流通市場における垂直的取引制約
楠田康之
1.序
流通市場の分析は,近年,流通固有の問題としてのみとらえるのではなく,
むしろ,異なる経済主体が垂直的に取引関係を結ぶという市場構造が各企業 の戦略にどのような影響の及ぼすか,という広くゲーム理論的立場からの極 めて興味深い示唆を与え続けてきている.そのもっとも単純化した流通シス テムとは,図1のように,2主体の上流企業と2主体の下流企業,および消 費者(または最終財市場)から構成される一種の複占モデルである.ここで,
もっとも興味深い問題は,それぞれ上流企業と下流企業との垂直的な「力関 係」が市場均衡にいかなる意味をもち,社会的構成をどのように歪めるか,
ということであるが,これは主に,上流企業が下流企業に対して課すいくつ かの制限の問題でもある.本稿では,そのような制限を「垂直的取引制約」
と呼ぶ.垂直的取引制約には,再販価格維持(上流企業による小売価格の設 定),閉鎖的領域保護(下流企業に対する販売領域の割り当て),販売強制(上 流企業による財販売量の設定),フランチャイズ料(財を販売する権利に対 する料金)などが考えられ,Matheuson and Winter(1984),Perry and Besanko(1991),Rey and Tilore(1986)などによって,その影響が分析さ れてきた.
ところが,この垂直的取引制約を考える一方,垂直的統合に関心を向ける 分析も多い.この観点では,上流企業と下流企業がお互いに自発的に合併し,
その利潤を最大にすることを,他の相 手系列に対して一種の戦略としてとら えている.あるいは,垂直的統合とい う強い形態をとらなくても,既存の垂 直的取引関係に対して参入制限をとる market foreclosureを形成すること で,それに近い効果を期待することも できょう.このような垂直的統合およ びmarketforeclosureの分析は,有賀
くこ最終財市場三〉
図
‑並河(1991),Hart and Tilore (1990) , Ordover, Saloner and Salop (1990) , Bolton and Winster (1991), Lee (1990)などによってなされてきた.
さて,中込 (1993)は,上の2つの問題のうち,垂直的取引制約を上流企 業の戦略として取り上げ,排他的取引関係が成立しているという前提のもと で,均衡戦略として上流企業が垂直的制約をとるか否かは2財聞の製品差別 化(あるいは水平的外部性)に依存することを示唆している.そこでは,図 1のような U1一Dl 間,U2 ‑D2間の取引関係が固定され,その2つの系 列が互いに代替性のある財を流通,販売するという流通構造のもとでは 2 財聞の代替性が小さいとき垂直的取引制約が採用され,逆に代替性が大きい
とき採用されない,という結論が導き出される.この結論は経済的解釈とし てもっともらしいといえるであろう.しかし,このモデルに対して2つの問 題が考えられる. 1つ目は 2財聞の排他的取引関係を前提とし 2財間相 互の取引関係(つまり ,U1‑D2間,U2一D d を排除しているために,先 に述べた2つ目の垂直的統合およびmarketforeclosureの問題が全く無視さ れていることである.確かに長期的取引関係において,系列構造が固定化し ている場合や,地域独占が発生している場合などこのようなモデルの適用さ れる現実的な流通分野は少なくないが,このため,上流企業が下流企業の超 過利潤をすべて吸収するなど,極めて上流企業の力が強い流通分野にのみ当
てはまるものとなっているといえよう. 2つ目は 2つの上流企業 U1‑
U2の費用構造が全く問題にされていないか,あるいはそれが議論に生かさ れていないので,上流企業が下流企業に取引関係をオファーする条件が対称 的であることである.
本稿では,この中込 (1993)の製品差別化モデルから排他的取引関係の前 提をとり ,U1‑ U2聞のDl' D2に対する競争を導入する.その状況で,
各企業はどのような制約戦略をとるか,またその戦略は製品差別化の度合に よってどのように影響されるかを分析する.さらに,垂直的統合を戦略とし て取り入れ,各企業聞の費用構造によって,統合,非統合戦略がどのように 影響されるかを示唆する.
