緒 言
iNKT細胞は均一なT細胞受容体α鎖(ヒト:
Vα24Jα18,マウス:Vα14Jα18)を持ち,抗原提示 細胞上の major histocompatibility complex (MHC)
様受容体であるCD1d上に提示された糖脂質抗原 (α-galactosylceramide (αGalCer)など)を認識する ことで,多様なサイトカインを迅速かつ大量に分泌 する機能を持ったユニークかつ,免疫機構における 重要な役割を担うリンパ球の亜集団である1)。iNKT
原 著
聖マリアンナ医科大学雑誌Vol. 42, pp. 233–242, 2015Interferon Regulatory Factor 7
は,
Invariant Natural Killer T
細胞活性化の調節因子として作用する
山 やま 中 なか 弘ひろ之ゆき1,2 鈴すず木き 直なお1 清せい野の研けん一いち郎ろう2 (受付: 平成26年11月28日) 抄 録
Invariant Natural Killer T(iNKT)細胞とは,抗原刺激を受けることで多様なサイトカインを 迅速かつ大量に産生するユニークかつ,獲得免疫系を効率よく誘導するための重要な役割を有 する細胞である。しかし,この特徴的なサイトカイン産生制御機構を説明するには,まだ充分 な研究がされておらず,また生体内での分化誘導に関しても確立された説がない。今回我々は, Interferon regulatory factor 7(IRF7)が,iNKT細胞の分化誘導並びに活性化状態の制御に影響
することを見出したので報告する。我々は野生型,IRF7欠損マウスを用いた検討にて,IRF7
がiNKT細胞に及ぼす影響の検証を行った。その結果,iNKT細胞におけるIrf7は,定常状態
で形質細胞様樹状細胞(Plasmacytoid dendritic cells (pDCs))と同程度のmRNA発現レベルで あり,それはT細胞受容体(T cell receptor (TCR))刺激によって早期に上昇することを見出し た。さらにIRF7欠損マウスではTCR刺激によるIfngの発現上昇が抑制されていることも見出 した。これらの現象から,IRF7がiNKT細胞の成熟に関与していること,さらに,活性化の調 節に関与していることが示唆された。本研究はiNKT細胞活性調節解明の出発点となる可能性 がある。 索引用語 iNKT細胞,IRF7 細胞は, マウスにおいては末梢血Tリンパ球中の 0.5%と少ない集団であるが1),T細胞受容体(T cell receptor (TCR)) α鎖だけでも108通りのレパート リーが存在することから考えると,iNKT TCRα鎖 を構成するVα14だけで見ても,その存在頻度は期 待値の104∼106倍の数となっている特殊なT細胞で もある1)。また,iNKT細胞は,感染および,腫瘍排 除といった免疫機能を活性化させるその初期反応を 担っており,iNKT細胞から抗原刺激後早期に分泌 されるサイトカインは,獲得免疫系を迅速に誘導す るために必須である1)2)。しかし,これらiNKT細胞 の存在比率および特徴的なサイトカイン分泌機構の 制御についての研究はまだ十分になされてはいな 1 聖マリアンナ医科大学 産婦人科学講座 2 北海道大学遺伝子病制御研究所 免疫生物分野
い。この点に言及すべく我々は,RefDIC (reference database of immune cells http://refdic.rcai.riken.jp/ profile.cgi))を参考に,iNKT細胞で高発現している 分子の中から候補として,Interferon regulatory factor
7(IRF7)に注目し,機能解析を行った。
IRF7は,Interferon regulatory transcription factor familyに属する転写因子で,Ⅰ型インターフェロン
産生制御に関わる重要な因子である3)。 ウィルス感
染時,Toll様受容体(Toll like receptor(TLR))を介
したシグナルによりIRF7は活性化され,Ⅰ型イン
ターフェロンの産生を誘導する機能を持つ3)4)。この
機能は樹状細胞,特に形質細胞様樹状細胞(
Plasma-cytoid dendritic cells(pDCs))において特徴的なもの
とされており3), 生体における抗ウィルス活性に関 与することが報告されている4)。しかし,T細胞系へ のIRF7の関わりについての報告は少数である。 本 研究では,IRF7欠損マウスを用いた検討にて,iNKT 細胞の存在頻度の低下と,本来高発現であるべき活 性化マーカーの一つであるCD69が著明に低下して いたことを発見した。ここから,IRF7はiNKT細胞 の増殖および活性化の調節に関与している可能性を 見出したので報告する。 材料および方法 動物
