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国境 を越 える企業合併。 その法的問題点

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国境 を越 える企業合併。 その法的問題点

一欧州会社法制の最前線 を探 る一

三 滴 哲 男

キー ワー ド :会社法第10次指令案,ⅠncorporationDoctrineRealSeat Doctrine,欧州会社 (SocietasEuropea),従業員 の経営参加,

;新指令 (Directive20P5/56/EC)i

1 はじめに

欧州 の企業 の事業 活動 は, 当該企業 か設立 されて いる国 々を越 えてEU ( 州連合)域 内全域 に拡大 して きている。 欧州, と くにEU は これ らの状況 に応 え るべ く,会社法制 の整備 ・拡充 を進 めて きた。すなわ ち,欧州 の会社法制 に ついては,従来 か ら二つの方 向で, これ らの事態 に対応 して きた と言 え る。具 体 的 に は, EU各 加 盟 国 の 法 制 を調 整 し, そ の 相 違 点 を で き る限 り集 約 (HarmonlZatlOn)して小 くという方式 とEU とい う新 しい土台 に, "新 しい器"

を作 り上 げてい く(New Concept)方式 のふ たつのや り方 で あ る。前者 は,欧 州会社法指令 とい う形で各加盟国の会社法制 の調整 を進 める ものであ り,・後者 2001年 に成 立 した欧州会 社 規 則 ('1)をベ ー ス と して "欧州 会 社 (Societas Europea)"とい う形態で,各加盟国の国内法人 とは別個 の独立 した欧州法人 の創設 を認 める動 きであ る。

EU の単一市場化が進 む過程 で,欧州企業 の事業活動 は各加盟国 に留 ま らず, EU 域 内全域 に拡大 す ることは必然 であ り,EU 各加盟 国の国境 を越 えた企業 の合併 は もはや欧州 の一部 の大企業 だけの動 きではない。 この間題 は欧州 の全 ての企業 に とり大 きな関心事 とな るとともに,国境 を越 え る企業合併 につ いて の制度 ・法律 の整備 が強 く求 め られて きた。 国境 を越 え る企業合併 (Cross一

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borderMerger)につ いては会社法第10次指令案い 2)が基本 的な法制 の枠組 み を提示す る もので あ るといわれて きた。 しか し, 同指令案 は1985年 に欧州委 員会 が提案 の採択をお こな って以降,特 に従業員 の経営への参加の問題 によ り 英 国政府等 の反対 を招 き,審議が中断または大幅 に遅 れ,指令 と して採択がで きない状況が続 いていた。すなわ ち,国境 を越 え る企業合併 は,欧州会社法制 上 の難 しい問題 のひ とつであ るといわれて きた。 このよ うな状況を受 けて,欧 州委員会 は,1985年会社法第10次指令案 に拘 って いては,解決 は難 しく, ま た,現状 の企業合併 の動 きに早急 に対応す る必要 もあ ると して, 国境 を越 え る 企業合併 につ いての新 しい指令案 (実質 的 には会社法第10次指令 とな る) を 提 出, 同指令案 (Directive2005/56/EC)は欧州議会 お よび閣僚理事会 におい て採択 されたのであ るい3)。 これ らの状況 を踏 まえ,現 時点 にお ける欧州 の企 業合併 に関す る法制上 の問題点を整理 し,論 点を絞 り込 む形 で議論す ることは 重要 である。何故 な ら, これ らの試 みは欧州法制だけの問題 に留 ま らず, 国境 を超 え るグローバルな企業合併法制 の先端 的な動 きに繋 が ると考 え られ るか ら である。欧州 の場合, と くに国境 を超え る企業合併 にあた っては,各加盟 国の 企業 の基本 的な統治機構 ・組織構成 の違 い (と りわけ, ドイツと英 国の企業 に おける取締役会 ・監査役会 の構成 についての違 い) は依然 と して克服 されてい ない。具体 的には,業務執行機 関および監督機関 (取締役会 ・監査役会) の仕 組 みおよびメ ンバーの構成 の相違 である。更 に,従業員 の経営への関与 とい う 企業 の根幹 をなす問題 も重要な懸案事項 である。上述 した"欧州会社"の概念 は, 確 かに, これ らの問題点 に対す る解決のために, ひ とつの示唆を与 えて くれ る が,一方 では, "欧州会社" は欧州企業全体 か らみればまだ一部 の存在 で もあ る。更 に,合併が もた らす少数株主 の保護 や債権者‑の影響 につ いて も考察 か 必要 であ る。本稿 は,国境 を越え る企業合併 に関連 して, 問題点 とされて いる 幾つかの重要 なポイ ン トに焦点を絞込 みなが ら,欧州会社法制 につ いての見解 を紹介す るとともに, これ らの議論 を吟味 ・検討す ることを通 して,今後 の欧 州企業の合併 のあ り方 を展望 してい くもの とす る。繰 り返 しにな るが,欧州企

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業 の会社法制 に関す るこれ らの先駆 的な試 みは, これか らの企業 の国際的な合 併 に関す る法制 に少 なか らぬ示 唆を与 え る もの と思 われ る。 なお,欧州市場 に おける企業合併 に伴 う市場 の寡 占化,市場 占拠 による優越的地位 の濫用等の独 占禁止 (競争法)政策 ・法制の検討 は合併法制 との関連 において重要 な課題 で あるか,本稿 は会社法の視点か らの検討 とい う立場 か ら,経済法的な側面 は触 れていない点 は ご留意頂 きたい。

2 合併法制を検討する場合の基本的な問題点は何か ?

