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徒歩によるアクセス時間からみた地下鉄駅周辺部の施設立地分析

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Academic year: 2022

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徒歩によるアクセス時間からみた地下鉄駅周辺部の施設立地分析

*

A Facility Location Analysis around Subway Stations from the Viewpoint of Influenced Sphere

*

日野 智**・飯島 昭***・岸 邦宏**・佐藤 馨一****

By Satoru HINO**・Akira IIJIMA***・Kunihiro KISHI**・Keiichi SATOH****

1. はじめに

現在、地方都市における公共交通機関は利用者数 の減少という課題を抱えている。地下鉄もその例外 ではない。その要因の一つとして、モータリゼーシ ョンの進展が挙げられる。しかし、過度の自動車交 通への依存は交通渋滞や大気汚染など、都市に新た な問題を生み出している。そのような中で、都市交 通サービスとしての公共交通機関をさらに活用する ことが求められている。

一般に、公共交通機関に対する利用意向はサービ ス水準と同時にバス停や駅周辺部の施設立地にも影 響される。また、施設立地も交通機関に影響される。

大量輸送機関である地下鉄では、これらの結びつき はさらに強いものと考えられる。つまり、地下鉄の 利用を促進し、活用するためには駅周辺部の施設立 地と一体となった方策を検討しなければならない。

本研究は、所要時間から公共交通機関を評価する コンプリメンタリィ・アクセシビリティ指標を用い、

地下鉄駅までのアクセス時間から札幌市営地下鉄の 駅周辺部の施設立地を分析するものである。すなわ ち、地下鉄駅までのアクセス時間という観点から地 下鉄駅周辺部の施設立地と交通行動の関係を路線毎 に明らかにすることを目的としている。

2. 研究対象地域と分析方法

(1) 札幌市営地下鉄の現況と対象路線の選定 札幌市営地下鉄は南北線・東西線・東豊線の3路

線から構成されている(図 1)。1971(昭和 46)年 12 月、南北線(北24条~真駒内)が開業し、札幌市営地 下鉄の営業が開始された。その後、1976(昭和51)年 に東西線、1988(昭和63)年に東豊線が開業した。し かし、1995(平成 7)年度をピークに乗車人員は減少 を続けている。

本研究では南北線の北 12 条~麻生間と東豊線の 北13条東~栄町間を分析の対象とした。東豊線沿線 部は 1988(昭和 63)年に地下鉄が開業する以前から 市街地が形成されていた。一方、南北線沿線部は地 下鉄の開業以前には路面電車が運行されていた。

対象路線における乗車人員を表1に示す。駅数は 1 駅少ないが、南北線の乗車人員数は東豊線を大き く上回っている。

1 札幌市営地下鉄の路線と駅

*キーワーズ:土地利用、公共交通計画、GIS、Qi指標

** 正会員, 博(工), 北海道大学大学院工学研究科

(札幌市北区北13条西8丁目, TEL 011-706-6864, FAX 011-706-6216)

*** 学生員, 学(工), 北海道大学大学院工学研究科

(札幌市北区北13条西8丁目, TEL 011-706-6217, FAX 011-706-6216)

****フェロー, 工博, 北海道大学大学院工学研究科

(札幌市北区北13条西8丁目, TEL 011-706-6209, FAX 011-706-6216)

南北線 東豊線

麻生 26,905 栄町 6,874

北34条 6,028 新道東 6,273

北24条 14,669 元町 6,652

北18条 7,823 環状通東 7,653 北12条 5,366 東区役所前 7,307 北13条東 2,557

合計 60,791 合計 37,316

1 対象路線における乗車人員数(平成13年度)

(2)

(2) 地理情報システムによる分析と駅勢圏の設定 本研究における分析には GIS(地理情報システム) を用い、駅周辺部の施設立地とそこから発生する人 の移動とを関連させる。施設立地は平成8年度の札 幌市都市計画基礎調査データ、人の移動は第3回道 央都市圏パーソントリップ(PT)調査を用いる。都市 計画基礎調査は条丁目単位のデータであり、PT調査 の小ゾーンよりも小さい単位である。