2
.製品差別化市場における制約戦略まず,製品差別化された流通市場モデルを定式化する.図2のように,上 流企業
U
1,U
2と下流企業 Dl' D2に販売することができる.つまり,U1, U2間に製品差別化は存在しない.一方,Dl' D2は,U1, U2から 購入した財を最終財市場へ販売するが,そのとき消費者は Dl' D2の財に 対して異なる需要をもっ.すなわち ,Dl' D2間に製品差別化が存在す る.下流企業 Dl' D2の戦略を対称的とするために,互いに対称的な需要 関数を与えよう.つまり ,Dl' D2はそれぞれ,正の定数α,b,ιに対して,
ql
=
α‑bPl +φ2
, q2=
α‑bP2 +ePl(1) (2)
という需要に直面するとする.ただし ,
P i
(i= 1, 2)はD i
が設定する小 売価格である.ここで ,b>eを仮定することは妥当であろう.また需要関1 )このような例は,いわゆる ショップ・プランド"をもっ財市場に見られる.
(同質財)
(製品差別化)
図 2
数は ,U,
D
ともに共有知識であるとする.また,上流企業
U
1,U
2の限界生産費をそれぞれCl' C2 とする .U
1,U
zは同質財である財をDl' D2に供給するので,もし ,Cl =C2である場 合,Bertrand競争の結果,それぞれが設定する卸売価格rl,r2は明らかに rl =r2 =Cl =C2となり,均衡において Ujの利潤はゼロとなる.ここからは,一般性を失うことなく, Clくのと仮定して議論をすすめる ことにする.
ここでもう一度需要関数に戻ると,意味のある市場均衡において,小売価 格は限界生産費より小さくはならない.需要は, Cl' C2に対して,
a‑bCl +eC2
>
α‑bCl +eCl>
α‑bC2十eC2>
α‑bC2 +eClという関係をもつので,ここでは最小条件として ,a‑bc2 +eCl
>
0と仮 定しよう.さて,長期的取引関係を各主体が結ぶ前に ,U1, U2 はそれぞれ Dl' D2に対して同時に取引契約をオファーする.ここで ,Ujがオファーできる
ものとして,
η(卸売価格)
Aj (フランチャイズ料) Pj (小売価格)
が考えられる.
この3つの「制約」のうち, どれを課し,どれを課さないかによって ,Ui の均衡利潤が変化することが予想される.本稿では,
(ケース1)ηのみを制約として課す (ケース2)η, Ai・を制約として課す (ケース3)η, A,j
ρ i
を制約として課す の3通りについて検証しよう.(ケース1)
議論を単純化するために ,D1は匂とのみ取引し ,D2は
U k
とのみ取引 するとしよう.需要が(1)(2)式によって与えられているので, η とr k
が与えられると ,D1' D2の利潤はそれぞれ
π1 =(T1一η)α ‑bP1 (
+
φ2) , π2=(わ‑ r k )
α(‑bP2+φd
(3) ( 4)
と表わされる.それぞれρ1,れについて利潤最大化することによって,反 応関数
R1 (わ;η)
= ( α + φ
2+bη) j2
b, R2 (T1;η)= ( α + φ
1 +bη) j 2 bが得られる.Bertrand均衡解は,
バ(ろ rk)
=
[2 b(α+bη) +e(α+ brk) ] j ( 4 b 2 ‑e 2 ) , 必(ろ九)=
[2 b(α+brk)+e(α+bη)Jj(4b2‑e2)となる.
さて,ケ→ス1では,
U1もU2もr1=r2 =C2とした場合.…状態1 を仮定してみよう.
