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論文
スポーツ観戦関与と消費者知識について - 精通性に着目して -
井上尊寛 1), 松岡宏高 2)
1) 法政大学スポーツ健康学部
2) 早稲田大学スポーツ科学学術院
キーワード:スポーツ観戦関与、製品知識、観戦行動、精通性
【抄 録】
消費者は目的を達成するため、問題が生じたときに多くの情 報を収集し、それを処理 し行動を決断す るという情報処理をする必要があり、製品に関連した経験量などの精通性が関与の程度に影響を与える ことが示 されている。そこで本 研 究 では、(1)スポーツ観 戦 者 の知 識 (消 費 者 知 識 )と精 通 性 の関 係 に着 目 し、モデルとしての妥 当 性 や信 頼 性 を検 証 すること、(2)消 費 者 知 識 と精 通 性 およびスポーツ観 戦 関 与との関連性を検証し、一連のモデルとしての妥当性に関する証左を得ることの 2 つを目的とした。調査 は日本プロサッカーリーグに所属する 3 つのクラブのスタジアム観戦者に対して行い、1,217 票の回答が 得 られた。分 析 の結 果 から、消 費 者 知 識 と精 通 性 モデルの妥 当 性 およびスポーツ観 戦 関 与 との関 連 妥 当 性 が確 認 された。さらに、精 通 性 とスポーツ観 戦 関 与 との関 係 について、精 通 性 はスポーツ観 戦 関 与 に影響を与え、特に抽象化水準の高い要因に対して強い影響を与えることが示唆された。
スポーツ科 学 研 究 , 17, 75-91, 2020 年 , 受 付 日 :2020 年 2 月 10 日 , 受 理 日 :2020 年 8 月 12 日 連 絡 先 :井 上 尊 寛 法 政 大 学 スポーツ健 康 学 部 [email protected]
Ⅰ.緒言
スポーツファンは、特 定 のチームや選 手 に対 し て愛着を抱き、永続的に関係性を保とうとする。ス ポーツマーケティング研 究 では、チームとファンの 関 係 性 に つ い て 、 チ ー ム ロ イ ヤ ル テ ィ ( team loyalty)やチームアイデンティフィケーション(team identification)といった要因を用いて説明されるこ とが多 く、数 多 くの研 究 者 がこれらのテーマで知 見 を集 積 している(吉 田 ,2011)。一 方 、スポーツ マーケティング研 究 領 域 の親 学 問 の一 つである 消 費 者 行 動 研 究 においては関 与 (involvement)
概 念 が用 いられ、消 費 者 の製 品 やサービスに求 める価 値 や消 費 の目 的 を解 明 するための数 多 く の研究が発表されている。製品やサービスに対す る認 知 の段 階 から感 情 の段 階 を経 て行 動 に至 る という一連の消費者の意思決定プロセスにおいて、
動 機 という認 知 的 な段 階 に目 的 や価 値 が付 与 さ れ、動 機 づけられた状 態 が関 与 であり、その関 与
の 程 度 が 行 動 に 影 響 を 与 え る と 考 え ら れ て い る
(青 木 ほか,2012)。スポーツマーケティング研 究 においても関 与 という変 数 がファンや観 戦 者 の行 動 予 測 に役 立 つ可 能 性 は十 分 にあると考 えられ る(井上ほか,2018)
さ ら に 関 与 と と も に 重 要 な 概 念 が 知 識
(knowledge)である。消費者が購買に関する意思 決定を行うプロセスには外部からの情報を処理す る過 程 が含 まれるが、能 力 としての知 識 はその情 報 処 理 を規 定 する主 要 な要 因 と考 えられている
(池 尾 ほか,2010)。手 段 -目 的 連 鎖 モデルによ って説 明 されるように、製 品 やサービスは消 費 者 個 々の価 値 観 に基 づいた目 的 を果 たすための手 段 である。その手 段 に関 する消 費 者 の有 する知 識 、つまり製 品 知 識 (product knowledge)は消 費 者 が目 的 を果 たすために重 要 な役 割 を果 たす。
そ の 過 程 は 、 ( 1 ) 消 費 者 は 製 品 の 属 性
(attributes)を知 覚 し、(2)製 品 を使 用 することで
76 得られる直接的な結果(functional consequences)
を得る。さらに(3)個人として感じた主 観的な結 果
(psychosocial consequences)が(4)価値(value)
に反映されていく。この前半2つを製品知識として、
そ し て 後 半 2 つ を 自 己 知 識 ( self-knowledge : 消 費者自 身の製品に対する価値を反 映するもの)と してみなすことができる(Peter and Olson,2001)。
製 品 の属 性 や便 益 を示 す製 品 知 識 と自 己 知 識 の結 びつきの強 さが、消 費 者 の製 品 への関 与 の 高 さ に 影 響 す る と 考 え ら れ て い る ( 青 木 ほ か , 2012;Peter and Olson,1987)。
製 品 に関 する知 識 と関 与 の関 係 については、
次 のような議 論 も蓄 積 されてきている。消 費 者 は 抽 象 的 な目 的 を達 成 するため、多 くの具 体 的 な 情 報 を収 集 し、それを処 理 し意 思 決 定 をするとい う 情 報 処 理 を 行 う が 、 そ の 量 だ け で な く 精 通 性
( familiarity ) な ど の 質 的 な 側 面 を 有 す る 知 識 が 関 与 の程 度 に影 響 を与 え、さらに関 与 の高 い者 は、関 与 対 象に対 して、ユニークでかつ深 い知 識 、 つまり専 門 知 識 (expertise)を有 している(青 木 ほ か,2012)。また、製 品 に関 する知 識 は、態 度 対 象 に対 する消 費 者 個 々の価 値 との関 連 性 が深 く、
関 与 を喚 起 する源 泉 である考 えられている(西 原 , 2013)スポーツマーケティングを含 むスポーツマネ ジメント研 究 領 域 においても、この知 識 と関 与 の 関係を用いた消費者行動の理解は新たな知見を 得るための一助となると考えられる。
