の年 齢層 よ り非行 の増加 を もた ら し,い わゆ る 『 非行 の低年 齢化 』 と特 徴 づ け られて きたが8),そ の後 下 降傾 向 を示 して きた。 しか し, 他 の年 齢層 と比 較す る と依 然 と高 い水準 を示 して きた。平 成8年 の年少 少年 の刑法

犯少 年 全 体 に 占め る割 合 は,中 間少 年(16・17才 の少年)の54,713人(41%),年 長 少 年(18・19才 の少年)の23,242人(17.6%)に 比 べ る と,55,298人(41.4%)と 中間 少 年 よ りも高 い数値 を示 して い る(昭 和41年 か らの年齢別 の推移 については図3を 参

図2刑 法犯少年の年齢別補導状況(平 成8年)

資 料:警 察 庁 「 警 察 白 書 』

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図3交 通 関 係 業 過 を除 く少 年 刑 法 犯 の 年 齢 層 別 検 挙 人 員 人 口 比 の 推 移

(昭和41年 〜 平 成8年)

sa

25

20

15

IO

昭和4145505560平 成27

注1警 察 庁 の 統 計 及 び総 務 庁 統 計 局 の 人 口資 料 に よ る。

2「 人 口比 」は,各 年 齢 層 の 少 年 人 口1,000人 当 た りの 少 年 刑 法 犯 検 挙 人 員 の 比 率 で あ り,触 法 少 年 の 入 口比 算 出 に用 い た 人 口 は10〜13歳 の 人 口で あ る 。 3巻 末 資 料1‑1の 注7に 同 じ。

照)。 この状況 は,依 然 と して 『 非 行低 年 齢化 』 の傾 向 に歯 止 めが かか ってい な い こ とを示 して い る とい って も過言 で はない。 しか も,こ の刑 法犯 少年 の年 齢 の枠 を 16才 まで の少年 に広 げ る と,14才 か ら16才(中 学生,高 校生の低学年)ま で の比 較 的 低 年齢層 の少 年が 占め る割合 は,刑 法犯 少年全 体 の実 に66,3%に なる。 この ような 傾 向 は,少 年 非行 の第1の 波,第2の 波 で は見 られ なか った傾 向で,第3の 波以 降 生 じて きた新 しい傾 向 で ある。 中学 生 ・高校低 学年 の少 年 に よ る犯罪 ・非行 が全体 の60%以 上 を 占める とい うこ とは,少 年 法 自体 の問題 だ けで はな く,こ れ ら年齢層 の非行 増加 の現 象 を社 会病 理現 象 と して捕 らえ直す こ とを要 請 してい る。従 来 の少 年犯罪 に見 られた動機 は,遊 び ・ス リル ・好奇 心 とい った所謂 『 遊 び型 非行』 が多 か った。 ところが最近 の傾 向 は,そ の動機 と して カ ラオケ代 やゲ ー ム代欲 しさか ら 重 大 な強盗 あ るい は性 の逸 脱行為(援 助交際 ・売春など)等 の犯 罪 ・非行 に走 った り, ここ一 連 のナ イ フ殺傷 事件 で 明 らか にな った ように 「 些細 な こ とでキ レテ」殺 人 の よ うな凶悪 犯罪 に走 る とい う短 絡的 な少年犯 罪 が多発 してい る(こ の原因論について は次項で検討す る)。

以下 で少 年法改 正論 議 と係 わ りの あ る少年 に よる凶悪犯 罪 につ いて,そ の動 向 を 見 て み よ う。

平成8年 の包 括罪種 別 刑法 犯少 年9)10)を見 た ものが 図4で あ る。 図4か ら明 らか な よ うに,罪 種別 に刑 法犯少 年 を見 る と,窃 盗犯 が最 も多 く,次 いで 占有離 脱物横 領 の順 に な って お り,殺 人 ・強盗 ・強 姦及 び放火 とい った凶悪犯 の占め る割 合 は, 1.1%の1,496人 で あ る。 この 中で殺 人 は97人,強 盗 は1,082人 で26年 ぶ りに1,000人 を超 えた(表2)。 強 盗 につ いて は,平 成 元 年 か ら漸 増傾 向 に あ った が,そ の要 因 は 「 遊興 費」欲 しさの短 絡 的 な犯 行 を反映 した もので ある こ とが容易 に看取 で きる。

少 年 に よる殺 人 の増減傾 向 を見 るため図5を 示 そ う。図5は,昭 和21年 以 降 にお け る少 年 の殺 人及 び強盗 ・傷害 等 の検 挙 人員 の推移 を見 た もの であ る。殺人 につ い

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図4刑 法犯少年の包括罪種別補導状況(平 成8年)

凶 悪 犯1,496人(1.1%) そ

資 料=警 察庁 『 警 察 白 書 』

(千 人)

図5凶 悪 犯 の 少 年 検 挙 人 員 の 推 移

(昭和21年 〜 平 成8年)

昭和212530354045505560平 成27

注 警 察 庁 の 統 計 に よ る 。

て は,昭 和40年 代 前半 まで は200人 か ら400人 台 で増減 を繰 り返 していた が,40年 代 後 半 か ら減少 傾 向 を示 し,50年 代 に入 る と100人 を割 り,そ の後 はおお むね70人 か

ら90人 台 で推移 して い る(表2)。

この よ うに見 て くる な らば,平 成9年 の少 年 に よる殺 人 が どの よ うに推 移 したか はい まだ不 明で あ るが,大 幅 に増加 した とい うこ とはな い。問題 は,最 近 中学生 の ナ イフ に よる殺 人が増 え,動 機 も 「 厳 し く注 意 され た」 とか,「 他 か ら無視 され た」

とい う些 細 な きっか け,あ るい は 「キ レタ」 か ら とい う短絡 的 な犯行 が 目立 ってい る。 だか らとい って,中 学生等 の年 少少 年 に よる殺 人 の総数 が,急 激 に増加 したわ けで もない 。に もか かわ らず,こ の年 齢層 の殺人 が大 きな社 会 問題 にな った理 由 は, 動機 の単 純 さとだれ もが所持 で きるバ タフ ライ ナイ フ とい う凶器 の特 殊性 にあ った

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表2 少 年 刑 法 犯 の 主 要 罪 名 別 検 挙 人 員

(昭和21年 〜 平 成8年) 火 放 髭 携 蠕 響 霧 麗 繋 謝 籔 畿 毅 難 篶 響 轟 難 鋤 蕎 警 饗

い わ 等 制つ 強せ 器 器 多 器 器

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姦 強 霧 珊 講 繧 携 蟹細 難 捌 毅 謹 霧 錨 藷 繁 藝 緋 難 樂 響 l l l 1 9 θ ウ 臼 n ∠ 4 4 湘411 4 3 り δ 4 4 4 3 3 2 2 2 1 1 1 1 1 1