最初 に,国境 を越 え る企業合併 の法制上 の問題点 を整理 してお くことは議論 を進 めるために重要である

(1) "国境"の壁

企業 は,市場 を構成す る社会組織 の代表的存在 である。企業が関係 してい る雇用,秩,訴訟等 につ いては,EU の単一市場化が進 む現段階おいて も, 各加盟 国の "主権"が依然 と して深 く関わ っている。

しか し,現実 には,単一市場 の深化 と欧州企業 の流動化 は,EU 会社法制 の基盤 を揺 るが し,\国境 を越 え る企業活動や組織再編 を法制上 いかに構築す るか とい う重要な課題が緊急のテーマ とな ってい る。つ ま り,雇用 とか税制 のよ うな個別 の分野での調整 ・融合 だけではな く, よ り包括的な調整 ・融合 が求 め られているといえ る。 その意味 において,企業合併 はまさにその典型 的な問題 であ るといえ る。

また,欧州企業 の事業活動 を考察す るとき,実質 的な企業活動 を "どこ"

で捉え るか とい う点 もまた重要 な課題 であ る。 この点 につ いては,後述す る よ うに,企業 の本社 の登録 を基盤 とす るのか, あるいは企業 の実質 的な事業 活動 を重視す るのか と言 う点を巡 って,従来か ら考 え方 の上 で議論 が対立 し ている。 しか しなが ら,現段階で言 い得 ることは,欧州企業 の活動 をEU 域 内におけるひとつの加盟国の法制 だけに準拠 させ̀ることには限界があ るとい うことである。

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(2)加盟国間の会社制度の相違

会社制度 の重要 な相違点 を検証す るためには,以下 の3つの視点か ら考察 す ることが重要 である。

①経営管理機構 の相違

欧州 の会社形態 を論ず るにあた り,従来か ら・,所謂 "ドイツ型" と "英 国 型" の相違 があ るといわれてきた。具体的 には, ドイツ,北欧等 で多 く採用 されている二元制の経営組織 (業務執行機 関 と しての取締役会 と監督 ・監視 機 関 と しての監査役会)か ら成 り立つ経営管理機構 と英国およびアイル ラ ン

ドでお こなわれてい る一元制 の経営管理機構 (取締役会が業務執行 と監督 ・ 監視 の両方 の機能 を包含 している) との違 いである。 これ らの違 いは,長年 の ドイツと英国 との歴史的な背景 の相違 による ものであるが,下記② で述べ る従業員 の経営への参加 の問題 と関連す るもので もある

一方,EU 長年 の懸案 であ った "欧州会社 (*4)" の考 え方 は,上記 の経営 管理機構の相違 に代表 され る各加盟国の会社制度 を乗 り越 え る, または置 き 換 わ る制度 として提案 されて きた ものであ る。 とす るな らば, これ ら各加盟 国法制 の主要な相違 は "欧州会社"の出現 によ り解決 され る, または され る べ き もの と考え られて きた。 しか し,重要 な相違点の壁 を突 き崩す ことは現 段 階では実現 していない。すなわ ち,上記 で述べた,経営機構 のあ り方 と下 記② で説明す る従業員の経営への関与 の問題 について統一 的な解決策 を提示 す ることが現時点では難 しい と言 わ ざるを得 ない。

②従業員 の経営への参加

従業員 の経営‑の参加 を どこまで認 めるのか。 この間題 はEU がその起源 で あ るEEC(欧州経済共 同体),EC(欧州共 同体)およびEU (欧州連合)を 通 じて,組織創設以来 の課題 であ った共通政策 の一環であ る社会政策(*5) 深 く関連 している。 同政策 は,従業員 の企業での位置づ けを,単 な る "労働 力の提供者" としてだけではな く, 自己実現 の場 と して個人 の尊厳 が図 られ る もの とす るとい う考 え方 に基づいている

‑ 54(54)‑

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EWC(欧州労使協議会)指令い6)とNIC指令 (国別情報提供 および協議 に 関す る指令)(*7)とい う2つの法制 は, 欧州企業 において, 従業員 の経営 へ の関与 につ いての制度 的保障 と考 え られてい る。 と くにNIC指令 は, 各加 盟国に事業活動 を限定 している企業 に対 して も適用 され る ものではあるが, 指令 に違反す る行為 に対 して罰則措置 による一定 の強制 を各加盟国に義務付 けるものであ り, その意味 においては,EWC指令 よ りイ ンパ ク トは大 きい。

'これ らの指令,特 にNIC指令 を通 して従業員 は,企業 において一定 の経営 への関与が保障 され ることとな った(*8)

③少数株主 と債権者 の保護

各加盟国内の企業合併 と国境 を越 えた企業合併 で, との よ うな相違 かある のであろうか。事業活動がEU 域 内に広 く展 開す る企業 の株主 は各加盟国 に 分散 しているが,各加盟国で彼 らの権利が保護 され る程度 と範Bflが異 な るo これ らをEU 市場 の単一化 の視点 とEU 市民が公平 かつ公正 な取 り扱 いを受 ける必要があるとの見地 か ら是正す ることが必要 とな って くるが,採択 され た指令 は, この課題 に どう対応す るのか検討 が必要 とな る。

