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医療機関を対象とした臨床研究と診療における

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平成30年度厚生労働省行政推進調査事業補助金(厚生労働科学特別研究事業)

臨床研究ならびに医療における手術・手技にかかる国内外の規制の調査研究

医療機関を対象とした臨床研究と診療における 新規の手術手技の実施に係る審査に関する研究

研究分担者 土井 麻理子, 湯川 慶子, 佐藤 元1

1)国立保健医療科学院 政策技術評価研究部

研究要旨

目的:研究(臨床研究)と診療における新規の手術手技の導入と審査に関する医療機関の現状と課 題を明らかにし、手術・手技に係る制度を策定する上で、今後考慮すべき事項を検討する。

方法:新規の手術・手技に関する調査票を国内の病院に配布した。調査の対象とした病院は、国立 高度専門医療研究センター、医学部附属病院、特定機能病院、歯学部附属病院の計166 病院とし、

2018年11月から12月にかけて調査票を郵送した。調査票は研究と診療の2つの審査に分け、次の 項目で構成した。1. 新規の手術・手技の審査実績、2. 審査項目、3-1. 審査での困難・課題の有無

(困難があるもの、重要項目3つ)、3-2.審査体制整備における① 審査手順の整備、② 審査の実施、

の担当機関、3-3.審査の実施状況や結果についての情報集約、4. 新規の手術・手技の費用負担、5. 高 難度新規医療技術に係る法令要件や提言への対応状況(診療の場合のみ)。

結果:[1. 研究に関する調査] 調査票は166施設に配布し54施設から回答が得られた(有効回答率 32.5%)。審査項目に関しては、回答した医療機関は12の質問項目全てについて困難を感じていると 回答した(27.0-67.6%)。特に「審査(技術、倫理審査)」「費用負担・補償」には約60%以上の医療 機関が困難を感じていた。審査で重要と考える項目は、審査項目に関する「審査(技術、倫理審査)」

「実施条件」「説明同意の範囲」「費用負担・補償」「新規性の定義」を医療機関の25%以上が重要と 考えていた(27-56.8%)。審査する項目は、研究の実施内容に関する「倫理的側面の審査」「有効性の 審査」「実施体制の審査」「説明同意の審査」「安全性の審査」についてはほぼ 100%の医療機関が審査項 目として設定していると回答したのに対し、「審査の必要性の判断」は医療機関の81.1%、手術・手技に 関する「技術的水準の審査」が83.8%、研究の経過と終了後の報告に関する「経過・結果の報告」は83.8%、

「経過・結果の評価」は54.1%であった。審査の体制整備について「① 審査手順の整備」を「国・自 治体」へ期待する医療機関は 35.1%、「各医療施設」と「学術団体(学会など)」に期待する医療機

関は27.0%であった。医療機関の78.4%は「各医療施設」が「② 審査の実施」を行うのが望ましい

と考えていた。審査の情報集約には、86.5%の医療機関が必要と回答し、集約機関として「学術団 体(学会など)」(35.1%)や「国・自治体」(29.7%)、「各医療施設」(16.2%)が挙げられた。

[2. 診療に関する調査] 調査票は 166 施設に配布し 63 施設から回答が得られた(有効回答率

38.6%)。審査は12項目全てについて困難を感じていると回答した医療機関があった(22.0-58.0%)。

特に「監視範囲・実効性・強制力の不足」には58%の医療機関が困難を感じていると回答した。審査 項目に関する「審査(技術、倫理審査)」「実施条件」「費用負担・補償」「新規性の定義」を重要と考 えていた医療機関が 2割以上あった(24-48%)。「説明同意の範囲」は 18%であった。研究審査と 比べ、診療の審査では「審査(技術、倫理審査)」と「説明同意の範囲」を回答した医療機関が10%

以上低く「実施条件」「費用負担・補償」は10%以上高かった。審査項目では、研究の実施内容に関 する「有効性の審査」、「技術的水準の審査」、「安全性の審査」、「実施体制の審査」、「説明同意の審査」に ついては、医療機関のほぼ100%の医療機関が審査項目として設定していると回答したのに対し、「審査

(2)

A.研究目的

臨床研究法の附則第二条において「先端的 な科学技術を用いる医療行為その他の必ずし も十分な科学的知見が得られていない医療行 為についてその有効性及び安全性を検証する ための措置について検討を加え、その結果に 基づき、法制上の措置その他の必要な措置を 講ずる」とされている。臨床研究法では、医薬 品等を用いる臨床研究を対象としているが、

そのほかの先端的な科学技術を用いる医療行 為としては、手術・手技を用いる臨床研究や 医療行為が想定される。このため、それらに 係る国内の措置の在り方の検討に向けた基礎 資料となる資料収集のための調査が必要とな っている。

本調査では手術・手技に関する監視体制お よび意向の調査として、国内の新規の手術・手 技を扱う医療機関へのアンケート調査を行い、

診療および研究にかかる規制・審査・監視制度 についての意見・動向を調査する。研究(臨床 研究)と診療における新規の手術手技の導入と 審査に関する医療機関の現状と課題を明らか

にし、今後、手術・手技に係る制度を策定す る上での考慮すべき事項を検討する。

B.研究方法

手術・手技に関する自記式調査票を、新規 の手術・手技を導入・実施している可能性が高 いと考えられる国内の病院を中心に配布した。

対象とした病院は、国立高度専門医療研究セン ター(以下、ナショナルセンター)の7病院と 医学部附属病院の 134 病院、特定機能病院で ある85病院(平成29年4月1日現在)、歯学 部附属病院の22病院とし、これらの重複を除 いた計 166 病院とした。医学部附属病院と歯 学部附属病院は、臨床研修病院のリストから医 療機関名に「大学」が含まれる医療機関を選定 した。

本調査は、2018年11月から12月にかけて、

担当の部署に回付いただくよう記載の上、調査 票を各病院長宛に郵送した。希望医療機関には 電子ファイルを配布した。調査票の提出締切日 を過ぎても提出が無かった施設には、2018 年 12 月から 2019年1月にかけて調査票を再度 の必要性の判断」は医療機関の74.0%、「経過・結果の報告」は92.0%、「経過・結果の評価」は76.0%