スポーツマネジメント研 究 においても関 与 はス ポーツ消 費 者 の行 動 を説 明 する重 要 な概 念 とし て位置づけられている。スポーツ消 費者の製品 選 択と情報処理について検討された研究では、スポ ーツイベント参 加 者 の意 思 決 定 プロセスについて 消 費 者 知 識 に焦 点 を当 て分 析 された研 究 が見 ら れるが、主 にレジャー領 域 において研 究 が進 めら れている(弓 田 ,2016)。さらに、スポーツ消 費 者 の知 識 構 造 について、観 戦 動 機 やブランドエクイ ティの文 脈 では、過 去 の消 費 経 験 に基 づく製 品 属 性 に関 する情 報 から要 因 を設 定 し、その重 要 性 についても言 及 されているものの、具 体 的 にス ポー ツ消 費 者 が過 去 の 消 費 経 験 お よび製 品 評 価の仕方に関連する情報を含めた知識として、そ
の要 素 を抽 出 し細 分 化 した研 究 はみられない。こ れらの問 題 から、よりスポーツファンの消 費 行 動 を 解 明 するためには、スポーツ消 費 者 の意 思 決 定 における情 報処理 プロセスの中で、関与と知識 が 与 えている影 響 や、それらの関 係 性 について検 討 することは学 術 的 にも新 規 性 があり、さらに知 識 を構 成 する要 因 の特 定 については、チームの ファンデベロップメントやロイヤルティの向 上 など に寄与するものであると考える。
次 に、スポーツマネジメント領 域における関与研 究 に焦 点 を当 てていく。スポーツ関 与 における先 行 研 究 は特 にレジャー研 究 の領 域 において多 く 用 いられ研 究 が進 められてきた。しかしながら、ス タジアムでのスポーツ観 戦 者 を対 象 とした、観 戦 者の関与に関しての検討は十分ではない。これま での研 究 に よって、スポ ーツ消 費 者 の関 与 は多 次 元 で あ る こ と が 支 持 さ れ て い る が ( 坂 口 ほ か , 2001 ) 、井 上 ら( 2018)によって、新 たにスポーツ 観 戦 者 の観 戦 関 与 の構 成 概 念 や、要 因 間 の階 層 性 な ど が 示 さ れ 、 娯 楽 性 ( pleasure ) 、 中 心 性
(centrality)、連 帯 性 (social bonding)の要 因 で 構 成 されている快 楽 的 要 因 と、価 値 階 層 としての 抽象 化 水準 が高 く、快 楽 的要 因 の上 位の階 層で あ る 記 号 性 ( sign ) 、 場 所 へ の 帰 属 性 ( sense of home)によって構 成 される自 己 表 出 的 要 因 の 2 つの階 層 によって構 成 されたモデルの妥 当 性 が 確 認 され、階 層 間 の関 連 性 も併 せて検 証 されて いる。しかしながら、この研 究 によってスポーツ観 戦 関 与 の新 たな枠 組 みは提 案 されたものの、関 与 の源 泉 となる知 識 や精 通 性 と関 与 の関 係 性 は 検 証 されて おらず、関 与 の程 度 に 影 響 を与 え る 具 体 的 な要 因 が特 定 されていないという課 題 が 残されている。
よって、本研究は以下の 2 つを目的とする。(1)
スポーツ観 戦者の知識 (消費者知識)と精通性 の 関 係 に着 目 し、モデルとしての妥 当 性 や信 頼 性 を検 証 すること。(2)消 費 者 知 識 と精 通 性 および スポーツ観 戦 関 与 の関 連 性 を検 証 し、一 連 のモ デルとしての妥 当 性 に関 する証 左 を得 ること。こ れらのことから、スポーツ観 戦 者 に対 する消 費 者 知 識 と関 与 の関 係 性 を明 らかにし、スポーツ消 費
77 者 行 動 研 究 における新 たな知 見 を得 ること、およ びチームマネジメントに資 する情報の収 集 及 び分 析を試みる。
Ⅱ.先行研究
1. 関与概念について
関 与 概 念 に 関 す る 研 究 は 、 Krugman(1965 ; 1966)が「自 我関 与」の概念 を発 表 したことに起 因 し、以 降 多 くの研 究 者 によって知 見 が集 積 されて きた。これまでの研 究 では、関 与 とは動 機 付 けら れた状態、覚醒あるいは製品やサービスに対する 関心の程度(Rothschild, 1984)と定義されている。
青 木 (1990)は、関与 を「対 象 や状 況(ないし課 題)
といった諸 要 因 に よって活 性 化 さ れた個 人 内 の 目 標 志 向 的 な状 態 であり、個 人 の価 値 体 系 の支 配 を受 け、当 該 対 象 や状 況 (ないし課 題 )に関 わ る情報 処理 や意思 決 定 の水 準およびその内 容 を 規 定 する状 態 変 数 (p.131)」と定 義している。これ ら関 与 概 念 は情 報 処 理 、意 思 決 定 プロセス、広 告 効 果 、ブランド選 択 、ブランドロイヤルティ、態 度 、顧 客 満 足 、そして購 買 意 図 や購 買 行 動 など 幅 広 い変 数 との関 係 性 をもってその有 用 性 が示 されている(Homburg and Giering, 2001;西 原 , 2013;Seiders et al., 2005)。特に消費行動を説 明 するうえでの情 報 処 理 という観 点 からは、消 費 者 の意 思 決 定 に投 じるエネルギーや情 報 処 理 の 程 度 を規 定 する変 数 として関 与 の水 準 に対 する 重要性は高 い。青木(2019)によると、態度対象と の結 びつきが強 い場 合 、関 与 水 準 が高 くなり、購 買 決 定 に費 やす労 力 や情 報 収 集 の程 度 が高 く なると述べられている。
これまで、関 与 は様 々な立 場 でその特 性 、性 質 、態 度 対 象 との関 係 によって、名 称 と意 味 づけ がされてきた(西原 ,2013)。消費 者行 動研究 の領 域 では、関 与 概 念 の整 理 や類 型 化 が行 われ、関 与 の特 性 や状 態 による枠 組 みが提 示 されている (西原,2013;青木ほか,2012)。これらの枠組みを 用 い、青 木 ら(2012)は関 与 の状 態 を特 定 性 、持 続 性 、程 度 (水 準 )などの側 面 でとらえている。本 研 究 では、スポーツ観 戦 者 の観 戦 に対 する関 与 をこれらの枠 組 みに従 い特 徴 を捉 えていくことと