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警 察 庁 の 統 計 に よ る 。

*は 傷 害 の 上 半 期 の み の 数 で あ る 。

**は 昭 和23年 下 半 期(7月 〜12月 〉 総 数 で あ る 。

資 料1‑15の 注2・3に 同 じ。

の み の 数 で,暴 行,傷 害,恐 喝 及 び 脅 迫 の

と思 わ れ る。 しか もこれ らの事件 を暴走 す る中学生 ・高校 生 とい うキ ャンペ ー ンと ともに生徒 ・教 師 に対 す る校 内暴力 とリンク させ てマ ス コ ミが,書 き立 て た側 面 は 否定 で きな い。

以上 の よ うに見 て くるな らば,年 少少 年 に よる凶悪犯罪 の増 加 は,現 行 少年 法 の 枠 組 み の中で対 処で きない ほ どの増加 で はな く,殺 人 の よ うな 凶悪犯 罪 につ いて も

『 非 行低 年 齢化』 の様 相 が顕在 化 して きた とみ るべ きであ る。 したが って,現 在 の

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喫 緊の課 題 は,少 年 法 の改正 にあ るの で はな く,こ の年齢層 の少年 に対 す る社 会環 境 の整備 ・学校 教育 お よび家庭 教育 を含 め た総 合 的政策 の早期 の確 立 にあ る。

(3)こ こで,ま ず 一般 的 に少 年非 行 の要 因 を考 えて見 よ う。

現 代 の少 年非行 の 問題 で重要 な ことは,非 行類 型 が多様 化(刑 法犯 ・特別刑法犯 ・ 暴走族 ・校内暴力 ・家庭内暴力 ・いじめ,薬 物乱用 そして性非行 など)し て い る こ とと, 殺 人 の よ うな凶悪犯 罪 につ いて も 『 非行 の低 年齢化 』 が進 んで い る こ とにあ る。 こ れ らの問題 を含 めて今 日の少 年非行 の要 因 を考 え た場 合,そ の一端が警 察 の市民 生 活へ の介 入 の 度合 い と比例 して 『 少年 非 行』 とい うラベ リン グ(レ ッテル貼 り)の 結 果 であ る とい う点 にあ るこ とは否定 で きない。 しか し,現 代 の少年 非行 の現 象 を 冷静 に分析 す ると き,そ れだ けで は解 明 が困難 な問題が存 在 して い る。 そ こで本項 で は,青 少 年 に よる非 行現 象 を直視 し,こ の よ うな社 会病 理現 象 を もた ら して きた

と思 わ れ る社 会 的要 因 を見て行 こ う。

ところで,個 々の少 年非 行 を見 た場 合,そ こに は様 々 の個 人 的 な非行 原 因(個 人 的要因)を 見 い だす こ とが で き,ど の非行 を と って も同 じもの は ない。 しか し,今

日の少年 犯罪 ・非行 を社 会病理 現象 と して捕 らえ,そ れ を トー タル に見 た場 合,非 行 少年 をを取 り巻 く社会 的環境 つ ま り社 会 的要 因 は,次 の点 にあ る。

① 科 学万 能主 義20世 紀 に入 ってか らの科学技 術 の発展 には 目覚 ま しい ものが あ り,こ の発 展 は経 済 至上 主義(金 権主義)と 物 質 万 能主義 を もた ら し,こ れ に最 大 の価 値 をお いた 。他 方 で,人 間の 内面(精 神 的側面)を 等 閑視 す る結 果 を招 い た。

す なわち,人 間性 疎外 で あ る。

② 家庭 教 育機 能 の喪 失 本来 家庭 とは,『 寂謬 を取 り去 る』機 構 で あ る とい わ れ てい る。 そ こで は,子 ど もを育 て る両 親の役 割分担 が 自然 と定 ま り,父 親 の役 割 は基 本的 な社会 規範 を教 育 し,母 親 の役割 は子 どもに対す る情 操面 を教 育す るこ と にあ った。 ところが① と も関連 す るが,戦 後 の 日本 経済 の急激 な発展 とと もに,上 に述べ た家庭機構 その ものが崩壊 して しまった。 そ こで は,も はや本来 の 「 子 ども の成 長」 を育 くむべ き家 庭教育 を困難 に してい る。

③ 学校 教 育機 能 の変 容 家庭教 育機 能 の喪失 は,学 校 教 育機 能 に も変化 を与 え ず にはおか なか った。す なわ ち,子 ど もに対 す る教 育 のすべ ての分野 につ い て親 は, 学校 へ の依存 度 を高 め る ようにな った こ とであ る。 しか も,経 済 至上 主義 の社会 に あ って親 の子 どもに対 す る教 育 の最大 の 関心 事 は,わ が子 を一流 の学校 に入 学 させ

るこ とに集 まった。受験 戦 争 の勃発 であ る。親 の要求 は,学 校 をわが 子が受 験戦 争 に勝 ち抜 くため のテ クニ ックを教授 す る場 にす るこ とにあ った。 こ うい ったPTA の強 い プ レ ッシ ャ0の もとに,学 校 は偏 差値 教育 等 の採 用 に よ り,い つ の間 にか, 本来 の学 校教 育機 能 を変容 させ て きた。

④ 地 域 人 間 関係 の 希 薄 化 地 域 住 民 に対 す る無 関心 が そ れ で あ る 。この 傾 向 は, 子 育 ての場合 に も自分 の子 ど もに関係 が な けれ ば,係 わ りを もた ない とい う点 に現 れ る。 したが って,子 ど もた ちが如何 に危 険 な遊 び を してい ようが,ま た非行 を 目 撃 して も自分 の子 どもが係 わ って いな けば無 関心 を よそ う。

これ ら① ない し④ の要 因 は別 々 の もの で はな く,む しろ,こ れ ら要 因が相 乗 的 に

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作 用 してい る。 この 結果,少 年 た ち に 『 生 きが い喪 失』 を もた ら した11)。人 は,

『 生 きが い』 を もって 目標 に 向か っ て生 活 してい る と き 『 生 の充 実』 を感 じるので あ る。生 きが い を失 った少年 た ちが,そ れ を埋 め るため に刹 那 的 ・快楽 的行 動 を取 り,犯 罪 ・非行 に走 るケ ースが非常 に多 い。 この意 味 で,少 年犯罪 ・非行 の最大 の 要 因 は,こ の 『 生 きが いの喪失』 にあ る とい って も過言 で はな い。 しか し,少 年 の 非 行 問題 が語 られ る時,こ の本 質論 が見 失 われて い る場合 が 多 い。