であった。「倫理的側面の審査」は88.0%であった。体制整備における「① 審査手順の整備」を、診 療審査では「学術団体(学会など)」に期待する医療機関が38%、「国・自治体」は30.0%、「各医 療施設」は24.0%であった。医療機関の75.6%は「各医療施設」で「② 審査の実施」を行うのが 望ましいと考えていた。審査の情報集約には、96%の医療機関が必要と回答し、「学術団体(学会 など)」(30.0%)や「国・自治体」(24.0%)、「各医療施設」(34.0%)が挙げられた。

結論:本研究により、研究と診療における審査における各医療機関の現状が明らかになった。新規 の手術・手技に関する審査について、医療機関は質問した全ての項目について困難を感じていた。

「審査(技術、倫理審査)」や「費用負担・補償」、「監視範囲・実効性・強制力の不足」等について は特に困難を感じていた。研究と診療共に、「審査(技術、倫理審査)」「実施条件」「費用負担・補 償」「説明同意の範囲」「新規性の定義」等の審査に関する項目を重要と考えている傾向が見られた。

審査項目においては「審査の必要性の判断」や「技術的水準の審査」「結果の報告・評価」の項目 は、医療機関によっては審査されていないことが明らかになった。

「技術的水準の審査」のように審査されておらず、加えて重要かつ困難と回答のあった項目は、審 査業務の質向上に関する取り組みや、業務が進むような倫理指針ガイダンスの改訂や様式の提供、

解説の追加を検討することが望まれる。困難がありながら重要との回答が少なかった結果の報告・

評価に関する項目などは、上記に加えて当該項目の内容説明や必要性の認識を上げることも求めら れる。その他の困難と報告のあった項目についても今後の対策・対応についてさらなる検討が必要 である。今後のサポートや検討を進める際には、研究と審査の違いについて配慮が望まれ、審査体 制の整備を進める場合は、関連学会、国・自治体等などで進めていくことが期待される。

(3)

送付し、再送付時に設定した締切日以降に調査 票の提出が無かった医療機関には、2019 年 1 月から2月にかけて1-2回の電話により提出を 依頼した。

配布した調査票は、研究の審査と診療にお ける審査の2つに分け、次の7項目によって構 成した。1. 新規の手術・手技の審査実績、2. 審 査項目、3-1. 審査での困難・課題の有無(困 難があるもの、 重要項目3つ)、3-2.審査体制 整備における① 審査手順の整備、② 審査の実 施、の担当機関、3-3.審査の実施状況や結果に ついての情報集約、4. 新規の手術・手技の費 用負担、5. 高難度新規医療技術に係る法令要 件や提言への対応状況(診療の場合のみ)。

本調査票は、1 回目の調査票配布直後の 2018年11月に第1.1版に改訂を行った。改訂 の箇所は項目5の5)について、「担当部門へ専 従の者を配置することの必須か」から「担当部 門の責任者および従業者を配置」へ変更した。

変更箇所(正誤)については、同11月に葉書 により医療機関に通知した。

統計解析は、本研究では、調査票の提出が あった7項目のうち、未回答項目が5項目以上 あった医療機関を除いて、集計・統計解析を行 った。統計解析には、R version 3.5.2 を使用 した。

(倫理面への配慮)本研究は個人のデータを 扱っていないことから倫理面への配慮は必要 ない。

C.結果

1. 研究に関する調査

調査票は166施設に配布し、114 施設から 返送があった。その内、有効回答は54施設か らであった(有効回答率32.5%)。有効回答の あった医療機関の内訳は、ナショナルセンター 2施設、医学部附属病院43 施設、特定機能病 院40施設、歯学部附属病院6施設で、有効回 答率はそれぞれ、28.6%、32.1%、47.1%、

27.3%であった(表1)。

表1. 新規の手術・手技に関する研究審査について、各医療機関の回答状況 全医療機関 ナショナル

センター 医学部

附属病院 特定機能病院 ⻭学部 附属病院

配布数 166 7 134 85 22

回収数 114 3 91 63 17

有効回答数 54 2 43 40 6

有効回答率(%) 32.5 28.6 32.1 47.1 27.3

回答辞退数 53 0 45 23 7

非該当数 7 0 3 0 4

研究審査経験あり 37 1 31 30 2

介入試験審査

経験あり 34 1 29 29 1

上記数値は、調査票を返送した医療機関の数(回収できた調査票数) 有効回答率は、有効回答数/配布数により算出した。

(1) 審査項目

各医療機関の審査委員会において審査して いると回答のあった項目を表2に示す。新規の 手術・手技の臨床研究の審査経験があると回答 した医療機関37施設のうち、研究実施内容に

関する「倫理的側面の審査」、「有効性の審査」、

「安全性の審査」、「実施体制の審査」、「説明同 意の審査」の 5 項目については、95%以上の ほぼ全ての医療機関が審査を行っていると回 答した。「審査の必要性の判断」、「技術的水準

(4)

の審査」、「経過・結果の報告」の3項目について は、審査している医療機関は、それぞれ30施設

(81.1%)、31施設(83.8%)、31施設(83.8%) であった。結果に関する「経過・結果の評価」を

審査している医療機関は、20 施設(54.1%)と なっていた。回答のあった特定機能病院40施設 においても同様の傾向であった。

2. 新規の手術・手技に関する研究審査における審査項目

審査項⽬

研究審査経験あり 医学部附属病院 特定機能病院 (n=37) (n=43) (n=40) n % n % n % 審査 審査の必要性の判断 30 81.1 34 79.1 31 77.5

実施

倫理的側面の審査 37 100.0 41 95.3 38 95.0 有効性の審査 36 97.3 40 93.0 37 92.5 技術的水準の審査 31 83.8 32 74.4 31 77.5 安全性の審査 37 100.0 41 95.3 38 95.0 実施体制の審査 37 100.0 41 95.3 38 95.0 説明同意の審査 37 100.0 41 95.3 38 95.0

結果 経過・結果の報告 31 83.8 37 86.0 34 85.0 経過・結果の評価 20 54.1 22 51.2 21 52.5

(2) 困難と考える項目

各医療機関の審査における困難と考える項 目については表3に示す。新規の手術・手技の 臨床研究の審査経験があると回答した医療機 関37施設のうち、審査に関する「審査(技術、

