日立港 内 に お け る長 周期 波 の現 地 観 測 ― 河川 遡上 波 の発 生原 因 と して―
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(2) 212. 海. 写 真‑1. 岸. 工. 学. 論. 文. 集. 第55巻(2008). 瀬 上 川 に遡 上 す る長 周期 波(先 端 部 で ソ リ トン分 裂 が出現 してい るよ うに みえ る). 図‑3. 波 高観 測地 点. 観 測 中 に は9号 か ら20号 まで の12個 の台 風 が 発 生 したが, そ の うち最 も顕 著 な長 周 期 波 を観 測 した の は,台 風9号 で あ り,9月1日. 頃 か ら南 東 海 上 に接 近 し,ゆ っ くり と北 上. した.そ の後9月6日 で は9月7日. に関 東 に接 近 した た め,日 立 港前 面. 未 明 に通 常 波 浪 の最 大 波 高4m,港. で の 長 周 期 波 高70cmを. 内 のW‑3. 記 録 した.以 下 の 検 討 で は,主 に. この 時 の30秒 以 上 の周 期 成 分 か ら計 算 で きる長 周 期 波 高 の ピー ク時 の デ ー タを中 心 に解 析 を進 め た.. 写 真‑2. 3. 長 周 期 波 の 実 態. 暗 渠前 面で の溢水 状況 (2002年10月22日. を抑 制 す る波 除堤,河. 撮 影). (1) 擾 乱 時 に卓 越 す る100秒 台 の 長 周 期 波. 道 で の共 振 周 期 を ず らす ため の減 衰. 日立 港 内 に観測 され た長 周 期 波 につ いて,同 一 時 期 に観. 池 な どを建 設 す る こ とに よ り頻 繁 に発 生 して い た溢 水 被 害. 測 され た隣 接 す る常 陸 那 珂 港 港 外 の 波 浪 デ ー タを 日立 港 前. を減 ず る手 法 が試 され て き た.し か しなが ら,周 辺 住 民 の. 面 に変 換 した デ ー タ と比 較 した(波 浪 の浅 海 変 形 計 算 に. 安 全 を確 保 す るに は,護 岸 の嵩 上 げな ど の追 加 対 策 が望 ま れ て い る こ とか ら,所 要 高 さの計 画 に先 立 って発 生 原 因 を 含 め た定 量 的 な調 査 が 必 要 とな った.本 研 究 で は,そ れ ら の調 査結 果 を も とに,遡 上 要 因 とな る港 内 の長 周 期 波 の実 態 を把 握 し,河 道 内対 策 のみ な らず 港 内 に お け る対 策 も踏 まえた 総 合 的 な対 策 検 討 に資 す る ことを 目 的 と した. 2.. 現 地 観 測 の概 要. 現 地 観 測 は,日 立 港 港 内3地 点(図‑3のW‑1〜W‑3), 瀬上 川 河 口(W‑4)及. び河道 内(W‑5,W‑6)3地. 点 の 計6. 地点 に 自記 式 水 圧 計 を 設 置 し,0.1秒 間 隔 で約3ヶ 月 間(2 007年8月23日. 〜11月22日)の. 波 の統 計 処 理 は,100〜200秒. 連 続 観 測 を行 った.長 周 期 程 度 の 周 期 を対 象 とす る場. 合,連 続 デ ー タを3時 間 毎 に区 切 って 解 析 した.ま た,長 期 間 の連 続 デ ー タが 得 られ た こ とか ら,さ らに長 周 期 の振 動 につ いて 解 析 す る 目 的 で,12時 使 用 した.. 間毎 に 区切 ったデ ー タ も 図‑4. 通常 波浪 の波 高 と港 内の長周 期高 との関係.
