卒業論文
2005年度
(平成
17年度
)ぶらりナビ
:潜在的欲求を引き出す
発見志向ナビゲーションシステム
指導教員
慶應義塾大学環境情報学部
徳田 英幸 村井 純 楠本 博之
中村 修 高汐 一紀 湧川 隆次
慶應義塾大学 環境情報学部 徳田 英隼
卒業論文要旨
2005年度
(平成
17年度
)ぶらりナビ
:潜在的欲求を引き出す発見志向ナビゲーションシステム
本論文では,明示的な目的を持っていない利用者の潜在的な欲求を引き出すことを目的とした発 見志向ナビゲーションシステム「ぶらりナビ」を提案し,その設計と実装を行う.
従来のナビゲーションシステムは,利用者に対して候補地を提案する際にキーワード入力やジャ ンル指定など,利用者からの積極的な入力を要求する.しかし,利用者が明示的な目的を持ってい ない場合はキーワードの入力などは期待できず,候補地の提示を受けることができない.また,候 補地を提示しても候補地の魅力が伝わらない問題や,候補地が限られてしまっているために魅力的 な場所と出会う可能性が低くなってしまう問題がある.以上の問題を解決するためには,できるだ け多くの候補を分かりやすい形で提案し発見の可能性を高めることが必要とされる.
本研究では,発見の可能性を高めるアプローチとして候補地の魅力を直感的に分かりやすく伝え る情報の表現,ジャンルなどに捕らわれない多彩な候補地の提示を実現する候補地の選定方法を提 案した.また,情報提示手法として短時間で多くの候補地を質的な損失の少ない状態で提示できる スライドフォーカス手法を提案した.以上のアプローチを複合的に取り入れた発見志向ナビゲー ションシステム「ぶらりナビ」を提案し,その設計を行った.発見志向ナビゲーションシステムの 情報提示手法における有効性を検討するため,ユーザインタフェースにあたる「ぶらりビューワ」
の実装と評価を行った.
慶應義塾大学 環境情報学部 徳田 英隼
Abstract of Bachelor’s Thesis Academic Year 2005 Burari-Navi: An Encounter-Oriented Navigation System
In this paper, we propose, ”Burari-Navi” which is a navigation system to pull out a potential desire of users who do not have an explicit desire to do something at the time and discuss the design and implementation of the system.
Existing navigation systems require aggressive inputs such as a list of keywords and cate- gories. For that reason, these systems can not offer a proper service to users with no explicit purpose. Common expressions of places do not match the user. Narrowing down the focus decreases an opportunity for the user to find an interesting place. An intuitive expression of places and showing large number of choices is necessary to solve these problems.
In this research, we have designed and implemented an Encounter-Oriented Navigation System, called ”Burari-Navi”. Burari-Navi is a new navigation system which enhances the user’s chance to find out where they want to go. Burari-Navi offers attractive choices as many as possible with a simple user interface implemented on a portable device. Burari-Navi eliminates the element of purpose from user interface and solves the problems of existing navigation system by two new functions. One is an information-searching function which can search out the encounter with variety of places to go speedy and intuitively. Another is an extraction function which actualizes the encounter by extracting the best places to go from all the alternatives user has gotten. We designed ”Burari-Navi” and implemented that user- interface ”Burari-Viewer” to demonstrate the effectiveness of the system.
Hidetoshi Tokuda
Fuculty of Environmental Information Keio University
目次
第1章 序論 1
1.1 背景. . . . 1
1.2 問題意識 . . . . 2
1.3 本研究の目的 . . . . 2
1.4 本論文の構成 . . . . 2
第2章 ナビゲーションシステムとその問題点 4 2.1 ナビゲーションシステムの概要 . . . . 5
2.1.1 目的地決定支援段階 . . . . 5
2.1.2 移動支援段階 . . . . 5
2.2 ナビゲーションシステムの利用者モデル. . . . 5
2.2.1 目的志向型モデル . . . . 6
2.2.2 発見期待型モデル . . . . 6
2.3 既存システム . . . . 6
2.3.1 EZナビウォーク . . . . 7
2.3.2 Googleローカル. . . . 8
2.3.3 ぐるなび . . . . 9
2.3.4 楽ナビ . . . . 9
2.4 問題点 . . . . 9
2.4.1 結果不到達問題 . . . . 10
2.4.2 欲求の不発火問題 . . . . 10
2.4.3 探索空間の一方向性問題 . . . . 10
2.5 まとめ . . . . 10
第3章 発見志向ナビゲーションシステム 11 3.1 発見志向ナビゲーションシステムの要件. . . . 12
3.2 本研究のアプローチ . . . . 12
