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中村朋子・松本まどか

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(1)

保健室でとらえにくい生徒の健康問題の把握と対応についての研究

中村朋子・松本まどか

壌.はじめに

 養護教諭が生徒のかかえている健康問題を把握する機会は,本人または,学級担任や,友人等が保健室に 来室し,心身の健康問題を訴えてきた場合が多い。あるいは,毎Bの健康観察結果,健康診断・健康調査表等 の資料の利用により明らかにすることができる1)。

 しかし,健康問題を持っていても,何等かの理由により,保健室を訪れない生徒については,健康問題の 把握が困難なことが多い。また,医療機関を受診し,治療を受けていても,本人や保護者から学校に連絡が なかったり,本人が自分の健康問題に気づいていない場合も,学校では健康問題の把握が困難である。つま り,心身に健康問題を持つ生徒がいても,それが,養護教諭まで届かないことも少なくないと思われる。

 学校で健康管理をしていくうえで,生徒が持っている健康問題のうち,とくに,学校で,急変が予想され る場合や学校生活をする上で,何等かの配慮を必要とする場合,養護教諭だけでなく,学級担任をはじめと する一般教職員等もこれらの健康問題を把握していることが必要であろう。

 今回の調査では,このように養護教諭に届きにくい健康問題にはどのようなものがあるか明らかにしょう とした。生徒はどのような要因によって保健室に来ないのか(来にくいのか),養護教諭に話に来ないのか

(話しにくいのか,話したくないことも含めて)の実態調査した。それらの要因を知ることによって,生徒 の抱えている健康間題が保健室に届きやすくするには,養護教諭として生徒との対応のしかた,保健室のあ

り方,学級担任等の連携についてどのようにすればよいか検討した。

      2.調査方法,調査対象,調査期間

 5府県の中学校,高答学校の養護教諭各!00名に質問紙を郵送した。回収は中学校38名,高等学校43名で,

回収率は27%だった。調査期間は昭和62年9〜ユ0月。

       3.調査結果と考察 1)保健室でとらえにくい健康問題の内容について

 健康問題を持ちながら本人が保健室を訪れない生徒に対して,養護教諭が多様な情報のもとに後になって 把握できた健康問題にはどのようなものがあるのかを調査した。結果を表1にまとめた。

 「登校拒否(長期欠席者も含む)」が高率になっており,全体で72.7%をしめている。文部省の調査でも 登校拒否の急増が指摘されている通りである。休みはじめたことを学級担任は知っていても養護教諭までは 連絡が来ないことが多いと思われる。次いで「悩み等による身体症状」37.7%だった。頭痛,腹痛,気分不 良等の症状を訴えて保康室へ来室する児童・生徒が増えており,その原因,要因,背景は様々であるが,精 神的,心理的なものが多いといわれている。今回の調査では,保健室へ来ない生徒の中に様々な症状をもち,

その背景や要因は交友関係によるもの(778%),家庭環境によるもの(74.1%),親子関係によるもの,

(2)

部活動によるもの各(40.7%),進        表1 保健室で把握しにくい健康問題 路・受験によるもの(33.3%),疾

病への逃避によるもの(222%)そ の他担任との関係,成績等の回答が あった。

 中,高校生であれば,程度の差は あれ,上記の様なことで悩むのはよ くあることだが,身体症状が発現し,

程度がひどくなり,本人は保健室に 来られず,担任,友人等が保健室へ 相談に来るのは問題であろう。学校 や家庭でもっと早く解決する方法,

機会を考える必要があると思われる。

2)保健室で健康問題をとらえられ  ない要因について

 表1に示したような健康問題につ

       ( )内は% いて保健室で養護教諭がとらえられ ない要因を表2に示した。生徒が訴

えて来ない場合,一般教師の理解不      表2 健康問題をとらえきれない要因について 足,養護教諭の力量不足や日常執務

の忙しさ等があげられよう。それら の実態とそれらを改善・解決してい くために,どのような配慮,工夫を しているのか考察した。

 生徒側の要因,養護教諭側の要因,

一般教師側の要因が8割をこえてい       ( )内は%

る。とくに主な要因1つを回答して

もらったものでは,中学校では養護教諭側の要因26.3%,保健室の要因18.4%,高等学校では生徒側の要因 35!ア%,養護教諭側の要因286%であった。小倉2)は養護教諭まで健康問題が届かない要因として児童。生 徒,学級担任,保護者をあげている。今回の調査でもその他に保護者の要因として,てんかんや精神分裂病 など学校に連絡がなく把握出来なかったという回答があった。