(5) ( 6)
(7) (8)
図3のように ,
U
1が D1とD2 ともに取引するならば,D1' D2はともに,反応関数R1(わ ;c2),R2 (Pl ; C2)より,
pB (C 2 , C 2) = [ 2 b (α+bC2) +e(α+ bc 2 ] / ( 4 b 2 ‑e 2 )
α
+
bC22b‑e
を設定.その結果,
U
1,U
2,D i
の利潤は, pB=pB(C2' C2)として,n
1=
(C 2 ‑C 1) α ‑bpB+epB) x ( 2(9)
=(C2‑Cl) [α ‑(b‑e) (α+ bc 2 ) / ( 2 b ‑e) ] x 2 , (10)
n
2=
0, (11) πi= (pB̲C2) (α -bp~+
φ,B)=b(α‑bc 2
+
ec 2 ) 2 / ( 2 b ‑e) 2 (12)ここでもし ,D2が逸脱して ,U2とのみ取引した場合,Dぃ D2の反応曲 線は,それぞれ
R
1(P2;C2),R
2(Pl;C2)となり,やはりどちらも pBを設定する ので,上の(10)(11)ωと同じ結果を得る.よ って ,D2は U2に乗り換えることによ って得することはない.さらに ,U1は D1, D2からAを徴収しようとしても,
それに対し ,D1, D2は取引を拒否し,
U2 とのみ取引することを選ぶので,
(13)
図 3
A1
=
0したがって,ケース lにおいて,状態1は均衡であることが確認で きた.(ケース2) このケースでは,
U
1はrl=Cl'U
2はr2=C2とした場合.…状態2 を考える.ケース 1と同じように ,Dl' D2が
U
1とのみ取引する形態を仮定する.Dl' D2の反応関数は ,
R
1 (わ ;cd,R
2 (Pl ; Cl)で,どちらも pB(C 1, Cl) = α+bCl( 2 b‑e) (14)
と設定.その結果,
πi=b(α‑bc 1
+
ecd
2 / ( 2 b ‑e) 2 • 。場ここでもし ,D2が逸脱して ,
U
2とのみ取引した場合,Dl' D2の反応関 数は,R
1 (わ;Cl)=
(α+φ2 +bc 1)/ 2
b,R
2(Pl;C2)=(α+φ1 +bC2)/ 2 b.よって, Bertrand均衡解は,
(16)
0
カバ
(Cl,C2)=[α( 2 b + e) + b ( 2 bc 1 + ec 2 ) ] / ( 4 b 2 ‑e 2 ) , 1(8) ρ号(Cl' C2)=[α( 2 b + e) + b ( 2 bc 2 + ec 1 ) ] / ( 4 b 2 ‑e 2 ) , (19)となり,逸脱した D2の利潤は ,p1=
バ
(Cl' Cl), p~=見 (c1, Cl)とし て,元2=(
必
‑C2)(α‑b見+ep1)=b[( 2 b+e) (α‑bc 1 + ec 1 ) ‑( 2 b 2 ‑e 2 ) (C 2 , C 1 ) ] 2 / ( 4 b 2 ‑e 2 ) . ~。
よって ,D2が逸脱によって生じる損失は,
π 2一π 2
b(2b2‑e2) (C2‑Cl)
[ 2 α ‑bCl +e( Cl) ( 2 b+e) ( 2 b‑e) 2
一(2b2‑e2)(C2, C l ) ] ω
π 2一元2は,U1, U2, D1の戦略が固定されているとき ,D2がU1から U2へ取引を変更したときの D2の利潤の減少を表わしている.つまり,
U
1は,D
2がU
2と取引するインセンティヴを生じさせないように,最大 口一元2の貨弊移転を D2に請求することが可能である.すなわち,A1
=
π 2一元2を U1が,Dl' D2に課すフランチャイズ料として考えることができる.
その結果,U1の利潤は,
I I
1=A
1x 2
2b(2b2‑e2) (C2‑CI) ¥
[ 2 α(‑bCl +eCl) ( 2 b+e) ( 2 b‑e) 2 L LJ ,U< v", 1 I " " 1 /
~2)
一(2b2‑e2)(C2一Cl)]ω
この結果は ,
U
1が卸売価格から得られる利潤をゼロとし,小売価格を可能 な限り下げ,フランチャイズ料を最大限獲得する,という意味で,先のケー スと逆の意味をもっている.また一方 U2の利潤は,I I
2= 0
~4)となる.
