公私立学校間で見られる家計の教育費負担軽減に 対する行政需要の実証的研究
〜「囚人のジレンマ」ゲームの適用可能性から見た保護者の政策選好と 教育費無償化への方途〜
木村 康彦
キーワード:教育費無償化、ゲーム理論、社会的ジレンマ、意思決定、保護者意識、世論
【要 旨】本研究は、中学生の子女を持つ保護者が将来的に高校や大学などへ通わせることにより生じる教 育費を個人または政府のいずれが負担すべきと考えているか、その政策選好を「囚人のジレンマ」ゲームの 適用可能性を検討しながら分析することで、教育費負担軽減政策の行政需要の様相を明らかとし、今後の教 育費無償化に必要なことは何かを考察するものである。
中澤(2012)によると、本邦は海外と比較して公教育費が低い水準に止まっていることから、教育費の公 費負担に対する考え方を調査したところ、必ずしも教育費の無償化に世論は肯定的ではないのだという。こ れを踏まえると家計の教育費負担軽減に対する行政需要が高まらない原因は色々と考えられるが、国公私立 学校と学校設置者が異なることが障壁となり、それぞれの設置主体と関係する補助制度の拡充のみにしか関 心を持たず、公教育全体の公費負担の増額が求めにくい構造となっていることも、一つの要因として影響を 及ぼしているのではないだろうか。公立中学校の子を持つ保護者と私立中学校の子を持つ保護者は、まるで お互いの間で利益相反が起きているように感じることで、「囚人のジレンマ」ゲームが社会的に生じて、設 置者が異なる学校への公費助成を賛同しにくくなっている、というのが本稿の仮説である。
分析の結果、公立中保護者は私立中保護者より公立高校および国公立大学学費を、私立中保護者は公立中 保護者より私立高校および私立大学学費を、「税金で負担すべき」と考えている人の割合が高くなっている ことがわかった。保護者が公立と私立を同等に選択できる環境にあると、相手セクターの学校教育費に対し て、基本的に公費負担拡大へ非協力的となることが確認できた。このような現象が生じる理由として、社会 的ジレンマが生じている可能性が示唆された。今後、社会全体の理解を得ながら教育費の無償化を進めるた めには、ゲームの構造を変えていく必要があるだろう。
はじめに
本研究は、中学生の子女を持つ保護者が将来的に高校や大学などへ通わせることにより生じる 教育費を個人または政府のいずれが負担すべきと考えているか、その政策選好を「囚人のジレン マ」ゲームの適用可能性を検討しながら分析することで、教育費負担軽減政策の行政需要の様相 を明らかとし、今後の教育費無償化の在り方を考察するものである。
2010年に公立高等学校に係る授業料の不徴収及び高等学校等就学支援金の支給に関する法律が 成立して、高校授業料の実質無償化が実現した。2019年現在も高等学校等就学支援金の支給に関
する法律により、国の就学支援金制度が運用されているほか、大阪府や東京都などの一部の地方 自治体において、私立高校授業料の補助が独自に行われている。続く2012年9月11日には、経済 的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(社会権規約、国際人権A規約とも)の中等・高等 教育無償化条項に係る留保が撤回され1、2013年6月26日には子どもの貧困対策の推進に関する 法律が公布された。こうした動向を受けて、高等教育も2017年度から日本学生支援機構による給 付型奨学金制度を創設されている2。2019年5月17日には大学等における就学の支援に関する法 律が成立したことで3、2020年度からは文部科学省が承認した大学等での授業料等減免や学資支 給金の給付が行われる見込みとなった4。幼児教育や保育についても、同じく5月17日公布の子 ども・子育て支援法の一部を改正する法律によって5、子育てのための施設等利用給付が行われ ることとなり6、「無償化」の実現が謳われている。そして、私立小中学校等に通う児童生徒へ の経済的支援に関する実証事業も進められているが7、これも保護者の教育費負担軽減に向けた 取り組みの一つといえるかもしれない。白石裕は、現代日本社会は学校教育費や学校教育外の学 習費の家計負担が肥大化していて、高等教育段階の学費も保護者が負担することが多く、特に私 立学校に通う家庭の私費負担が重い「公私混合型教育費負担構造」が定着していることを指摘し ているが8、近年の政策動向を見ると、公費負担の割合が改善されつつあるように捉えることが できる。
一方で、日本政策金融公庫が高校生以上の子どもを持つ保護者4,700人(いずれも25歳以上64 歳以下の男女を各都道府県より100名ずつ抽出)に対して行った平成30年度「教育費負担の実態 調査」によると、子ども1人当たりの年間在学費用は、高校が68.5万円、高専・専修・各種学校 が128.6万円、短大が135.4万円、大学が156.9万円かかるとされている9。入学費用と在学費用を 累計すると、子ども1人当たりの費用は、高校3年間に237.4万円かかり、大学に入学した場合 は716.0万円が加わって、高校入学から大学卒業までに必要な入在学費用の合計は953.4万円(昨 年比+18.1万円)になったという10。これは家計にとって、決して軽い負担ではない。無償化の 対象とはならない「通学関係費」、「実習材料費」、「学用品費」や「修学旅行費」などといった授 業料以外の教育費負担も家計を圧迫しうる11。学生生徒等の学費負担の軽減が図られつつあるの は確かだが、教育費の高騰に対して様々な対応策が模索されており12、中等教育・高等教育の無 償化ですら、まだ道半ばの状態である13。それに加えて、近年は人口減少が進んでおり、今後は 労働投入量の大幅な増加は難しいことから、一人ひとりの能力の高度化を目指す必要があり、そ の促進のためにも、教育の質向上と教育費負担軽減が必要だとする見解もある14。
ところが、教育費の公費負担に対する社会全体の考え方は、必ずしも、教育費の無償化に肯定 的であるとは言えない状況にある。教育費を私費負担すべきものとして捉え、公費負担するこ とに否定的な意見が根強く存在するのである。矢野眞和によれば、「教育と社会保障に関する意 識調査」を実施した際に、「大学の教育費は、社会が負担すべきだと思いますか、あるいは個人 もしくは家族が負担すべきだと思いますか」と尋ねたところ、「どちらかといえば」を含むと約 80%が「個人もしくは家族が負担すべきだ」を選択しており、こうした負担意識は、家計所得や 学歴などの社会階層と統計的に全く関係なく見られたのだという15。また、中澤渉も国際調査の 結果を示して、「日本(の教育費)は何度も触れたように国際的には非常に低い水準にとどまっ
ているにもかかわらず、公教育費を増やすべきと考えている人は多くなく、既に公教育費の割 合が多いスカンジナビア諸国やフィンランドとほぼ同じか、むしろそれより少ないという状況」
