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イギリスの「プロフィール」および「達成の記録」に関する一考察 谷 口 琢 男*

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茨城大学教育学部紀要(教育科学)40号(1990)245−264       245

イギリスの「プロフィール」および「達成の記録」に関する一考察

谷 口 琢 男*

(1990年9月14日受理)

Profiles and Records of Achievement in England and Wales

Takuo TANIGUCHI

(Received September 14,1990)

は じ め に

イギリスでは1970年代,1980年代を通して人気の高まりを見せた評価に,プロフィールと等級評 価がある。ここではプロフィールと呼ばれる評価を取り上げたいと思う。というのもその成果の上 に教育科学省が,1984年に「政策説明:達成の記録」を発表し,1990年から全国的に各学校におい て「達成の記録」作成の段階に入り,1995年に学校終業(離学)者に提供するというスケジュール になっている。ここでは1970年代1980年代からのプロフィール計画の進展をあとづけ,その人気の 秘密に迫ってみたいと思う。

まず「プロフィール」(Profile)とは評価の用語で,生徒の学業の成績の評価そのものではなく,

評価の一方法によって表現されるもの,ないしは表現されたものを指している。「達成の記録」

(Record of Achievement)とは,学校終業(離学)者に提供されるものをその様に名づけ,在学者 に各学年に1ないし2回程度提供されるものを「プロフィール」といい,累積された「プロフィー ル」資料を要約して編集するものを「達成の記録」としている1)。

D.J.フェアバーンによれば,プロフィールの役割は次のものを提供してきたと主張されてい

る。

1)認知的,実際的および情動的要素をカバーする生徒のユニークな教育的経験のすべての側面に ついて注意する(ところの)生徒の全体的個別的評価。

2)すべての生徒をその学習の中で動機づけ,指導するための評価情報の形成的な活用。

3)生徒を自己評価や教師との話し合いの中に巻き込み,かくして同様に学習と達成への動機づけ を増大する機会。

4)生徒が何をなし,何ができるか,を記録した学校終業(離学)証明として,生徒の能力,技能,

経験および資質の観点での達成の詳細な記録2)。

イギリスでは,生徒の評価は,かつては外部試験の結果によって行われ,外部試験に縁のなかっ

*茨城大学教育学研究室.

(2)

た多くの生徒の公的な評価文書は作成されて来なかった。その様な背景の中から生徒評価のあり方 が議論され,ここ20年間に様々な評価制度の改革の計画(運動)が展開され,1990年から「達成の 記録」の作成段階に入り,1995年に初めてすべての義務教育終了生にそれが提供されることになっ

ている。

 イギリスではスクール・レポートと慣習的に呼ばれて来た「成績通知票」が学期毎に作成交付さ      亀

黷トはいた。しかし外部試験による評価文書以外に公的な生徒学業成績の評価文書を作成する施策 は行われて来なかった。このような比較的多数の生徒を積み残した不公平な評価のありかたの見直

し論議の中で,まずは外部試験を受験しない「能力の低い」生徒のやる気を高めさせる評価の運動 が開始された。その成功と広がりの中から,やがてはすべての生徒を対象とするプロフィールおよ び個人的達成の記録の作成の必要性が強調され,先導計画の段階が過ぎ,今や全国的な実施の段階 に入っている。評者によっては,1944年の「すべての者の中等教育を」の制度化は「すべての者の 達成記録」の制度化を以て,ようやく完結を見るに至る,とすら言うのである。

このプロフィールによる評価制度の改革の動きは,1970年代1980年代を通して,多くの中等学校 や継続教育カレッジにおいて,また産業界,各政党,教育科学省,雇用省(訓練庁〉等にも積極的 な賛意を伴って注目された。

       ■

坙{では,最近の臨時教育審議会の改革答申(1984年)が,広く評価の制度の改革の必要を強調 するとともに,入学者選抜試験方法の改革の必要を訴えた。しかし,日本の学校教育が高校入試,

大学入試の準備に左右されている事態はそう大して変わっていない。入試方法の部分的な改善も,

偏差値の支配の状況を変えるものではない。公立高校入試に際しては「内申書」が志望校の選定や 生徒の合否を大きく左右している。 「内申書」は「生徒指導要録」という文書を基礎資料として作 成される,と言われる。それは高校長の選抜資料としてその利用に供される。その内申書記載の個 人情報は当該本人や親には知らされていない。 (内申書は私立中学校入試や大学入試および就職の 際にも選抜・選考資料として用いられている。)また「内申書」が生徒管理の手段として,教師の 考えられる内申書記載を口実にしての生徒の行動の自己規制を求めるなどの,歪められた利用事例 があげられたりしている。

この論稿では,イギリスのプロフィールおよび個人の達成記録計画を取り上げ,その考え方や原 理,および実施の問題を取り上げ,その積極的側面の確認と問題点の把握に努めたい。

そのさい,①プロフィールによる評価改革の意図や理念②その評価の目的・内容(領域〉・技 法,③その評価における教師・生徒・親および雇用者の評価への係わり,④プロフィールによる評 価改革の意義・性格の諸点を押さえるように努めたい。

特に,プロフィール計画がイギリスで高い評価と関心を集め,広範な展開を見せたことの理由を 明らかにしたい。併せてそれらと日本の内申書,「生徒指導要録」との違いの側面も明らかにする よう努めたい。しかし資料的制約のために今回は予備的考察の段階に止めざるを得なかった。

1.プロフィールおよび達成記録計画の発展

A.中等学校におけるプロフィール計画

(3)

谷口:イギリスの「プロフィール」および「達成の記録」に関する一・考察      247

イギリスでは,1830年代(たとえば1837年ロンドン大学入学資格試験の開始)以来,長らく外部 公共試験が中等教育のカリキュラムと学校における生徒の学習や経験に影響を及ぼして来た。しか し中等教育の開放の機運の高まりと拡大に対応して,試験を含む評価制度を改革する課題が1930年 代,1940年代を通して教育の審議会等において提出された。