する。まず特 定 性 について、関 与 は特 定 の対 象 や状 況 (課 題 )に対 して、動 機 づけられた状 態 と捉 えることが可 能であり、前 者は「対象 特定 的関 与 」 と後 者 は「状 況 (課 題 )特 定 的 関 与 」の2つに区 分 することが可能である(青木,1989)。スポーツ観戦 の局 面 においてはまず、何 らかの課 題 達 成 を契 機 として喚 起 される「状 況 特 定 的 」ではなく、特 定 の対 象 (チーム、選 手 、スタジアム等 )に対 して示 す関 与 であり、その関 与 の特 性 は「対 象 特 定 的 」 である。また、対 象 特 定 的 関 与 においては、態 度 対 象 との持 続 性 は「 永 続 的 」 である ことや、関 与 対 象 と個 人 の目 的 ・価 値 との関 連 が深 く、自 身 の 中 核 的 な価 値 と結 びつくことによって関 与 の程 度
(水 準 )が高 まることも明 らかにされている(青 木 , 1990;西原,2013;堀田,2013)。ゆえに、スポーツ 観 戦 者 の関 与 は、対 象 特 定 的 であり、かつ態 度 対 象 との関 係 性 は永 続 的 であるという製 品 関 与 の特 徴 を示 していることから、スポー ツ観 戦 への 関 与 は製 品 関 与 (product involvement)として捉 えることが可 能 である。製 品 関 与 は、製 品 を消 費 することによって達 成 される目 標 が態 度 対 象 と消 費 者 自 身 の価 値 体 系 の中 で中 心 的 かつ重 要 な 価 値 の実 現 に結 びついている場 合 、その目 標 達 成 に対 して動 機 付 けられた心 理 状 態 を指 し、さら にその製 品 が消 費 者 の価 値 実 現 に関 わっている 程度が高いほど関与水準が高まるという性格を有 している。これらの価 値 は高 い階 層 ほど抽 象 度 が 高 くなり、自 己 との関 連 性 が高 くなることが示 され ている(池尾ほか,2010;青木 2019)。
2. スポーツ観戦関与概念について
スポーツマネジメント研 究 において、スポーツ参 加 やスポーツイベントあるいはチームに対 する関 与 と し て 多 く の 研 究 に て ス ポ ー ツ 関 与 ( sport involvement)が用いられてきた。
Kunkel et al.(2013)によると、スポーツ関 与 は、
個 々の人 生 においてスポーツに関 する態 度 対 象 が提 供 する快 楽 的 あるいは象 徴 的 な価 値 に紐 づ いた関 係 性 の程 度 とされ、関 与 対 象 と価 値 を基 盤 としたつながりであると考 えられている。さらにス ポーツの認 知 的 な基 盤 となる動 機 との関 係 の検
78 証 や 、 心 理 的 連 続 モ デ ル ( psychological continuum model: PCM)の枠組みを用い、スポー ツ関与の水準を説明する研究など、多くの研究に て 関 与 概 念 は 用 い ら れ て き た 。 一 方 で 井 上 ら
(2018)が指 摘 したように、スポーツ関 与 に関 する 先 行 研 究 は、スタジアムでの直 接 観 戦 だけでなく テレビ視 聴 もスポーツ観 戦 者 に含 み、関 与 水 準 の異 なる層 を同 時 に分 析 対 象 としていることや、
スポーツ消 費 者 の情 報 処 理 に係 るもう一 つの規 定 要 因 である消 費 者 知 識 について、その構 成 要 因 や関 与 水 準 との関 係 についての検 討 がなされ ていないことなどの課題が残されている。
これまでのスポーツ観戦に対する関与に着目し た研 究 では、テレビ観 戦 者 をも対 象 としているが (Funk et al., 2004)、チームへの献身的な支援や、
個 人 的 な時間 ・金銭 的な支 出を伴い、スポーツを 消 費 ・経 験 するスポーツ消 費 者 とテレビ観 戦 者 で は、明らかにスポーツチームに対する関 与 水準や 情 報 収 集 に関 する特 性 や特 徴 も異 なることが想 定される。Jun et al.(2012)では、スポーツ参加へ の関 与 の中 に連 帯 性 を含 めていることからも、関 与 対 象 に対 して、イベント時 に他 者 との交 流 から 得 られる便 益 が存 在 することが明 らかにされてい る。多 くのスポーツ観 戦 動 機 に関 する研 究 でも、
スタジ アム に おける 家 族 や仲 間 と の 交 流 が動 機 因 子 に含 まれていることから、スタジアム内 での他 者 との交 流 に価 値 を見 出 していることが想 定 され る。このほかにも、スタジアムは観 戦 者 やファンに とって特 別 な場 所 であり、愛 着 を抱 き、誇 りを感 じ る対 象 であることが明 らかにされており(吉 田 ほか,
2017)、場所への帰属性(sense of home)として特 別な価 値をスタジアムに見出 すようになることが報 告されている(Lee et al., 2012)。これらのことから、
観 戦 者 はスタジアムに 対 して心 理 的 な結 びつ き や愛 着 を抱 き、帰 属 意 識 を持 つことが示 されてい ることから、スタジアムへの帰 属 性 は観 戦 者 特 有 の要 因 として位 置 づけられると考 えられる。これら のことを踏 まえ、井 上 ら(2018)では、これまでのス ポーツ関 与 をスタジアム観 戦 の文 脈 に拡 張 し、連 帯性および場所への帰属性の 2 つの要因を含む スポーツ観 戦 関 与 モデルを示 し、その妥 当 性 や
要因間の階層性について言及している。
3. 関与概念の先行要因について
Park and Mittal(1985)によると、関与の特性に ついて、①消 費 者 価 値 および動 機 をその基 盤 と した状 態 であること、②製 品 の消 費 を契 機 として 活 性 化 さ れ た目 標 志 向 状 態 で ある こと 、③ 情 報 処理の水準や内容を規定する要因であることの 3 つを挙 げている。すなわち、関 与 は動 機 に対 して 価 値 や目 標 が付 与 された状 態 であり、その源 泉 は動機であることや、消費者の価値体系との関連 性 が深 く、情 報 処 理 の活 性 化 水 準 や内 容 を規 定 する変 数 であるといえる(池 尾 ほか,2010;青 木ほ か,2012)。スポーツマネジメント研究において、ス ポーツ関 与 を構 成 する因 子 と動 機 因 子 との関 係 につい て 検 証 した 研 究 も見 ら れる( Funk et al., 2004)一 方 で、スポーツプロダクトへの情 報 処 理 に着 目 した研 究 は、前 述 したスポーツイベント参 加 者 の意 思 決 定 について検 討 した研 究 や、スポ ーツチームへのスポンサーシップというテーマでは 数多くの研 究が発表されているが、関与 水準 と情 報 処 理 に着 目 した研 究 はみられない。これらのこ とも、スポーツ関 与 の水準 を規 定する要 因 の特定 や、知識との関連性の検 証という点において課題 が残されている。
