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大学生における喫煙と社会的ネットワークおよび気 分状態の関連

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分状態の関連

著者 入江 智也, 横光 健吾

雑誌名 北翔大学北方圏学術情報センター年報 = Bulletin

of Northern Regions Academic Information Center, Hokusho University

巻 12

ページ 51‑57

発行年 2020

URL http://doi.org/10.24794/00003292

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研究論文

大学生における喫煙と社会的ネットワークおよび気分状態の関連

入江 智也 横光 健吾

)北翔大学教育文化学部心理カウンセリング学科 )立命館大学総合心理学部

本研究では,大学生における喫煙が気分状態に及ぼす影響に,社会的ネットワークの構造が 媒介するかを検討した。大学生 名(男性 名,女性 名,平均年齢 . ± . 歳)を対象 として,喫煙頻度,不快気分および生活満足感,社会的ネットワーク指標である密度および媒 介中心性の評定を行った。その結果,喫煙が生活満足感に及ぼす影響には密度が媒介してお り,喫煙の有無が密度を高め,生活満足感を向上させる傾向があることが明らかとなった。一 方,喫煙と不快気分の関係に対しては密度の有意な間接効果は認められなかった。媒介中心性 はいずれの関係に対しても有意な間接効果が認められなかった。上記の結果について,大学生 における喫煙の役割の視点から考察する。

キーワード:喫煙,大学生,不快気分,生活満足感,社会的ネットワーク分析

Ⅰ.背 景

嗜好品とは,「栄養摂取を目的とせず,香味や刺激を 得るための飲食物,酒・茶・コーヒー・タバコの類」で あると定義されている。嗜好品の中でも酒・茶・コー ヒー・タバコは人びとの生活にとって身近なものである ことを理由に,これらは一般的に四大嗜好品と呼ばれて いる。四大嗜好品を摂取することは,リラックスする 効果やコミュニケーションを促進する効果があることが 示されている

一方,嗜好品の摂取が人びとに及ぼす影響について,

好ましくない影響も指摘されており,特に若年層の喫煙 によって生じる問題が注目されている。「学生の健康白 書 」によると,本邦における大学生のうち,喫煙者 の割合は,男性で . %,女性で . %であることが示 されている。大学生の喫煙に関連する問題としては,

健康被害に関する知識をもたない喫煙が,肺がん罹患や 重篤な依存症となる危険性を高めるといった健康上の問 題が指摘されている

一方,大学生における喫煙は,心理社会的側面にポジ ティブな影響を及ぼす可能性が指摘されている。瀬在・

宗像は,構造方程式モデリングを用いて,大学生の喫 煙行動が生活満足感に及ぼす影響を検討した。その結 果,喫煙行動は生活満足感の悪化を抑制していることを

明らかにした。さらに,喫煙の開始と維持には,親密な 人の属性や他者との接触頻度をはじめとする社会的要因 が関わっていることが明らかにされている。Christakis

& Fowlerは,Framingham Heart Study のデータを用 いて,対人関係が喫煙者の喫煙行動に及ぼす影響を検討 した。その結果,喫煙者の所属するネットワークには喫 煙者が多く,自分自身と類似する行動パターンを示す者 とネットワークを築こうとする傾向(同質性:homo- phily)が認められた。

このように,大学生における喫煙は,身体的にはネガ ティブな影響を及ぼすものの,心理社会的側面において は,喫煙は対人関係を構築・維持し,生活満足感の悪化 の抑制に関係していると考えられる。大学生の対人関係 の乏しさは,抑うつ気分や低い生活満足感に影響をして いることが示されている。したがって,喫煙が対人関 係の構築や維持の役割を有している場合,対人関係の構 築の程度を示す密度をはじめとする社会的ネットワーク を媒介して,大学生の精神的健康や生活満足感に対して はポジティブな影響を与え,さらに不快気分を緩和させ ると考えられる。しかしながら,喫煙と不快気分および 生活満足感の関連を検討する際に,個人が有する対人関 係を含めた,喫煙,気分状態,社会的ネットワークの 者関係に着目した研究はこれまで行われていない。大学 生にとって,喫煙が生活や心理状態にどのような影響を 及ぼしているかを精査することは,今後の健康支援にお