 (1)生徒側の要因について

 生徒側の要因と考えられるものを表3にまとめられた。「生徒の性格によるもの」が多かった。

 恥ずかしい,気が小さくて保健室にいけない等があげられた。生徒が無口で,内気な性格だと,他の元気 な生徒におされて,入室しづらい等があげられた。「相談に関するもの」では「相談しても仕方ないと思い 行かなかった,人に相談することを思いつかない」等が回答された。自分の健康について誰かに相談しようと する姿勢のみられない生徒の姿が想像される。

 「病職の不足によるもの」では,精神分裂病,躁欝病等,身体面より精神面が絡んだ健康問題の事例があ げられた。その他「人に知られたくない」「教師への信頼不足」と続いている。新田3),内山4)らの調査で

        校 種健康問題

中(n;34) 高(n=43) 計(n=77)

登校拒否(長期欠席者含む) 22(64.7) 34(79。1) 56(72.7)

悩みによる身体症状 13(38.2) 16(37.2) 29(37.7)

性的問題 12(35.5) 16(37.2) 28(36.4)

月経困難・月経異常 12(35.3) 15(34.9) 27(35」)

妊  娠 7(20.6) i5(34.9) 22(28.6)

てんかん 9(26.5) 13(30.2) 22(28.6)

薬物乱用(シンナー等) 12(35.3) 9(20。9) 2エ(27.5)

やせ(思春期やせ症等) 5(14.7) 15(34。9) 20(26.0)

身体の障害(奇形・あざ等) 4(11.8) i3(30.2) 17(22」)

貧  血 6(17,6) 10(23.3) !6(20.8)

運動障害 8(23.5) 6(14.0) i4(18.2)

分裂病 4(11.8) 10(23.3) 14(18.2)

躁健病 2(5.9) 9(20.9) 11(14.3)

ノイローゼ 2(5。9) 9(20.9) 11(i4.3)

糖尿病 2(5.9) 3(7.0) 5(6.5)

その他 3(8.8) 6(14.9) 9(1L7)

      校 種要  因

中(葺二38) 高(n漏42) 計(n瓢80)

生徒側の要因 33(86.8) 38(90.5) 71(88.8)

養護教諭側の要因 30(78.9) 37(88.1) 67(83.8)

一般教師側の要因 29(76,3) 35(83.3) 64(80.0)

保健室等の要因 25(65.8) 26(61.9) 51(63.8)

その他の要因 6(15。8)

8(ユ9.0)

14(17.5)

(3)

  表3 健康問題をとらえきれない要因 一生徒側の要因一   は「たいしたことはないと思いがま       んした」 「時間的余裕の不足」等が       あげられている。

       (2)生徒側の要因についての対応       のしかた

       生徒側の要因に対してどの様にし       て対応すればよいかまとめた。

       ・ 生徒の性格によるものについ       ては養護教諭はできるだけ気軽に話       しかける。生徒の様子がいつもと違       うと思われる時,普段自ら話をしな       い生徒が来た場合,特に気をつけて       養護教諭から話しかけるようにする。

      話しやすい雰囲気づくりに心がけ,

      生徒の信頼関係が得られるようにし       ていく等。

       ・ 相談に関するものについては,

      保健室の役割を生徒・一般教師に PRして共通理解をはかる。健康相談を組織化して,相談に来やすくする。

 ・ 病識の不足によるものは生徒自身,自分の健康問題に気づき,解決するために保健教育,保健指導の 強化,保護者にも保健だよりや保護者会等で健康に関する情報提供をおこなう。

 ③ 養護教諭側の要因について

 健康問題が把握できない要因のうち養護教諭側に要因があると回答した内容を表4にまとめた。

 「忙しくて,ゆっくり時間をかけ

      表4.健康問題をとらえきれない要因 て生徒と対応できない」が多く・      一養護教諭側の要因一

52.2%だった。これに「日常執務だ けで手いっぱい」「救急処置だけで 手いっぱい」等を含めると,回答の あった養護教諭のほとんどが「忙し い」という要因をあげている。次い で「養護教諭の力量不足」があげら れた。その他「周囲への働きかけの 不足」「養護教諭の人間性」等があ げられた。大谷等の調査では「養護

