高山 大学教 養部 紀 要 仏文 . 社会科学 篇l.
2 4
く21二 卜
2 2, 1 9 9 1.r
梨
盗みJ の意 味ア ウ グステイ ヌ ス F告白A 第2 巻 ‑
松 崎 一 平
富山大 学 教養 部
T h e M e a ni
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g of t he P e a r ‑T heft‑ A ugu stin u s, Co
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fe s sion
e s,I I ‑工pp ei M A T SUZ A K 王
よく 知ら れ て
い
る ようにF
告 別 第2 巻の後 半, 4 牽9 節から 9 章17節 似下策2 巻の 牽.節を 指示 し たい
場 合に は巻 数 を 略 し,r
4,9J r
9,17J
とい
うように略 記 するl に おい
て ァゥグステイ ヌ スは, 自 分が十六歳の時に お かしたr
梨 盗みJ
を 回 想 し, そ れの動 機につ
い
て 増 加 執 筆 時期の立場から深 く 考 察 してい
る. 頂 盗みJ
が具 体 的には どのような出 来事だ っ たのか とい
うこと につ い
ての記述は, 次 に その全文を引 用するが, あっけ ない
程 に簡 潔であるo私 た ちの葡 萄畑の近 くに 一 本の実の なっ た梨の木があっ たo その実は姿 形
の
点でも昧 の点でも 魅 力あ るもの で は な かっ たo ニ の木を揺り動か し実 を 落 すため に, 私 た ちや く ぎな若 者は真 夜 中に 忍 び込んだo そ んな 時 刻 まで私たち は不 健 全な 習慣に従っ て, 空き 地で遊び続け てい
たの
だっ たJ 私 た ち は そこか ら沢 山の
莫 を持ち 去った が一 郎t は 私た ちの
御 馳 走にするた め では な く, 結 局は 陳 どもに段げ与え て し まっ たの
だ っ た亡, もっ と も私 た ちもその
中の い
くつ
かを 食べ
ほ L た が, 許さ れ てい
ない
こと をするの
がおもL ろしい
い
か らこそ, その
盗みは 私たちによ っ て行わ れたの
だく一F
if.IヨKBの
執 筆にIFk 立つ
こと二十Iti‑f
F‑以卜も 前の
汁 牌 糾二 つ い
ての
. 従っ て細い ことも 当 然であ るこ の記述 は, 事 実の
報 告 をめ ざすもの
だ ろうが, 軒長の
柁を はみ.Lh してい
る と 思わ れ る一t
.
I
.
.
.
. L例え ば
r
やくぎ なJ とかr
不 健 全なJ とかの
一書掛こ
l.,.い
て,軒
別 ,札 執筆時 期1
の立場か らの評 価が現れ て
い
る とい
う よ う な1 を も 含ん でい
るo で はr
許さ れ てい
ない
こ とを するのが おも しろい
か らこそ, その盗みは 私 た ち によっ て行わ れ たのだJ
とい
う, 栄 淀み の罪の言わ ば動 機づけは どうだ ろうかo 否, そ れ は後に見るよ うに, ア ウ グステイ ヌ スに とっ て は確かに過去のその時の 内面の事 実と言うべ
きもの でも あっ たo 十 六歳の彼が 梨 盗み の罪をお かした際に同 時 的に自 覚 してい
た感 情 . 動 機に他な らなかっ たo アウ グス テイ ヌ スは以 後 全九節 を 費やして こ の梨 盗み の罪の原 因 を, 事 実の報 告の簡 潔さ に 比較 す る と驚 く 程丹念に追 求 してゆくが, 結 局の ところその原 因は, 十六歳の時に は自 覚し てい
なかっ た が軒
告 白A
を 執 筆 する時 期に は自覚 する ところ となっ てい
