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ライド政策がもたらす公共交通シフト効果:

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77巻 第4 20053 145‑187

コミュニテイバスの導入とパーク・アンド・

ライド政策がもたらす公共交通シフト効果:

高松都市圏のケース*

高 塚 創 今 岡 千 穂 林 可 奈 山口亜紀

はじめに

1.1  交通政策上の位置付け

自家用車中心の交通体系を見直し,公共交通の利用を促進することが求めら れている.その主たる目的は,言うまでもなく,排気ガスがもたらす環境負荷 の抑制と都心部における道路混雑の解消にある.高齢化率の高い地方都市の場 合には,それに加え,「高齢者の足」としての公共交通機関の財政基盤を確立し,

その存続を図るという意図もあるかも知れない.

いずれにしても,公共交通の利用を促進するためには,公共交通機関それ自 体のサービス水準を高めたり,それを利用しやすい環境づくりを行うことが必 要となる.多くの都市で導入が検討され,開始されているコミュニティバスや パーク・アンド・ライドもそのような施策として位置付けることができよう.

例えば,郊外にある自宅から都心部に通勤する,あるいは買い物に行く状況 を考えてみよう.自家用車利用であれば,ほぼドア・ツウ・ドアで移動すること

*本研究のためのアンケートを実施するにあたり,香川県政策部,高松市都市開発部,三木町 の四小学校(田中小学校,白山小学校,氷上小学校,平井小学校),および安部忠明氏には多大 な協力を頂きましたまた,四国運輸局,高松琴平電気鉄道株式会社からは,貴重な情報を頂き ました記して感謝の意を申し上げます.

(2)

‑]46‑ 香川大学経済論叢 656 

が可能かもしれないが,公共交通機関(例えば鉄道)を利用する場合には,自宅 から乗車駅までの移動(アクセス),降車駅から目的地までの移動(イグレス)

に,金銭的・時間的・労力的費用がかかることが多い.郊外の駅近隣に利用し やすい駐車場を整備し,アクセス費用を抑えることで鉄道利用を促進しようと する施策がパーク・アンド・ライドである1̲ 一方,コミュニティバスは,都心 部の駅から主要なオフィス街やショッピング街を低料金で巡回するものであり,

イグレス費用を抑えることで鉄追利用を促進しようとする施策と捉えることが できる2.

1.2  高松都市圏における現状

高松都市圏においても,関係行政機関はコミュニティバスとパーク・アンド・

ライドの導入を積極的に推進している.

1.2.1  コミュニティバス

コミュニティバスについては,現在 (20047月)高松市中心部において,以 下の 2種類が運行されている.ショッピング・レインボー循環バスは市中心部の 南,郊外ショッピングエリアをカバーするものであり,市民病院)レープバスは市 中心部の西をまわり,主に公共的施設に多く停留している.なお,これらはと もにコトデンバスが高松市の補助を受けて運行を行っている.料金,路線,運 行時間は以下のとおりである.

ショッピング・レインボー循環バス

料金:大人 150円・ 200円,小人及び身障者80円・ 100

路線(主な停留所): JR 高松駅一三越前ー片原町ー瓦町天満屋-JR 栗林駅—

1厳密には,パーク・アンド・レールライドといい,バスヘの乗換えを指すパーク・アンド・

バスライドと区別される.本稿では前者を扱い,それを指してパーク・アンド・ライドと呼ぶこ とにする.

2明示的に意図されない場合においても,都心部におけるコミュニティバスの導入は,他の公 共交通機関の利用促進につながる場合は多いと考えられる.以下で紹介する,高松市中心部で 試験運行されたモーニングループバスは,鉄道の利用促進を明示的に意図したものであった.

