長 崎 大 学 教 育 学 部 自然 科 学 研 究 報 告 第32号207〜214(1981)
親 ・疎 水 性 繊 維 に よ る 快 適 感 に つ い て
鈴 木 淳
長 崎大 学 教育 学 部 家 庭 科 教 室 (昭和55年10月31日 受理)
Aspects of Comfort Among Hygrophilic and Hygrophobic Fibers
Atsushi SUZUKI
Department of Home Economics, Faculty of Education Nagasaki University, Nagasaki
(Received Oct. 31, 1980)
Abstract
There are many reports on the differences in comfort between hygrophilic and hygrophobic fibers. But clear accounts or scaling of these differences are not given as these differences are influenced by many factors such as motion and environment.
In this paper scalings of the differences in comfort among cotton, wool, acrylic and polyester fibers were made by a sensory test based on skin sensation in the arms under conditions varying from 20 °C/65% R. H. to 29.5 °C/95 % R. H.. The approach was to ask the subjects wearing the different fabrics to rate them for comfort. The results showed significant differences in comfort among the fabrics tested. Polyester, the least hygroscopic and absorbent, was consistently scored the lowest in comfort. Next, acrylics, which are not very hygroscopic but rather absorbent, and wool, which is the most hygroscopic but the least absorbent, were classed as having medium comfort. Finally, cotton, which is very hygroscopic and absorbent of the fibers tested, was classed as the most comfortable.
1.は じ め に
夏 着 る衣 料 と して は 吸 湿 ・吸 水性 の あ る綿 が 重 視 され,メ ー カ ーで は合 成 繊 維 の 親 水 化,つ ま り吸湿,吸 水,吸 汗 加 工 な どの研 究 開 発 が 行 わ れ て い る1)。 これ らの こ と は1っ に は 綿 の 良 さ が,経 験 的 に強 調 され て い る結果 で あ るが,こ の よ う な 経 験 的 問題 を 科 学 的 に 検討 す るた め,従 来 か ら,人 間 一 衣 服 一 環 境 系 で の 親 ・疎 水 性 の 違 い の よ うな繊 維 種 別 に よ る 「快 適 さ」
の差の研究が行われている2)。しかし,その差の程度や効果,つまり尺度については,いまだ 必ずしも明確になっているとはいえない。
そこで本報告では,その尺度の一端を究明するため,判断が正確(同時比較できる),かつ 敏感(過渡応答である)である新しい方法として,左右前腕部(別々の布を取りつけた)の局 所環境が,標準状態から高温多湿の環境状態にまで,過渡応答的に変化する過程での一対比較 による官能試験を試みた。すなわち,親・疎水性繊維を特徴づけるポリエステル,アクリル,