4. 関与と知識の関係について
消費 者知 識 に関 する研 究において、情報 処理 を規 定 する要 因 として、過 去 の購 買 ・消 費 経 験 を 通 して蓄 積 された知 識 が主 に用 いられてきた(池 尾 ほ か , 2010 ) 。 消 費 者 知 識 は Alba and Hutchinson(1987)によると、製品に関連した経験 量である製品精通性(product familiarity)および 製 品 評 価 の 仕 方 に 関 す る 情 報 に 関 連 し た 知 識 概 念 である専 門 性 (expertise)という要 因 に区 分 されている。また製 品 に対 する正 確 な情 報 である 客 観 的 知 識 と製 品 に対 して消 費 者 自 身 がどの程 度 知 っているかを示 す主 観 的 知 識 に区 分 するこ と も 可 能 で あ る ( Park et al., 1994 ; Moorman, 2004)。さらに青木(1993)によると、製品知識と精 通 性 は同 義 に用 いられることが多 く、多 くの研 究
79 では、「記 憶 内に貯 蔵された情報」あるいは「符号 化 ないしは体 制 化 された情 報 」という定 義 にて用 いられていると指 摘 している。これらのことから、製 品 知 識 および主 観 的 知 識 は精 通 性 として、専 門 性 は客 観 的 知 識 に対 応 する概 念 であると考 えら れる(弓田,2016)。
一方で、関与概念の枠組みでスポーツプロダク トへの関 与 の解 釈 を試 みると、製 品 関 与 として捉 えるとこが可 能 であるが、この製 品 関 与 は製 品 知 識と自己知識という 2 つの要因の関連を前提とし ている(Peter and Olson, 1987)。過去 の消 費 や 経 験 によって得 られた製 品 知 識 が消 費 者 の個 人 的 な価 値 と結 びつけられることによってその関 与 水 準 が高 まる。すなわち、手 段 ―目 的 連 鎖 モデ ルによって説 明 可 能 なように、スポーツプロダクト の機 能 や属 性 (製 品 知 識 )を、スポーツ観 戦 に関 わる個 人 的 な目 的 や価 値 実 現 のための手 段 とし てとらえることができる(堀田,2017)。しかしながら、
製 品 知 識 と自 己 知 識 との結 びつきによって関 与 が高 まることは多 くの研 究 にて言 及 されている一 方 で、これらを体 系 的 に整 理 できるような知 識 概 念の枠組みが提示されていないことや、特に自 己 知 識 においては、その重要 性 は認 識されながらも 関 与 との関 連 性 を示 した実 証 的 な研 究 が不 足 し ていることも指 摘 されている(青 木 ,1993;堀 田 , 2017)。
Peter and Olson (2001)によると、関 与 水 準 を 規定する要 因として内因 的自己 関連 性(intrinsic self-relevance)と状 況 的 自 己 関 連 性 (situational self-relevance ) が 示 さ れ て い る 。 特 に 内 因 的 自 己 関 連 性 は、製 品 が自 己 とどの程 度 関 連 性 を持 つかという知 識 によって規 定 されることが示 されて おり、内 因 的 自 己 関 連 性 の源 泉 として専 門 知 識 力 を挙 げている。専 門 的 知 識 力 とは①認 知 努 力 、
②認 知 構 造 、③分 析 能 力 、④精 通 性 能 力 、⑤記 憶 能 力 の 5 つ の 次 元 に よ っ て 構 成 さ れ て い る
(Alba and Hutchinson, 1987)。また、専門知識力 は消 費 者 の 経 験 量 お よ び情 報 取 集 に対 する 努 力の結果としての精通性との関係が認められてい る(池 尾 ほか,2010)。これらのことから、過 去 の消 費 経 験 によって得 られた知 識 の量 や精 通 性 の高
さが関 与 水 準 を規 定 するとともに、認 知 的 あるい は行 動的 な反 応 に影 響を与 えると解釈 することが できる(青木ほか,2012)。
ブランド研 究 における知 識 は、ブランド価 値 を 高 めるための源 泉 となることが示 されており、消 費 者 の 知 識 構 造 の 検 討 が 行 わ れ て い る ( ケ ラ ー 、 2010;青 木 ほか、2004)。一 方 で、スポーツマネジ メント研 究 においては、知 識 の量 や質 を評 価 、測 定するような研究はみられないが、スポーツチーム のブランドに焦 点 を当 てた研 究 では、チームに対 する知 識 構 造 を特 定 しようとする試 みが数 多 く発 表 され、それぞれの要 素 に対 するイメージや態 度 によって、ブランド価値との関 係が検 証されている
(和田・松岡,2017;Bauer et al., 2005;Gladden and Funk,2002)。さらに、スポーツチームが提 供 する製 品 への満 足 という観 点 では、消 費 者 の製 品に対する認知をベースとした製 品 品質(service quality)を構 成 する要 因 を特 定 し、満 足 や行 動 と の関 係 が検 討 されている。また、近 年 パフォーマ ンスに関連するデータ(スタッツデータ)がリーグや チームあるいはそれらの情 報 を取 り扱 う企 業 によ って提供され、中核的な製品である試合について、
消費者は定 量的に品質 を判断する一つの基準 と なる情 報 に容 易 にアクセス可 能 となり、さらにはチ ームを知 るための重 要 な情 報 源 としても活 用 され ている。
これらのことから、関与水準を規定する要因とし て知 識 が位 置 づいており、その知 識 が自 己 と関 連 する程 度 が関 与 水 準 を規 定 すること、さらに、
消費者知識の中でも特に精通性は行動との関係 が強 く示 されていることが示 唆 される。また、スポ ーツプロダクトの商 品 特 性 として、無 形 の製 品 を 中 核 的 な製 品 としながら、有 形 の製 品 も扱 い、結 果の不確定 性や常に同 質の製品を提供できない などといった特 性 があるため、消 費 者 自 身 がこれ らの製 品 特 性 や幅 広 い製 品 情 報 を含 む製 品 に ついてよく知 っていることを示 す精 通 性 が重 要 な 役割を果たすと考えられる(弓田,2016)。