(3)

657  もたらす公共交通シフト効果:高松都市圏のケース ‑]47‑

レインボーロー凡サンフラワー東ーゆめタウン高松前ー県庁前ー市役所前—

JR高松駅

運行時間: 7 10,....̲,1950分(東廻り,高松駅出発時刻),

出発間隔は約30

市民病院ループバス3

料金:大人 150円,小人及び身障者80

路線(主な停留所): JR 高松駅一三越前ー片原町ー瓦町天満屋一県庁前—

中央病院前ー市民病院ー市立図書館一新北町ー大的場健康センター—

JR高松駅

運行時間: 724,....̲,18 53分(西廻り,高松駅出発時刻),

出発間隔は約 50

これらのコミュニテイバスについては,間接的には公共交通の利用促進効果 が期待されるものの,直接的には幅広い年齢層に利用可能な「市民の足」の確 保,中心市街地の活性化の意図が強いように思われる.一方,より直接的に公 共交通の利用促進を意図したものとして,モーニングループバスがあった.こ

のコミュニティバスは現在は運行されていないが, 200356日から 1031 日(約 6ヶ月間)にかけて,コトデンバスが試験運行したものである.名前の 通り朝のラッシュ時にことでん瓦町駅を出発し,主として通勤・通学利用を念頭 において路線も設定されている.料金,路線,運行時間は以下のとおりである.

モーニングループバス 料金:一律100

路線(主な停留所):ことでん瓦町駅ー県庁前ー中央病院前ー香川大学前—

高松工芸高校前ーことでん瓦町駅

運行時間: 732,....̲,841分(南廻り,瓦町駅出発時刻),

出発間隔は約10

3200210月より試験運行が行われ, 20034月より本格運行が開始された.

(4)

‑]48‑ 香川大学経済論叢 658 

なお,このモーニングループバスは国土交通省が平成 15 (2003)年度から 新設した助成制度「広域的な公共交通利用転換に関する実証実験」の対象事業

に認定されている(申請主体は,高松琴平電気鉄道).この制度は,京都議定書 で国に課せられた二酸化炭素排出量削減を,運輸分野で達成するために創設さ れたものであり,公共交通利用促進を図る先進的な施策を支援するものである4̲

具体的には,施策の実験期間中の公共交通利用客が,前年同期比で0.15%増加 すれば,経費の三分の一の補助を受けられる.モーニングループバスの場合は,

瓦町駅の乗降客数の増加率が実際に 0.15%以上認められ,助成を受けるに至っ ている見

最後に,コミュニテイバスの運行経費,採算ラインについて簡単に見ておこ う.高松商工会議所 (2002) 200111月から 20022月までの期間に試 験運行された「市内循環バス」 6の運行費用についてまとめている.このケース

においては, 6台の車両を投入し, 1122便運行していたが,経費は 1台あ たり 4万円となっている.したがって,運賃収入で経費をすべてカバーするた めには,料金 100円の場合は 1便あたり 19.7 (=4万円 X 671007122 便),料金150円の場合には 13.1 (=4万円 X 671507122便),それ ぞれ乗客を確保する必要があるt

1.2.2  パーク・アンド・ライド

パーク・アンド・ライドについては,香川県が平成13(2001)年度より「パー ク・アンド・ライドモデル事業」を実施し,パーク・アンド・ライドの普及を 図る上で先導的な役割を果たすことができる施設の整備・運営事業を行う市町

4四国ではこのほかに,伊予鉄道(松山市)が 20043月から実施している「松山都市圏に おけるICカードを用いた公共交通利用転換実証実験」が選ばれている.

5具体的には,平成159月の3日間で,)レープバス運行時間帯 (7: 27 8 : 41)に瓦町駅 を発着する列車の利用者数を調査し,前年度実績 (1日平均5680人)より 14人の増加が認めら れている.しかし,この増客分のどの程度が,自家用車通勤からのシフトであるかは定かでは ない.

6現在のショッピング・レインボー循環バスの前身に相当.

7この試験運行のケースにおいては,料金が 100円で, 1便あたりの乗客数が7.42人であっ たため,運賃収入による運行費用のカバー率は37.7%となっている.

(5)

659  もたらす公共交通シフト効果:高松都市圏のケース ‑149‑

に対し,補助金を交付するものである瓦高松都市圏において,この補助金の交 付対象となったものには,三木町(ことでん学園通り駅前)と,さぬき市(こ とでん ・JR志度駅近接)のパーク・アンド・ライドがあり叫ともに平成 14 (2002)度に補助金を受けている.それぞれの概要は以下のとおりである.