C57BL/6JJmsSlcはSLC Japan(shizuoka, Japan) より購入した。IRF-7 knockout mouse, C57BL/6Jは, RIKEN BRC(Ibaraki, Japan)より購入した。Jα18 knockout mouseはRIKEN IMS (Kanagawa, Japan) 免疫制御戦略研究グループより分与を受けた。全て 6∼8週齢のオスマウスで検討した。マウスは,北海道 大学遺伝子病制御研究所附属動物実験施設にて,国立 大学法人北海道大学動物実験に関する規程に則り,適 切に飼育,繁殖,実験が行われた(承認番号:12–0072. 実験に用いたマウス匹数: C57BL/6JJmsSlc 30匹, IRF7 knockout mouse 20匹,Ja18 knockout mouse 2 匹)。
フローサイトメーターでの解析および細胞分取 マウス脾臓,肝臓,胸腺より採取した細胞は,抗 CD16/CD32(2.4G2)抗体を反応させた後, 蛍光標
識された各抗体を反応させた。細胞内染色は,
Cyto-fix/Cytoperm kit(BD bioscience, Franklin Lakes, New Jersey, USA)を製品プロトコールに沿って行っ
た。蛍光標識した細胞をFACS Canto II (BD Biosci-ence, Franklin Lakes, New Jersey, USA)で測定し, FLOWJO (LLC, Ashland, Oregon, USA)で解析を 行った。また,FACS Aria II (BD Bioscience, Frank-lin Lakes, New Jersey, USA)を用いてiNKT細胞お
よびpDCsの分取を行った。iNKT細胞は, 死細胞
を7-amino-actinomycin D (7-AAD)(BD Bioscience, Franklin Lakes, New Jersey, USA)で除いた中の TCR-+, CD1d-αGalCer dimer+ 集団を,pDCsは
CD19−, CD11cint, B220+ 集団をソーティングした。
純度は98%以上であることをアフターソーティング
にて確認した。 抗体標識の際は,2%ウシ胎児血清
(Nichirei Bioscience Inc, Tokyo, Japan), 0.05%アジ
化ナトリウム入りのPBSを溶媒として使用した。細 胞1×106個あたり蛍光標識抗体ないしアイソタイプ コントロールを0.25 μgで標識した。 使用した蛍光 標識抗体は,抗CD25抗体(PC61),抗CD49b抗 体(DX-5),抗CD11c抗体(HL3)をBD社より,抗 TCR-抗体(H57-597),抗CD8a抗体(53-7.6),抗 CD19抗体(MB19-9), 抗CD44抗体(IM7), 抗 Foxp3抗体(FJK-16s)をeBioscience社より, 抗 T-bet抗体(4B10),抗CD4抗体(RM4-5),抗CD3 抗体(145-2C11),抗CD94抗体(18d3),抗CD69 抗体(H1.2F3),抗CD45R/B220抗体(RA3-6B2)を Biolegend社より購入, 使用した。CD1d-αGalCer dimerはCD1d fusion protein (Dimer XI (Biolegend, San Diego, California, USA))にαGalCer(KIRIN7000 Kirin Brewery Co., Ltd. Tokyo, Japan)を添加したも
のに対して蛍光標識された抗IgG抗体(
Rat-anti-mouse IgG1(A85-1, BD Bioscience, Franklin Lakes, New Jersey, USA)で標識して作成した。
定量的RT-PCR
Total RNAは,RNeasy Plus Mini Kit (QIAGEN, Venlo, Netherlands)で抽出。cDNA合成はSuperScript III (Invitrogen, Waltham, Massachusetts, USA)を用 いて行った。方法は共に製品プロトコールに従って 行った。合成したcDNAを用いて,Irf7, Ifng, Tbx21 のmRNAレベルをHypoxanthine- guanine phospho-ribosyl transferase (Hprt)を house keeping gene と