(ケース
3)
ケース3は,Uj(j=1,2)の戦略として,いままで見てきたが卸売価格),
Aj(フランチャイズ料)に加えてお(小売価格)を考える.ここでおげ=1,
2
)は匂と取引関係を結ぶDjの小売価格である. [れはDjに取引関係をオ ファーするとき,その小売価格を決定する権利を要求する.この再販価格維 持 (ResalePrice maintenance …RPM)により,先のケースと異なる結果 が考えられる.このケースでは,
U
1はrl=Cl'U
2は1'2=C2とした場合.…状態2 を考える.先のケースと同じようにDl' D2がU1とのみ取引する状態から考える.
Dl' D2の反応関数は ,
R
1 (わ ;Cl),R
2 (Pl ; Cl)なので,もし自由に Dl' D2小売価格を設定できれば,均衡価格は,RI a+bCl pli(Cl' C2)=一 一 」
2b‑e
となり,その結果,Dl' D2はπj=b(α‑bc 1
+
ec 1 ) 2 / ( 2 b ‑e) 2 •を得るであろう.
~5)
。
。
ここで ,
D
2が逸脱してU
2 とのみ取引したとする.ここでは ,U
1は RPMを行使できるので,D1の小売価格は pB(Cl' C2)のまま固定されるものとしようケすると ,D2の反応関数は ,pB=pB(Cl' Cl)として,
R
2(Pl;C2)=(α+epB+bc2)/ 2
b. 白方とすると, Bertrand均衡解は,
þ~=ρB ~8)
2 )実際は ,U1がこの価格を設定することが最適とは限らないので以下の(ケース3)の 結果は均衡とはし、えない.しかし,本稿では, (ケース2)との比較を容易にするために 小売価格をこの水準に固定して考えた.
þ~
( ) /
2 () /
2 b‑e) J.. ~ ¥ [ 2 ab+
ec 1+ (
2 b ‑e) c 2 ] •逸脱した
D
2の利潤は,~9)
2 = b 2[2α+eCl一(2 b‑e)C2] 2 4 ( 2 b‑e)
逸脱したことによる損失は,
。
。
b(C2‑C¥)
π2一π2=4(z2b
」
e)[4(α‑bCl+ec2)一(2b‑e) (C2 ‑cd]' ~。U1 は卸売価格から利潤を得ず .A¥ からのみ利潤を得ょうと考えれば,
2b(C2‑C¥)
~ ~~" ~ 4 ( 2 b‑e) L "~~ [4 α(‑bCl +ec2)‑(2b‑e)(c2‑cl)]. ~2)
先のケース2との違いを 図4によって見ておこう.
ケース2の場合.D2の逸 脱前は,反応関数
Rd ρ 2;
Cl) と R2(ρ¥ ; C1 )の交 点 Eが均衡となる.とこ ろが.D2が逸脱すること によって .D2の反応関数
R1 (れ;C1)
ρ21' R2(ρ1 ; C2)
月..
ρ B
B l
ゐrB
AY
‑
凸U
ρI 図 4
は
R
2(Pl;C2)ヘシフトし,均衡はE点となる.ここで明らかに,どちらの小売価格も E 点に比べ て高くなっている.一方,ケース3の場合は .D2が逸脱に対して .Dl の 小売価格は据え置かれるので変化せず,新しい均衡は E"点となる.
以上,ケース1.ケース2.ケース3の各ケースについて結果を得た.こ こまでの結論として言えることは,各ケースとも U1は.D1 • D2ともに 取引を継続するために,各Dがライバルの
U
2との取引に魅力を感じない限りで最大の利潤をあげるようなオファーを D1•
D
2に提示し,一方U
2は,各Dに対して,卸売価格をC2として自分の利潤をゼロにするようなオ ファーしか提示できない.いずれの均衡においても ,
U
1のみが ,Dl' D2と取引をとる形態となり,それは
U
2の活動停止を意味する.しかし,この ゲームにおいてU
2は意味のない存在ではない.なぜならば,U
2の存在に よって ,U
1は各Dに対して独占者としてふるまうよりもより控え目なオフ ァーしか提示できないからである.さて,先に述べたように
U
1は (rl,A
1,P
1) という 3つの可能な戦略 をもつが,このうちどれを行使し,どれを行使すべきでないであろうか.U
1は,Dl' D2に提示するオファーとして最適な戦略の組み合わせを考え るとき,上で得た結果での U1の利潤を比較することができる.U
1の利潤を2
b(C2 ‑C 1) 一(ケース 1) 1I 1 ... u ':: 2 ~ b‑e " I / • q'12.t.