3.2.1 空き時間入力のみでの候補提示 . . . . 13
3.2.2 フォトカードによる候補の表現 . . . . 13
3.2.3 スライドフォーカスブラウザ . . . . 13
3.2.4 候補の自由な整列 . . . . 14
3.3 発見志向ナビゲーションシステムの概要. . . . 14
3.3.1 システム全体の構成 . . . . 14
3.3.2 システム利用の流れ . . . . 14
3.4 関連研究 . . . . 17
3.4.1 Gards . . . . 18
3.4.2 NTTBPによる行動支援情報提供サービス . . . . 18
3.4.3 INFO TUBE . . . . 19
3.5 まとめ . . . . 19
第4章 ぶらりナビの設計 20 4.1 設計概要 . . . . 21
4.1.1 ハードウェア構成 . . . . 21
4.1.2 ソフトウェア構成 . . . . 21
4.2 状態認識モジュール . . . . 22
4.3 情報提示モジュール . . . . 23
4.4 スポット情報管理モジュール . . . . 23
4.5 まとめ . . . . 23
第5章 ぶらりビューワの実装 25 5.1 ぶらりビューワの構成 . . . . 26
5.1.1 ハードウェア構成 . . . . 26
5.1.2 ソフトウェア構成 . . . . 27
5.2 各部の説明 . . . . 28
5.2.1 位置取得部. . . . 28
5.2.2 情報提示部. . . . 28
5.2.3 入力受付部. . . . 28
5.2.4 利用者状態管理部 . . . . 30
5.2.5 スポット空間生成部 . . . . 30
5.3 まとめ . . . . 30
第6章 ぶらりビューワの評価 31 6.1 評価方針 . . . . 32
6.2 実験の概要 . . . . 32
6.2.1 実験環境 . . . . 32
6.2.2 実験手順 . . . . 32
6.3 実験結果および考察 . . . . 33
6.4 まとめ . . . . 38
第7章 結論 39 7.1 今後の課題 . . . . 40
7.1.1 ユーザインタフェースの改良 . . . . 40
7.1.2 写真配置方法の検討 . . . . 40
7.1.3 情報管理手法の検討 . . . . 40
7.2 本論文のまとめ . . . . 40
参考文献 43
図目次
2.1 ナビゲーションシステムと利用者との関係 . . . . 5
2.2 目的志向型モデルのイメージ . . . . 6
2.3 発見期待型モデルのイメージ . . . . 7
2.4 発見志向ナビゲーションシステムの位置付け . . . . 7
2.5 EZナビウォークのスクリーンショット . . . . 8
2.6 Googleローカルのスクリーンショット . . . . 8
2.7 ぐるなびのスクリーンショット . . . . 9
2.8 楽ナビの概要 . . . . 10
3.1 フォトカードのイメージ . . . . 13
3.2 スクロール速度との縮尺の関係 . . . . 14
3.3 システム全体のイメージ . . . . 15
3.4 起動画面のスクリーンショット . . . . 15
3.5 探索モードのスクリーンショット . . . . 16
3.6 フォトカードのスクリーンショット . . . . 16
3.7 移動モードのスクリーンショット . . . . 17
3.8 Gardsの提案手法 . . . . 18
3.9 駅を拠点とした行動支援情報提供サービスのスクリーンショット . . . . 19
3.10 INFO TUBEのスクリーンショット . . . . 19
4.1 ハードウェア構成 . . . . 21
4.2 ソフトウェア構成 . . . . 22
5.1 モバイル端末の外観 . . . . 26
5.2 GPS受信機 . . . . 27
5.3 ぶらりビューワのソフトウェア構成 . . . . 28
5.4 情報提示部の実装 . . . . 29
5.5 Vaio Type-Uの入力装置 . . . . 29
6.1 実験の様子 . . . . 33
6.2 実験に用いたアンケート . . . . 34
6.3 アンケート各項目の回答結果 . . . . 35
6.4 写真による候補地の表現に関する結果 . . . . 36
6.5 スライドフォーカスビューワに関する結果 . . . . 36
6.6 候補の多様性に関する結果 . . . . 37
6.7 システム全体に関する結果 . . . . 38
表目次
4.1 利用者状態情報の構成 . . . . 22
4.2 ガイドデータの主な情報 . . . . 24
5.1 モバイル端末の仕様 . . . . 26
5.2 GPS受信機の仕様 . . . . 27
5.3 入力装置の操作と動作のマッピング . . . . 29
6.1 被験者からのコメント . . . . 33
第 1 章
序論
1.1
背景
近年,環境に遍在する身近な物の多くが計算機能を持つようになり,場所や時間を気にせずネッ トワークに接続することができるユビキタス環境[8]が実現されつつある.携帯端末の普及とその 高機能化,さらにGPSを始めとした位置情報センサの普及により,利用者の位置や状態に適した サービスを提供するロケーションアウェアサービス[6] が普及してきている.特に,auのEZナビ ウォーク[1]を始めとして,街角や旅行先において目的地への誘導や利用者の目的に合った場所の 検索を実現するナビゲーションシステムの普及が加速している.
ナビゲーションシステムとは,利用者が指定した目的地へ誘導するだけでなく,「ごはんが食べ たい」や「遊びたい」といった利用者の抽象的な目的に対して適した候補地を複数提示し,目的地 の選択,決定補助するシステムの事を示す.
従来,ナビゲーションシステムは利用者が指定する目的に沿った候補地を提案し,利用者が選択 した目的地へ案内を行うといった形が主流であった.しかし,携帯端末上でのサービスの提供など をきっかけにナビゲーションシステムの利用者は多様化してきている.近年,利用者の行動を予測 して次の行き先を提案するシステム[13]や利用者の変化する興味に柔軟に対応するシステム[12]
を始めとして,多様化する利用者それぞれに対して特化したナビゲーションシステムの研究が盛ん に行われてきている.
中でも,不意な空き時間を有効に使いたい時や無計画でとりあえず旅行に来てしまった時など利 用者が明確な目的を持っていない場合,従来のシステムでは適した形でサービスを提供することが できない.そのため,明確な目的を持っていない場合でも利用者の興味を引き出し魅力的な候補と の出会いを実現するシステムが必要とされている.
1.2
問題意識
ナビゲーションシステムを利用する利用者の状態は,「目的志向型」と「発見期待型」の大きく2 つに分類することができる.目的指向型とは,利用者が「ごはんを食べたい」,「買い物をしたい」
といった明示的な目的を持って行動を起こそうとしている場合を指す.利用者は,目的に即した候 補地の提示を望み,システムに目的を入力することで候補地を絞り込む.