3 IncorporationDoctrineiRealSeatDoctrine

国境 を越 え る企業合併 の法制 の問題 を取 り扱 うに先立 って, 国境 を越 えて展 開 され る企業の事業活動 を どの時点で, どの場所 で捉 えて, どの国の法律 を適 用す るかは,欧州 の会社法制 に とっては重大 な関心事 である。EU は単一市場 であ り,企業が域 内市場 内の との場所 に基盤 (登録上 または営業上 の拠点 ( 久 的施設)) を置 いて も, "支 障な く"事業活動 す ることの 自由 (Freedomof Establishment)い9)が保 障 されなければな らない。 この点 に関連 して,EC 44条 はEU 域 内 (共 同体 内) にお ける開業 の 自由に対す る制 限の撤廃 を謡 うとともに,そのための一般 的計画の実施 を求めている。 これはEU の一般原 則 その ものではないが, 同原則 に沿 った考 え方で もある。 しか し,一方では, 企業 の活動 は,雇用,収益 を生 み出す とともに,様 々な行政上 の問題 や訴訟 に

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も巻 き込 まれ る可能性 もある。 これ らの問題 は企業 の登録が為 されている, ま たは現実 に活動 の拠点があ る国 (EU 域 内の加盟国) の主権 の もとで管理 され る もので もある。 この点 に関 し,欧州では,従来か ら,企業の本社 の登録 を重 視 す る考 え方 (IncorporationDoctrine)({10)と実質上 の事 業活動 を重視 す る 考 え方(RealSeatDoctrlne)('H)が対立 して きた(り 2)

これ らのDoctrineの適用 は,上述 した如 くEU 域 内での企業 の事業 活動 の 自由に対 す る制 限 を撤廃 す るための措置 を とるEU の考 え方(り 3)に従 うこと が条件 とな る。 これ はEU 存立 の基盤 を構成す る基本 的な考 え方 であ り, この 考 え方 に対す る例外 と しての法人の移動 を禁ず る措置 は,以下 の要件 が充 た さ れ る ものでなければな らない。すなわ ち,①法律上 の一般 的利益 を支持す る範 囲で しか許 されない こと,② (目的を達す る上 で)不相応 な措置ではないこと,

③ その 目的の為 に必要以上 の措置であ ってはな らない こと,④他 の内国企業 と の間 に差別 的な取扱 がないこと, および⑤移動 の 自由を実行す るうえで必要最 小 限の ものであ り,かつ透 明性 のあ る措置 であることである

会 社 法 第14次 指 令 案 (*14),IncorporationDoctrlneお よ びRealSeat Doctrineの概念を並行的に取 り込み,当該企業の設立登録上の本社(Registered OfflCe)また は設 立 登 録 上 の本 社 お よび主 た る事 務 所 の両 者 (thePlaceat whichacompanyhasitscentraladministrationandisreglStered)一指令 案 で は "事実上 の本社 (defactoheadoffice)"と呼ぶ('15)‑を法人格 の変更 を伴 うことな く移転す ることができることを認 めた。 しか し,一方 では,各加 盟国に, 同国国内に主 たる事務所(CentralAdminlStrationoffice)を有 してい ない企業に対 して,当該企業の登録を拒否することができる権限 も与えている(*16)0 同指令案 か,上記 の考 え方 を提示 してい る根拠 と して,EU 法 の一般原則 の ひ とつであ る補完性 の原則('17)が挙 げ られ る。すなわ ち,仮 りにncorporation Doctrlneの加盟 国が,RealSeatDoctrineを採用 して い る加盟 国か らの企業 が当該ncorporationDoctrineの国 にPlaceofcentralAdministrationを移 転 した場合, 当該企業 の移転登録 を認 めない とすれば, その反対 の場合 に比較

56(5 6) 一

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し,不均衡か生 じるだけではな く,両加盟 国による訴訟上 の争 いに発展す る可 能性す ら生 じる。 このよ うにEU 加盟国間による問題 の解決がEU 存立 の 目的 や趣 旨を損な う恐れがあ り,かつEU 自身 またはEU 法制 に基づ く解決が当該 加盟 国による解決 よ りもEU 全体の利益 に沿 うことが出来 る場合 (それ以外 の 方法がない場合),EU 法 か当該加盟 国の法律 に優先 して適用 され る との考 え による もの とされ る。

これ らの原則 が適用 され る場合 の問題点 と して,"hoststate"('l)"guest company"(*19)との関係 がある。例 えば,従業員 の経営への参加 に関 して, 欧 州会社規則 は,原則 と して,欧州会社 (この場合guestcompanyと位置付 け られ る)が, その本社が設置 される国 (この場合hoststateと位置付 け られ る) の法律 に準拠 して, 同法 を遵守 す る義務 が あ る との考 え方 を とって い る(*20)

hoststate,guestcompanyが 同国の法律 を遵守 して いない場合 に, その ことを根拠 にguestcompanyの設置 を認 めな い とす る措置 を とることは

EU の一般原則 に照 らし適切 な行為 とは思 われないか、議論 があ るところで あ (*21)

4 会社法第 10次指令案の問題点

国境 を越 え る企業 の合併 に関す るEU の会社法制 は,1985年 に欧州委員会 が法案提 出に踏 み切 った会社法第10次指令案(*22)が最初 の ものであ る。 企業 の合併法制 と しては会社法第3次指令(*23)が先駆 的な役割 を果 た してい るが, 同指令が原則 と して,加盟国国内の企業合併 に適用 され る ものであ り(*24),単 一 かつ一体化す るEU 市場の現状 ではその役割 は限定 された もの とな らざるを 得 ない。 これを受 けて,会社法第 10次指令案 は, 欧州域 内の企業 か国境 を越 えて企業合併 をお こな う為 の条件 を整備,改善す るとともに,欧州企業 の事業 再編 の動 きを加速 させ ることが 目的であ った。