既に1911年には,イングランド教育院諮問委員会の試験の生徒および教師に及ぼす影響に関する 報告は,試験の破壊的な影響を論評していた,という3)。

1938年のスペンズ報告も「学校証書試験は...今やカリキュラムの枠組み,内容も統制して,

学校の活動を支配している。」4)と論評した。

1943年のノーウッド報告は教師が大きな統制力を持つ学校内部試験の実施を論じ,さらに離学証 書作成の提案を行っている。提案は次のようであった。

。..新形式の学校証書は,2つの部分に分かれる。最初の部分は生徒が,ゲーム,結社,そ の他の学校の通常生活において行っている分担の記録を含むものである。つまり,その教育によ って彼に与えられる機会を,その最も広い意味で,活用したやり方についてのアイディアを読む 者に提供することである。第二の部分は主たる学校コースの終了時に行われる試験の生徒の成績 の記録を含むことになる5)。

以上の学校証書は広範囲の学問的および非学問的な達成を反映するものであると同時に,提供さ れた機会についての生徒の個人的な経験を含むものであった。

しかし上記の提案は最近まで実現の途を見いだし得なかった。1944年教育法による「すべての者 の中等教育」の実現に対応する,試験制度の改革が1951年に行われた。すなわち外部試験制度の改 革は一般教育終了証書試験GCEの導入によるものであった。(GCEは5〜6教科の一括同時合 格を必要とする,グループ教科試験のもたらした中等学校カリキュラムへの厳格な規制力を伴った 拘束的影響を除去することを意図し,カリキュラムの自由を保証すると想定された教科毎に合格を すれば良い,単一教科(別)試験を実現した。)ノーウッド報告の求めた「新形式の学校証書」は,

教科試験の結果以外の達成の記録すなわち最近のプロフィールやそれにもとつく「達成記録」に 対応する「離学証書」の作成を主張した提案はその時には採用されなかった。

GCEは旧学校終了証書試験SCEの水準の維持に努めたため,同一年齢の青年層の上位20%の 能力範囲をカバーするものとして実施された。1964年に導入された中等教育終了証書試験CSEも 次の40%の能力範囲の者に対応するものとされた。

「離学証書」や学校生活における諸達成の評価の必要性を訴える類似の提案は,1958年のクラウ ザー報告,1963年のベロー報告にも現れたが,これらの改革提案もすぐには取り上げられなかった。

かくして中等学校の離学者(16歳の義務教育終了者)間には,外部試験の結果である一つ以上の 教科合格証書を持って離学する者と,外部試験の教科を受験しない,または不合格のため,何等の 証明も持たずに離学する者に分かれて来た。1970年代の不況期の青年層の失業問題の深刻化と学校 批判の高揚の時期に後者の生徒の抱える問題性に一般社会の関心が注がれた。当初,何等の証明書 なしに離学する者に,生徒達成の記録を作成し,この結果を雇用や高等教育への進学に活用する途

(4)

を開くためのものとして,出発したのがプロフィールおよび生徒達成記録作成のための計画であっ た。しかし後にはその対象を拡張し「すべての者の」プロフィールおよび生徒達成の記録の運動と

なった。

○スコットランドの教育研究調査審議会SCREのプロフィール・システム 初期の最も有名なプ ロフィール計画は1970年代の半ばにスコットランドで推進された。しかしスコットランドでは,

1960年代の後半から「生徒進歩の記録」作成の検討が開始された。だが,その初期の活動はイング ランドにおいて余り注目されなかった。

1967年にスコットランド担当国務大臣によって任命された作業部会は, 「現代の発展の視点で,

初等中等部門における生徒進歩の記録のための要件について検討し,勧告すること」という課題を 与えられた。同部会は達成記録や報告に関連する問題には慎重な姿勢を示した。それらに特に必要

とされる配慮として,教師・資金等の人的物的諸資源の意義,生徒のプライバシーと秘密保護性,

(生徒の個人的資質に関する)教師の判断の主観性,標準書式設定の欠点,形成的に生徒を助成す

るために評価を活用することの重要性等について指摘した6)。       ●

@1972年に設立されたスコットランド校長協会の作業部会とスコットランド教育研究調査審議会S CREとによって共同で開発されたプロフィール・システムの実施可能性の研究が遂行された。そ の結果,1976年にはSCREのプロフィール・システムは市販され,活用されるに至った。

① その研究の目的は,「すべての生徒の自己認識カリキュラムと職業ガイダンス,適切で有用 な離学報告のための必要に即応する中等学校の評価を開発すること。」であるとし,特に現行試験 システムによって特権を得られない40%の離学者を狙いとしたものである,と強調した。(スコ ットランドではイングランドのようなやり方では中等教育終了証書試験CSEを開発しなかった。

但し,ある程度のスコットランドの学校はその生徒にイングランドのCSE試験を受けさせた。)

② SCREのプロフィール・システムではその内容領域を3つの主要な部分からなるとしている。

すなわち, 「基礎的技能」, 「教科の達成」,および「個人的資質(勤労関連特性)」である。

教師は生徒の「基礎的技能」の達成を,聞き方,話し方,読み方,書き方,視覚的理解や表現,

数の使用,身体的調整,および手の器用さの各項目にわたって,基準準拠,4点法の数量尺度で,

記録するものとした。加えるに,教科の教師は「教科の達成」を生徒が選んだ教科の(基礎的技 能を含む)技能の評価を同様のやり方で記録するものとしている。そのなかには「企業心」や

「忍耐心」のような労働関連技能の部分が含まれ,これらは4点尺度で評定された。「個人的資 質」に関しては教師と生徒間の対話を奨励した。かくして,生徒プロフィールは生徒進歩の累積 的記録を提供し,その結果として,(SCREシステムの一部として設計された)離学報告にデ 一タを入れた。データの入出力は手による方法と,コンピュータによる2通りがあった。離学

「離学報告」はプロフィール情報の要約と省略されたものであり,「技能」,「教科/活動評価」

および「その他の活動」から成っていた。そこでは,総括的評価であるため,学校内での教授の 目的に有用な教科特有の項目はもはや含まれていない7)。

③ SCREのプロフィール・システムでは教師コントロール型で,教師が評価に当たる,ことを 打ち出し,離学報告は雇用者の採用・選抜等に資するようにも配意されていた。SCREの教師 評価の重視は,その他のプロフィール計画と異なった点であった。