発見期待型とは,利用者は明示的な目的を持っていないが,何かをしたいというモチベーション を持っている場合を指す.予定していた目的を一通り達成した直後や,不意に空き時間が生じた際 にこのような状態になると考えられる.利用者は,明確な目的は意識していないが「実はお腹が空 いている」,「少し疲れている」といった潜在的な欲求を持っている.利用者が明確に目的や条件を 入力すると考えられる目的志向型に対して,発見期待型は,利用者が受動的に情報提示を期待して おり,明確な目的の入力は望めない.
ナビゲーションシステムには,どちらの利用者にも目的もしくは欲求に適した候補地情報を提供 し,行動を支援することを求められている.しかし,既存のナビゲーションシステムは利用者の キーワード入力やジャンルを選択を前提に作られているため,発見期待型の利用者に対して,適し た形で候補地の情報を提示できない.また,発見期待型の利用者はシステムが提示する様々な情報 に大きな影響を受けるが,発見期待型の利用者に適した情報提示・提案手法という議論はあまりさ れていない.
発見期待型の場合,空白のテキストボックスやジャンルの提示より店舗の外観や商品の写真など の,具体的な情報の提示が望まれる.ジャンルによる選択形式の場合,ジャンルから抽象的なイ メージを得るものの,利用者の潜在的な欲求ために十分な刺激を与えることができないため,潜在 的欲求を引き出す新たなアプローチが必要になる.以上に述べたように,既存のナビゲーションシ ステム及び既存の研究アプローチでは,発見期待型の利用者に対する適した候補地の提案が実現さ れていない.
1.3
本研究の目的
本研究では,発見期待型の利用者に適した候補地情報の提示・提案を目的とした発見志向ナビ ゲーションシステム「ぶらりナビ」を提案する.ぶらりナビは,ユーザインタフェースにおける利 用者負担を軽減し,利用者に提示する候補の表現力強化・数的拡大・多様性確保を行うことで発見 期待型の利用者にとって負担の少ない形でより魅力的な目的地発見の可能性を高める.
1.4
本論文の構成
本論文では,第2章において既存のナビゲーションシステムの特徴をまとめるとともに,新しい ナビゲーションシステムの必要性を説明する.第3章ではまず,本研究の機能要件を整理し,発見
志向ナビゲーションシステムを定義した後に関連研究と比較する.第4章でシステム全体の設計に ついて述べた後,第5章でその実装について述べる.第6章でシステムの評価を行い,第7章で本 論文をまとめる.
第 2 章
ナビゲーションシステムとその問題点
本章では,既存のナビゲーションシステムの特徴をまとめるとともに問題点 を挙げ,新しいナビゲーションシステムの必要性を説く.
2.1
ナビゲーションシステムの概要
本項では,ナビゲーションシステムの概要を整理する.ナビゲーションシステムとは,利用者の 目的地決定支援と移動支援を行うことで利用者の行動を支援するシステムを指す.図2.1に示すよ うに,ナビゲーションシステムの利用者の状態は欲求の存在,目的地決定,目的地到着の三段階に 分かれる.ナビゲーションシステムは,欲求の存在から目的地決定への移行を支援する目的地決定 支援段階と,目的地決定から目的地到着への移行を支援する移動支援段階によって構成される.
᰼᳞ߩሽ ⋡⊛ቯ ⋡⊛⌕
⋡⊛ቯᡰេ ⒖േᡰេ
↪⠪ߩ⁁ᘒ
࠽ࡆ࡚ࠥࠪࡦࠪࠬ࠹ࡓߩേ
㧦 㧦
図2.1 ナビゲーションシステムと利用者との関係
2.1.1 目的地決定支援段階
目的地決定支援とは,利用者が欲求を持っている段階から目的地を決定する段階への移行を支援 することを指す.例として目的地の自動検索が挙げられる.目的地の自動検索は,利用者の要求や 状態に応じて目的地候補を自動的に検索することで目的地決定の負担を軽減する.
2.1.2 移動支援段階
移動支援とは,利用者が目的地を決定してから目的地に到着するまでの移動の支援を指す.例と して,目的地周辺地図の提示や目的地までの経路の自動検索が挙げられる.周辺地図は現在地や移 動方向の理解を容易にし,最適経路の算出は利用者の移動の時間を短縮する.
2.2
ナビゲーションシステムの利用者モデル
本節では,ナビゲーションシステムの利用者の特徴を整理することで,ナビゲーションシステム に対する要求を明確にする.ナビゲーションシステムの利用者は,目的志向と型発見期待型モデル モデルの2つに分けられる.
2.2.1 目的志向型モデル
目的志向型モデルとは,利用者が明示的な欲求を持っている状態を指す.例えば図2.2に示すよ うに,利用者がケーキを食べたいという明示的な欲求を持っている場合がある.利用者はケーキ屋 を検索し,自分が最も食べたいケーキを置いているお店を選択し,そのお店に向かうことで欲求を 充足させる.目的指向型モデルの行動では,目的を基に目的地を決定をしているため行動の意義は 目的の達成にある.
図2.2 目的志向型モデルのイメージ
2.2.2 発見期待型モデル
発見期待型モデルとは,利用者が明示的な欲求を持っていない状態を指す.例えば図2.3に示す ように,利用者が待ち合わせの予定が突然変更したりすることで街中において突発的な空き時間 に遭遇する場合がある.利用者は明示的な欲求を持っていないが,空き時間があるために何かした い.ところがなかなか良いプランが思い浮かばない.そこで,ナビゲーションシステムに複数の候 補地を提示させることで,自分が魅力を感じる候補地に見つけて目的地を決定し,移動を始める.