よって本 研 究 では、製 品 知 識 と自 己 知 識 の関 係 性 から関 与 水 準 を捉 えず、観 戦 者 における知 識 を直 接 的な観 戦 経 験 から得 た情報 および間 接
80 的 に得 た情 報 から集 積 された知 覚 された製 品 の 属 性 としての量 的 な側 面 を消 費 者 知 識 とし、さら に、消 費 者 の情 報 収 集 へ費 やした労 力 と獲 得 さ れた情 報 量 を示 す精 通 性 をスポーツ観 戦 者 の関 与 水 準 を規 定 する要 因 として論 を進 めていくもの とする。
5.理論的枠組み
本 研 究 では、まずサッカー観 戦 者 における消 費 者 知 識 と精 通 性 の関 係 性 についての検 討 をおこ なう。先 行 研 究 においては精 通 性 および専 門 性 のなかでも、精 通 性 は購 買 行 動 に強 い影 響 を与 えることが示 されていることから、精 通 性 との関 連 性 が示 されている知 覚 された製 品 の属 性 を示 す 消 費 者 知 識 を構 成 する要 因 について検 討 すると ともに、スポーツ観 戦 関 与 との関 係 性 を検 証 する ことを目 的 とする。消 費 者 知 識 と関 与 の関 係 性 に ついては、関 与 水 準 の規 定 要 因 をその理 論 的 な 基盤とした(Peter and Olson,2001;堀田,2017)。
まず、消費者知識については、スポーツ消費者の チームに対する印 象やイメージである、ブランド関 連 の先 行 研 究 (和 田 ・松 岡 ,2017;Bauer et al., 2005;Gladden and Funk,2002)から要因を抽出 し、さらにサッカー観戦特有の要因 を追加した。さ らに、精 通 性 に関 しては、製 品 に対 しての情 報 の 量 や 精 通 し て い る 程 度 を 測 定 し た Moorman (2004)の尺 度 から援 用 した。次 に、精 通 性 がスポ ーツ観 戦 者 のスポーツ観 戦 関 与 とどのような関 係 にあるのか、要 因 間 の関 連 妥 当 性 についても検 証を行った。以下ではこれらの枠組において設定 した、仮設の導出根拠について説明する。
6.消費者知識の構成概念について
スポーツ消費者の知識は、スタジアムやテレビな どでの観 戦を通 して蓄 積 されるものや、SNS や他 人 からの情 報 によって蓄 積 されるものなど数 多 く 存 在 し、その内 容 を抽 出 し整 理 することは極 めて 困 難 である。しかしながら、スポーツチームに対 す るブランドイメージやチームが生 産 する製 品 の品 質と満足の関係を検討する研究では、スポーツチ ームに対 して消 費 者 が感 じるイメージや、チーム
のブランドを構 成 する要 素 などは、消 費 者 やファ ンの認 知 構 造 をベースとして検 討 されている。本 研 究 においては、消 費 者 知 識 を構 成 する要 因 を ブランド、サービスクオリティの研 究 を参 考 に、ま ず 3 つのカテゴリーを設定した。一つは選手、監 督 などのコアプロダクトに直 接 関 わる「チームに関 する知 識 」である。二 つ目 は、コアプロダクトの周 辺 に存 在 し、製 品 自 体 には直 結 しないが、生 産 側 が直 接 的 に管 理 可 能 な「観 戦 サービスに関 す る知識」である。そして 3 つ目は、「チームのブラン ドに関 する知 識 」として、クラブのロゴやカラーなど の要 因 である。さらに本 研 究 では、近 年 の試 合 中 の情 報 提 供 に関 する技 術 の発 達 などに対 応 した 要 因 がないこと、さらに中 核 製 品 である試 合 その ものを評価するための要因が存在しないことから、
スポーツマネジメントを専門とする研究者 2 名にて 検 討 し、戦 術 的 な情 報 、ルール、過 去 の成 績 や 勝率 などのコアプロダクトを評価 することに関 連す る要因として「サッカーに関する知識」を 4 つ目の 要 因 として設 定 した。これらは観 戦 者 の有 してい る情 報 の量 が多 くなり、専 門 化 されていくことによ り、精 通 性 と正 の関 係 になると想 定 される。また、
製品関与の枠組みでは、知識の量が関与水準を 高 めることや、製 品 が消 費 者 の価 値 実 現 に関 わ っている程 度 が高 いほど関 与 水 準 が高 まることが 示 されていること。さらに、精 通 性は製品 に対 する 情 報 の量 や、情 報 収 集 に費 やした努 力 によって 自 らが製 品 に対 して精 通 している自 信 の程 度 や 状 態 を示 す概 念 であることから、スタジアム関 与 概 念 の抽 象 化 水 準 の低 い階 層 である快 楽 的 要 因 よりも抽 象 化 水 準 の高 い階 層 に位 置 する自 己 表出的要因に強い影響を与えることが想定される。
以上を根拠とし、以下の仮説を導出した。
H1: 消 費 者 知 識 を構 成 する要 因 は精 通 性 に 正の影響を与える。
H2、H3: 精通性は快楽的要因の段階および、自 己 表 出 的 要 因 の 段 階 に 影 響 を 与 え 、 特 に 抽 象 化 水 準 の高 い自 己 表 出 的 要 因 に強 い影 響 を与 える。
なお、図 1 は上記の理論的枠組みと 3 つの仮説 を図示したものである。
81
図 1. 理 論 的 枠 組 みと仮 説 モデル
Ⅲ.研究の方法 1. 尺度開発の手順
本 研 究 では まず、サッ カー観 戦 者 に おける消 費者知識を構成する概念として 4 つの要因(チー ムに関 する知 識 、観 戦 サービスに関 する知 識 、チ ームのブランドに関 する知 識 、サッカーに関 する 知 識 )を設 定 し尺 度 開 発 を行 った。これまでのス ポーツマネジメント研究では、観戦者やファンがチ ームに対 して抱 いているイメージや、満 足 に直 結 する要 因 との関 係 について多 くの研 究 が発 表 さ れてきたが、特にブランドイメージやサービスクオリ ティの文 脈 において、スポーツチームが提 供 する 多 くの製 品 がその属 性 によって区 分 され、チーム への愛着や満足との関係についても明らかにされ てきた。本 研 究 では、観 戦 者 やファンの認 知 をベ ースとして抽 出 されたスポーツチームに関 する消 費 者 知 識 に関 連 する要 因 と精 通 性 を測 定 するた めの尺度を開発した。
具体的には、観戦者やファンがチームに対して 抱いている印象として、チームのブランドを構成す るいくつかの要素が抽出されている。Bauer et al.