(5)

谷口:イギリスの「プロフィール」および「達成の記録」に関する一考察      249

④ SCREのプロフィール・システムは多分,最初の良く知られた基準準拠の,技能のチェック

・リストであった。SCREのプロフィール・システムの機能の一つは生徒指導に役立たせるこ とであったが,プロフィールの全体構成とその内容は,外部の雇用者の必要一特に雇用者の必要 にあわせて設計されたと言われている8)。SCREプロフィール・システムは,グラフィックで かつその象徴的な構成は即座の理解と評価のために工夫され,取り上げられた諸技能は雇用者が 離学者の中に求めている資質についての観点によって選定されたもの,と言われている。しかし 実際はこのシステムは運用するために多量の時間を消費し,多くの学校がそのためにSCREの

プロフィール・システムに対して魅力を失って行った9)。(付録資料参照)

○スウィンドンの個人達成記録計画 個人達成記録RPA計画は1960年代の終わりにスウィンドン

(特別区教育当局)の熱心な教師達によって創出された。

①その最初の目的は外部試験を受けない生徒についての個人情報を提供し,同時にこれらの生徒 に動機づけを与えること,であった。

② RPA計画の中核は「記録カード」であった。初期には28を数える表題カードが使用され,生 徒はカードを完成させると特別に設計された「記録簿」に挿入した。その出し入れは生徒が希望 すれば可能とされた。補助材料としては,メモ日記,生徒用ハンド・ブック,オプション項目別 カード台等があった1°)。たとえば,カードの表題には「出席」,「グループ・プロジェクト」,

「学習」,「趣味」,「勤労体験」,「読書」等が選定された。

③記録は授業時間内で,通常個人指導グループに分かれて生徒自身の手で編集整理された。

④全体を通して,個人的資質の向上に強調点を置き,技能や概念の発展には二次的重要性を与え ていた。その計画はカリキュラム開発のために有用な刺激となり,学習の遅れた者に目的意識を 持たせ,教師と生徒間の関係を強める潜在的機能を持っていた,と評価されたll)。

○ウィルトシャーの生徒個人的記録計画1974年にRPAから分岐した個人的経験の記録RPEや,

1981年にウィルトシャー地方教育当局で始められた生徒個人的記録PPR等は引き続き個人記録を 発展させた。初期のRPAに強調された生徒の個人的記録の原理は非常に強い,広範にわたる影響

を持つに至った,と言われている12)。

この計画に参加したウイルトシャー教育委員会は管内の公立中等学校内で計画を推進したが,

1970年代を通して,同委員会は計画の本質的要素として次のものを掲げていた。そのさい計画はコ 一スではなく,手続きであることが強調された。

1.人間的発達の強調。

2.記録と組織のシステム。

3.教師の評価に代えて,RPAは生徒が行ったことでプライドを持つものはなんであれ,事実 的記録を提供する。

4.各項目は事実証拠を所持する責任ある成人によって確認されねばならない。

5.いかなる成人も生徒が記録されることを求める正当な項目を拒否することはできない。

6.各項目は事実に即したものでなければならないし,いかなる主観的または価値判断を含むも のであってはならない。

(6)

7.項目は客観的な行為の標準に関連させることができる。

8.2学年(4学年,5学年)間の記録を完成させる生徒が,彼の記録簿を持ち出すことを妨げ てはならない。

9.個々の記録簿セットの実際の完成期日に関するある程度の柔軟性は可能であり,個々の学校 が決めるべき事柄である。

10.RPAを選ぶ生徒は試験を受けることもできる。

11.RPAはどのような能力グループの,または混合能力グループの生徒によっても取ることが

できる。

しかしRPAを「手続きであり,コースではない。」とする運動推進者の「基本的主張」は,し ばしば誤解され,カリキュラム・ギャップの解決策,反抗的な能力の低い10歳代の若者に対する反 抗的行動の緩和剤から万能薬までのさまざまな見解も多数の学校によって披渥された,という。

10数年間RPAは学校によっては,生徒の動機を高め,学校終了者の最終認定書に代る助けとし

て使用された13)。

R.グルートは,RPAを次のように語った。

1970年代に用いられたこの計画を分析して,記録者の人間的発展は,その計画が学校の優先順 位の中で適切な名誉ある地位を与えられたところでは,すばらしいものを受け取ったという,力 強い感慨が残る。自己尊重を育成することこそが個人記録作成の基本目的である 4)。

○サットン・センター・プロフィール計画 RPAの影響を受けたものに,サットン・センター・

プロフィールがある。これは最も初期の学校開発のプロフィールであった。        .

① 同センターは,プロフィールを介した生徒,親および教師の対話を重視し,そのさい,生徒を 対話の中心に位置づけようとした。

②同センターのプロフィールは2つの主要な改訂が行われた。プロフィールはルーズ・リーフ・

バインダーに保存されているいくつかのカード・シートで出来ている。それらは3つの部分に分 けられている。第一には個人の記録であり,生徒によって整理されるが,教師のコメントのため の余白欄のあるものである。第二は教科の評価記録であるが,生徒自身の評価と教師の評価が陳 述の形式で書かれ,親の評価がそれらに加えられている。第三に外部試験の証明である。

③ そこでは生徒は個人記録を作成し,教師とそのことでの話し合いに係わっているだけでなく,

自分達が学んでいる教科内の進歩や成績評価にも参加しているのである。そこでは評価は生徒,

教師および親の三方向対話として,展開していたのである15)。

○イーヴシャム・ハイスクールの個人達成記録計画 イーヴシャム・ハイスクールの個人達成記録 PARは,予め作成された技能チェック・リストを採用した最初の学校開発のプロフィールであっ

た。

①それは外部試験対応のカリキュラムが作り出す,試験を受けない能力範囲半分以下の者にやる 気を失わせている事態への憂慮から生じたとされ,1979年に開始された。しかし年を経るにつれ,