発見期待型モデルの行動の基となる欲求は潜在的に存在するもので,代表的な例として気分や体 調などが挙げられる.潜在的な欲求は利用者自身が意識していないため,利用者が明示的に表現す ることは難しい.
本屋に本を買いに訪れたが休みだったことで思わず空き時間が発生した時などに見られるよう に,発見期待型モデルの行動は日常生活の中で突発的に起きることが多く,また変化する可能性も 高いため利用者に対して継続的にサービスを提供している必要がある.
発見期待型モデルでは,欲求と場所とが直接結びつくことで目的地が決定するため,行動が直接 的に欲求の充足につながる.
2.3
既存システム
本節では,既存システムを整理し,本研究の対象領域を明らかにする.既存のナビゲーションシ ステムでは,発見期待型の利用者の目的地決定支援段階を対象とした物がない.利用者は目的を決
図2.3 発見期待型モデルのイメージ
定できなければ行動を起こすことができないため,発見期待型の利用者を対象としたナビゲーショ ンシステムが必要とされている.本研究は,発見期待型利用者の目的地決定支援段階を支援するこ とを目的としたシステムを発見志向ナビゲーションシステムを対象とする.
ߋࠆߥ߮
⒖േᡰេ
⋡⊛ᔒะဳ
⋡⊛ቯᡰេ
⊒ᦼᓙဳ
⊒ᔒะ
࠽ࡆ࡚ࠥࠪࡦࠪࠬ࠹ࡓ
)QQING ࡠࠞ࡞
'< ࠽ࡆ࠙ࠜࠢ
ᭉ࠽ࡆ 0#8+6+/'
図2.4 発見志向ナビゲーションシステムの位置付け
2.3.1 EZナビウォーク
EZナビウォーク[1]は,auが提供する携帯電話上でサービスを提供するナビゲーションシステ ムである.目的地を指定してから目的地に着くまでルート案内を行うことができる.ジャンルによ る検索,周辺地検索,地図からの検索や目的地の推薦も可能である.GPSが内蔵されている携帯 電話上で動作するため,現在地に応じたルート案内を実現している.
発見期待型利用者が利用した場合,明示的な目的を持っていないためキーワードの入力はできな い.目的地の推薦を利用することが考えられるが,提示されるスポット情報はテキスト主体のもの で,利用者の発見を促すことはできない.同様の既存システムとしてNAVITIME[10]が挙げられ
る.EZナビウォークのスクリーンショットを図2.5に示す.
図2.5 EZナビウォークのスクリーンショット
2.3.2 Googleローカル
Googleローカル[4]は,Googleが提供するウェブブラウザ上で利用することのできるナビゲー
ションシステムである.Googleローカルではキーワードの検索と利用者が自由に移動と縮尺の変 更を行うことができる地図から周辺スポットの検索を行うことができる.Googleローカルのスク リーンショットを図2.6に示す.
発見期待型利用者が利用した場合,キーワード検索を行うことができず,また地図を操作して地 区を特定することができない.
図2.6 Googleローカルのスクリーンショット
2.3.3 ぐるなび
ぐるなび[9]は,ぐるなび社が食に関するスポットの情報提供を目的としたシステムで,ウェブ ブラウザと携帯電話上で利用することができる.ぐるなびでは,キーワード検索,ジャンル検索,
エリア検索を実現している.現在地に応じたルート案内は行わず,周辺地図の表示のみを行ってい る.ぐるなびのスクリーンショットを図2.7に示す.
ぐるなびの場合,システムが食べるという目的のために作成されており,キーワード検索やジャ ンル検索が主体のため,発見期待型の利用者は検索を行うことができない.
図2.7 ぐるなびのスクリーンショット
2.3.4 楽ナビ
楽ナビ[2]は,パイオニア社が提供するカーナビゲーションシステムである.自動車での移動を 対象としたサービスで,住所や地図からのエリア検索を提供し,また周辺スポットの検索も実現し ている.また特徴的な検索方法として電話番号からの検索があるが,これは目的地が明確に決定し ている場合のみに有効な検索手法であり,目的地決定段階での支援を行っているとは言えない.楽 ナビのスクリーンショットを図2.8に示す.
発見期待型の利用者は自分の付近の地図に候補地となるような情報を得ることができるが,それ らの情報は目的志向の利用者を前提にデザインされており,魅力を感じる場所を見つけることは難 しい.
2.4
問題点
本節では,前節で挙げた各システムの説明を基に,既存システムを発見期待型利用者が用いる際 の問題点を整理する.
図2.8 楽ナビの概要
2.4.1 結果不到達問題
既存システムのほとんどが,利用者によるなんらかの絞り込み作業を必要としているが,利用者 には絞り込み作業を行う基準となる明示的な目的やモチベーションが存在しない.キーワード入力 はワンステップで情報の絞り込みを行うが,利用者は明確な目的を持っていないため入力は期待で きない.そのため発見型利用者は既存のシステムを利用してスポット情報に辿り着くことができ ない.
2.4.2 欲求の不発火問題
既存システムの多くはスポットの情報をテキスト情報によって表現している.しかし,テキスト 情報は利用者に伝わる情報量が少なく発見志向型利用者の欲求を潜在化させるきっかけとなる可 能性が低い.そのため,もっとスポットの具体的なイメージの湧くスポット情報の提示が必要で ある.
2.4.3 探索空間の一方向性問題
既存システムの多くは絞り込み作業をしてからスポット情報の提示を行っているため,スポット 情報の提示を行う段階に到達した時の探索空間は目的に沿って絞られたものになっている.そのた め,利用者はジャンルに捕らわれないさまざまな特徴を持ったスポットの情報を同時に検討するこ とができない.