(4)も ち ろん,今 まで に諸 々の少 年非行対 策 が立案 され,実 施 され て きた こ とは 否 定で きない。 しか し,そ れ らの対 策が成功 して きたか とい う と,少 年非 行 の動 向 を見 る と全 く見通 しが 立 た ない とい うの が現 状 であ る。上 に述べ た本 質 を見失 った 少 年対 策が,暗 礁 に乗 り上 げた とい って も過 言 で はない。 この よ うな場合,今 回の ように法 制度 の改正 が議 論 され る。 しか し,こ れ はあ ま りに も短 絡 的す ぎ,そ の よ うな法改 正 は,犯 罪 ・非 行現 象 に内在 す る本 質 的な もの に対 す る抜 本 的 な対 策 をな お ざ りにす る危 険性 を有 してい る。 したが って,少 年非 行 の問題 を考 える場 合,短 絡 的 に法(多 くの場合少年法)改 正 とい うので はな く,ド イッのF.v.リ ス トが 「目 的 を意識 した強 力 な社 会 政策 こそ多 くの犯 罪 の源 の息 を止 め る」12),換言 す れ ば 「 最 大 の刑 事政 策 は強力 な社 会政策 にあ る」 とい うよ うに,家 庭 ・学校 ・社会 そ して 国 家 に よる トー タル な政策 の確 立 が急務 で あ る。 この よ うな政 策の効果 が現 れ るまで には,非 常 に長 い時 間が必 要で あ る こ とはい うまで もない。 しか し,21世 紀 の 日本 を考 え る場合,抜 本 的 な青 少年対 策 と して これ以外 の政策 は存在 しな い。

と もあ れ,「 青 少年 は将 来 の 日本 を担 う人材 で あ るこ とを強 く認 識 し,何 が少 年 の健全 育成 に とって必要 か」 を考 えな ければ な らない時期 が,今 来 てい る。

3.少 年法 改正論 議 の変遷

(1)わ が 国の少年 法制 を見 た場合,わ が 国の近代 的少年法 制 は大正11年 制 定 の少 年 法(旧 少年法)に 始 まる。 この 旧少年 法 は 「 愛 の法 律」 と呼 ば れ,そ の基 本 的性 格 は 「 保 護主 義」 にあ った とい われ てい る13)。しか し,こ の保 護主 義が検 察 官 の起 訴 ・不 起訴 の決 定権 の 内容 にす ぎず,し か も法 それ 自体 が刑事 処分 の特則 を多 く規 定 して いた ことに よって,実 質的 に旧少 年法 は 「 保 護主義 」 の名 に値 しな い もので あ った14)。

昭和21年 「日本 国憲 法」 が制 定 され,「 終戦 後 にお け る少 年犯 罪 現 象」,「旧少年 法 に対 す る反省 」か ら,旧 少年 法 の全 面 改正 が図 られ,昭 和23年 に 『 少年 の 人権 を 全 う しつ つ,健 全 な育 成 を図 る』 とい う指 導 理 念 を もった現 行 「 少 年 法」(以 下, 少年法)が 制定 され た。 この少 年法 の特 徴 は,① 保 護処 分 の決定 機 関 を裁判 所 に し

た こと,② 少 年年 齢 を引 き上 げ た こ と(20才 未満に引 き上げ,旧 法は18才未満),③ 保 護 処 分 と刑 事 処 分 の 関係 を改 め,検 察 官 先 議 か ら家 庭 裁 判 所 先 議 に した こ と,④ 保 護 処分 の 内容 を整理 した こ と,⑤ 上訴制 度 の採 用,⑥ 保護 手続 の形式化15)の6点 に 要 約 で きる。

少年法 が制 定 され た以後,少 年 犯罪 ・非行 の動 向 は増減 を繰 り返 しつつ 第1波 ・ 第2波 の ピー ク を迎 えなが ら も,少 年 法 は国民 の間 に定着 してい った。 ところが,

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第2波 の ピー クが 終息 した 昭和41年 法務 省 は,『 少 年法 改正 に 関す る構 想 説 明書』

(以下r構 想』)を 公表 し,こ こ に少 年 法 改正 問題 が 国民 の前 に提 示 された 。つ い で 昭和45年 法務 省 は,『 少 年 法改正 要綱 』(以 下r要 綱』)を 示 し,こ の 『 要綱 』 が法制 審議 会 に諮 問 された。 昭和52年,法 制 審議会 は諮 問 を受 けた 『 要綱』 に対 す る答 申 と して,『 中 間報 告』 が 法務 大 臣 に提 出 され た。 その後,最 近 に至 る まで 少年 法 改 正 問題 は表面化 して いなか った。

そ こで本章 で は,最 近 の少 年法 改正論 議 の系 譜,さ らに はそ の主張 が過去 の少年 法 改正 の論点 とどの ように違 うのか を検 討 す る前提 と して,昭 和41年 以 降 の少年 法 改 正の論 点 を整理 してみ たい。

(2)で は,昭 和41年 以降 の一連 の少 年法改 正 問題 をめ ぐる法務 省 の主 眼 は どこに あ ったので あ ろ うか。 こ こで は,法 務省 サ イ ドの主張 をすべ て検討 す るに は紙幅 の 余 裕 が ない ので,『 構 想 』 を受 けた 『 要 綱』 の 中で も重要 な 「 青 年層 設 置」 と 「 検 察 官先議 」 の問題 を検討 す る。

この一連 の少年 法改 正 問題 につ き法務 省 は,要 綱説 明で 「わが国 の主要刑 法犯 の 約3分 の1を 占め る少 年犯 罪の処 理 につ いて,公 益 の代 表 で あ る検 察官 が全 く関与 で きない の はわが国 の刑 事 司法制 度 にそ ぐわ」 ず,む しろ 「 検察 官 の公益 の立場 か らす る意見 が少年 の審 判 に反映 され,家 庭裁 判所 の適 正 な処 分決 定 に寄 与 す る こ と がで きる」(第2少 年の保護i事件)と 主 張 して い た16)。こ れ は,少 年法 の保 護 処 分 優 先主義 を一般予 防 的観 点 か らの刑罰優 先 主義 ・社会 防衛 の強調 を意 図す る もので あ り,こ こか ら,少 年 法改 正の最 重要 課題 の青 年層設 置 ・検 察官 先議 の 問題 が 出て きた。

まず は,青 年層 の設置 の問題 で あ る。法務 省 は,「 少 年 の心 身 の成 熟度 の応 じた 処 理 ・処 遇 の実現 と年 齢層 に応 じた適 正手 続 の保 障」 とい う観点 か ら 「 青年 層 の設 定 は,年 齢層 に応 じた処理 ・処遇 の制 度 を確 立 す る もので あ り,少 年 の個 別処遇 を もた らす もの であ る。… …そ して事案 や個 々 の対 象者 に応 じて,同 一 の手続 内にお い て刑 と保 護処 分 とを適切 に選 択 し うる制 度 とす るのが 最 も望 ま しい」 と し17),

「18才以 上20才 未満 の者 」 を青 年 とす る青 年層 設 置 を提 案 して い る。 法務 省 はの青 年層設 置構1想に は,以 下3点 の問題 点が あ る。 そ の第1点 は青年層 を18・19才 に限 定 した意味,第2点 は青年層 の設 置 は少年 の個 別処遇 を可 能 にす るか,第3点 は青 年 層設 置 に よる 「 適正 手続 の保 障」 が もた らす ものは何 か,の3点 が そ れで ある。

第1点 青 年層 設置 の根拠 の 一つ に,最 近 の世論調査 の結 果等 におい て少 年法 適 用 年齢 の引 き下 げの意 見が 多い こ とが上 げ られてい る(刑 事局長説明,要 綱説明3頁)。