しか し, 同指令案 は,欧州委員会が提案 をおこな って以降,法案 の審議 ( に欧州議会 での審議)がなかなか進 まなか った。 その理 由は,上述 したよ うに

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各加盟 国間における会社制度 の枠組 みにつ いての問題 と従業員 の経営への参加 に対 しての違 い (と くに, ドイツと英 国 との確執) を克服 できなか った ことが 主要 な要因で あると言 われている(*25)0

従業員 の経営参加 の ような根幹 的な点 を別 に して も,各加盟国間の具体 的な 相違点 もある。例 えば企業合併 の手法 や手続 きの違 いを例 に挙 げれば,被吸収 会社が事業を休止 し,その全ての資産 や負債が吸収会社 に移転 され る (その後, 被吸収会社 は消滅)事業譲渡方式 (フラ ンスでは通常 この方式が採用 され る)

と一方 の企業が他方 の企業 の株式 を買収す る (それ に伴 い,被吸収会社 の株主 または社員 は吸収会社 の株主 または社員 とな る) ことを通常 の合併方式 とす る 英 国で採用 されている方式 との間に相 当な相違があると指摘 されてい る。(*26)

しか しなが ら, やは り大 きな問題 は,企業 の経営管理機構 の構造上 における 相違点 と従業員 の経営‑の参加 の程度 および考 え方 にあ る。具体 的に言 えば, 企業 の経営管理機構 につ いては, ドイツ企業 は,従業員代表 を含 む監査役会が 業務執行機 関であ る取締役会 を監視 ・監督す る役割 を担 うが,経営上 の意思決 定行為 を経営者 の''聖域''としている英国企業 は, このよ うな統治機構 はとらず, 取締役会 が,業務執行 の役割を果たす とともに,業轟執行 を監視 ・監督す る機 能 も同時 に履行す ることにな る。 このような相違 を前提 にすれば, ドイツ企業 と英国企業 との合併 にあた り,合併会社 は どち らの経営管理機構 を採用す るの か とい う点 は大 きな問題 とな る。 また,従業員 の経営への参加 については,参 加 を認 め る場合, その範囲 と程度 は どうす るのか とい う問題が合併 を実施す る 上 での障壁 とな り得 るのであ る(*27)0

・上記の問題 にひとつの解決策をあたえ るのか,後で詳 しく述べ る "欧州会社"

の構想 であ る。各加盟国 に基盤 を有す る企業 の合併 は,欧州会社 とい う超 国家 的な会社形態を選定す ることで,合併対象である既存企業の所在国の法制 に影 響 され ることな く,新 しい制度 を導入す ることが可能 とな る。一方,第10 指令案 は,各加盟国の会社制度 の視点か ら,会社法等 の各加盟 国法制 の相違 を 出来 るだ け集約 させ,各加盟国の会社法 に基盤 を置 く形でEU 法制 を整備す る

58 (

5 8 ) ‑

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ことを主眼 としていたのである。換言すれば, 同指令 は欧州会社 とい う超国家 的な会社 形態ではな く, あ くまで も,各加盟国の既存法制 に基づ き企業合併 を 可能 とす る仕組みを構築す ることを 目指 していた といえ る。

この ような状況 の下,会社法第10次指令案 は,1985年以降,審議 が停滞 し ていた。 しか しなが ら, これ らの問題 の解決 は, 欧州会社 についての制度上 の 相違点 に一定 の合意 かな された (基本 的な問題点は,依然 と して残 されてはい るが)時点で新たな視点か ら, ひとつの方 向を見 出す こととな った。すなわち, 2005年 に成立 した国境 を越える企業合併 に関す る指令 (Directive2005/56/EC‑

以下 "新指令")か欧州企業 の合併 についての新 たな法制 として登場す ることに な るのである。

5 欧州会社 (SocietasEuropea)は国境 を越える企業合併の解決 策 となるか。

(1)欧州会社 とはどのよ うな企業形態か。

は じめにの部分で も述べた "欧州会社''の構想 が, この時期 (会社法第10 次指令案 の審議 が停滞 して い る時期) に同時 に進行 して いた。 欧州会社構 想 の歴史 は,1970年 の欧州株式会社法第一次草案 に遡 ることがで きる。 以 後,第2次草案(1975年),第3次草案 (1989年),第4次草案 (1991年)を 経 て,200012,EU 首脳 によるニ ース会議 (*28)で基本 的な枠組 みの合 意 に達 し,2001年欧州会社規則 (CouncilRegulation(EC)No.2157/2001) の制定 に繋 が った。欧州会社 は,EU 市場 の単一化 ・一体化 に呼応 して展開 され る欧州企業 の動 きを先取 りす るものであ った。すなわ ち,各加盟国 に基 盤 を置かず,欧州 とい う基盤 に会社 の設立を依拠 させ るとい う概念 である。

このように,各加盟国 に基盤 を有す る企業 同士 の合併 は,欧州会社 とい う会 社形態を選定す ることが ひとつの方策 ともな る (欧州会社成立 の一形態 と規 定 され る)(*29)

