平成 25 年 7 月 23 日
米国航空部門でのバイオ燃料導入に関する最新動向
~バイオジェット燃料関連動向とその他バイオ燃料政策動向~
米国におけるバイオ燃料推進の基本政策としては、自動車燃料へのバイオ燃料混合を義 務付ける再生可能燃料基準(Renewable Fuel Standard、RFS)があるが、昨今の景気低 迷や自動車燃費向上によるガソリン需要減少傾向を受け、現状のままでは 2022 年に 360 億ガロン(約 1.36 億 KL)のバイオ燃料混合という最終的な目標達成は非常に困難との見 通しが強い。 こうした中、バイオ燃料の普及が期待されている分野として航空部門があり、国防総省 (Department of Defense)・民間航空企業と官民での取組が続けられているが、先進型バ イオ燃料開発と言う観点から、石油由来ジェット燃料対比でのコスト高の懸案は同様であ り、政策上の議論の対象になっている。民間航空企業による取組では 2011 年後半に行わ れたテストフライト以降、2012 年は実用化に向けて大きく前進したようには見られないが、 国防総省はバイオジェット燃料開発・生産企業に対する助成を続けている。 本レポートではこうした航空部門でのバイオ燃料の最近の取組みに関し報告する。 1.国防総省による先進型ドロップインバイオ燃料生産プロジェクト
2012 年 6 月、国防産業法(the Defense Production Act)の第 3 章プログラムに基づ き国防総省の先進型ドロップイン(既存のエンジンやインフラにそのまま適用てきる) バイ オ 燃料生産 プ ロジ ェクト に 関する 資金 提供 公 募(Funding Opportunity Announcement、FOA)が発表された。 ・ 先進型ドロップインバイオ燃料生産プロジェクトの目的は、コスト競争力のある 先進型バイオ燃料生産能力への民間部門の投資を促進するための官民のパートナ ーシップを育てることである。 ・ 本プロジェクトはドロップインバイオ燃料に関し、米国内で一つ以上の完成され たバリューチェーンを確立することを目的としている。このバリューチェーンに 含まれるのは、原料生産、物流、ブレンド、輸送から、国内の商業規模の統合型 バイオリファイナリーに関する設計、設備の改造または新設、操業、検証、資格 認定までが含まれる。 過去 9 ヶ月間にわたり、国防総省はエネルギー省(Department of Energy、DOE) や農務省(Department of Agriculture)、空軍研究所(Air Force Research Laboratory) と協力し、先進型ドロップインバイオ燃料生産プロジェクトの第 1 フェーズにおける
J
J
J
P
P
P
E
E
E
C
C
C
レ
レ
レ
ポ
ポ
ポ
ー
ー
ー
ト
ト
ト
2013 年度第
第
1
1
0
0
回
回
財政支援を得るための、およそ 20 件以上の企業からの申請を検討してきた。 (1)第 1 フェーズ
2013 年5 月27 日、国防総省は3件の企業(Emerald Biofuels、Natures BioReserve、 Fulcrum Biofuels)に合計 16 百万ドルを支援することを発表した。
・ これらの企業はドロップインタイプの軍の品質規格に適合する航空燃料および船 舶用ディーゼル燃料を少なくとも 1.5 億ガロン生産する能力のある製油所に関す る計画を立てることとなる。
・ 生産が計画されるバイオ燃料は、非食物系の獣脂(animal fat)、油料種子作物(oil seed crop)、廃棄物残渣(waste residue)を主な原料とし、JP-5 や JP-8、海軍 および空軍規格のジェット燃料、F-76 海軍規格ディーゼルに同等の品質となる。 ・ 重要なのは、これらの企業は 1 ガロン当たり 4 ドル未満の価格を米国政府に提示
することを約束されていることだ。これは海軍が 2012 年 7 月に実施された環太 平洋軍事演習(リムパック)でグリーン艦隊(Great Green Fleet)が使用したバ イオ燃料の調達コストが 1 ガロン当たり 26 ドルもしたのに比べると、非常に低 い価格である。 (2)第 2 フェーズ 2013 年以降の予算から少なくとも 1.8 億ドルを、少なくとも 1 件のバイオリファ イナリー建設を促進するために財政支援する。 ・ 対象企業は第 1 フェーズの企業から絞り込まれることとなる。