2.5
まとめ
本章では,まずナビゲーションシステムにおける利用者の行動を整理することで,ナビゲーショ ンシステムが対象とする領域を明確にした.次いで,既存システムの整理を行うことで発見期待型 利用者が既存システムを用いる際の問題点を明らかにした.
第 3 章
発見志向ナビゲーションシステム
本章では、発見志向ナビゲーションシステムの機能要件を整理し,それに対 するアプローチ,システム全体の概要を説明する.
3.1
発見志向ナビゲーションシステムの要件
本研究では,発見期待型の利用者の目的地決定支援段階に焦点を絞って議論を行う.本節では,
発見志向ナビゲーションシステムの要件を以下に整理する.
• 候補提示までの利用者負担軽減
利用者は明示的な目的を持っていないため,目的地決定段階においてキーワードなどによる 目的の明示的な表現やジャンルからの絞り込みといった作業は負担となる.システムは,利 用者の発見を支援するため目的に捕らわれない情報の探索を実現する必要がある.これを満 たすことで結果不到達問題を解決する.
• 候補情報の表現力強化
システムは,発見の要因となりうる情報を多く含んだスポット情報の表現を提供しなければ ならない.発見とは,利用者がスポット情報を見たことによって潜在的な欲求が引き出され ることを示す.発見の可能性が低い情報表現の場合,発見までの時間の増加,スポット情報 の不正確さといった問題が生じるため,利用者は発見の可能性が高いスポット情報の表現を 要求する.これを満たすことで欲求の不発火問題を解決する.
• スポット情報の数的拡大
利用者はシステムに提示されたスポット情報になんらかの魅力を見出すことで目的地の決定 を行う.魅力的なスポットと出会う可能性を高めるためには,利用者が魅力的に感じるス ポット情報の収集と,短時間にできるだけ多くのスポット情報を提示できる情報提示手法が 必要とされる.これを満たすことで欲求の不発火問題および探索空間の一方向性問題を解決 する.
• スポット情報の多様性の確保
利用者が魅力的なスポットと出会う可能性を高めるには,ジャンルや目的に偏りのない情報 の提示が重要である.システムは,多彩なジャンルのスポット情報を提示しなければならな い.これを満たすことで欲求の不発火問題および探索空間の一方向性問題を解決する.
3.2
本研究のアプローチ
本節では,本研究のアプローチについて述べる.
3.2.1 空き時間入力のみでの候補提示
ぶらりナビは,時間的な条件だけを基にスポット情報の選定を行うため,抽出されたスポット群 にはジャンルなどとらわれない多彩なスポットが揃う.例えば渋谷駅にて1時間の空き時間ができ た場合,利用者は自分の空き時間を入力するだけで現在地から1時間で行って帰ってこれる候補 全てを見ることができる.これによって結果不到達問題を解消し,さらに候補群の抽出条件から目 的要素を排除することで探索空間の一方向性を解消した.また,余計な条件を設定しないことによ り,スポット情報の数的拡大も図っている.
3.2.2 フォトカードによる候補の表現
スポット情報の表現方法として,図3.1に示すような写真を用いたフォトカードによるスポット 情報の表現を用いる.フォトカードの表にはスポットの写真,裏には写真,スポットの名称,コメ ントなど詳細の情報が含まれている.写真は明示的な目的要素が少なく,かつ多くの情報量を受け 取ることができるメディアであり,発見期待型のスポット情報の表現手法に適している.写真を用 いることでユーザインタフェースにおける目的要素排除とスポット情報の表現力が強化され,欲求 の不発火問題を解消する.
図3.1 フォトカードのイメージ
3.2.3 スライドフォーカスブラウザ
スライドフォーカスブラウザとは,短時間で多くのスポット情報の,表現力を損なうことなく提 示できる情報提示手法である.スライドフォーカスブラウザは,二次元空間上に整列された大量の スポット情報と,移動速度に応じた自動ズーミング[3]を組み合わせることで実現される.移動速 度に応じた自動ズーミングは,図3.2に示すように空間に配置された情報の拡大縮小とスクロール 速度を連動させる機能である.スライドフォーカスブラウザは,移動速度に応じた自動ズーミング を用いることで,スポット情報の表現力を損なうことなく,数的拡大を実現している.これにより 多くの候補と出会う可能性を高め,欲求の不発火問題の解消に働きかける.
ㅦ ㅦᐲ ㆃ
図3.2 スクロール速度との縮尺の関係
3.2.4 候補の自由な整列
スポット群の多様性を確保するアプローチとして,スライドフォーカスブラウザにおける候補の 自由な整列機能がある.例えば,近い性質をもったスポット情報が近寄らないようにするばらばら 配置機能が挙げられる.ばらばら配置機能ではランダム性に加えて,近い性質を持ったスポット情 報が隣接しないことを保証する.これによって利用者が一定時間内に出会うスポットの多様性が確 保される.また,ばらばら配置機能以外にも自分の位置を中心として距離の近い順に整列する地図 マッピング配置なども考えられる.
3.3
発見志向ナビゲーションシステムの概要
本節では発見志向ナビゲーションシステムの概要を説明する.
3.3.1 システム全体の構成
システムは,図3.3に示すように利用者が携帯しているモバイル端末の上で入力の受付や情報の 提示を行う.位置情報はGPSを用いて取得し,スポット情報はネットワークを介してデータ管理 サーバから取得する.
3.3.2 システム利用の流れ
以下にシステムの流れを説明する.
1. 持ち時間の入力
利用者がシステムを起動すると,図3.4に示すように,空き時間の入力を求められる.利用 者が自分の持っている空き時間を入力すると探索モードへ移行する.