三木町パーク・アンド・ライド駐車場

所在場所:ことでん学園通り駅隣接「ベルシティ」内 駐車台数: 53台(うち 1台分は身体障害者用)

駐車料金:月額 4000円(身体障害者用は月額 2000 利用実績: 37台(利用率70%, 平成 1549月平均)

さぬき市パーク・アンド・ライド駐車場

所在場所:ことでん・ JR志度駅近接さぬき市本庁舎東側 駐車台数: 81 (114台へ拡張予定)

駐車料金:無料(平成 16年度内に有料化へ移行予定)

利用実績: 81台(利用率100%, 平成 15年度)

パーク・アンド・ライドの運営経費,採算ラインについて,三木町のケースで 簡単に見ておこう.このケースでは,民間の土地を無料で借りているため地代 はかかっていないが,照明や警備員等の費用が一月あたり約 18万円となってい る.したがって,現状の駐車料金(月額4000円)で考えた場合には, 45台(利 用率85%)の利用がないと料金収入で経費をカバーできないことになる.現在

は採算がとれておらず,赤字分は三木町の一般会計から支出されている.

1.3  本研究の目的

このように高松都市圏においても,コミュニティバスやパーク・アンド・ライ ドの導入が行われてきており,関係行政機関は補助金を交付するなどしてそれ

8補助金の交付額は,予算の範囲内において,駐車場等の整備経費の二分のーとされている.

ただし,厳しい財政状況のため,平成 15年度をもって打ち切りになっている.

,高松都市圏外で補助金の交付対象となったものには,多度津町 (JR多度津駅前,平成 13年 度交付)と,善通寺市 (JR善通寺駅前,平成 15年度交付)のパーク・アンド・ライドがある

(ともに丸亀都市圏).

(6)

‑]50‑ 香川大学経済論叢 660 

を積極的に支援してきている.しかし,これらの導入が実際にどの程度自家用 車の利用を抑制し,公共交通の利用促進に寄与しているかはほとんど明らかに

されていない.

これを明らかにするための最も単純で直接的な方法は,実際の利用者に聞き 取り調査を行うことであろう.つまり,コミュニテイバスやパーク・アンド・ラ イドの利用者に対し,「利用前の同目的のための交通手段」をたずね,自家用車 利用からの転換者がどの程度いるかを明らかにするやり方であり,これらの事 業に補助金(税金)が用いられている以上,この種の調査は是非行うべきであ る應しかし,この方法の欠点は,事業の規模や料金等(政策変数)を今後変化 させた場合,公共交通シフトがさらにどのように変化するのかを予測すること ができない点にある.

予測を可能にするためには,現在の利用者だけでなく潜在的利用者である地 域住民の「交通行動様式」を明らかにしなくてはならない.例えば,コミュニ テイバスやパーク・アンド・ライドの導入によって,金銭的費用や時間的費用が どの程度短縮されるか分かったとしても,潜在的利用者がそれらをどのように 評価し,最終的にどのような交通手段を選択するのかが分からなければ,予測 はできない.

本研究ではこの後者のアプローチをとる.人々の交通行動様式をデータから 推定する統計的手法としては,「非集計行動モデル」がある庄交通経済学,交 通工学の分野においては標準的に用いられる手法であり,本研究でもこれを用

いることとする.また本研究では,通勤交通への影響を分析するものとし,具 体的な手順は以下のように行った.

まず,コミュニティバスの影響については,現行のコミュニティバス路線近辺 で見ることが適当であるため,その分析対象を香川県庁および高松市役所に勤 務する人とした.一方,パーク・アンド・ライドの影響については,高松都市圏 におけるベッドタウン地域で見ることが適当であるため,その分析対象を香川 県の補助事業の対象ともなった木田郡三木町に在住する人としている.これら

10高松商工会議所 (2002)などで行われているコミュニティバス利用者へのアンケートは,こ のような質問項目は含まれていない.

11計量経済学の分野においては,「質的選択モデル」,「質的応答モデル」などと呼ばれている.

(7)

661  もたらす公共交通シフト効果:高松都市圏のケース ‑151‑

の分析対象者に対し,「現在利用している通勤手段,所要時間・費用」と「代替 的な通勤手段,所要時間・費用」をアンケートによって聞き,それを元にモデル の推定を行う.そして,いくつかの政策パターンを設定した上で,推定された モデルを用いて公共交通シフト量の予測を試みる.