・ 先進型バイオ燃料協会(Advanced Biofuels Association)、航空機パイロット協会 (Airline Pilots Association)、Airlines for America(米国航空業界団体)、米国再生 可能エネルギー評議会(American Council on Renewable Energy)、米国農業連合 会(American Farm Bureau Federation)、American Security Project(気候変動、 安全保障に関するシンクタンク)、バイオテクノロジー産業協会(Biotechnology Industry Organization)、全米農業者組織(National Farmers Union)等、大規模な 業界団体を含む幅広い組織からの支援を得ている。 ・ 先進型バイオ燃料協会会長は、商業規模のドロップインバイオ燃料製造設備を建 設するための先進型バイオ燃料業界の努力を支援する重要なステップとして、本 プロジェクトを称賛している。 なお本プロジェクトの将来性は未だ確約されたものではない。現在まで、国防総省 内では、没収により他の分野でカットされた予算を埋め合わせるべく、バイオ燃料プ ログラムの資金を活用しようとする動きがあった。 ・ バイオ燃料プログラムは国防総省首脳陣から完全な支援を受けている訳ではない。 他の防衛予算支出がカットされる中、バイオ燃料プログラムに関する投資を正当 化するために苦労していた国防総省高官も存在する。
DPA)の指示のもとで進められてきた。DPA は国防上、重要とみなされる産業へ の投資に関する、現政権のお墨付きを与えるものだ。DPA 予算にあてがわれた資 金を他の国防総省予算に転用する時には連邦議会での手続きが必要となる。さら に複雑なことに DPA 予算そのものは、国防総省以外の他の省庁により利用するこ とができる。 5 月の国防総省による助成対象企業の決定に先立ち、DOE は 2013 年 4 月 22 日に、 カリフォルニア州、アイオワ州、ワシントン州にある 4 件のパイロット規模のバイオリ ファイナリープロジェクトに対して約 1,800 万ドルを供与すると発表済みである。これ らのプロジェクトもバイオマス原料を先進型ドロップインバイオ燃料(コスト競争力の ある手法で、軍が使用するジェット燃料・ディーゼルの規格を満たすもの)に変換する 技術を確立することを目的にしている。 この目的を達成するためにバイオリファイナリーは、バイオ燃料を製造するための革 新的な変換プロセスで、様々な非食物系バイオマス原料、廃棄物由来の物質を試験する ことになる。 DOE の資金供与を受ける 4 件の企業は以下のとおり。 ・ Frontline Bioenergy LLCM(アイオワ州 Ames)
供与額は上限 420 万ドル。木質バイオマス、都市の固形廃棄物やゴミからバイオ 燃料を製造する。当該バイオ燃料は、品質面でアップグレードされ、軍の品質規 格に適合するバイオ燃料となる。
・ Cobalt Technologies(カリフォルニア州 Mountain View)
供与額は上限 250 万ドル。スイッチグラスをバイオジェット燃料に変換するため のパイロット規模のバイオリファイナリーを操業することになる。
・ Mercurius Biorefining, Inc.(ワシントン州 Ferndale)
供与額は上限 460 万ドル。セルロース系バイオマスを非糖類中間物(更に精製す ることでドロップイン・バイオジェット燃料やバイオケミカルになる半製品)に 変換する革新的なプロセスを使用する、パイロット規模のバイオリファイナリー を建設し操業することになる。
・ BioProcess Algae(アイオワ州 Shenandoah)
供与額は上限 640 万ドル。再生可能 CO2、リグノセルロース系糖類、廃熱を使用 し、軍の品質規格に適合する炭化水素燃料を製造する、革新的な藻類育成プラッ トフォームを評価することとなる。当該プラントは副産物として、他の炭化水素 やグリセリン、動物用飼料も生産する予定である。