教諭の対応を思うと行きたくない」との回答があげられている。

 (4)養護教諭側の要因についての対応のしかた

 ・忙しくて時間がないについては執務内容の整理をはかり,生徒と接する時間を作る。生徒の訴えが聴 けるように,精神的にゆとりを持つようにしたい。

 来室しても,話を聴けなかった場合,あとで個別に呼んで相談等に応じたり,担任から最近の様子を聞く。

         校 種要 因

中(R;33) 高(n漏38) 計(n=71)

生徒の性格によるもの 14(42.4) エ9(5α0) 33(46.5)

はずかしい 6(42.9) 1!(57.9) 17(51.5)

気が小さい 6(42.9) 5(26.3) 11(33.3)

行きづらい 0(0.0) 3(15.8) 3 9ほ)

その他 5(35。7) 5(26,3) 10(30.3)

相談に関するもの 9(27。3) 16(42.1) 25(35.2)

相談しても仕方ない 3(33.3) 5(31.3) 8(32.0)

思いつかない 2(22.2) 3(18.8) 5(20.0)

保健室への理解不足 2(22.2) 3(18。8) 5(20.0)

他教師に相談する

1(エ1.1)

1(6.3) 2 8.0)

友人に相談する 0(0.0)

2(エ2.5)

2 8.0)

その他

1(1ユ,1)

5(31.3) 6(24.0)

病識の不足によるもの 5(15.2) 13(34.2) 18(25.3)

人に知られたくない

6(!8.2)

10(26.3) 16(22.5)

教師への信頼不足 6(18,2) 7(18.4) 13(18.3)

その他 7(21.2) 7(18.4) !4(19.7)

        校 種要因

中(R=30) 高(n識37) 計(n漏67)

忙しく時間がない 14(46.7) 21(56.8) 35(52.2)

養護教諭の力量不足 8(26.7) 6(16.2) 14(2α9)

周囲への働きかけの不足 4(13.3) 7(18.9) 11(16。4)

日常執務で手いっぱい 6(2α0) 4(10.8)

ユ0(エ4.9)

養護教諭の人間性

4(ユ3.3)

5(13。5)

9(ユ3.4)

救急処置で手いっぱい 3(10.0) 4(10.8)

7(!0.4)

生徒とのふれあい少ない 2(6,7) 5(i3.5) 7(ユα4)

その他 2(6.7)

4(!0.8)

6(9.0)

(4)

       校種要因

中(n=29) 高(n−35) 計価=64)

保健室への理解不足 8(27.6) 15(42.9) 23(35.9)

問題を一部で抱え込む 6(20.7) 16(45.7) 22(34.4)

問題の軽視(力量不足) 8(27.6) 1エ(31.9) 19(29.7)

養護教諭への理解不足 1(3.4) 7(20.0) 8(12。5)

学校保健への理解不足 1(3.4) 2(5.7) 3(4.7)

ラポールの未確立 2(6.9) 1(2.9) 3(4.7)

その他 11(37。9) 5(14.3)

エ6(25.0)

       校 種要 因

申(R == 25)

高(n=26)

計(n   51)

たまり場でうるさい 13(52.0) 10(38,5) 23(45.D 相談活動の場所がない 5(2α0) 8(30.8) エ3(25.5)

保健室の位置が悪い 7(28.0) 6(23.1) 13(25.5)

保健室が小さい 2(8.0) 3(11.5) 5(9.8)

保健室の利用制限 2(8.0) 3(11,5) 5(9.8)

保健室の雰囲気が暗い 1(4.0) 1(3.8) 2(3.9)

その他 3(12.0) 4(15.4) 7(13.7)

執務全体にかかわることだが,養護教諭の複数配置がなされれば忙しさも緩和されよう。

 ・ 養護教諭の力量不足に対しては様々な健康問題に対応するためには研修を深め,知識,技術を豊富に することも必要だ。生徒を理解したり,共感できるように,感性を豊かにすることも大切である。

 ⑤ 一般教師側の要因

 養護教諭が児童・生徒の健康問題を捉えられない要因が一般教師にある場合を表5にまとめた。

 「保健室への理解不足」では「保健室はけがや病気の生徒だけが行くというように考え,身体症状がない 者が行くことを快く思わない」「保健室を利用する生徒は怠けていると思っている」等があげられていた。