た内面の, より深い
, ほ と ん ど無 意 識の世 界の と言っ ても よい
かも しれない
動 機として捉 え 直さ れ ることになるoそこに至るまで の
F
告 白A
第2 巻の後半 部 分の梨 盗み の罪の動 機 をめぐっ ての議 論に は,後にその 一 部分 に触れ る が,
い
くつ
かの理解 しにくい
点が見 出されるo 殊に, 6,14 で結論 が ‑ 旦 は提 出さ れ るのに, 8,1 6 で別の結 論が新たに提 案き れ るのに は, 困惑せ ぎ るをえ ない
o 二
つ
の結 論に は 一 体どのよ う な 関係があるのか. 私の調べ
え た限りにおい
て, 二つ
の結 論 を明確に統 一 的に把 捉 する 研究 者は,
一 人を例 外
品
在せず, 唆 味なままに放 置しておくか自 らのア ウ グステイ ヌ ス理解 を 投影 して読み込む かする場 合が多
い
よ うであるo だ が, 両方の結 論 を 補 完 的に 理解 すること によっ て は じ め て, 幣 自A
執 筆 時 期の アウグステイ ヌ ス が見 出 して
い
た,r
梨 盗みJ
の罪の真の動 機 く原因1 を正確に把 握 すること ができる ので はない
か と思 う. そ れ が本稿の考 察の第一 に め ぎすところであるoまず4,9 ‑9,1 7 の内容の梗 概 を示し, 上 述の 二
つ
の結 論のそ れ ぞ れをコン
テ クストにおい
て整理し理解 して お かなけ れ ばなら ない
. その際r
読 替ノ ー トJ
風に, 第2 巻 を 読みな が らあれこれ考 えたことを も, 少し 自 由に番 き 出 してみたい
oF
告 別 第2 巻の回 想の主 贋一対 象は,r
私の過去の醜 行と魂の肉 的 な 腐 敗とを 想い
起こした
し
yj
u ,ll と巻 頭に述べ
ら れ てい
ること か ら, 過去の 内 的と外 的との罪であることが 明 ら か だ が, 実 際に第2 巷で語ら れ てい
る出来 事は, 上 述のr
梨 盗みJ
と, 肉 体 的 . 性 的 な 成 熟に達 して許さ れ ざ るr
J性的 放 軌 に耽ること きえ も あっ た とい
うこと く特に, 3,6‑ 81 との, わずか に こ如こ
す ぎない
o しかも 後 者に関 して は, 梨 盗み の場 合のような事 実の
直 接 的 な 報 告はな く, 単に暗示 さ れ て
い
るにす ぎない
りJoでは
r
J性 的放 軌 とr
傑 盗みJ
と は全く 同 じ性 格の罪として想い
起こさ れてい
るの だろ うかo こ の点の考 察 を 行い
な が ら,‑一
方で4,9の内 容 を も 問 題 提 起 的に整 理L て おこうu
前 章の引用文か らも明 ら か なよ うに,
r
梨盗みJ
の罪の特 徴は盗み が罪であることを知り なが ら そ れをお か した ところにあ るor
許さ れ てい
ない
ことを するの
が おもし ろい J
から 盗 み tfu r
tu m
l の罪 をお か し たの であ るからには, 盗んだ 卜六歳の ア ウ グステイ ヌ スは盗み2
r梨 盗みJ
の
意味が罪だ と
い
うことを 当 然 予め知っ てい
たに違い
ない
.一 体どのように知っ て
い
たのだ ろうかo
4,9の目 頭で ア ウ ダスティ ヌ スは神に呼び か け て,
汀主よ, あな たの法 も人間の心に記さ
く5 与
れ た法 も 確かに盗みを罰するo 不義であっ てもその法 を消し去 ること は な
い J
と述べ
てい
るo こ の言 葉 を 受 け止 め ての文 脈のな かで梨 盗み の罪が報 告さ れ,r
許さ れてい
ない
ことを するの がおも しろい
か らこそ, その盗みは 私 た ちによっ て行わ れ たのだJ