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(2)欧州会社はどのように成立するのか。

欧州会社 の設立 には下記4つの方法が規定 されているい30)t

(丑合併 による方法 一本稿 で取 り扱 う企業合併 に該 当す るが,合併成立 (新規 設立) の結果誕生す る合併会社 (新規設立 または吸収合併) に関 しては, 欧州会社規則が適用 され ることにな る。2カ国以上 のEU 加盟 国にあ る公 開有 限責任会社 (PublicLimitedCompany‑PLC(*31)) 同士 が合併 す る ことによ り欧州会社が新規設立 され る。

(参持株会社設立 による方法‑2カ国以上 のEU 加盟 国のPLC又 は,非公 開 会社(PrivateLimitedCompany)が持株会社 (欧州会社 と して設立)杏 設立す ることによる。

③子会社の設立 による方法 一上記② の持株会社 か子会社 (欧州会社 と して設 立) を設立す ることによる。

④組織 の変更 による方法 ‑異 な るEU 加盟 国 に子会社 を有 している (少 な く と も当該子会社か2年 間継続 して存在 していな ければな らな)PLC 組織 を変更す ることによ り設立す る。

欧州会社 は,登録上 の主 た る事務所が存在す る加盟国内に設立登録 を しな ければな らない (*32)。後 で述べ る様 に,現時点では,各加盟 国の税制 は,欧 州会社 の設立 によ って も原則的 には影響 を受 けない。 したが って,特定 の加 盟 国 に設立 された欧州会社 は,原則 と して当該加盟国(本店所在 国)で,法人 所得税 を支払 う (申告す る)義務 を負 うとともに,支店,営業所等 の恒久 的 施設 か存在す る国 において もその事業活動 の範 囲 において納税 (申告) の義 務 があ る

(3) 欧州会社の経営管理機構

上記2 (2)① で説 明 した よ うに,欧州企業 の統治機構 は,従来 か ら ( 務執行機能 と監視 ・監督機能 の位置付 けに関 して)一元制組織 と二元制組織 EU 加盟諸 国において並存 している。CouncilRegulatlOn(EC)No.2157/ 2001(欧州会社規則) は,欧州会社 が どの様 な統治機構 を もつべ きか につ い

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て,一定 の見解 を示 している。すなわち,各加盟 国が,原則 と して,一元制 組織又 は,二元制組織 を選択 で きると している。 この メカニズムは,欧州会 社 は,定款 によ り,一元制 の経営管理機構, または二元制 の経営管理機構 を 選択できるが,一方 では,各加盟国はその国に設立 され る欧州会社 に対 し, いずれか一方の制度 (一元制又 は二元制組織) を採用す るペ く強制す ること がで きるO結論 的 に言 えば,欧州会社が設置 され る加盟国が,国内法制 にお いて, どち らの制度 を採用す るか によ り,一元制組織 か二元制組織 かが決定 され ると言 え る。経営管理組織 のあ り方 については,業務執行機 関 と監視 ・ 監督機 関の二元組織 に分 け,経営の執行 とチ ェックを行 な う, いわゆ る ドイ

ツ方式 と,業務執行機能 と監視 ・監督機能 を一元制 の経営管理機構 (取締役 会)で担 う英国方式 が対立 し,本来,二元制組織 を基準 とす ると していた欧 州会社法案が各加盟国 (または欧州会社)の選択̲に委ね る方式 に変遷 していっ た経緯 がある。企業 の経営戦略的な見地 か らいえば,欧州会社の本社 を どの 国 に設置す るか によ り, どち らの制度 を採用す るかが決 まるとい うことにな る。

(4)利用 されない欧州会社Cその理 由は。

企業活動 は,欧州 の "国境" の垣根を越 えて展 開 されてい る。各加盟 国 に は,各国の会社法制が存在 し,依然, そのギ ャップは埋 ま っていないーのか現 状 である。 その意味で,やは り,欧州会社 とい う各加盟 国の枠 を超 え る会社 形態 は,国境 を越 えて事業活動 を展開す る欧州企業 に と り魅力的であ り,必 要なのである. 問題 は, その "中味"である。具体 的に言えば,欧州会社 の 制度 と構造 は,依然,各加盟国の影 をひきず った ものであ り,各 国法制 を超 越 した中味を提示 で きていない といえ る。要す るに,欧州会社 とい う形態 を 利用す るには, まだ,十分 に完成 した ものではな く,発展途上 の会社形態 に 留 ま っているといわ ざるを得 ない。現段階での問題点 は,以下 の通 りとな ろ

う。

① 国境 を越 えて事業活動 を行 な う欧州企業 に とり,各加盟 国 ごとに会社 を設

(12)

立/運営す ることに比較すれば,欧州会社 は,確 か に管理 ・運営 に係 る手 間 とコス トを相 当程度省 くことができる会社形態 といえ る (例 えば,欧州 会社 を設立す ることによ り,設立,運営,変更等 に必要な書類 が統一 で き る等,事務諸経費 の省略が可能 とな る)。 この点 は欧州会社 の利点 と して 評価す ることがで きるか,その経済的 コス トは,他 の要 因 と比較 して,欧 州会社 を選択 させ るほどのイ ンパ ク トにな りえ るのか疑 問であ る。