(2008)では、製 品 関 連 のブランド属性 として成功 、 スター選 手 、監督 、チーム、チームパフォーマンス を挙 げられている。非 製 品 関 連 のブランド属 性 と して、運 営 、ロゴやカラー、スタジアム、歴 史 や伝 統、文化 、ファン、スポンサーあるいはオーナー等
が 挙 げ ら れ て い る 。 ま た 、 Yoshida and James
(2010)では、観戦者やファンが消費する要素をコ アプロダクト関 連 の要 因 とサービス関 連 の要 因 に 区 分 し、それぞれが顧 客 満 足 に直 接 的 に影 響 を 与 えていることを明 らかにしている。これらの研 究 を基 に、スポーツマネジメントを専 門 とする研 究 者 2 名により、製品関連の要因として、チームの戦術 やルール、勝 率 などのサッカーに関 する知 識 、チ ームに関する知識として選手、監督 など中核 的 な 製 品 に関 連 する要 因 と、直 接 的 には関 連 しない が、グッズや地域活動 、ファンクラブなどの付随 部 分 としての観戦 サービスに関 する知識 に区 分 した。
また、非 製 品 関 連 の要 因 として、チームのロゴや カラー、歴 史 、スタジアムなどをチームブランドに 関 する知 識 として設 定 した。また、精 通 性 を測 定 するために、製 品 の主 観 的 知 識 (精 通 性 と同 義 ) を 測 定 するた め に開 発 さ れ た 尺 度 か ら 援 用 した
(Moorman, 2004)。消 費 者 知 識 の項 目 について は、それぞれの要 素 に関 する知 識 の程 度 を「7:と ても多い」から「1:とても少ない」の 7 段階評価尺 度 を用 いて測 定 した。精 通 性 については、「7:お おいにあてはまる」から「1:まったくあてはまない」
の 7 段階評定尺度を用いて測定した。スポーツ観 戦 関 与 尺 度 については、井 上 ら(2018)の項 目 を 援用した。
消 費 者 知 識 および精 通 性 の関 係 性 の検 証 に
82 おいては、確 認 的 因 子 分 析 を用 いて検 証 を行 っ た。さらに、消 費 者 知 識 および精 通 性 とスポーツ 観戦関与の関係性については、構造方程式モデ リングを用 いた。本 研 究 における記 述 統 計 量 、信 頼 性 の 分 析 お よ び 相 関 係 数 に つ い て は IBM SPSS Statistics Version 25 を用い、確認的因子 分 析 、 構 造 方 程 式 モ デ リ ン グ に は IBM SPSS Amos Version 25 を用いた。
2. 質問項目の翻訳
本研究で用いた精通性の項目は英語の文献が 元となっている。尺度の内容的妥当性を担保する ため、スポーツマーケティングを専 門 とするバイリ ンガルの研究者 2 名による翻訳を実施した。まず 1 名が項目を日本語に翻訳し、その後もう一名の 研 究 者 が翻 訳 された項 目 と原 文 の内 容 に齟 齬 が ないことを確 認 した。さらに、別 の研 究 者 を加 え、
日本 語 の表 現について観戦 者 の実 際に即 してい るか確 認 し、原 文 の定 義 を踏 まえたうえで微 修 正 を加え項目を設定した。
3. データの収集
本 研 究 では、スタジアム観 戦 者 の消 費 者 知 識 および精 通 性 の構 造 とスポーツ観 戦 関 与 との関 係を検証 するために、日 本 プロサッカーリーグ(以 下 J リーグと略す)のそれぞれのカテゴリー(J1 リー グ・J2 リーグ・J3リーグ)に所属する 3 つのクラブの スタジアム観 戦 者 に対 して調 査 を実 施 した。調 査 は 2018 年 6 月から 8 月にかけて行われた。標本 1(J1 リーグ、2018 年 8 月実施)では、450 票を配 布し、447 票を回収した。回収率は 99.3%であっ た。標本 2(J2リーグ、2018 年8月実施)では、397 票 を 配 布 し 、 397 票 を 回 収 し た 。 回 収 率 は 100.0%であった。標本3(J3 リーグ、2018 年 6 月 実施)では、377 票を配布し、373 票を回収した。
回 収 率 は 98.9%であった。調 査 員 はスポーツマ ネジメントを専 門 とする大 学 生 および大 学 院 生 で あり、標本1では 19 名、標本 2 では 15 名、標本 3 では 18 名 の調 査 員 によってデータの収 集 を 行った。調 査員は全員 が調査 の手 法だけでなく、
回答者に対する説明事項や留意事項などについ
ても十 分 な事 前 指 導 を受 けた。調 査 員 は回 答 者 に調 査 の目 的 を伝 え 、 匿 名 性 の確 保 、さら に回 答 者 はボランティアで協 力 してもらうことを伝 えデ ータを収 集 した。データ収 集 は試 合 前 に、アクセ ス可 能 な母 集 団 の中 でも代 表 性 を高 めるため、
層 化 抽 出 に より 各 調 査 員 が担 当 し たエリアに来 場した観戦者の男女比および年齢構成比を観測 し、標本を抽出した。
4. 分析の手続き
本 研 究 における分 析 について、消 費 者 知 識 お よび精通性モデルの信頼性および妥当性の検証 を行い、次に、消費者 知 識および精 通性とスポー ツ観 戦 関 与 の関 係 性 の検 証 を行 った。記 述 統 計 量、信頼性係数の算出には IBM SPSS Statistics Version 25 を用 いた。尺 度 の妥 当 性 を検 証 する ための確 認 的 因 子 分 析 および精 通 性 とスポーツ 観戦関与の関係性の分析には IBM SPSS Amos Version 25 を用いて構造方程式モデリングを行っ た。
本 研 究 では、消 費 者 知 識 を構 成 する要 因 とし て 4 要因(13 項目)、精通性(3 項目)、スポーツ 観戦関与の 5 要因(16 項目)を用いた。記述統 計 量 および信 頼 性 係 数 の算 出 などの分 析 にはホ ームチーム応 援 者 、それぞれ 370 名 (標 本 1)、
345 名(標本2)、272 名(標本 3)の計 987 名を用 いた。さらに、確 認 的 因 子 分 析 および構 造 方 程 式 モデリングには、消 費 者 知 識 、精 通 性 およびス ポーツ観 戦 関 与 の項 目 に欠 損 のない者 、および 解 答 の傾 向 に著 しく偏 りのない者 を抽 出 し、それ ぞれ 314 名(標本 1)、265 名(標本 2)、177 名
(標本 3)の計 756 名を分析の対象とした。
Ⅳ.結果
1. 対象者の個人的特性および観戦行動 個 人 的 特 性 および応 援 年 数 については、標 本 1で男性 59.7%、女性 40.3%であった。標本 2 で は、男性 66.3%、女性 33.7%であった。標本 3 で は、男性 62.7%、女性 37.3%であった。J リーグ 観戦者の平均の性別構成比は、男性 61.9%、女 性 38.1%であることから、総じて平均程度であると
83 考えられる(J リーグスタジアム観戦者調査,2017)。
平均年齢については、リーグ平均 41.7 歳となって おり、下 位 リーグになると平 均 年 齢 が多 少 上 がる
傾 向 があることから、平 均 年 齢 においても総 じて 平均程度であると考えられる(表 1)。
表 1. 各 標 本 の性 別 構 成 、年 齢 および応 援 歴