とい
う 富貴 もあ るo よっ て上の言 葉 を 出 発 点としようo言わ れ て
い
るr
神の法J
と は具 体 的にはr
律 軌 でありr
摂理J
だろうor
盗む な か れJ
く6J
と は言うまでもなく, 十誠の 第八であるo ま た 人間の罪 と は神の罰 を必 然 的に含むもの で あ り, ア ウ グステイ ヌ スはこ のよ うなく罪‑罰ン の在り方 を神の摂理の働 きに帰し て
い
るoこ のよ う なこと か らする と, 律 法と は単に神の命 令と
い
うようなもの ではなく, ある意 味t 7 き
で は才要理 と一
つ
であるo ところで,r
許さ れてい
ない
ことをするの がおもし ろい J
とい
うことを 十六歳のア ウ ダス ティ ヌ スに おい
て考え てみる と, 彼が こ のよう な 意味で法 を知り, その上でそ れ を お か し て おも しろがっ た とい
う ようなこと は あ りえない
o ア ウ ダスティ ヌ スは その頃まだキリスト教 徒で は なく, 従っ て言わ ば環 境 的に獲 得 した知 識と し て型 番の内 容や キ リスト教の放
く郎
義 をある程 度 知っ て
い
た こと は確 実である に し ても, 律 法 を 神の命令と し て受け 入 れてい
た わ け で は ない
. ゆえに 十 六歳のア ウ グステイ ヌ ス の意識におい
て は,r
許さ れ てい
ない
こ とJ
と は, お そらく 第一 には社 会 習 慣 上の規 範の 一つ
としての こと にす ぎな かっ た だ ろう くもっ とも, その延長 線 上で十 誠の第八を 捉え, そのよう な事 柄 を事々しく 重 大視 する周 囲のキリスト教 徒に違 和 感 を感 じ, 彼らをか ら かうた めにそのよう なr い
たずらJ
をし た とい
う よう なこと は大い
にあり そうなこと だが,o 要 するに, 多くの人々
が指 摘 してい
るよt9 j
うに, 報告さ れ て
い
るr
梨 盗みJ
の実 体は, 故 意に規 則 速反をお か し て得 意になる, 思 春 期特 有のr い
たずらJ
に他 なら な か っ たoところ で
軒
告 別 のア ウ グステイ ヌ スは,r
人間の心に記さ れ た法 りe x s c r
ip ta
in c
o rdibu s
h
o
min u m
lJ
が人間に普 遍 的に 内在 することを 説明する た め に, ま た同 時にr
不義であってもその法 を 消し 去 ること は な
い J
とい
うことを 説明するために次のよ う に付け加えてい
るo盗ま れ ても 平 気な盗人が
い
るだろうかQ 盗ま れ る盗人が豊か で, 盗む方が欠 乏によ るりりJ
場 合でも, 盗 まれ る方は平 気では な
い
o■ ■
こ こで,
r
盗人 と言えども平 気で盗む わ けでは ない
J と 言 わ れ るの
で あ れ ば, 人間は誰でも 良心 く
c . n s c
ie n
tia
l を有 する, 悪い
ことを する場 合には r良心の
阿乱 を見え る, よっ て 人間は誰でも 生ま れ ながら にr
盗む な か れ11 と
い
う規則 を知っ て いる とIu ,,う と し てい
る と受け取ることが でき るだろうo 少 な く とも私たちにとっ て は その
方が分か りや すい の
ニ i
平
で はな
い
だ ろうかo 例 えば 増 加 策1 巻にあっ て は, 人間が罪 をお かす 時に 必ず付 随す る内 的 な 不 針 動 揺 など にれ が 正義な る神に由 来 する罰でもあ るj Ei, 神か らの, 言わり 1 l . . . . . . . . t . .