本研究では、地下鉄駅から半径1km以内を徒歩に よる駅勢圏と設定する。また、半径500m以内(500m 圏)と500~1km以内(1km圏)に駅勢圏をわける。設 定した駅勢圏は円形となるが、隣接する地下鉄駅の 駅勢圏が重なり合う箇所が存在する。利用者は最も 近い地下鉄駅を利用すると仮定し、駅勢圏を分割し

た(図3)。そのため、駅毎に駅勢圏の面積は異なる。

3. 駅勢圏における施設立地とトリップ発生量

(1) 駅勢圏における施設立地状況

地下鉄駅周辺部の施設立地状況を把握するため、

各施設の延床面積の合計値を駅勢圏の面積で除した グロス容積率を算出した。路線毎に求められたグロ ス容積率を表2に示す。

南北線沿線の 500m 圏におけるグロス容積率が非 常に大きくなっており、南北線では地下鉄駅に近い

地区に数多くの施設が集積している。一方、東豊線 では500m圏と1km圏の差が小さく、駅に近い地区 においても施設はさほど集積していない。

地下鉄駅毎に比較しても、同様の傾向にあった。

すなわち、駅周辺部の施設立地は路線毎に特徴があ ると考えられる。そのため、本研究では南北線と東 豊線の比較を中心とした分析を行うこととした。

(2) 駅勢圏毎のトリップ発生量算出

本研究では、都市計画基礎調査と PT 調査から駅 勢圏毎に各施設から発生するトリップ数を算出する。

PT調査の小ゾーン単位毎に手段別・施設別のトリッ プの発生量と施設別の延床面積を求め、小ゾーン毎 に施設別のトリップ発生原単位を算出する。各施設 から単位面積あたりに発生するトリップが PT 調査

2 本研究における駅勢圏の設定(一部を抜粋)

500m 1km

500m圏 1km圏 500m圏 1km圏

住宅・寮 48.91% 34.34% 36.21% 33.19%

教育・官公庁 9.33% 6.86% 4.00% 1.73%

医療・厚生 1.71% 0.62% 1.73% 0.94%

事務所・会社 7.68% 3.13% 3.02% 2.31%

店舗 6.00% 0.90% 2.74% 2.21%

その他 6.74% 2.53% 3.16% 3.21%

南北線 東豊線

2 地下鉄路線別のグロス容積率

PT調査データ 都市計画基礎調査データ

トリップ発生量/延床面積(施設毎)

トリップ発生原単位(小ゾーン単位)

延床面積(施設毎・条丁目単位)

トリップ発生量の算出

駅勢圏毎にトリップ発生量を集計

×

小ゾーン単位(PT)