対象グループは拡大され,1983年にはPARは第5学年の生徒には能力範囲の如何にかかわらず,

その技能と達成の記録を持たせることになった,と言われた。

(7)

谷口:イギリスの「プロフィール」および「達成の記録」に関する一考察      251

②第5学年の始めにすべての生徒は,2学期のおわりまでに完成させる予定のPAR(ポケット

・サイズの手帳)を受け取る。その取り組むべき課業は自発的に進められる。それは3つの部分 から作られている。第1の部分は学校で履修する教科や試験の結果,第2の部分は基本的諸技能 に関するもので, 「言葉の技能」, 「数の技能」, 「実際的技能」および「個人的社会的技能」

の4領域の,計60項目のチェックリストが項目ページ別に掲載された技能を含んだものであった。

第3の部分はスポーッ,レジャーや地域活動の「個人記録」である。

③生徒は履修している教科や試験の結果,および個人的達成を記録の後ろに記載することができ

る。

生徒は彼らがある技能を修得したと確信を持ったときに,教師に確認を求めて記録の手続きを開 始する。その原則は,生徒が自発的に着手しなければならない,教師は事実の確認をしなければな

らない,というものであった。ある場合にはテストが実施される16)。

@      ■

○学校協議会とプロフィール 1979年に学校協議会の個人達成記録計画RPAの評価が刊行された。

それは,RPAが生徒を動機づけ,アイデアや活動を組み立てるのを援助し,能力の限られた生徒 が実は達成の資力と誇りを持ち合わせていた,ことを明らかにした。しかし同時に,その計画は能 力の低い者に限られる傾向があったので,その計画は威信を低め,低い地位と一部の生徒達による 認識の欠如に苦しめられた。雇用者は深くは係わらなかったし,個人達成記録計画RPAの価値に ついては確信を持たなかった,ことなどの問題点を指摘した17)。

また学校協議会は,教育科学大臣の依頼を受けてプロフィール計画が行われている程度を測定す るため,調査を行った。調査結果によると,イングランドの地方教育当局のすべてがこれらと係わ りを持っていた。学校段階ではそのプロフィール計画が,以下の4つの調査基準に照らして合致し ているか,どうかが確認された。すなわち,プロフィールが伝統的な到達(試験結果)以外の技能 や資質を記録していること,その情報が系統的に提供されていること,プロフィールが潜在的な雇 用者対する内密に知らされる文書ではないこと,およびそれが特定の対象年齢グループのすべての 生徒に役立たせることができるものであること。その結果これらの基準に合致していた学校は,全 国で25校に過ぎない,ということであった。その他の多くの学校のプロフィールが,上記基準に照

らして大なり小なり,問題や欠陥を持つものであった,ということであった18)。

ついで,学校協議会は達成記録の開発研究を行う4つの地方教育当局の21の学校を巻き込んでい るあるプロジェクトに資金援助した。

1980年に学校協議会SCは南西イングランドの開発先導計画を支援することに同意した。同意す るに当たってSCは次のように確認した。・

(a)個人記録作成は,自信のある個人の発達と自己意識を推進すること,を主たる目的として持つ べきである。

(b)個人記録作成を,学問的に,ある人口部分に限定された教育計画として,見ることは不正であ り非論理的である。

また,RPAの「達成」(achievement)の用語が,客観的な基準に対して,その記入を節にかけ たり,測定したり評価したりする試みがないのぞ,底の浅いものであり,誤解を生み易いものであ る,ということに同意がみられた。 「個人記録」が,まだましなタイトルであるということで,

(8)

「生徒個人記録」PPRという用語が,開発プロジェクトとしては優れたタイトルであるとして用 いられた。

学校協議会SCの戦略は地方教育当局を越えた地区的計画であった。7つの地方当局(アヴォン,

コーンウオール,デヴォン,ドーセット,グロースターシャー,サマセット,およびウイルッシャ

一)に参加の要請を出し,グロースターシャーのみが当局が辞退し,オックスフォードシャーがこ      、

れに加わっている。新アプローチを強調するため,RPAのタイトルを止め, PPRを押しだした。

2年間のパイロット計画(1980−82年)のための『PPRハンドブック』は, PPRの「主要基準」

を概略次のように明らかにした。

1.1980年代の開発パターンは個人記録の原初形態のスタイルに近いものを維持する。

経験を持つ教師(チューター)は本質的な構成要因を確認し,磨きをかける。記録者を真の意志 決定をなし,真の責任を持つ者としての位置づけをした処方箋を作る。

2.すべての学校は必ずしも同一の作業パターンに従ったり,「生徒の個人記録」(PPR)の確 認された材料を使用する必要はない。

PPR開発グループは地方のイニシャティブを奨励する。生徒個々人の必要と生徒の自律性を尊       ■

重する。

3.個人記録の基本は次の主要基準に具体化されている。       

(a)原則的には,個人記録を保持する機会をすべての生徒に活用させる。

(如何なる学問的能力範囲にも限定しない。)

(b)記載は生徒決定によって行われる。

(記録者が記載したい経験や活動を選定する判断や実行をする。)

(c)記載は生徒統制による。

(記載の用語,スタイルおよびパターンは記録者が決定し,作成する。)

(d)記録は中等学校教育の第4学年からの使用のために設計されている。

(義務教育最後の2年間)

(e)記録ファイルは優れた品質の素材と外観を持つものである。

(魅力ある,長持ちするファイルとカード)

(f)記録は開発期間中および完成までは生徒統制による。

(準備期間と完成段階はプライベートな文書,準備期間学校は管理責任,公共の照会と展示は記 録者による同意がなければならない。)

(g)個人記録計画はコースではなく,手続きである。

(記録者は話し合いと助言のための,チューターからの時間の振り当てを必要とする。個人記録 は個人別教育の決定的道具。)

4.基準を支えるものは,生徒がそうすることを願う故に個人記録を作るのだ,という臆説である。

5.個人記録計画についての真価を問うものは,それが記録者に与える尊厳にある。

尊厳はガイドラインの堅固な適用によって生じ,維持されるもの,と信じる。

,1980−82年の開発段階では厳しい地域的な統制をともなって出発し,1982/83年の学期までには

(9)