で、「日本はやや特異な位置にある」と述べている16。そして、中澤は、矢野を含む様々な先行 研究や高校授業料無償化政策に対する世論調査の結果、同政策へのばら撒き批判があったことを 受けて、「政策は人々の意見を反映させて実施されるものと考えると、大学への学費援助とか、
学費の無償化といった政策は、財源の問題を別にしても、政治家にとってはあまり票にならな い、不人気の政策となりそう17」だとしており、世論として教育費無償化を求める行政需要の低 さに警鐘を鳴らしている。
さらに、小川和孝は、大学教育は個人に利益をもたらすため、その無償化は逆進性が高い政 策だと思われがちだが、先行研究で「大学進学者が増えることによる失業者の減少、税収の増 加、大学非進学者の賃金へのスピルオーバー効果」などの外部性があることや、「新たに税金を 投入することで授業料を下げた場合の恩恵をより大きく受けるのは、低所得者層である」ことが 明らかにされていることを知らないことが、教育費の公費負担支持を抑制していると仮説を立て た18。そこで、こうした情報を提供した集団と未提供の集団で、大学教育費の社会負担の賛否を 尋ねたところ、社会負担すべきという人が増えて、有意差が見られたという19。情報の不確実性 が世論を歪めることがわかる。
また、末冨芳も現在の公私混合型教育費負担構造を批判した上で、それらを解消しようとする
「内閣府や文部科学省による公教育費の増加や家計教育費の軽減が、政策の具体化に結び付かな いのは、財務省による受益者負担の拡大の主張が継続しており、省庁以外に教育費において政党 や利益集団などの有力なアクターが存在しないためであると考えられる20」(波線は引用者)と 述べている。この点については、「少子化や格差など家計教育費負担の軽減に関する論点が拡散 してしまっていることや、財政難のもとで公教育費を増加させたり家計教育費を増加させるため の財政負担の妥当性が、内閣府や文部科学省によって明確に説明されていないことが、社会的 支持や政治的支援を獲得できない理由となっている21」としているが、後述するベネッセ教育総 合研究所提供のデータでも表出しているように、直接的な教育費負担を行っている保護者です ら、教育費無償化に肯定的であるとは言えない状況にある。末冨の言葉を借りると、教育費スポ ンサーである保護者が何らかのリターン(利得)を期待しているならば、利得と効用の最大化を 図るために、積極的に公教育費の増大を支持するのが自然ではないだろうか。矢野も、教育の重 要性が認識されつつも、その資源配分が後回しとなる社会を教育劣位社会と呼び、「教育界と世 論と政府のそれぞれの思いがすれ違いながら、あるいは押したり引いたりする力が相殺されなが ら、諦めてきた慣習の文化的均衡」であると表現する22。実際に家計の教育費負担軽減に対する 行政需要が高まらない、教育費無償化を求める声が社会的な広がりを見せない理由には、長年に わたる公私混合型教育費負担構造によって培われた、政治的・社会的・文化的要因が根深く複雑 に絡んでいると思われる。
家計の教育費負担軽減に対する行政需要が高まらない原因は様々なものが考えられるが、国公 私立学校と学校設置者が異なることが障壁となり、それぞれの設置主体と関係する補助制度の拡 充のみにしか関心を持たず、公教育全体の公費負担の増額が求めにくい構造となっていること
も、一つの要因として影響を及ぼしているのではないだろうか。現に私学団体や国公立大学を中 心に、学費の高騰を抑えるために、私学助成や運営費交付金の堅持・拡充が求められているが、
これらが全国規模で大同団結して運動された事例はほとんど見当たらない。私学団体はしばし ば、公私較差是正の実現を主張しているが、これは公立学校レベルの水準まで政府の財政補助を するように求めているに止まり、公私を問わず教育費負担の水準を引き下げるように求めるもの ではない。また、1989年度から全日本教職員組合・日本高等学校教職員組合・全国私立学校教職 員組合連合が中心となって展開した「全国3000万署名運動」は、学者・文化人などによる「ゆき とどいた教育をすすめる会」の呼びかけを得て、公私を越えた運動がなされたが23、全盛期と比 べて24、4分の1以下に縮小している25。利益団体である以上、それぞれの利益に縛られてしま うのは当然のことではあるが、学校種や党派などを超えて公私が手を組むことができれば、より 一層の財政支援が期待できるかもしれない。少なくとも大同団結がマイナスには作用しないはず である。
公私の各利益団体による大同団結は極端な例えだとしても、個人レベルの利害関係者である保 護者は、公私立学校を問わず、教育費負担が軽減されることを評価しているのだろうか。それと も、自分の子どもと関係が無ければ、教育費負担は個人による私費負担が相当だと考えるのだろ うか。学校の設置者が異なることによって、認識の差はあれども、各学校に通う保護者はまるで お互いの間で利益相反が起きているように感じることで、「囚人のジレンマ」ゲームが社会的に 生じて、異なる学校への公費助成を賛同しにくくなっている、というのが本稿の仮説であり、そ のゲームの適用可能性を探りたい。
分析の枠組み
前節のように考えたとき、お互いの教育費負担の在り方について、「自分たちとは関係の無い こと」と捉えて無関心となるだけでなく、おのずから相手の教育費負担について、非協力的な 行動をとってしまっているのではないだろうか。この仮説を検証するため、今回の分析では、
Benesse教育研究開発センターおよび朝日新聞社が実施した「学校教育に対する保護者の意識調
査2012」の中から東京都のデータセットを使用して分析を行う。本調査は26、東京都の公立・私 立の中学校2年生を持つ保護者3,336名(公立1,370人、私立1,966人)を調査対象として、2012年 11月〜2013年1月に実施されたものである。調査協力校は公立中学校15校、私立中学校16校と なっており、配布数4,574名で回収率72.9%だった27。学校通しによる家庭での自記式質問紙調査
(子どもを経由した配布・回収)で行われた。
質問紙では、「あなたは、次のことについて、どの程度、税金で負担すべきだと思いますか。
A〜Gのそれぞれの項目について、あてはまる番号に○をつけてください。」と問いかけ、「公立 高校の授業料」「私立高校の授業料」「国公立大学の授業料」「私立大学の授業料」「経済的に恵ま れない家庭の子どもの通塾費用」「若者の職業訓練の費用」について、「すべて税金で負担すべ き」「どちらかといえば税金で負担すべき」「どちらかといえば個人が負担すべき」「すべて個人 が負担すべき」「わからない」の中から回答を選択する項目がある28。ここから、「わからない」
や空欄などの無効回答は全て除外して29、公私立中保護者のカテゴリとかけて、ピアソンのカイ
二乗検定を行う30。
ここで、公立中学校生徒の保護者は私立学校教育の公費負担に、私立中学校生徒の保護者は公 立学校教育の公費負担に賛同することによって、利得を得ることができるのかを考えてみたい。