② 欧州会社 は, いわば '発展途上 の会社形態''であ り,今後,運営の実態 が明 らか にな り,かつ,懸案 の事項 が解決 され る過程で, その実効性 が試 され ることにな る。 その意味で, どんな中味が最終 的 に盛 り込 まれ るか,注 目 され る。特 に,欧州会社規則 に含 まれなか った税制上 の処置 について, ど のよ うな形 で纏 まるか どうかがポイ ン トにな る。

③ しか し, 税務 問題 以 上 に重 要 な意 味 を持 つ と思 わ れ る企 業 統 治 の機 構 (CorporateGovernanceSystem)お よび従業員 の経営参 加 につ いて は, 現段階では "暖味な"解決策 を採用 している。要 は,欧州会社 に とり, そ の設立地 (本社設置国) を どう選ぶかによ り,経営機構 や従業員参加 の問 題 へ の対応 が異 な る ことにな る。 換言 すれ ば,EU とい う単一 市場 で の

"二重基準"や "窓意性"が固定化 され る恐 れ もある。 また,欧州 で事業 を行 な う企業側 も,経営上 の思惑や コス トを配慮 して欧州会社 とい う形態 を利用す ることも可能 とな る。

④更 に,意外 と見過 ごされが ちである机 法技術的な利点 と しては,企業合 併 によ り加盟国間における本店 の移転が (法人格 を変 え ることな く)可能 とな る。 ただ し, この点 に関 しては,上記3の会社法第14次指令案 の考 え方 を検討す る必要があるい 33)

(5) 欧州会社が企業合併法制 に与えた影響

この よ うに,企業合併 によ り誕生す る合併会社 に欧州会社 の形態をそのま ま導 入 す る こ とは, 幾 つ か の 問題 点 が あ る tI現 段 階 で は言 わ ざ るを得 な い(*34)。 しか し,欧州会社 は, その出発点か ら超 国家的な企業形態 であ り,

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各加盟国の国内法 に基づ き設立 された国内法人が国境 を越 えて合併 を実施す る場合 の "受 け皿" としての役割 を果たす可能性 は十分 にあ る。次章 で述べ る従業員 の経営への参加 の問題 につ いて も,欧州会社規則 と同時 に成立 した 従業員 の経営への参加 につ いての指令 ("従業員参加指令"(*35))は,基本的 に新指令の内容 に大 きな影響 を もた らし,理事会 および欧州議会 での採択 に 繋 が るのである。

6 新指令 (Directive2005/56/EC)の登場

上述 して きた よ うに,永年 の懸案 であ った会社法第10次指令案 は,新 指令 の形 をとっ\,20051026日に制定 された。 これに基づ き,各加盟 国は, 新指令の内容 を20071215日まで に履行す るための国内法上 の措置 を執 る

ことを義務付 け られている

(1)新指令の概要 とその 日的

新指令 は会社法第10次指令案 と同様,EC条約(theTreatyestablishing theEuropeanCommunity)44条 (*36)に基 づ くもの とされ る。EU は, EU 市場 の単一 かつ一体化 を推進す る所謂 "4つの 自由" を保 障 してお り, 人 およびサー ビスの移動の 自由は, これ らの一環 と して位置付 け られ る もの であ るい37)o新指令 が対象 とす る企業合併等 の会社法制 のあ り方 は, これ ら の 自由それ 自体 に包含 され る ものではない として も,人 およびサー ビスの移 動 の 自由に支え られた考 え方 であることは否定 できないD新指令 の主要な項

目を概観 してみたい。

①合併対象企業

新指令 は会社法第10次指令案 とはやや異 な り,LimitedLiabilityCom‑

panies(有 限責任会社(*38))同士 の企業合併 を対象 と している。一方, 同10 次指令案 はPublicllmitedLiabilityCompaniesを対象 として,各加盟国の会 社形態を具体的に(*39)規定 している (例えば, ドイツではAktiengesellschaft,

また,英 国では,PublicCompanleSlimitedbysharesorbyguarantee)0

(14)

この ように,新指令 は必ず しも合併 当事者企業 の会社形態 と して公開性 は問 題 と していない。新指令 が制定 され る以前,EU 域 内における異 な った加盟 国に属す る企業間の合併 については, 当該加盟国の国内法が合併対象企業 同 士 の合併 を会社形態上,許 していることを条件 と して,認 め られて きた。新 指令の下での異 な った加盟国の企業 同士 の合併 につ いては, 当該加盟国 にお いて国内企業間の合併 に関す る関連規定 および手続 きが適用 され る。 しか し なが ら, 当該加盟国は, 自らの国内法 に, 国境 を越え る企業 同士の合併 につ いて (新指令 で留保 され る場合 を除 き(*40)), その "開業 の 自由" を制約す る如何 な る規定 または手続 きを導入 してほな らない とされ る

②合併条件案 (Commondrafttermsofcross‑bordermerger)

新指令 は,合併条件案 に必ず含 めなければな らない条項 (条件) を定 める とともに, これ らの条項以外 の条件 については合併 当事者 の 自治 に委 ね る姿 勢 を とっている(*41)。絶対的記載条項 と しては,(A)合併会社 の商号 および 登録本社 (也), (B)会社 資本 を表 す株式数 お よび払 い込 み金額 (現金),

(C)合併 当事者 間の合併比率,(D)予想 され る雇用への影響, (E)株主 およ び社債権者等 の配 当 ・金利 に対す る権利 日, (F)合併会社 による取 引 とみな され る確定 日 (合併 当事者 であ る対象企業 の取 引が合併会社の取 引 と して会 計上処理 され る 目的で), (G)合併条件案 の検査 をお こな うExpertへ の特 別報償 (額), (H)合併会社の定款

