現代 の少 年 法制 の在 り方
一 少 年 法改 正 論 議 を契機 と して一
寺 島 建 一・
1.は じめに
(1)最 近,青 少年 をめ ぐる諸 問題 の 中で,中 学生 に よる殺 人等 の凶悪犯 罪 が多発 し,そ れ ら事件 の犯行 動機 の異 常 さ とマス コ ミに よるセ ンセ ーシ ョナ ル な報 道 と相 侯 って,少 年犯 罪 が大 き くク ローズ ア ップ され てい る。昨年 か ら今 年 にか けて,い
わゆ る神 戸 須 磨 区 にお け る 「 酒鬼 薔薇 聖 斗事 件」,栃 木県黒 磯 にお け るナ イ フに よ る 「 黒磯 北 中女 性教 師刺殺 事件 」,さ らに は東 京江 戸川 区 の短 銃 欲 しさか らの ナ イ フ に よる 「 警 察官 襲撃 事件 」 な ど全 国各地 で 中学 生 のバ タフ ライ ナイ フに よる犯 罪 が,連 鎖反応 的に起 きて い る。
特 に神 戸須 磨 区 の事 件 で は,そ の犯 行 の猟 奇性 と被 疑者 を逮 捕 してみ た ら中学3 年生 の少年(事 件当時14歳)で あ った こ とか ら 日本 国 中 を揺 るが した こ とは記憶 に 新 しい。 しか も,被 疑者少 年が 中学3年 生で,少 年 法上彼 に刑 罰 を科 す こ とがで き ない(法20条)こ とが明 らか にな った。 少年 逮 捕 の直後,梶 山官房 長官 は,談 話 の 中で現 行少 年 法 におい て この よ うな 凶悪 な少 年犯 罪者 に対 し刑 罰 を科 す こ とがで き ない こ とは不合 理 であ る とい う点 か ら少年法 『 改 正』 の ア ドバ ル ー ンを上 げた。 こ れ に同調 す るか の よ うにマ ス コ ミ,識 者,世 論 が沸 き上 が って きた こ とは周 知 の通 りで あ る。 その後,黒 磯 のナ イフ刺 殺 事件 を契機 に連鎖 反応 的 に発生 した中学生 の ナ イフ に よる殺傷 事件 は,「 少 年 法見 直 し」 の世 論1)を いやが うえ に も盛 り上 げた。
この ような世論 を受 けた形 で,下 稲 葉 法務 大 臣 は少年 法 『 改 正』 に強 い意欲 を示 し た談話 を発 表 した2)。 これ に よ りわが 国の 『 少 年 法改正 論議』 は,0気 に加速 され
るこ とが予 測で きる。
(2)少 年3)が 国家 の次代 の担 い手,す なわ ち,少 年 は人格 の 「 可塑 性」 に富 み, 人格形 成途 上 にあ る将来 の国家 を背負 う人材 で あ るこ とは,自 明 の理 で あ る。発 展 す る国家 の 中心 をなす もの は,常 に青少年 のバ イ タ リテ ィー浴れ る力 で あ り,少 年 の健全 な育 成 を図 る こ とは,世 の親 の願 いで あ る と ともに,国 家社会 に課 せ られ た 責 務 で あ る。 この よ う な観 点 か ら少 年 の健 全 育 成 を図 る た め に,児 童 福 祉 法,学 校 教 育 法,教 育基 本法,民 事 法 あ るい は行 政法等 広 い領域 にわた って少年 が,厚 く保 護 され てい る。 したが って,た とえ その少年 が犯罪 ・非行 少年 で あ った と して も, 少年 が厚 く保護 され なけれ ばな らない こ とは明 らかで あ る。た だ犯 罪 ・非行 少年 は, 他 の少年 と違 って社 会逸脱 行動 を行 った とい う点 に,そ の特異 性 があ る。 この よ う
1
な少年 に対 して少年 自 らが 「 連帯 性 あ る社会 の一員 と して風 雪 に耐 えて生 き抜 く」
とい う積 極 的 な内容 を もった教育 を施 す責務 が,国 家 に課せ られて い る。