して用い,∆∆CT法を用いて算出した。使用したプ
ライマーは,Ifng, Tbx21, Hprt はQuantitect primer assay (QIAGEN, Venlo, Netherlands)を用い,Irf7 はF: GAGACTGGCTATTGGGGGAG-3’ R:
5’-GACCGAAATGCTTCCAGGG-3’ を 使 用 し,Fast SYBR green PCR Master Mix (Applied Bioscience) を用いて,StepOne Real-time PCR system (Applied Biosystems, Waltham, Massachusetts, USA)にて測 定した。
In vitroでの細胞刺激および培養
96穴flat bottom plateに3 ng/mlの抗CD3抗体を
入れ,一晩4℃にて保存。翌日,野生型マウスの脾 臓よりソーティングしたiNKT細胞を抗CD3/CD28 刺激群は,培地に最終1 ng/mlとなるように抗CD28 抗体を入れ,2×104/wellで抗CD3抗体のコーティ ングプレートに入れた。細胞は37℃,5% CO2環境 下で培養した。 培養6, 16, 24, 42時間の時点で細 胞を回収し,定量的RT-PCRにてIfng発現レベルを 測定した。測定および解析方法は上記と同様に行っ た。 細胞増殖試験および Enzyme-linked
immune-sor-bent assay(ELISA)
96穴round bottom plateに野生型ないしIRF7欠
損マウスから採取した脾臓細胞を2×105個ずつ入
れ,無刺激,αGalCer 1 ng/ml, 100 ng/mlと刺激条件 を変えて,37℃, 5% CO2環境下で培養した。 培養
開始後72時間の時点で細胞培養上清を回収し,
IFN-γ濃度をELISA MAX(Biolegend, San Diego, California, USA)を用いて製品プロトコールに沿っ て測定した。測定はMALTISKAN (Thermo SCIEN-TIFIC, Kanagawa, Japan)を使用。また,ソーティン グをしたiNKT細胞2×103個を35 Gyの放射線照射 をした Jα18/ マウス由来の脾臓細胞と共培養し,同
様の培養法,検出系で,IFN-γ濃度の測定を行った。
また48時間の時点でトリチウム標識のthymidineを 添加し(1 μCi/well),8時間37℃,5% CO2環境下で 培養した。その後,cell harvester(INOTECH, Basel, Switzerland)を用い,Printed Filtermat A ( Perkin-Elmer, Waltham, Massachusetts, USA)に細胞をト ラップし,MicroBeta2 (PerkinElmer, Waltham, Mas-sachusetts, USA)にてthymidine取り込み細胞数の
測定を行った。培養に使用した培地は,RPMI1640
(Wako, Osaka, Japan)に10%ウシ胎児血清(Nichirei Bioscience Inc, Tokyo, Japan), 0.1 mM non-essential amino acids, 100 IU/ml penicillin, 100 μg/ml strepto-mycin, 1 mM sodium pyruvate, 10 mM 4-(
2-hydroxy-ethyl)-1-piperazineethsnnesulfonic acid, 100 μM -Mercaptoethanol, 2 mM glutamine(全 て Gibco, Waltham, Massachusetts, USA)を添加したものを使 用した。 統計学的解析 データは平均値±SEM で示した。2群間の平均値 の比較は,t検定での有意差判定を行い,p<0.05の 時に有意差ありと判定した。 結 果 野生型とIRF7欠損マウス脾臓,肝臓,胸腺細胞中 のリンパ球の細胞表面抗原を用いたフェノタイプ解 析 はじめに我々は,IRF7欠損状態がリンパ球の存 在比率にどのような変化を生じるかを解析した。 まず,脾臓のCD4+ T細胞,CD8+ T細胞,B細胞 (CD19+細胞),iNKT細胞(TCR-+, CD1d-αGalCer dimer+細胞),NK細胞(DX5+, CD94+細胞),制御 性T細胞(Foxp3+, CD4+細胞)をターゲットとして 細胞表面抗原をフローサイトメトリーで確認した。 