はじめに
保育士 ・ 幼稚園および小学校教員養成課程における 音楽関係科目「音楽」では,歌いながらピアノ伴奏が できるための「弾き歌い」や,『バイエル1)』などの教則 本を活用し,保育,教育現場で実践活動を行うために 必要な音楽の知識と技能習得を目指す科目である.
厚生労働省の掲げる「指定保育士養成施設指定基準2)」
「第1 性格」には,「指定保育士養成施設は,保育に 関する専門的知識及び技術を習得させるとともに,専 門的知識及び技術を支える豊かな人格識見を養うため に必要な幅広く深い教養を授ける高等専門職業機関と しての性格を有する.」とある.「音楽」に関わる科目 は,この専門的知識及び技術を大学等の授業で身に付 けるべき内容である.『保育所保育指針3)』,『幼稚園教育 要領4)』の中で,音楽や音に関する内容として挙げられ ているのは,5領域「表現」ねらい及び内容より,「生 活の中で様々な音,色,形,手触り,動きなどに気づ いたり,楽しんだりする.」「感じたこと,考えたこと などを音や動きなどで表現したり,自由にかいたり,
つくったりする.」「音楽に親しみ,歌を歌ったり,簡 単なリズム楽器を使ったりする楽しさを味わう.」であ る.
『小学校学習指導要領5)』「第2章第6節音楽」におけ る各学年の目標及び内容の表現の項目には⑴歌唱の活 動,⑵器楽の活動,⑶音楽づくりの活動,⑷表現教材 等についての指導を行うことが求められている.これ らを大学の「音楽」授業内で取り扱うには①歌う,②
ピアノが弾ける,③歌いながら弾ける,④表現活動に 活かせる音楽づくり,までの過程ができることを目標 としている.さらに,実際の教育現場においては,生 活や遊びを通して子どもたちの音楽表現活動を支える 応用的な要素を含んだ「音楽」でなければならない.
科目としての「音楽」の中で,楽譜通りにピアノが弾 けるよう,音やリズムの間違いを指摘し,学生の演奏 技術に対する問題点を修正していく従来の指導ではな く,学生自身が身体で音やリズムを体感しながら指導 者としての資質を身に付けるために音楽表現を学ぶこ とは重要である.
入学時において学生たちのピアノ学習経験は様々で あり,限られた時間の中で学生たち個々の能力を最大 限に引き出すために,教材や指導法について多くの研 究がなされているが,本研究では「保育内容 ・ 表現」
と関連付けて行うピアノ指導の在り方を考察したい.
先行研究として野村(20066))田原(20147))(20158))を 挙げることができる.野村は「音楽」と「表現」の音 楽にかかわる専門科目間の連携に関する研究を行って いる.1年次に「音楽Ⅰ⑴」(通年開講)履修と同時に
「保育内容 ・ 表現」(前期開講)を履修した学生と,1 年次で「表現」を履修し2年次で「音楽Ⅰ⑵」を受講 した学生を対象としたアンケート調査の結果,「保育内 容 ・ 表現」で感じた「音楽Ⅰ」での習得の必要性があ るものとして,応用力,指導力,表現力等に加え,即 興力,初見 ・ 読譜力,演奏技術,伴奏付け等について,
学生たちは習得の必要性を認識したものと考察してい る.また,1年次「表現」の授業で手遊びや,コレオ
* 立正大学社会福祉学部非常勤講師
キーワード:保育士,教員養成課程,ピアノ指導,表現,リズム
保育士・幼稚園および小学校教員養成課程における ピアノ指導のあり方に関する研究
―「表現」と関連付けることを中心に―
吉 田 惠*
グラフィを体験したことで,2年次の「音楽」におい て学生たちは,楽譜を丁寧に見るようになったことや 楽曲を大きく捉え,まとまりのある表現が可能になっ た,というアンケート結果だったことを報告している.
このことからも,「音楽」と「表現」の連携の試みは有 効であったことが分かる.しかし,現状としては自力 での伴奏付けや,即興的音楽活動を行うことに対して の課題も残されている,としている.そして,その要 因として,やはりピアノ演奏技術に対する苦手意識や,
不安が挙げられており,これらは各養成校に共通した ものであるように思われる.