この世論 を根 拠 に,青 年層 の設置 は青 年 を刑 事処 分 の対 象 にす るた めの布石 で あ る (第3点 と併せて考えればこのことは明確 になる)。 この世論 の動 向 を根拠 と した こ とに つ い て,最 高 裁 は 「 立 法 に 当 た って,世 論 や社 会 感 情 を無 視 す べ きで な い こ とは い うまで もないが,少 年 法適用 年齢 す なわ ち若 年犯 罪者 に対 す る特別 の処 理,処 遇 の 対 象 とな る年齢 をいか に定 め るべ きかの 問題 は,か な り専 門的知識 を必要 とす る。

世 論 に問 うな ば,質 問 の作成 に当た って,慎 重 な検 討 を加 え,現 行少 年 法 の理 想 と その し くみ お よび運 用 につ いて じゅ うぶ んな理 解 をえた上 で,改 正 の可否 を問 うの

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が筋道 で あ ろ う」 との見解 を示 してい る18>。まさに その とお りで あ って,こ こに示 され た方 程式 は現代 の少 年法 改正 論議 に も当て は まる原則 であ る。

さて,少 年期 と成 人 の 中間 に 「 青 年期 」 が存 在 す る こ とは明 らかで あ るが,し か し,そ れ は 自然 年齢 で 明確 に区別 で きる もので は はな く(青 年層が何才 までかという 点では明確な区切 りはな く,一般 には23才ない し25才位 まで と考 えられている),各 個 人 の 肉体 的 ・精神 的 ・社 会 的適応発 達 に よって個 人差 が あ り,け っ して法務省 が 主張 す る ところ に限定 され る もの で はない。 しか も,こ の年代 は 自己 の社 会適応 性へ の試 行錯 誤 の期 間で あ る。 ところが,要 綱 に は年齢 を限定 す る説得 力 のあ る根 拠 は示 さ れてお らず,こ の意 味で 法務省 が,少 年 の人格 形成 に重要 な時期 であ る 「 青年 期」

を18・19才 に限定 した こ とは不 合理 で あ る19)。したが って,法 務 省 の 「 青年 層設 置」

の意 味 は,年 長 少年 の 「 健 全育 成」 をはか る 目的以外 にあ る といわ ざ るをえ ない。

第2点 い う まで もな く個別化 処 遇 とは,個 々の少年 の心 身 の発 達 に応 じた,ま た環境 等 に応 じた処理,処 遇 であ る。 しか し,こ れ を根拠 とす る法務 省 の構想 には 矛盾 が あ る。 す なわ ち,青 年層 の設 置 はい まだ心 身 の未熟 な18・19才 の者 を青 年 と す るこ とに よ り,か え って,こ の年 齢層 を定型 的 ・画一 的 に と らえ る類 型的処 遇 に 必然 的 に陥 る こ とに なるので は ないか。仮 に法 務省 の い う ように,青 年層 設置 が青 年 の個 別化 処遇 を 目的で あ る と して も,そ の ため にあ えて青年 層設 置 の必 然性 が あ るのか,と い う問題 が依然 として残 る。 少年法 は,す で に少年 に対 す る個 別化 処遇 をその基 本理念 としてい るのであ り,あ えて青 年層 設置 の必然 性 は存 在 しない。 こ の意 味 におい て も,青 年 に対 す る個 別化処 遇 は,青 年層設 置 の根 拠 とはな らない。

それ に もか かわ らず,法 務 省 が 「 青 年層 の設 置 は個 別化処 遇 の前進 を もた らす」

とい う意 味 は どこにあ るので あ ろ うか。少 年保 護事件 の処分 に は,保 護処 分 と刑 事 処 分 の二種 があ る。少 年 法で は,14才 以 上16才 未満 の少 年 に は保 護処 分 のみ(少 年 法20条)で,16才 以 上20才 未満 の少 年 に は保 護i処分 か刑 事処 分 の どち らか が選択 さ れ る こ とに なる。法務 省 の考 え方 は次 の ような点 にあ るので あ ろ う。少年 に対 す る 処 分 は,保 護処 分で あれ ・刑事処 分 で あれ個 々の少 年 の心 身 の発 達状 況 ・環境 ・社 会適応性 そ して年齢等 に応 じた もので あ るか ら,そ れ は個 別化 処遇 その もので あ る。

そ して少年 法 の実際 の運用 の中で行 わ れてい る年少 少年(14・15才)・ 中 間少 年(16・

17才)・ 年長 少 年(18・19才)の 年齢 区分 の年長 少 年 を 『 青 年』 と し,彼 らに対 す る 個別化 処遇 の充 実 を図 る とい うので あ る。 この年齢 の青年 に対 す る刑 事政 策 的効果 は,社 会 的枠 組 み(社 会制度)を 超 え た行為 に対 して は社 会 的反 動 と して の制裁 が あ るこ とを銘記 させ る必要 が あ る。 そ れ には刑 罰体験 に勝 る ものは ない。 これ も青 年 に対 す る個別 化処遇 の一種 であ る。 こ こに,法 務省 の考 えて い る刑 罰優 先主 義が 現 れ る(も ちろん,要 綱 も刑 と保護処分の選択 を認めてい る)。 した が って,法 務省 の 青 年層 に対 す る個 別 化 処 遇 の前 進 と は,刑 事 処 分 優 先 主 義 に あ っ た20)。

第3点 刑事 事件 にお ける刑 事手 続が,人 権 保 障 の観 点 か ら 「 適 正手続 の保 障」

(憲法31条)を 最重要 課 題 に してい る こ とはい うまで もない。少 年保 護事件 もまた, 非行事 実 ・要保 護性 の認定 と強 制力 を伴 う処分 を少 年 に与 え る もので あ るか ら,適 正 手続 の保 障 が少 年 に対 して も考 慮 され るべ きこ とは,『 要 綱1・2』 が指 摘 す る

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まで もな く,当 然 の こ とであ る。 こ こで の問題 は,要 綱 が 年齢層 に応 じた適正手 続 の保障 に最 も適 した もの と して対 審構 造 の導 入=刑 事訴 訟手 続 であ る とし,青 年 を そ の手 続 の中で適 切 に刑事 処分 と保護 処分 とに選 択 しうる とした点 にあ る。

適正 手続 の保 障 とい う点 を検 討 しよ う。適 正手 続 の保 障 とは,本 来 「人権 の保障 」 を確実 にす る もので あ り,そ れ は形式 的保 障で は足 りず,実 質 的保 障 を要 求す る。