ⴡᤊ
ࠬࡐ࠶࠻ᖱႎ▤ℂࠨࡃ
)25
ࡕࡃࠗ࡞┵ᧃ
ή✢ .#0
図3.3 システム全体のイメージ
図3.4 起動画面のスクリーンショット
2. 探索モード
利用者は,図3.5に示すように端末の画面上に並べられた候補地の写真の中から興味を引く ものを探す.システムが提示するスポット情報は,時間内に探索を始めた場所に戻ってこら れるものに限られる.写真は,ばらばら配置機能により似たものが近寄らないよう考慮され 配置されている.並べられた写真は巨大な平面上に並べられており,トラックスティックを 使って自由にスクロールができる.スクロールしている速度が速いときは多数のスポット情
報が小さく配置され,スクロールしている速度が遅いときには大きく見ることができる.ス クロールを停止すると画面には1つのスポット情報が表示され,さらにトラックスティック を離すと図3.6に示すようにその写真の詳しい情報を提示するフォトカードが画面上に浮き 上がってくる.スポット情報を気に入った場合,情報の中の移動スタートボタンを押し画面 を移動モードへ切り替える.気に入らなければ,再びトラックスティックを使って操作する ことで,空間の探索を行う.
図3.5 探索モードのスクリーンショット
図3.6 フォトカードのスクリーンショット
3. 移動モード
目的地への移動は,図3.7 に示すように利用者に対して現在地を中心としたレーダーに目的 地までの経路を表示することで行う.レーダーには,目的地と最終的に戻ってくる出発地と 現在地の3つの地点が表示されている.現在地からそれぞれの地点への経路が線によって 表現され,レーダーの向きは利用者の動いている方向に連動して変化する.レーダーでの上 方が利用者にとっての前方,レーダーにとっての下方が利用者にとって後方となる.また,
レーダーに表示される距離の縮尺は利用者と目的地の距離に応じて自動的に変化し,利用 者自身が自由に変更することもできる.目的地に到着した場合や目的地を変更する場合は,
バックボタンを押すことでスポット情報の探索に戻る.
図3.7 移動モードのスクリーンショット
4. ナビゲーションの終了
利用者が出発地に戻りたいと考えた場合,もしくは現在地から出発地点へ戻るための時間が 足りなくなった場合は,出発点をゴールとした移動モードに移行する.利用者がナビゲー ションシステムを起動した出発地点に戻ってきた時点,もしくはシステムを意図的に終了す ることでナビゲーションは終了する.
3.4
関連研究
本節では,関連研究と本研究との比較を行う.
3.4.1 Gards
大坪による,Gards[12]は,数多くあるレストランのメニューの中から,利用者に適したメニュー を複数推薦し,発見を促すシステムである.Gardsでは,利用者の変化し続ける興味に着目し,長 い間蓄積した行動履歴ではなく,短期間における選択の連続から利用者の興味の方向性を予測し,
できるだけ興味に沿った候補をできるだけ多く提供することを試みている.利用者が,表示された 複数のメニュー画像の中から,興味を持ったメニューを選択すると,そのメニューと関連度の高い メニューが並ぶようになる.
具体的には,最初,和食という関連性のある候補が並んでいる中で,利用者が「さばの味噌煮」
を選択すると,関連度の高いメニューが並ぶ.その中から更に,「かつ煮定食」を選ぶと今度は,再 びかつ煮定食に関連したメニューが再構成される.
レストランでメニューを選ぶという目的に沿った探索のため,発見志向ナビゲーションシステ ムとは違うが,写真による表示を行うことで情報の質的向上を図っていることが分かる.しかし,
一方で興味があると予測されるメニューに範囲を絞っているため,情報の数的な拡大を行えてい ない.
図3.8 Gardsの提案手法
3.4.2 NTTBPによる行動支援情報提供サービス
NTTBP社による駅を拠点とした行動支援情報提供サービス[5]は,スケジュール連動型の情報
提供サービスで,ホットスポットにおいてアクセスした無線LAN基地局の位置とアクセス時刻,
PDA内のスケジュール情報を基にした,目的地までの移動経路探索や次の予定時刻までの余裕時 間などを提供する.移動経路上に登録されているお勧め店舗情報やイベントなどの口コミ情報も余 裕時間に合わせて提供する.また,お勧め店舗やイベントなどの口コミ情報をサービスの利用者同 士が共有できる掲示板機能も提案されている.携帯電話機から位置情報とメッセージや写真を口コ ミ情報として登録すると,最寄り駅と共に情報が掲載されるようになっている.
行動支援情報提供サービスは,目的別の分類を選択してからスポット情報を提示するため,結 果不到達問題が解決されていない.口コミ情報などを利用することで情報の多様性の確保が見ら れる.
図3.9 駅を拠点とした行動支援情報提供サービスのスクリーンショット
3.4.3 INFO TUBE
脇田らによるINFO TUBE[7]は,横浜・元町商店街に関わる商品、人などの情報を、小さな写 真で表現し、そのすべてを円筒状の空間に配列することで表現したものである.ユーザーは写真に 囲まれた3次元空間を自由に遊泳しながら、気に入った情報に触れることで、詳細情報や位置情報 を得ることができる。
写真の3次元配置による表示で情報の質的向上と量的拡大は考慮されている.しかし,それぞれ のスポット情報が商店街という構造体に含まれており,一枚一枚の写真は商店街の一部として認識 されている.利用者が候補提示に必要な条件入力に関する利用者負担軽減について議論されてい ない.