倫理審査)」には、25施設(67.6%)が困難を 感じ、一番多かった。次に「費用負担・補償」

が22施設(59.5%)と続き、さらに「新規性の 定義」、「運用上の手間(現場)」、「自由裁量の 制限」の3項目については20施設(54.1%)が、

「実施条件」と「監視範囲・実効性・強制力の 不足」の2項目は、19施設(51.4%)の施設が 困難を感じていた。「新規性の定義」を困難と回 答した医療機関は、特定機能病院では 20 施設

(42.5%)、“審査経験あり”の医療機関では 22 施設(54.1%)で多かった。

(3) 重要と考える項目

各医療機関の審査において重要と考える項 目を表4に示す。審査に係る5項目が重要と考 える医療機関は有効回答数の約 100%であった。

審査に関する「審査(技術、倫理審査)」には、

新規の手術・手技の臨床研究の審査経験がある と回答した医療機関 37 施設のうち、21 施設

(56.8%)が重要と回答した。同様に「実施条 件」と「説明同意の範囲」の2項目については、

それぞれ12施設(32.4%)、が、「新規性の定義」

と「費用負担・補償」は、それぞれ 11 施設

(29.7%)、10 施設(27.0%)の施設が重要と考 えていた。

(5)

3. 新規の手術・手技に関する研究審査において困難と感じる項目(複数回答可)

4. 新規の手術・手技に関する研究審査において重要と感じる項目(3項目まで回答可)

審査項⽬

研究審査経験あり 医学部附属病院 特定機能病院 (n=37) (n=43) (n=40) n % n % n %

審査項目

新規性の定義 20 54.1 20 46.5 17 42.5

実施条件 19 51.4 23 53.5 20 50.0

審査(技術、倫理審査) 25 67.6 29 67.4 25 62.5 説明同意の範囲 13 35.1 13 30.2 11 27.5 費用負担・補償 22 59.5 22 51.2 20 50.0 公開 実施情報の登録・公開 10 27.0 10 23.3 9 22.5 結果 結果の評価 13 35.1 15 34.9 13 32.5 実効 監視範囲・実効性・強制力の不足 19 51.4 21 48.8 19 47.5

負担 運用上の手間(現場) 20 54.1 21 48.8 19 47.5 運用上の負担(中央) 16 43.2 15 34.9 15 37.5 裁量 自由裁量の制限 20 54.1 20 46.5 18 45.0 区分 研究と診療の関係 16 43.2 18 41.9 18 45.0

審査項⽬

研究審査経験あり 医学部附属病院 特定機能病院 (n=37) (n=43) (n=40) n % n % n %

審査項目

新規性の定義 11 29.7 12 27.9 10 25.0

実施条件 12 32.4 15 34.9 13 32.5

審査(技術、倫理審査) 21 56.8 25 58.1 23 57.5 説明同意の範囲 12 32.4 13 30.2 12 30.0 費用負担・補償 10 27.0 11 25.6 9 22.5 公開 実施情報の登録・公開 2 5.4 1 2.3 1 2.5 結果 結果の評価 5 13.5 5 11.6 4 10.0 実効 監視範囲・実効性・強制力の不足 7 18.9 9 20.9 8 20.0 負担 運用上の手間(現場) 4 10.8 5 11.6 5 12.5 運用上の負担(中央) 2 5.4 2 4.7 2 5.0 裁量 自由裁量の制限 7 18.9 6 14.0 6 15.0 区分 研究と診療の関係 8 21.6 11 25.6 10 25.0

(6)

(4) 審査体制整備を担う機関

新規の手術・手技の審査体制を整える場合

「① 審査手順の整備」を担当するのが望まし い機関について、新規の手術・手技の臨床研究 の審査経験があると回答した医療機関37施設 のうち、13施設(35.1%)は、「国・自治体」

が担当するのが望ましいと考えていた(表5)。

「各医療施設」と「学術団体(学会など)」が 望ましいと考えた医療機関は、共に 10 施設

(27.0%)であった。「国・自治体」と回答した

医療機関は、“審査経験あり”の医療機関で 13 施 設 (35.1% )、 特 定 機 能 病 院 で は 17 施 設

(42.5%)であった。「② 審査の実施」を担当 す る の が 望 ま し い 機 関 と し て は 、29 施 設

(78.4%)は、「各医療施設」が担当するのが 望ましいと考えていた。「国・自治体」と回答し た医療機関は“審査経験あり”の医療機関で 3 施設(8.1%)、特定機能病院では6施設(15.0%)

であった。

5. 新規の手術・手技を対象とした研究審査に関する審査体制の整備を担うことが期待される機関 研究審査経験あり (n=37) 特定機能病院 (n=40)

① 審査⼿順の

整備 ② 審査の実施 ① 審査⼿順の

整備 ② 審査の実施 現在 今後 現在 今後 現在 今後 現在 今後

1. 各医療施設 n

(%) 10

(27.0) 29

(78.4) 8

(20.0) 29

(72.5)

2. 学術団体(学会など) n

(%) 10

(27.0) 1

(2.7) 10

(25.0) 1

(2.5) 3. その他民間団体

(医師会、認定機構など)

n

(%) 2

(5.4) 2

(5.4) 2

(5.0) 1

(2.5)

4. 国・自治体 n

(%) 13

(35.1) 3

(8.1) 17

(42.5) 6

(15.0)

(5) 審査に係る情報集約

新規の手術・手技の審査の実施状況や結果 に関する情報の集約については、新規の手術・

手技の臨床研究の審査経験があると回答した 医療機関37施設のうち、32施設(86.5%)の 医療機関が必要と回答した。その中で13施設

(35.1%)の医療機関が、「学術団体(学会な ど)」が望ましいと考えていた。そのほかには、

11施設(29.7%)が「国・自治体」を、6施設

(16.2%)が「各医療施設」が担当するのが望 ましいと考えていた。「学術団体」と回答した 医療機関は、“審査経験あり”の医療機関で13

施設(35.1%)、特定機能病院では 11 施設

(27.5%)であった。

2. 診療に関する調査

調査票は166施設に配布し、114 施設から 返送があった。その内、有効回答は63施設で あった(有効回答率38.6%)。有効回答のあっ た医療機関の内訳は、ナショナルセンター3施 設、医学部附属病院50施設、特定機能病院45 施設、歯学部附属病院7施設で、有効回答率は、