田原は,初級者を対象としたピアノ伴奏力養成につ いての学習プログラムを作成した.そこでは,伴奏に 限らず行進曲,駆け足,スキップなどのリズム楽曲を 演奏する力や,実際の歌や楽曲を演奏したり聴いたり して身体で感じ,経験として持つことが必要であると 述べている.また,『幼稚園教育要領』5領域のねら い,内容に関して,ピアノ伴奏が持つ役割と,5領域 とピアノ伴奏力との関連について「表現」領域のみな らず,他の領域すべてと関わりを持った指導を行うこ とを報告している.
本研究では「音楽」と「表現」の共通点を探り,本 来は別々に行っている2つの科目を関連付けて行うこ とにより,15回という限られた授業回数で学生たちに 明確な指導を行うためにどのようなことができるのか,
提唱したい.
ピアノを弾くうえで困難に感じていたリズムを「保 育内容 ・ 表現」の授業で実践し,「保育内容 ・ 表現」で 身に付けたリズムを「音楽」の授業で活用することに より,身体表現と音楽が直接結びつき,意義深い指導,
さらに効率的な授業展開の可能性を示すことができる と考えられる.
1 .保育士・幼稚園および小学校教員養 成課程における「音楽」授業の現状
筆者は「音楽」科目を担当して12年,これまでに延 べ500人程の学生を指導してきた.「音楽」授業の現状 として,担当教員1名が1クラス6~8名程度の学生 にピアノや歌唱,弾き歌いの指導を行っている.ピア ノの指導教員は複数名おり,名簿によって学生が振り 分けられ各教室にて,共通課題を達成することを目的 としている.1コマ90分のグループレッスン形態の授 業において,個々のピアノ技術力に応じて指導を行う
のは非常に困難な課題である.ピアノを弾くというこ とだけならば,幼少期から音楽教室等で経験を積んで いる学生もいるが,ピアノを弾きながら,歌う,表現 する,伝える,という動作は,ほとんどの学生が大学 の授業において初めての経験と言えよう.
カリキュラムは大学によって様々であるが,通常で は,1年次ないし2年次に「音楽」を習得したものが,
次年度「表現」を受講することとなっている.厚生労 働省と文部科学省の標準的な単位数から見て,本稿で は「音楽」,「保育内容 ・ 表現」ともに,年間15回とし て検討していく.
2 .「音楽」において学生が身に付けるべ き力について
文部科学省「幼稚園教員の資質向上について-自ら 学ぶ幼稚園教員のために9)」では,幼稚園教員に求めら れる専門性として,遊びを通じて総合的に指導する力 が求められている.さらに,得意分野の育成として例 えば,「体を動かすことを通じての指導であったり,
(中略)知識や技術に立脚した活動や内容にとどまら ず,幼児の興味を引き出し,幼児の充実感を味わうこ とができるような,幼児が豊かな活動につながるもの である.」と記されている.学生にとっても「音楽」の 授業において,ピアノを学ぶこととは,単に演奏技術 を身に付けることだけでなく,幼児の豊かな活動をう ながすために,身体表現活動と関連した技術を身に付 けることが必要である.同じく,文部科学省「短期大 学における専門的職業能力育成の特徴例10)」では,幼稚 園教諭養成に必要な能力を整理し,短期大学と幼稚園
(就職先)双方に対して,共通して,重視する能力を抽 出しこれについて質問している.質問項目は①幼稚園 教諭としての資質能力,②総合的指導力,③個別的 ・ 具体的保育知識 ・ 実践力,④保護者 ・ 地域との関わり,
⑤園内における協働性 ・ 関係構築性,⑥専門的知識 ・ 技術,⑦子育て支援,以上7つの項目で,そのうち特 に③は,「音楽」や「保育内容 ・ 表現」と深く関わる内 容である.