図3.10 INFO TUBEのスクリーンショット
3.5
まとめ
本章では,発見志向ナビゲーションシステムの要件を明らかにするとともに,関連研究を分析す ることで,本研究のアプローチについて検討した.次章では,発見志向ナビゲーションシステム
「ぶらりナビ」の設計について述べる.
第 4 章
ぶらりナビの設計
本章では,発見志向ナビゲーションシステム「ぶらりナビ」の設計について 述べる.ぶらりナビの機能を実現する設計の全体像,そして各構成部につい て説明する.
4.1
設計概要
本節では,ぶらりナビの構成についてハードウェアとソフトウェア双方の視点から述べる.
4.1.1 ハードウェア構成
ぶらりナビのハードウェアは,図4.1で示すようにモバイル端末,位置情報取得デバイス,ス ポットデータ管理サーバから構成される.位置情報取得端末とモバイル端末はBluetoothにより 接続されており,常に利用者の位置情報がモバイル端末に通知される.またモバイル端末は無線 LANを用いてIPネットワークに常に接続されており,IPネットワークを介してスポットデータ 管理サーバから情報を取得することができる.利用者はモバイル端末と位置情報取得端末を携帯す ることで,街中や旅行先においてサービスを利用したくなった時にいつでもモバイル端末上でぶら りナビを起動することができる.位置情報取得端末については,モバイル端末に内蔵されている事 があるのでそのような場合は必要なくなる.また,スポットデータをサーバ上にて管理し,モバイ ル端末には必要最低限の情報のみをダウンロードする形にすることで,モバイル端末の記憶領域を 節約する事ができる.
៤Ꮺ⸘▚ᯏ
⟎ขᓧ࠺ࡃࠗࠬ
࠺࠲▤ℂᬌ⚝ࠨࡃ ࡀ࠶࠻ࡢࠢ
$NWGVQQVJ ធ⛯
図4.1 ハードウェア構成
4.1.2 ソフトウェア構成
ぶらりナビのソフトウェアは,図4.2に示すように状態認識モジュール,情報提示モジュール,
スポット情報管理モジュールの3つのモジュールから構成されている.利用者は情報提示モジュー ルを介してサービスを利用し,状態認識モジュールはシステムの起動中,常に利用者の現在地を始 めとした状態を認識している.利用者に提示する候補地の情報は全てスポット情報管理モジュール に保存されており,情報提示モジュールからの要求に応じてスポット情報を提供する.ソフトウェ アをモジュール化することでシステムの拡張やシステムの様々な形での実装を容易にした.各モ ジュールの詳細については次節以降に述べる.
ᖱႎឭ␜ࡕࠫࡘ࡞
ࠬࡐ࠶࠻ⓨ㑆
ࠬࡐ࠶࠻ᖱႎ
ജࠗࡌࡦ࠻
ᖱႎឭ␜ㇱ ജฃઃㇱ
ࠬࡐ࠶࠻ⓨ㑆↢ᚑㇱ
⟎ᖱႎ
↪⠪⁁ᘒ▤ℂㇱ
⟎ขᓧㇱ
ᤨ㑆▤ℂㇱ
⁁ᘒ⼂ࡕࠫࡘ࡞
ࠬࡐ࠶࠻࠺࠲ㇱ
⟎ᖱႎᤨ㑆
⟎ᖱႎᤨ㑆
ࠬࡐ࠶࠻ᖱႎ࠺࠲ࡌࠬ
ࠬࡐ࠶࠻ᖱႎ▤ℂࡕࠫࡘ࡞
ࠬࡐ࠶࠻ᖱႎ ࠢࠛ
ᱷࠅᤨ㑆
ࠨࡃ ࡕࡃࠗ࡞┵ᧃ
ജߐࠇߚᤨ㑆
図4.2 ソフトウェア構成
4.2
状態認識モジュール
状態認識モジュールは,位置情報と時間をはじめとした利用者の状態を示す情報を管理している モジュールである.本システムが扱う利用者状態を示す情報は表4.1に示す.システム内で扱って いる利用者状態は,将来的に位置情報と時間だけでなく,利用者の気分や行動履歴など様々な情報 を組み込んで拡張をしやすい形で実現する.
位置取得部では,位置取得デバイスとの通信をおこなって現在地の緯度経度座標を取得し,状態 管理部に通知する.位置取得デバイスの例として,GPSやRFIDタグ・リーダ,超音波センサな どが挙げられる.これらのデバイスから得た情報を抽象化した状態でシステム内において利用する ことで複数の位置取得デバイスを連動して利用する拡張なども行いやすくなっている.
時間管理部では,起動時に利用者によって入力された残り時間を管理している.1秒に1回の頻 度で定期的に位置情報と残り時間を情報提示モジュールに対して送信する.
表4.1 利用者状態情報の構成 項目 値
残り時間 秒
緯度 北緯 度分秒 経度 東経 度分秒
4.3
情報提示モジュール
情報提示モジュールはぶらりナビのユーザインタフェース部にあたり,利用者が携帯している端 末上で動作し,利用者からの入力の受け付けと利用者に対する候補情報の提示を行う.入力受付 部,スポット空間生成部,情報提示部の3つにモジュールを分けることで,複数のデバイスを用い た情報提示モジュールを実現することも可能にした.
入力受付部では,利用者からの空き時間の入力や,探索モードにおける操作などを受け,時間に 関する情報は時間管理部へ,操作はスポット空間生成部へ受け渡す.
スポット空間生成部では,利用者状態管理部から受信する利用者の現在地,空き時間といった情 報をスポット情報管理モジュールに受け渡すことで,候補地となりうる全ての候補情報を含んだ候 補群を受け取る.受け取った候補群は2次元配列として保管されており,スポット空間生成部では 利用者の操作に合わせてばらばら配置や位置ベース配置など配列のソートを行う.