その結果,リンパ球系では制御性T細胞を除くT細 胞系が減少している傾向が見られた(図1a)。 同様 の傾向が肝臓中のリンパ球でも認められ(図1b),そ の中でもiNKT細胞は,脾臓,肝臓の双方で野生型 と比較し,有意に減少していることが明らかとなっ た(p<0.05)(図1c)。このT細胞系,特にiNKT細 胞の減少の原因に言及するために,T細胞分化,成 熟の場である胸腺内のT細胞系についても検討した。 しかし,胸腺内T細胞では,iNKT細胞の存在頻度 が低下している傾向にあったものの,T細胞成熟過 程を細胞表面抗原で確認したところ,そこに明確な 差は見られなかった(図1d)。さらに,iNKT前駆細 胞(CD4−, CD8−, TCR-+, CD1d αGalCer dimer+ 細胞)の存在頻度にも, 明確な差は認められなかっ た(図1d)。 iNKT細胞におけるIRF7の動向 IRF7欠損マウスのリンパ球の細胞表面抗原を用い た検討では,T細胞,特にiNKT細胞の分化,増殖 に障害が生じていることが予想された。 ここから, IRF7の機能をiNKT細胞に注目する形で検討するこ ととした。まず,iNKT細胞の定常状態でのIrf7の 発現レベルを見てみたところ,IFN-αの産生細胞と
CD CD CDC CD 㔝⏕ᆺ
a
CD CD CDC CD CD CD C D CD 㔝⏕ᆺ CD ⣽⬊ ⣽ ⬊ 䛾 Ꮡᅾྜ CD CD C D CD C C CD C C CD CD CD CD 㔝⏕ᆺ CD CD ⣽⬊㞟ᅋ䛻䛚䛔䛶 CD ⣽ i ⣽⬊ ⭁⮚ ⫢⮚ 㔝⏕ᆺ 䝸䞁䝟⌫㞟ᅋ ୰ 䛾 図 1 IRF7 KO マウス中の脾臓,肝臓,胸腺細胞中のリンパ球の割合の検討 (a) 脾臓細胞中のリンパ球を細胞表面抗原で解析した結果。(b) 肝細胞中のリンパ球を細胞表面抗原で解析した結果。 (c) 脾臓,肝細胞のリンパ球に占める CD4+ T細胞,CD8+ T細胞,iNKT 細胞の割合。(d) 胸腺細胞中の iNKT 細胞 および T 細胞分化を細胞表面抗原で解析した結果。全て n=3 再現性あり。 *: p<0.05。 して知られているpDCsよりもやや高いmRNAレベ ルであることが確認された(図2a)。 このことから iNKT細胞は,IRF7に依存した何かしらの機能を持 つ可能性を考えT細胞活性化刺激として抗CD3/ CD28刺激を加えIrf7発現レベルの継時的変化を調 べた結果,in vitroでの検討では刺激後早期に著明な 増加を認めた(図2b)。 野生型とIRF7欠損iNKT細胞のTCR刺激応答の 検討 先の検討でIRF7はTCR刺激後, 早い段階での mRNA発現上昇を認めた。iNKT細胞はTCR刺激 後早期にサイトカインmRNA発現レベルが上昇す ることが過去に報告されている1)。 そこでIrf7の変 遷がiNKT細胞のサイトカインmRNAの動向と類0 1 2 3 4 5 6 7 0 6 16 24 42 Ir f7 Ⓨ ⌧ 䝺 䝧 䝹 㛫(hours) 3 2
a
b
0 0 2 0 4 0 6 0 1 1 2 1 4 Ir f7 Ⓨ ⌧ 䝺 䝧 䝹 s 図 2 iNKT 細胞における IRF7 の動向(a) 定常状態の間質細胞様樹状細胞(pDCs)と iNKT 細胞の Irf7 発現レベルの比較。 (b) CD3/28 刺激に伴う iNKT 細胞の Irf7 発現量の変遷。 a は n=3 で再現性あり。 bは 4 回検討し再現性あり。 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5 5 3H-thymidine ྲྀ䜚㎸䜏ᩘ (c pm x1 0 3) 㔝⏕ᆺi ⣽⬊ - -i ⣽⬊ 㔝⏕ᆺ ⭁⮚⣽⬊ - -⭁⮚⣽⬊ 㔝⏕ᆺi ⣽⬊ - -i ⣽⬊
c
d
0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 0 1 4 12 24 3 4 Ⓨ ⌧ 䝺 䝧 䝹 㛫(h ) 㔝⏕ᆺi ⣽⬊ - -i ⣽⬊ 0 0.2 0.4 0. 0. 1 1.2 1.4 1. 1. 2 0 1 100 ⃰ᗘ (n m ) e ⃰ᗘ (n m) 0 150 300 450 00 50 00 0 1 100 ⃰ᗘ (p m ) e ⃰ᗘ (n m) 0 1 100 e ⃰ᗘ (n m) 図 3 iNKT 細胞特異的な活性化刺激によるフェノタイプ解析(a) 抗 CD3/CD28 刺激による Ifng 発現量の変遷。(b) 脾臓細胞の in vitro での αGalCer 刺激による IFN-γ 産生量。 (c) iNKT 細胞と Jα18/ 脾臓細胞を共培養した際の αGalCer 刺激による IFN-γ 産生量。(d) iNKT 細胞と Jα18/ 脾