(ケース2)宜1 2b(2b2‑e2)(C2 ‑Cl) ( 2 b+e) 2 ( 2 b‑e) 2
[ 2 ( 2 b+e)qll一(2b2‑e2)(C2一CI)]
2b(C2 ‑Cl)
(ケース3)E1‑ 4(2b‑e)・[4qllー(2 b‑e) (C2一Cl)]
(ただし, qll=α ‑bCl +ecl' q22三α‑bC2+ec2) として,次の命題を与えよう.
命題 Clくのを仮定するとき,もし U1が垂直的取引制約を課すとすれ ば,取引契約として ,(rl, A 1) よりは (rl,A 1, Pl)を選択する.
すなわち, 1I 1く1I1
証明 II1‑II1
2b(c2‑Cl) r A ̲ f() L ̲¥f̲ ̲ ¥ i 2b(2b2‑e2)(c2一C1 )
. [ 4 q11一(2b‑e) (C2 ‑Cl ) ] ‑
>0
4 (2 b‑e)
x [2 (2 b+e)q11一(2b2‑e2)(C2‑Cl)]
2be2 (C2 ‑C 1)
? [4 ( 2 b+e)q11一(8b2‑ 3e2)(c2‑Cl)]
2be 2 (C2 ‑C 1 )
2" [8 b(α‑bc 2
+
ec 1 )+
e ( 4 q 11+
3 e (C 2 ‑cd ]
4 (4b2
‑e
2)Q.E.D
この命題より ,U1にとって,垂直的取引制約は,フランチャイズ料A1と 再販価格ρ1との組み合わせによって行われることがもっとも望ましいとい
うことが示された.再びD2が逸脱して U2と取引したと考えよう .D2は
U
2より C2の卸売価格で取引し ,R
2(Tl;C2)の反応関数をもつことにな るが,ここで ,D1は,小売価格をpBに維持することで,R2 (わ ;C 1 )にし たがって行動するよりもより多くの利潤を得ることができる.逆にD
2は逸 脱によってより多くの利潤を失い、このことが契約時に U1の提示するフラ ンチャイズ料を引き上げるのである.次の2つの命題により ,U1は垂直的取引制約を課すべきかどうかを明らか にする.
命題2 Clくのを仮定するとき ,U1は,取引契約として,
2b‑3e>0のとき, (rl)より (rl,Al'ρ1 )を選択し,
(すなわち立1>JI1)
2 b‑3 eく 0のとき .(r1. A1.ρ1 )より (r1)を選択する.
(すなわち立1くII1)
証明
ケースlの利潤 II1とケース3の利潤立lを比較すればよい.
II1‑II1
2b(C2‑C1) r l /,,',/̲ ̲ " 2b(C2‑C1)
=
4(jb‑;) [4q11ー(2b一司(c2‑C1)]ー( 九 ‑ e )q22
24(2b‑e) b(C2一C1) . [ r L4 "1 ̲ 1:'q;tlll l一(/ " ¥,"2,b‑e) (V '‑ <'-J\"'~
̲ , / ̲
C2‑cd]‑
....1JJ̲ "
2b(2b‑e) (c2一C1). [qll一(b‑e)(C2‑C1)]
ρ ν
内ペ
d
'h U
‑ ヮ
一
e
pb
一 一
二b2
一 つ 臼
c
一/
¥ LU 7q つ 白 一 一 一
> ( < ) 0
(2 b‑3 e> (く)0 ) Q. E. D.命題3 C1くのを仮定するとき .
U
1は,取引契約として,2b‑3e> 0のとき,垂直的取引制約を課し,
2 b‑3eくOのとき,課さない.