(3) 日立港 内 に おけ る長 周期 波 の現地観 測. 213. よ って 波 高 ・周 期 ・波 向 の ラ ンク毎 の 変 換 係 数 を作 成 す る 方 法 によ って 変 換).そ. の結 果,通. 常 周 期 の 波 高 との相 関. は あ ま り高 くな い ものの(図‑4),南. 寄 りの波 向 の通 常 波. 浪 が長 く襲 来 した場 合 に長 周 期 波 が 発 達 す る傾 向 にあ る こ とが 判 明 した.低 気 圧 や 台風 が,沿 岸 部 を北上 して 急 激 に 発 達 す る擾 乱 時 で はな く,南 東 沖 にあ ってゆ っ くり と移 動 し,う ね り性 の波 浪 が 到 達 す る状 況 が それ に あた る.港 内 で発 達 す る長 周 期 波 の平 均 周 期 は100〜150秒 程 度 で あ り, これ が 進 行 波 で 日立 港 港 口付 近(水 した とす ると,波 長 は1500m程 堤 は北 東 方 向 に 約3000mの. 深10m程. 度)に 来 襲. 度 とな る.日 立 港 の東 防波. 図‑6. W‑2とW‑3の. 長周 期波 の水 位変 動. 延 長 が あ り,こ の程 度 の 長 周. 期 波 が北 寄 りか ら入 射 した場 合,遮 蔽 効 果 が あ る もの と考. 期130秒 で あ り,こ の とき の 日立 港 前 面 の通 常 波 浪 は波 高. え られ る.港 内の 長 周 期 波 の ピー クが南 寄 りの波 向 時 に発. 4m,周. 達 して い るの は,防 波 堤 の位 置 によ る影 響 が 大 きい(図‑5).. 長 周 期 波 が 通 常 波 の 波 高 の10%程. 期9秒. (1990)に. 程 度 で あ った.一 般 的 に波 浪 の 擾 乱 に伴 う. よ る水 深10m付. 比 の 例),観. 度 とす れ ば(合. 田. 近 に お け るサ ー フ ビー トの 振 幅. 測 され た 長 周 期 波 は,来 襲 波 浪 の大 き さ に比. べ,エ ネル ギ ー レベル の高 い ものが 発 生 して いる とい え る. 溢 水 被 害 の発 生 時 に最 も顕 著 に視 認 で きるの が この長 周 期 波 の 遡上 で あ るが,実 際 に は さ らに以 下 の 要 因 が 重 な って 溢 水 被 害 が増 大 して い ると推 定 され る. (1) 大 潮 の満 潮 で 、 潮位 がH.W.L.付. 近 で あ る こと. (2) 遡上 の途 中で 段 波状 にな る ため上 流 端(暗 渠 部 分 で 溢 れ る)で の最 高 水位 が大 き くな る こと (3) 気 象要 因 の長 周 期 波 が重 な って いる こ と ここで,(1)と(2)の現 象 は,既 存 の調 査(宇 多 ら,2002; 栗 原 ら,2004;Takano,2004)で. も明 らか に されて い る こ. とで あ るが,(3)の 現 象 は陸 棚 波 と して の存 在 は指 摘 され て い る もの の(宇 野 木,1959な. ど),本. 観 測 に よ る長 期 間 の. デ ー タか ら改 めて確 認 され た もので あ る. 図‑5. 通 常波 浪の 波向 と港 内の長 周期 高 との関 係. 100〜3000秒 の長 周 期 波 を対 象 に エ ネル ギ ー ス ペ ク トル を求 め,時 系 列 に 比 較 した もの が図‑7で あ る.図 の上 段. この100秒 台 の長 周 期 波 は,W‑2お. よびW‑3の. 位 置する. は,常. 陸那 珂 港 の観 測 波 浪 を 日立 港 前 面 に変 換 した 後 の. 岸 壁 で 囲 ま れ た コの字 型 の泊 地 内 にお ける共 振 モ ー ドと概. 通 常 波 浪 の波 高 ・周 期,波. ね 一 致 して い る.例 え ばT=2L/√ghで. 