似していることに注目し,TCR刺激によるシグナル からのiNKT細胞のサイトカイン産生にIRF7が影 響している可能性を考えて,iNKT細胞が産生する サイトカインとして特に主要なものであるIfngの発 現レベルのタイムコースを確認した。すると,IRF7 欠損iNKT細胞では,野生型でみられるべき刺激後 早期のmRNAレベルの上昇がみられなくなった(図 3a)。そこで,in vitro培養におけるIFN-γの分泌量 をELISAで確認したが, 脾臓細胞でのαGalCer刺 激実験ではその濃度に明確な差は見られなかった(図 3b)。一方,Jα18/(NKT欠損)マウスの脾臓細胞を 抗原提示細胞として用い,IRF7が正常である抗原 提示細胞が存在する中での野生型およびIFR7欠損 iNKT細胞のサイトカイン産生能を確認したところ, 興味深いことに,IFN-γの産生が増強される結果と なった(図3c)。次に,iNKT細胞の増殖能を thymi-dine取り込み試験で比較してみると,Jα18/ マウス 由来の脾臓細胞との共培養ではその取り込み量に差 は見られなかった(図3d)。 IRF7のiNKT細胞活性化並びに分化への関与の検 討 先の実験結果から,IRF7欠損iNKT細胞は,正常 環境下ではIFN-γ産生能が増強されること,増殖能 が野生型並みになることが明らかとなり,周囲環境 のIRF7の存在がiNKT細胞の機能に影響している こと,また,iNKT細胞自身の活性化能に影響して いることが予想された。 ここで我々はまずIRF7欠 損状態がiNKT細胞に及ぼす影響に注目し,T細胞 活性化マーカーの一つであるCD69の発現を比較し てみたところ,IRF7欠損iNKT細胞では,マーカー の著明な低下を認めた(図4a, 4b)。CD69陽性細胞 のパーセンテージを比較してみると,iNKT細胞で は有意差が生じるまでに低下を認めた(図4c)のに 対して,CD4+ T細胞では有意差が生じる程度の低 下はみられなかった(図4d)。続いて,iNKT細胞の 成熟および機能がIRF7によってどのような影響を 受けるかをiNKT細胞の大部分を占め,主にIFN-γ の産生に関与する NKT15)の成熟並びにIFN-γ産生 にも関与するT-betの発現の検証を行った。 ます, Tbx21(T-bet mRNA)発現レベルを比較してみると, IRF7欠損iNKT細胞では野生型と比べ,著明に低下 していた(図4e)。そこでiNKT細胞のT-bet発現レ ベルを細胞内染色で比較してみたところ,IRF7欠損 iNKT細胞でT-bet陰性のiNKT細胞群がわずかに増 えていた(図4f)。しかしT-bet陽性iNKT細胞の存 在頻度を比較してみると,そこには有意差は認めら れなかった(図4g)。 考 察 IRF7は,Ⅰ型インターフェロン産生制御のキーと なる分子であることは,過去に数多くの報告がされ ている4)6)7)。しかしリンパ球,特にT細胞系細胞へ の関与に言及する報告は未だ多くはない。さらにそ の報告内容もT細胞機能の根幹に言及するものは少 なく,中にはT細胞機能制御とはかかわりがないこ とを報告したものもある7)。 しかし我々は, 本研究 を通じ,IRF7がiNKT細胞の増殖並びに活性化に影 響していることを示唆した。まず末梢のT細胞,特 にiNKT細胞の存在頻度の低下がIRF7欠損マウス で認められた。しかし,胸腺内のT前駆細胞の分布 からはT細胞の分化成熟にはIRF7は関わっていな いことが予想される。さらにこれを明らかにするた めにはiNKT細胞並びに抗原提示細胞上のiNKT細 胞分化成熟に関する因子の比較検討を行う必要があ り, 今後の検討課題である。 またIRF7欠損iNKT 細胞はIRF7を発現している抗原提示細胞との共培 養においてはその増殖能は野生型と同等であったこ とを明らかにした。この一方で,野生型並びにIRF7 欠損状態での脾臓細胞をαGalCer刺激下で培養した ところ,その増殖能が低下する傾向を確認した(デー タは示していない)。しかしこの検討でiNKT細胞の 増殖能を明らかにするには,そもそものiNKT細胞 数の存在割合に差があるという問題点があった。こ の点を明らかにするために,IRF7とJα18ダブルノッ クアウトマウスを作製してこのマウス由来の抗原提 示細胞との共培養にてこの現象の検討を進める必要 があり,今後の検討課題である。また,この実験系 においてIRF7欠損iNKT細胞のサイトカイン産生 量が野生型のものより高値となったことは興味深い 結果である。過去に実験的自己免疫性脳脊髄炎を誘 導したIRF7欠損マウスで,末梢でのIFN-γ産生性 の CD4+細胞が増加したという報告8)がされている こと,特定のウィルス感染をさせることで,NK細 胞,NKT細胞の増殖能が過剰に増強させるという報 告9)がされている。この現象は,IRF7欠損iNKT細 胞が活性化状態となった際には,その反応は過剰な ものとなる結果,多くのT細胞系でIFN-γが産生誘