条丁目単位

3 駅勢圏毎のトリップ発生量算出のフロー図

都 市 計 画 基 礎 調 査 建 物 小 分 類

41 専 用住 宅

42 共 同住 宅

43 一 般 店 舗併 用 住 宅 44 事 務所 併 用 住 宅 45 飲 食店 併 用 住 宅 46 作 業所 併 用 住 宅 01 地 方 国家 施 設

02 自治 体 施 設

51 教 育施 設

52 研 究施 設

53 文 化施 設

54 宗 教施 設

55 記 念施 設

61 医 療施 設

63 社 会 福祉 施 設

64 厚 生施 設

5 会 社 5 事 務所 ・会 社・銀行 11 業 務施 設

9 ス ー パ ー ・デ パー ト 12 集 合 販売 施 設 7 問 屋 ・卸 売市 場

8 個 人 商 店

10 飲食 店

71 重 化学 工 業 施 設

72 軽工 業 施 設

73 サービス工 業 施 設 74 家 内 工業 施 設 13 交 通 ・運 輸施 設

15 倉 庫

81 供 給 処理 施 設

83 通 信施 設

13 宿 泊施 設

21 興 業施 設

22 風 俗 営業 施 設

23 遊 技施 設

24 ス ポー ツ施 設

62 運 動施 設

91 農 業施 設

92 漁 業施 設

6 官公 庁

宿 泊 ・娯 楽施 設 11

2 学 校 ・教 育 ・研 究 施 設

31 専 用 店舗 施 設

82 運 輸 倉庫 施 設 12 工 場 ・作 業 場

工 場 ・作 業 場 7

4 医 療 ・厚 生 4 医 療 ・厚 生 ・福 祉 施 設

11 農 業

供 給 ・処 理施 設 14

農 業 漁 業 作 業地 ・施 設 18

17 体 育 ・レ クリエー シ ョン施 設 教 育 ・官 公 庁

2

1 住 宅 ・寮

交 通 ・運 輸 8

10 娯 楽 ・体 育 供 給 ・処 理 9

施 設 分 類

店 舗 6

PT調 査 施 設 分 類

3 文 化 ・宗 教

住 宅・寮 1

文 化 ・宗 教施 設 3

3 PT調査と都市計画基礎調査間の施設分類の対応

(3)

の各小ゾーン内で一定であることを仮定し、求めら れた発生原単位を条丁目単位に求められる各施設の 延床面積に乗じることで条丁目単位の施設毎のトリ ップ発生量が算出される(図3)。

PT 調査と都市計画基礎調査では施設分類が異な るため、そのままでは施設毎のトリップ発生量が求 められない。本研究では施設分類を11分類にまとめ、

両者を対応させている(表3)。

(3) トリップ発生量の算出結果

求められた地下鉄利用トリップと自動車利用トリ ップの発生量を路線毎に集計した(表 4)。地下鉄利 用トリップは南北線が東豊線を上回っているが、自 動車利用トリップは東豊線が南北線を大きく上回っ ている。

4. Qi指標による地下鉄駅周辺部の施設立地分析

(1) コンプリメンタリィ・アクセシビリティ指標Qi 本研究ではコンプリメンタリィ・アクセシビリテ ィ指標(Qi指標)を用いる。Qi指標は既存の累積機会 指標における Ki の余事象を計量的な指標値とする ものである3)

Qi 指標では、横軸に交通機関による総所要時間、

縦軸にはその所要時間内で移動可能な相対人口を累 積する。累積曲線はある時間内で特定の目的地に到 達可能な人口の比率を示すことになる。縦軸と累積 曲線、累積比1.0の横軸で囲まれた面積(図4)がQi

指標と定義される((1)式)。

{ }

=

= K

0

1 A ( t ) dt

Q

i i (1)

Qi指標はある時間以内では目的地まで到達できな い人口比を累積したものであり、指標値が小さいほ どアクセシビリティは高くなる。また、累積機会指 標 Ki の余事象面積値は平均時間距離であることが 示されており 4)Qi指標は利用者全体の平均総所要 時間ともいえる。

(2) トリップ発生量を用いたQi指標の算出

本研究では横軸を徒歩による地下鉄駅までのアク セス時間とし、縦軸に地下鉄利用トリップの相対発 生量を累積し、Qi指標を算出する。つまり、本研究 における Qi指標は駅勢圏内を出発地とする利用者 の徒歩によるアクセス時間の平均値となる。また、

指標値に加えて、累積曲線の形状からも施設立地と トリップ発生量の関係が明らかにされる。

PT調査の小ゾーン、都市計画基礎調査の条丁目ゾ ーンと各駅の駅勢圏をGIS上で重ね合わせ、作成さ れたゾーン毎のトリップ発生量を累積することで Qi指標を算出している。また、各ゾーンの重心から 地下鉄駅までの直線距離を求め、各ゾーンからの徒 歩によるアクセス時間を算出している。

(3) 南北線と東豊線におけるQi指標

南北線と東豊線における Qi指標を算出した結果 を図 5 に示す。南北線では約 40%、東豊線では約

25%の地下鉄利用トリップが徒歩時間5 分以内の施

設から発生していることがわかる。指標値を比較す ると、南北線の値が東豊線を下回っている。徒歩に よる平均アクセス時間の長さとともに、駅から遠い 地区に発生する地下鉄利用トリップの割合が少なく ないことを示している。

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

0 5 10 15

南北線:Qi=6.47

東豊線:Qi=7.83

5 南北線と東豊線におけるQi指標 1.0

総所要時間 t A(t)

相対累積人口

1-A(t)

Qi

1.0

総所要時間 t A(t)

相対累積人口

1-A(t)