少年 の社会 逸脱行 動 に対 す る社 会統 制 の法 的枠組 み を 『 少 年法 制』 とい う。少 年 法 制 には,少 年法,児 童福 祉 法,少 年 院法 さ らに は犯 罪者予 防更 生法等 の法律 が存 在 す る。 この よ うな少年 法制 は,刑 事政 策的側 面 と福 祉 政策 的側 面の交差 す る特殊 領域 にあ る。 したが って,た とえその少 年が犯 罪 ・非行少 年 であ った と して も,少 年 に対 す る処遇 が成 人犯罪 者 のそ れ と同 じレベ ルで考 え られ ない ことは言 うまで も ない。少 年 法 制 で は,少 年 の犯 罪 ・非行 か ら社 会 を防衛(刑 事政策的側面)す る こ と と少年 を犯 罪 ・非 行 か ら立 ち直 させ る(福 祉的側面)と い う二つ の効 果 が期 待 さ れて い る。 この二つ の側 面 を体現 してい るのが少 年法 で あ る。 したが って,こ の少 年 法 制 の 中心 とな る基 本 法 が少 年 法(昭 和23年 制定)で あ る。少 年 法 第1条 は 「こ の法律 は,少 年 の健 全 な育成 を期 し,非 行 のあ る少年 に対 して性格 の矯 正及 び環境 の調 整 に関 す る保護 処分 を行 うとと もに,少 年及 び少年 の福祉 を害す る成人 の刑事 事件 につ い て特 別 の措 置 を講 ず る こ とを 目的 とす る」 と規定 す る。 この 「 少 年 の健 全 な育成 を期」 す る とい う規定 が,上 の二つ の側面 を体現 す る もので あ り,少 年法
を貫 く指導 理念 で あ る4)。
(3)わ が 国 の少年法 制 の枠 組 みの 中で,最 近 の少 年 に よる凶悪犯 罪 の多 発化 は, 政府 ・自民党 あ るいは 「 極悪 非道 な少 年 に は厳 罰」 に とい った国民世 論 の主張 の よ
うに,少 年 の健全 育成 を 目的 とす る少 年法 の枠組 み を変 えな けれ ばな らない ほ ど切 迫 した状 況 で あ ろ うか 。 また,こ れ ら少年 に よる一連 の事 件 は,「 特殊 な事件 」 な のか,「 一般 的 な事件 」 なの か。 これ には事 件 の分析 が必要 で あ る。
少年法 の改正 は,少 年 法制 の根幹 にかか わ る もので あ る。 したが って,そ の改正 論議 は,事 件 の残虐性 あ るい は極悪 非道 とい った表層 だ けを見 た感 情論 で は,将 来 の国家 また少年 に とって も大 きな禍根 を残す こ とにな る。 そ こで本稿 で は この よう な問題 意識 の もと,「 最近 の少年 に よる非行 ・犯 罪 の動 向」,「少 年 法改 正論 議 の変 遷 ・経 過」 そ して 「 い ま少 年法 改正 は必要 か」 とい う点 を検 討 してみ たい。
2.最 近 の少 年 に よる非 行 ・犯罪 の動 向
(1)い まや少年 に よる非行 ・犯 罪 の問題 は,ひ と りわが国 の問題 だ けで はな く, 先進諸 国 に共通 した社 会病理 現 象 とな ってい る。 イギ リス にお ける10才 の2人 組 少 年 に よる幼児 誘拐 殺人事 件 はロ ン ドン市民 だ けで はな く,イ ギ リス 国民全体 を少 年 た ちに対 す る非難 と興奮 の土 甘禍 に陥 れ た ことは記1意に新 しい。 さ らに最近,ア メ リ カ社 会 を震 憾 させ た学 校 内 にお け る生徒 の銃乱 射事 件 は,ア メ リカ銃社 会(米 国合 衆国憲法修正2条5))の 見 直 しと少 年犯 罪者 に対 す る厳 罰主義 の要 求 を もた ら した。
わが 国の場合 も少 年非行 ・犯 罪 の発 生 の状況 は,こ れ ら先進 諸 国 と同 じレベ ルにあ る とし,少 年 法 の見 直 し論 ・少年 犯罪 者 に対 す る厳 罰主 義 の主張 が,活 発 にな され る傾 向 が 出て きた。
すで に述べ た ように,青 少 年 は将来 の 日本 を担 う人材 で あ る。青 少年期 は,自 分 と社会 のかか わ りや ものの見 方 ・考 え方 な どを養 い,社 会 に適 応 す るため の試行錯
2
誤 の期 間 であ る。 その ため には,青 少 年が健 全 に成長 す るた めの環境 が不可 欠 であ る。 この意 味で 国家 は,青 少年 の福 祉 を増進 し,国 家 の将 来 の担 い手 にふ さわ しい 青少年 に育 成す るための環境 整備,社 会保 障 の充実 に努 め る積極 的義務 を負 ってい る。 しか し,青 少 年 を取 り巻 く日本 の現状 は,彼 らが健全 に成 長す るための環境 と は程遠 い と言 わね ばな らない。現 在 ほ ど社 会構造 ・教 育 シス テム ・青 少年 に対 す る 福 祉等 の観 点 か ら,青 少年 に対 す る総 合 的 な施 策が 考 え られ な ければ な らない時期