ここで,実 質 的保 障 とは,そ の法 の 目的 ・性 格 か ら して いか な る手続 が最 もその保 障 に適 してい るか とい う こで あ る。 そ うだ とす れ ば,「 少年 の健 全 育成 」 とい う理 念 を もつ少 年法 におけ る適 正手 続 は,少 年 を形 式 的 に刑事 手続 に乗せ る こ とで はな く,適 正 な調査 ・審判 を経 て適 正 な処 遇 が な され るこ とにあ る。 この ため に少年 に とって重要 な こ とは,非 行事 実認 定手 続21)・要保 護 性認 定 手続 とい った調 査 ・審判 過程 にお ける手続 の充実 を図 る こ とにあ る。 したが って,少 年法 にお け る適 正手続 は,『 要綱』 が い う ような 「 当然」 に対 審手 続 ・刑事 訴 訟手 続 を要 求 す る もので は ない。最 高 裁 が,「 少 年審 判手 続 につ いて,適 正 手 続 の保 障 を強化 すべ きで あ る と して も,ど の よ うな手続構 造 を と り,ど の程度 の規定 を設 け るべ きで あ るか は,少 年事件 の本質 や基本 原理 との関連 を離 れて は決す るこ とが で きない。少 年審 判 の訴 訟化 ない し対審化 は,こ れ とあ いい れず,多 くの弊害 を伴」 い 「 他 方,(現 行少年法

の)少 年 審判 の基 本構 造 を維持 しつ つ少 年 の人権保 障 を強化 して い くこ とは,じ ゅ うぶ ん に可能 で あ る」 と主張22)して い るの も同 じ趣 旨であ ろ う。

「 要綱2』 は,「 青 年事 件 につ いて の手続 の大綱 は,刑 事訴 訟法 その他7!Rの 規 定 による もの とす る」 とい う。つ ま り青 年事件 のすべ ての手続 を刑 事訴訟 手続 化 す る ことが,青 年 に対 して刑事処 分 や保護 処分 を適切 に選 択 しうる制度 であ る とい う(要 綱説明)。 しか し,刑 事 訴 訟 手 続 は元 来 刑罰 権 実 現 の た めの手 続 であ り,そ れ は犯 罪 にお ける罪 質 を明 らか にす るため に は適 してい るが,少 年 の人格 特性 を明 らか に す る こ とに は不適 当 であ る。 もっ とも 『 要 綱』 に よれ ば,こ の欠陥 を補 うた め に判 決 前調 査 を認 め る と して い る(要 綱18)。 だが,判 決前 調査 の時期 が,「 公 訴 を提 起 され た犯 罪事 実 のすべ て につい て有罪 で あ るこ とを 自認 した場合 を除 き,犯 罪事 実 に関す る証 拠 調 べ が お わ った後 で なけ れ ば」(要 綱18口)で きない とい うので あ る か ら,そ れ は情状 捜査 の域 を越 え ないで あ ろ う。 さ らに,『 要綱2』 に は,も う一 点重要 な 問題 があ る。 そ れ は,「 青 年 の事件 は,す べ て刑 事事 件 と して 処理 す る こ とにな るので,青 年 につ いて は,少 年 の場 合 の よ うに虞犯 を理 由 と して保 護処分 を す る こ とを認 めない」(要 綱説明)と い う点 で あ る。虞犯 は犯 罪 に も該 当 しないので あ るか ら,虞 犯青 年 は刑 事処 分 も保護 処分 か ら も除外 され る こ とにな る。 しか し, これ らの 中 には,『 要保 護性 』 の あ る青年 も存 在 す るはつ であ る。 これ で は,少 年 法 全体 に流 れ る保 護主 義 に反す るこ とにな るので はなか ろ うか 。

以 上 要 す る に,法 務 省 の 「 青 年 層 設 置 」 の 問 題 点 を概 略 して きた が,こ れ らの 年 齢 区分 それ 自体 の真 の 意 図 は,「 青 年 の権利 保 障 強化 と手 続 の厳格 性 を図 る」 と し なが ら,実 は18・19才 の年 長少 年 に対 す る刑 罰 強化 の何 物 で もない。 しか も,こ の こ とに よ り,青 年 の保 護処分 は刑 罰 の補 充 とな り,そ の実 質 は保 安処分 と異 な る と ころが な くなる23)。

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次 は,検 察官 先議 の 問題 で あ る。 すで に述べ た よ うに,青 年 事件 のすべ て は刑事 事件 と して処理 され,検 察 官 は事 件 の起訴 ・不起 訴 を決定 し,起 訴 は家庭 裁判 所 に 対 して行 わ れ る(要 綱15・16)。 この当該 青年事件 が保護処 分相 当で あれ,刑 事 処分 相 当であ れ,終 局 処分 を得 るため の第一段 階 に検 察 官 に よる起 訴 ・不 起訴 の判 断が 先 行す る ことに なる。 これが 「 検 察官 先議」 の問題 であ る。

青年事 件 に対 して刑事 訴 訟化 を実現 し,検 察官 先議 を確 立 しよ うとす る意 図 は, どこにあ るのか 。一般 に,検 察官 先議 を要 求す る意 図 は,第1に 検察 官 の刑 事 政策 の主体 者 と して の権 限 回復(旧 少年法 は,ま さに検察官に この地位 を与 えていた),第

2に 年長 少年 に対 す る保 護優 先主義 か ら刑罰優 先 主義 に修正 し,も って社会 防衛 に 資 す る こ とにあ る といわれ て きた。 ここで重 要 な こ とは,第2の 意 図で あ る。法務 省 は,成 人 に近 い18・19才 の少 年 には刑 事訴 訟手続 にお いて刑事処 分 と保護 処分 と を適切 に選択 しうる制度 が望 ま しい と し,こ れ らの少 年 を年 少少 年 と同一 に取 り扱

うこ とは健 全 な社 会 通念 に そ ぐわ ない(要 綱1説 明)と して,刑 事処 分 と保 護 処分 の調和 を図 る こ とにあ る とい う。 だが,こ の こ とは二 つの処 分 の調和 とい うよ り, 年長少 年 に対 す る刑罰優 先 を もた らす こ とにな る。 次 の2点 か ら検 討 しよ う。

第1は,要 綱 に則 した側 面 であ る。手 続 の刑 事訴 訟化 は 「 裁 判 に感銘力 を与 え, 本人 の改善 更生 に寄与 す るためで あ って,青 年 に対 して,も っぱ らあ るい は主 と し て刑事 処分 を科 す るためで はない」(要 綱2説 明)と 法務 省 は説 明す る。 ところが, 一方 で 「 家庭 裁 判所 は ,相 当 と認 め る ときは,少 年又 は青 年 に対 し,刑 の言 い渡 し を しな いで,そ の者 を保 護処 分 に付 す る こ とが で き る」(要 綱22)と し,保 護処 分 を 「 刑事 処分 の特 則」 と して い る。 これ で は,第1次 的判 断 は年長少 年 に対 す る刑 罰 の相 当性 にあ り,保 護 処分 を選 択す る ことは少 年法 よ りも制約 を受 ける こ とにな る。 ここに刑罰優 先主 義 の傾 向が強 く現 れ てい る24)。第2は,検 察官 関与 に よる実 務 的側面 で あ る。刑 事訴 訟手 続 か らす れ ば,後 に述べ る ように,捜 査段 階 で の被 疑 者 に対 す る徹 底 的な人格 ・環 境調査 を行 うこ とは人権保 障 の点 か ら妥 当で はない。

そ うだ とす れ ば,検 察官 の立 証 はい きお い刑 事処 分 を前 提 と した罪質 の軽重 ・被 害 法益 の大 小 に力点 を置 か ざ るをえ ない。 こ こに,検 察 官関与 に よる必然 的 な傾 向 と