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いて重要な情報となる。そこで本研究では,社会的ネッ トワークの構造が,喫煙と気分状態の関連を媒介するか を明らかにすること目的とした。

Ⅱ.方 法

.倫理的配慮

研究の実施に先立ち,筆頭著者の所属機関研究倫理審 査委員会の承認を得た。

.研究協力者と募集手続き

都市部近郊に所在する大学に所属する 歳以上の大学 生および大学院生 名に対し,調査を実施した。参加 者の募集は 年 月から 年 月にかけて,講義時 間を利用した募集と,学内ポスター掲示にて行った。大 学講義時間の募集では,社会的ネットワーク調査票以外 を配布し,調査協力依頼を行った。調査への回答と併せ て後続するネットワーク調査への参加を希望した者に対 し,後日筆頭著者より連絡を行い,社会的ネットワーク 調査票への回答方法の説明を口頭で行い,記入を求め た。さらに,学内ポスターにおける募集では,調査への 参加を希望した者に対して,すべての調査票への記入を 求めた。 名(男性 名,女性 名,平均年齢 .

± . 歳)が調査に回答した。そのうち記載漏れのあっ た者を除いた 名(男性 名,女性 名,平均年齢 .

± . 歳)が有効回答者であった。有効回答者のうち,

後続する社会的ネットワーク調査への回答に同意した 名(男性 名,女性 名,平均年齢 . ± . 歳)を 本研究の研究協力者とした。なお,すべての調査票に回 答した者のうち,大学講義時間の募集による協力者は 名(男性 名,女性 名,平均年齢 . ± . 歳),学 内ポスター掲示募集による協力者は 名(男性 名,女 性 名,平均年齢 . ± . )であった。すべての調 査票に回答した者には謝礼として, 円分の商品券を 渡した。

.調査材料

)喫煙状況

直近 週間の 日の喫煙本数を尋ねた。本研究では,

喫煙者を「 日に 本以上喫煙する者」と操作的に定義 した。なお,本研究における喫煙者は,過去の喫煙に関 する研究で用いられた基準を参考に定義した。なお,

本研究では嗜好品の摂取状況の調査を兼ねて飲酒頻度に 関する項目を設定していたが,今回は本研究の目的に応 じて喫煙に関する情報のみを用いて分析を行った。

)Profile of Mood States Second Edition 日本語版短 縮版(以下 POMS とする)

項目からなる,全般的な気分状態を測定することが できる尺度である。内的整合性による信頼性(α=.

−. ),PANAS-X との収束的妥当性( =. −. ) が認められている。総合的気分状態(Total Mood Dis- turbance,以下 TMD とする)を指標とした。TMD は 得点が高いほど,よりネガティブな気分状態にあること を示す指標である

)日本語版 Satisfaction With Life Scale(以下 SWLS とする)

項目からなる,生活満足感を測定することができる 尺 度 で あ る 。内 的 整 合 性 に よ る 信 頼 性(α=.

−. ),ハッピネス尺度 との収束的妥当 性( =.

−. )が認められている 。総合得点を指標とした。

)社会的ネットワーク調査票

調査対象者に対し,「過去 年の間に色々な話しをし た人(以下オルターと記す)」のイニシャル等を挙げる ネームジェネレーター方式を用いた調査を行った。社会 的ネットワーク調査票は,調査対象者を中心としたエゴ セントリックネットワークを明らかにすることを目的と して構成された。挙げるオルターの人数は,Meisel et al. を参考に 名とした。

調査対象者はそれぞれのオルターについて,親しさ

( :会ったことがない− :とても親しい),喫煙頻 度( :ここ 年無し− : 日 本以上),さらにそ れぞれのオルターと共に喫煙をする頻度( :ここ 年 無し− :毎日)を回答する。また,それぞれのオル ター同士の親しさ( :会ったことがない− :とても 親しい)についても回答を求めた。調査対象者およびオ ルター同士の繋がりを, を最大値とする紐帯(edge)