証明
命題lと命題2より,
2b‑3e>0のとき.II > II > II or II > II > II • 2 b‑3 eくOのとき.II>II>II
となることから明らか.
Q. E. D.
これらの命題の示唆するところは以下のとおりである.まず. 2 b‑3
e
は製品差別化の指標として解釈される.需要曲線の形状より ,bが十分に大き い 場 合 ( 叶 川2財 の 代 替 性 は 小 さ く , あ る 程 度 小 さ い 場 合 小 川 は代替性は大きい.よって,費用優位企業である U!は 2財の代替性が小 さく,比較的に競争が穏やかな場合には,強い制約を取引相手の Dぃ
D
2に課すことになり,逆に代替性が大きく,競争が加熱している場合には,
D!
,D
2に行動の自由を与え,卸売マージンからのみ利潤を得ることにな る.このことは,中込 (1993)の結論とも合致している.結局,このモデルから得られた経済学的解釈として,排他的取引を仮定し ない,いわば自由な取引構造においても,上流企業の費用格差が存在するな らば,下流企業聞の製品差別化の度合によって,上流企業は制約戦略を決定 し,異なる均衡を生み出す結果となる,という結論が導き出せるのである.
3 .
統合戦略と非統合戦略これまでは,上流企業と下流企業が独立の経済主体として行動し,お互い 取引関係を結ぶ,という構造を前提に議論を進めてきた.ここではさらに,
ある上流企業とある下流企業が垂直的に統合しつの経済主体として行動 する,という構造をも含めて考える.
まず,ここでいう垂直的統合とは,上流企業と下流企業が合併し,自ら財 を生産し(上流部門と呼ぶ),流通させ,消費者市場に販売する(下流部門 と呼ぶ)ことができる 1つの企業となることである.ただし,それは,自ら 生産した財を外部の主体に販売することを妨げないし,また自らは生産せず,
外部の生産者より財を購入することも妨げない.
こ こ で は ま ず つ の 上 流 企 業 はlつの下流企業とのみ統合できるものと する.次に,インセンティブとして,統合前の2企業の利潤の和と比較して,
統合後,統合企業の利潤が大きくなるような場合には,必ずその2企業は統 合を望むものとする.つまり,統合後の2主体問の利潤の分配については考
えない.また,統合企業の中で,上流 部門から下流部門への財の受け渡しに 際し,便宜的に生産費用分の貨弊移転 を考えることにする.さらに,ここで は,統合コスト(統合に際し生じる非 効率性)は考慮しない.
ここでも, Clくのを仮定して進め よう.費用優位企業
U
1は,Dl かD
2のいずれかと統合できる.ここで は一般性を失うことなく ,U1はDl を統合相手に選ぶものとする.さて,U1は Dl が統合し ,U2とD2は2 主体のまま残されるケースを考えよう
(図5). U2は卸売価格C2で取引す
図 5
E~*Y
図 6
るしかない .
D
2がもしU
2と取引するならば,反応関数R
2(Pl ;C2)をも つことになる.一方統合企業の下流部門 d1は,R1 (れ;C 1 )にしたがう.そこで,均衡価格は,先に定式化した p~ , t号となるであろう.ところが,
統合企業の上流部最Ulは,図6のように,個別に外部のD2と取引するこ とが可能である.そこでもしUlが卸売価格をのとしてD2と取引すれば,
D
2はU
2と取引して得することはなくなる.したがって,統合企業の利潤 は,d
1が消費者市場から得る利潤と ,UlがD
2へ販売することから得られ る利潤の和として定式化され,I I v =
(バ -Cl)(α -bp~+ φ号)+
(C2一Cl)(α -b必 +ep~)= b 2[(2b+e)q22+(2b2‑e2)(C2‑C1)]2 (4b2
‑e
2)b(C2 ‑Cl)
~[( 2 b+e)q22‑be(C2一Cl)]
4
b2‑e
(ただし ,q22三α bC2+ec2)
。 功
となる .