42.9%、37.3%、52.9%、31.8%であった(表 6)。

(7)

6. 新規の手術・手技に関する研究審査について、各医療機関の回答状況 全医療機関 ナショナル

センター 医学部

附属病院 特定機能病院 ⻭学部 附属病院

配布数 166 7 134 85 22

回収数 114 3 91 63 17

有効回答数 63 3 50 45 7

有効回答率(%) 38.6 42.9 37.3 52.9 31.8

回答辞退数 45 0 38 18 7

非該当数 6 0 3 0 3

診療審査経験あり 50 3 43 42 1

高難度新規医療

技術審査経験あり 44 3 38 41 0

上記数値は、調査票を返送した医療機関の数(回収できた調査票数) 有効回答率は、有効回答数/配布数により算出した。

(1) 審査項目

各医療機関の審査委員会において審査し ていると回答のあった項目を表 7に示す。新 規の手術・手技の診療について審査経験がある と回答した医療機関50施設のうち、研究実施 内容に関する「有効性の審査」、「技術的水準 の審査」、「安全性の審査」、「実施体制の審査」、

「説明同意の審査」の5項目については、49

施設(約 100%弱)以上の医療機関が審査を

行っていると回答した。「倫理的側面の審査」

と「経過・結果の報告」の2項目について審査 していると回答した医療機関は、それぞれ44施 設(88.0%)、46施設(92.0%)であった。残り の「審査の必要性の判断」と「経過・結果の評 価」を審査している医療機関は、それぞれ37施 設(74.0%)、38施設(76.0%)であった。特定 機能病院45施設においても、ほぼ同様の傾向で あった。

7. 新規の手術・手技に関する診療審査における審査項目

審査項⽬

診療審査経験あり 医学部附属病院 特定機能病院

(n=50) (n=50) (n=45)

n % n % n % 審査 審査の必要性の判断 37 74.0 37 74.0 33 73.3

実施

倫理的側面の審査 44 88.0 43 86.0 39 86.7 有効性の審査 50 100.0 48 96.0 44 97.8 技術的水準の審査 49 98.0 47 94.0 43 95.6 安全性の審査 50 100.0 48 96.0 44 97.8 実施体制の審査 50 100.0 48 96.0 44 97.8 説明同意の審査 50 100.0 48 96.0 44 97.8 結果 経過・結果の報告 46 92.0 45 90.0 41 91.1 経過・結果の評価 38 76.0 37 74.0 33 73.3

(8)

(2) 困難と考える項目

各医療機関の審査における困難と考える項 目については表8に示す。新規の手術・手技の 診療について審査経験があると回答した医療 機関50 施設のうち、審査に関する「監視範囲

・実効性・強制力の不足」と「審査(技術、倫 理審査)」、「費用負担・補償」、の3項目につい ては、それぞれ 29 施設(58.0%)と 27 施設

(54.0%)、26 施設(52.0%)の施設が困難を感 じていた。一方で、「説明同意の範囲」と「実

施情報の登録・公開」の2項目について困難と 回答した医療機関は、それぞれ11施設(22.0%) と12施設(24.0%)であった。“審査経験あり”

の医療機関は、特定機能病院と比べ「困難あり」

と回答した医療機関の割合が多かった。特に「費 用負担・補償」(審査経験あり、52.0%;特定機 能病院、44.4%)と「研究と診療の関係」(審査 経験あり、40.0%;特定機能病院、33.3%)でそ の差が大きかった。

8. 新規の手術・手技に関する診療審査において困難と感じる項目(複数回答可)

(3) 重要と考える項目

各医療機関の審査において重要と考える項 目を表9に示す。審査に係る5項目が重要と考 える医療機関は、新規の手術・手技の診療につい て審査経験があると回答した医療機関50施設

の平均約 35%以上(範囲、18-48%)であった。

新規の手術・手技の診療について審査経験があ

ると回答した医療機関50施設のうち、審査に 関する「実施条件」と「審査(技術、倫理審査)」

の 2 項目は、それぞれ 24 施設(48.0%)、22 施設(44.0%)が重要と回答した。次いで「費 用負担・補償」の項目については、20 施設

(40.0%)の施設が重要と考えていた。

審査項⽬

診療審査経験あり 医学部附属病院 特定機能病院 (n=50) (n=50) (n=45) n % n % n %

審査項目

新規性の定義 22 44.0 21 42.0 19 42.2

実施条件 20 40.0 21 42.0 19 42.2

審査(技術、倫理審査) 27 54.0 26 52.0 23 51.1 説明同意の範囲 11 22.0 12 24.0 11 24.4 費用負担・補償 26 52.0 24 48.0 20 44.4 公開 実施情報の登録・公開 12 24.0 11 22.0 10 22.2 結果 結果の評価 18 36.0 16 32.0 14 31.1 実効 監視範囲・実効性・強制力の不足 29 58.0 27 54.0 25 55.6

負担 運用上の手間(現場) 17 34.0 16 32.0 13 28.9 運用上の負担(中央) 19 38.0 19 38.0 16 35.6 裁量 自由裁量の制限 18 36.0 16 32.0 15 33.3 区分 研究と診療の関係 20 40.0 17 34.0 15 33.3

(9)

9. 新規の手術・手技に関する診療審査において重要と感じる項目(3項目まで回答可)

(4) 審査体制整備を担う機関

新規の手術・手技の審査体制を整える場合

「① 審査手順の整備」を担当するのが望まし い機関について、新規の手術・手技の診療につ いて審査経験があると回答した医療機関50施 設のうち、19施設(38.0%)は、「学術団体(学 会など)」が担当するのが望ましいと考えてい

た。「国・自治体」と「各医療施設」について は、それぞれ15施設(30.0%)と12施設(24%)