まず、公立中保護者を考える。本調査を行った時点においては、公立中の生徒も卒業後に私立高 校や私立大学に通う可能性がある。特に本調査は東京都内の中学校で実施されているため、私立 高校の進学率は50%に達しており31、調査対象は卒業まで残り1年以上ある生徒の保護者である ことを踏まえれば、(仮に公立高校への進学が第1希望だとしても)いずれの設置者による学校 へ進んでもいいようにすることが合理的である32。同様に、大学は全国の学生のうち、8割近く が私立大学に入学していることから33、公立中保護者も私立大学の授業料を税金で負担すべきと 回答した方がより合理的である。都内には地方と比べて有名な私立学校が多いことも、合理性を 高めている。
一方で、私立中学校の生徒は同じ学校法人内の付属校に通うことが多く、公立高校に進学する ことは少ないかもしれないが、公立高校の生徒に対する財政支援よりも私立高校の生徒に対する 財政支援の方が大きくなることはあり得ないので、公立高校の学費は税金で負担すべきだと回答 することが合理的である。国公立学校の学費が私費負担ならば、同じ学校種の私立学校も私費負 担となることは明らかである。また、私立中学校の生徒も国公立大学への進学は充分に考えられ る。
これらを踏まると、もし公私立中の保護者がパレート優位を目指すならば、高校・大学段階に おいては国公私立を問わず、教育費は税金で負担すべきと回答することになるので、「公私立中 保護者×教育費負担の考え方」でカイ二乗検定を行うと、有意差は見られないはずである。た だし、一般的に私立中学校の学費は公立中学校よりも高額で、私立中保護者の方が公立中保護者 よりも高所得者である可能性もある。単純なクロス集計で求めると、子どもを公私立学校に通わ せることによる保護者の政策選好では無く、家計における経済的なゆとりの有無によって、教育 費負担者に対する考え方に影響が出てしまうかもしれない。そこで、今回の分析では、経済的な ゆとりの有無を統制するため、多重クロスにして分析を行った。経済的なゆとりの有無を判断す るにあたっては、同調査に「あなたの生活には経済的にどの程度ゆとりがありますか。」という 質問があり、「ゆとりがある」「多少はゆとりがある」「あまりゆとりがない」「ゆとりがない」と いう4択で回答する形となっているが、このうち前者2つを「ゆとりがある」、後者2つを「ゆ とりがない」グループに分類した34。
なお、戦略的・合理的な理由からでは無く、自身の信念として、教育費は「税金で負担すべ き」「個人で負担すべき」と理性的・非合理的な判断をする人もいるのではないかという批判が あるかもしれない35。しかしながら、今回の分析では、上述のような状態が起きたとしても分析 に支障は生じないと思われる。確かに、上述のような回答者はいるだろうが、一般的に子どもの 進学先を決定する際には、各学校の教育方針やカリキュラム、実際にかかる学費、入学試験の難 易度、通学時間などといった要素を考慮すると思われる。実際に保護者が支払う学費の金額は進 学先決定に大きな影響を及ぼすだろうが、「教育費負担は税金/個人で負担すべき」という政治 的な考え方で学校選択をするわけではない。そのため、公・私立中学校とも、理性的・非合理的
な判断をする保護者は同じ割合で存在すると想定され、もし公立学校に通わせる保護者と私立学 校に通わせる保護者の間で有意差が見られるならば、それは一定数の人間が自らの利益を戦略的 に考えて合理的判断により選択した結果と仮定することができる。カイ二乗検定は実際の観測度 数と期待度数との差を見る検定方法であり、公・私立中保護者に戦略的・合理的判断をする人と 理性的・非合理的判断をする人が同じ割合で存在すれば、本枠組みで分析可能である。
公私別での教育費負担の考え方
本節では、自分の所属セクターにだけ税負担を望む保護者が多いか否かを検証することを目的 として、公私立学校に分けて「保護者×教育費負担の考え方」のカイ二乗検定を行うため、経 済的ゆとりの有無を統制変数として設定して二重クロス表を作成し36、有意確率(P)と効果量
(CramerのV)を求めた。まずは公立高校の学費の教育費負担の在り方について分析した。
表1では、家計の経済的ゆとりの有無にかかわらず、公立高校学費はおおむね3分の2以上の 保護者が税金負担すべきであると考えていることがわかる37。それでもなお、公立中保護者と比 べて、私立中保護者は有意に「個人負担すべき」と考える割合が増えている。特に、経済的ゆと りがない家庭においては、公立中保護者と私立中保護者の教育費負担者に対する考え方が約20%
も異なっている。経済的ゆとりの有無が公立高校学費の教育費負担に対する考え方へ影響を及ぼ していることも確認できるが、その影響を制御してもなお、公私立学校間の保護者で有意差が見 られた点は特徴的である。
表2を見ると、経済的ゆとりのある家庭は私立高校の学費を3分の2以上が「個人で負担すべ き」と回答している一方で、経済的ゆとりのない家庭では「個人負担すべき」という考え方が 減っている。経済的ゆとりの影響を制御してもなお、公私立学校間の保護者で有意差が見られた 点は公立高校学費の場合と同様の結果である。
表1 公立高校の学費 税金で負担すべて
すべき
どちらかといえば 税金で負担
すべき
どちらかといえば 個人が負担
すべき
個人が負担すべて
すべき 合 計 有意確率 効果量
ゆとりがある
公立 141(28.4%) 244(49.1%) 104(20.9%) 8(1.6%) N=497 P<.001 私立 183(14.8%) 622(50.4%) 361(29.3%) 67(5.4%) N=1,233 V=.180 ゆとりがない
公立 265(39.1%) 364(50.0%) 69( 9.5%) 10(1.4%) N=728 P<.001 私立 88(17.6%) 250(49.9%) 134(26.7%) 29(5.8%) N=501 V=.309 合 計 公立 426(34.8%) 608(49.6%) 173(14.1%) 18(1.5%) N=1,225 P<.001 私立 271(15.6%) 873(50.3%) 495(28.5%) 96(5.5%) N=1,734 V=.266
表3は国公立大学の学費負担について見た。ゆとりがあるグループは、5%水準で統計上の有 意差が見られるものの、効果量が小さめで、関連性は薄い38。その原因としては、ゆとりがある グループの「私立中保護者は、国公立大学学費を税金負担すべきと考えやすい傾向にある」か
「公立中保護者は、国公立大学学費を個人負担すべきと考えやすい傾向にある」かの2通りが考 えられる。判別が難しいが、おそらく理由は前者であり、自分の子どもが将来的に国公立大学に 通う可能性も視野に入れて、合理的な判断をしたものと考えられる。
表2 私立高校の学費 税金で負担すべて
すべき
どちらかといえば 税金で負担
すべき
どちらかといえば 個人が負担
すべき
個人が負担すべて
すべき 合 計 有意確率 効果量
ゆとりがある
