補 綴 誌, J Jpn Prosthodont Soc, 37: 116∼120, 1993.
原 著 論 文
歯 科 用CAD/CAMシ
ス テ ムCEREC(R)に
関 す る臨 床 的 研 究
ラ ミネ ー トベ ニ ア の 適 合 性 に つ い て
中 村
隆 志
田 中
豊*
小 河
宏 行
赤 尾
剛
今 西
仰
日野
年 澄
丸 山
剛 郎
A Clinical Study on Dental CAD/CAM
CEREC(R) System
-Fitness of CEREC(R)
Porcelain Laminate
Veneers-Takashi Nakamura, Yutaka Tanaka*, Hiroyuki Ogawa, Takeshi Akao,
Aogu Imanishi, Toshizumi Hino and Takao Maruyama
Abstract: Recently, the chairside porcelain restorations such as inlay or laminate veneer can be made immediately and set to the patient during the same visit. These restorations are done by dental CAD/CAM CEREC(R) system (Siemens AG). In this experiment, the fitness of CEREC(R) porcelain veneers was studied.
The experiment was done by investigating the veneer fabricated on the maxillary central incisor. Four groups porcelain veneers (fifteen CEREC(R) veneers and five refractory model vene-ers) were made and set on epoxy models with or without cementation. Two different dual cure resin cements (Clapearl DC, Kuraray Co. or Duo Cement, Vita Zahanfabrik) were used for cementation. The measurements were taken at three points (incisal, central and cervical area) with profile projector V-12 (Nikon Co.).
The mean gaps between CEREC(R) veneers and abutment teeth were 41.8•`116.6ƒÊm without cementation and 61.8•`149.2ƒÊm with cementation. However, no significant difference was observ-ed between the two resin cements. The mean gaps between refractory model veneers and abutment teeth were 35.3•`115ƒÊm with cementation. In contrast to refractory model veneers, CEREC(R) veneers showed significantly wider gaps in the central area (p<0.01).
Key words: CAD/CAM, porcelain laminate venner, fitness
I. 緒 言
最 近,歯 冠 修 復 の ス テ ッ プ に コ ン ピ ュー タ を取 入 れ る 歯 科 用CAD/CAM(Computer Aided Design/ Computer Aided Manufacturing)シ ス テ ム に 関 す る 大 阪大学歯学 部歯 科補綴 学第一講座