「問題を抱え込む」の具体例では,「生徒の問題を自分で処理出来ないのはプライドが許さないため,相談 にこない」 r学級王国意識が強く,養護教諭のみならず,生徒指導部や管理職にさえ相談することを嫌う」

「保健室に行くことが担任の汚点のようにとらえている」等があげられた。

 ㈲ 一般教師側の要因についての対応のしかた

 表5にあげられた要因は生徒の健康について,保健室,養護教諭への理解不足などが改善されるよう積極 的に働きかけていくことが大切であろう。小倉(6>は「養護教諭の役割を認識している担任ほど,学級の子ど       もの健康情報を伝えて来ることが考え      表5.健康問題をとらえきれない要因

      られる」と述べている。

        一一般教師の要因一

       ・ 保健室は救急処置をするところ,

      という考えの強い一般教師に対し,一       職員会議や印刷物を通して保健室の様       子や,保健室からみた生徒の健康状態       等を知らせ,養護教諭の仕事や保健室       に対して理解してもらう。

       ・ 情報交換に努める。普段の会話       のなかで,保健室でどのような仕事を       しているかわかってもらう。

 ・ 悩みや,心配ごと等精神面での健康が身体面に影響を与えていることを理解してもらう。

 (6>保健室等の要因

 生徒が保健室にきにくい要因を保健室の環境面から回答してもらい表6にまとめた。

 「保健室がたまり場になっていてうるさい」が多かった。これは(1)の生徒側の要因とも関連するが,生徒 が大勢いると入りにくかったり,落ち着いて養護教諭に話ができなかったりすることはよくあることだ。

       「相談活動の場がない」は悩みの相談       表6.健康問題をとらえきれない要因

         一保健室の要因一      などがあって養護教諭に相談しようと

      思っても他の生徒に見られてたり,聞

      かれてしまうので行かないというもの

      である。保健室の位置では,教室とあ

      まりに離れている時には休み時間の関

      係などで行かなかったり,校長室や職

      員室の近くにある場合,保健室に行き

      にくいこともある。

(5)

 (8)保健室の要因についての対応の仕方

 保健室の位置や広さ等の立地条件は養護教諭一人の努力では。改善することは困難なことと思われる。保 健室がたまり場になることに対しては学校で決めてある保健室の利用の仕方を徹底させることが必要である。

保健室を本来の目的以外で利用する生徒に対しては厳しい態度で臨むことが大切である。相談活動の場所の 確保については,保健室の中につい立て等で相談コーナーを作ることであるが,完全ではなく他の生徒に聞 かれてしまうこともある。なんとか保健室の隣りか,近くに相談室がほしい。教育相談室などが空いている 場合,そこを利用することも一方法だろう。

 その他,一般に生徒が気軽に保健室を利用できるようにするために次の様なことがあげられる。

 ・ 入口でウロウロしている生徒に気を配るようにする。

 e 生徒の関心のある掲示物を増やす,身体や医学に関する本など,視聴覚教材を揃える。

 ・ 測定器具類を常備しておくQ

 以上,保健室で健康問題を把握しにくい要因と対応について述べた。実際には事例に紹介するようにいく つかの要因が重なって問題の把握を困難にしていることが多い。

3)健康問題の事例について

 健康問題の把握がおくれた事例の回答からいくつかを紹介する。

事例i.高1  女 妊娠

 把握した方法;入学して2か月過ぎ,本人の代わりに友人が保健室に胃薬をもらいにくる。本人でないと 薬は渡せないから,本人と一緒に来るよう指導。

 健康問題の内容・経過;「最:近,胃の調子が悪いので胃薬がほしい」と雷う。1時間程話していくうちに,

申学時代から男友達がいて深い関係にあり,現在,生理がないこと,嘔気嘔吐がすることがわかった。受診 の結果妊娠4カ月だった。誰にも言わないで欲しいと懇願されたが,本人の口から両親に話させた。中絶した。

しばらくして,保健室にきて「実は,あの時,先生に呼び出されて,すがるような気持ちで保健室へ行った のです。先生見つけてくれてありがとう。」と言われた。

〈考察〉 妊娠を疑って悩み,養護教諭に助けを求めながらも,保健室に行けなかった事例である。養護教 諭が胃の調子が悪い原因を把握し健康問題が解決できたものである。話しにくい生徒がいるとのことを理解