2.バイオ燃料開発政策を巡り意見が割れる連邦議会 先進型バイオ燃料生産プロジェクトが進行する一方、連邦議会では、コスト競争力 のあるドロップイン先進型バイオ燃料の大規模生産を促すことを目的とした官民のパ ートナーシップに投資する連邦政府の支援プログラムを巡り、意見が割れている。 (1)概ね支持の姿勢を示す民主党議員 民主党のマーク・ウドール上院議員(コロラド州)とジーン・シャヒーン上院議 員(ニューハンプシャー州)は、2014 年防衛予算で共和党が主導した予算削減に 向けての取組に対して反対活動の先頭に立った。両議員はチャック・ヘーゲル国防 長官が先進型バイオ燃料生産プロジェクトを支援することを、公然と支持している。 上述の両議員以外の議員も含む同プロジェクトの支持派はまた、バイオ燃料の大 規模生産により国防総省が使用する燃料代を軽減することになることを強く主張 している。国防総省は現在、燃料代の高騰に対処するため、10 億ドルの追加予算 を申請中である。 (2)激しい批判も聞かれる共和党議員 反対派から聞かれるのは、連邦政府予算で緊縮財政や予算削減が話題になる現状 において、限りある防衛予算を先進型バイオ燃料生産プロジェクトに費やすことが 賢い手法なのか、との懸念である。 例えば上下両院の軍事委員会の所属する共和党議員は、国防総省のグリーンエネ ルギーイニシアティブの下、軍により既に消費された、いくつかのバイオ燃料に関 する法外な金額を批判している。 ただし共和党議員でも農業関係者の支持層を持つ議員の中には、オバマ政権のバ イオ燃料イニシアティブに賛成する議員が存在する。 米国農業界はバイオ燃料イニシアティブから恩恵を得られることから、選挙民に 農業関係者を多く抱える州を代表する議員は、選出州の地域経済を活性化する同イ ニシアティブを支援する必要がある。 3.航空業界によるバイオ燃料支援 連邦政府の取組みとは別途、米国航空業界もまた、コスト競争力のあるドロップイ ン先進型バイオ燃料の大規模生産を振興することを目的とした政策を概ね支持してお り、同業界の将来にとって重要な取組と認識している。 連邦政府によるバイオ燃料産業への支援は、同産業の中で研究開発を促進するだけ に留まらない。航空部門でのバイオ燃料消費者として、航空業界だけでなく米軍が存 在することは、低コストでの先進型バイオ燃料供給拡大に向け好材料と見られる。 バイオ燃料普及に向けた米国航空業界の最近の取組で注目されるのは、2013 年 6 月 5 日、ユナイテッド航空と米国の持続可能燃料・化学品企業 AltAir Fuels 社が、最終的
百万ガロン(約 57 千 KL)のバイオジェット燃料を購入することに合意しており、追 加購入のオプションもある。 ユナイテッド航空は従来の石油由来のジェット燃料対比、競争力のある価格で当該 先進型バイオ燃料を購入することになる。AltAir 社は 2014 年以降、年間 5 百万ガロン (約 19 千 KL)のバイオジェット燃料供給を開始することが期待される。 上記取引が合意に達したことを受け、AltAir 社はカリフォルニア州ロサンゼルス近郊 にある既存製油所に Honeywell UOP 社が開発した技術を導入し先進型バイオ燃料を 年間 30 百万ガロン(約 114 千 KL)製造する能力を持つバイオリファイナリーに改造 することとなる。ユナイテッド航空は、当該バイオジェット燃料をロサンゼルス国際 空港で使用する計画だ。 AltAir 社の低炭素再生可能ジェット燃料は、ライフサイクルベースの評価で温室効果 ガスを少なくとも 50%削減することが期待されている。 AltAir 社のように航空企業とのバイオジェット燃料取引契約締結を目指す企業とし ては、他にも Algae.Tec 社(交渉先はルフトハンザ航空)、BioFuelNet 社(交渉先は エアカナダとエアバス)、SkyNRG 社(交渉先はヴァージンオーストラリア、ブリス ベンエアポートコーポレーション)が存在する。 バイオジェット燃料の製造・販売を目指す企業としては、他にも、Gevo、Aemetis、 Dynamic Fuels、Amyris、Solazyme、Neste Oil、Virent、Paradigm BioAviation と言っ た企業も存在する。 4.バイオ燃料政策に関する議論と再生可能燃料基準 大統領府と国防総省が合意しているのは、連邦政府によるグリーンエネルギー投資 は、初期投資がかかるにしても、米軍と米国航空産業にとって、長期的には投資に会 う便益が得られるだろうということである。 海軍は 2012 年 7 月にグリーン艦隊の演習を実施したことにより、バイオ燃料の有効 性を示して見せた。更に空軍では、2016 年までに米国本土で使用する燃料の半分を 代替燃料に置き換えることを目標に、バイオ燃料 50%混合のジェット燃料で飛行する 機体の認証を続けている。米国におけるバイオ燃料産業の成功は、米国にとって海外 からの石油への依存を低減させ、米国にエネルギー安全保障をもたらすことにもなる。 ただし、バイオ燃料産業に対する連邦政府による財政支援に対して政策的な観点か らの批判があるのもまた事実である。 現在、オバマ政権は、バイオ燃料の調査と実験に関し連邦議会内に十分な支援を見 つけることができるが、将来的に、バイオリファイナリー建設や高価な軍用バイオ燃 料調達のための多額の購入契約といった、より多額の出費となれば、政治的なハード ルは上がってくる。