2. 観戦者における消費者知識および精通性との 関係に関する確認的因子分析
サッカー観 戦 者 における消 費 者 知 識 および精 通性モデルの妥当性を検証するため確認的因子 分析をおこなった。まず収束的妥当性を検証する ため、因 子 負 荷 量 (λ)、信 頼 性 係 数 (α)、平 均 分散抽出(average variance extract: AVE)を算 出 したところ、すべての要 因 において基 準 値 を上 回った(λ≧ .70, Hair et al., 2006;α ≧ .70, Nunnally, 1978;AVE ≧ .50, Fornell and Larcker, 1981)。これらのことから、収 束 的 妥 当 性 が確 認 さ れた。次 に、弁 別 的 妥 当 性 について、各 要 因 の AVE と因子間相関の二乗を比較したところ、すべ ての要因間で AVE のスコアが高かったことから、
弁 別 的 妥 当 性 が確 認 された。モデルの適 合 度 に 関して、χ²を自由度で除した値(χ²/df= 3.98)が 基 準 値 ( ≦ 3.00 ) を わ ず か に 上 回 っ た も の の 、
root mean square error of approximation
( RMSEA ≦ .08, Hu and Bentler, 1999 ) 、 comparative fit index ( CFI ≧ .90, Hu and Bertler, 1999 ) 、 bentler - bonett normed fit index(NFI≧ .90, Hair et al., 2006)などの指標 を満たしていることから、尺度モデルのデータへの 適合が確認 された(表2)。また、各 要 因間の相関 は、サッカーに関 する知 識 とチームに関 する知 識 間 にやや高 い相 関 (r= .720)が認 められたが、そ の 他 の 要 因 間 で は 中 程 度 の 正 の 相 関 ( r= .413 - .602)認 められた(表 3)。消 費 者 知 識 を構 成 す る 4 つの要因それぞれのスコアは、チームに関す る知識が 5.07 と最も高く、サッカーに関する知識 および観 戦 サービスに関 する知 識 のスコアも同程 度 で、5.06 であった。チームブランドに関 する知 識は 4.42 であった(表3)。
84
表 2. 消 費 者 知 識 および精 通 性 における確 認 的 因 子 分 析
† 分 析 には SPSS Amos 25 を用 いた。
表 3. 各 要 因 の因 子 間 相 関 および平 均 値 、標 準 偏 差
† 各 項 目 は保 有 している知 識 の程 度 を問 う内 容 であり、1:「とても少 ない」から 7:「 とても多 い」の 7 段 階 評 価 尺 度 で測 定 。
†† 各 要 因 の平 均 値 および標 準 偏 差 は、SPSS25 によって算 出 した。
††† 各 要 因 の平 均 値 および標 準 偏 差 の計 算 には、SPSS25 によって観 測 変 数 の合 成 変 数 を用 いた。
†††† 各 要 因 の項 目 間 相 関 の算 出 には Amos25 を用 いた。
††††† *p< .05, **p< .01
85 3. 観 戦 者 におけるスポーツ観 戦 関 与 に関 する確
認的因子分析
観 戦 者 におけるスポーツ観 戦 関 与 モデルの妥 当 性 を検 証 するために確 認 的 因 子 分 析 をおこな った。 まず 収 束 的 妥 当 性 を検 証 す るため、 因 子 負 荷 量 (λ)、信 頼 性 係 数 (α)、平 均 分 散 抽 出
(average variance extract: AVE)を算出したとこ ろ、連 帯 性 以 外 のすべての要 因 において基 準 値 を 上 回 っ た ( λ ≧ .70, Hair et al., 2006 ; α
≧ .70, Nunnally, 1978;AVE ≧ .50, Fornell and Larcker, 1981)。連帯性に関しては、4 つの項目 のうち 2 つの項目で因子負荷量がわずかに基準 値 を満 たさなかったが、信 頼 性 係 数 および平 均 分 散 抽 出 においては基 準 値 を上 回 ったことから、
総 合 的 に 判 断 し 妥 当 性 が担 保 さ れ たと考 える。
次に、弁別的妥当性について、各要因の AVE と 因子間相関 の二乗を比 較したところ、すべての要 因間で AVE のスコアが高かったことから、その妥 当性が確認 された。モデルの適合度 に関して、χ
² を 自 由 度 で 除 し た 値 ( χ ² /df= 5.93 ) が 基 準 値
(≦ 3.00)を上 回 ったものの、root mean square error of approximation(RMSEA≦ .08, Hu and Bentler, 1999 ) 、 comparative fit index ( CFI
≧ .90, Hu and Bentler, 1999)、bentler - bonett normed fit index(NFI≧ .90, Hair et al., 2006)
などの指標を満たしていることから、尺度モデルの データへの適合が確認 された(表 4)。また、各要 因 間 の相 関 では、中 心 性 と場 所 への帰 属 性 にお いてやや高い正の相関(r= .795)が認められたが、
その他 の要 因 間 では中 程 度 あるいは低 い正 の相 関 が認 められた。各 要 因 は複 数 の項 目 にて構 成 されていることから尺 度 の一 貫 性 を検 証 するため、
信 頼 性 係 数 αを算 出 したが、全 ての要 因 におい て基 準 値 を満 たした。また、関 与 を構 成 する5つ の要 因 のスコアは、娯 楽 性 が最 も高 く(6.33)、次 いで場 所 への帰 属 性 (5.07)、中 心 性 (4.93)、連 帯性(4.70)、記号性(4.51)であった(表 5)。
86
表 4. スポーツ観 戦 関 与 における確 認 的 因 子 分 析
† 分 析 には SPSS Amos 25 を用 いた。
表 5. 各 要 因 間 の因 子 間 相 関 および平 均 値 、標 準 偏 差
† 各 項 目 は 1:「まったくあてはまらない」から 7:「 おおいにあてはまる」の 7 段 階 評 価 尺 度 で測 定 。
†† 各 要 因 の平 均 値 および標 準 偏 差 は、SPSS25 によって算 出 した。
††† 各 要 因 の平 均 値 および標 準 偏 差 の計 算 には、SPSS25 によって観 測 変 数 の合 成 変 数 を用 いた。
†††† 各 要 因 の項 目 間 相 関 の算 出 には Amos25 を用 いた。
††††† *p< .05, **p< .01
87 4. 消費者知識および精通性とスポーツ観戦関与
の関係について
消費 者知 識および精 通性モデルの妥当 性が確 認 されたことから、スポーツ観 戦 関 与 との関 係 性 および関 連 妥 当 性 を検 証 した。分 析 には Amos version 25 を使用し、構造方程式モデリングを用 いて分析を行った。その結果、仮説モデルがデー タ に 適 合 す る 結 果 と な っ た ( χ ² /df= 4.67, CFI= .93, TLI= .92(基準値:TLI ≧ .90,Hu and Bentler, 1999), RMSEA= .070。次 に要 因 間 の パス係 数 を分 析 したところ、精 通 性 に対 して有 意 な正 の影 響 を及 ぼしている要 因 は、サッカーに関 する知 識 (β= .23,p< .01)チームに関 する知 識