はない6)。 そ うだ とす れば,青 少年 を取 り巻 く環境 と して,現 代社 会 の恥 部 とい わ れ る政 治家 ・高級 官僚 ・銀 行 さ らに証 券会社 首脳 に よるス キ ャ ンダル,い わゆ るホ ワイ トカ ラー犯 罪,そ して この よ うなエ リー ト養成 を志 向す る教 育 システ ム等 の青 少年 に与 える影 響 とい う視 点が,新 た に考 え られ な ければ な らない。
少 年 の非 行 ・犯罪 の要 因 は,も ち ろん少年 自身 の個人 的要 因が存在 す る こ とは否 定 で きない が,少 年 に与 え る この ような社 会 的環境 も見 逃せ ない要 因(社 会的要因) で あ る。 この意味 で非行 ・犯 罪少年 は現代 社 会 ・教 育制 度 にお け る犠牲 者 であ る と い って も過言 で はない 。
そ こで,少 年法 の枠組 み を変 え る とい う 「 少年 法改正 の必 要性 」 を検 討 す る前提 と して,少 年 非行 の実態 つ ま り最近 の少 年非行 の動 向 を検 討 してみ よう。
(2)少 年非行 の動 向 を見 る前 に非 行少 年 の概 念 を確認 してお こう。 この概 念 は少 年 法上 の もの であ り,非 行少 年 は犯罪 少年(罪 を犯 した14才以上20才未満 の少年),触 法 少年(刑 罰法令に触 れる行為を行 った14才未満の少年),虞 犯 少年(保 護者の正当な監 督 に服 さない性癖があること等 の性格,行 状等か ら判断 して,将 来罪を犯 し,ま たは刑罰法 令 に触れる行為 をす るおそれのある20才未満の少年)を い う(法3条)。 非行 とは これ ら の少年 が 行 った行 為 で あ る とい うこ と を前提 と して,以 下刑 法 犯少 年(犯 罪少年 の うち刑法犯の交通関係 に係 わる業務上過失致死傷罪,特 別刑法犯は除 く)を 中心 に少 年非 行 の動 向 を見 てみ よう。
『 青 少 年 白書 』(平 成9年 度版)は,「 最 近 の少年 非行 の質的特 徴 と して は,平 成8 年 に強 盗 で補導 された刑法 犯少年 の うち非行 少 年 と して補 導 され た経 験の ない者が 50%を 超 え るな ど,そ れ まで非行 を犯 した こ との ない少年 が い きな り重大 事件 に走 るケース が 目立 ってい る。 また,カ ラオケ代 やゲ ー ム代欲 しさの強 盗 や性 の逸 脱行 為 とい った遊興 費 を得 るた めの非行 が 目立 って お り,『遊 び,ス リル や好 奇心』 を 動 機 とす る非行 は減少 して い る」(128頁)と 最 近 の非行 少年 の特徴 を総括 して い る。
平成8年 の警 察 に検 挙 され た刑 法犯 少 年 の数 は,133,581人 とな り8年 ぶ りに増 加 した。 そ こで,こ の ような刑 法犯 少年 の増加 の推移 を見 るため過去10年 の警 察 に よ り検 挙 ・補導 された非行 少年 の数 の推移 を示 した ものが,表1で あ る。表1が 示 す とお り,昭 和63年 を ピー クに平 成7年 まで の警 察 に検挙 ・補 導 され た各 非行 少年 の 数 は,減 少傾 向 を示 して きた。 そ して平 成8年 は,刑 法 犯 少年 が前 年度 よ り約 7,300人 増加 したの であ る。 そ こで,刑 法 犯少 年 の動 向 を分析 す る前 提 と して,主 要 刑法 犯少 年7)の 戦後 の推 移 を示 した ものが,図1で ある。
図1か ら も明 らかな ように,戦 後 の刑 法犯少年 の推 移 に は,昭 和26年 をピー ク と す る第1の 波,同39年 を ピー ク とす る第2の 波,そ して増 加傾 向 に若干 のup‑down
3