③の項目について,調査結果を見ると,「ピアノ技 術」「絵画造形能力」については,短期大学において最 も重視されているが,現場においては,それ以上に「子 どもを見守り支援する力」「子どもの個別性に対応する 力」「豊かな表現力」が重視されている.このことか ら,学生を指導する上で,ピアノ技術と表現力は常に
結びつけて活用すべきものであると考えられる.
同研究の「幼稚園教諭に必要な専門的職業能力の5 領域に基づくモデル ・ コアカリキュラムの試行11)」によ ると,専門的知識 ・ 技術 ・ 実践力の項目の到達目標に,
「運動やリズム表現,造形表現,音楽表現を子どもに指 導する基本的な考え方を理解し,基礎となる技法を身 につける.」「子どもの歌が歌えるレベルのピアノ技術 の習得」と記されている.つまり,音楽表現を子ども に指導する基本的な考え方を理解し,基礎となる技法 を身に付けることと,ピアノ技術の習得とは非常に関 連性が高い内容だと言える.
3 .関連させた指導について
『保育所保育指針』で述べられている,「表現」の保 育のねらい,及び内容②において,「保育士等と一緒に 歌ったり,手遊びをしたり,リズムに合わせて体を動 かしたりして遊ぶ.」とある.これは,『幼稚園教育要 領』には,掲載されていない内容である.『保育所保育 指針解説書12)』には,「幼い子どもは,母親の胎内で聞い ていた『拍』に安心感と親しみを持っているようです.
わらべ唄や子守歌の拍子が母親の心臓の音と重なり,
子どもに安らぎを与えていること,刺激の強い音楽や 機械音に不安感を持つことなど,保育士等は子どもの 環境としての『音』に敏感でなければなりません.」と ある.これらはピアノを指導する上で,学生に読譜力 をつけさせミスなく演奏させることではなく,「拍」を 感じることや,「音色」にも注意を払って演奏できるよ うにすることを目的としなければならない.「表現」に 掲げられた,ねらい及び内容を踏まえて,「音楽」での ピアノ指導と関連させて指導する必要がある.そこで,
「音楽」と「表現」に関連する内容を整理して区分する ことを試みた.その理由として一概に「音楽」の授業 といっても,学生によって保育士志望,幼稚園及び小 学校教員志望,または両方の免許取得を希望している 学生もいることから,最終的にどこを目指すにしても 共通した内容は関連付ける必要がある.本稿では,「用 語」「教材」「内容」「スケジュール」の4つの項目につ いて区分し,取り上げる.
3 - 1 「用語」の統一
音符やリズムの読み方は,例えば四分音符(♩)を ひとつ例に挙げても,たん,たー,1ト,など様々な 読み方がある.このような読み方を提唱した起源と言
われるフランスのガラン-パリ-シュヴェ方式13)による と,「音符の長さは,それを発音すると,そのリズムの 効果が生まれることになる一連のリズム名を使うこと によって,習得されていく」とある.日本で使用する 学校の教科書に用いられる音楽用語の表記は,原則と して『教育用音楽用語14)』によることとなっている.そ の中で凡例「1記載範囲等について⑵本書は,文部科 学省の音楽関係刊行物及び音楽科の検定教科書におい て用いられる音楽用語の表記のよりどころとするため に定めたものであって,学習指導の内容や範囲等に触 れたものではない.」「5 その他⑴用語の表記や備考 の説明は,一般には多くの方法があるので,ここに書 かれたものだけが正しく他は誤りであるということに はならない.その点,学校での指導においては,柔軟 に対応する配慮が望まれる.」と表記されている.つま り,用語について読み方の表記はあるものの,実際の 現場で指導する際,どのような言葉で用語を扱ってい るのかは,明確にされていない.小学校の音楽の教科 書(教育出版)では,四分音符(♩)は「たん」,八分 音符(♪)は「た」と表記されている.保育園,幼稚 園での指導を小学校教育につなげる意味で,用語を統 一することは必要である.さらに,用語の意味を確認 し,これらを「音楽」と「表現」の授業で統一的に,
同時に用いることで,より質の高い学習効果が期待で きる.今回取り上げる「音楽」,「表現」に共通して出 てくる用語については,下記(表)『小学校学習指導要
表 『小学校学習指導要領』第 2 章 第 6 節音楽 指導計 画の作成と内容の取り扱い より
領』の「音符,休符,記号や音楽に関わる用語」で扱 われる範囲とする.