茨城大学教育学部紀要(教育科学)40号(1990)      253

50の学校と3000程度の参加者を擁するまでに拡大した。特に顕著に注目されたことは大規模の試行 を遂行した学校が学問的に全能力範囲の生徒に対してその活動を行ったということであった19)。

○オックスフォード教育達成証書計画 1982年にオックスフォード大学地方試験代表団はオックス フォード教育達成証書OCEAの開発を通告した。3つのグループが証書の開発に協力した。それ らは代表団,オックスフォードシャー,レスターシャー,サマーセットおよびコベントリーの参加 地方教育当局,それにオックスフォード大学教育研究学科であった。試験当局が教育達成証書の開 発に参画したことは,学校の達成証書の信頼性,信愚性を確立する手続き上,画期的なことであっ た。しかしOECAの実際の開発活動はフルタイムの4地方教育当局から送られた計20人の教師に よって行われた。(各当局は4教科と人間的要素の5領域に各1名つつの教師を選定した。)

なお,OECAは1985年以降教育科学省の資金による先導計画に参加した。

①OCEAは折から全国的な関心の高まりを見せている「達成の記録」計画に,試験当局,地方 教育当局および大学が協力して取り組み,学校における達成と経験の全範囲について,一つの総 合的な対応策を提示しようとするものだった。

②証書は3つの構成部分からなる。それらは,

1.P構成部分:生徒の経験,到達,関心および技能

2.G構成部分:カリキュラム内の達成の記録。国語,数学,外国語,科学等。

3.E構成部分:外部試験結果の記録。

③ P構成部分では,生徒の個人的記録は教師と生徒間の個人のための検討を数を重ねて一緒に行 うように提唱された。G構成部分では評価の形成的活用が強調され,生徒は教師と一緒に彼らの 評価について自己評価と話し合いに参画することを奨励される2°)。

B.継続教育カレッジにおけるプロフィール計画

1970年代は継続教育カレッジへの進学が増大した。いくつかの要因が考えられるが,青少年の失 業の増大と関連した,雇用前ないしは職業前教育の1年程度の短期全日制コースの開発などもその 一つに数えられよう。長期職業教育コースでは多くの職業資格(試験)団体の付与する職業資格の 取得があったが,短期職業前教育コースのそれらに対応するものが,求められた。

○王立技術協会とプロフィール 1970年代に継続教育の教師や(職業資格)試験団体の試験官達は プロフィール計画に関心を示し始めた。王立技術協会RSAは1976年にプロフィールによる証書を 活用した最初の全国試験団体となった。プロフィールのシステムは生徒の日誌類と一緒の書記的技 能のチェック・リストの様式による継続的な評価記録から成っていた。最終のプロフィール証書で は生徒が到達したコース目標に関連した能力の叙述を掲載した21)。

○継続教育カリキュラム再検討および開発室とプロフィール提案 1979年にはプロフィールについ ての討議を,全国的な関心の中に持ち込むという大きな影響を及ぼした文書が刊行された。教育科 学省の外郭団体=「継続教育カリキュラム再検討および開発室」FEUは『選択のベース』を作り

(10)

上げた。それは継続教育の職業前教育の諸コースのためのカリキュラムの枠組みを勧告した。それ らのコースはコア学習,職業学習,職種別学習から成り,コースの学習終了者のための評価として,

評価情報のプロフィール化した報告を提案したのであった。付録資料にSCREのプロフィール評 価システムの「離学報告」を掲載していた。さらに1982年の改訂版においては付録資料に「1979一 81年先導的生徒プロフィール」を掲載した。それによると,「試行生徒プロフィール記録」と銘打 った「プロフィール報告:雇用前コース」は,「コア(a)〈コモン・コアの到達〉」,「職業学 習」,「コア(b)〈コアの内容・学習経験〉」および「職種別学習」の表題カードから成ってい た22)。また『プロフィール:生徒プロフィールの使用と開発における問題点と実践の再検討』

(1982年)を刊行している。

○ロンドン・シティ・アンド・ギルド協会のプロフィール計画 1979年にロンドン・シティ・アン ド・ギルド協会はFEUと提携して『選択のベース』に描かれた職業前教育コースの枠組みに即応 する365の諸コースと評価のプロフィール計画を開発した。

① シティ・アンド・ギルドのプロフィール作りの目的は,

a,カリキュラム内での生徒の進歩を記録するシステムを開発すること

b,生徒の成熟,特にその自信およびその状況についての一般的意識の成熟を推進すること c,信頼すべきプロフィール報告を生み出すこと

であった。シティ・アンド・ギルドの当初の関心は目的C,であった23)。

②そのプロフィールはグリッドと呼ばれる格子網書式に,コア技能とヒエラルキーで順序づけら れて,叙述された具体的な達成技能をリスト化したものを備えていた。それに加えて,これらの 達成と生徒の勤労体験に指導担当教師のコメントのための空欄があった。この書式はほとんどす べての16歳以後の職業準備コースと訓練のために引き続き開発されたプロフィールのモデルとし

て役だった。〈図表〉

③ CGLIは関係する職業前準備コースの評価において日誌や面接等を併用するこのプロフィー

ルを適用した。

図表2 CGLIのプロフィール・システムの枠組み

共同職員

コンテクト   学問的     職業的+    職業前*

@能      形成的      総括的      両方*

(カウンセリング}  (リフォレンス)

システム    オープン*    クローズド    タイド+

1対1面接 参加者     生徒      スタッフ

(職員/生徒)

「 − , 駅 P P − 一 層 一 一 一 } 一  暦 内容      態度/      一般的     特定の

1スタッフ開発一

i [舌ゴニ「一一 性質      能力      能力

検討シート 1 事実     正式テスト   セ・ト・ワーク+ 観察される活動

中間プロフィール 1 スタンダード  非スタンダード+ 地方的     全国的スタンダード

スタンダード

フィードバック ブイードブオーワード1

@      ; 全体構成    無償      事前特定    事前特定グリッド チェックリスト

学習契約, 最終プロフィール

コースの調整 の作成

*現行CGLIシステム +将来開発見込み Broadf・ot,pl22

RBroadfoot, Promes and Record of Achievemenしp. l l4

(11)