して刑罰優 先 主義 が生 まれ て くる(拙 稿 『 前掲書』207頁)。

次 に,検 察 官先議 と保 護処 分 との 関連 か ら,検 察官 に与 え られた不起 訴処 分 の問 題 を検 討 しよ う。要 綱 は 「 検 察官 は,青 年 の被 疑事 件 につ いて捜査 を遂 げた結果, 犯 罪 の嫌 疑 があ る と思料 す る場 合 にお い て も,刑 事 訴訟 法 の定 め る ところに従 い, 公 訴 を提 起 しな い こ とが で きる」(要 綱15)と す る。 こ こで,「 刑事 訴訟 法 の定 め る

ところ に従 い」 とは,刑 事 訴訟 法248条 の 「 起訴 便 宜 主義」 を指 してい るが,青 年 事 件す べ て を刑事 手 続 に乗 せ るこ とにな った ので,刑 事訴 訟 法 の原 則(起 訴猶予) が 青 年 に対 して も適 用 され る こ と 自体 に は論 理 的整 合 性 は存 在 す る。 問 題 は,起 訴 猶予 が認 め られ るの は,青 年 に対 して刑 事処 分 も保 護処 分 も必 要 と しない と きに限 られ る(要 綱15説 明)か ら,こ の場 合検 察官 に保 護 処 分 につ い て の実質 的 な終 局 的 決定権 を与 え るこ とが妥 当か,ま た その判断 が可 能か にあ る。

成 人事 件 の場 合,「 犯 人 の性 格,年 齢及 び境 遇,犯 罪 の軽 重 及 び情状並 び に犯罪

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後 の状 況 によ り」(刑 訴法248条)起 訴猶 予 が認 め られ るが,青 年 事 件 にあ って も事 情 は同 じで あ るとい う(要 綱説明)。 しか し,成 人事件 の起訴 猶 予 の判 断 と青 年事件 の保護 処分 につ い ての判 断 を同次元 で論 ず る こ とは到底 許 され ない。 けだ し,保 護 処分 は青少 年 の人格 可塑性 に期待 す る教 育的 ・福 祉 的処分 で あ るか らで あ る。保護 処分 が必要 か否 か の判 断 は,対 象者 に対 す る徹 底 的 な人格 調査 ない し環境 調査 が必 要 であ る。検察 官 は,犯 罪捜査 の専 門家 で あ って も,教 育 的 ・福祉 的配慮 を必要 と す る 『 要保 護性 認 定』 の ための人格 ・環 境調査 をす る専 門家 で は ない。 この意味 で 検 察官 が,保 護処分 につい ての実 質 的 な決定 を行 うことは妥 当 で はない。 また判 断 は可能 か とい う問題 も,捜 査段 階 で判 決前調査 を認 めない要 綱 の立場 で,検 察官 が 捜査 中 にえ られ た資料 だ けで保 護 処分 に付 すべ きか どうか の判 断 は不 可能 に近 い。

だか らとい って,い まだ被疑 者 の段 階で 「 本格 的」 な人格 ・環境 調査 をす る こと自 体 は,刑 事 訴訟法 の原 則 であ る 「 起訴状 一本主 義」 に も反 し,同 時 に人権 保 障 とく にプ ライヴ ァシ0の 観 点 か ら到底 是認 で きない。 したが って,検 察 官 は,保 護 処分 につ いて不 起訴 処分 に付 す る とい うよ うな終局 的判 断 を行 うべ きで はない25)。

以上 要 す るに,検 察官先 議 の最大 の主 眼 は,年 長 少年 に対 す る保 護優 先主義 か ら 刑 罰優 先 主義 に修正 し,そ れ に よって社 会 防衛 を図 る とい う点 にあ った。

(3)昭 和46年 の 「 少年 法改正 要綱 」 が法制 審議会 に諮 問 され,こ れ を受 け審議会 内 に少 年法特 別部 会(以 下 「 部会」)が 設置 され た。部会 は,激 しい議 論 の末 昭和51 年11月 『 中間報告』 を ま とめ,翌52年6月 にこれ を法務 大 臣 に答 申 した。部 会 での 審 議 は,「 青 年層 設 置」 な どの問題 で 激 しい論 争 が くり広 げ られ,収 拾 困難 と見 え た ため,部 会 は 「 要綱 」 に捕 らわれ るこ とな く,大 方 の意 見が 一致 した ところで こ の 『 中間報告 』 をま とめ た。

中間報告 は,現 行少 年法 の基 本 的構二 造 の範 囲内 で さ しあた り改善す べ き事項 を答 申 して い る。 その要 点 は,① 少 年 の権 利 保 障強化(附 添人制度の拡充,事 実認定手続 の整備など),② 年 長少 年 の重罪事 件 に対 し,検 察官 の審判 へ の 出席権 と処 分 決定等 に対 す る抗 告権 の付 与,中 間 ・年少 少年 の事件 に対 し,検 察官 が裁 判官 の許 可 をえ て審 判 に 出席 す る こ と,③ 捜査 機 関 に よる不 送致処 分 を認 め る こ と,④ 保 護 処分 の 多様化 と弾 力化 を図 る,と い う4点 に ま とめ られ る。 中間報告 が,少 年 の権利 保 障 強化 と保 護処分 の多様化 と弾 力化 を図 る と した方 向性 を示 した こ とに は一応 の評価 はで きる26)。問題 は,要 点 の② にあ る。 これ に よ り,中 間報告 全体 の危 険性 が 明 ら か にな る。

中 間報 告 で は,少 年 法 の 「 全件 送致 主義」 は建 前 と して維 持 され たが,少 年審 判 手 続 に は認 め られ なか った検 察官 の審 判へ の立 ち会 い を認 めて い る。 ま さに 「 検 察 官 関与」 で あ る。 しか も,そ れ は年長 少年 だ けで はな く,裁 判官 の許可 が必 要 であ る と は い え 中 問 ・年 少 少 年 の 審 判 に対 して も認 め られ て い る。 と こ ろ が,こ こ で の 検 察官 の立 ち会 いの 内容 が全 く明示 され てお らず,要 綱 の検 察官 関与 と違 って,検 察 官 の役 割 が不 明で あ る。検 察官 は,た だ審判 に立 ち会 い,処 分 決定 につ い て不服

申 し立 て(抗 告権)が 与 え られて い るだ けなの か,そ れ と も検 察 官 も審判 で 意見 陳 述 で きる とい うこ とを含 んで い るのか。 いず れ にせ よ,現 行 の審 判構 造 の中で の少

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年 審判へ の検 察官 関与 は保 護処 分 の もつ 内容 を変 質 させ る もの であ り,強 いて は少 年法 の基 本構造 を破壊 す る危 険性 を内在 させ て い る と言 わ ざるをえ ない27)。

(4)以 上,昭 和41年 以 降 の少 年法 改正 論議 の概 略 を検討 して来 たので あ るが,改 正 論議 の背 景 にあ る少 年非行 ・犯罪 の動 向が,そ の発 生件 数 にお いて激増 し,し か