*(株)モ リタ
Department of Fixed Prosthodontics, Osaka University Faculty of Dentistry
*Morita Co .
平 成4年10月8日 受 付
歯 科 用CAD/CAMシ ス テムCEREC(R)に 関 す る臨 床 的研 究 1 1 7 ― 1 1 7 研 究 が 数 多 く行 わ れ て い る1∼4).中 で もMoermannら が 開 発 し たCEREC(R)(Siemens AG)は 世 界 で 最 初 に 実 用 化 され た 歯 科 用CAD/CAMシ ス テ ム と して 大 き な 注 目 を 集 め て い る5).CEREC(R)シ ス テ ム を 用 い る と,チ ェ ア サ イ ドで ポ ー セ レ ン の イ ン レー,ラ ミ ネ ー トベ ニ ア の 製 作 が 可 能 で あ る が,こ の シ ス テ ム に 関 す る研 究 は,イ ン レ ー の 適 合 性 や 摩 耗,予 後 調 査 に 関 す る も の が 中 心 で6∼8),ラ ミネ ー トベ ニ ア に 関 し て は 未 だ 不 明 な 点 が 多 い. ポ ー セ レ ン ラ ミネ ー トベ ニ ア は最 小 限 の 歯 質 削 除 の み で 審 美 性 の 改 善 が 可 能 で あ るた め 臨 床 的 に き わ め て 有 効 な 方 法 で あ る が9),耐 火 模 型 に よ り ポ ー セ レ ン シ ェ ル を製 作 す る た め煩 雑 で 熟 練 の い る 技 工 操 作 が 不 可 欠 な も の で あ っ た.こ の よ う な従 来 の 製 作 方 法 に比 較 し てCEREC(R)シ ス テ ム で は,技 工 の 熟 練 度 に 左 右 され ず 短 時 間 に ポ ー セ レ ン シ ェ ルが 製 作 可 能 で あ る と い うCAD/CAMの 利 点 が 大 き く生 か さ れ て い る. そ こで 本 研 究 で は,模 型 上 で 実 際 にCEREC(R)シ ス テ ム を 用 い て ラ ミネ ー トベ ニ ア 用 ポ ー セ レ ン シ ェル を 製 作 し,そ の 適 合 性 に 関 す る検 討 を 行 い,あ わ せ て 従 来 法 との 比 較 を行 っ た. II. 研 究 方 法 1. 支 台 歯 模 型 上 顎 右 側 中 切 歯 を対 象 と し て,通 常 の ポ ー セ レ ン ラ ミ ネ ー トベ ニ ア と同 様 の 形 成9)を 行 っ た エ ポ キ シ模 型 を 製 作 し た(図1).唇 面 の 削 除 量 は0.5(歯 頸 部) ∼0 .7mm(切 端 部)と し,辺 縁 は シ ャ ン フ ァー 形 態 と し た.切 縁 部 お よ び隣 接 面 コ ン タ ク ト部 の 削 除 は 行 わ な か っ た. 図1 実験 に使用 したエポ キシ支台歯模 型 2. ポ ー セ レ ン シ ェル の 製 作 と合 着 1) CEREC(R)に よ る ポ ー セ レ ン シ ェ ル の 製 作 支 台 歯 模 型 は,CEREC(R)(2796100,Siemens AG) を 用 い,メ ー カ ー の 指 示 通 りに,形 成 面 へ の パ ウ ダ ー の 付 与,CCDカ メ ラ に よ る 光 学 印 象,モ ニ タ ー 上 で の 修 復 物 デザ イ ン の 決 定,ミ リ ン グ マ シ ン に よ る 削 り 出 し を行 い ポ ー セ レ ン シ ェ ル を製 作 した.操 作 は す べ てCEREC(R)を 用 い て 少 な く と も50以 上 の 修 復 物 製 作 の 経 験 が あ る術 者 が 行 っ た.ソ フ トウ ェア はCOS 2.1を 用 い,シ ェ ル の 厚 さ は プ ロ グ ラ ム 上 で0.7mm に 規 定 し た.ポ ー セ レ ン ブ ロ ッ ク は,Vita Block Mark II (Vita Zahnfabrik)のA2色 を 用 い た.