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近世巨石石割技術および 道具の復元的研究

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Academic year: 2021

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奈文研紀要 2017

はじめに  慶長期の全国的な築城ラッシュにより日本 の城郭石垣は、高石垣化と石垣石の規格化が進行した。

元和・寛永期には、徳川幕府によって再築された大坂城 の石垣構築技術は最高水準に達した。石垣石の規格化に は、石割技術の進展が不可欠である。特に大坂城では石 垣石が大型化しており、高度な巨石の石割技術があった と予想される。しかし、石材業が機械化された現代には、

近世初期の石割技術および道具は残っていない。そこで 本研究では近世初期の石割技術の矢穴技法に注目し、石 割するための矢穴および道具を復元する。そして、慶長 期の矢穴と元和・寛永期の矢穴形状において、石の割れ 方の違いがあるか比較実験を実施する。割れ方の違いを 考察することで、技術進展の本質をあきらかにできるだ ろう。なお矢穴技法とは、鉄製の楔である矢を矢穴に挿 入し、石の割目を押し開けて石を割る技法である。

矢穴の基礎調査  時代ごとの石割道具について形状比 較するために、佐賀城石垣の石切場である慶長期の川上 石丁場(鍋島家)と大坂城石垣の石切場である元和・寛永 期の小豆島岩谷石切場(黒田家)を採用した(図18)。理由は、

採石年代を特定できること、花崗岩系の硬質石材である こと、城郭石垣の石切場であること等である。それぞれ 矢穴の縦横断面形状を図面化し、矢穴形状にあう鉄矢を リバースエンジニアリングにて推定復元した(図16・17)。 道具の復元製作  推定復元した鉄矢形状にあう鋼材を 調達し、鍛造にて整形した(図19)。鍛造では、小豆島 の石工である藤田精と丸山豊一の協力を得た。事前に設 計した形状通りに加工する必要があり、慎重に作業を進 めたため、鉄矢ひとつに約2時間要した。慶長期の鉄矢 は、矢穴形状の分析から厚さ3.5㎝、幅8.3㎝の板状とし た。元和・寛永期の鉄矢は厚さ5.0㎝、幅5.0㎝の角柱状 とした。製作の結果、鉄矢の先端は、鋼材が引き伸ばさ れたことによる凹み形状となった(図20)。この鉄矢先端 の凹み形状は、近世の石切場跡である大阪府ミノバ石切 場跡から出土した鉄矢にもみられた。鉄矢の鍛造方法に 参考となる事例となろう。

ヤバトリおよび矢穴掘り  石割の比較実験のために、約 12tの花崗岩(長さ5.0m、幅1.5m、厚さ1.2m)を調達した。

花崗岩表面には風化層があったため、溝状に風化層を除 去するヤバトリを実施の上、矢穴列を設定した(図15・

21)。慶長期の矢穴を6個、元和・寛永期の矢穴を9個設 定した。慶長期の矢穴は、横断面がV字形状であり、矢 底が発達していない。一方、元和・寛永期の矢穴横断面 は、矢底が発達しコの字形状となっている。また、横断 面をV字形状にする場合、元和・寛永期の矢穴と同様の ノミでは矢底付近まで掘削できなかった。今回は細いノ ミを用いたが、加工道具にもさらなる検討が必要である。

石割の再現  鉄矢には、力のかかり具合を調べるため、

ペンキを塗布した上で矢穴に挿入した。玄能で鉄矢を打 ち込む矢締めを慶長期と元和・寛永期の矢穴列でそれぞ れ石割を実施した。割れるまでに玄能で鉄矢を叩いた回 数をカウントしたところ、慶長期は割れるまでに138回、

元和・寛永期は46回要した。そして、鉄矢と石材の摩擦 痕では、慶長期は面的に残り、元和・寛永期は線状に残っ た。面的に痕がある場合、鉄矢と石材がうまくかみあい にくく力が分散している可能性がある。摩擦痕は、元和・

寛永期のほうが、矢穴のより深い所にあった。以上のこ とから、慶長期に比べ元和・寛永期の鉄矢は、石材のよ り深い場所で、玄能で叩いた力が分散せず明確に石を押 し広げる力に変換されていると推定される。その結果、

元和・寛永期は、慶長期の3分の1の回数で割れたと想 定できる。

おわりに  なぜ徳川大坂城は、巨石をもって石垣を構 築できたのか。近世初期の石垣構築技術の発達にともな い、石割技術の発達もあったと予想され、具体的な技術 要素の一端について有用なデータを得ることができた。

今後はデータの精査を進めるとともに技術革新のターニ ングポイントを探りたい。

なお本研究は、公益財団法人福武財団2016年度瀬戸内 海文化研究助成「小豆島における近世石割技術および道 具の復元」(代表:高田祐一)にもとづき、共同研究者で ある藤田精と共に実施した。

(高田祐一・福家 恭/長岡京市教育委員会

近世巨石石割技術および 道具の復元的研究

図₁₅ 実験用石材と矢穴列

0 1m

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Ⅰ 研究報告 図₂₀ 復元した鉄矢の先端形状 図₁₈ 型取りをした小豆島岩谷石切場の元和・寛永期の矢穴

図₁₇ 小豆島岩谷石切場をモデルにした矢穴(元和・寛永期黒田家)

図₁₆ 川上石丁場跡をモデルにした矢穴(慶長期鍋島家)

図₁₉ 鉄矢の鍛造加工

図₂₁ 復元したヤバトリ(溝)と矢穴列 図₂₂ 玄能で鉄矢を叩く矢締め(石割工程)

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参照

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