上記の表に明記されている用語より,「言語による表
現用語」として必要と思われるものを提示する.音符,
休符の長さは,♩を1とした場合の長さとする.
音符と休符の種類,長さを表す記号
名称 長さ 言葉による表現用語
全音符 ♩×4 ターアーアーアン
付点2分音符 ♩×3 ターアーアン
2分音符 ♩×2 ターアン
付点4分音符 ♩×1.5 ターア
4分音符 ♩×1 タン
付点8分音符 ♩×0.75 ※ 16分音符と組み合わせる(付点8分音符単独での 使用頻度が少ないため)
8分音符 ♩×0.5 タ
16分音符 ♩×0.25 ※ 付点8分音符と組み合わせる(16分音符単独での 使用頻度が少ないため)
タッカ ♩×0.75と♪×0.25 タッカ
4分休符 ×1 ウン
8分休符 ×0.5 ウ
3 - 2 取り扱う「教材」について
「音楽」の授業でピアノ演奏の基礎技術を習得した学 生たちは,「表現」の授業で体感することにより,さら に理解しやすくなる.首都圏の各大学のシラバスを参 照し,幼児教育に関わる教員養成課程で使用頻度の高 い教本としては次の3点を挙げられる.
・『こどものうた20015)』チャイルド社
・『続こどものうた20016)』チャイルド社
・『幼児のための音楽教育17)』教育芸術社
現場で子どもたちを指導する際に必要とされる遊び 歌との結びつきを考え,小学校音楽科共通教材を含ん だ,使用される機会の多い曲を以下に11曲挙げる.
・きらきら星 武鹿悦子 日本語詞 フランス民謡
・ブンブンブン 村野四郎 日本語詞
ボヘミア民謡
・はをみがきましょう 則武昭彦 作詞 ・ 作曲
・手をたたきましょう 小林純一 改詞 作曲者不明
・めだかの学校 茶木 滋 作詞 中田喜直 作曲
・チューリップ 近藤宮子 作詞 井上武士 作曲
・ちょうちょう 作詞者不明 ドイツ民謡
・おかあさん 田中ナナ 作詞 中田喜直 作曲
・おばけなんてないさ 槇みのり 作詞 峯 陽 作曲
・うみ 文部省唱歌 林柳波 作詞
井上武士 作曲
・思い出のアルバム 増子とし 作詞 本多鉄麿 作曲
3 - 3 「内容」
「音楽」と「表現」の両方で扱う内容について下記に 例を挙げる.これらは,音価や用語の基礎習得を目指 すものである.ピアノの指導では個人的に指摘しなけ ればならない内容もあるが,「音楽」の授業内の一部で
「表現」と共通した教材を取り扱うことで,予習復習を 兼ね双方の授業で理解することができる.ピアノ伴奏 については,授業内で使用している教本を弾けるよう にすることが前提だが,必ずしも楽譜通りではなく,
学生のレベルに応じて簡易伴奏などにアレンジ可とす る.前項の「教材」から,保育園,幼稚園,小学校の 教材として一般的によく扱われる曲を取り入れ,音価 が単純なものから複雑なものへと順に並べた.
① きらきら星〈4分の4拍子,4分音符〉
【表現】4分の4拍子の,基本となる4分音符のリズ ムに合わせて手拍子や,歩くことで拍子の感覚を身 に付ける.
【ピアノ】一定の速さで弾くことに慣れる.
② ぶんぶんぶん〈4分の2拍子,8分音符,4分休符〉
【表現】4分音符の歩くことに対し,8分音符は走る ことで細かく刻まれるリズムを区別して体感する.
【ピアノ】音符だけでなく,休符を正しく理解し,感 じることで「タン ・ タン ・ タン ・ ウン」の4拍目,
4分休符を息つぎのタイミングとして捉え,より弾 きやすく,歌いやすくなる.
③ はをみがきましょう〈付点8分音符と16分音符の 組み合わせ〉
【表現】童謡や唱歌にもよく出てくる「タッカ ・ タッ カ」のリズムはスキップすることで体感する.