公立 28( 5.6%) 98(19.7%) 284(57.0%) 88(17.7%) N=498 P=.001 私立 57( 4.6%) 341(27.5%) 685(55.2%) 157(12.7%) N=1,240 V=.096 ゆとりがない
公立 65( 9.1%) 227(31.7%) 308(43.0%) 116(16.2%) N=716 P<.001 私立 59(11.6%) 205(40.4%) 216(42.6%) 27( 5.3%) N=507 V=.177 合 計 公立 93( 7.7%) 325(26.8%) 592(48.8%) 204(16.8%) N=1,214 P<.001 私立 116( 6.6%) 546(31.3%) 901(51.6%) 184(10.5%) N=1,747 V=.098
表3 国公立大学の学費 税金で負担すべて
すべき
どちらかといえば 税金で負担
すべき
どちらかといえば 個人が負担
すべき
個人が負担すべて
すべき 合 計 有意確率 効果量
ゆとりがある
公立 97(19.7%) 237(48.2%) 139(28.3%) 19(3.9%) N=492 P=.015 私立 172(13.9%) 621(50.4%) 370(30.0%) 70(5.7%) N=1,233 V=.078 ゆとりがない
公立 187(26.5%) 358(50.8%) 136(19.3%) 24(3.4%) N=705 P=.003 私立 102(20.2%) 243(48.2%) 135(26.8%) 24(4.8%) N=504 V=.108 合 計 公立 284(23.7%) 601(49.7%) 271(23.0%) 43(3.6%) N=1,197 P<.001 私立 274(15.8%) 864(49.7%) 505(29.1%) 94(5.4%) N=1,737 V=.115
表4 私立大学の学費 税金で負担すべて
すべき
どちらかといえば 税金で負担
すべき
どちらかといえば 個人が負担
すべき
個人が負担すべて
すべき 合 計 有意確率 効果量
ゆとりがある
公立 16(3.2%) 81(16.4%) 294(59.5%) 103(20.9%) N=494 P=.002 私立 30(2.4%) 263(21.3%) 765(62.0%) 176(14.3%) N=1,234 V=.093 ゆとりがない
公立 53(7.6%) 203(29.0%) 326(46.6%) 118(16.9%) N=700 P<.001 私立 42(8.4%) 172(34.5%) 244(48.9%) 41( 8.2%) N=499 V=.128 合 計 公立 69(5.8%) 284(23.8%) 620(51.9%) 221(18.5%) N=1,199 P<.001 私立 72(4.2%) 435(25.1%) 1,009(58.2%) 217(12.5%) N=1,733 V=.095 続いて、表4では、私立大学の学費は、私立高校の学費の場合よりも、多くの保護者が個人負
担すべきだと考えていることがわかる。なかでも、経済的ゆとりのある公立中保護者は80.4%、
私立中保護者も76.3%が私立大学の学費を個人負担すべきと考えている。これは一般的に、教育 段階が上がるほど、社会へ与える外部経済効果は逓減してしまうので39、政策選好として受益者 負担を求める意見が多くなっているものと思われる。カイ二乗検定の結果は、いずれも有意とい う結果が得られた。また、ゆとりがあるグループとゆとりがないグループを比較すると、税金で 負担すべきと考える人の割合が倍近く異なっており、経済的ゆとりによって、私立大学の学費負 担に対する行政需要の強さに違いが出ていることが読み取れる。
ここまで、学校教育費に対する公費負担・私費負担に関する考え方を見てきた。それでは、現 在、大阪市を筆頭に経済的に恵まれない家庭の子どもの通塾費用の公費助成が先進的な地方自治 体で行われているが40、経済的に恵まれない家庭の子どもの通塾費用だとどうだろう。結果を見 ると、表5の通り、「どちらかといえば」を含めると、全体的な平均としては過半数が通塾費用 を個人負担すべきとしているものの、利益を享受する可能性の高いゆとりがないグループの公立 中保護者は、3分の2近くが税金で負担すべきだとしている。また、検定結果は、ゆとりがない グループは0.1%水準で有意となり、一定の効果量も確認できたが、ゆとりがあるグループは5%
水準で有意となったものの、効果量はかなり小さく、公私立学校間での差は、ほぼ見られなかっ た。これは、表1〜4までの分析とは異なり、経済的に恵まれない家庭の子どもの通塾費用は調 査回答者の中でも利益を享受できる可能性がある保護者と利益を享受することができないことが ほぼ確実な保護者が混在していることが要因であると考えられる。それでも、経済的に恵まれな い家庭の子どもの通塾費用に対する公費負担の在り方に対する考え方は家計所得によって、左右 されうることは改めて確認することができた。
表5 経済的に恵まれない家庭の子どもの通塾費用 税金が負担すべて
すべき
どちらかといえば 税金が負担
すべき
どちらかといえば 個人で負担
すべき
個人で負担すべて すべき
(100%)合 計 有意確率 効果量
ゆとりがある
公立 40( 9.5%) 152(36.2%) 178(42.4%) 50(11.9%) N=420 P=.041 私立 64( 6.1%) 362(34.3%) 466(44.2%) 163(15.5%) N=1,055 V=.075 ゆとりがない
公立 125(19.2%) 299(45.9%) 175(26.9%) 52( 8.0%) N=651 P<.001 私立 41( 9.0%) 171(37.5%) 170(37.3%) 74(16.2%) N=456 V=.209 合 計 公立 165(15.4%) 451(42.1%) 353(33.0%) 102( 9.5%) N=1,071 P<.001 私立 105( 6.9%) 533(35.3%) 636(42.1%) 237(15.7%) N=1,511 V=.179
それでは、「若者の職業訓練の費用」については、どうだろう。若年者向けの就業体験支援な どが全国で行われているが、職業訓練にかかる教育事業については異なる反応を見せるだろう か。結果は表6が示す通りである。ゆとりがあるグループでは有意差が見られない。これは、
「若者の職業訓練」が、教育政策というよりも、むしろ労働政策や社会福祉政策に近く、公私立 学校という枠組みでは有意差が生じないのだと思われる。一方で、ゆとりがない家庭においては
税金で負担すべきと考える公立中保護者が多く、有意差が見られた。これは、ゆとりがない家庭 の公立中保護者は我が子が若者の職業訓練を受ける可能性があると、強く感じていることが原因 と考えられる。
表6 若者の職業訓練の費用 税金負担すべて
すべき
どちらかといえば 税金負担すべき
どちらかといえば 個人負担すべき
個人負担すべて すべき