とし,密度(density)および媒介中心性(betweenness centrality)を算出した。紐帯とは,社会的ネットワー クにおいて個人間に関係性が存在することを示すもので ある。密度とは,当該ネットワークがとりうる紐帯の数 または重みに対する実際の数または重みによって定義さ れるものであり,当該ネットワークにおける個人間の関 係の量や親しさの程度を示す指標である。密度が高いほ ど,オルター同士の関係が多いことを示す。媒介中心性 は,オルター同士の関係について,個人が媒介すること によってその関係が成り立つ程度を示すものである。媒 介中心性が高いほど,オルター同士の関係の多くが対象 者の介在によって成り立つことを示す。

.解析方法

特定の嗜好を有する人物は,同じ嗜好を有する他者を 好む傾向にあることが分かっている。喫煙の頻度に応

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じて,喫煙をするオルターの数,喫煙をするオルターと ともに喫煙を行う頻度,喫煙をするオルターとの親しさ が増減する傾向があるか確認するために,Jonckheere- Tepstra test を用いて傾向分析を行った。

さらに,社会的ネットワークの構造と,喫煙の有無,

さらに気分状態との関連を検討するために,喫煙の有無 を独立変数,POMS の TMD および SWLS 総合得点を従 属変数,ネットワーク密度および媒介中心性を媒介変数 とした媒介分析を実施した。なお,ネットワーク密度は 紐帯のとり得る値の最大値( )で除した値を標準化さ れた値として用いた 。媒介中心性はとり得る値の最大 値((n− )(n− )/ )で除した値を標準化された値 として用いた

解析に用いたソフトは,Jonckheere-Tepstra test には R . . ,媒介分析には HAD . であった。

Ⅲ.結 果

.記述統計量

記述統計量を示したものが Table である。喫煙者と 非喫煙者の割合について,性別において有意な差異が認 められ,男性の方が喫煙者が多いことが示された(χ

( , )= . , <. )。さらに,喫煙頻度の増加に応 じて,喫煙するオルターの数,親しさ,共に摂取する頻 度が変動するか検討するため,Jonckheere-Tepstra test を実施した。その結果,喫煙頻度の増加に応じて喫煙す るオルター数および喫煙するオルターと共に喫煙する頻 度が増加することが示された(オルター数:J-T 統計量

= ., <. ,オルターと共に摂取する頻度:J-T 統計量= , <. )。一方,喫煙するオルターとの親 しさについて,有意な増加傾向は認められなかった(J- T 統計量= )。なお,本研究において喫煙者の割合に ついて性差が認められたことから,以降の分析では性別 を統制変数として投入した。

.社会的ネットワーク指標の媒介効果

本研究において実際に得られた喫煙者,非喫煙者の社 会的ネットワーク図の一例を示したものが Figure で ある。各円が個人を表し,ネットワーク図にある横線の 含まれた円が調査対象者を表す。黒色の円は喫煙者を表 し,白色の円は非喫煙者を表す。円をつなぐ直線は紐帯 を表し,紐帯に繋がれた個人同士には関係性があること を表す。すべてのネットワーク図を見ると,喫煙者の ネットワークでは,オルターに喫煙者が多く,非喫煙者 のネットワークでは,オルターに非喫煙者が多いことが 窺える。さらに,喫煙者では紐帯の数が多く,密度が高 いことが窺える。このことは,Jonckheere-Tepstra test で示された結果と一致している。

媒介分析の実施にあたり,各変数間において性別を統 制変数とした偏相関分析を行った。その結果,喫煙の有 無と SWLS との正の相関( =. , <. ),TMD との 負の相関( =−. , <. )が認められた。そこで,

