地山の内部摩擦角に着目したトンネルの岩種分類の提案
応用地質(株) 正会員 竹林 亜夫 正会員○三上 元弘 正会員 國村 省吾
正会員 奥井 裕三 正会員 呉 旭
1.はじめに
トンネル施工において内空変位と天端沈下を併せた坑内変位が大きくなり問題を生じる現象は、トンネ ル周辺地山に塑性域が形成された結果であり、その現象は地山強度比が2以下でかつ内部摩擦角が概ね
30°以下の地山条件で顕著であると報告されている1)。本論文では、岩石の内部摩擦角と坑内変位の関係
を調査するとともに、岩石毎の代表的な内部摩擦角を整理して示した。さらに、内部摩擦角に着目した岩 種分類方法を提案し、トンネル施工時に塑性変形が生じる可能性のある条件について、その位置づけを示 す。なお、ここでは岩石グループに分けることを指して岩種分類と呼ぶ。
2.坑内変位が大きくなる地山の指標
いわゆる膨張性を示す地山の指標として、地山強度比の他、細粒分含有率、モンモリロナイト含有率、
陽イオン交換容量、浸水崩壊度、塑性指数等があり、特に泥岩や凝灰岩に対してよく利用されている。一 方、変形が大きくなるものとしては、泥岩、凝灰岩、蛇紋岩、粘板岩、片岩、および破砕帯や変質帯等が 挙げられ、これらすべてに膨張性を示す地山の指標を適用できるわけではない。
既往のトンネル施工時の変位データを整理し分析した結果、地山強度比が2以下でかつ内部摩擦角が概
ね30°以下の地山条件において、塑性変形に伴って変形が大きくなることがわかっており1)、さらに下記
の事項が明らかとなっている3)。
1)岩石の一軸圧縮強度と含水比及び湿潤密度との間に相関がある。
2)岩石の内部摩擦角の大きさは構成する粘土鉱物により異なり、内部摩擦角を小さくする粘土鉱物は 概ね特定される。
3)岩石の内部摩擦角と2μm以下の粒子含有率ならびに塑性指数との間に相関がある。
4)粘土鉱物と液性限界、塑性限界ならびに陽イオン交換容量との間に相関がある。
これらの事実から、変位が大きくなる地山条件は、地山強度比(<2)と内部摩擦角(<30°)の2つ が代表的な特性であり、その他の指標は副次的な特性であるといえる。
3.内部摩擦角に着目した岩種分類
既往の文献調査により得た岩石毎の内部摩擦角の大きさを、日本道路公団の設計要領 2)に示されている 岩石グループを参考に整理して図−1に示す3)。同図より、内部摩擦角の平均値が30°以上のグループ(主 に塊状岩盤)と30°未満のグループ(主に層状岩盤)に分けることができる。このことから、内部摩擦角
が概ね30°以上の地山を φ地山、概ね 30°未満の地山を c 地山として分類する。なお、蛇紋岩の内、塊
状のものはφ地 山に、葉片状及び粘土質ものものはc地山に分類し、また高熔結の凝灰岩は φ地山に、低 熔結の凝灰岩はc地山に分類した。
φ地 山においては、破砕・変質を受けて地山強度比が2以下であっても、粘土化していなければ内部摩
擦角30°以上を有し、トンネル掘削時に変形が大きくならないことが多い1)。
一方、破砕・変質を受け粘土化した φ地山、ならびにc地山においては、地山強度比が2以下の場合に 変形が大きくなる。また、 φ地山において破砕変質を受け、粘土化している場合には地山強度比の低下と ともに変形が大きくなることが多い。これらの変形が大きくなる条件にある地山は、標準的な地山分類に 用いられる岩石グループには分類できない。そこで、表−1のように、内部摩擦角に着目し坑内変位の大
キーワード:トンネル 地山強度比 内部摩擦角 地山評価 坑内変位
連絡先:応用地質(株)技術本部 〒331‑8688 さいたま市北区土呂町 2‑61‑5 TEL:048‑665‑1811 FAX:048‑667‑9340 土木学会第58回年次学術講演会(平成15年9月)
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きさを考慮した岩石グル ープをここで提案する。
この表を参考にすること により、トンネル掘削時 において大きな変形が生 じるかどうかを判定し、
地山分類ならびに支保パ ターン適用の際の目安を 得ることができると考え る。
4.おわりに
本報文では、岩石毎の 内部摩擦角を整理し、地 山強度比が低い場合に内 空変位が大きくなる可能 性がある岩種を分類した。
内空変位が大きくなると 想定される場合には、特 殊支保パターン適用のた めに解析的検討が必要と なることが多いが、こう した岩種分類を基に地山 分類を行うことにより、
特殊支保パターン適用の 目安を得ることができる。
今後は、地山強度比なら びに内部摩擦角の評価を
合理的な支保設計に結びつける方法について検討していきたい。
表 ―1 坑内変位を考慮した岩種分類(参考文献2)に加筆)
S (破砕・変質岩と土砂) L(軟質岩) M(中硬質岩) H(硬質岩)
S-a
右のφ地山で、破砕変質を 受けているが粘土化してい ないもの。および第四紀砂 層・礫層
S-b
c地山
凝灰岩(低熔結)、
蛇紋岩(葉片状)、
千枚岩、頁岩(第三 紀層)泥岩
粘板岩、泥質片岩、
頁岩(中古生層)
φ地山
花崗岩類、ホルン フェルス、片麻岩、
斑れい岩、石灰岩、
チャート、角閃石 岩、砂岩(中古生層) 安山岩、玄武岩、石
英安山岩、流紋岩、
ひん岩、礫岩、砂岩 (第三紀層)、砂質片 岩蛇紋岩(塊状)
砂質凝灰岩・凝灰角 礫岩(高熔結)
φ地山の内、破砕・変質を 受けて粘土化したもの。
右のc地山で 破砕・変質を 受けたもの。および第四紀 シルト・粘性土層
砂岩(第三紀層)
蛇紋岩(塊状)
砂質凝灰岩(高熔結)
凝灰角礫岩(高熔結)
更新世礫層 更新世砂層 粘板岩 頁岩 泥質片岩 凝灰岩(低熔結)
蛇紋岩(葉片状)
泥岩
蛇紋岩(粘土質)
温泉余土
断層粘土 ○平均値
岩
土 砂
変 質 岩 破 砕 軟 質 岩 中 硬 質 岩 軟 質 岩
c地山
10 20 30 40 50 60 70
内部摩擦角 (degree)
花崗岩 花崗閃緑岩 片麻岩 斑れい岩 石灰岩 チャート 砂岩(中・古生層)
安山岩 玄武岩 緑色片岩 流紋岩 礫岩
硬 質 岩
中 硬 質
Φ 岩 石 名
φ地山
図−1 岩石毎の内部摩擦角
参考文献
1)竹林・三上・國村・奥井:山岳トンネル工法における岩盤の強度定数と内空変位の関係に関する事例研究,
土木学会トンネル工学研究論文・報告集,第11巻,pp183〜188,2001 2)日本道路公団:設計要領第三集(トンネル),1997
3)竹林・滝沢:トンネル掘削時の坑内変位に関する地質工学的研究,応用地質技術年報,No.21,2002 土木学会第58回年次学術講演会(平成15年9月)
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