完 成 した ポ ー セ レ ン シ ェル を 用 い て,レ ジ ン セ メ ン トを 介 在 させ ず に支 台 歯 に 固 定 した もの,お よ び2種 類 の レ ジ ンセ メ ン トで 支 台 歯 に合 着 した も の の3条 件 の 試 料 を 製 作 した. レ ジ ン セ メ ン トを介 在 さ せ な い 試 料 は,ポ ー セ レ ン シ ェ ル を指 圧 で 支 台 歯 に 適 合 させ,そ の状 態 で シ ア ノ ア ク リ レ ー ト系 接 着 剤LABO CYANON(高 圧 ガ ス 工 業(株))で 模 型 に 固 定 し製 作 し た. レ ジ ン セ メ ン トは,実 際 の 臨 床 で 用 い ら れ るCla-pearl DC((株)ク ラ レ),Duo Cement (Vita Zahn-fabrik)の2種 の 光 化 学 重 合 型 レ ジ ン セ メ ン トを 用 い た.こ れ らの レ ジ ン セ メ ン トを メ ー カ ー の 指 示 通 りに 練 和 を行 っ た 後 ポ ー セ レ ン シ ェ ル の 内 面 に 塗 付 し,指 圧 に て 支 台 歯 に圧 接,光 照 射 を 行 い セ メ ン ト合 着 試 料 と し た. 試 料 は,上 記 の3条 件 そ れ ぞ れ5個 計15個 製 作 し た.支 台 歯 模 型 に 固 定 した 試 料 は 臨 床 応 用 の場 合 と同 様 に,ポ ー セ レ ン シ ェ ル の 周 囲 の 外 面 を ダ イ ヤ モ ン ド ポ イ ン トで 部 分 的 に 調 整 を行 い,支 台 歯 と ポ ー セ レ ン シ ェ ル が 滑 らか に移 行 す る状 態 と した. 2) 耐 火 模 型 に よ る ポ ー セ レ ン シ ェ ル の 製 作 CEREC(R)で 製 作 し た ポ ー セ レ ン シ ェル と の 比 較 を 行 う た め に,一 般 に 用 い ら れ る 耐 火 模 型 法9)に よ り ポ ー セ レ ン シ ェ ル を製 作 し た.こ こで は,ポ ー セ レ ン ベ ニ ア 製 作 シ ス テ ム で あ る コ ス モ テ ッ ク((株)ジ ー シー)を 使 用 し た. エ ポ キ シ 支 台 歯 を ビ ニ ー ル シ リ コ ー ン 系 印 象 材 Exaflex((株)ジ ー シ ー)で 印 象 採 得 を 行 い,専 用 の 耐 火 模 型 材 を 用 い模 型 を 製 作 し た.模 型 上 で 通 法 に 従 い デ ンチ ン ポ ー セ レ ン お よ び エ ナ メ ル ポ ー セ レ ンの 築 盛,焼 成 を行 っ た の ち 耐 火 模 型 材 を 除 去 し て ポ ー セ レ ン シ ェル を 完 成 させ た.ポ ー セ レ ン シ ェル は,光 化 学
1 1 8 ― 1 1 8 補 綴 誌 3 7 巻 1 号 ( 1993 ) 図2 試 料 の 計 測 点 A:切 端 部, B:中 央 部,C:歯 頸 部 重 合 型 の レ ジ ン セ メ ン トClapearl DC((株)ク ラ レ) を 用 い て 先 のCEREC(R)の 場 合 と同 様 に エ ポ キ シ 支 台 歯 に 合 着 し試 料 と した.試 料 は5個 製 作 した. 3. 測 定 方 法 完 成 した そ れ ぞ れ の 試 料 は,エ ポ ン包 埋 後 に歯 冠 の 近 遠 心 的 中 央 部 で 長 軸 方 向 に切 断 し た.切 断 面 は,エ メ リー ペ ー パ ー で 研 磨 を行 っ た後,切 端 部,中 央 部, 歯 頸 部 の3点 で ポ ー セ レ ン シ ェ ル と支 台 歯 との 間 隙 を 測 定 し た(図2).測 定 に は,万 能 投 影 機V-12((株)日 本 光 学)を 用 い た. 各 条 件 で 得 られ た 間 隙 量 の 平 均 お よ び 標 準 偏 差 を 求 め,t検 定 に よ り統 計 的 な 解 析 を 行 っ た. III. 結 果 1. CEREC(R)ポ ー セ レ ン シ ェル に お け る 適 合 性 セ メ ン トの 介 在 しな い 試 料 で は,支 台 歯 とポ ー セ レ ン シ ェル の 間 隙 は,切 端 部,中 央 部,歯 頸 部 で それ ぞ れ 平 均116.6,41.8,57μmで あ った.