もその 頃の少 年 非行 の特 徴 と して,『 非行低 年 齢化 』 の傾 向が顕 著 とな って来 た に もか かわ らず,当 時 は年長 少年 に対 す る処 理 ・処 遇 が 問題 で あ り,今 日の年少 少年 の犯 罪 ・非行 に対 す る 「 少年 法改 正」 の ような反 応 はほ とん ど起 きてい ない。

4.少 年法 制 の在 り方

(1)現 行 少年 法 は,極 め て優 れた特色 を もち,制 定以 来少 年法制 におい て有効 に 機 能 して きた と思 われ る。 それ ゆえ に,昭 和41年 以 降 の法務省 に よる強 力 な 『 少 年 法全面 改正構想 』 に打 ち勝 ち,改 正 論議 に終止 符 が打 たれ たので あ る。 しか し,現 行 少年 法 に全 く問題 が ない とい うわ けで はない。例 えば重 要 な問題 と して,法 務省

も主張 してい た少 年 の人権 保 障強化 の観点 か ら 「 少 年審判 にお ける手 続構造 」 の 問 題,「 非行 事 実認 定 手続 」 の 問題,さ らに は 「 少年 の個別 処 遇」 の徹 底 の 問題等 が それで あ る。 これ らの問題 をめ ぐって,水 面 下 で法務 省 ・最高裁 判所 ・日本弁 護士 連合 会 の三者 協議 が,定 期 的 に行 われ て きてい た28)。ところが,昨 年 か ら今 年 にか けて 中学 生 に よる神 戸連 続殺 人事件,バ タフライナ イ フに よる殺 傷事件 な どの凶悪 犯 罪が 多発 し,『 少年 法 改正 論議 』 が再 び活 発 にな って きた。 そ こで本章 で は,今

日の 『 少年 法改 正 問題』 の論 点が どの辺 た りにあ るのか,ま た本 当 に 『 い ま少年 法 の改正 が必 要 なの か』 を検 討 して い こ う。

(2>今 回の少 年法改 正論 議 にお け る中心 とな る論 点 は,殺 人の ような凶悪犯 罪 に あ って は中学生 で あ って も刑 罰 を科 すべ きで は ないか。つ ま り刑罰 年齢 の引 き下 げ の問題 で あ る。

現行 少年 法 で は,14才 以 上16才 未満 の 少年犯 罪 には刑事 責任 能 力 は あ る(刑 法41 条)も の の,公 開の法 廷 に立 つ こ と も刑 罰 を科 せ られ る こ ともな く,家 庭裁 判所 が 保 護処分 を決 定 す る。保 護処 分 に は(1)保護観 察所 の保 護観 察,(2)教 護 院 ・養護施 設 へ の送 致,(3)少 年 院 送致 の3種 類 が あ る(法24条)。 神 戸 事件 を契 機 に した梶 山官 房 長官 の少年 法改正 の発 言 は,ま さに この よ うな少 年 に対 す る手 厚 い保 護i規定 が さ らに少年犯 罪 を助長 しかね な い とい う懸念 の表 明で あ った。 しか し,最 高裁 判所 お よび 日本 弁護士 連合 会等 は,少 年法 改正 に慎重 な態 度 を示 して い る。 法務省 もこの 段 階で は,神 戸 の事件 は 「 特 異 の事 件」 と強調 した うえで 「 一つ の事件 を もって, 直 ち に少 年法 改 正の動 きは開始 しない」(平成9年7月25日 原田刑事局長談話)と い う 慎 重 な態度 を取 って い た。 とこ ろが,今 年 の1月28日,13才 の中学 生(触 法少年) のバ タフ ライナ イ フに よる所謂 「 黒磯 北 中女性 教 師刺殺事 件」 を契機 に,連 鎖反応 的 に中学 生 に よるナ イ フ殺傷 事件 が発 生 した29)。こ こに,今 回の 「 少 年 法見 直 し」

の世論 と3月2日 の下稲葉 法務 大 臣の 『 少年法 改正』の意見 が表 明 された ので あ る。

こ こで の議 論 は,刑 法41条(刑 事未成年 「14歳に満たない者の行為 は,罰 しない」)の 改 正 は視 野 におかれ てい ない ので触法 少年 につ いて は現行 法通 りであ るが,14才 以

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上16才 未満 の少年 につ い て,少 年法20条30)の改正 を求 めてい るので あ る。同条 は 『 逆 送』 の規 定 であ るが,そ の但書 は,刑 法41条 の刑事 未成 年 の規定 を実 質的 に16才 未 満 の少 年 まで引 き上 げて い る。今 回 の改正論 者 はこの但 書 の削 除 を求 め,年 少少 年 に対 して も刑 罰 で対 処 しよう と主張 して い るので あ る。改正 を主 張す る論者 は,最 近 のイギ リス の小 学生 に よる誘拐 殺 人,ア メ リカにお ける学校 内 の銃 乱射事 件 に対 す る厳 罰主 義 で臨 む各 国の姿勢 を想起 して い るの か もしれ ない。 も し,そ うだす れ

ば この ような姿 勢 は早計 過 ぎる。 ア メ リカを例 に とってみて も,国 民 の多 くが銃 を 所持 し,少 年 た ちが容易 に銃 を手 にす るこ とがで き,学 校 の玄 関 には金属 探 知機 が 備 えて あ る所 もあ る とい う国 と日本 を同 じ く考 え る ことはで きない。す なわ ち,わ が 国 の 中学 生 に よる神 戸事件 あ るい は ナイ フ殺 傷事 件等 の一連 の凶悪犯 罪(こ こで 犯罪 とは,刑 法学的な意味での犯罪概念 ではない)を 一 般化 す る こ とが で きるか とい う

問題 であ る。

神戸 の事件 にあ って は,犯 行 の動機 ・殺 害後 の残酷 な死体 損壊 行為 な ど今 まで の 少年犯 罪 にはない特徴 を示 した犯罪 で あ った。 しか し,こ の よ うな事 件 が今後 連続 して起 きる とは到底 考 え に くい。 それ故 この事 件 は,法 務 省 の原 田刑事 局長 が正 当 に も指 摘 した よ うに,『 特 異 な事 件』 で あ る と評 価 で きる。 また ナ イ フ殺傷 事 件 に あ って も,確 か に今 年 の1月 以来 「ナ イフ症 候群 」 と も思 わ れ るよ うな事件 が多発

した こ とは事 実 であ る。 だが,そ れ以 後 中学 生 によ るナ イ フ殺傷 事件 は沈静 化 して い る。 わが 国 の中学生 の誰 もが 日常 的 にナイ フ を所持 してそ れ を 「自傷 他 害」 に用 い る とい う行 動様 式 は,存 在 して いない。 したが って,今 回の一連 の ナイ フ殺傷 事 件 を一般化 す るこ とはで きない。 む しろ重 要 な こ とは,子 ど もに対 して 日常 的 にナ イフの危 険 性を教育(最 近の子 どもは昔 の子 どもと違 って,ナ イフで鉛筆 を削ることを体 験することも希であ り,誤 って自か らを傷つけた体験 もほとんどない。 したがって,子 ども 達はナイフの刺傷 による痛みに対す る現実感をもてないのではないか)す る こと にある。