オバマ政権のバイオ燃料政策支援に関する論争に関する前例となるのは冒頭に触れ た RFS であり、本基準については制度見直しが大きな論点となってきた。
連邦議会が最初に RFS を導入したのは 2005 年エネルギー法(Energy Policy Act) に基づいたものだったが、この”RFS1”と呼ばれる当初の基準は、2006 年に 40 億ガロ ン(約 15 百万 KL)を義務量とし、2012 年までに 75 億ガロン(約 28 百万 KL)に増 加する内容だった。
これに対し 2 年後の 2007 年にエネルギー自立安全保障法(Energy Independence and Security Act)に基づいて制定された”RFS2”では、バイオ燃料の使用義務量が大幅 に増加し、実施期間も 2022 年までに延長されている。 更に RFS2 では、石油由来燃料対比のライフサイクル評価での温室効果ガス(GHG) 削減比率毎に、従来型エタノールと先進型エタノール(セルロース系エタノール、バ イオディーゼル、その他先進型エタノール)の 4 種類に分類されている。 RFS2 では、2008 年には 90 億ガロンだった義務量が、図 1 のグラフのとおり 2022 年には 360 億ガロンに増加する計画である。その内訳としてトウモロコシ由来の従来 型エタノールは 2015 年までに 150 億ガロンに増加した後は横ばいとなり、残る 210 億ガロンは先進型エタノールにて達成され、その中で特にセルロース系エタノールが 少なくとも 160 億ガロンとなることが定められている。 出所:MUSE STANCIL 作成資料 図 1:RFS2 義務量のグラフ ■ その他先進型エタノール ■ バイオディーゼル ■ セルロース系エタノール ■ 従来型エタノール
石油業界に代表される RFS2 反対派は制度の改編に向けて連邦議会の支援者に対し てロビー活動を展開している。
例えば下院エネルギー商業委員会は 2013 年 5 月 9 日に「温室効果ガス排出と他の 環境面の影響(”Greenhouse Gas Emissions and Other Environment Impacts”)」と題 する白書を発表しているが、この白書は、RFS を取り上げた一連の白書の 3 回目であ り、可能な修正方法に触れた内容となっている。
5.輸送燃料部門でのバイオ燃料使用に関する見通し
DOE のエネルギー情報局(Energy Information Administration、EIA)が発表する 2040 年までの長期見通し Annual Energy Outlook 2013 (AEO2013)の Reference case では、2040 年の米国燃料消費に占めるバイオ燃料の割合が 5.8%(2011 年は 3.5%) との見通しを示している。これは 2012 年版の長期見通しで 2035 年までに 10%とし ていたものからは下方修正となる。
同見通しで興味深いのは、EIA が E15 ガソリンや E85 等の E10 ガソリン対比でエタ ノール混合比率の高い燃料について大幅な需要増を予想しない一方、次世代バイオ燃 料やドロップイン・セルロース系バイオ燃料では需要増を予想している点である。
バイオ燃料消費は、RFS2 が定める 2022 年義務量の 360 億ガロンに大幅に不足する 見通しであり、主な要因として 2012 年 8 月に環境保護庁が最終決定した新燃費基準 によるガソリン需要減と E85 の使用可能な自動車の販売見通し低迷を挙げている。
以下、図 2 の AEO2013 Reference case のバイオ燃料に関する見通しについて抜粋 する。
・ バイオディーゼルと次世代バイオ燃料の消費増加見通し(2011 年から 2040 年の 間に 40 万バレル/日)は、RFS2 義務量とカリフォルニア州が実施している低炭 素燃料基準(Low Carbon Fuel Standard、LCFS)によるものである。