本論文の構成は以下のとおりである.まず2節において分析対象地域・対象 者を示し, 3節においてモデルの概説,アンケートの設計など分析方法につい て述べる.モデルの推定結果,およびそれに基づく政策効果の予測については

4節において示す.最後の 5節において本研究の結論を述べる.

分析対象

2.1  コミュニティバス

本研究では,前節で取り上げたようなコミュニテイバスが高松都市圏の通勤交 通に与える影響を,定量的に把握することを試みる. 20039月の時点(アン ケート実施時点)において,当該地域で運行していたコミュニティバスは,モー ニングループバス,市内循環・ショッピングバス,レインボー循環バス,市民病 院)レープバスの4種 類 で あ る 匹 図 1は,これらのバスのうち前二者の路線を示 したものであるが丸市中心部においては後二者も前二者とかなり重複したルー

トで運行を行っている庄

これらのルートを勘案し,コミュニテイバスの導入効果を計測するためのア ンケート調査を,香川県庁および高松市役所の職員に依頼することとした.な お,モーニングループバスを利用すれば,ことでん瓦町駅から県庁前までは約 4分,市内循環・ショッピングバスを利用すれば, JR高松駅から市役所前まで は約 7分,県庁前までは約 9分かかる.

県庁および市役所の職員を調査対象とすることのメリットは,以下のような

12このうち,「市内循環・ショッピングバス」と「レインボー循環バス」は, 200311月に統 合され,「ショッピング・レインボー循環バス」として,現在運行されている (1.2節参照).

131'2, 5の地図作成においては,インターネット上の地図検索ソフト「ちず丸」

(http://chizumaru.com/index.asp)を用いた.

14また,これらに加え,既存の路線バスも運行されている.

(8)

‑]52‑ 香川大学経済論叢 662 

■■■■■  モーニングルーブ)\'ス

  ● 市内循環・ショッピングパス

1:コミュニテイバスの路線と分析対象地域

ことが考えられる.第一に,現在導入されているコミュニテイバスのルートに 入っており,その認知度・影響度が高いと考えられる.第二に,今後運行がより 充実される場合にも,その影響を強く受けると予想される.逆にデメリットと しては,職業上コミュニテイバスをよく認知しており,公共交通利用促進に対 する理解も深いと考えられるため,導入効果が平均を上回って計測される可能 性があることである.

アンケートは2003919日に配布し,約 10日後に回収した.香川県庁で は政策部の職員から 138名に,高松市役所では複数の部局にわたり 211名の職 員に,それぞれアンケートに回答していただいた(合計349名).

2.2  バ ー ク ・ ア ン ド ・ ラ イ ド

パーク・アンド・ライドの影響については,高松都市圏のベッドタウン地域 の一つであり,香川県の「パーク・アンド・ライドモデル事業」として実際に補 助も受けている木田郡三木町を対象とし,その計測を試みることとした.三木

(9)

663  もたらす公共交通シフト効果:高松都市圏のケース ‑]53‑

町は高松市の東に隣接し,町としては県下最大の人口 (28,769 2000年)を 有している.高松市への通勤・通学人口は6,250人で香川町 (6,770人)に次い で第2位であり,その常住人口 (15歳以上)に対する比率は38.1%で第5位と なっている (1995年).

三木町から高松市に通勤する場合,その主な交通手段としては鉄道もしくは 自家用車の利用が中心であると思われる前者については,ことでん長尾線が 運行しており,町内には 7駅が設置されている豆後者の場合には,県道10

(高松長尾大内線)がことでん長尾線とほぼ同じ位置を走っており,これを利用 して通勤している人も多いと思われる(図 2). しかし,現在は県道 10号のバ イパスも出来ており,片側 1車線の旧道よりも片側 2車線のバイパスの利用者 の方が多いであろう(図 2, 3). いずれにせよ,バイパスの完成により,自 家用車による都心へのアクセスはかなり向上していると考えられる.

2:三木町の位置と県道 10号線

三木町住民の交通行動様式を推定し,パーク・アンド・ライドの効果を計測

15高松市側から,池戸,農学部前,平木,学園通り,白山,井戸,公文明の各駅.