【ピアノ】メロディに,このリズムがあることを意識 し,歌いながら弾けるようにする.
④ 手をたたきましょう〈4分音符と8分音符の組み 合わせ〉
【表現】手拍子で「タン ・ タタ」,ステップで「タン ・ タン」を同時に行う.又,手拍子とステップのリズ ムを逆にするなど,常に新鮮な感覚を持ち,単調な 動きにならないように配慮する.
【ピアノ】左手4分音符「タン ・ タン」の伴奏に,右 手「タン ・ タタ」のリズムが的確に入れられるよう
になる.
⑤ めだかの学校〈付点4分音符と8分音符の組み合 わせ〉
【表現】4分音符「タン」8分音符「タタ」が,タイ によって組み合わされたリズム.音価が長くなると,
間を感じるとることが難しくなるので,曲に合わせ て揺れたり,強弱の変化をどう表現するのか,感覚 だけでなく自身が考えて動けるようにする.
【ピアノ】言葉では,記号の意味を理解していても,
実際にはどのくらいの音量なのか,音量だけでなく どのようなニュアンスなのか,pp,p,mp,mf,
crescendo,などの強弱記号を意識できるようになる.
⑥ チューリップ ちょうちょう〈8分音符と4分音 符の組み合わせ〉
【表現】「タタ ・ タン」のリズムを手拍子や,ステッ プで体感.④での「タン ・ タタ」 との違いも認識す る.
【ピアノ】④同様に,左手4分音符「タン ・ タン」の 伴奏に,右手「タタ ・ タン」のリズムが的確に入れ られるようにする.フレーズ感を大切にする.
⑦ おかあさん〈シンコペーション〉
【表現】これまでの1拍目に強拍がくるパターンと違 うため,まずはこの「タ ・ タン ・ タ」のリズムを理 解するために,例えばデザート,クリーム,などの 日常でよく使われる言葉を当てはめて理解していく.
【ピアノ】左手「タン ・ タン」の伴奏に,右手「タ ・ タン ・ タ」のメロディを入れることを多くの学生た ちは困難に感じている.これまでの授業で積み重ね た,手拍子とステップを同時に行う練習や,強弱の 変化など,応用力を身に付ける.
⑧ おばけなんてないさ〈三連符〉
【表現】三連符のリズム「タタタ」も,⑦でのシンコ ペーション同様,トマト,パンダ,などの言葉を当 てはめて手拍子や,ステップをすることで体感する.
【ピアノ】メロディには,三連符の後に「タッカ」の リズムがくるので,スキップとのつながりも応用す る.
⑨ うみ〈3拍子〉
【表現】これまでと比べて特別新しいリズムが出てく るわけではないが,4分の3拍子を意識して,強弱 弱のフレーズを感じて揺れることができる.
【ピアノ】4拍子の曲と比べて,曲調の違いや変化を 感じとる.また,1小節をひとまとまりで感じて,
歌いながら弾けるようにする.
⑩ 思い出のアルバム〈8分の6拍子〉
【表現】8分の6拍子は,単純拍子や複合拍子につい ての説明し,2拍子系でリズムがとれるようにする.
手拍子やステップ,曲に合わせて揺れることができ る.
【ピアノ】2小節ごとのフレーズを意識してメロディ が弾けるようになる.メロディの音域も広いので,
運指についての注意も必要だろう.
3 - 4 「スケジュール」
前項の内容をもとに,15回授業でのスケジュール,
学習内容を提示する.
第6回⑥以降は,さらに内容を深め,理解できるよ う2週にわたり学習することが望ましい.学生にとっ て,1週間で曲を仕上げるのは困難なことかもしれな いが,「音楽」と「表現」の両方で共通した内容を組み 込むことで練習をし忘れることなく,授業外学習への 意欲につなげることができる.