(100%)合 計 有意確率 効果量
ゆとりがある
公立 65(13.8%) 240(50.8%) 147(31.1%) 20(4.2%) N=472 P=.127 私立 119(10.1%) 620(52.4%) 377(31.9%) 67(5.7%) N=1,183 V=.059 ゆとりがない
公立 122(17.6%) 380(54.8%) 163(23.5%) 29(4.2%) N=694 P=.004 私立 59(12.3%) 250(52.0%) 137(28.5%) 35(7.3%) N=481 V=.107 合 計 公立 187(16.0%) 620(53.2%) 310(26.6%) 49(4.2%) N=1,166 P<.001 私立 178(10.7%) 870(52.3%) 514(30.9%) 102(6.1%) N=1,664 V=.093
表1〜表4において、同じ経済的ゆとりのグループ内で学校教育費負担者に対する考え方を比 較してみると、公立中保護者は私立中保護者より公立高校および国公立大学学費を、私立中保護 者は公立中保護者より私立高校および私立大学学費を、「税金で負担すべき」と考えている人の 割合が高くなっていることがわかる。ゆとりのあるグループによる、国公立大学の教育費負担 に対する考え方を除けば、いずれの学校教育費においても公私立学校間で有意差が見られてお り41、経済的ゆとりがないとより効果量が大きくなった42。本来ならば、アンケート回答者はい ずれも中学生の保護者であり、高校や大学段階の学校教育費については、公私立学校を問わず、
「税金で負担すべき」と回答することが最も利得が大きいはずである。
一方で、「経済的に恵まれない家庭の子どもの通塾費用」および「若者の職業訓練の費用」の 学校外教育費については、必ずしも公私立学校間で保護者の政策選好が変わるわけではないよう に思われる。しかしながら、学校外教育費に対する公費負担の在り方に対する考え方は家計所得 などの影響を受けて、結果として公私立学校の属性によって、左右されうることが示唆された。
「囚人のジレンマ」ゲームの適用可能性
中学生保護者の多くはなぜパレート最適となるような行動をとらないのか。その疑問に答える ために、最も有名なゲーム理論の1つである「囚人のジレンマ」ゲームの適用可能性を本節で考 える。様々なバリエーションがあるが、大まかには以下のようなストーリーとなる。
検察が強盗事件の被疑者A氏とB氏の2人から事情聴取をしている。検察はA氏とB氏が強 盗を犯した決定的な証拠は持っていないが、より軽い罪状である、拳銃の不法所持で2人を裁 判にかけて、求刑することはできる。しかし、検察側としては、できれば強盗を犯したという 自白を引き出したい。そこで、被疑者2人に司法取引を持ちかけるため、A氏とB氏を別室に
呼び出した。取引の内容は「もしも1人だけが強盗を自白して、もう1人が黙秘すれば、自白 した人の罪を軽減・免除して、黙秘した人には厳罰を求める。2人とも自白すれば、司法取引 は無かったこととして、通常の量刑を求める。」というものだ。司法取引に2人とも応じず、
黙秘してしまえば、最も軽い拳銃の不法所持の罪状で起訴される。2人はどのように行動する ことが最適だろうか。
表7 「囚人のジレンマ」ゲーム具体例の利得表 B氏
自 白 黙 秘
A氏
自 白 (5年,5年) (0年,10年)
黙 秘 (10年,0年) (1年,1年)
※この利得行列は、(A氏の刑期、B氏の刑期)を示している。
結論を言えば、表7の利得表で示した通り、本来ならば2人とも「黙秘」することがパレート 最適となり、1番利得が大きいが、お互いが意思疎通をとれずに不完全情報となっているため、
2人とも「自白」を選択することがナッシュ均衡点となってしまうというものである。これは個 人合理的な戦略と集団合理的な戦略が相反するために生じる現象である。
ゲーム理論は、自分一人の意思決定のように見える事象が実は相互依存的な意思決定であるこ とを明らかとすることに適している。特に「囚人のジレンマ」は、核兵器開発を行う科学者たち や、ブッシュ大統領が1989年に提出した憲法修正案に対して上院議員たちがとった行動などの説 明で用いられてきた43。公私立学校の保護者たちも、同じような「囚人のジレンマ」状態に置か れているのではないだろうか。公私立保護者は設置者が異なる学校の公費負担について、協力し て賛同するか(囚人のジレンマでいう黙秘)、それとも協力しないか(囚人のジレンマでいう自 白)に分類して作成した利得表が表8である。それぞれのグループにとって望ましい状況に応じ て、順序尺度(1〜4点、点数が大きいほど利得が大きい)で示した44。例えば、私立保護者に とって一番利得が大きくなるという状況は、公立保護者に私学助成運動へ参画してもらいながら も、私立保護者自身は公立学校学費の公費負担に賛同しないことである。その逆もまた然りで、
公立保護者は私立保護者から公立学校学費の公費負担に賛同してもらいながらも、公立保護者自 身は私立学校学費の公費負担に賛同しないことが利得は最も大きくなる。しかしながら、お互い を信用できず、非協力(裏切り)を選択すると、お互いの利得は小さくなってしまう。相手セク ターに税金投入されることを差し引いても、年間数十万円かかる自分の子どもの授業料負担が確 実に税金負担となることの方が、税金負担なしよりもお互いに利得が大きい。政策の選好順序は 財源調達のための課税方式などにも依存するが、追加の税負担・別分野への税補助がなければ、
双方のセクターへ税負担による「補助あり>補助なし」となる。
表8 公私立学校保護者の利得表 私立保護者 国公立教育費の公費
負担拡大に協力しない 国公立教育費の公費 負担拡大に協力する
保護者公立
私学教育費の 公費負担拡大に
協力しない (2,2) (4,1)
私学教育費の 公費負担拡大
に協力する (1,4) (3,3)
もちろん、実際の政策形成過程を考えると、必ずしも特定の政策の支持者が多く、その政策実 現を求める運動が大きければ、その政策が実現するというわけではない。学生生徒等や保護者 が、国公私立学校を問わず一致団結して教育予算の拡充を求めたとしても、政策実現に直結する とは限らず、実際に利得表の通りに、経済支援を受けられるとは限らない。さらに、一般的な
「囚人のジレンマ」ゲームとは異なり、行動の結果が直接的な目に見える損害や利益をもたらす わけではないという点で、このゲームを適用することには限界があるという批判もあり得るだろ う。
しかしながら、国公私立学校という設置者の違いが私費負担軽減に対する大同団結を妨げ、先 行研究が示しているように教育費の公費負担を否定的に考えさせてしまうならば、結果として現 在の私費負担中心の教育費負担構造を後押ししてしまっていると言える。公費負担拡充を求める 機運を得点化すると、表8の利得表で示した通りになり、そこに社会的ジレンマが生じているな らば、教育費は私費負担すべきだという受益者負担主義の考え方に陥ってしまうことは十分に考 えられる。これらを踏まると、公私立学校保護者間で観察できた対立を「囚人のジレンマ」ゲー ムとして整理することは可能なのではないだろうか。