して生徒との対応を進めて行くことが大切である。

事例2、小5  男 やせ症

 把握した方法:母親からやせ症のため入院したとの連絡を受けた。

 健康問題の内容・経過=級友にデブ,ブタと言われたのでやせようと決心。食事制限を始める。母親は入 院中の祖母の付添いで不在,父親は単身赴任中,姉が世話をしていたが気づかなかった。

 月例体重測定で2 kg減少しているのに気づく。本人に声をかけたが,はっきり答えなかった。連休明けで 疲れかなと軽く考えそのままにした。翌月の体重測定は欠席。担任より授業中も元気がないと連絡があった が,日々,忙しく本人を呼び出す時間がなかった。母親が不在で,生活が不規則になったり,精神的にも不 安定なのかも知れないと勝手に解釈して,そのままにしてしまった。3カ月でIOkg減。腹痛で受診し,脱水 症状も強く2カ月入院し,治癒した。

〈考察〉 体重測定や,担任の情報で気になったが,忙しさのためそのままになった事例である。両親が不

在だったことも問題の把握が遅れたようだ。男子でも体種を減らそうとするあまり,神経性やせ症になり入

院治療した貴重な事例である。なにか気になったり,変だなと思った時は,5分でも10分でも本人と面接す

れば,問題把握の糸口がつかめると思われる。

(6)

事例3.高1 男どもり

 把握した方法:本人は頭痛を訴えて保健室にきたことがある。その時,元気がなかったので,家庭連絡を し,受診させた。異常なしだった。学級担任も本人が学校生活に元気がないのに気づいていたが,自慰のし すぎではないかと勝手に解釈し,本人,養護教諭に伝えた。養護教諭は本人と関わりたくないと思い,その ままにしてしまった。その後,家出という形で表面化し,連れ戻された。養護教諭に相談にきて,以下のこ とがわかった。どもりであることを他人に知られたくなくて,秘かに直そうとしたが,思うようにいかず,

ひとりで悩み,自分の性格まで嫌になってしまった。親は親身になってくれず,担任からは自慰のしすぎと 思われ,いたたまれなかった。保健室へは,頭痛ということでいったが相手にされなかった。

 経過:相談機関と連携をとり,カウンセラーと面接をするようにし,治療をはじめた。

〈考察〉 養護教諭が頭痛の経過観察を続けていれば本当の原因がわかったかもしれない。学級担任の判断 にも問題がある。気の弱い生徒であればそのように言われても反論も出来ずに悶悶としていたことを考える と軽々しい言動は慎むべきことを教えられる。

事例4.高3  女 潰瘍性大腸炎

 把握した方法:担任より急に入院することになったとの報告を受けた。

 健康問題の内容・経過=2年になってから,腹痛が頻繁に起こり,その都度,早退,欠席をしていた。下 血があり心配で保健室に何度か行ったが,いつも生徒が大勢いて,他の生徒に聞かれるのが恥ずかしくて,

相談する機会がなかった。母親の病死,進学の悩み等で,精神的に不安定だった。めまい,貧血が起きるよ うになり,受診の結果,即,入院となる。退院した時,本人を保健室に呼び出した。その後も入退院を繰り 返したが,気軽に保健室に来て,休養していくようになった。

〈考察〉 保健室にいつも生徒が大勢いて相談できなかった事例である。本事例や,性的な問題など他人に 聞かれたくないことに気をくばることも大切である。養護教諭は毎日の執務で忙しいが,保健室に来て話を

していかなかった生徒は後で呼び,話を聞く余裕が欲しい。

4)保健室に届きにくい健康問題を早期発見するための方法や配慮していることについて

 健康問題を持ちながら保健室を訪れない生徒を把握する機会,方法としては健康観察,健康調査,各種の 記録の利用等があげられる。

 (1>観察について

 観察に重点をおいて利用していると回答があったのは中学校81.6%,高等学校83.3%で,校内巡視や朝会 時に行われていた。健康観察の項目では,顔色,表情,動作・態度,歩き方,姿勢,等だった。その他,で

きるだけ声をかけ,対応・反応の様子に注意する,交友関係に気を配る等の回答もあった。

 ② 記録について

 記録類の活用は中学校73.7%,高答学校64.396の回答で出欠状況,欠席の理由から把握するが半数を占め ていた。その他には遅刻,早退の生徒に注意している,体育見学届,生徒指導巡回記録,校外補導記録等が あげられた。