学習曲 学習内容(言葉での表現)
第1回 ① きらきら星 4分の4拍子,タン・タン 第2回 ② ぶんぶんぶん 4分の2拍子,タンとタタの区別 第3回 ③ はをみがきましょう タッカ
第4回 ④ 手をたたきましょう タン・タタ
第5回 ⑤ めだかの学校 ターア・タ
第6回 ⑥ チューリップ タタ・タン
第7回 ⑥ ちょうちょう タタ・タン,前回の内容を復習,応用 第8回 ⑦ おかあさん タ・タン・タ(シンコペーションのリズム)
第9回 ⑦ 〃 前回の内容を復習,応用
第10回 ⑧ おばけなんてないさ タタタ(3連符)
第11回 ⑧ 〃 前回の内容を復習,応用
第12回 ⑨ うみ 4分の3拍子についての理解
第13回 ⑨ 〃 前回の内容を復習,応用
第14回 ⑩ 思い出のアルバム 8分の6拍子についての理解 第15回 ⑩ 〃 前回の内容を復習,応用,まとめ
3 - 5 教員間の意思疎通
「音楽」担当のピアノ指導者が複数名いる中で,「表 現」にも関わっている担当教員もいるが,そうでない 教員間のやりとりは実際にシラバスを通じてしか図ら れていないことも珍しくない.文部科学省「学習指導 要領等の理念を実現するために必要な方策18)」でも「カ リキュラム ・ マネジメント」の重要性をあげており,
教育課程全体を通しての取り組みとして「教科等間の つながりを捉えた学習を進める観点から,教科等間の 内容事項について,相互の関連付けや横断を図る手立 てや体制を整える必要がある」と記されている.やは り関連する科目において教員間の意思疎通をはかり,
常に学生の状況や授業内容,進度について共通理解す ることが最も重要であると考える.
4 .考 察
本研究では『保育所保育指針』,『幼稚園教育要領』,
『小学校学習指導要領』からの見解をもとに,「音楽」
の授業においてのピアノ指導のあり方について考察し た.保育士,幼稚園教諭,小学校教員になるためには ピアノが弾けなくてはならない,「音楽」=ピアノ,と 誰もが連想するほど,ピアノ学習に関して学ぶ学生側 も,指導する教員側も様々な課題を抱えている.規定 の時間内に指導できる内容には限界もあるが,共通し た内容を関連付けることにより,効率的な授業展開が できることを明らかにした.さらに,「表現」と「音 楽」を関連付けるために4つの区分をすることで,指 導を行う上でより明確な目標を設定することができた.
1つ目に区分した「用語」について,音符や記号に ついて指導する際の読み方を統一することで保育園,
幼稚園から小学校への音楽教育にもつながり,より分 かりやすい指導ができることが分かる.2つ目の「教 材」について,幼児や子どものための歌が載っている 教本は数多くあるが,教育課程のある大学においてシ ラバスを見る限りでは,いわゆる昔からある定番の曲 が学習課題曲にされていることが分かった.子どもた ちに歌い継がれる曲は,保育,教育者から教わるだけ でなく,親から子へ伝わることも多いため,特別に音 楽の教育を受けなくとも一緒に口ずさむことは出来る.
しかし,保育,教育者を目指す学生たちには口ずさむ 程度とはいかない.歌に伴奏を付け,ピアノを弾きな がら歌い,さらに子どもたちの表現活動を支えるため には曲に対する知識と理解が必要となる.数多くある 曲から適切な教材を選定することは,重要な課題であ る.3つ目の「内容」について,ピアノ学習経験年数 に関わらず,基本に戻り理解することは幼児や子ども を指導する上で非常に大切なことである.音やリズム を,動きを取り入れて体得することは有効な手段であっ た.4つ目の「スケジュール」について,15回という 限られた時間の中で,今回11曲を例に取り上げたが,
曲目や扱うスケジュールについては,これに限ったも のでなくとも理解の不十分であった項目は複数回行い,
容易にできた内容はそれ程時間をかける必要はないだ ろう.
ピアノを苦手と感じている学生たちを,保育,教育 現場で活用できるピアノ技術を身に付けさせるかとい うことは,どこの大学でも課題としている.そのよう な学生が,もし一年次の「音楽」でピアノ学習につま ずき,音楽自体までも嫌いになってしまったら,その 先の「表現」につなげることなど不可能に近いだろう.