以 上要 す るに,今 回 の一連 の 中学 生 に よる凶悪犯 罪 を一般化 して,中 学生 の 凶悪 犯 罪 に厳 罰主義 で対 処す る とい うこ とには,そ の根 拠 が薄 い と言 わ ねば な らない。

わが 少年 法 は,基 本的 に保 護処 分 と刑事処 分 を少 年法 の 目的 に照 ら して弾力 的 に 選 択 で きるよ うに し,こ れ を受 けて家 庭裁 判所 は,司 法機 能 と福 祉機 能 の調和,す

なわち 「司法福祉 」 を 目指す とい う伝 統 を築 きあ げて きた31)。この ような法 と実務 にお ける基 本 的理念 か ら少 年法20条 を見 るな らば,本 条 の趣 旨は,16才 以上 の少年 に対 して 「 本条 の送 致 は少年事件 処 理 の全 くの例外 で は な く,家 庭 裁判所 が福祉 機 能 を持 つ裁 判所 で あ りなが ら,司 法 裁判所 と して,ま ず 少年 の保護 を先 に考 えなが ら,少 年 と社 会の保 護 を ともに考慮 に入れつ つ,少 年 の事 案 を判 断 し,え り分 け を なす 」 もの であ る32)。他 方,年 少 少年 に対 して は特別 予 防の観 点 か ら,保 護 処分優 先 が 図 られ,刑 事処 分 を断念 したので あ る。 こ こで,本 条但書 の削除 の問題 を一般 予 防 と特 別予 防 の観 点 か ら,検 討 してみ よう。

一般予 防 的観点 これ は刑 罰 の もつ威 嚇 に よる犯罪抑 止力 の 問題で あ る。14才 ・ 15才 の年少少 年 に厳 罰 主義 が,犯 罪抑 止力 を持つ とは到 底期待 で きない。 この時期 の少年 は,人 格形 成途 上 の真 っ只 中にあ り,情 緒 的 に不 安定 で,し か も自己の行動

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の結果 を冷静 に予 見す る こ とが で きず,短 絡 的 な行 動 に出る可能 性が非 常 に高 い年 代 で あ る。 か りに刑 罰 に一般 予 防効果 が あ る と して も,そ れが特 にこの年少 少年 に 強 く働 くとは思 えな い。 したが って,年 少少年 に厳 罰主 義 を採 用 して も,こ の年齢 層 の凶悪 犯罪 が抑止 され るこ とは期待 で きないで あ ろ う。 これ は少 年犯 罪 に対 す る 抜 本 的 な解 決 にはな らない。

特別 予 防の観 点 一 般 に,刑 罰 の改善効 果 は成 人 に対 して も期 待 を もて ない と さ れ てお り,特 に青 少年 の ような若 年者 に対 して は,刑 罰 は苛 酷 で あ り,む しろそ の 悪 性 を定着 させ る危険性 のが大 きい とされてい る。 この よ うな認 識 の もと,少 年 に 対 す る非 刑罰 的 な処 遇制 度 が発 展 して きたので はな いか。 しか も,一 連 の改 正論議 で も法務省 が 主張 して きた 『 少 年 に対 す る裁判 の感 銘力』 に よる改善効 果 とい う観 点 か ら して も,現 行 法 を前 提 とす る限 り,年 少 少年 は検察 官 の起訴 に よ り管轄 の地 方裁判所 で刑 事 事件 と して被告 人 の座 に立 つ こ とにな る。公 開 の裁判 で彼 の犯 した 罪が 白 日の もとに晒 され る こ とにな るか ら,年 少少年 は反抗 心 をか きたて る こ とが 多 く,改 善 効果 とい う点 で はマ イナ スが大 きい33)。いずれ に して も,有 罪 判決 が確 定 す れ ば,年 少少年 に は 「 犯 罪者」 とい うレ ッテル が貼 られ,刑 事施設 に収 容 され た心 理 的疎外感 等 に よ り刑罰 の改 善効果 は期待 で きず,む しろ少 年 の社 会復 帰 に大

きな困難 を と もな うこ とにな る。

以 上要 す るに,「 年少 少 年 の殺 人 の ような凶悪 犯 罪 に対 し刑 罰 を科 す」 とい う こ とは,そ こに は一般予 防 ・特 別 予防 の観 点か ら も犯 罪 ・非 行 を抑 止 す る とい う根 拠 が ない ので あ るか ら,「 国 民 の法感 情 ・社 会感 情 あ る いは国民 の治安 感情 を満足 さ せ るだ けで あ り,刑 事 政策 的 な配 慮 とは全 く無縁 な もので あ る。 これ は,少 年法 制 を刑 事政 策 の一環 としてで はな く,治 安法制 の一 環 と して と らえて い る ことを示 し てい る・ い くら厳 罰主義 で 臨 もうと また法 を改正 しよう とも,こ れ だけで は年少 少 年 の凶悪 犯罪 を阻止 す るこ とは不 可 能で あ る34)。この意 味で,刑 罰 年令 を引 き下 げ

て14・15才 の年 少少 年 に対 す る刑事 処分 を認 め る こ とには反対 で あ る。

(3)次 に,少 年法 制 の在 り方 として少 年審判 にお ける 『 裁判 官 の合議制 』 につ い て若干 の検 討 を してみ よう。

現行 少年 法 の大 きな特色 は,保 護処 分 が少年 の 身体 の 自由の拘 束 を伴 う もので あ りなが ら,審 判手 続 の規定 が欠 けてい る ところ にあ る。調査 の結 果,審 判 開始 の決 定 が な され れ ば,審 判 は,原 則 と して,単 独 の裁判 官(調 査にあた った家庭裁判所調 査官は同席す る)と 少 年 の二 人 で 「 懇切 を旨 と して,な ごや か に」 非公 開で行 わ れ るこ と にな る(法22条)。 す な わ ち審 判 の主 宰者 は裁 判官 で あ り,手 続 は公 判 手 続 と違 って対 審構 造 によ る訴訟 の形式 を取 らず,少 年 の特性 に着 目 して手 続 や審理 の 方式 は,裁 判 官 の裁量 と運用 に任 せ る とい うイ ンフ オーマル な形 式 を採 用 して い る。

この背景 には,『 パ レ ンス ・バ トリエ(国 親)』 思想 が あ る。

少 年審 判で は 「 非行 事実 の認定 」 と当該少 年 の 「 要 保護 性 の認定」が重要 で あ る。

ところで,少 年 審判 の対 象 をめ ぐる問題 で,審 判 の対 象 は 「 要 保護 性 の認 定 」 にあ る とい う考 え方 もないで はないが35),し か し,保 護手 続全体 が少 年 の 「 健 全 な育成 」 に資 す るため の もで あ る とす るな らば,保 護処分 決 定 の重 要 な要素 となる 「 非行 事

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参照

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