切 端 部 で は 中 央 部 お よ び 歯 頸 部 に比 較 して 有 意 に 大 きな 間 隙 量 が 観 察 さ れ た(p<0.01)(図3). セ メ ン ト合 着 後 の 試 料 に お け る 間 隙 量 はClapearl DCの 場 合,切 端 部,中 央 部,歯 頸 部 で そ れ ぞ れ 平 均 136.4,78.2,61.8μmで あ っ た.ま た,Duo Cementで は,そ れ ぞ れ 平 均149.2,83,2,68.2μm で あ っ た(図3).ど の 部 位 で も セ メ ン ト を 介 在 さ せ な い 試 料 に 比 較 して,セ メ ン ト合 着 後 の 試 料 で は や や 大 きな 間 隙 量 を示 し,中 央 部 で は両 者 に有 意 差 が 認 め ら れ た(p<0.05).し か し な が ら,各 部 位 と も に2 種 の セ メ ン ト間 で 間 隙 量 に 有 意 差 は 認 め ら れ な か っ た. *p<0 .05 図3 CEREC(R)で 製 作 し た試 料 に お け る 間 隙 量 **p<0.01 図4 耐火模 型 によ って製 作 した試料 とCERECで 製 作 し た試料 における間隙量.い ずれの場合 も合着 にはレジ ンセメ ン ト(Clapearl DC)を 使 用 した 2. 耐 火 模 型 法 と の 比 較 耐 火 模 型 で 製 作 した 試 料 の 間 隙 量 は,切 端 部,中 央 部,歯 頸 部 で そ れ ぞ れ 平 均115,35.3,58μmで あ っ た(図4).同 じ セ メ ン トで 合 着 し たCEREC(R)の 試 料 と比 較 す る と中 央 部 で の 間 隙 量 が 耐 火 模 型 の 試 料 に お い て 有 意 に 小 さ な 値 と な った(p<0.01) .他 の 切 端 部 や 歯 頸 部 で も平 均 の 間 隙 量 は耐 火 模 型 の 試 料 が や や 小 さ な値 を示 す もの の,両 者 に有 意 差 は認 め られ な か っ た.
歯 科用CAD/CAMシ ス テムCEREC(R)に 関 す る臨 床的 研 究 1 1 9 ― 1 1 9 IV. 考 察 1985年 に プ ロ トタ イ プ が 開 発 され たCEREC(R)は, チ ェ ア サ イ ドで ポ ー セ レ ンの イ ン レ ー や ラ ミネ ー トベ ニ ア の 製 作 が 可 能 な 歯 科 用CAD/CAMシ ス テ ム と し て,臨 床 で 大 きな 注 目 を集 め て い る.こ の シ ス テ ム で は,支 台 歯 形 成 後,専 用 のCCDカ メ ラ に よ り支 台 歯 の 光 学 印 象 を 採 得 し,シ ス テ ム に 内 蔵 さ れ た コ ン ピ ュ ー タ 制 御 の 画 像 処 理 装 置 を 用 い て モ ニ タ ー 画 面 上 で 修 復 物 の デ ザ イ ン を決 定 し,ダ イ ヤ モ ン ドデ ィ ス ク に よ りポ ー セ レ ン ブ ロ ッ クか ら修 復 物 を 自 動 的 に 機 械 切 削 す る 形 式 が 用 い ら れ て い る10)。CEREC(R)に よ っ て ラ ミ ネ ー トベ ニ ア 補 綴 を行 う場 合 は,切 削 さ れ た ポ ー セ レ ン シ ェ ル を光 化 学 重 合 型 の レ ジ ンセ メ ン トで 支 台 歯 に接 着 し た 後,辺 縁 部 の 調 整,ポ ー セ レ ン シ ェ ル 外 面 の 形 態 修 正,研 磨 を行 い 処 置 が 完 了 す る. 今 回 の 実 験 で は,セ メ ン トを介 在 させ な い 試 料 に お い て は 平 均57μm(歯 頸 部),41.8μm(中 央 部), 116.6μm(切 端 部)の 間 隙 量 が 得 ら れ た.CCDカ メ ラ の 規 格 解 像 度 が 約50μmで あ り11),機 械 切 削 の 際 に もあ る程 度 誤 差 が 生 じ る こ と を考 慮 す る と 中央 部 や 歯 頸 部 に お け る 間 隙 量 の 値 は 良 好 な もの と思 わ れ た. CEREC(R)の 適 合 性 に は,術 者 の 熟 練 度,パ ウ ダ ー 層 の 厚 み や 修 復 物 デ ザ イ ンの 方 法 に も影 響 を 受 け る 可 能 性 が あ る.