d
1はU
2と個別に取引する動機はなく ,U
2はC2以外の価格をつ けることができない.また ,U
1はD
2に対してフランチャイズ料や再販価 格を要求することもできないので,これが統合での均衡である.このときの 利潤 IIvと統合していないときの各ケース(1, 3)での II1+
1rlとを比較 することで,このような統合が成立するか否かが判定できる.(ケース 1)
ケース lの場合,非統合の状態での U1とDlの利潤の和は,
IIl¥Tl
=1
--~';. b(C2‑Cl2 b‑e q) q22+ 22T (2 b‑e) 2qf2(ただし ,q22三α‑bC2+ec2) となるので,
b(C2 ‑Cl)
IIv‑IINl (4b2‑e2)~~\/~? \/~~\?x(-e2(2b+e)q22 2
+ [ (
2 b 2 ‑e 2 ) 2 ‑be ( 4 b 2 ‑e 2 ) ] (C 2一Cl)) b(C2 ‑Cl)2"( ‑e2 (2 b+e)q21 (4b2‑e2) ヨ
+
[4 b 2 (b 2 ‑be ‑e 2 ) ‑be 3 ] (C 2 ‑C 1 ) )(ただし ,q21三α‑bC2+eCl) ここで ,
D
三 (b2‑be‑e2)とすると,bく
? e
のとき ,DくO(34)
(35)
よって ,q21>
0
であることから, II v‑IINlくo .
つまり,命題
4
Clくのを仮定するとき, 2
b‑
3e
く0の範囲では ,U
1とDlの統合は成 立しない.(ケース
3)
ケース3の場合,非統合の状態での U1と Dl の利潤の和は,
b b(C2‑Cl) 3 (2 b=‑e) 2
q n
+ v4'Vt2 bV~~) [4 ql1一(2b‑e) (C2 ‑Cl)J (ただし,ql1三α(‑bCl+ecl)
となるので,
II
v‑
IIN3b(C2 ‑cd
( A h2v̲n2i2 [(2b‑e)ql1+(2b2‑e2)(c2‑cdJ2+
(4b2‑e2)2 L''''V VJ'fll' ,
. . . v
V J'V{. V1J...J 4b2‑e2x [ (
2 b+e)q22‑be(c2 ‑Cl)Jb ̲2 b(C2 ‑Cl)
( .. L V ̲ ¥ ? q {i V A' .... /.. L.... 1 ~ ¥ [ 4 q 11一(2b‑e) (C2 ‑Cl)J ( 2 b‑e) 2ヨ1 4 ( 2 b‑e)
b(C2 ‑Cl)
( A h 2 ̲" 2 ¥ 2 [( 2 b + e) q 11 + be (C 2一Cl)J2+
(4b2‑e2)2 L''''V' VJ'fll' v v,v{. V1J...J 4b2‑e2
x [ (
2 b+e)ql1一(2b2 ‑e2) (C2 ‑Cl)Jb ̲ 2 b(C2 ‑Cl)
q{‑l vA"/.. L" 1 ~\ [4 ql1一(2b‑e) (C2 ‑Cl)J ( 2 b‑e) 21f11 4 ( 2 b‑e)
b(C2 ‑Cl)
A ~ \~~2 ~1"J2 i 2 (8 be( 2 b+e)q21
+ [
‑16b4 4(4b2‑e2)。
。
+16b3e+28b2e2 ‑3e4J (C2 ‑Cl))
(ただし, q21三α‑bC2+eCl)
この正負を判定するのは容易ではないが ,bが十分にすりこ近いときは,
D三 (‑16b4
+
16b3e+28b2e2 ‑3 e4)>
0となることにより, II v‑IIN3 >o .
すなわち,ケース3の範囲2b‑3e>Oで統合戦略が優越する範囲が存 在するといえる.図
7
は,この結果を数値計算によって示したものである.パラメータのうち,a
,ιClを固定して ,b‑C2座標を作り,各ケースについて考えてみた.ま ず,横軸について, 1.5eよりも左側が非統合戦略のケース1が優越してい る範囲,右側がケース3が優越している範囲である.次に,この座標上に,q21= α ‑bC2 +ecl) = ( 0となる軌跡を描いた.仮定より ,(b,C2)はこの曲線
C2
1.0e 1.5e 2.0 e (0.701. ‑52.839)
3 )α=50.0, e=1.0, C1=1.0.