,(

)合併会社 に移転 され る資産 ・負債 の 評価, (∫)合併条件 を設定す るのに使用 され る各合併 当事者会社 の決済 日, (K)特 別 な権利等 を有 して いた合併 当事者会社 の株主, 社債権者 へ与 え ら れ る権利 および (L)従業員 の経営参加 に関連 す る情報 が挙 げ られて い る。

これ らの合併条件案 は,所定 日(*42)まで に合併 当事者会社 の双方 において, 当該合弁 当事者会社 が所属す る加盟国の国内法 の手続 きに従 って公表 されな ければな らない(*43)

③合併条件 の承認手続 き

合併 当事者会社 の経 営執行機関(" 4)は,合併条件 (法 的 お よび経 済 的条

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(15)

件) を正 当化 できる報告書 を株主,債権者 (社債権者等) および従業員 に開 示 しなければな らない。 これ らの報告書 は株主総会 開催 日の少 な くと も1 月前 には株主 および従業員代表 に提供 しなければな らない。更 に,合併条件 につ いては,利害 関係者 か ら独立 したExpertい 45)による検査 か実施 され る。

Expertは, と くにPubliclimitedllabllitycompanies(公 開有 限責任会社) の検査 については,合併 当事者会社か ら合併 に必要 であると判断す る全ての 情報 を入手す る権 限が与 え られている。株主総会 は,上述 した経営執行機 関 およびExpertの報告書 に留意 して,合併条件案 の可否 を決定す ることがで きる(*46)。

④合併条件 に対す る当事者国の権 限

合併 当事者会社 か所属す る加盟国 (当事者 国) は,合併 の合法性 につい て 当事者国の裁判所,公証人,その他 これ に準 じる機 関に,合併 の完了 にいた る過程の手続 きおよび合併会社 の形成が当事者国の国内法 に準拠 しているの か否かについて審査 を させなければな らない。 これ ら審査機 関は, と くに, 合併条件案が当該 国の国内法 に定 める要件 に準拠 して株主総会 で承認 された のか,また,合併会社 における従業員の経営への参加 の手続 きが新指令第16 条 (*47)に準拠 して い るのか否 か につ き十分 に審査 しな ければな らない。 当 事者国 は,'=れ ら所定 の手続 きが完了 した後,合併契約 の発効 を決定す るこ

とかできる。

(2)新指令 は会社法第10次指令案の問題点 をどう克服 したのか。

10次指令案 と新指令 を比較 した場合, 以下 の2点 に大 きな相違 が あ る といえ る。第一 の点 と して,合併条件 に対す る当事者 国の権 限である。確か に,合併条件 につ いてのExpertによる検査 の選任 や履行方法 は,新指令 も 基本 的 に第10次指令案 の考 え方 を踏襲 して い る といえ る('48)。 しか し, 合 併手続 きが合法的 (従業員の経営への参加 の条件 を含 め) に行 なわれたか否 か につ いての検証 の権 限を当該加盟 国 に委 ね ることは第10次指令案 には含 まれていない。 次 に, 第2の点 と して第10次指令案 の合意 につ いての最大

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の陸路 であ った従業員 の経営‑の参加 に関 しては,上述 した如 く,会社法第 10次指令案 は,合意 に達 す ることかで きず (欧州会社規則 につ いての審議 を見守 っていた とい う解釈 もで きると思 われ るが), その審議 が行 き詰 って いた。 それでは,新指令 は この問題 を どう解決 したのか。上述 したよ うに, 2001年 に合意 をみた欧州会社規則 は第10次指令案 の行方 に大 きな影響 を与 えた といえ る。新指令 は,原則 と して,加盟国を異 にす る当事者会社が合併 す る場合,設立 (吸収) され る合併会社 が所属す る (本社 が存在す る)加盟 国の国内法 の規定 が適用 され ると した。 しか し,以下 の条件か充 た され る場 合 は,欧州会社 の従業員経営参加指令の規定 が適用 され ると してい る。 す な わち,①合併 当事者会社 のす くな くとも一方 が,合併条件案が公示 された後 6ヶ月 以 内の時点 において500人超 の従 業員 を雇用 してい る こと, お よび

②合 併 当事者 会社 のす くな くと も一方 が従業員 の経 営参加 の システ ムい49) の もとで運営 されてい ること, または新 たに誕生 す る合併会社 に適用 され る 国内法か,経営管理機構 (取締役会 または監査役会(*50)) に従業員代表 か参 加 してい る比率 (例 えば監査役会構成員 の何%が従業員代表 であるのか) か ら判断 して, 当該合併会社 が合併 当事者会社 に適用 されていた参加比率 と同 レベルの従業員 の経営への参加 を規定 していない こと, または当該合併会社 の施設 (工場等) であ り,かつ本社が所属 してい る加盟国以外 の加盟 国に存 在す る施設 (二場等) の従業員 に, 当該合併会社 の本社登録地 の加盟 国にお いて従業員 が享受 して いる条件 と同 レベルの条件 が与 え られない場合 で あ る('51)。 この よ うに,新指令 は,欧州会社規則 および従業員経営参加指令 を その まま適用す るものではないが,従業員が,従来,享受 していた権利 や条 件 についてサー フテ ィーネ ッ トを設 けることによ り各加盟 国間での妥協 をは か った もの とみ ることもで きる。

