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氏名(生年月日)
本 籍
学位の種類
学位授与番一号 学位授与の日付
学:位授与の要件学位論文題目 論文審査委員
豊田智里(昭和
トヨ ダ チ サト医学博士
乙第17.号
昭和40年2月19日
学位規則第5条第2項該当(博士の学位論文提出者)
いわゆる隔膜性肝硬変について
(主査)教授今井三喜
(副査)教授梶田 昭,教授簑島
高論 文 要
旨1.いわゆる隔膜性肝硬変に現われる形態動向を臓器 病理学的観点から検討する目的で,本学病理学教室の剖 検材料中からえらび出した例について,連続切片の逐次 的鏡検:,描画再構成,あるいはKelty方式(多数の描 画硝子板を重ね合わせた上,透視する方法)等による検 索を行ない,次の結果を得た.
2.隔膜性硬変の形態的成り立ちは,R6ssle, Elias,
Popperらの想像した経路,すなわち肝小葉内(intra-
lobular)に一次的に隔膜があらわれ,それによる小葉 実質の分断を通じて=:次的に改築が実現するという経路 をとらない.
隔膜形成と改築は,むしろ共通の基盤iから発し相伴っ て進展する2現象であり,その共通の基盤とはグリソン 鞘内に不均等に発現、した炎症性変化ないしは結合織増
生,それに基づくグリソン鞘一隅実質界面の部分的な障害 である.
3.改築はこのような界面障害による小葉内実質の部 分的減量と,これに対応する残存部の種々な程度の肥大
に伴う小葉空間の変容として理解される.
また隔膜は,そのように不均等な小葉の部分的遅栄養 化がたまたま小葉間(interlobular)地帯を含むか,あ
るいはこれにすぐ接して進展した際,そこの小葉間界面 に膠原物質が発現し,膜状にまで融合したものと判断さ れる.小葉間界面は,人における正常ないし病的な諸局 面の観察,また比較形態学的な考察からすれば,もとも とグリソン鞘の延長的な性格をもち,状況によってはグ リソン鞘と連って膠原物質が発現しやすい地帯である.
したがって上記の隔膜形成は,そのような潜在傾向が,
異常な条件の下に肝内随所で顕在性に転じた一つの特殊 な場合と見られる.
4.隔膜形成に随伴する小葉空間の歪みにつれて隔膜 一中心静脈間の距離は縮まり,しばしば中心静脈の或る区:
間は隔膜と接着するにいたる.
5.いわゆる隔膜性硬変と異なる形態特徴をもつ他種 の肝硬変でも,その一部には上記と同形の隔膜形成が起 こりうる.ただそれらの場合は,癩痕性結合織帯や,実 質がまとまって一挙に脱落した後の格子線維網緻密化の ような,粗大な変化の拡がりが前景に出,隔膜形成の如 ききめの細かい変化の出るべき場がしばしば事前事後に 乱されがちであるという点で,いわゆる隔膜性硬変から 区別される.ひろい意味で侵襲の強さの差といえよう.
6.隔膜性硬変で変化にまきこまれたグリソン鞘で は,動脈枝の発達がいちじるしい.しかしこれらの枝が 独立して実質域に深く入りこみ,そこで類洞網に移行す る所見は稀であり,実質への流入は主としてグリソン鞘 で,毛細管ないしは毛細管化した上,類洞に回る形をと る.(なお一部は実質域を経ず,グリソン鞘一中心静脈 の癒着部を通じて静脈に入る血流もあるものの如くであ る.)これは1血液流入路末端と流出路始部の間で栄養さ れうる実質の厚さを考える際,見遁しえない条件という ばかりでなく,門脈臓器としてひとたび成り立った肝臓 実質の循環が,門脈流床という枠に執着する傾向のあら われとも考えられる.
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論 文 審 査 の 要 旨
著者の用いた組織学的ならびに立体再構成法により,隔膜性肝硬変においては,隔膜形成がグリソン鞘
・肝実質界面の部分的障害を基礎として,肝の改築に併行して進行することが明らかにされた.また,隔 膜性肝硬変とは異る形態特徴をもつ他種の肝硬変でも,その一部にはこれと同形の隔膜形成が起こり得る
ことを証明した.本研究は隔膜性肝硬変のみならず,いまだ不明の点が多い肝硬変の組織発生の解明に寄 与するところが大きい.よって学位に値するものと判断する.
主論文公表誌
いわゆる隔膜性肝硬変について 東京女子医科大学雑誌
第34巻第10号558~571頁(昭和39年10月25日発行)
参考論文公表誌
1.異常に長い経過をとった血行性結核の1例
東女医大誌 30(11)2623~2627頁(昭禾035年11月)
2.循環の不全一心室の適応形態を中心として一 束女医大誌 34(1・2)1~26頁(昭和39年2月)
3.剖検心より左心室を分離する1方法について 東女医大誌 34(4)169~174(昭和39年4月)