喫煙の有無と不快気分および生活満足感との関連に対 し,社会的ネットワーク指標が媒介するかを検証するた めに,性別を調整変数とした調整媒介分析を実施した

(Figure )。なお,媒介分析ではブートストラップ法

( 回)を用いてバイアス修正法による信頼区間の推 Table 記述統計量

性別 年齢 SWLS 得点 TMD 得点 喫煙する

オルターの数

喫煙する オルターとの

親しさ

喫煙する オルターとの

喫煙頻度

非喫煙者

吸わない

( . )

( . )

( . )

( . )

( . )

喫煙者

本未満

( . )

( . )

( . )

( . )

( . )

( . )

本未満

( . )

( . )

( . )

( . )

( . )

( . )

( . )

( . )

( . )

( . )

( . )

( . )

χ . *

統計量 .* *

注) 日に 本以上喫煙する者はいなかったため省略している。

統計量=Jonckheere-Terpstra test,SWLS=日本語版 Satisfaction With Life Scale,TMD=Profile of Mood States Second Edition 日本語版短縮版における Total Mood Disturbance. * <.

(5)

1 2

4 3 5 6

7 8

9 10

12 11 13

15 14 16

17 18 20 19

21

22 23

24

26 25

27

28 29

30 31

ႚ↮⪅

ࢿࢵࢺ࣮࣡ࢡ

ᑐ㇟⪅㸦ego㸧

ႚ↮⪅

㠀ႚ↮⪅

2 3 1 4 5 67

9 8

10 11 12 13

14 15

1617 18

19 20 21

22 23 24 26 25

27

28 29 30

31 㠀ႚ↮⪅

ࢿࢵࢺ࣮࣡ࢡ

ᑐ㇟⪅㸦ego㸧

ႚ↮⪅

㠀ႚ↮⪅

ႚ↮ࡢ᭷↓ SWLSᚓⅬ

TMDᚓⅬ ᐦᗘ

፹௓୰ᚰᛶ

ᛶู .39 .43

<.36*> → .02 [0.06, 6.48]

ႚ↮ࡢ᭷↓ SWLS

ᐦᗘ

Table 各モデルにおける変数間の標準化係数

直接効果 間接効果

モデル 変数 標準化係数 標準誤差 %CI

喫煙の有無→密度→SWLS

喫煙の有無→密度

. , .

密度→SWLS

喫煙の有無→SWLS

喫煙の有無→媒介中心性→SWLS

喫煙の有無→媒介中心性

− . , .

媒介中心性→SWLS −. − .

喫煙の有無→SWLS

喫煙の有無→密度→TMD

喫煙の有無→密度

− . , .

密度→TMD −. − .

喫煙の有無→TMD −. − .

喫煙の有無→媒介中心性→TMD

喫煙の有無→媒介中心性

− . , .

媒介中心性→TMD

喫煙の有無→TMD −. − .

注)SWLS=日本語版 Satisfaction With Life Scale 総合得点,TMD=Profile of Mood States Second Edition 日本語版短縮版におけ

る Total Mood Disturbance <.

Figure 喫煙者,非喫煙者ごとの社会的ネットワーク図の一例

Figure 本研究の媒介モデル

注 )SWLS=日本語版 Satisfaction With Life Scale 総合得 点,TMD=Profile of Mood States Second-Edition 日本語 版短縮版における Total Mood Disturbance.

注 )実線は直接効果を,破線は間接効果を表す。

Figure 喫煙が生活満足感に与える影響に対するネットワー ク密度の間接効果

注)係数は標準化係数,< >内は媒介変数投入前の標準化係 数,[ ]内は間接効果の %信頼区間を表す.

SWLS=日本語版 Satisfaction With Life Scale 総合得点.

* <. ,p<.