 (3)調査について

 なんらかの調査を行い活用していると回答があったのは中学校57.9%,高等学校64.3%だった。調査の種 類としては学校行事の前後が7割で多かった。その他,生活に関する調査,悩みに関する調査,性に関する 調査,高校では心理テストも1割程実施されていた。

 一般に,保健室によく来る生徒であれば,救急処置簿の記録等から頻回来室者として健康問題を把握しや

すいが,保健室を訪れない生徒については以上述べたような種々の方法で把握していることがわかった。

(7)

5>学級担任や生徒との連携について

 4)で述べた方法で養護教諭が生徒の健康問題を把握する他に学級担任や部活動の顧問教師,友人等から連 絡があり把握出来ることも多い。把握する経路では「学級担任」を1位に回答したのは中学校62.3%,高等 学校64.3%だった。2)の健康問題をとらえられない要因に一般教師があげられているが,生徒と接する機会 の多い学級担任から多かった。次いで「本人以外の生徒から」がユ,2位選択各々2割程あげられた。その 他,部顧問,保護者,小学校の養護教諭より,医療機関より等があげられた。

 これらの人々と円滑な連携が保たれれば健康問題の情報も保健室に届きやすいと思われる。そのために養 護教諭はどのような配慮をしているのだろうか。

 (1)担任との連携について

 「担任とふれ合いを多く持つ様に心がけている」の回答が3割だった。保健室に一日いると孤立してし まうことが多いので給食時を含め,職員室にいる時間を増やしたりして,ふれ合いの場を多く持つことによ り,話題が入ってくると思われる。 「情報交換を密にする」21%だった。保健室の情報を出来る限り提供す れば,養護教諭に情報が戻ってこよう。 「気になる生徒について聞く」は高校で14%あげられた。担任から 情報を得るためには養護教諭の方から積極的に働きかけていくことも大切である。

 (2)本人以外の生徒との連携について

 友人からの情報を得やすくするための配慮についての回答は以下のようである。r話をする機会を多く持 つ」35%,「心配な生徒については友人に尋ねる」25%,「人間関係を良くする」14%,「生徒達の会話に 注意している」12%,「秘密厳守」9%等。普段から健康問題に限らず生徒との会話をするように心がけ,

何気ない生徒達の話から種々の健康情報が得られるようである。生徒との連携を保つためには,養護教諭自 身が心を開き,広く生徒達を受けとめようとする姿勢が大切であろう。

      4.ま と め

1)保健室でとらえにくい健康問題として,登校拒否73%,悩みによる身体症状38%,性的問題36%,月経 困難・月経異常35%等があげられた。

2)健康問題がとらえにくい要因として生徒側の要因,養護教諭側の要因,一般教師側の要因が8割,保健 室等の要因が6割だった。

 ・ 生徒側の要因では,生徒の性格によるもの,相談に関するもの,病識がない等があげられた。

 ・ 養護教諭側の要因では,忙しくて時間がない,力量不足,周囲への働きかけの不足等だった。

 ・・ 一般教師側の要因では,保健室への理解不足,問題を教師が抱え込む,問題を軽視する等だった。

 ・ 保健室等の要因では,たまり場でうるさい,相談活動の場がない,保健室の問題等だった。

3)健康問題を早期に発見するための機会や方法としては,観察が8割,記録によるもの6〜7割,調査に よるもの5〜6割だった。

4)健康問題を発見する経路は学級担任が6割,次いで本人以外の生徒からだった。

 ・ 学級担任との連携では,担任とのふれ合いを多く持つ,情報交換を密にする等があげられた。

 ・ 本人以外の生徒との連携では,話をする機会を多く持つ,心配な生徒の友人尋ねる等だった。

(8)

       参 考 文 献

1)小倉e佐々木;「健康問題発見方法・資料の活用に関する研究j小倉学編,学校保健,その研究課題と方法,第2集,

東山君房(1974)p.31〜41.

2)小倉学:「養護教諭まで届きにくい健康問題一その要因を考える一j健康教室Vol.35,No.7(ig84)p.8〜エ6.

3)新EH e森:「生徒の保健室利用状況および養護教諭観についての研究」健康教室Vo l.29,Na 10(エ978)p.52〜60.

4>内山。佐藤:「身体疾患,傷害者以外の保健室利用状況について」小倉e内山編「養護教諭の職務研究」第5集.

5>大谷・藤家二中学生の保健室利用に関する研究」茨大教育学部教育保健学科「卒業研究抄録集」(6)(1984)p.68〜71.

6)前掲書2)

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