(10)

‑154‑ 香川大学経済論叢 664 

3:県 道 10号線(左:旧道,右:バイパス)

するために,三木町内の 4小学校(田中,白山,氷上,平井小学校)の長子児 16の保護者の方にアンケートを依頼することにした.三木町内の小学校として はこれらが主だったものであり,平野部はこの 4校区でほぼカバーされている

4). 

アンケートは20031024日に配布し,約 10日後に回収した.各小学校へ の配布数(長子児童数)と回収数,回収率は以下のとおりである. 4小学校全 体 で は , 配 布 数 1,223,回収数988,回収率81%であった.

田中小学校:配布数 106, 回収数89, 回収率84%.

白山小学校:配布数239, 回収数 180, 回収率75%. 

氷上小学校:配布数350, 回収数284, 回収率81%. 

平井小学校:配布数528, 回収数435, 回収率82%. 

分析方法

3.1  モデル

交通機関の選択に関する最も基本的なモデルの一つは,一般化費用(犠牲量)

モデルであろう.一般化費用(犠牲量)とは,交通機関の利用に際して発生す

16長子児童とは,同一家族から複数のこどもが通学している場合,最年長の児童のことを指す.

(11)

665  もたらす公共交通シフト効果:高松都市圏のケース

4:三木町の4つの小学校区

‑155‑

る様々なコスト(利用料金や燃料費等の金銭的費用だけでなく,所要時間や精 神的・肉体的疲労も含まれる)をすべて金銭化し,足し合わせたものであり,

この一般化費用が最も少ない交通機関を選択すると考えるのが,一般化費用モ デルである.このモデルは,直観的で分かりやすいが,次のような問題が指摘 できる.第一に,非金銭的なコスト(所要時間や精神的・肉体的疲労)をいか に金銭化すればよいのか.第二に,個々人の交通行動様式を規定するものとし ては,そのようなコスト要因だけでなく,個人属性や社会環境なども考えられ るが,それをどのように分析に反映すればよいのか.

第一の問題については,一般化費用モデルの考え方にしたがって,交通行動 データから人々の時間価値を計測する手法の提案などがなされている(例えば,

Beesley,  1965) . しかし,第二の問題については.一般化費用モデルのフレームで 解決することは難しい.本研究で用いる非集計行動モデルは,これらの問題に対 処できる,より一般的なモデルということができる (Domencichand McFadden,  1975) . 

(12)

‑156‑ 香川大学経済論敢 666 

3.1.1  非集計行動モデル

一般化費用モデルを自然に拡張しようとすれば,以下のようになろうすなわ ち,個人iが交通機関j(=0, 1)を利用することで得られる効用を恥とすれば,

凰 。 < 加 ⇒ 個人iは交通機関1を選択する可能性が高い」と考える.ただ , 効用 uij

島 =l/;j Cij 

Ki  K2 

一巧+区九ふ+Lryk知 +Eij  (1) 

k=l  k=l 

のように表現できると考える.ここで,%は効用における確定項, Eijは確率誤 差項であり,氏については当該個人iの属性(例えば,自動車の有無,所得な xki(k 1, ・・・,粕)と,個人iが交通機関jを選択することで決ってくる変 数(例えば,金銭的費用や所要時間など) zkij(k 1, • • • , K2)によって規定さ れていると考えているまた, a f3''Ykしまパラメータである.

確率誤差Eijについては種々の確率分布を想定することが可能であるが,正 規分布もしくはガンベル分布が仮定される場合が多い.正規分布を仮定する非 集計行動モデルはプロビットモデル,ガンベル分布を仮定する非集計行動モデ ルはロジットモデルと呼ばれている.ここでは,パラメータの推定がより容易 であり,用いられることの多いロジットモデルについて述べておこう.

ロジットモデルの特徴は,効用 uijによって,個人iが交通機関jを選択する 確率凡を簡単に表現することができる点にある.導出仮定は省略するが,以下

のようになるm

pi

。‑

exp(¼o)

exp(¼o) exp(

exp[(a1 ‑ao) I:f~1(/3k1 ―~f3ko)Xki 十こだ1'Yk(Z如1-Z如o)]

1 1-~o

ロジットモデルにおけるパラメータ推定においては,この関係式を利用する.