が望ましいと回答した。「② 審査の実施」を担 当するのが望ましい機関としては、38 施設

(76.0%)は、「各医療施設」が担当するのが 望ましいと考えていた(表10)。

10. 新規の手術・手技を対象とした診療審査に関する審査体制の整備を担うことが期待される機関 診療審査経験あり (n=50) 特定機能病院 (n=45)

① 審査⼿順の

整備 ② 審査の実施 ① 審査⼿順の

整備 ② 審査の実施 現在 今後 現在 今後 現在 今後 現在 今後

1. 各医療施設 n

(%) 12

(24.0) 38

(76.0) 9

(20.0) 34

(75.6)

2. 学術団体(学会など) n

(%) 19

(38.0) 5

(10.0) 17

(37.8) 4

(8.9) 3. その他民間団体

(医師会、認定機構など)

n

(%) 3

(6.0) 4

(8.0) 2

(4.4) 3

(6.7)

4. 国・自治体 n

(%) 15

(30.0) 2

(4.0) 15

(33.3) 2

(4.4) 審査項⽬

診療審査経験あり 医学部附属病院 特定機能病院 (n=50) (n=50) (n=45) n % n % n %

審査項目

新規性の定義 12 24.0 12 24.0 11 24.4 実施条件 24 48.0 23 46.0 22 48.9 審査(技術、倫理審査) 22 44.0 22 44.0 18 40.0 説明同意の範囲 9 18.0 9 18.0 9 20.0 費用負担・補償 20 40.0 20 40.0 17 37.8 公開 実施情報の登録・公開 4 8.0 3 6.0 3 6.7 結果 結果の評価 8 16.0 8 16.0 7 15.6 実効 監視範囲・実効性・強制力の不足 11 22.0 12 24.0 11 24.4 負担 運用上の手間(現場) 6 12.0 5 10.0 5 11.1 運用上の負担(中央) 5 10.0 6 12.0 4 8.9 裁量 自由裁量の制限 6 12.0 5 10.0 4 8.9 区分 研究と診療の関係 10 20.0 9 18.0 8 17.8

(10)

(5) 審査に係る情報集約

新規の手術・手技の審査の実施状況や結果 に関する情報の集約については、新規の手術・

手技の診療について審査経験があると回答した 医療機関50施設のうち、48施設(96.0%)の 医療機関が必要と回答した。その中で17施設

(34.0%)の医療機関が「各医療機関」を、15 施設(30.0%)の医療機関が「学術団体(学会 など)」が望ましいと考えていた。12施設

(24.0%)が「国・自治体」が担当するのが望 ましいと考えていた。

(6) 医療法における高難度新規医療技術に係 る要件への対応状況

医療法における高難度新規医療技術に係る 法令要件や提言に対しての対応状況に関する 結果を、表11に示す。特定機能病院では、医 療法に定められた高難度新規医療技術の導入 については、委員会の設置や定期報告、順守状 況の確認は、約100%となっていた。「担当部 門の責任者および従業者を配置」については、

「対応済み」と言われた医療機関は86.7%で あった。特定機能病院以外の診療審査経験あり の医療機関や医学部附属病院でも約90%以上 の医療機関が「対応済み」もしくは「対応予定」

との回答だった。

11. 医療法における高難度新規医療技術に係る法令要件や提言に対しての対応状況

診療審査経験あり 医学部附属病院 特定機能病院 (n=50) (n=50) (n=45) n % n % n % 法令要件

1) 審査を⾏う委員会の設置

対応済み 46 92.0 49 98.0 45 100.0

対応予定 1 2.0 0 0.0 0 0.0 未定 3 6.0 1 2.0 0 0.0 2) 全ての実施症例と死亡例の

定期報告の必須化

対応済み 44 88.0 48 96.0 44 97.8

対応予定 5 10.0 0 0.0 0 0.0

未定 0 0.0 2 4.0 1 2.2 3) 担当部⾨の⻑による、⼿

術記録や診療録等の記載 内容、遵守状況の確認の 必須化

対応済み 44 88.0 48 96.0 45 100.0 対応予定 0 0.0 1 2.0 0 0.0 未定 4 8.0 1 2.0 0 0.0 4) 管理者への報告の必須化

対応済み 46 92.0 49 98.0 45 100.0

対応予定 0 0.0 0 0.0 0 0.0 未定 3 6.0 1 2.0 0 0.0 5) 担当部⾨の責任者および従

業者を配置

対応済み 40 80.0 43 86.0 39 86.7

対応予定 3 6.0 3 6.0 3 6.7

未定 5 10.0 3 6.0 2 4.4

⽇本医学会の提⾔

6) 医師以外の医療従事者が同席 するインフォームドコンセン トの必須化

対応済み 29 58.0 29 58.0 27 60.0

対応予定 8 16.0 9 18.0 8 17.8

未定 10 20.0 10 20.0 8 17.8

7) 医療安全体制の確保するため に関連部⾨との連携体制の構

対応済み 40 80.0 44 88.0 40 88.9

対応予定 3 6.0 3 6.0 3 6.7

未定 5 10.0 3 6.0 2 4.4

(11)

3. 研究審査と診療審査とに関する検討 (1) 審査項目

審査委員会における審査項目については、

研究の方が多かったのは「倫理的側面の審査」

(研究、100.0%; 診療、88.0%)であった。診 療で多く設定されていた項目は「技術的水準の 審査」(研究、83.8%; 診療、98.0%)と「経過・

結果の評価」(研究、54.1%; 診療、76.0%)で あった。

(2) 困難と考える項目

審査における困難と考える項目については、

全体として研究の方が困難と回答した施設数 が多かった。研究の方が多く困難と回答した項 目は、「実施条件」(研究、51.4%; 診療、40.0%)、

「運用上の手間(現場)」(研究、54.1%; 診療、

34.0%)、「自由裁量の制限」(研究、54.1%; 診

療、36.0%)などであった。研究も診療でも多

くの医療機関が困難と回答したのは、「審査(技 術、倫理審査)」(研究、67.6%; 診療、54.0%)、

「費用負担・補償」(研究、59.5%; 診療、52.0%)