し か し な が ら,今 回 の 実 験 で はCEREC(R) に熟 練 し た術 者 が 操 作 を行 っ た こ と,さ らに 対 象 が ラ ミ ネ ー トベ ニ ア で あ り均 一 で薄 い パ ウ ダ ー 塗 布 や 修 復 物 デ ザ イ ン も容 易 に 行 え る こ とか ら,こ れ らの 要 素 の 影 響 は き わ め て 小 さ い もの と思 わ れ る.実 際 の 支 台 歯 形 成 は ダ イ ヤ モ ン ドバ ー を用 い て 行 うがCEREC(R)で は,直 径40mmの ダ イ ヤ モ ン ドデ ィ ス ク の み で ポ ー セ レ ン ブ ロ ッ ク を近 心 か ら遠 心 に 削 りだ し種 々 の 形 態 を作 りだ す11).こ の た め イ ン レ ー の 底 面 の よ う な 平 坦 な 面 は比 較 的容 易 に 削 除 が 行 わ れ る が,ベ ニ ア の よ う に 歯 頸 部 か ら切 端 部 にか け て彎 曲 の あ る面 の 削 除 に は 限界 が あ り,結 果 と して 切 端 部 の 間 隙 量 が 大 き くな っ た もの と思 わ れ た. 2種 類 の レ ジ ンセ メ ン トで 合 着 し たCEREC(R)ベ ニ ア で は 間 隙 量 は61.8∼149.2μmで あ っ た.CEREC(R) で製 作 したMODイ ン レ ー に お け る辺 縁 部 の 間 隙 量 は 平 均 で140μmで あ る こ と が 報 告 さ れ て お り8),今 回 の 実 験 結 果 はMODイ ン レー と同 程 度 あ る い は よ り良 好 な もの で あ る こ と が 示 され た.MODイ ン レ ー は セ メ ン ト層 が 直 接 咬 合 面 に 表 れ るが,ラ ミネ ー トベ ニ ア で は 舌 側 の 咬 合 に 関 与 す る 部 分 は 歯 質 削 除 を行 わ な い.そ の た め ラ ミネ ー トベ ニ ア で は セ メ ン ト層 が 咬 合 に 与 え る 影 響 は 小 さ い もの と思 わ れ るが,臨 床 成 績 の 評 価 は従 来 のCEREC(R)イ ン レ ー6,7)と同 様 に 数 年 間 あ る い は よ り 長 期 の 経 過 観 察 が 必 要 で あ ろ う.Essig ら12)は抜 去 中 切 歯 にCEREC(R)を 用 い て ポ ー セ レ ン シ ェル を 製 作 し内 面 の 間 隙 量 を測 定 した と こ ろ,内 面 の 調 整 な しで は 平 均248μmで あ っ た も の が 内 面 を一 層 削 除 す る と 平 均128μmに 減 少 し た と 報 告 し て い る.今 回 の 実 験 に 用 い た シ ス テ ム は1992年 に ハ ー ド ウ ェ ア の 変 更 を う け た も の で 切 削 に トル ク の 強 い電 気 モ ー タ ー を採 用 す る こ と に よ り,従 来 は 切 削 用 ダ イ ヤ モ ン ドデ ィ ス ク ー 回 転 あ た り に55μmポ ー セ レ ン ブ ロ ッ ク が 移 動 し た もの11)が,半 分 の27.5μmの 移 動 量 と な っ た こ とで 結 果 と して よ り細 か い 切 削 面 が 得 ら れ て い る.こ の た め,Essigら12)の よ う に 内 面 の 削 除 を 行 わ な くて も同 程 度 の 間 隙 量 が 得 ら れ た もの と思 わ れ た.レ ジ ン セ メ ン トで 合 着 し た 試 料 で は2種 類 の セ メ ン ト間 に 有 意 差 は認 め られ な い も の の,セ メ ン トな しの 試 料 に比 較 して 間 隙 量 が 大 き くな る傾 向 を 示 し た.