(6)

定を行った。それぞれのモデルにおける標準化係数を示 したものが Table である。Table を見ると,喫煙と 生活満足感の関連に対して,ネットワーク密度の間接効 果が有意であることが %信頼区間からわかる(Figure

, %CI[ . , . ])。し か し な が ら,媒 介 中 心 性の間接効果は認められなかった。不快気分について は,ネットワーク密度および媒介中心性の間接効果は認 められなかった。

Ⅳ.考 察

本研究の目的は,社会的ネットワークの構造が,喫煙 と気分状態との関連を媒介するかを明らかにすることで あった。その結果,喫煙と生活満足感との関連に対し て,ネットワーク密度が媒介することが示された。一 方,不快気分については,ネットワーク密度および媒介 中心性の間接効果は認められなかった。得られた結果に 対する考察を以下に示す。

記述統計量の結果から,本研究における大学生の喫煙 者は男性に多く,「学生の健康白書 」と一致するこ とが認められた。さらに,傾向分析の結果から,喫煙 者は喫煙をする他者との面識が多く,摂取頻度の増加に 伴い喫煙する他者との面識が増加する傾向があることが 認められた。そして,喫煙の頻度が多い場合,喫煙する 他者と共に喫煙する機会を増加させる傾向があることが 認められた。一方,喫煙の頻度は,喫煙する他者との親 密さには影響していなかった。つまり,個人における喫 煙行動は,他者との親密さを強化するというよりも,喫 煙という同じ行動傾向をもつ他者との知人関係を増加さ せる傾向があると考えられる。個人が他者と同様の行動 傾向を示す理由として,友人の信念や行動は個人の態度 や行動を類似したものにさせるという「社会化」という 現象や,個人は自分自身と似た信念をもつ他者を探す傾 向があるという「選択」という現象がある 。本研究は 横断的研究であるため,個人の信念と友人の信念のどち らが先行していたかを判別することはできない。しかし ながら,いずれの場合においても個人における喫煙行動 は,親密さを高めるというよりも,集団における所属を 決定するといえる。本研究の対象者であった大学生にお いても,喫煙者は他者との親密さを高めるというより も,個人が接触する他者を決定すると考えられる。

媒介分析の結果から,喫煙者と生活満足感との関連に は,個人のネットワーク密度が媒介していることが明ら かになった。つまり,喫煙は個人のネットワーク密度を 増大させ,ネットワーク密度の増大は生活満足感を向上 させる傾向があるといえる。一方,媒介中心性は間接効 果を示さなかった。さらに,喫煙者と不快気分との関連

には,ネットワーク密度および媒介中心性の双方共に,

間接効果が認められなかった。以上の結果から,生活満 足感に対するネットワーク密度のみ間接効果が認められ たという点について,検討する必要がある。

喫煙行動は時間帯に影響されにくい行動であり,喫煙 スペースにおいては面識のない他者との実際の交流が生 じる環境となり得ると指摘されている 。ネットワーク 密度は,オルター同士の親しさだけではなく,知人関係 であるというオルター同士の紐帯の多さが影響する指標 である。つまり,喫煙は面識のない,または親しくない 者同士のコミュニケーションが比較的生じやすいという 点で,ネットワーク密度に関連すると考えられる。一 方,媒介中心性は,個人が媒介することによってその関 係が成り立つ程度を示す指標である。つまり,特定個人 がいない状況では他者同士が交流し難い状況になるとい う,いわば特定個人がどの程度グループの中心的な存在 となっているかに関わる指標である。喫煙によって特に 促進され得る交流は,面識のない他者同士の交流である ことから ,喫煙は特定個人のグループにおける位置づ けを変容させるまでの影響は持たないと考えられる。さ らに,不快気分においては間接効果が認められなかった 点については,生活満足感と不快気分の性質の違いが挙 げられる。生活満足感を含む広範な概念である大学への 適応という状態については,社会的ネットワークの大き いほど,つまり社会的ネットワークにおける密度の値が 大きいほど,大学への適応状態が良くなることが報告さ れている 。一方,単純な悩みなどといった,比較的一 時点での個人が抱える気分状態に対しては,社会的ネッ トワークから得られる全般的なサポートはほとんど影響 しないことも報告されている 。つまり,社会的ネット ワークは大学生の大学生活全般の満足度といった社会適 応的側面を支え得る一方,個人が抱える不快気分といっ た心理的側面における問題に対しては,社会的ネット ワークそのものは必ずしも寄与しないと考えられる。大 学生のソーシャルサポートと不快気分に関する先行研究 では,ソーシャルサポートの内容によって不快気分の緩 和効果が異なることが示されていることから ,不快気 分に対しては社会的ネットワークそのものというより も,サポートの内容や質が影響していると考えられる。