3.0 e
図 7
a:¥tc¥work¥01 目盛幅は x軸l y軸 100
(4.289. 593.3)
4.0 e I b
の下方になくてはならない.
では初めに,
I I
v=I I N l
となる軌跡について見てみると ,bが大きくなるに つれて,それに対応するのの値は減少していく傾向が見てとれる.この軌 跡よりも上方がI I v > I I N l '
下方がI I v
くI I N l
を表わしている.ところが,この関係の意味のある 1.0eくbく1.5eの範囲で,
I I
v=I I N l
の軌跡はつね にq21=0曲線よりも上にある.すなわち ,q21> 0の条件を課す限り,決し てI I v > T I N l
とはならない,という先の結論と合致している.つまり, 1.0
eくbく1.5eの範囲では,つねに非統合戦略がとられる.
次に,
I I
v= IIN3となる軌跡について見てみると,やはり bが大きくなるに つれて,それに対応するのの値は減少していく.この軌跡よりも上方がI I v
くIIN3,下方がI I v >
IIN3・ケース3にとって意味のあるb >
1.5eの範 囲では ,q21= 0曲線の下方でいずれの領域も確認できる.しかし,非統合 戦略は ,bが1.5eに十分近いときには決してとられない.このことは先の 計算結果と一致している.すなわち,ケース 1では製品差別化が小さいとき は統合は起らず,逆にケース3では製品差別化が小さいときに統合が起こる ことが確認できる.全体的に見ると,あるの水準では ,bが大きくなると,非統合戦略(ケース1)→統合戦略→非統合戦略(ケース3) となり ,b=
す
e付近に統合戦略の起こる範囲が存在することが示唆されて いるといえよう.4 .
おわりに以上,製品差別化市場における流通モデルで,垂直的取引制約と垂直的統 合の与える結果を分析した.本稿の行なった分析の特徴として,従来別々の 分析対象であった垂直的取引制約と垂直的統合(および
m a r k e tf o r e
c1o s u r e )
を lつの戦略空間の中に含め,それらを製品差別化の度合と費用構造の差と いう 2次元パラメータ空間上の均衡戦略として分類したことにあるといえよ う.今後の課題としては,さらに U1,U2問,または, u n
聞の情報の非対称性を考え,それが上の結果にどのような影響を与えるか,という問題が考 えられよう.
参 考 文 献
[ 1 J Bolton, P. and D. WinsterThe"Forec1osure官ffectof Vertical Mergers", J ournal of Institutional and Theoretical Economics, 147. pp. 207 ‑224 (1991)
[ 2 J Hart, O. and J. TiloreVertical Integration and Market Forec1osure" , Brookings Papers on Economic Activity, Summer, pp. 205‑76 (1990)
[3 J Lee, S‑HBehavior of Vertically Integrated Firm and Market Forec1osure in Two Stage Conrnot Oligopoly" , mimeo (1993)
[ 4 ] Ordover, J. A., G. Saloner and S. C. SalopEquilibrium Vertical Forec1osureぺ
American Economic Review, March, 80, pp. 127 ‑41 (1990)
[5 J Mathewson, G. F. and R. A. Winter,An Economic Theory of Vertical Restraints" , Rand Journal of Economics, 15, pp.27‑38 (1984)
[6] Pe汀y,M. K. and D. Besanko,Resale Price Maintenance and Manufacturer Com‑
petition for Exc1usive Dealerships" , Journal of Industrial Economics, September, pp. 517‑44 (1991)
[ 7 J Rey, P. and ]. Tirole,The Logic of Vertical Restraints" , American Economic Review, 76, pp. 921‑939 (1986)
[8J有賀健,並河永『流通費用と参入障壁』
三輪芳朗,西村清彦編「日本の流通」第 6章東京大学出版会, (1991)
[9J中込正樹『国際貿易と流通市場におけるブランド間競争および垂直的取引制約』青 山経済論集第45巻第l号, 2号(1993)