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④継続教育部門では上記FEU/CGLI格子網スタイルのプロフィールを育成し評判を得させ た。継続教育部門のプロフィール計画はかくしてRSA, CGLIのごとき職業資格試験当局か ら生み出されたものであった。それらは概して職業関連の技能や経験とともに基礎的技能の達成 の報告に関心を持つものであった。格子網書式は支配的であった。最近ではこのCGLIの格子 網スタイルのプロフィールは雇用省の技術職業教育計画TVEI内でも活用されている24)。

図表3 CGLIのグリッド構成に関するノート

「一一…一…一一…一曹 一……一一一一一…一一…一…一一一一一…一一…一……一一一…  一…一…一一一一…一一…一… …一一一一一一一一曾一i

奄P・グリ・ドのカテゴリーは安定的である・(開発後)      i      ii 2.グリッドのバンド幅は全応力範囲を説明する。

奄R。段階は規模1から・まで漸次増加する。        i

i4・段階は自雛複灘適用の多灘こおいて増大する・     i      …i 5.グリッドは本質的に基準準拠である。

奄U.麟性を克服するために範例/基準で敷術する腰      i

i7・グリ・ド列は同一単位で図ること1まできない・       ii 8.グリッドは構造化されたチェックリストによって置き換えることができる。      i

奄X.グリ。ドはある文脈が与えられね1まならない.       i

L_一一__一一_一一一._一.一__一一一..一_一一一____一_一一一____一一一一一一一一一__一__._._.__一_,一一一.−i

Broadfoot.,pll7.

○職業前教育証書CPVEのプロフィール計画 プロフィールの開発を補強・推進したものに,教 育科学省DESが提唱した職業前教育証書CPVEがある。1985年から1年課程のフル・タイム・

コースでスターとした。

① CPVEに導くコースの主要目的は「若者に労働を含む成人生活の成功に必要とされる基礎的 技能,経験,態度,知識および人格的社会的能力をさらに供えさせることによって学校から成人 への移行を援助すること...」(職業前準備教育合同当局,1984,P.9)とされた。

② CPVEの枠組み内での評価は形成的および総括的な活用のためにプロフィールで報告される ことになった。知識,技能,経験および人格的発展の広領域カリキュラムは広い範囲の評価と記 録のシステムによって適合させる必要がある,としてプロフィールの手続きが実践されている。

ここでは,教師と生徒の関係の利点からして,格子枠各欄の記載事項のチェック等による機械的 な報告手続きが生徒が実際に「なし得る」ことの達成の具体的記述による掲載への移行が認め

られる25)。       ,

C.達成の記録の全国共通制度化

○教育科学省の『達成の記録:政策説明』とパイロット計画 1984年教育科学省は『達成の記録:

政策説明』を出した。プロフィール計画の全国的な展開を背景にし,特に学校協議会を廃止に付し た教育科学大臣としては,そのプロジェクトを教育科学省が引き取り,政策として継承発展させる

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方針を表明したものであった,と言えよう。当時のキース・ジョセブ教育科学大臣は政策説明の直 接的な意図を次のように表明した。

大部分の16歳の者は,ある程度の試験証書を所持して離学していくが,他方,個人的社会的資 質を反映する経験と同時に学校在学中の諸活動の達成を含む記録を所持する者は数少ない。政策 説明の意図するところは,達成記録によって,学校が公共試験の結果を越えて,成績認定の範囲 を広げ,生徒がその動機づけと自己意識を高めることを援助し,生徒が実際的社会的技能を発展 させることを可能にするカリキュラムを助長し,雇用者や教育訓練の機関によって価値ありとみ なされる離学文書を提供することであった。

そこでは1990年までに達成記録の作成を全国的に導入するという方針が明らかにされた。政策説 明において達成記録作成のために明確にされた実際的なガイドラインは以下の様であった。

1.達成の記録はすべての生徒に対するものでなければならない。

2.達成を確認し,生徒を動機づけ,カリキュラムを見直すために教師と生徒間の不断の対話が なければならない。

3.達成の記録は,不断にかっシステマティックに行われ,生徒を参加させるべきものである。

4.離学文書には生徒0試験によらない達成と経験の実績と同時に,公共試験の学問的達成の実 績を含めるべきである。それは使用者,継続教育ならびに高等教育機関にとって有用な情報を 提供すべきである。

5.離学文書は生徒の所有物であるべきで,文書の情報は生徒の承諾なしに使用されてはならな い28)29)。       引 そこでは,多義性を持つプロフィールの用語を避け,おしなべて「達成の記録」の用語が使用さ れ,一般に行われていた,生徒の在学中の「プロフィール」と終業(離学)時の「達成の記録」の 使い分けは採られなかった。政策説明における評価の原理は,「すべての者に評価記録を」適用し なければならない,評価記録の内容は広範囲の達成と経験を囲む観点で包括的であり,評価と記録 は形成的に活用され,生徒を参加させるべきである。

また教師は評価のフィードバックによって,カリキュラムと教育方法の見直しを促される。生徒に は最終段階の達成の記録の情報の使用については,拒否する権利を持たせるべきである,というも のであった。これらは公的には評価を外部試験当局に委ねる,とした慣行を転換するものであった31)。

上記政策説明の後,教育科学省はプロジェクトを募集した。その結果応募団体の中から選定され たものとして,1985年には9つの3年間の先導計画が開始されていた。それらには内ロンドン教育 当局,サホーク,エセックス,ドーシット,ランカシャー,ウィガン,および東ミッドランド・グ ループ(ノースハンプシャー,ノッチンガムシャー,リンカーンシャー,ダービーシャー),西部 合同試験審議会およびOCEA(サマセット,オックスフォードシャー,コヴェントリ,レスター シャー)が含まれた。これらの教育科学省の資金による先導計画に参加する学校の外に,地方教育 当局が個別的にまたはたとえば達成記録北部パートナシップのような共同して,独立的に資金供与 を受けない計画を推進する開発に対応する学校があった。