(β= .22,p< .01)と観戦サービスに関する知識
(β= .37,p< .01)であった。これらのことから、
消 費 者 知 識 を構 成 する要 因 が精 通 性 に正 の影 響 を与 えていることが示 され、H1 は支 持 された。
次に、精通性からスポーツ観戦関与を構成する 5 つの要 因 に対 して有 意 な正 の影 響 を及 ぼしてい ることが示された(娯楽性:β=.67,p< .01 ; 中 心 性 :β= .83,p< .01; 連 帯 性 :β= .45, p
< .01; 場 所 へ の 帰 属 性 : β = .87, p < .01;
象 徴 性 :β= .83, p< .01)。また、消 費 者 知 識 を構成する 4 つの要因は、精通性の 59%を説明 した。さらに、精 通 性 はスポーツ観 戦 関 与 を構 成 する要因について、娯楽性の 45%、中心性の 69%、
連帯性の 20%、記号性の 76%、場所への帰属 性 の 68%を説 明 した(図 2)。これらのことから、精 通 性 が 観 戦 者 関 与 を 構 成 する快 楽 的 要 因 と 自 己 表 出 的 要 因 に対 して影 響 を与 え、特 に抽 象 化 水 準 の高 い自 己 表 出 的 要 因 に対 して強 い影 響 与 えていることから、H2 および H3 は支持された(図 2)。
† *p< .05, **p< .01
†† 共 分 散 構 造 分 析 には Amos25 を用 いた。
図 2.精 通 性 とスポーツ観 戦 関 与 における構 造 方 程 式 モデリング
Ⅴ.考察及び研究の限界
消費者知識について 4 つの要因を設定し、精
通 性 との関 係 を検 証 したところ、CFI、NFI などの モデルの適 合度 を判 断 する指標 を満たしたことか
88 ら、その妥当 性が確認された。消費者知識および 精 通 性 の関 係 性 ではサッカーに関 する知 識 、チ ームに関 する知 識 というコアプロダクトに関 連 する 要 因 と、観 戦 サービスに関 する知 識 が精 通 性 に 正 の影 響 を与 えており、サッカー観 戦 者 の多 くが サッカー経験者ではないことを鑑みると(J リーグサ マリーレポート,2017)、観 戦 者 は直 接 的 な観 戦 経 験 や間 接 的 な情 報 収 集 、あるいは関 与 対 象 に 対 する学 習 の結 果 、知 識 の量 を増 やし、その中 でも特 にコアプロダクトに関 連 する情 報 を重 要 視 していることが示 された。このことは、サービスクオ リティの研 究 において、コアプロダクト関 連 の要 因 が満足に影響を与えていることが示されていること から(Yoshida and James,2010)、先 行 研 究 を支 持する結果となった。
精通性に関しては、はファン歴が長くなるほど高 くなる傾 向 が想 定 されるが、コアプロダクトに関 連 する情 報 提 供 や、ルールや戦 術 などの理 解 を深 める学 習 支 援 的 な取 り組 みも精 通 性 を高 めるた めの施策として有用であると考えられる。チームへ の関 与 が高 まると、様 々な支 援 的 行 動 へ影 響 を 与えることが示されている(井上ほか,2018)ことか ら、消 費 者 知 識 や精 通 性 を高 めるための情 報 提 供 は、ファンデベロップメントに影 響 を与 える可 能 性 が高 く、コアプロダクトに関 連 する情 報 提 供 (ス タッツデータなど)は関 与 を高 めることに寄 与 する 可能性が高いことが示唆された。このことはスポー ツマネジメント領域において新たな発見であり、学 術的にも価値を有する結果が示されたと考える。
次 に、精 通 性 とスポーツ観 戦 関 与 との関 係 に おいて、娯 楽 性 、連 帯 性 などの快 楽 的 要 因 への ある程 度 の影 響 が認 められ、精 通 性 は娯 楽 性 の 45%、連帯性の 20%を説明する結果が得られた。
精 通 性 はこれらの要 因 に比 べ、中 心 性 、記 号 性 、 場 所 への帰 属 性 への強 い影 響 が示 された。精 通 性 は中 心 性 の 69%、記 号 性 の 76%、場 所 への 帰 属 性 の 68%を説 明 している。これらのことは、
井 上 ら(2018)において、快 楽 的 要 因 の一 つであ る 中 心 性 は 、 自 己 表 出 的 要 因 と の 強 い 関 連 性
(先 行 要 因 の影 響 を媒 介 する)が認 められている ことからも、精 通 性 はスタジアム関 与 に影 響 を与
え、特 に抽 象 化 水 準 の高 い要 因 に対 して強 い影 響 を与 えることが示 唆 された。また、チームに対 す る関 心 の程 度 を示 す中 心 性 や価 値 階 層 の高 い 次 元 を示 す要 因 への影 響 が強 く認 められたこと、
スタジアム内でのコミュニティ形成や仲間との交流 に対 する楽 しみや価 値 については低 い値 を示 し たことは、消 費 者 の知 識 と自 己 との関 連 性 を示 す 内 因 的 自 己 関 連 性 が、観 戦 行 動 を起 こしている、
すなわち関 与 水 準 の高 いファンの関 与 の基 盤 と な っ て い る こ と が 示 唆 さ れ た ( Peter and Olson, 2001;堀田, 2017)。
次に、本研究ではコアプロダクトとは直結しない 観戦サービスに関する知識の影響が最も高いこと が示 された。これまでの研 究 では、サービス関 連 の品 質 よりもコアプロダクト関 連 の品 質 を高 めるこ とが顧 客 の満 足 に強 い影 響 を与 えることが示 され てきたが(Yoshida and James,2010)、本 研 究 の 結 果 からはスタジアム内 でのイベントやホームタウ ン活 動 に関 する情 報 の取 得 あるいはそれらを観 戦 者 が経 験 することは、チームと自 己 との関 連 性 を深 めるうえで重 要 な役 割 を果 たし、関 与 を高 め るうえで強 い影 響 を与 える可 能 性 が高 いことが示 唆された。
本研究では、J リーグの各カテゴリーに所属する チームを抽 出 し情 報 を収 集 したが、プロサッカー 観 戦 者 のデータとしての代 表 性 をさらに高 めるた めには、多 くのチームの観 戦 者 にて調 査 を実 施 する必 要 があろう。また、本 研 究 では、消 費 者 知 識 が精 通 性 の 59%を説明 することが出 来 たが、さ らに検 討 する余 地 が残 されている。さらに、調 査 が一 時 点 における定 量 的 な情 報 収 集 であるため、
観 戦 者 が有 する知 識 の量 および専 門 性 が高 まる プロセスを把 握 し、スポーツ消 費 者 の態 度 対 象 に 対 する関 与 が高 まっていく過 程 を把 握 するには、
定性的な情 報収集および、複数回 の縦断的な情 報収集が必要である。
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91 付録1: 消費者知識に関する質問項目
Q. あなたは、一 般 的 な観 戦 者 と比 べて応 援 するクラブについて、どの程 度 の知 識 を持 ってい ますか。
と て も 多 い 平 均 的 と て も 少 な い