毛,綿等の繊維種別による布の接触感(温冷感,乾湿感,力学感,快適感)について検討した ので報告する。
2.実 験 方 法
2.1.試 料
表1に用いた試料の諸元を示した。試料は布構成条件が類似する繊維種別によるメリヤス地 で,使用に際し精練処理し,20℃,65%R.H..の標準状態に調整して用いた。繊維種別は親
・疎水性の違いを吸湿性とぬれ易さの観点からとらえ,ポリエステルでは吸湿性が小さくぬれ にくいもの,アクリルでは吸湿性が小さくぬれ易いもの,毛では吸湿性が大きくぬれにくい もの,綿では吸湿性が大きくぬれ易いものの代表として選んだ。なお,比較のために綿クレー プも1枚加えた。また,試料の諸元は次のような測定法に準拠し,測定は標準状態(20℃,65
%R,H.)で行った。まず,厚さ,通気度,剛軟度等の測定については,それぞれ織物厚さ 計,フラジール型通気度試験機およびハートループ法による剛軟度試験器等を用いて測定し た。吸水速度はバイレック法による測定値を示し,吸湿率は官能試験前の標準状態に調整した 試料の吸湿率で示した。接触角については繊維に水滴を噴霧し,その顕微鏡写真から計測し,
含気率は繊維の比重ρ,布の厚さ4,布の乾燥重量η。等を知って,式100(ρ4一η。)/ρ4か ら計算した。また,透湿性については,カップ法により20分後の水の蒸発量を測定し,空試験 のときの透湿量を別。,布をつけたときの透湿量をωとし,式100(初。一ω)/測。から評価し た。一方,熱伝導性については,定熱熱源を用いた放熱面が定常状態のときの表面温度を測定
し,空試験のときの表面温度をカ,試料をつけたときのそれをオ、,外気温をらとして,式(≠
一オ2)/(ち一62)から求めたものである。
表1試料の諸元
布構成繊維 布の種類
密 度 番手
厚さ
嘩ロ)
含気率
%)
吸湿率 籟) 接触角
) 吸水速度皿γ 10min
通気性
/αr/
透湿性
%)
熱伝 性
剛軟 たて mm)
W/㎝)
よこ C/cm)
ポリエステル メリヤス 15 13 82.5d 0.86 88.9 0.1% 68 18 177 58 0.89 77.5
アクリル 13 18
一 0.39 78.5 1。5 55 80 221 54 0.97 87.0
毛 13 15 悔7.5S
0.65 83.6 14.1 82 (0) 183 53 O.86 89.0
綿 13 互9 42・
S 0.69 85.7 7.9 55 110 181 57 0.91 85.5
クレープ 57
本/c口陰) 31
本/伽) 一 0.38 82.4 8.2 53 94 238 54 0.93 70.0
親・疎水性繊維による快適感について 209
2.2..官能試験 1)『被 検,者
普通体型の成人男子3名について行った。
2) 実施場所および時期
気温20℃,気湿65%R.H.,気流15c毎secの標準実験室で9月の時期に行った。
3)試験装置聖
図1に示すような左右前腕部の雰囲気が調 整できる2つの環境ボックスと温湿度調整 装置とを製作した。環境ボックスには厚さ
3mmのアクリル板を用い,その外寸は
15×30×15cm (巾×長さ×高さ)の大きさ とした。環境ボックスの前,後面にはゴム製 のカバーを取りつけ,挿入口では肘より上の 上腕部で,挿出口では手首の部分で感閉し,
ボックス内には前腕部のみが挿置できるよう にしてある。一方温湿度調整装置は,恒温槽 によって温度がコントロールされている水槽 に圧縮空気を流通させて,その圧力を調節す
圧 縮→空 気
調整装置計 開
圧 圧 流 力 力 日璽 調 設 設
節 定 定 水
弁 弁 弁 槽
恒 温
男
槽
開閉コック
糞
環 →境 ポ ーDツ ク槽ゴムホースス
ヘ
環境ボックス エア流入ロ ボックス 被覆布ま
前腕部挿入口
図1 前腕部環境ボックスと温湿度調整 装置の概略図
るごとにより一定温湿度の空気を作り,それを環境ボックス内に循琿させた。このとき2.,ボーγ クス内の気流は圧縮空気の流量によって調節することにした。なお,圧縮空気の流通経路およ び環境ボックス等は適宣保温した。また,温湿度および気流の測定にはエース鋭感温湿度計お よび熱線風速計等を用いた。
4)試 験方法
宮能試験は標準状態の実験室で半袖の通常服を着た椅座の状態で次の順序で行った。
