労働における企業の社会的責任 : 静岡県内におけ るファミリー・フレンドリー企業への取り組み
著者 布川 日佐史
雑誌名 静岡大学経済研究センター研究叢書
巻 4
ページ 34‑46
発行年 2006‑03‑03
出版者 静岡大学経済研究センター
URL http://doi.org/10.14945/00009136
労働 における企業の社会的責任
一静岡県内におけるファミリー・フレンドリー企業への取り組み―
布 川 日佐史
は じ め に
企業が果たすべ き社会的責任 (CSR)に 関して、新 しい展開がある。企業の社会的 責任 として、従来取 り組まれてきた環境分野や社会的責任投資 (SRI)1こ 加えて、労 働・雇用に関わる分野における企業の社会的責任が論 じ始められたことである。
日本経団連は「企業行動憲章」を改定 し (20斜 年 5月 )、 労働・雇用に関わる企業の社 会的責任を課題にあげた。また、厚生労働省は「労働における CSR(企 業の社会的責 任 )の あ り方に関する研究会」を設置 し、『申間報告』 (2004年 6月 )を まとめた 1。 そこ で iよ 、一般的なステ∵クホルダーと違い、従業員 という「人」に関する取組みには特別 な考慮が必要との問題提起がされている。従業員の個性や健康に配慮 し、能力発揮機会 を付与することが企業の社会的責任沐あるということになる。これは、 「人 Jの 立場か
ら企業の社会 1的 責任を FHlう ことこそ、長期利益 を重視する「サステナビリテイー・マネ ジメント J(持 続可能な経営モデル )へ の転換を推進するという位置づけである。
労働における企業の社会的責任 として具体的に掲げられている課題は 3つ ある。第二
'が、賃金、労働時間など基本的な法定労働条件を遵守すること (コ ンプライアンス )で
ある。第二が、キャリア権の保障であるι第三が、ファミリー・フレンドリー企業への 転換である。 ´
ここでは静岡県内企業においてファミリーヽフレン ドリー企業への転換がどのように 進んでいるのかを検討する。まず、第二章では、昨年施行された次世代育成支援対策推 進法の実施状況を検証することとする。次に、第二章では、県内における先進企業の事 例を検討する。
lt労働における CSRの あり方に関する研究会 (2004)『 中間報告書』 (厚 生労働省 )
労働における企業の社会的責任 帯 岡県内におけるファミリニ・フレンドリー企業への取り組み=
第一章 次世代育成支援対策推進法の静岡県内 にお ける実施状況
1 次世代育成支援対策推進法の概要
次世代育成支援対策推進法 (2003年 7月 成立 )と は、「我が国における急速 な少子化 の進行並びに家庭及び地域 を取 り巻 く環境の変化 にかんがみ、次世代育成支援対策に関 し、基本理念 を定め、並びに国、地方公共団体、事業主及び国民の責務 を明 らかにする とともに、行動計画策定指針並 びに地方公共団体及び事業主の行動計画の策定その他の 次世代育成支援対策 を推進するために必要な事項 を定めることにより、次世代育成支援 対策を迅速かつ重点的に推進 し、 もっ ,て 次代の社会 を担 う子 どもが健やかに生 まれ、か つ、育成 される社会の形成 に資することを目的 とする」 (同 法第 1条 )も のであ り、
2005年 4月 1日 に施行 された。
現在 これをもとに次世代育成支援対策推進が 2系 統で展開されている。ひとつは、地 方公共団体が住民の生活に関わ りなが ら「地方公共団体行動計画」 を策定・具体化する 系統であ り、 もうひとつが、事業主が人を雇 っている立場で「事業主等行動計画」 を策 定・具体化する系統である。労働局が扱 うのは後者の「事業主等行動計画の策定」であ
り、事業主は企業等の一般事業主 と、国 。地方公共団体 など特定事業主 とに分れる。
ここで取 り上げるのは、企業の一般事業主行動計画に関わる部分についての静岡県内 の実施状況である 2。
2 ‑般 事業主行動計画の策定・ 届出状況 `
次世代育成支援対策推進法は、 (1)企 業規模301人以上の労働者 を雇用する事業主には 義務 として、 (2)企 業規模300人 以下の労働者 を雇用する事業主には努力義務 として、一 般事業主行動計画を策定 し、策定届け を都道府県労働局 に届け出ることを規定 している。
行動計画 とは、計画期間とその間に達成する目標 を明示 したものである。
策定届けとは、次世代育成支援対策の内容 として定めた項 目と計画期間とを記入 した ものである。定めた項 目にマルをつけて提出するという形式であ り、計画内容そのもの、
すなわち、具体的にどんな施策 を行なうのか、また従業員の何人・何パーセン トの人に 適用するようにするとか という計画その ものの提出を義務付けているわけではない。
(行 動計画の様式は静岡労働局のホームベージか らダウンロー ドで きるようになってい る。行動計画 と策定届けの様式は、資料 1の とお りである。 )
2 本稿は、静岡労働局雇用均等室久保村 ひとみ室長へのヒアリング (2006年 1月 18日 )を もとにしている。
2006年 1月 16日 現在で、県内320社 か ら行動計画策定届けが出されている。企業規模 別に見ると、 301人 以上企業 297社 のうち、 289社 、97.3%が 届出をしている。 300人 以下 の企業は 31社 が届け出ている (資 料 2)。
全国的に見ると 301人 以上企業の届出率は、 2005年 12月 現在で97.0%で ある。 100%の 県が 24県 ある。静岡県 においては昨年 11月 時点で 100%を 達成 したが、その後新規 に事 業所が開設 され、そこか らの届出を待 っているため現時点では97.3%に 落ちているとの
ことである 3。
出所 : 静 岡労働 局 (2006年 1月 18日 )
資料 1:届 出事項
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