地 点 に お け る通 常 波 の波 高 と100秒 台(△ 印)及. 概 算 す ると,水 路 長L=600m,水 g=9.8m/s2と. して周 期T=136秒. 固有振動周期 を. 深h=8m,重. 力加速度. で あ り,観 測 され た100秒. 台 と同 程 度 の1次 モ ー ドの 振 動 周 期 が 得 られ る.ま た,W‑2 お よ びW‑3の. 実 測 値 の 波 形 を 重 ね て も,180° の位 相 差 が. 顕 著 に認 め られ,W‑2とW‑3を. 腹 と した1次. モ ー ドで 振. 日立 港 内 に は種 々の 長 周 期 波 が 存 在 す るが,100秒. 河 口部(波. よ びW‑3間. 台の. で振 動 ・増 幅 す る過 程 で,. 除 堤 に 囲 ま れ た泊 地 状 の 部 分:W‑4の. 位 置). これ によ る と100秒 台 に ピー クを もっ 長 周 期 波 は、 通 常 波 浪 の うね り成 分 と概 ね 同 期 して お り,う ね りの発 生 に起 因 す る もの とみ る ことが で き る.こ れ に対 して1000秒 台(20 分 程 度)の 長 周 期 波 は,ほ ぼ コ ンス タ ン トに発 生 してお り,. き くな っ て,波. 高 に して2〜3倍. に な る こ と もわ か った. 港 内(W‑3)で. 観 測 され た周 期1000秒 台 の長 周 期 波 の最. 大 波 高 は20cm程. の河 川 に遡 上 す る メカ ニズ ムで あ る と考 え る.. 度 と1.5倍 に増 幅 され る傾 向が み られ た(図‑9).こ. 本 観 測 で 発 生 した長 周 期 波 高 の最 大 値 は,波 高70cm周. ー ダー大. (図‑8の ス ペ ク トル図 参 照).. に進 入 し,そ れ が さ らに上 流 部 へ と伝 達 す る のが長 周 期 波. (2) 気 象 要 因 によ る長 周 期 波. び1000秒. 台(● 印)の 長 周 期 波 のエ ネル ギ ーの 時間 的変 化 を示 す.. さ らに通 常 波 浪 の ピー ク前 に はエ ネ ルギ ーが1オ. 動 して いる様 子 が 確認 で き る(図‑6).. 長 周 期 波 がW‑2お. 向 で あ り,下 段 は港 内 のW‑3. 度 で あ るが,河 道 内(W‑6)で. は30cm程 れ は100. 〜150秒 の長 周 期 波 の波 高 と比 較 す る と50%程 度 の 大 きさ とな る場合 が あ る ことを 示 してお り,長 周 期 波 対 策 に関 す.
(4) 214. 海. 図‑7. 岸. 工. 学. 外 洋 波 と港 内(W‑3)に. 論. 文. 集. 第55巻(2008). お け る長 周 期 波 エ ネ ル ギ ー の 経 時 変 化. 図‑9. 100秒台 の長周 期波 の港 内 と河道 内 の比較. に含 まれ る もの と して 扱 わ れ るが,上 記 の よ うに地 形 的 な 条 件 に よ って は増 幅 す る こ とが あ る こ とに は注 意 す べ きで 図‑8. 静 穏時 と擾乱 時 の長周 期波 の スペ ク トルの比較. 長 周 期 波 が発 生 す るの は,気 圧 変 動 な どの気 象要 因 に よ る もの が考 え られ,沿 岸 部 で反 射 した波 が さ らに岸 向 きに屈. あろ う. 4. 長 周 期 波 の 計 算 大 陸 棚 セ イ シ ュの影 響 を確 認 す るた め,線 形 長 波 方 程 式. 折 して 沿 岸 域 に トラ ップ され る大 陸 棚 セイ シュの 現 象 と し. によ る数 値 計 算(平 石 ら,1988)に. て 理 解 さ れ る.通 常,気 象 要 因 によ る長 周 期 波 は潮 位 偏 差. プ さ れ る長 周 期 波 を 再 現 した.計 算 条 件 を 表‑1に 示 す.. よ って,沿 岸 に トラ ッ.