導され,免疫のバランスが崩れた結果,炎症反応を 増悪させることにつながることも可能性として考え られる。この現象がその他のサイトカインでも見ら れるかどうかについて私共はIL-4では同様の傾向が みられる結果を得ている(データは示していない)。 加えてその他の炎症性サイトカインの産生増強並び に抑制性サイトカインの産生減弱といった点の解析 が今後の研究課題となる。しかし一方で興味深いこ とに, 定常状態ではIRF7欠損iNKT細胞において T細胞活性化マーカー,とりわけ,活性化の初期過 程に関与することが言われているCD69の発現低下 がみられている11)。CD69の発現レベルはiNKT細 胞においては定常状態であっても高発現しているこ とが過去の報告から明らかとなっている12)。そして これはiNKT細胞の迅速な刺激応答を反映してのもの と考えられている。このことから,IRF7欠損iNKT 細胞では刺激後早期の免疫応答に障害が出ている可 能性が考えられた。 この点を明らかにするために IRF7欠損マウスを用いた悪性黒色腫転移モデル13)14) におけるiNKT細胞活性化による治療実験を行った ところ,野生型と比較して治療効果が減弱する傾向 にあることがpreliminaryな実験から得られたが (データは示していない)今後確認の必要があるもの の,この現象についてはIFN-γ産生性のiNKT細胞 の分化およびIfngプロモータータンパクでもある T-betの発現15)が抑えられている傾向にあることが, IRF7のiNKT細胞分化並びに機能を明らかにするた めの根拠の一つとなることが期待される。 他にも, 40 60 80 100 i ⣽⬊ 4 6 6 㔝⏕ᆺi ⣽⬊ i ⣽⬊ 0 100 0 400 600 800 6 i ⣽⬊䛾ྜ 㔝⏕ᆺ 0 1 4 6 8 4 ⣽⬊୰䛾 6 ⣽⬊䛾ྜ 㔝⏕ᆺ 0 4 0 6 0 8 1 1 Ⓨ ⌧ 䝺 䝧 䝹
a
b
c
d
e
f
g
0 0 0 0 㔝⏕ᆺ 㔝⏕ᆺi ⣽⬊ i ⣽⬊ 㔝⏕ᆺ i i 図 4 iNKT 細胞の活性化および成熟に関する検討(a) iNKT 細 / 胞の CD69 発現レベルの検討(フローサイトメトリー 2 次元展開)。(b) iNKT 細胞の CD69 発現レベルの検討(フローサイトメトリーでの iNKT 細胞中の CD69 発現レベル) (c) iNKT 細胞中の D69陽性細胞数の比較。(d) CD4 T 細胞中の CD69 陽性細胞数。(e) iNKT 細胞の Tbx21 発現レベルの 比較。(f) iNKT 細胞における T-bet 発現量の比較。(g) iNKT 細胞中の T-bet 陽性細胞の割合。各 3 回 検討施行し,再現性あり。 *: p<0.05。
IRF7欠損に伴う他の免疫細胞への影響,周囲環境へ の影響,iNKT細胞自身においてもどの活性化シグ ナルに影響しているかなど,まだまだ行うべき検討 は山積している。本実験で得られた結果はiNKT細 胞の早期の免疫応答が低下していることも原因の一 つとして考えられた。また,一方でサイトカイン産 生量の増加を示唆する結果も得ていることから,本 研究を通じて1)IRF7はiNKT細胞が迅速に活性化 するためにある程度の活性状態を維持しておくこと に関わる因子であること,2)iNKT細胞がサイトカ イン産生刺激を受けた際に異常な活性化を抑えるブ レーキとしての役割に関わる因子であること,その 2点を示唆することができた。今まで,IRF7がT細 胞そのものに影響を及ぼすことに言及した報告は少 なく,我々の検討でもT細胞全体として見てみると, その影響は極めて軽微なものであった。しかしiNKT 細胞に注目した検討を進めることで,T細胞系でも 様々な影響を及ぼしていることが明らかとなった。 本研究成果が,未だ不明点の多いiNKT細胞の特徴 を説明するための, そしてIRF7の新たな機能を解 明するための出発点となる可能性がある。 謝 辞 本研究は, 主に北海道大学遺伝子病制御研究所, 免疫生物分野にて, 香城諭講師, 和田はるか講師, Muhammad Bughdadi助教はじめ,免疫生物分野が ん研究グループ(チームC)のご指導,ご鞭撻の下進 めてまいりました。ご協力を賜りました皆様にこの 場をお借りして深く御礼申し上げます。 引用文献