おわりに
本稿の分析により、保護者が公立と私立を同等に選択できる環境にあると、相手セクターの学 校教育費に対して、基本的に公費負担拡大へ非協力的となることが確認できた。このような現象 が生じる理由として、「囚人のジレンマ」ゲームを適用しうると思われる。我が国の公教育費水 準は低く、教育費の公費投入に対する行政需要は高くなるはずであるのに、公私混合型教育費負 担構造が社会的ジレンマによって維持され、結果的に抑制されているという可能性が統計的にも 示唆されている。
保護者の間でも、自らの政治的な信念として、教育費の無償化に対する賛否が分かれるという のは、ごく自然なことである。しかしながら、これを踏まえた上で、合理的・戦略的な判断をし たと思われる保護者間において、社会的ジレンマが生じたことにより、相手セクターの教育費負 担軽減に対して否定的な考えを持ってしまうのだとすれば、本来あるはずの行政需要を見えなく させてしまう。
囚人のジレンマゲームは、複数回の繰り返しか1回限りのゲームかによって、プレーヤーの選 択が異なることが知られている45。これは繰り返しゲームでは過去のプレイに応じて、協力、裏 切り、仕返しなどの多様な行動パターンが可能となるためである。保護者は選挙や世論調査など の機会があるため、一見すると繰り返しゲームの構造にあるが、実社会では、必ずしもうまく機 能していない。保護者は自分の学校以外の情報は入手しにくく、たとえ見聞きしても断片的な情 報のため、異なる設置者の学校における学費負担の困難さが十分に理解されにくい、という不完 全情報下にあるためだ。現に国公私立学校のアクターが継続的な大同団結に成功したという話も 聞かず、常に相手が「非協力」のカードを提示している状態となっている。わざわざ労力をかけ てまで、保護者が自分とは関係のない補助事業にまで賛意を示すことはないだろう。さらに、国 公私立を問わず、子どもたちが学校から卒業すると利得は0になってしまう。このままでは、潜 在的な行政需要があるにもかかわらず、保護者は教育費無償化に向けた様々な取り組みを支持す るという政策選好を持つことはないかもしれない。
このような社会的ジレンマから解放されるには、ゲームの構造を変えるほかない。すなわち、
囚人のジレンマは不完全情報下で起こる現象であるので、小川も述べているように教育費無償化 は外部経済効果も有すること、そして自分たちの利得行列などについても十分に周知することで 改善されうる。表8の数値は順序尺度で示したもので、実際の利得を比例尺度(公費補助の予算 金額)で数値化することは難しいが、この利得は大きくも小さくもなる。不完全情報下で限られ たパイ(予算)の分割で争うのではなく、パイをより大きくするように団結していくことが望ま れる。先に引用したように、末冨は、省庁以外に教育費に関わる有力な利益集団がないことが公 教育費の増加に結び付かない原因の1つとして挙げていたが、教育行政は公私立学校間で「裏切 り」を起こさず、積極的に「協調」するように仲介や政策づくりができれば、財務省との折衝で も有利に交渉が進められるのではないだろうか。各アクターの利得行列を意識しつつ、公私協調 を進めることが重要となるだろう。そして、相手セクターの教育費とはいえ、直接の利害関係者 であるはずの保護者たちが私費負担を肯定する構造が継続すると、漸進的な教育費無償化の実現 はおろか、むしろ遠のきかねない。長期的な視点で見れば公私協調が重要であり、教育費無償化 について社会全体の理解を得る近道となるだろう。
謝 辞
本論文を執筆するに当たり、東京大学社会科学研究所附属社会調査・データアーカイブ研究セ ンターSSJデータアーカイブから「学校教育に対する保護者の意識調査,2012」(ベネッセ教育 総合研究所)の個票データの提供を受けた。また、早稲田大学データ科学総合研究教育センター よりデータ解析相談のご協力をいただいた。厚く御礼を申し上げたい。なお、本研究はJSPS科 研費JP17H07186による研究成果の一部である。
注
1 中内康夫「社会権規約の中等・高等教育無償化条項に係る留保撤回:条約に付した留保を撤回す る際の検討事項と課題」『立法と調査』337号、2013年、44-55頁。
2 独立行政法人日本学生支援機構「奨学金の制度(給付型)>平成29年度から31年度までに採用され た方」 https://www.jasso.go.jp/shogakukin/kyufu/h29/index.html 2019年9月18日閲覧。
3 参議院「議案情報 第198回国会(常会)」 https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/198/ meisai/m198080198021.htm 2019年9月18日閲覧。
4 文部科学省高等教育局学生・留学生課高等教育修学支援準備室「高等教育の修学支援新制度」
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/hutankeigen/index.htm 2019年9月18日閲覧。
5 参議院事務局「議案情報 第198回国会(常会)」 https://www.sangiin.go.jp/japanese/joho1/kousei/gian/
198/meisai/m198080198015.htm 2019年9月18日閲覧。
6 内閣府「幼児教育・保育の無償化特設ホームページ」 https://www.youhomushouka.go.jp/ 2019年 9月18日閲覧。
7 文部科学省初等中等教育局修学支援プロジェクトチーム「私立小中学校等に通う児童生徒へ の経済的支援に関する実証事業について」 http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/shugaku/detail/
1385578.htm 2019年9月18日閲覧。
8 白石裕『分権・生涯学習時代の教育財政:価値相対主義を越えた教育資源分配システム』京都大 学学術出版会、2000年、72-73頁。
9 株式会社日本政策金融公庫国民生活事業本部生活衛生業務部教育貸付グループ「教育費負担の実 態調査結果(2019年3月20日発表)」 https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/kyouikuhi_chousa_k_h30.pdf 2019年9月18日閲覧。
10 同上。
11 中村文夫『子どもの貧困と教育の無償化』明石書店、2017年、81-134頁。
12 田中敬文「家計における教育費負担の高止まりと負担軽減に向けて」『個人金融』第9巻第1号、