(3) 日本の会社法 との相違点は何か。

新指令 には, 日本 の企業合併 には馴染 まない問題である従業員の経営への 参加 が重要 な争点 とな ってお り,上述 した よ うに,会社法第10次指令案 の

‑66(66)‑

(17)

成立が遅れた最大の理 由で もあ った。一方,従業員 の経営への参加の問題 を 除 く部分 につ いて も, 日本 の会社法 との幾つかの相違点がみ られ る。 2つの 側面 古くスポ ッ トをあてて検証 してみたいOその第‑点は,合併の対価 である。

企業合併 は,通常,合併 によ り誕生す る新合弁会社が合併 当事者会社 を吸収 す る新設合弁 の方式 と合併 当事者会社の一方 を存続 (吸収)会社 と して他方 の当事者会社 を吸収 し,消滅 させ る吸収合併 の方式 がある。 これ らの合併方 式 の場合,被吸収会社の株主 には,通常,新設会社 または存続 (吸収)会社 の株式が,彼 らが所有す る被吸収会社 の株式 と交換す る形 (合併比率 に応 じ て交換) で割 当て られ ることにな る。 しか し, 日本 の新会社法 (平成18 施行) は,従来 の法制 と異 な り,所謂 "対価 の柔軟化('52)"の考 え方 を採用 し,存続 (吸収)会社 の株式 に代 えて金銭等 の財産 を与 え ることを可能 に し ている。一方,新指令 は,被吸収会社 の株主 に対す る存続 (吸収)会社 の株 式 の交換 ・割 当てを原則 と しなが らも,存続 (吸収)会社 か被吸収会社 の株 式 (議 決権株式) を90%以上所有 してい る場合 には (完全子会社 またはそ れに準ず る子会社 の場合), 当該加盟国 (存続 (吸収)会社 および被吸収会 社 の所属国) の国内法 の規定 に従 うことを示 唆 している(★53)。次 に,本 問題 に開通 して,合併 に反対 した株主 への対応 については, 日本 の会社法 は改正 前 よ り反対株主 の株式買取請求権 を認 めている(*54)。 これに対す るEU の議 論 は,"Squeeze‑out"お よび"Selレ out"の考 え方 にあ る。例 えば, 欧州 の会社法専 門家 グルー プの報告書 で あ るReportoftheHighLevelGroup ofCompany Law Expertson aModern Regulatory Framework for CompanyLaw inEurope("HLGreport")によれば,少数株主 が合併 に反 対 した場 合 の救 済措 置 と して,HLGReportの利害 関係者 の多 くは,圧倒 的多数 の株式 を所有す る株主 (対象会社 の株式 の90%以上 を所有 してい る) に (買収 に反対 してい る)少数株主 か ら株式 を買取 る権利 を与 え る考 え方 を 支持 している(*55)。 この ことは,事莱上,少数株主 を締 め出す ことに も繋 が ることになる。 しか し, 同時 に,上述 した状況 において,少数株主側か らの

(18)

要求, す なわ ち, 当該少数株主 が所有す る株式 の買取請求権 を認 め ること (この場合,形成権 とな る) も積極 的 に支持 して い るい56)。 これ は,反対株 主 の "退 出権"を事実上認 め ることで もあ る。新 指令 は,HLGReportの提 言 を参考 に して,最終的な判断を各加盟 国 に委 ね る(岬 )姿勢 を とって いる。

7 結びに代えて

(1)新指令が示 した世界へのEUの "意思"

2001年 に成立 した従業員経営参加指令 (欧州会社規 則 と同時 に制定 され た指令‑Directive2001/86/EC)による従業員 の経営への参加 とい うモデル ,EU の社会政策 に基づ くもの といえ る。 同政策 はEC条約第8編 に盛 り 込 まれた共 同体 の政策 であ り,EU の理念 の実践 といえ る原則 であ る。 その 理念 は共 同体 を構成す る人 々による社会への参加 と貢献 であるといえ る。す なわ ち,共 同体 を構成 している組織 の レベル において,従業員 は, 自らが属 す る組織,すなわ ち企業への参加 と貢献 を実現 させ る方策 と して何が必要 な のか とい う議論 なので あ る。 現 に, この議論 は,1989年,加盟 国首脳 によ EU 社会憲章 の採択 (*58), それ に続 く, 同憲章 を実施 に移 す為 の欧州委 員会 による行動計画 に繋 が ってお り, "労働者 の経営参加" もそのテーマに な っている(*59)。 これ らの一連 の動 きは,従業員 の経営への参加 を欧州標準 とす るモデルを確立 して きた もの といえ る (英 国は, 同憲章 の採択 に抵抗 を 示 した)。新指令 は,加盟国の国内法 の延長 ではあ るが,超 国家的会社形態 であ る欧州会社 の考 え方 を部分 的には取 り入れた もので もある。 また,新指 令 は,合併 に関す る多 くの規定 を各加盟 国の国内法 に委ねてはいるが,国境 を越 えて誕生す る合併会社 に従業員 の経営参加への道 を設定す ることによ り, EU 独 自の メ ッセー ジを世界 に向 けて発 した もの といえ る。 それ は また, EU型企業統治‑の模索 で もあ るい60)。 この ことを裏付 けるよ うに,新指令 は,一方 では国境 を越 え る合併会社 の合 法性 について,合併会社の本社 が設 置 され る国の国内法への遵守 を基本 と してい るが,同時 に従業員 の経営参加

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参照

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