表1警 察 に補 導 され た非 行 少 年 の 推 移(昭 和62〜 平 成8年) 年
区分
昭和 62 63
平成
元 2 3 4 5 6 7 8
刑 法 犯 少 年 187,192 193,206 165,053 154,168 149,663 133,882 133,132 131,268 126,249 133,581 特 別 法 犯 少 年 29,318 30,264 27,260
...26,331 20,183 14,552 12,270 10,436 9,369 触 法 少 年(刑 法) 40,780 38,004 34,591 28,!60 27,434 23.2$5 25,168 23,811
......23,242 触 法少 年(特別法) 584 587 462 426 365 277 239 233 261 245
ぐ 犯 少 年 3,770 3,528 3,540 3,106 2,773 2,365 1,892 1,630 1,567 1,652
資 料:『 警 察 庁 』
(注)1刑 法犯 少 年 とは,「 刑 法 」(明40法45>,「 盗 犯 等 ノ 防 止 及 処 分 二 関 ス ル法 律 」(昭5法 9),「 暴 力 行 為 等 処 罰 二 関 ス ル 法律 」(大15法60),「 決 闘 罪 二 関 ス ル 件 」(明22法34),
「 爆 発 物 取 締 罰 則 」(明17太 政 官 布 告32),「 航 空 機iの強 取 等 の処 罰 に関 す る法 律 」〈 昭45 法68),「 火 炎 び ん の使 用 等 の 処 罰 に 関 す る 法 律 」(昭47法17),「 航 空 の 危 険 を生 じ させ
る行 為 等 の 処 罰 に 関す る法 律 」(昭49法87),「 人 質 に よる 強 要 行 為 等 の 処 罰 に 関す る 法 律 」(昭53法48),「流 通 食 品 へ の毒 物 の 混 入 等 の 防 止 に 関す る特 別 措 置 法 」(昭62法103),
「 サ リ ン等 に よ る人 身被 害 の 防 止 に 関 す る法 律 」(平7法78)に 規 定 す る 罪(交 通 事 故 に 係 る業 務 上(重)過 失 致 死 傷 を 除 く。)で 警 察 に 補 導 され た14歳 以 上20歳 未 満 の 者 を い
う。
2特 別 法 犯 少 年 と は,上 記1以 外 の 罪(交 通 事 故 に係 る業 務 上(重)過 失 致 死 傷 や 「 道 路 交 通 法 」(昭35法105),「 自動 車 の保 管 場 所 の確 保 等 に 関す る 法 律 」(昭37法145)に 規 定 す る 罪 を除 く。)で警 察 に補 導 され た14歳 以 上20歳 未 満 の 者 を い う。
3触 法 少 年 とは,刑 罰 法 令 に触 れ る行 為 を した14歳 未満 の 者 を い う。
4ぐ 犯 少 年 とは,性 格,行 状 等 か ら判 断 して,将 来,罪 を犯 し,又 は 刑 罰 法 令 に 触 れ る行 為 を す る お そ れ の あ る20歳 未 満 の 者 を い う。
図1主 要 刑 法 犯 少 年 の 人 員 及 び 人 口比 の 推 移(昭 和24〜 平 成8年)
(万 人) 20 19 18 17 16 15
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(注)主 要 刑 法 犯 の 統 計 を 用 い た の は,少 年 非 行 の推 移 を一 貫 した統 計 に よ っ て と ら え る た め で あ る 。
資料:警 察 庁 『 警 察 白書 』
が あ っ た が,昭 和58年 か ら 昭 和63年 の 第3の 波 の 形 成 と い う 三 つ の 山 が 見 ら れ る 。
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それ以後,平 成7年 に至 る まで刑 法犯少 年 の数 は一貫 して減 少傾 向 にあ った。