ば回心 ‑ の促 しの現れ に他な ら な
い
o ところ がこ こ では, 盗 まれ ても 平 気な塩 入はい
ない
と言わ れ てい
るo こ の点が 少し 気にな るor
自分が為さ れ たく ない
ことを他人 に為 すべ
きで はない J
とい
う, 所 謂 憤金乳 の前 提 条 件た る心理状 態が, 盗 人が盗 まれ る場 合に も確か に見 出さ れ る とい
うこと だ ろうかりその黄 金律が, 増 加 策1 巻 く1 8,291 でまさに
r
良 心 くc o n s c
ie n
tia
,J
と呼ば れ てい
るoり2 J
r
盗人 と言 えども 平 気で盗む わけではない J
と言 う 場 合には, 言わ ばr
ji 心の珂乳 が 示■ ■
■ ■
唆さ れ るの に対 して, こ こで は 鳩 心の根 軌 が 示唆さ れ て
い
る と考 えた ら良い
の では ない
か と思j三l ,い
ずれにしても そのような心のあり方ほ本 性の レベ
ル に か て成立すべ
きものであろうか ら, 窮 極 的に は同一 のもの であること に な ろうo だ が そ れ に しても,
r
平 気で は ない J
と は どのよう な心の状態だ ろうかo こ の点につ い
て, 可 能であれ ば本 稿の考 察の 到 達 点か ら考 えてみたい
NI章I o4,9の言わ ん とする ところを 整 理 し, 以 上の考 察 をま と め て おこうo くり人間は経でも 何 ら かの仕 方で盗み が罪だ と
い
うことを 知っ てい
るo くii 汁 六歳の自分は 罪 だ と知り な がら 盗みの罪をお かした, 盗み とい
う 罪そ れ自 体 をたのしむ た めにo くりほ 幣 白A
執 筆 時 期の 立像 くiiうは十六歳の自 分の心 情の表 現だ とする と, くil の罪の知り方はくiiJ のそ れ と は 異な るレ ベ ル
にあるo 十六歳の自分の心 情 を 深 く 追 求 してくり と 同 一レ ベ
ルに おい
てくiil を 受 け 取り渡すo これ が以 下に その梗 概 を 示 す 増 加 策2 巻の後 半 部 分の意 義であるoさ て, 第2 巻 前半 部 分で暗示的に語 られ, ある意 味で
r
梨 盗みJ
の罪と対になっ てい
る 鳩 的 放軌 の罪 は, それ が姦 淫にまで至れ ば, それもま た 噛 み,
と同 じ く 十 誠の 鈍に禁じられ て お り, 憎 み
J
の場 合とすんな り 重 なることになるo しかし 第2 巻に暗示 さ れ てい
る限 りに おい
て は, ア ウ グステイ ヌ ス のr
性 的 放 軌 の度 合い
は, 博 さ れ てい
ない
こ とを するのが おも しろい
からや っ たJ
とい
う よう な 類のもので は な く, 思春 期の必然と で も 貰うペ
き程 度のもの であ り, 社 会 慣 習上 も十 分許 容さ れうるものだっ た ようであるo 言い
換 える と, 肉 体 的 一性 的 成 熟が駄楽 を 得ることを 少年のア ウ グステイ ヌ スに可 能にした 綾 果, 彼は快 楽 を 得るために, すな わ ちr
行 為そ れ自体が おも しろい J
のでr
性 的放 軌t1 5I
に耽る に至っ たの であるo もっ とも,
r
lJgi的 政 敵 が昂じ て姦淫 に ま で 至っ た 可能 性は極めく1 6 J
て高
い
が, その場 合であっ ても,r
許さ れ てい
ない
ことをや るの がおも しろか っ たJ
とい
うt1 7 1
ことが壊 初の動 機だ った と
い
うこと はありえ ない
の では ない
かo 鳩 的放 軌 の高ま りがい つ
の間にか姦淫に まで達 した とい
う よ うなことではない
だろうかor
JR 的 放 軌 の罪の罪■ ■ ■ ■ . . . ‑ ■ ■ ■ ■
た る所 以はt さしあた り, 在る