Qi

4 コンプリメンタリィ・アクセシビリティ指標の概念

南北線 東豊線 計 地下鉄・トリップ発生量 36,636 33,396 70,032 自動車・トリップ発生量 89,542 118,815 208,357 計 126,178 152,211 278,389

4 路線間におけるトリップ発生量の比較

(4)

5. 地下鉄駅周辺部の施設立地と交通行動

(1) 施設間におけるQi指標の比較

トリップ発生量の算出に用いた施設(11 分類)の うち、「住宅・寮」、「会社」、「店舗」を対象に施設毎 のQi指標を算出した(図6・図7)。南北線と東豊線 のいずれも「住宅・寮」の指標値が施設全体よりも 大きく、住宅からの地下鉄利用トリップは駅から遠 い地区でも発生していることがわかる。

一方、「会社」や「店舗」では駅から近い地区から 発生するトリップの割合が大きい。特に、南北線で は駅から5分以内の店舗から全体の約80%、会社か ら約60%のトリップが発生している。東豊線におい ても、駅に近い店舗や会社から発生するトリップは 高い割合を占めている。しかし、駅から遠い施設か らのトリップも少なくない。

(2) 地下鉄利用トリップと自動車利用トリップの比較 地下鉄利用トリップと同様に縦軸の相対トリップ 発生量に自動車利用トリップを用いた Qi指標を算

出し(表 5)、地下鉄と比較する。自動車利用トリッ

プによる Qi指標は地下鉄利用トリップを上回って おり、地下鉄駅から遠い地区において発生している 自動車利用トリップの割合が高いと考えられる。

「住宅・寮」から発生するトリップに着目する。

東豊線では地下鉄と自動車利用トリップの間の差が 小さく、累積曲線の形状もほぼ一致している(図8)。

東豊線沿線の住宅から発生するトリップと交通機関 に関し、地下鉄駅からの徒歩時間が与える影響は小 さいと考えられる。すなわち、駅から近い地区にお いても地下鉄のトリップ発生量の割合が少なく、自 動車が多いことを示している。

6. おわりに

本研究はQi指標を用い、施設立地とトリップ発生 量を関連させた分析を行ったものである。その結果、

駅からの徒歩時間が交通機関・施設毎のトリップ発 生量に与えている影響や駅周辺部の施設立地状況は 路線毎に異なっていることが明らかとなった。

本研究で対象とした南北線と東豊線のいずれの駅 にも乗車人員数は減少傾向にあるが、その要因は異 なるものと考えられる。今後は時系列分析等によっ て、減少要因を明らかにする必要がある。

参考文献

1) 札幌の都市交通データブック, 札幌市企画調整局総合号 交通対策部交通企画課, 2001

2) 3回道央都市圏パーソントリップ調査報告書, 道央都 市圏総合交通体系調査協議会, 1997

3) 日野智・岸邦宏・佐藤馨一:コンプリメンタリィ・アク セシビリティ指標の構築と公共交通システムの評価, 市計画論文集, Vol.34, pp475-480, 2000

4) 桝谷有三・浦田康滋・浅水嘉敏・田村亨・斉藤和夫:時 間距離から見た北海道の市町村間自動車交通流動の特 性について, 土木計画学研究・論文集, No.15, pp583-591, 1998

5 地下鉄トリップと自動車トリップにおけるQi指標

地下鉄 自動車 地下鉄 自動車 全体 6.47 6.94 7.83 8.15 住宅・寮 7.01 7.93 8.31 8.48 会社 5.22 6.50 7.16 7.78 店舗 3.55 4.79 6.53 8.39

南北線 東豊線

6 施設間におけるQi指標の比較(南北線) 0

0.2 0.4 0.6 0.8 1

0 5 10 15

住宅・寮:Qi=7.01 店 舗:Qi=3.55

会 社:Qi=5.22

0 0.2 0.4 0.6 0.8 1

0 5 10 15

住宅・寮:Qi=8.31 店 舗:Qi=6.53

会 社:Qi=7.16

7 施設間におけるQi指標の比較(東豊線)

8 住宅施設におけるQi指標の比較 0

0.2 0.4 0.6 0.8 1

0 5 10 15

地下鉄(南北線)

自動車(南北線)

地下鉄(東豊線)

自動車(東豊線)

参照

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