平成9年 度,同10年 度 の刑 法犯 少年 の推移 が発表 されて い ない現 在,確 実 な とこ ろ は不 明で あ るが,平 成8年 度 の刑 法犯 少年 の増加 率 は,い まだ第3の 波 が形成 さ れ る昭和48年 以 降 のそ れ よ りも小 さい と思 われ る(末 だ,刑 法犯少年の増加が突出 し たとい う発表 もマスコ ミ報道 もない)。 そ うだ とす れ ば,こ こに大 きな疑 問が沸 いて く る。す なわ ち,最 近 の少年 非行 の増加 は,少 年法 の枠組 み を変 え る 『 少年 法 の改正』
が なけれ ば対 処 で きない ほ どの状 況 にあ るのか,と い う疑 問 で ある。第3の 波 の ピー ク時 の193,206人(昭 和63年)も の刑 法犯 少年 の発生 数 にあ って も少年 法 を改正 す る こ とな く,平 成元 年以 降 の一貫 した刑 法犯 少年 の減 少傾 向 を もた ら した。 この こ と は,少 年非行 ・犯 罪 の増 減 は少 年法 改正 の問題 とは相 関関係 にない こ とを示 して い る。 したが って,最 近 の少年非 行 にお け る凶悪 犯増 加が 少年 法改正 の理 由 に な らな い こ とは明 らかで あ る。 少年 法改正 論議 の主 眼が,す で に 「は じめ に」 で も述べ た ように,神 戸事件 とそ の後相次 いで起 きた中学生 の ナイ フ に よる殺 傷事件 の よ うな 凶悪 犯罪 に対 して も 「 刑 罰 を科す こ とがで きない」 ことにあ った こ とは明 らか であ る。 しか も,殺 人 の ような凶悪犯 罪が 中学 生 とい う年 少少年 に よって行 われ た とい う点が,世 論 に大 きな シ ョック を与 え,少 年法見 直 し論 を後 押 しした。
刑法犯 少年 にお ける平成8年 度 の年 齢別検 挙 ・補導状 況 を見 て み よ う。 これ を示 した もの が,図2で あ る。 まず,年 少 少 年(14・15才 の少年)の 動 向 は,昭 和58年 の第3の 波 と軌 を一 に して他 の年 齢層 よ り非行 の増加 を もた ら し,い わゆ る 『 非行 の低年 齢化 』 と特 徴 づ け られて きたが8),そ の後 下 降傾 向 を示 して きた。 しか し, 他 の年 齢層 と比 較す る と依 然 と高 い水準 を示 して きた。平 成8年 の年少 少年 の刑法
犯少 年 全 体 に 占め る割 合 は,中 間少 年(16・17才 の少年)の54,713人(41%),年 長 少 年(18・19才 の少年)の23,242人(17.6%)に 比 べ る と,55,298人(41.4%)と 中間 少 年 よ りも高 い数値 を示 して い る(昭 和41年 か らの年齢別 の推移 については図3を 参
図2刑 法犯少年の年齢別補導状況(平 成8年)
資 料:警 察 庁 「 警 察 白 書 』
5
図3交 通 関 係 業 過 を除 く少 年 刑 法 犯 の 年 齢 層 別 検 挙 人 員 人 口 比 の 推 移
(昭和41年 〜 平 成8年)
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25
20
15
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昭和4145505560平 成27
注1警 察 庁 の 統 計 及 び総 務 庁 統 計 局 の 人 口資 料 に よ る。
2「 人 口比 」は,各 年 齢 層 の 少 年 人 口1,000人 当 た りの 少 年 刑 法 犯 検 挙 人 員 の 比 率 で あ り,触 法 少 年 の 入 口比 算 出 に用 い た 人 口 は10〜13歳 の 人 口で あ る 。 3巻 末 資 料1‑1の 注7に 同 じ。