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Abstract
Interferon Regulatory Factor 7 Works as a Regulator of
Invariant Natural Killer T Cell Activation
Hiroyuki Yamanaka
1, 2, Nao Suzuki
1, and Ken-ichiro Seino
2Invariant natural killer T (iNKT) cells are a subset of T cells that are located between innate and adaptive immune systems and play important roles in the regulation of immune responses. iNKT cells are characterized by the ability to produce large amounts of cytokines following activation. In particular, IFN-γ released by iNKT is considered one of the key molecules for the augmentation of early immune responses against tumors or infec-tions. However, molecular mechanisms that regulate cytokine production in iNKT cells are not fully understood. In this study, we identify a novel role for Interferon-regulating factor 7 (IRF7) as a master regulator involved in the development of iNKT cells and IFN-γ production. Irf7 is expressed in iNKT cells at similar levels with plas-macytoid dendritic cells (pDCs). Utilizing Irf7–/– mice, we found that the deficiency of Irf7 has led to decreased frequencies of iNKT cells in the thymus. Furthermore, Irf7–/– iNKT cells showed impaired IFN-γ response following stimulation with anti-CD3/CD28 or α-galactosylceramide (αGalCer) compared to wild type (WT) iNKT cells, while proliferation was comparable between the two groups. In a lung melanoma metastasis model, Irf7–/– deficiency impaired antitumor functions of iNKT cells and abolished therapeutic effects of αGalCer com-pared to WT mice. Together, these results suggest an important role for IRF7 as a regulator of the development of iNKT cells. In addition to IFN-γ production.
1 Department of Obstetrics and Gynecology, St. Marianna University School of Medicine 2 Division of Immunobiology, Institute for Genetic Medicine, Hokkaido University