① 温湿度および気流測定用の検出素子を環境ボックス内にセットする。また,図1の開閉 コックを閉じたままの状態で温湿度調整装置を運転し,圧縮空気の送入管を環境ボンクス内へ 挿入する。
② 左右前腕部に別々の布(円筒状で皮膚との間で密着移動できる程度とし,手首での直径 を6cm,前腕部上端での直径を8cm,長さを25cmとした)を被覆する。
③その被覆布一皮膚間(前腕部背面中央部分)に温湿度検出用素子を挿入する(布を被覆 しない場合には皮膚面に接着テープでセットする)。
④ 左右前腕部を環境ボックス(標準状態にある)内に闇入する。
⑤ 開閉コックを開き圧縮空気を循環させる。
⑥ 循環直後から1分毎の時間経過に対する温湿度(環境ボックス内および被覆布内)の測 定と接触感の評価を行う。
⑦ 試験終了時の被覆布の吸湿率を測定する。
⑧ 別途追加試験を行い被覆布一皮膚間に挿入した口紙(面積78cm2)の試験終了時の吸湿 量を測定する。
以上の方法により接触感の官能試験を実施した。
5)試験条件
図2に試験条件として布をつけずに前腕部を挿入したときの環境ボックス内の温湿度の入力
特性を示した。図で,棒線は環境ボックス内 の温湿度〜経過時間曲線で,点線はそのとき の前腕部背面中央皮膚面の温湿度〜経過時間 曲線である(被検者3人,試験回数6回の平 均値)。この入力特性は,次の2点を前提に 温湿度調整装置を設定したもので,いいかえ れば布を付けた前腕部が不汗蒸泄の領域に近 い快から不快に微妙に変化する過程での官能 試験を対象としたものである。
すなわち,
① 標準状態の実験室にあっては,全身感 覚(魎幹部感覚)が快適状態にあること。
② 布をつけない裸の前腕部が環境ボック ス内で感ずる局所感覚は温湿度の上昇過程を 通じて余り変らず快適状態にあること。
等である。
6)評価方法
接触感の評価項目は温冷感,乾湿感,力学 感,快適感の4項目とし,力学感については
「べたつき」を指標とし,快適感は接触感の 総合的な評価として取り上げた。また,これ らの尺度は表2に示すような5段階評価でも って表わした。評価方法は左右前腕部に被覆 した布の接触感の差を一対比較により確めな がら,1分毎の時間経過に伴う感覚量を評価 した。官能試験1回の所要時間は18分で,被 検者3人が5種類の布のすべてについて一対 比較を行い,同一種類の布について合計12回
100
90
獣(80
遡70
製 60
50
4P
30 32
30
(28P
翼26
魍 24
22
20
180
図2
一一〇9一ρ・●。0。一℃.一〇・。0。・
一 0 θ4 0ρ
, 一,ロ噂F胃一■一眞一 ノ ノあ
o !智
♂ ノ膚
ぽ な
/ 。!。一一一
ノ/鑑納〃/
グ
ー一一ズ。・ズー。ヌ 翼 .躍一 ンー・
一 一貿 ro旨
ジ 前腕部皮膚面
! ・一伽一温度 済 一曝_・湿度 甚
4 8 12 16 20
経過時間(min)
布を被覆しないで,前腕部を挿入 したときの,環境ボックス内およ び前腕部皮膚面の温湿度特性 表2 接触感の項目と評価値 評価値
目 1 2 3 4 5
温 冷 感 冷たい や や たい
どちら もない
や や かい 暖かい 乾 湿 感 乾いた や や
った 湿った かなり った
非常に った 力 学 感 さらっした や や
たつく べたつく かなり たつく
非常にべたつく
快 適 感 快 や や
快 不 快 かなり 快 非常に 快
の試験を行った。また被覆布一皮膚間の温湿度特性を1つの尺度で表わすために感覚温度を利
用した。
3.結果及び考察
3.1.被覆布一皮膚間の温湿度特性
官能試験開始後の時間経過にともなう被覆布一皮膚間の温湿度の測定結果と,その結果から 求めた感覚温度(気流がOcm/secのときの)の結果とを図3に示した。図3によれば,被覆布 一皮膚間の温湿度特性は環境ボックス内の温湿度の影響を受けて変化し,その変化には繊維種 別による布の効果が認められた。とくに,その効果は湿度の場合に特徴的である。まず,ポリ エステルとアクリルでは湿度の応答速度が速く,経過時間の3分前後でその変化が最大曲率を 示し,経過時間のIO分前後で75彩R.H.の平衡状態に達している。一方,毛では湿度の応答 速度が遅く,経過時間の7分前後でその変化が最大曲率を示し,経過時間の13分前後で68%
R.H.の平衡状態に達する。綿ではその中間的な性質を示し,平衡状態での湿度は70彩R.H.