別々の単位の授業ではあるが,「音楽」と「表現」を関 連付けて行うことで,それぞれがより身近に感じられ,
身体表現と音楽が直接結びつき,意義深い指導,効率 的な授業展開の可能性を示すことができたと言える.
おわりに
学生たちの声を聞くと,音楽自体は嫌いではないし,
ピアノが弾けるようになれば自分自身も一層楽しんで 保育,教育活動ができるであろうことは,承知してい る.しかし,そこには,技術を身に付けるための練習 時間や,楽器を確保するための環境など,様々な問題
がある.指導する上で,意義のある工夫を凝らした授 業を行うことで,学生たちの抱える問題に少しでも寄 り添うことができるのではないだろうか.
今後は,1年次「音楽」,2年次「表現」という授業 のカリキュラム自体についても検討する必要があろう.
「音楽」と「表現」を平行して行う,または1年次「表 現」,2年次「音楽」など方法は様々でもよいのではな いだろうか.
「音楽」の授業でもピアノ演奏技術の養成に頼るばか りでなく,たとえ実際の教育現場にピアノが置かれて いなくても,自分の力で音楽活動を支えることができ るための指導法として「表現」と関連付けることは,
有効であった.この2つの授業の関連性を活かした授 業展開について,今後も研究を続けていきたい.
注および参考文献
1) バイエル(1954)『バイエルピアノ教則本』音楽之友社 2) 全国保育士養成協議会ホームページ 保育士養成研究所・
第三者評価について 資料「指定保育士養成施設指定基準」
(別紙1)
http://www.hoyokyo.or.jp/nursing_hyk/reference/index.
html(2017.9.23閲覧)
3) 厚生労働省(2008)『保育所保育指針』フレーベル館,p.18 4) 文部科学省(2008)『幼稚園教育要領』フレーベル館,p.12 5) 文部科学省(2008)『小学校学習指導要領』東京書籍,p.75 6) 野村公江(2006)「保育者養成機関における音楽にかかわる 専門科目間の連携に関する研究―「表現Ⅰ」と「音楽Ⅰ」―」
中国四国教育学会 教育学研究紀要52号 pp.335-340 7) 田原昌子(2014)「子どもの表現のためのピアノ伴奏法Ⅰ―
初級者を対象としたピアノ伴奏力養成について―」『プール 学院大学研究紀要』第55号 pp.123-137
8) 田原昌子(2015)「子どもの表現のためのピアノ伴奏法Ⅱ―
子どもの感性を育むピアノ伴奏力養成について―」『プール 学院大学研究紀要』第56号 pp.153-168
9) 文部科学省(2002)「幼稚園教員の資質向上に関する調査研 究協力者会議報告書」
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/
019/toushin/020602.htm(2017.9.22閲覧)
10) 文部科学省(2011)「短期大学における専門的職業能力育成 の特徴例」(文部科学省2009-2010年度先導的大学改革推進 委託事業「短期大学における今後の役割・機能に関する研 究」 (研究代表者 佐藤弘毅)より抜粋)pp.1-3
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo4/
037/siryo/__icsFiles/afieldfile/2014/03/28/1345096_4.pdf
(2017.7.30閲覧)
11) 同上 pp.6-10
12) 厚生労働省『保育所保育指針解説書』p.91
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/
kodomo/kodomo_kosodate/hoiku/index.html(2017.7.30閲 覧)
13) 柴田南雄・遠山一行総監修(1993)『ニューグローヴ世界音 楽大辞典第5巻』講談社 p.35
14) 文部科学省『教育用音楽用語』教育芸術社,p.3 15) 小林美実『こどものうた200』チャイルド社 16) 小林美実『続 こどものうた200』チャイルド社
17) 神原雅之・小林恵津子『幼稚園教諭・保育士養成課程 幼 児のための音楽教育』教育芸術社
18) 文部科学省ホームページ「学習指導要領等の理念を実現す
るために必要な方策」
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/
siryo/attach/1364319.htm(2017.10.22閲覧)
(2017年11月18日受理)