情報提示部には,フォトカード機能とスライドフォーカスビューワ機能が含まれている.スポッ ト空間生成部でソートされた候補情報の配列をフォトカードの配列へと可視化する.フォトカード の配列はユーザによって自由に拡大縮小,移動,選択動作などを行うことができる.さらに,利用 者が目的地を決定した後は利用者の現在地に応じてレーダーの表示を行う.
4.4
スポット情報管理モジュール
スポット情報管理モジュールはスポットデータ抽出部とスポット情報データベースから構成さ れる.スポットデータ抽出部は,情報提示モジュールから受けた要求に当てはまるスポット情報を データベースから抽出して受け渡す.スポット情報データベースは,名称,分類,位置情報,コメ ント,写真,電話番号などスポットに関する情報を記述したデータベースである.スポット情報 データベースは,スポットデータ抽出部から条件を指定され,その領域内にある情報をスポット データ抽出部に渡す.
ぶらりナビでは,スポット情報データベースとして昭文社のガイドデータ[11]を利用する.ガ イドデータは,昭文社の旅行ガイドに掲載されたお店やレストラン,アミューズメント施設などの スポットの情報が全て記載されており,東京都と神奈川県で8018件のデータが保管されている.
ガイドデータに含まれる主な項目を,表4.2に示す.また,データベースとして管理されているた め,容易に拡張,編集を行うことができる.
4.5
まとめ
本章では,ぶらりナビの設計について全体の構成と各部の機能,処理の流れを述べた.次章で は,本章で行った設計に基づきぶらりナビのユーザ情報提示モジュールを中心に構成されたユーザ インタフェース「ぶらりビューワ」の実装について述べる.
表4.2 ガイドデータの主な情報
項目名 データ値 例
物件ID 数値 11000892
都道府県CD 数値 11
目的 テキスト 食べる
ジャンル テキスト 外国料理店
分類 テキスト 中国料理・飲茶
物件名称 テキスト 翠鳳
住所 テキスト 仲町2-16-9浦和東武ホテル1F
交通 テキスト JR京浜東北線浦和駅から徒歩1分
料金 テキスト フカヒレ入りスープ麺=1600円/ランチ=900円〜/ アワビの醤油煮込み=12000円〜/
記事 テキスト 上海料理レストラン。料理の特徴は油っこくなく、あっさ りとしている。また、全体的に薄味でくせがない。ダイニ ングルームのほかに個室もある。
緯度 数値(1/1000秒単位) 502753745 経度 数値(1/1000秒単位) 129080304 写真 jpg画像 jpg
第 5 章
ぶらりビューワの実装
本章では,ぶらりナビにおける情報提示モジュールである「ぶらりビューワ」
の実装について述べる.
5.1
ぶらりビューワの構成
本節では,ぶらりビューワの構成についてハードウェアとソフトウェア双方の視点から説明す る.ぶらりビューワはモバイル端末とGPS受信機から構成される.ぶらりビューワは,情報提示 モジュールとスポット情報管理モジュールの一部の機能が端末内に含まれる形で実装されている.
5.1.1 ハードウェア構成
ぶらりビューワは位置情報取得デバイスであるGPS端末と情報入力・提示デバイスであるモバ イル端末から構成されている.
• モバイル端末
利用者に対してサービスを提供するモバイル端末として,図5.1に示すSonyのVaio Type- Uを利用する.Vaio Type-Uは,携帯可能な小型ラップトップPCであり,フォトカード 機能やスライドフォーカスビューワ機能を実装するために必要な高解像度のディスプレイ,
十分な計算処理能力,トラックスティックを含む複数の入力装置,情報管理モジュールの データベースの保存に必要な大容量記憶装置を備えている.Vaio Type-Uの仕様を表5.1 に示す.
図5.1 モバイル端末の外観
表5.1 モバイル端末の仕様
項目 Sony Vaio Type-U
CPU Intel PentiumM 1.00GHz
RAM 504MB DDR RAM
OS Windows XP Professional Service Pack 2 JDK Java 2 Platform Standard Edition 5.0
解像度 800×600 VGA
Touch Panel,
入力装置 TrackStick,
Buttons
• GPS受信機
位置情報取得デバイスとして,屋外でRFIDや超音波センサなど他の手法と比較して広範 囲で継続的に位置情報の取得が可能であるGPSを用いた.本実装では,モバイル端末に GPS受信機が内臓されていないため,外部でGPS受信機との接続が必要となる.モバイ ル端末を携帯する場合,ケーブルなどがあると邪魔になり行動が制約される可能性があるた
め,Bluetoothを用いて接続することでケーブルを気にすることなく利用可能なSONYの
BLUETOOTH GPS UNIT GU-BT1を用いた.GU-BT1の主な仕様を表5.2に示す.
図5.2 GPS受信機
表5.2 GPS受信機の仕様
項目 Sony GU-BT1
データ通信方式 Bluetooth (Serial Port Profile)
データ更新時間 1秒
位置精度 5m (2DRMS, -130dBm)
出力フォーマット NMEA0183 測地系 東京測地系(Tokyo Datum)
5.1.2 ソフトウェア構成
ぶらりビューワのソフトウェア構成について説明する.ぶらりビューワは図5.3に示すように情 報提示部,入力受付部,スポット空間生成部,利用者状態管理部,位置取得部,時間管理部から構 成される.ぶらりナビの情報管理モジュールの一部の機能がスポット空間生成部の中に含まれる.
各部については次節にて説明する.