・ 対照的に 2011 年から 2040 年までの間、E85 の消費が基本的に横ばいとなってい るのはガソリン消費減少とフレックス燃料車(Flex Fuel Vehicles、FFVs)の普及 の伸び悩みとの見通しに基づいている。 ・ ガソリン消費の減少と、FFVs と補給所の数が限定され E85 の普及が進まないこ とを背景に、ガソリンへのエタノール混合が増えないため、国内エタノール生産 量は減少する。2011 年から 2022 年にかけて、E10、E15 等エタノール混合ガソ リンの需要は 870 万バレル/日から 810 万バレル/日に減少する。ガソリン需要減 と E85 消費減により、2022 年から 2040 年にかけてエタノール消費は 164 億ガ ロンから 149 億ガロンに減少する。 ・ 対照的にドロップインセルロース系バイオ燃料の米国内消費は、2011 年から 2040 年にかけて 3 億ガロンから 90 億ガロンに増加する。背景として油価上昇に よりディーゼル、ヒーティングオイル、ジェット燃料の価格が上昇する一方、当 該バイオ燃料の製造コストが低減することを挙げている。
・ 2030 年以降、セルロース系ドロップインバイオ燃料はカリフォルニア州他で生産 が開始される。カリフォルニア以外の州ではセルロース系バイオ燃料の生産と消 費が急速に増加し、先進型バイオ燃料市場でのカリフォルニア州の比率が減少す ることになる。2035 年以降になると炭素強度(Carbon Intensity、LCFS において 温室効果ガス排出量を示す基準)の低いトウモロコシ由来エタノールがカリフォ ルニア州の輸入サトウキビ由来エタノールに置換し始める。 出所:EIA ウェブサイト 図 2:AEO2013 における RFS2 義務量とエタノール生産量見通し 6.まとめ 先進型バイオ燃料開発において製造コスト高が問題視される中、実用化に向けた取組で は、政府による財政支援が大きな影響を及ぼす状況が継続すると思われる。 こうした中、自動車燃料でのバイオ燃料普及を目指した再生可能燃料基準(RFS2)は 制度実施後の環境変化が著しく、セルロース系エタノールの開発遅延もさることながら、 ベースとなるガソリン需要の減少が著しく、現状のままでは、バイオ燃料の普及を目指す 現政権の意向を反映するのは難しい状況である。ガソリンへのエタノール混合率引上げと いう観点では、品質面では米国内で規格が統一されていないこと、実行面では石油・自動 車・小売業界等の関与が必要となることもハードルとなる。 一方、航空部門での取組では、製造コスト高がハードルとして存在することは RFS2 と
きるのは自動車用燃料の場合とは状況が大きく異なると考えられる。
民間航空企業によるバイオ燃料実用化に向けた動きは、2012 年は目立ったものが見ら れなかったが(2012 年 2 月、アラスカ航空は製造コスト高が問題であることに言及した)、 一方でユナイテッド航空が 2012 年 5 月に The Midwest Aviation Sustainable Biofuels Initiative(ボーイング社、UOP 社、シカゴ市航空局が参加、連邦政府関連部局も交えた諮 問委員会も設置予定)を設立し、アメリカン航空が 2012 年 7 月にボーイング社や連邦航 空局とエコデモンストレータープログラムを発表しバイオ燃料による飛行実験に取り組 んでいる等、連邦政府と連携する枠組みが構築されていることは注目される。 オバマ政権はバイオジェット燃料開発に関し、長期的な視野で投資に見合う便益が得ら れるとの見方であるが、2012 年 4 月にトレイナー製油所を買収したデルタ航空は同買収 の背景として、将来的なジェット燃料調達コスト増(世界的な中間留分需要増等を背景と するもの)に対する懸念を挙げており、ジェット燃料調達コスト低減に向けた取組は官民 問わず航空部門での共通の課題である。 政策によるイニシアティブと言う観点では、先進型バイオ燃料開発が米国のエネルギー 安全保障を促進し、農業州選出議員の間では超党派の支持を得られている現状は支援要因 だが、厳しい米国の財政事情を考えれば、財政支援に関する議論は今後も活発に行われる ことが予想される。 航空部門での先進型バイオ燃料普及に向けた取組は、オバマ政権のイニシアティブの下、 自動車用バイオ燃料とは異なる取組と考えられ、今後の動向を注視してまいりたい。 以 上 本資料は、一般財団法人 石油エネルギー技術センターの情報探査で得られた情報を、整理、分析し たものです。無断転載、複製を禁止します。本資料に関するお問い合わせは[email protected]までお 願いします。
Copyright 2013 Japan Petroleum Energy Center all rights reserved 次回のJPEC レポート(2013 年度 第 11 回)は
「中国のLNG 輸入プロジェクト」 を予定しています。