本研究の結果から,喫煙者はネットワーク密度を増大 させる傾向があり,さらにネットワーク密度の増大は生 活満足感を向上させる傾向があることが明らかとなっ た。このような喫煙によって得られる効果は,もし喫煙 している大学生が禁煙をしたいと思った際に,失われる 可能性のあるメリットである。したがって,禁煙支援を 行う際には本研究で示されたような,喫煙によって得ら れるメリットを共有するとともに,それらを喫煙以外の

(7)

方法で得られるように行動の調整を行うよう支援するこ とで,よりスムースな禁煙に移行し得ると考えられる。

ただし,本研究の限界点として一般化可能性が十分に担 保されていないことに留意する必要がある。本研究のサ ンプルサイズは小さく,また対象者のうち女性において は喫煙者に該当した者は 名であった。本研究では性別 を統制したうえで主要な分析を実施したものの,喫煙者 はほぼ男子大学生によって占められており,偏りのある サンプルであったといえる。さらに,サンプルサイズの 問題と関連する点として,媒介分析による間接効果は

%信頼区間をもって有意であると判断できるものが あったが,その他の直接効果においては有意傾向に留 まっていたこともあげられる。したがって,変数間のさ まざまな影響関係に関する知見は不安定であるため,あ くまでそのような傾向があるという理解に留める必要が あるといえる。今後,サンプルサイズを拡大して改めて 喫煙者の社会的ネットワークおよび気分状態の検証する ことで,本研究で得られた知見をさらに精緻化すること ができるであろう。

Ⅴ.謝 辞

本研究は,平成 年度公益財団法人たばこ総合研究セ ンター研究助成を受けた研究である。

Ⅵ.引 用 文 献

)新村 出(編):広辞苑 第 版,岩波書店( )

)高田公理:嗜好品とその市場性 ミネラルウォー ターの価格と楽しみの価値,食品・食品添加物研究 誌, , ‐ ( )

)横光健吾他:嗜好品摂取によって獲得できる心理学 的 効 果 の 探 索 的 検 討,心 理 学 研 究, , ‐

( )

)中尾理恵子・田原靖昭・石井伸子・門司和彦:未成 年期に喫煙開始した若者の喫煙に関する認識とニコ チン依存度−大学生の質問紙調査から−,保健学研 究, , ‐ ( )

)国立大学法人保健管理施設協議会:学生の健康白書

,http : //www.htc.nagoya-u.ac.jp/hokenkanri/

hakusho/(2018)

)瀬在 泉・宗像恒次:大学生の喫煙行動と自己否定 感・ストレス気質及び精神健康度との関連,日本禁 煙学会誌, , ‐ ( )

)Christakis NA, Fowler JH. : Quitting in drives : Col-

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)福岡欣治・橋本 宰:大学生と成人における家族と 友人の知覚されたソーシャル・サポートとそのスト レス緩和効果,心理学研究, , ‐ ( )

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The effect of smoking and social network on mood state among college students

Tomonari IRIE Kengo YOKOMITSU

)School of Education and Culture, Hokusho University

)College of Comprehensive Psychology, Ritsumeikan University)

This study examined the mediation effect of variable in social network between mood state and smoking among college students. The data of 34 college students (11 males and 23 females) were analyzed about frequency of smok- ing, dysphoric mood, life satisfaction, and density and betweenness centrality in relation to social network. The re- sults of mediation analyses revealed that the density as social network mediated relationship between frequency of smoking and life satisfaction, while no mediation effect between frequency of smoking and dysphoric mood. The be- tweenness centrality as social network had no mediation effect. We discussed from the perspective of the role of smoking among college students.

Key Words : smoking, college students, dysphoric mood, life satisfaction, Social Network Analysis

Figure 本研究の媒介モデル

参照

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