と「監視範囲・実効性・強制力の不足」(研究、

51.4%; 診療、58.0%)などであった。

(3) 重要と考える項目

審査において重要と考える項目は、診療と 比べて、研究の方の方がより困難と回答した項 目は、「審査(技術、倫理審査)」(研究、56.8%;

診療、44.0%)と「説明同意の範囲」(研究、

32.4%; 診療、18.0%)であった。診療の方が

多く重要と回答した項目は、「実施条件」(研究、

32.4%; 診療、48.0%)と「費用負担・補償」

(研究、27.0%; 診療、40.0%)などであった。

研究も診療でも同様に医療機関が重要と回答 したのは、「新規性の定義」(研究、29.7%; 診 療、24.0%)と「監視範囲・実効性・強制力の 不足」(研究、18.9%; 診療、22.0%)、研究と 診療の関係」(研究、21.6%; 診療、20.0%)な どであった。

(4) 審査体制整備を担う機関

新規の手術・手技の審査体制を整える場合

「① 審査手順の整備」を担当するのが望まし

い機関について、診療では「学術団体(学会な ど)」にその役割を期待する医療機関が多かっ た(研究、27.0%; 診療、38.0%)と「経過・

結果の評価」(研究、54.1%; 診療、76.0%)で あった。

(5) 審査に係る情報集約

新規の手術・手技の審査の実施状況や結果 に関する情報の集約について、診療では「各医 療機関」を考える医療機関が多かった(研究、

16.2%; 診療、34.0%)。

D.考察

国内の医療機関を対象とした本調査により、

国内における研究と診療の、新規の手術・手技 に係る審査の現状が明らかになった。医療機関 は研究と診療のいずれにおいても、新規の手 術・手技の審査において、本調査において質問 した12項目に困難を感じていることが明らか になった。2 点目は、研究と診療共に、「審査

(技術、倫理審査)」「実施条件」「費用負担・

補償」「説明同意の範囲」「新規性の定義」の実 際の審査に係る項目を重要と考えている傾向 が見られた。3点目は、各医療機関での審査に おいて、審査の必要性の判断や結果の報告・評 価の実施が全ての医療機関に浸透していない ことが明らかになった。

今回の調査において設定した12項目は、い ずれも手術・手技の審査において過去に課題で あると報告されている項目であった。本調査で の回答医療機関においても困難を感じている ことが明らかになった。また、質問した12項 目のうち10項目は、研究審査で困難であると 回答した医療機関が、診療と比べて多かった。

診療は、保険診療や診療ガイドライン、法令等 により定められている内容が多く、研究と比べ て、審査の際に迷いや困難を感じる機会が少な い可能性が考えられた。本調査により困難と感 じていることが明らかになった項目について は、今後改善されるような対策が望まれる。

項目別の検討では、「審査(技術、倫理審査)」

では、研究と診療のどちらにおいても困難と感 じていた医療機関が多かった(研究、67.6%;

(12)

診療、54.0%)。加えて、「新規性の定義」(研 究、54.1%;診療、44.0%)や「実施条件」(研 究、51.4%;診療、40.0%)も困難であると回 答した医療機関が多かった。手術・手技の審査 に関して専門的な内容の知識・経験が要求され る場合に困難を感じており、専門家不在の状況 での審査に困難を感じていると考えられた。次 に「費用負担・補償」についても困難と感じて いる医療機関が多かった(研究、59.5%;診療、

52.0%)。保険と保険外の区別、研究と診療の 区別、また先進医療の前段階であるプレ先進医 療(実績を作る)の段階における費用負担につ いて困難を感じていると可能性も考えられる。

費用負担・補償に関する解説や内容の整理等を 示すことにより、医療機関での審査が進捗する ことも期待できる。

「監視範囲・実効性・強制力の不足」につい て多くの医療機関が困難を感じており、特に診 療で多かった(研究、51.4%%;診療、58.0%)。 研究と診療共に、法令や人を対象とする医学系 研究に関する倫理指針(倫理指針)等の実施の 遵守に困難を感じていると考えられる。特に診 療では、医療法等の法令が定められていること から、監視の必要性を痛切に感じているという 面と、診療の下で実施される場合、管理・把握 が難しいという点で困難と感じている可能性 などが考えられた。

研究審査と診療審査において重要と感じて いる項目については、「審査(技術、倫理審査)」

「実施条件」「説明同意の範囲」「新規性の定義」

と「費用負担・補償」の審査項目を重要と考え た医療機関が、研究審査と診療審査の両方で多 かった。多くの医療機関が、実施内容の審査と いう審査の一番の目的を重要と理解している と考えられた。

審査実施の有無においては、研究の実施内 容に関する「倫理的側面の審査」、「有効性の審 査」、「安全性の審査」、「実施体制の審査」、「説 明同意の審査」の5項目について、回答したほ ぼ全ての医療機関が審査を行っていると回答 していた。先述の重要と考える項目と同様、こ の結果からも、有効性の審査や安全性の審査等 の実施内容に関する項目の審査は、審査委員会

においてもその重要性が十分理解されている と考えることができる。

一方で、審査項目としての設定において「技 術的水準の審査」「経過・結果の報告」「経過・

結果の評価」「審査の必要性の判断」が低い実 施率だった。「技術的水準の審査」は、研究の 審査においては 83.8%の実施率であった。本 調査において多くの医療機関が重要と認識し、

かつ困難を感じていた項目が「審査(技術、倫 理審査)」であった。技術的な内容に関する審 査は手術・手技においては特に専門的な内容の 知識・経験が求められる項目である。医療機関 はその重要性を理解しているものの、実際の審 査では審査ができない状況である可能性が考 えられた。一方で、診療においても研究と同様 に、「技術的水準の審査」は重要と認識され困 難を感じていた項目だったにも関わらず、審査 項目としては 98%の医療機関で設定されてい た。医療法の改正により、高難度新規医療技 術・未承認新規医療品等による医療への対応が 必要となった際、厚生労働科学特別研究「高難 度新規医療技術の導入プロセスに係る診療ガ イドライン等の評価・向上に関する研究」(代 表者:國土典宏)[1] が実施されている。本研 究によって高難度新規医療技術の導入プロセ スに係る規程や申請書のひな形等が作成・提案 された為、現在、診療における「技術的水準の 審査」の実施率が高い可能性が考えられる。研 究における「技術的水準の審査」の審査につい ても、高難度新規医療技術の導入プロセスにお ける審査項目・審査方法への対応例が参考にな ることが期待できる。上記に加えて、研究に関 する倫理審査委員会の審査能力を向上するた めの取り組みが現在AMED等を中心に実施さ れており、臨床研究の技術的水準や科学的妥当 性の審査能力の向上が期待されている。研究に おける手術・手技の審査についても、同様の取 り組みを実施することで審査能力の向上に寄 与することも期待できる。また内容の専門的な 審査・評価については、専門家に委託する等の 対応も考えられる。現在、臨床研究法で定めら れる認定倫理審査委員会では技術専門員の役 割を設けており、参考書式1として技術専門員