2014年、15-22頁。田中は教育費の家計負担軽減に向けて、「大学生の家計所得の正確な把握」、「授 業料所得控除の導入」(国立大学の授業料相当額を家計の課税所得から控除する仕組み)、「大学へ の機関補助の充実」といった施策を提言するとともに、「国の教育費支出を増やすためには、子供 は公共財であるという認識を広め、自分の子供のためだけではなく、他人の子供のためにもコス トを負担するという発想」を持てるように、適切な教育費負担の在り方を議論することの必要性 を述べている。
13 その他にも政策上の課題点は残されていないか、制度を運用していく過程で慎重に検証していき ながら、教育費無償化の裾野を漸進的に広げていく必要があるだろう。とりわけ、政府が負担す る公教育費の水準や配分方法などに問題が無いか、注意を払う必要がある。例えば大内裕和は、
大学等における修学の支援に関する法律に基づく経済支援を行うと、これまで減免措置を受けて いた学生の何割かが新しい減免制度の対象外になる恐れや産業界や政府による大学自治への介入 をもたらす可能性があること、支援のための財源が逆進性の高い消費税の増税によって賄うと決 められていることなどを指摘している。大内裕和「『高等教育無償化』のウソ 〜真の『教育の 機会均等』を実現するために必要なこと(イミダス・集英社)」 https://imidas.jp/jijikaitai/f-40-187- 19-08-g600 2019年9月20日閲覧。
14 佐藤千尋「高まる人材投資への関心と教育財源確保策」『立法と調査』第393号、2017年、15-27頁。
15 矢野眞和「費用負担のミステリ:不可解ないくつかの事柄」広田照幸・吉田文・小林傳司・上山 隆大・濱中淳子・白川優治『大学とコスト:誰がどう支えるのか』岩波書店、2013年、169-193頁。
16 中澤渉『なぜ日本の公教育費は少ないのか:教育の公的役割を問いなおす』勁草書房、2014年、
177頁。ただし、( )部分は引用者が言葉を補充した。
17 中澤渉、同上書、13頁。
18 矢野眞和・濱中淳子・小川和孝『教育劣位社会:教育費をめぐる世論の社会学』岩波書店、2016 年、116-138頁。
19 同上。
20 末冨芳『教育費の政治経済学』勁草書房、2010年、184-185頁。
21 同上。
22 矢野眞和・濱中淳子・小川和孝、前掲書、182-183頁。
23 田中秀佳「私費負担軽減運動の歴史と到達点:教育財政の民主主義的・教育専門的統制」世取山 洋介・福祉国家構想研究会『公教育の無償性を実現する:教育財政法の再構築(シリーズ新福祉 国家構想2)』大月書店、2012年、416-454頁。1989年当時は、40人学級即時完結、35人学級実現、
私学助成拡充、教育費の父母負担軽減を全国共通課題にしていたという。
24 香川の教育をよくする県民会議「全国教育署名(3,000万署名)運動」 http://www.niji.or.jp/home/
kakyoso/yokusurukai/3000/3000man.htm 2019年11月11日閲覧。同サイトによると、1991年度は全国 で25,066,355名分の署名を集めたという。
25 日本共産党「ゆきとどいた教育へ 公私で533万人 国会に署名提出」 https://www.jcp.or.jp/akahata/
aik18/2019-02-23/2019022303_01_1.html 2019年11月11日閲覧。2018年度は公立関係分771,784名およ び全国私学助成をすすめる会が4,559,329名から集めた「私学助成全国署名」と合わせて、5,331,113 名分を国会に提出したとされる。
26 Benesse教育研究開発センター・朝日新聞社共同調査『学校教育に対する保護者の意識調査2012ダ
イジェスト』株式会社ベネッセコーポレーションBenesse教育研究開発センター、2013年、2-3頁。
27 学校の抽出にあたっては、公立小学校から私立中学校への進学率により東京都の市区を3つの地 域ブロックに分け(私立進学率2割以上/1割台/1割未満)、各地域ブロックから市区が選択さ れた。公立中学校は、その市区の中から、学校規模が偏らないように抽出し、私立中学校は、偏 差値、男女共学、大学の附属校かどうかの条件が偏らないように抽出したという。そのため、公 立中学校および私立中学校の数値は、東京都の学校全体を表しているのではなく、様々な規模や 経営環境の学校状況を広く反映したデータセットである。なお、本稿で扱う「囚人のジレンマ」
ゲームの適用可能性は保護者が公立と私立を同等に選択できる環境が整った東京などの大都市圏 で検証することが望ましい。地方の公立中保護者は地理的制約から私立学校を選択できないので、
私立学校への公費投入を賛同するインセンティブは生じにくいためである。その点を踏まえると、
本データセットはサンプルとして適切だと思われる。なお、今回の分析で明らかにしたいことは
「日本全国の保護者が公私立学校間で相手セクターに対する利害意識を持っている状況にある」と いうことではなく、「保護者が公立と私立を同等に選択できる環境にある場合、相手セクターに対 する利害意識を持って政策選好に影響を与えうる」という点であることに留意する必要がある。
28 本調査は継続調査として、『学校教育に対する保護者の意識調査2018』が既に実施されている。
2018年度調査では、新たに「幼稚園・保育園の保育料(授業料)」及び「社会人の学び直しのた めの授業料」に対する教育費負担意識についても尋ねており、質問項目がより充実した。しかし ながら、2018年度調査の個票が確認できるローデータについては、本稿執筆時点で公表されてい ないため、2012年度調査のデータセットを用いている。就学前教育やリカレント教育に対する費 用の負担意識については、今後の分析課題としたい。2018年度調査の調査票や報告書は次のWEB サイトを参照。ベネッセ教育研究所「朝日新聞社共同調査『学校教育に対する保護者の意識調査 2018』」 https://berd.benesse.jp/shotouchutou/research/detail1.php?id=5270 2019年9月20日閲覧。
29 基礎集計表を見ると、除外した「わからない」と「無回答・不明」の占める割合は次の通りである。
公立高校の授業料を「わからない」とした回答者は公立保護者2.8%、私立保護者4.0%で、「無回
答・不明」は公立保護者1.7%、私立保護者2.1%。私立高校の授業料を「わからない」とした回答 者は公立保護者3.9%、私立保護者3.3%で、「無回答・不明」は公立保護者1.6%、私立保護者2.0%。
国公立大学の授業料を「わからない」とした回答者は公立保護者4.5%、私立保護者3.6%で、「無 回答・不明」は公立保護者2.5%、私立保護者2.3%。私立大学の授業料を「わからない」とした 回答者は公立保護者5.2%、私立保護者3.7%で、「無回答・不明」は公立保護者2.3%、私立保護者 2.3%。若者の職業訓練の費用を「わからない」とした回答者は公立保護者7.2%、私立保護者7.8%