こ れ は レ ジ ンセ メ ン トに よ る 浮 き上 が りが 原 因 と 考 え ら れ た.合 着 に 用 い る レ ジ ン セ メ ン トは 直 径 数 μm∼ 十 数 μmの フ ィ ラー を 含 む た め8)修復 物 の 浮 き 上 が りは あ る程 度 避 け ら れ ず,臨 床 で は こ の 影 響 を可 及 的 に 避 け る た め ポ ー セ レ ン シ ェル の 十 分 な 圧 接 を 行 っ た 状 態 で 光 重 合 を 行 う必 要 が あ る. 耐 火 模 型 で 製 作 し た試 料 とCEREC(R)の 試 料 を比 較 す る と間 隙 量 は どの 部 位 に お い て も耐 火 模 型 の 試 料 の 方 が や や 小 さ くな る傾 向 が み られ,中 央 部 で は 両 者 に 有 意 差 が 認 め られ た.耐 火 模 型 を 使 用 す る 方 法 で は ポ ー セ レ ン と近 似 し た 熱 膨 張 曲 線 を有 し た 耐 火 模 型 材 が 開 発 さ れ た こ と で 良 好 な 適 合 性 が 得 ら れ,さ ら に必 要 が あ れ ば 部 分 的 に 追 加 焼 成 も可 能 で あ る9).耐 火 模 型 を 用 い る 方 法 に 比 較 し てCEREC(R)で は 単 一 色 の ポ ー セ レ ン ブ ロ ック か ら修 復 物 を機 械 切 削 す る た め修 復 物 の 色 調 再 現 に は 限 界 が あ り,歯 冠 の 各 部 で 異 な る 色 調 を用 い る な ど の微 妙 な 色 調 回 復 は 困 難 で あ る.し か し な が ら,CEREC(R)は 耐 火 模 型 の 製 作 や,陶 材 の 築 盛,焼 成 とい っ た煩 雑 な 技 工 操 作 が 不 用 で あ る大 き な 利 点 を も っ て い る.コ ン ポ ジ ッ トレ ジ ン に よ る直 接 法 の ベ ニ ア も 同 様 に 技 工 操 作 は 不 用 で あ るが,レ ジ ン 特 有 の 変 色 や 耐 摩 耗 性 と い っ た 点 で 問 題 を 有 し て お り12),こ の 点 で も ポ ー セ レ ン で 修 復 を 行 うCEREC(R)
120―120 補 綴 誌 3 7 巻 1 号 (1 9 9 3) は 有 利 で あ る もの と思 わ れ る.今 後 は,臨 床 で の 修 復 物 の 長 期 的 な観 察 と と もに 色 調 に 関 して も唇 側 面 へ の ス テ イ ン陶 材 の 応 用 な ど も検 討 を行 う こ とが 必 要 で あ ろ う. V. 結 論 歯 科 用CAD/CAMシ ス テ ムCEREC(R)を 用 い て ポ ー セ レ ン ラ ミネ ー トベ ニ ア を製 作 し,そ の 適 合 性 に 関 し て 検 討 を行 っ た結 果 以 下 の 結 論 を得 た. 1. セ メ ン トを 介 在 させ な い試 料 で は,支 台 歯 との 間 に41.8∼116.6μmの 間 隙 量 が 認 め られ,切 端 部 の 間 隙 量 は,中 央 部,歯 頸 部 に 比 較 して 有 意 に大 き な値 と な っ た. 2. レ ジ ンセ メ ン トで 合 着 し た試 料 で は 間 隙 量 が 増 加 す る 傾 向 が み られ た が,2種 の セ メ ン ト間 に は 有 意 差 が 認 め られ な か った. 3. 耐 火 模 型 で 製 作 し た 試 料 は,CEREC(R)で 製 作 した 試 料 に比 較 し て 間 隙 量 が や や 小 さ くな る傾 向 を示 した. 以 上 の 結 果 か ら,セ メ ン ト合 着 後 も数 十 μm∼ 百 数 十 μmの 間 隙 量 を 示 し,1回 の 来 院 で ポ ー セ レ ン ラ ミネ ー トベ ニ ア の 処 置 が 完 了 す るCEREC(R)は 臨 床 で 大 き な 可 能 性 を持 つ こ とが 示 唆 され た. 文 献
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