(13)

評価書が設けられており、本制度も参考になる。

審査の実施が低かった項目結果に関する

「経過・結果の報告」(研究、83.8%;診療、

92.0%)と「経過・結果の評価」(研究、54.1%;

診療、76.0%)についても審査している医療機

関は、他の項目と比べて低い回答率だった。手 術・手技に限定してはいないが、海外でも臨床 研究の結果の報告が少ないことが報告されて おり[2][3]、日本でも同様の状況であると考え られる。また「結果の評価」については、本研 究で回答のあった医療機関において困難と感 じている医療機関は多かったものの、重要と感 じている医療機関は少なかった。研究実施の入 口での段階にあたる開始時の審査が、殆どの医 療機関で審査されているのと比較し、開始後の 途中経過と終了時の結果報告、またその評価

(有害事象を含む)については、現場での理解 や浸透は低いと考えられた。結果報告について は、ヘルシンキ宣言や倫理指針等でも求められ ている内容である。またWHO International Clinical Trial Registry Platform

(WHO-ICTRP)は2019年度より、臨床試験 登録の登録項目改訂により、研究の結果報告を 求めるようになった。また米国においても臨床 試験の結果登録に係るルールが改訂された

(42 CFR Part 11)[4]。これらの状況を踏ま え、結果報告の必要性の理解や審査での浸透を 図ることが求められる。また、倫理指針のガイ ダンス(平成 29 年2月一部改正)には、「他 の研究機関への試料・情報の提供に関する記 録」等の幾つかの見本と共に、詳細な説明が記 載されている。結果の報告や評価についても同 様に、見本や様式等の提案、説明の記載により、

実施内容の共有を図る等の対応も考えられる。

その他には、臨床研究法の運用通知においても、

別紙様式1:終了届出書や別紙様式3:定期報

告書が設けられた。これらの様式も医療機関が 結果報告・評価の体制整備を進める際には参考 になる。先述のWHO-ICTRPにおいても研究 の結果報告の項目を追加・改訂したことに伴い、

臨床研究データベース(jRCT)や日本医薬情 報センター臨床試験情報システム(JapicCTI)、

日本医師会治験推進センター臨床試験登録シ

ステム(JMACCT)、UMIN臨床試験登録シス テム(UMIN-CTR)の国内の臨床試験登録機 関は結果報告に関する入力項目を追加してい る。今後、試験登録を行った研究者は、試験結 果の登録も必要になった。このことにより、今 後、結果報告・評価が進むことが期待できる。

また、診療においては、有害事象ではなく術後 合併症を用語として使用する場合もあるため、

用語の整理が必要な可能性も考えられる。

「審査の必要性の判断」についても審査し ていると回答した施設は 81.1%であり、他の 項目と比べ多くなかった。審査の必要性の判断 は、必要時や問い合わせ時に確認しており、毎 回確認していない医療機関もある可能性が考 えられた。現在は、倫理指針のガイダンスへの 追記や改訂等によって、審査委員会への浸透を 図る等の対応も考えられる。

今後、審査の体制整備の役割を担う機関と して、手順整備については、研究は国・自治体 に、診療では学会に期待する医療機関が一番多 かった。手術に関する専門的な内容に関する対 応や解釈ついては、学会に期待する医療機関が 多いと考えられた。医療法に定められる高難度 新規医療技術への対応や保険収載に係る外保 連試案への申請、NCDの運営等については、

学会の関与が大きい。これらの実績等もふまえ て、学会への期待が大きかったと考えられた。

医療機関に期待する回答した医療機関は、医療 機関内における規程などの文書やルールの準 備を想定している可能性も考えられる。審査情 報の情報集約についても、約 90%近くの医療 機関は必要と考えていた。情報集約機関として は、学会、国、各医療機関等が期待されていた。

学会が関与しているNCD等を考えた場合、学 会に期待する医療機関が多く、jRCTを運営し ている国に期待していると考えられた。各医療 機関との回答は、各医療機関でも自機関に関す る情報を集約・検討したいという希望である可 能性もある。

医療法における高難度新規医療技術に係る 法令要件への対応状況関については、ほとんど の特定機能病院では法令要件について対応済 みとの回答であった、担当部門への責任者およ

(14)

び従業者の配置について、対応済みの回答が少 なかった(86.7%)のは、調査票の改定により 回答者が混乱、もしくは正確な訂正内容が伝わ っていなかった可能性が考えられる。本調査に 回答した特定機能病院以外の大学病院におい ても対応を進めている病院が多いことが明ら かになった。

今回の調査では、医学部附属病院と歯学部 附属病院、ナショナルセンター、特定機能病院 を対象とした。これは、高度な医療技術の開発 や提供、それに係る研究や導入に関する研修を 実施している医療機関を選定した。今回の調査 対象となった医療機関では、高度で先端的な手 術・手技を実施していると考えられる。今回の 調査により、国内における新規の手術・手技の 審査における審査の現状に関する情報が得ら れたと考えられる。今回、特定機能病院を除く 医学部附属病院と歯学部附属病院からは、非該 当との連絡や回答辞退をした医療機関が多か った。新規の手術・手技を実施しているのは特 定機能病院が多い可能性が考えられる。今後、