34 ε
遡30 腿 駅26 噛
22 75
65
§ 翼55
駆 45
35
25 34
32
^30P
懲 28
魍 26
24
22
20
親・疎水性繊維による快適感について
温度 ら、6繁㌘二r∫論二盤「f3383∂ 1 \ 5ニノ .9一.一^・・の9▲ ●畠
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駕 」.一艦一==忙。コ 声ノ 一一こ_艦.g
騒貌グ
護ゲ// 感覚温度 ヲヶプ ._L㌔__
口毛 ×綿クレープ ○綿メリヤス
05101520
経過時間(分)
図3 外環境が高温多湿に変化する過程 での被覆布一皮膚間の温湿度ない しは感覚温度の変化特性
211
前後の値を示した。次に温度の場合には,ポ リエステルと毛でやや高く,アクリル,綿で はやや低い値となっている。全体的に経過時 間の5分前後でその変化が最大曲率を示し,
経過時間の12分前後で33〜35℃の平衡状態 に達する。なお,試験中の温湿度の上昇は大 略6℃,35%R.H.前後である。
以上は温湿度の特性であるがその結果を感覚 温度でみるとポリエステルとアクリルでやや 感覚温度が高く,毛と綿ではやや低い値とな っている。全体的な数値では試験開始直後の 値が24℃前後で,経過時間の4分前後でその 変化率が最大曲率を示し,そのときの感覚温 度は29〜30℃程度の値となり,IO分前後で平 衡状態に達し,ほぼ31〜33℃の値を得た。
2.2. 被覆布1および被覆布一皮膚間の水
分特性
官能試験終了時における被覆布の吸湿率と被覆布一皮膚間に挿入した口紙の比水分増加率
(綿メリヤスに対する)とを求め表3に示した。被覆布の吸湿率は表1の標準状態における吸
表3 繊維種別による布の接触感の評価結果
試 料 布 感 覚
評 価 値 感覚 温 度(℃〉
25 26 27 28 29 30 31 32 ポリエステル
リヤス
温 冷 感 3.9 3.8 3.8 3.7 3.2 2.2 2.1 2.1
乾 湿 感 1.2 1.5 1.9 2.3 2.7 3.1 3.6 4.1
力 学 感 1.2 1.3 1.6 2.5 3.1 3.6 4.1 4.1
快 適 感 1.1 1.2 1.3 2.6 3.3 3.7 4.0 4.2 ア ク リ ル
リヤス
温 冷 感 3.9 3.8 3.8 3.7 2.8 2.2 2.1 2.1
乾 湿 感 1.0 1.1 1.4 1.6 2.0 2.4 2.8 3.2
力 学 感 1.0 1.2 1.3 1.6 2.2 2.6 3.1 3.2
快 適 感 1.0 1.1 1.3 1.5 1.9 2.4 2.8 3.0
毛メリヤス 温 冷 感 3.8 3.8 3.8 3.7 2.8 2.2 3.2 一
乾 湿 感 1.0 1.0 1.0 1.1 1.3 1.6 2.3 3.4
力 学 感 1.0 1.0 1.2 1.4 1.7 2.2 2.9 3.4
快 適 感 1.0 1.0 1.1 1.2 1.5 2.0 2.8 3.6
綿タレープ 温 冷 感 3.9 3.8 3.8 3.7 3.5 2.2 3.2 一 乾 湿 感 1.0 1.0 1.0 1.0 1.O 1.1 1.6 一 力 学 感 1.O 1.0 1.0 1.0 1.1 1.3 1.7, …ムー
快 適 感 1.0 1.O 1.0 1.0 1.1 1.3 1.7 一 綿メリヤス 温 冷 感 3.9 3.8 3.8 3.7 3.2 2.2 3.5 一
乾 湿 感 1.0 1.0 1.0 1.O 1.0 1.O 1.3 一 力 学 感 1.0 1.O 1.0 1.0 1.O 1.0 1.2 一 快 適 感 1.0 1.0 1.0 1.0 1.0 1.1 1.3 一