(5) 215. 日立港 内 に おけ る長 周期 波 の現地観 測 入 射 波 は規則 波 を沖 側 境 界 か ら一 様 に入 射 させ て お り,汀 線 お よ び構 造 物 を陸 側 境 界 と して全 反 射 させ て いる. 計 算 結 果 を 図‑10に 示 す.図 の波 高 比 分 布 を み る と,銚 子 半 島 に集 中 して い る が,北 10km程. 側 の 沿 岸 部 につ い て も数. 度 の 間 隔 で 腹 と節 を もっ よ う に増 幅 部 分 が あ り,. 沿 岸 に トラ ップ され て い る様 子 が伺 え る.日 立 港 付 近 で は 4〜6倍 程 度 の 分 布 域 が 確 認 で き,本 観 測 で 得 られ た実 測 値0.2〜0.3mの. 波 高 か ら逆 算 す る と,沖 合 で数cmの. 気象. 要 因 によ る長 周 期 の 水 面 変 動 が発 生 して いる と推 定 され る. 大 陸 棚 セイ シュの よ うな長 周 期 波 は,本 研 究 の 対 象 で あ る 河 川 に遡 上す る長 周 期 波 の よ うな変 動 成 分 で はな く,本 来 設 計 高 潮 位 に含 ま れ る もの とい え る.し か し,河 口 内で 増 幅 す る こと も確 認 さ れ た こ とか ら,場 合 によ って は護 岸 高 さの決 定 等 に大 き く影 響 を 及 ぼ す こ と も考 え られ る.し た が って,今 後,変 動 成 分 と して どの程 度 影 響 す るか検 討 す る ことが望 まれ る.. 表‑1. 長 周期 波 の計算 条件. 図‑10. 沿 岸 域 に お け るT=1200sの. 長 周期 波 の波高 比分 布. これ は,大 陸棚 セ イ シ ュの 影 響 と考 え られ,定 常 的 に存 在 して い るが,気 圧 変 動 など の気 象 要 因 で あ る ため,台 風 な ど の擾 乱 と と もに通 常 の2〜3倍 た.日. 立 港 で は,通. 常10〜20cmの. に発 達 す る こと もわ か っ 波 高 で あ る が,30cm. 程 度 に発 達 す る こと もあ り,場 合 に よ って は設 計 時 の潮 位 と して の みな らず,長 周 期 成 分 と して 考 慮 す る必 要 が あ る.. 参 *計 算 時間 の前900secは ラ ンニ ング時間. 5. 結 論 (1)日立 港 内 の長 周 期 波 につ いて 長 期 間 の連 続 観 測 によ り 実 態 把 握 を行 った.こ れ に よれ ば 日立 港 の港 内 で は種 々 の 長 周 期 振 動 が 確 認 され た が,W‑2お 100秒 台 の1次. よ びW‑3の. 岸壁間 は. モ ー ドの固 有 振 動 特 性 が あ り,そ の周 期 の. 長 周 期 振 動 が 選 択 的 に発 生 して い る.瀬 上 川 の河 口部 は こ の 岸 壁 の一 方 に面 して お り,増 幅 した振 動 を受 け取 る形 に. 宇野木 早苗. 観. 測 され,河 川 の 主 な 溢 水 の原 因 に な って い る こ とが わ か っ た. (2)日立 港 内 で は約1200秒 の長 周 期 振 動 も確 認 さ れ た.. 文. 献. (1959):. 港 湾 の セ イ シ ュ と長 周 期 波 に つ い て, 第6. 回 海 岸 工 学 講 演 会 講 演集, pp.1‑11. 高 山 知 司 ・平 石 哲 也 (1988): 数 値 計 算 と現 地 観測 に よ る港 内副 振 動 特 性 の検 討, 港 湾 技 研 資 料No.636, 70p. 合 田良 實 (1990): 港 湾 構 造 物 の 耐 波 設 計, 増 補 改 訂 版,. 鹿島. 出版 会, 333p. 宇 多 高 明 ・山 中 博 ・助 川 進 ・高 野 泰 隆 ・大 木 康 弘 ・神 田康 嗣 ・ 芹 沢 真 澄 (2002):. な って いる.こ の モ ー ドの波 が 河 川 上 流 のW‑4〜W‑6で. 考. Takano, T., T. Uda, Y. Ohki, Y. Kanda, M. Serizawa, H. Yamanaka and S. Sukegawa (2002) Inundation caused by swells and long-period waves penetrating from river mouth and its countermeasures-a case study at the Segami River, Ibaraki Prefecture, Japan, Jour. of Hydroscience and Hydrauric Engineering, Vol.20, No.2, pp.169-185.. 対 策‑茨. 河 口 か らの遡 上 波 によ る高 潮 災 害 とそ の. 城 県 の 瀬 上 川 の 例‑,. 水 工 学 論 文 集,. 第46巻,. pp.349‑354. 栗 原 一 美 ・宇 多 高 明 ・鱠 谷 純 夫 ・高 野 泰 隆 ・大 木 康 弘 ・神 田康 嗣 (2004): 小 河 川 の 河 口を 通 じた長 周 期波 遡 上 の 現 地観 測‑ 日立 市 瀬 上 川 の例‑, 水 工 学 論 文 集,第48巻, pp.349‑354..
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