同様の調査を実施する場合は、特定機能病院に 対象を限定することを考慮しても良いかもし れない。

本研究の限界の1つ目として、有効回答率 の低さが挙げられる。特にナショナルセンター からの回答が3施設のみであったため、ナショ ナルセンターに関する情報が少なく、ナショナ ルセンターについての充分な検討ができなか った。2点目は、手技に関する情報が得られて いない可能性が考えられる。医療機関からの審 査に関する内容が多かったことから、倫理審査 委員会や医療安全、高難度新規医療技術の審査 に関する回答が多かった可能性が考えられる。

本調査の回答は、手術に対する回答が多くを占 めており、ゲノム編集の手技に関する対応など の手技に関する情報が得られていない可能性 が考えられる。

E.結論

本研究により、研究と診療における審査に おける各医療機関の現状が明らかになった。新 規の手術・手技に関する審査について、医療機

関は質問した全ての項目において広く困難を 感じていた。特に「審査(技術、倫理審査)」

や「費用負担・補償」、「監視範囲・実効性・強 制力の不足」等について困難を感じていた。研 究と診療共に、「審査(技術、倫理審査)」「実 施条件」「費用負担・補償」「説明同意の範囲」

「新規性の定義」等の審査に関する項目を重要 と考えている傾向が見られた。「審査の必要性 の判断」や「技術的水準の審査」「結果の報告・

評価」の項目は、医療機関によっては審査され ていないことが明らかになった。

「技術的水準の審査」のように審査が実施 されておらず、加えて重要かつ困難と回答のあ った項目は、審査業務の質向上に関する取り組 みや、業務が進むような倫理指針ガイダンスの 改訂や様式の提供、解説の追加を検討すること が望まれる。困難がありながら重要との回答が 少なかった結果の報告・評価に関する項目など は、上記に加えて内容に関する説明や必要性の 認識を上げることも求められる。その他の困難 と報告のあった項目についても今後の対策・対 応についてさらなる検討が必要である。今後の サポートや検討を進める際には、研究と審査の 違いについて配慮が必要であり、審査体制の整 備を進める場合は、関連学会、国・自治体等な どで進めていくことが期待される。

F.健康危険情報 特になし

G.研究発表 1. 論文発表 特になし

2. 学会発表 特になし

H.知的財産権の出願・登録状況 (予定を含む。)

1. 特許取得 特になし

2. 実用新案登録 特になし

(15)

3.その他 特になし

参考文献

[1] 平成28年度厚生労働科学特別研究「高難 度新規医療技術の導入プロセスに係る診療 ガイドライン等の評価・向上に関する研 究」(代表者:國土典宏), 2016.

[2] ClinicalTrials.gov, “Trends, Charts, and Maps,” 2019. Available:

https://clinicaltrials.gov/ct2/resources/tre nds. [アクセス日: 2019-05-14].

[3] N. Grover, “EU universities are

miserably lax at reporting clinical trial results, analysis suggests,”2019.

Available:

https://endpts.com/about-endpoints-news/

#Natalie-Grover. [アクセス日:

2019-05-14].

[4] ClinicalTrials.gov PRS, “Final Rule (42 CFR Part 11) Information,” 2018.

Available:

https://prsinfo.clinicaltrials.gov/. [アクセ ス日: 2019-05-14].

(16)

Appendix 1

1. 新規の手術・手技に関する研究審査における審査項目

審査項⽬

全医療機関 介⼊試験

審査経験あり ⻭学部附属病院 ⾮特定機能病院 (n=54) (n=34) (n=6) (n=14) n % n % n % n % 審査 審査の必要性の判断 40 74.1 27 79.4 4 66.7 9 64.3

実施

倫理的側面の審査 48 88.9 34 100.0 4 66.7 10 71.4 有効性の審査 47 87.0 33 97.1 4 66.7 10 71.4 技術的水準の審査 39 72.2 28 82.4 4 66.7 8 57.1 安全性の審査 48 88.9 34 100.0 4 66.7 10 71.4 実施体制の審査 48 88.9 34 100.0 4 66.7 10 71.4 説明同意の審査 48 88.9 34 100.0 4 66.7 10 71.4 結果 経過・結果の報告 42 77.8 29 85.3 3 50.0 8 57.1 経過・結果の評価 27 50.0 18 52.9 3 50.0 6 42.9

表 3.  新規の手術・手技に関する研究審査において困難と感じる項目(複数回答可)  表 4.  新規の手術・手技に関する研究審査において重要と感じる項目( 3 項目まで回答可)審査項⽬ 研究審査経験あり 医学部附属病院  特定機能病院 (n=37) (n=43) (n=40)         n %            n %            n  %   審査項目 新規性の定義 20 54.1 20 46.5 17 42.5 実施条件19 51.4 23 53.5 20 50.0 審査(技術、倫
表 6.  新規の手術・手技に関する研究審査について、各医療機関の回答状況  全医療機関  ナショナル  センター  医学部  附属病院  特定機能病院  ⻭学部  附属病院  配布数  166  7  134  85  22  回収数  114  3  91  63  17  有効回答数 63  3  50  45  7  有効回答率(%)  38.6  42.9  37.3  52.9  31.8  回答辞退数  45  0  38  18  7  非該当数 6  0  3  0  3  診療審査経験あ
表 9.  新規の手術・手技に関する診療審査において重要と感じる項目(3 項目まで回答可)  (4)  審査体制整備を担う機関  新規の手術・手技の審査体制を整える場合 「①  審査手順の整備」を担当するのが望まし い機関について、新規の手術・手技の診療につ いて審査経験があると回答した医療機関 50 施 設のうち、 19 施設(38.0%)は、 「学術団体(学 会など)」が担当するのが望ましいと考えてい た。「国・自治体」と「各医療施設」については、それぞれ15施設(30.0%)と12 施設(24%)が望
表 2.  新規の手術・手技に関する研究審査において困難と感じる項目(複数回答可) 表 3.  新規の手術・手技に関する研究審査において重要と感じる項目(3 項目まで回答可) 審査項⽬ 全医療機関 介⼊試験 審査経験あり  ⻭学部  附属病院  ⾮特定機能 病院 (n=54) (n=34) (n=6) (n=14)       n %          n %   n %   n  %   審査項目 新規性の定義25 46.3 19 55.9 3 50.0 8 57.1 実施条件 27 50.0 18 52
+7

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