○ドーシットのパイロット計画教育科学省の資金による先導計画の一つとして,県レベルの「達

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成の記録」の制度化に関するプロジェクト,すなわちドーシット地方教育当局と南部地区試験当局 の「評価とプロフィール作成プロジェクト」があった。

このモデルは将来のプロフィール作成の実施の際の地方教育当局,各学校および教育機関の開発 と普及における参考としての位置づけを与えられよう。1984年から4年間,ドーセットのすべての 学校を参加させる方針で取り組まれた。プロジェクトの機関は,次のように区分された。

そのプロジェクトの機関は,以下の5つに分類された。

(A)5−16の軽度の学習困難を持つ子どものための特殊学校

(B)多様な男女別の選抜学校

(C)多様な総合制学校

(D)ターシャリ・カレッジ

(E)継続教育カレッジ

先導計画の段階は,2段階に分けて開発と普及の課題に対応するよう配慮されていた。

開発の過程に重点を置いた,

段階1;1986年8月まで,24中等機関が1年間カリキ.ユラムの提供と評価の技法の見直し,1年は これらの試行と修正

普及の過程に重点を置いた,

段階2;1986年8月から1988年8月まで,残りの22機関が1年の計画と開発,他の1年は実施と調 整の課題と取り組む

プロジェクトを進めるに当たって,「プロジェクトの原則」を作成しているが,以下の諸原則が 掲げられた。(以下の《》の中の語句は筆者が理解を助けるためにつけ加えた。)

1.プロフィールと達成の記録は学年グループのすべての生徒に対するものである。《対象とする 生徒の範囲》

2.達成記録だけではなく,学習過程における生徒を援助するプロフィールとなる。《プロジェク トの配慮》

3.生徒はプロフィールを編集する過程で完全に参加するものとする。《生徒の参加》

4.学校は全学年範囲にわたる評価と記録,および報告手続きを考慮する必要はあるが,プロフィ 一ルは義務教育の最終2力年間に詳しく作成される。《学校の役割責任》

5.プロフィールは次のものからなる。《プロフィールの内容領域》

(a)教科の評価

(b)カリキュラムを通しての技能く多様な領域の学習に共通な基礎的技能〉

(c)個人的社会的技能く教師と生徒の話し合いが重要な要素となる〉

(d)達成と経験く学校内外,教科内外の活動〉

6.形成的プロフィールは診断的目的に使用され,従って長所と短所の両領域を確認することがで きるけれども,達成の記録は積極的論評からのみ構成されよう。《両記録作成の観点の違い,形 成的と総括的評価の記述》

7.学校は,活動の発展と操作を導きかつ監視し,また学校,地方教育当局,SREB,親や雇用 者を巻き込む合同のプロセスとなる承認の手続きを開発するだろう。《学校による承認手続き開 発の課題》

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8.生徒の全体的な成功と失敗の概念は避けるものとす。 《評価の考え方の変更》

9.生徒がプロフィールおよび達成記録に貢献したとしても,編集の責任は学校に残されている。

《学校の記録作成の責任》

10.完成させると,記録は生徒のプロパティとなる。《記録に対する生徒の所有権》

11.主たる雇用者となる可能性のある者は学校の開発活動に積極的に参加するだろう。.《雇用者の 自発参加》32)

H.プロフィールおよび達成記録の問題点

N.ボームガートはイギリスにおいて「プロフィール」という用語が長期にわたり多量に使用さ れ,複数次元の個人的達成とか特徴を表現記述してきたとして,外国の研究者としての視点から,

プロフィールの特徴を次のように列挙している。

第一は,プロフィールという用語が,イギリスではある特殊な意味を担ってきたことである。

たとえば,プロフィールとは「教育界および非教育界の使用者によって容易に読み取れるような       ,

S体的構成の,中等教育の終了時に出される,生徒の学問的,非学問的達成,特性および関心につ

いての系統的かつ総合的な記述と評価」であると広義に定義されている。      

@第二は,プロフィール計画が集めてきた支持の広さである。

たとえば,改革が進展しない外部試験制度のもとで,全国レベルでは教育科学省の「達成の記録」

に関する政策説明および先導計画の資金援助施策,多様な試験当局の評価計画,学校レベルでの教 師の評価主導のカリキュラム改革の期待感が,この計画を支持してきた。

第三は,プロフィールという名で行われている実践の多様性である。

たとえば,スコットランド教育研究調査審議会は,生徒のプロフィールに関して,基礎的技能,

教科の達成および個人的資質の分野にわたって,教師による評定を求めた。評定は記述ラベル(評 価基準)を伴ったグリッドとしてパターン化された4点尺度による評価法が採用された。

他方,スインドンの個人達成記録RPAは, 生徒に事実,達成および経験を叙述形式で記述する 責任を課した。そのさい教師やその他の成人は確認の役割を持つが,評価自体には携わらない。R PAは他の計画に刺激を与えたが,個人の必要に焦点化した学習の根底にある内発的な動機を活用 しようとする計画であった。

第四は,プロフィールの計画が,継続教育部門のなかに強い支援団体の基盤を持っていることで

ある。

たとえば,継続教育カリキュラム再検討および開発室FEUが,プロフィールの強力な提唱者と なり,16歳後の職業前教育コースとプロフィールを強く支持した研究報告『選択のベース』は改訂 版を重ねて生徒プロフィール計画の範例を示した。職業資格試験団体のシティ・アンド・ギルド協 会CGLIや王立技術協会RSAがこれに呼応してプロフィールを支援した。

第五に,プロフィール計画が数多くのマクロ計画と呼ぶべきものを出現させたことである。

たとえば,旧学校協議会SCは現行プロフィールの実践の評価を試みると同時に,旧内ロンドン 教育当局ロンドン達成記録や,オックスフォード教育達成証書OCEAなどのマクロ計画の資金援