得られた標本において,交通機関0を選択している個人の集合を S。,交通機関

17導出過程の詳細は,例えば,土木学会土木計画学研究委員会編 (1995,2章)を参照.

(13)

667  もたらす公共交通シフト効果:高松都市圏のケース ‑]57‑

1を選択している個人の集合を S1とすれば,この標本の抽出確率(尤度),お よびその対数(対数尤度)は,

L

I T

Pio 

I T

iESo  iES1 

lnL =区lnPio LlnPil

iESo  iES1 

と表すことができる.したがって,得られた標本が最も「尤もらしい」ように パ ラ メ ー タ 百 =0'.1  ‑O'.。,国三 f3k1‑f3ko  (k 1, ・ ・ , K1),  (k1, ・ ・ , K

を選択するとすれば(最尤法),連立方程式

8lnL  8lnL  8lnL 

0,  ̲  (k 1,  ・ ・ , K1),  (k 1, ・ ・ , K

8 k ,k

を解いて求めればよい18. ロジットモデルの推定については,現在様々な市販ソ フトウェアで実行することができるが,本研究では計量経済ソフトウェア TSP (version 4.5)を用いる.

3.1.2  効用の確定項%の定式化

効用の確定項%を規定する変数xki(k1, ...  , K1),  zkij(k 1,  ...  , Kりと しては,以下の変数を考える.したがって,本研究で実施したアンケートは,こ れらの情報が得られるように設計を行った (3.2節を参照).

個人iの属性xki(k1, ...  ,  性別(男=O,女 =1) 

年齢

車の免許の有無(無=O, 有 =1)  車の保有台数

個人iが交通機関j(=0, 1)を用いる際の特性 zkij(k1, ...  , K2) 

18ロジットモデルの推定・検定の詳細については,例えば,土木学会土木計画学研究委員会編 (1995, 3章)を参照.

(14)

‑]58‑

モード数

徒歩・自転車利用時間 自動車・バイク利用時間 公共交通利用時間

総金銭的費用

香川大学経済論叢 668 

ここで,交通機関jについては,「主な交通機関(利用時間が最も長い交通機 関)」を公共交通とする場合j= 0, 「主な交通機関」を自家用車とする場合j=l

とする.0の場合においても,公共交通の乗り場まで自動車を使うことがあ り,逆にj=lの場合においても,駐車場から目的地まで徒歩や自転車など他の 交通機関が利用されることがあることに注意したい.

3.2  アンケートの設計

アンケートにおいては, 3.1節で挙げたような個人属性 (X)を初めに質問し,

続けて,現在の通勤手段,およびそれを用いない場合の代替的な通勤手段につ いて質問している.その後,コミュニテイバスのアンケートにおいては,コミュ ニティバスの利用状況や改善して欲しい点について質問を行っている(付録A 参照) 19.  一方,パーク・アンド・ライドのアンケートにおいては,仮想的な駅 近隣駐車場について,その利用可能性,支払意志額等について質問を行ってい

る(付録B参照) 20̲ 

3.2.1  通勤手段についての質問

通勤手段の質問においては,交通手段が変わるごとに,そこまでの区間にお ける所要時間,金銭的費用について聞いている.現在の通勤手段を用いない場 合の代替的な通勤手段については,次のような形で質問を行った.まず,現在 公共交通を利用せず,主として自動車・バイクを利用して通勤している人につ

19実際のアンケートにおいてはその他,駅近隣駐車場の整備についても質問を行っているが,

本稿では取り扱わない.

20実際のアンケートにおいてはその他に,買い物行動におけるパーク・アンド・ライドの可能 性に関しても質問を行っているが,本稿では取り扱わない.

(15)

669  もたらす公共交通シフト効果:高松都市圏のケース ‑159‑

いては,「もし公共交通を利用して通勤するとしたら,どのような交通手段(お よび所要時間,費用)になるか」と質問した.「公共交通」に限定して代替通勤 手段を聞いているのは,本研究が自家用車と公共交通の代替関係に焦点を当て ているからである.一方,既に公共交通を利用して通勤している人については,

自動車の利用可能性が必ずしも保証されないので,自動車に限定しないで質問 を行った.