照)。 この状況 は,依 然 と して 『 非 行低 年 齢化 』 の傾 向 に歯 止 めが かか ってい な い こ とを示 して い る とい って も過言 で はない。 しか も,こ の刑 法犯 少年 の年 齢 の枠 を 16才 まで の少年 に広 げ る と,14才 か ら16才(中 学生,高 校生の低学年)ま で の比 較 的 低 年齢層 の少 年が 占め る割合 は,刑 法犯 少年全 体 の実 に66,3%に なる。 この ような 傾 向 は,少 年 非行 の第1の 波,第2の 波 で は見 られ なか った傾 向で,第3の 波以 降 生 じて きた新 しい傾 向 で ある。 中学 生 ・高校低 学年 の少 年 に よ る犯罪 ・非行 が全体 の60%以 上 を 占める とい うこ とは,少 年 法 自体 の問題 だ けで はな く,こ れ ら年齢層 の非行 増加 の現 象 を社 会病 理現 象 と して捕 らえ直す こ とを要 請 してい る。従 来 の少 年犯罪 に見 られた動機 は,遊 び ・ス リル ・好奇 心 とい った所謂 『 遊 び型 非行』 が多 か った。 ところが最近 の傾 向 は,そ の動機 と して カ ラオケ代 やゲ ー ム代欲 しさか ら 重 大 な強盗 あ るい は性 の逸 脱行為(援 助交際 ・売春など)等 の犯 罪 ・非行 に走 った り, ここ一 連 のナ イ フ殺傷 事件 で 明 らか にな った ように 「 些細 な こ とでキ レテ」殺 人 の よ うな凶悪 犯罪 に走 る とい う短 絡的 な少年犯 罪 が多発 してい る(こ の原因論について は次項で検討す る)。
以下 で少 年法改 正論 議 と係 わ りの あ る少年 に よる凶悪犯 罪 につ いて,そ の動 向 を 見 て み よ う。
平成8年 の包 括罪種 別 刑法 犯少 年9)10)を見 た ものが 図4で あ る。 図4か ら明 らか な よ うに,罪 種別 に刑 法犯少 年 を見 る と,窃 盗犯 が最 も多 く,次 いで 占有離 脱物横 領 の順 に な って お り,殺 人 ・強盗 ・強 姦及 び放火 とい った凶悪犯 の占め る割 合 は, 1.1%の1,496人 で あ る。 この 中で殺 人 は97人,強 盗 は1,082人 で26年 ぶ りに1,000人 を超 えた(表2)。 強 盗 につ いて は,平 成 元 年 か ら漸 増傾 向 に あ った が,そ の要 因 は 「 遊興 費」欲 しさの短 絡 的 な犯 行 を反映 した もので ある こ とが容易 に看取 で きる。
少 年 に よる殺 人 の増減傾 向 を見 るため図5を 示 そ う。図5は,昭 和21年 以 降 にお け る少 年 の殺 人及 び強盗 ・傷害 等 の検 挙 人員 の推移 を見 た もの であ る。殺人 につ い
6
図4刑 法犯少年の包括罪種別補導状況(平 成8年)
凶 悪 犯1,496人(1.1%) そ
資 料=警 察庁 『 警 察 白 書 』
(千 人)
図5凶 悪 犯 の 少 年 検 挙 人 員 の 推 移
(昭和21年 〜 平 成8年)
昭和212530354045505560平 成27
注 警 察 庁 の 統 計 に よ る 。
て は,昭 和40年 代 前半 まで は200人 か ら400人 台 で増減 を繰 り返 していた が,40年 代 後 半 か ら減少 傾 向 を示 し,50年 代 に入 る と100人 を割 り,そ の後 はおお むね70人 か
ら90人 台 で推移 して い る(表2)。
この よ うに見 て くる な らば,平 成9年 の少 年 に よる殺 人 が どの よ うに推 移 したか はい まだ不 明で あ るが,大 幅 に増加 した とい うこ とはな い。問題 は,最 近 中学生 の ナ イフ に よる殺 人が増 え,動 機 も 「 厳 し く注 意 され た」 とか,「 他 か ら無視 され た」
とい う些 細 な きっか け,あ るい は 「キ レタ」 か ら とい う短絡 的 な犯行 が 目立 ってい る。 だか らとい って,中 学生等 の年 少少 年 に よる殺 人 の総数 が,急 激 に増加 したわ けで もない 。に もか かわ らず,こ の年 齢層 の殺人 が大 きな社 会 問題 にな った理 由 は, 動機 の単 純 さとだれ もが所持 で きるバ タフ ライ ナイ フ とい う凶器 の特 殊性 にあ った
7
表2 少 年 刑 法 犯 の 主 要 罪 名 別 検 挙 人 員
(昭和21年 〜 平 成8年) 火 放 髭 携 蠕 響 霧 麗 繋 謝 籔 畿 毅 難 篶 響 轟 難 鋤 蕎 警 饗
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