で、「無回答・不明」は公立保護者1.9%、私立保護者2.3%。経済的に恵まれない家庭の子どもの 通塾費用を「わからない」とした回答者は公立保護者14.7%、私立保護者16.2%で、「無回答・不明」
は公立保護者2.0%、私立保護者2.1%だった。概して、教育段階が上がるほど、「わからない」と いう回答者が増える傾向にあるものの、経済的に恵まれない家庭の子どもの通塾費用は特に「わ からない」とする人が多い。これは本調査の実施当時、通塾費用に対する公費助成が地方自治体 レベルでは行われはじめているものの、あまり一般的にはなっておらず、是非の判断が難しかっ たのではないかと思われる。なお、社会調査では、時として、「わからない」の部分に重要な特徴 が表れることがあるが、集計結果を見る限り、その割合は高くなく、除外しても本稿全体の分析 に大きな影響は与えないと判断した。基礎集計表は次のWEBサイトを参照。ベネッセ教育研究 所「基礎集計表」 https://berd.benesse.jp/berd/center/open/report/hogosya_ishiki/2013/pdf/data_02.pdf 2019年11月22日閲覧。
30 「学校教育に対する保護者の意識調査2012」では、「私立小学校・中学校の授業料」の公費・私費 負担意識についても、尋ねている。しかしながら、そもそも国公立小学校・中学校の授業料の無 償は、戦後一貫して保障されており、公立中学校の保護者が「私立小学校・中学校の授業料」の 無償化を支持することで得られる利得は特に認められない。よって、囚人のジレンマが生じる余 地は無いため、本稿では分析の対象としなかった。ただし、強いて言うならば、私立小学校・中 学校授業料の公費負担に関する制度的妥当性への様々な議論は置いておいて、純粋にゲーム理論 的視点から見ると、利得行列が公私協調を得られない構造になっているという点で、無償化実現 は他の学校種よりも難しいと言えるかもしれない。
31 東京都内の高等学校(全日制・定時制)に通う生徒は2017年5月1日現在で316,832名いるが、そ のうちの176,246名/55.6%が私立学校に通学している。東京都生活文化局私学部『東京都の私学 行政:平成30(2018)年度版』東京都生活文化局私学部私学振興課、2019年、5頁。
32 令和元(2019)年度東京都公私連絡協議会において、東京都と一般財団法人東京私立中学高等学 校協会との間で合意した『令和2年度高等学校就学計画』によると、東京都内公立中学校から、
都立高校と都内私立高校との間に進学する生徒の受け入れ数は、按分比を59.6:40.4とすることに なっている。詳細は、東京都「令和2年度高等学校就学計画について」 http://www.kyoiku.metro.
tokyo.jp/press/press_release/2019/release20190904_02_2.html(2020年1月8日閲覧)を参照。
33 2017年度の大学学部への入学者数は、国立99,136人、公立33,712人、私立498,425人である。文部科 学省「学校基本調査─ 平成29年度結果の概要─」 http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa01/ kihon/kekka/k_detail/1419591_00001.htm(2020年1月8日閲覧)を参照。
34 基礎集計表によると、公立中保護者の回答割合は「ゆとりがある」3.9%、「多少はゆとりがある」
32.9%、「あまりゆとりがない」37.4%、「ゆとりがない」18.8%、無回答・不明6.9%で、私立中保 護者は「ゆとりがある」10.3%、「多少はゆとりがある」55.5%、「あまりゆとりがない」23.2%、「ゆ とりがない」3.9%、無回答・不明7.0%である。ベネッセ教育研究所「基礎集計表」 https://berd.
benesse.jp/berd/center/open/report/hogosya_ishiki/2013/pdf/data_02.pdf 2019年11月22日閲覧。
35 後述の「囚人のジレンマ」ゲームで例えるならば、自らの罪状の軽重よりも、自身の信念として、
これまでの罪を「自白する」または共犯者を守るために「黙秘する」という状態である。
36 表1〜表6における二重クロス表中の最小期待度数はいずれも5以上である。
37 以下では、「すべて税金負担すべき」「どちらかといえば税金負担すべき」を合算したものを税金 負担すべきグループ、「すべて個人負担すべき」「どちらかといえば個人負担すべき」を合算した ものを個人負担すべきグループとして記述する。
38 V値は一般的に0.1前後が小さめ、0.3前後が中程度、0.5前後が高い関連性を示す目安とされる。
明確な線引きはできないが、後述の通り、いずれも便宜的にV>.09のものを一定の効果量ありと 判断した。大規模サンプルに対する検定は、わずかな傾向でも有意になりやすいため、このよう な基準を設定した。
39 小林雅之「大学の教育費負担:誰が教育を支えるのか」広田照幸ほか『大学とコスト:誰がどう 支えるのか』岩波書店、2013年、112-115頁。
40 大阪市塾代助成事業運営事務局「大阪市塾代助成事業」 https://www.juku-osaka.com/ 2018年3月 22日閲覧。
41 有意差が確認された表1、表2、表4の二重クロス表に、さらに出生順位(第1子か否か)をか けて三重クロス表として分析した。その結果、いずれも10%有意水準は少なくとも満たすという 結果が得られた。高校授業料と私立大学授業料は出生順位の影響を受けていないことがわかる。
42 矢野は、大学教育費の個人負担意識が家計所得などの社会階層と統計的に全く関係なく見られた と報告しているが、本稿の分析結果を見るに、国公私立大学を分けて質問しなかったため、回答 にばらつきが出てしまい、教育費負担意識と家計所得との関連性が見られなくなってしまったの ではないかと思われる。
43 囚人のジレンマの1類型である、シカ狩りゲームの利得表で説明される。前者は科学者が核開発 をしたくないが、敵国が開発を進めるなら自国も開発せざるを得ないという事例、後者は議員が 憲法修正案に反対したいのに、議案が可決されて自分が少数派になることを恐れ、きっぱりと反 対票を投じられない事例であり、個人の葛藤が集団の意思決定に影響を及ぼしうることを示して いる(ウィリアム・パウンドストーン著・松浦俊輔ら訳『囚人のジレンマ:フォン・ノイマンと ゲームの理論』青土社、1995年、277-297頁)。囚人のジレンマは個人間の相互作用を分析するモ デルと思われがちだが、特定集団の世論形成にも応用しうる。
44 利得を数値で直接的に表せないときは、利得の大きさで順番をつけて解く場合がある。渡辺隆裕
『ゼミナールゲーム理論入門』日本経済新聞出版社、2008年、31-33頁。
45 ウィリアム・パウンドストーン著・松浦俊輔ら訳、前掲書、136-171頁。