自家用車と公共交通の代替関係に焦点を当てているため,ロジットモデルで 分析するのは,以下の個人から構成される標本ということになる(以下,分析 対象標本と呼ぶ).

現在自家用車通勤をしており,公共交通を利用する場合の交通手段が明ら かになっている個人.

現在公共交通通勤をしており,代替的な交通手段として自家用車の利用を 挙げている個人.

代替的な交通手段については,所要時間や費用が正確に認識されていないた め,未記入になっているケースが多い.未記入データの処理については, 3.3 の方法にしたがって行った.

3.2.2  その他の質問

コミュニテイバスのアンケートにおいては,実際コミュニテイバスが通勤時ど の程度利用されているのか,利用している人がいるとすれば,コミュニティバ スの利用はその人の通勤手段をどのように変化させたか(「政策の直接的効果」)

について質問している.一方,利用していない人には,今後の利用可能性と改 善して欲しい点について尋ねている.

一方,パーク・アンド・ライドのアンケートにおいては,公的に整備された パーク・アンド・ライド駐車場が 1箇所と限られており,またその料金も民間の 相場水準に設定されていることから,「政策の直接的効果」を見ることは難しい ように思われる.ここではむしろ,自家用車から公共交通へのシフトの可能性 を把握をするため,「最寄り駅にパーク・アンド・ライド駐車場がある」という

(16)

‑160‑ 香川大学経済論叢 670 

想定のもとで,「月いくらであれば公共交通ヘシフトするか」という質問をして いる.このような直接質問による結果と,ロジットモデルによる結果を合わせ ることで,予測により頑強性を持たせることができる.

3.3  未記入データの処理

代替的な交通手段については,所要時間や費用が正確に認識されていないた め,未記入になっているケースが多い.また,ある程度正確に認識されていて も,それが確かな値であるか確認するためには手間がかかるため,結果的に記 入してもらえないということが考えられる.ここでは,そのような未記入デー タの処理(補間)の仕方について記しておく.

3.3.1  公共交通の利用に関して (1)利用駅・バス停

利用する駅やバス停の名前が明記されていない場合には,自宅あるいは職場 から最寄りの駅・バス停を利用するものとして考えた.

(2)電車利用時の時間・料金

インターネット上の検索ソフト「Yahoo!路線情報 (http://transit.yahoo.eo.jp/) 等を利用した. 1ヶ月分の利用料金については,最長の 6ヶ月定期の料金を 1 月分に換算して求めた.

(3)バス利用時の時間・料金

時間については時刻表を活用した. 1ヶ月分の利用料金については,最長の 3ヶ月定期の料金を算出し, 1ヶ月分に換算して求めた.

(17)

671  もたらす公共交通シフト効果:高松都市圏のケース

3.3.2  自動車・バイクの利用に関して (I) ガソリン代

‑16]‑

標準的と思われるトヨタ・カローラの燃費「20(km/£)」,ガソリン価格「100

(円/£)」という設定で計算したすなわち,距離情報が与えられている場合に 5 (/km) で計算し,時間情報が与えられている場合には,都市部の平均 速度「35(km/時)」を想定して, 2.9(円/分)で計算を行った.バイクの場合

は,自動車の半分と設定した.

(2) 駐車場代

基本的には,当該地域の駐車場についてアンケートに記入している人の平均 料金をもってあてることとした.アンケートからは十分な参考データが得られ ない場合については,当該地域の駐車場料金相場を調べた.

3.3.3  徒歩・自転車の所要時間に関して

距離が特定できる場合には,徒歩の場合4.8(km/時),自転車の場合10(km/ 

時)で,所要時間を計算した.距離が全く特定できない場合には,所要時間は0 としたただし,県庁や市役所の人の,バス停から職場までの徒歩時間や,駐 車場から職場までの徒歩・自転車時間については,アンケートに記入している 人の平均時間をもってあてることとした

3.4  公共交通シフト効果の評価基準

京都議定書における C伍排出量削減目標を前提とした場合,運輸部門では,

現行 (2003年)水準から 2010年までに,年あたり約4600万トンの C切 排 出 量 削減が求められている.これを実現するためには, 2010年までに既存鉄道の利 用者を年0.15%ずつ増加させることが必要であると言われている江これは, 7 年間のトータルで約1%の利用者の増加を要求していることになる.