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助を行った。特に試験団体の参画した計画がプロフィール計画の広範な支持のキー要素となった。

第六に,プロフィールに対する支持の幅広さにもかかわらず,数多くの批判が出ていることであ

る33}。

N.ボームガートは,その他,離学者へのプロフィール報告の提供とかかわる未解決の問題が幾 つもあるとして,その紹介を試みているが,予備的考察という観点から注目される2,3の点を取

り出しておきたい。

一つはイデオロギー上の対立問題である。達成記録を非外部試験受験の生徒に限定することが,

その他の生徒から記録によって与えられるより広い認知を奪うことになる,という議論と,外部試 験合格証書所持者を一グループに分け,達成記録を他のグループに分割することは現存エリート主 義実践を恒久化することになる,という論議。

さらに達成記録とプロフィールは,平等主義を完成するどころか,その性質上分割を作り出す,

という議論と,達成記録が雇用のための選抜に価値のある活動技能および態度に限定されるとすれ ば,その結果は低い能力の生徒の動機づけをさらに押し下げることになる,という議論。

二つ目は実際的問題で,組織上,学校はこの方途を適合させるには良く位置づけられていない

(等級目標と個人の進歩プロフィール計画にまつわる問題は教師の付加的な負担である。総括評価 の実施のさいの緊張のもとは教師と生徒の関係にある。)

三つ目は概念上の問題に係わるものである。一つだけ取り上げてみると,よくプロフィールは形 成的評価をめざし,達成の記録は総括的評価という性格を持つ,と使い分けの論理が多用されてき た。果たしてそのように明確に形成的プロフィールと総括的プロフィールの区別の関係である。後 者が前者の単純な集計と集約によって編集し得るかどうか,という点である。形成的プロフィール は,学習者や親に診断的なフィードバックを提供し,今後の学習を容易にする方途に関して生徒教 師間の対話の基盤を提供する,それに対して総括的プロフィールは,生徒に対して出されるもので はあるが,雇用者や継続教育機関の関係者を含む,広範な公衆を持つことを意図したもので,証明 書の目的に役立てるものである鋤。

お わ り に

イギリスにおけるプロフィール計画に認められた諸原理を整理しておくと,1)教育における公 正の実現(外部試験受験合格者以外の生徒の達成の評価と離学者の達成報告の提供から,すべての 者の在学中の達成の評価と学校終業段階の達成の報告の提供へ),2)達成の評価の過程における 生徒の動機づけの開発と向上,3)評価領域の多側面化(個人的社会的人間的資質から外部試験の 結果,教科の成績,学校内外の活動と経験までの評価),4)評価過程における生徒の参加(教師 と生徒の話し合いから生徒の自主記録(評価)までの多様な評価への参加),5)評価における相 対評価の排除と等級評価・基準準拠評価の試行と実現,6)評価過程における形成的評価と最終評 価報告における総括的評価の区別の強調,7)評価報告書作成までの学校の管理的責任,8)評価 報告の生徒帰属(所有権)の確認と雇用者等の社会に対する報告書発行のさいの生徒の承諾の必要

(プライバシーの確保)その他,9)評価過程における親の論評の聴取,10)雇用者に分かりやす

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い評価項目や評価の具体的記述,11)評価報告における確認者・修正者の存在,等となる。

特にプロフィールによる評価の相対評価からの転換,評価の生徒参加,および最終報告の評価の 生徒所有権の確認はイギリスの特徴として注目すべきものがあった。

なお,プロフィールと達成の記録に関する批判には様々なものがある。それだけに多様な角度か

らの検討が必要なものとして残さ統ている。たとえば,A.ハーグリーブスはプロフィールおよび       亀

達成の記録が今日直面している基本的なジレンマとして,次の二つをあげている。すなわち,動機 づけ対選抜のジレンマ,および独立性対監督性のジレンマであるという35)36}。その他,プロフィー ルが等級評価,基準評価の思想と技法によるところ大であるが,技法上の問題に関しても批判のあ るところでもあり,今後の検討が必要である。

今回の論稿は平成2年度科研費「イギリスの中等教育(カリキュラム)改革における一般教育と 職業教育の結合に関する研究」報告の一部として考えているが,より詳細な考察は同上報告に掲載 の予定である。

1)「プロフィール」に関する用語説明には,「それは本質的には全体の評価を主要な部分ないし構成要素に分      

割することから得られる。プロフィールは『生徒がある範囲の資質を通して,評価者にどのように見える とか,ある範囲の評価方法を通して見られるような一つの資質の観点で,数的,グラフ的,言語的,パノ ラマ的描写』である。」と述べている。それは生徒の達成や経験に関する記録および報告のためのすべてを 詰め込んだ用語としてルーズに使用されている。Patricia Brodfoot(ed.),Profiles and Record of Achieゾe一 ment(Casell,1986),p.237.

2)Roger Murphy and Harry Torrance, The Changing Face of Educationai Assess叩ent(London:Open Uni一

versity Press,1988),p.36.

3) ∬b 4.,p.37.       噛

4)Boad of Education, Report of(Spens)Consultative Commitee on Secondary Education with special refer一 ence to Grammar Schools and Technical High Schools(London:HMSO,1938),p.5.

5)Boad of Education, Report of(Norwood)Consultative Commitee on Secondary School Examination Coun一 cil on Curricula and Examinations in Secondary Schools(London:HMSO,1943),p.48.

6)Broadfoot, op. cit., p.39.

7)Further Education Curriculum Review and Development Unit, A Basis for Choice(London:FEU,1982)

P.49.

8)」わ」4.,P.41.

9)乃∫4.,P.42.

10)Broadfoot, p.89.

11)Murphy&Torrace, op. cit., p.40.

12)乃 4.,P.40.

13)Richard Groot, Pupils Personal Record , incL in P.Broadfoot, op. cit., p.90.

14)伽4.,P.91.

15)Jo Mortimore and Peter Mortimore, Secondary School Examination(Bedford Way Papers 18, University of London Institute of Education,1984),μ59.およびGeorge Pearson, A Network of Profiles , included in

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