湿率よりもわずかながら増加している。また被覆布一皮膚間の比水分増加率は被覆布の吸湿 率と逆相関の関係にあり,図3で示した被覆布一皮膚間の湿度特性と相関性がある。なお,
被覆布の吸湿率,および被覆布一皮膚間の水分増加量(綿メリケスにおける口紙の水分増加 量は4×10 39/27躍18min)はともに低く,高温多湿条件下とはいえ不汗蒸泄に近い領域にあ
るものと考えられる。
3.3.接触感の評定結果
測定項目
料布
被覆布の吸湿率 (%)
被覆布一皮フ間の 比水分増加率 対綿メリヤス比)
ポリエステルメリヤス 0.17 2.5
アクリルメリヤス 1.7 1.7 毛メ リ ヤス 15.1 0.8
綿 ク レープ 9.3 1.2 綿メ リ ヤス 8.5 1.O
表4に温冷感,乾湿感,力学感および快適感等の評定結果をまとめて示した。図4,図5に はそのうちの総合的な評価値である快適感について対経過時聞曲線および対感覚温度曲線を示 した。その結果は布の繊維種別による接触感(不快感)の差の程度をかなりはっきりと示㌧て いる。まず図4では時間経過に伴う快適感の応答速度にかなり差のあることが判る。すなわ ち,1ポリエステルの布では不快感が速応的に働き,その程度も大ぎい。綿ではゆっくりして おりしかも小さい。アクリルと毛では中間的な性質を示している。次に図5によればポゾエ ステルの布では被覆布一皮膚間の温湿度が30.4℃,55%R.H.(感覚温度で26℃)の低い段 階で,快適感に差の反応が出始め,、その後不 表4 官能試験終了時の被覆布および被
覆布_皮フ闇の水分特性。 快感が急増し・温湿度が3L6℃・62彩R・E・
(感覚温度で28.5℃)の段階で,不快状態 (評価値3)となり,温湿度が35℃,75%
R.H.(感覚温度で33℃)の平衡状態では「か なり不快」より高い評定結果(評価値4.2)
を示した。一方,綿では最も不快感程度が 小さく,被覆布一皮膚間の温湿度が32℃,
65%R.H.(感覚温度で29℃)前後以上で 始めて快適感に差が出始め,温湿度が33.5℃,
70%R.H.(感覚温度で31.5℃)の平衡状 試料布 態になってもrやや不快」よりかなり低い値 一轟一一ポリエステルメリヤス
野緩(5)
磐趣
響不快(3
璽
綜渓(2)
快(1
一ゆ一アクリル 〃 一ロー毛 一μ一綿クレープ ーo一綿メリヤス ー●一無被 覆
/●一6『6
!凸 6/乙
/ ∠・一
//グ〆一…
ム ひ ロ
(評価値は綿メリヤスで1.52,綿クレープで 1.85)にすぎないことが判る。アクリル,毛
樋 燭
準桟(5
磐靹
不 快12)
皐 や や 不快(2
快α
0
48121620
経過 時 間図4 環境が高温多湿に変化する過程で の繊維種別による布の快適感〜経 過時聞特性。
試料布
一炉一ポリエステルメリヤス
ノ ゆ アクリル リ レ ー・一 /
…i三籔蕉//
22 24 26 、 28 30 32 、 34
感覚温度(℃)
図5 被覆布一皮膚間の感覚温度に対する 繊維種別による布の快適感(接触 感)の差の尺度
親・疎水性繊維による快適感について 213
では中間的な性質を示し(平衡状態での評価値はアクリルで3.2,毛では13.5),温湿度の低い 領域での変化過程ではアクリルの方が不快を感じやすく,温湿度の高い領域での変化過程では 毛の方が不快を感じやすい結果となっている。また,表3によれぱ,乾湿感,力学感の評価は 図5の快適感の評価曲線とよく対応する関係にあり,温冷感についてはそのような直接的な関 係が認められない。すなわち,温冷感ではどの繊維の場合にも布の被覆直後にやや暖かさを感