21国土交通省「広域的な公共交通利用転換に関する実証実験(平成 15年度)」.

(18)

‑]62‑ 香川大学経済論叢 672  本研究では,この数値を考慮し,「公共交通選択率(分析対象標本のうち公共 交通を選択する比率)の0.5ポイントの増加」を,政策評価の一つの基準とする.

「利用者数」ではなく「選択率」の増加を基準とした理由は,前者で評価すると 現状の公共交通利用者数が少ないほど効果が大きく出てしまうからである.「選 択率」を用いればそのような問題は回避される.しかし,「利用者数」の増加率 よりも値が小さくなるので,基準値を 0.5ポイントとしている.現状の公共交通 選択率が 50%の場合,その 0.5ポイントの増加は,公共交通利用者数の 1% 増加を意味する.

分析結果

4.1  コミュニティバス

4.1.1  標本の特性

アンケートに回答して頂いた県庁・市役所職員の,主な通勤手段による内訳 は表 1のとおりである(標本サイズN 349) . ただし,現在公共交通機関で 通勤している人については,代替的な交通手段による内訳も示している.現在 の通勤手段については,多い順に自転車 (31.5%) , 公共交通 (30.1%) , 自動 二輪 (19.8%) , 自家用車 (14.0%)などとなっている.都心部への通勤とあっ て,公共交通の利用比率は比較的高い.また,自転車通勤比率が高いことから,

比較的職場の近くに住居を持つ職員が多いように推察される.

現在の通勤手段 人数 構成比 代替的な通勤手段 人数 構成比

l I

  公共交通

自家用車 52  49.5% 

105  30.1 %  公共交通 20  19.0% 

その他・無記入 33  31.4% 

.自家用車 49  14.0% 

I自動一輪 69  19.8% 

I自転車 11 0  31.5% 

f走歩 11  3.2%  その他,無記入 1.4%  合計 349  100.0% 

1:通勤手段別人数(全回答者, N349) 

(19)

673  もたらす公共交通シフト効果:高松都市圏のケース ‑]63‑

公共交通を利用している人の約半数 (52名)は,代替的な通勤手段として自 家用車を挙げており,「公共交通か自家用車か」という選択に直面していること が分かる.一方,自家用車を利用している人のうち 48名が,公共交通利用の通 勤ルートを明らかにしている.ここでは,「公共交通か自家用車か」という選択 のモデル式(ロジットモデル)を推定することが目的であるから,これらの合 計を「分析対象標本」として取り扱うこととする(標本サイズN100). 分析 対象標本における公共交通通勤比率は 52.0%となる.

以下,分析対象標本の特性を簡単にまとめておこう.居住地,年齢について は表2,3に示すとおりである.居住地は高松市が38.0%と最も多い.一方,

年齢層は40代が最も多いが (31.0%) , 30代から 50代を中心にばらけている と言えよう.その他,性別については男性が80.0% (女性が20.0%) , 自動車 免許については100%が所有,通勤時の自動車利用可能性については84.0%が (15.0%が不可, 1.0%が未記入)となっている.

居住地(市町) 人数

品松市 38 

=木町 10 

坂出市

, 

I丸亀市

'さぬき市,善通寺市,国分寺町

多度津町

綾南町

宇多津町.香南町,飯山町,三野町,牟礼町

東かがわ市,綾歌町,満濃町

I未記入

合 計 100 

2:居住地(分析対象標本, N100) 

4.1.2  公共交通シフト効果の計澄 (1)パラメータの推定結果

構 成 比 38.0% 

10.0% 

9.0%  7.0%  5.0%  4.0%  3.0%  2.0%  1.0%  1.0%  100.0% 

効用関数 (1)式のパラメータによって定義される百三 a1‑a。,因三 (Jkl‑fJko 

(k=l,・・・,2),  (k=l,・・・,5)の 推 定 結 果 ば 以 下 の と お り で あ る 匹 各 変

22年齢無記入者1名を分析対象標本から除いている.

参照

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