じるようになり,試験開始後から感覚温度で28.5℃前後,つまり被覆布一皮膚間の温湿度の 変化が最大曲率を示す附近でやや冷たさを感じるようになる。その後,感覚温度が31℃前後 つまり被覆布一皮膚間の温湿度が平衡状態に達するようになると繊維種別による特徴がみられ,
特に綿メリヤスにおいては初期の暖かさを回復し,ポリエステル,アクリルではやや冷たさを そのまま維持するようである。一方,綿クレープや毛では綿メリヤスほどではないがやや暖か さを回復する傾向を示した。
次に布の構造特性との関係にっいて検討すると,まず含気率,透湿性,熱伝導性等とは表 1から判るように布試料によって余り大きな違いはなく,布構造そのものが快適感の差に直接 大きな影響を及ぼしているとは認められない。また,通気性については布構造による差がある が,不感気流領域であること,図5で通気性が類似するアクリルと綿クレープ(両者の諸元は 全般的によく類似している)との間で,快適感に大きな差が認められることなどから,通気性 が快適感の差に直接的影響を及ぼしているとは考えにくい。また,布の厚さについても図5の 結果に相関はなく,直接の影響因子とは考えにくい。すなわち,繊維の吸湿性とぬれ易さの性 質が布の快適感に直接影響しているものと推察される。すなわち,図5で,吸湿性が小さく,
ぬれにくいポリエステルで不快感程度が最も大きく,吸湿性が大きく,ぬれ易い綿では不快感 程度が最も小さいこととなる。一方吸湿性が小さく,ぬれ易いアクリルと吸湿性が大きく,ぬ れにくい毛では中間的な性質を示すといえる。なお,毛では湿度の高い領域でチクチクした特 別な感触を示し,不快感を高める原因となっている。また,綿ではメリヤスよりクレープの方 が不快感程度が大きい結果を示しているが,その原因としてクレープのかたさの影響が認めら
れた。
4.ま と め
吸湿性とぬれ易さが異なる繊維種別による布の接触感(温冷感,乾湿感,力学感,快適感)
にっいてその差の尺度を明らかにするため,布を被覆した前腕部の局所環境が標準状態から高 温多湿の環境状態にまで変化する過程での布の接触感の官能試験を試み,次のような結果を
得た。
① 繊維種別による布の接触感は繊維の吸湿性とぬれ易さの違いによって大きな差が認めら れた。たとえば被覆布一皮膚間の感覚温度が31℃の場合の比較では,吸湿性が小さくぬれにく いポリエステルでは不快感程度が評価値4.Oと最も大きく,吸湿性が大きくぬれ易い綿では,
メリヤスの場合評価値1。3,クレープの場合評価値L7と,最も小さい。一方,吸湿性が小さ くぬれ易いアクリルと吸湿性が大きくぬれにくい毛では共に評価値2。8の中間的な性質を示し た。またこの場合,温湿度の低い方の変化過程ではアクリルの方が不快感程度が大きく,温湿 度の高い方の変化過程では毛の方が不快感程度が大きい結果を示した。
② 毛では温湿度の高い変化過程でチクチクした感触が認められた。また綿ではメリヤスよ りもクレープの方が不快感程度が大きい結果を得たがこれにはクレープのかたさの影響が認め
られた。『
③ 接触感を総合的に評価した快適感(不快感程度)の尺度は,乾湿感および力学感の尺度 と相関が高く,温冷感の尺度とは直接的な相関が認められなかった。
文 献 1)原田ら1繊機学会誌,32,p,1(1979)
2) R。L.Galbraith ら;Text.Res。」.,32,236(1962)
L.フォートら;被服機構学(光生館),164(1972)
丹羽ら;繊消誌,7,8(1966)