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学位授与機関 関西大学

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Academic year: 2021

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在宅で息子が母親を介護する際の心理的プロセスと それに影響を与える要因 [論文要旨及び審査の要旨 ]

著者 北本 さゆり

発行年 2020‑03‑31

学位授与機関 関西大学

学位授与番号 34416甲第793号

URL http://hdl.handle.net/10112/00020222

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1

[37]

氏 名

北本

きたもと

さゆり

博士の専攻分野の名称 学 位 記 番 号 学 位 授 与 の 日 付 学 位 授 与 の 要 件 学 位 論 文 題 目

博士(健康学)

人博第1号 2020年3月31日

学位規則第4条第1項該当

在宅で息子が母親を介護する際の心理的 プロセスとそれに影響を与える要因 論 文 審 査 委 員

主 査 教 授 涌井 忠昭 副 査 教 授 黒田 研二 副 査 教 授 山縣 文治

論 文 内 容 の 要 旨

本論文は、母親を在宅で介護する息子を研究対象とし、息子介護者の心理状態を介護を 行う過程に沿って分析し、その心理状態に影響を与えている要因を明らかにすること、ま た、母親を介護する息子が子どもの頃に抱いていた母親のイメージや、その後介護に至る までの母親を含めた家族との関係が介護にどのような影響を及ぼすのかを示したものであ る。研究方法は、先行研究の概観、統計資料の総説、2つの質的調査および量的調査による 実証研究である。本論文は第1 章を含め、全 6章で構成されている。以下に各章の内容を 簡単に紹介する。

第 1 章は「先行研究の概観」と題する章で、関連する先行研究を、①介護に関する尺度

(被介護者との関係・肯定的感情・否定的感情)、②男性介護者の特徴および困難感、③娘 介護者と息子介護者の相違、④高齢者虐待の視点から捉えた息子介護者の困難感の 4 つに 分類して研究結果の要約を表にまとめ、これまでの研究の論点を明確に示している。

第 2 章は「データから見た息子介護者の社会的背景」と題する章で、高齢の母親を介護 する息子がどのような社会的環境に置かれているのか、それが時代とともにどのように変 遷しているのかを概観した。主に公的機関が公表している統計データを用いて、高齢の母 親を介護する息子の社会的背景を導き出し、それが息子介護者の介護を行う上での心理状 態にどのような影響を与えているのかを見出している。

第 3 章は「息子が母親を介護する際の心理的プロセス」と題する章で、母を在宅で介護 する息子介護者の心理状態を介護の過程に沿って分析し、心理状態に関連する事柄を明ら かにすることを目的とした。その結果、次のことを明らかにしている。①在宅で介護する 母親を介護する息子介護者は、介護の始まりから母親の看取り、さらには母親が居ない生

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活を送るまでの介護プロセスを経験する。また、それぞれの過程で抱きやすい心理状態と それに関する事柄を示した。②息子介護者が心理的に追い込まれる事柄として、介護者の 年齢・性別など基本属性が関与しているものもあるが、介護開始時の生活変化の大きさや 情報の乏しさ、介護者を取りまく周囲のサポートの少なさが大きく影響している。③息子 介護者の追い込まれた心理状態を解きほぐすには、介護者が現状を客観的に受け止め、介 護を肯定的に捉えることができるよう、介護者の持つ資源や能力を的確に把握し、それに 応じた支援を行うことが重要である。

第 4 章は「息子介護者にとって子どもの頃からの母子関係が母の介護に与える影響」と 題する章で、息子介護者が抱いている子どもの頃の母のイメージや、母を含めた家族との 関係が介護に与える影響を明らかにすることを目的として、過去に介護していた息子を対 象に半構造化面接を行い、次のことを明らかにしている。①息子介護者は、子どもの頃の 母親の姿と介護を必要とする現在の母親の姿を照らし合わせ、母親の言動を母親の生き様 や性格から意味づけていた。②息子介護者は、成人期以降も母親(両親)との関係を継続 しており、親の状況をおおよそ把握できる環境にあった。③息子介護者は、母親を介護し ているという充実感を抱く一方で、子どもの頃の母親のイメージとのギャップに悩み、現 実としてふりかかる介護負担と相まって心理的に追い詰められる危険性を孕んでいる。④ 息子介護者が現実を客観的に捉えられるよう支援するために、介護者が経験してきた現在 までの家族関係を把握するとともに、介護者自身が持つ資源をアセスメントし、活用でき るよう調整することが必要である。

第 5 章は「高齢の女性を介護する介護者の心理状態とその経時的変化」と題する章で、

を高齢の女性を介護する息子介護者、母親を介護する娘介護者および妻を介護する夫介護 者対象に自記式アンケート調査を実施し、次のことを明らかにした。①一定期間介護継続 後、全体として介護における否定的評価は変化していなかったが、肯定的評価はいずれも 有意に上昇していた。②続柄別の認知的介護評価では、一定期間介護継続後に夫介護者は 介護継続不安感といった否定的評価が上昇し、娘介護者は家族役割充足感、高齢者への親 近感といった肯定的評価が上昇していた。③息子介護者は他の被介護者を介護していた、

または現在介護している割合が高く、ダブル介護の危険性を孕んでいた。また、娘介護者 は夫介護者に比べて介護開始時に就業している割合が高く、被介護者と二人世帯である割 合が少なかった。④否定的評価、肯定的評価の両側面に被介護者への尊敬の程度が関連し ており、それは一定期間介護継続後も続いていた。⑤近隣や友人からの支援の満足度は、

否定的評価が低いこと、肯定的評価が高いことに関連していた。支援者は介護者と被介護 者の関係やソーシャルサポートネットワークを適切にアセスメントし、介護者の意に適っ たインフォーマルサポートが得られるようマネージメントを行う必要がある。

第 6 章は「終章」と題する章で、本論文の総括の章である。在宅で息子が母親を介護す る際の心理的プロセスとそれに影響を及ぼす要因を次のようにまとめている。高齢の母親 を在宅で介護する息子介護者は、一定の介護プロセスをたどり、その経過の中でその時期

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に起こりやすい否定的感情と肯定的感情を経験する。それらの感情の起こりやすさは被介 護者の状況、介護者の属性や状況、介護者と被介護者との関係、専門職からのアプローチ、

周囲のサポート体制など、介護を取りまく環境などと関連することを明らかにした。この ような心理的プロセスを経験する息子介護者を支援する者は、息子介護者が今どのような 心理状態にあるのかを被介護者の状況と合わせて適切にアセスメントし、介護者が心理的 に追い詰められる前に介入する必要がある。

論 文 審 査 結 果 の 要 旨

本論文は、母親を在宅で介護する息子を研究対象とし、息子介護者の心理状態を介護を 行う過程に沿って分析し、その心理状態に影響を与えている要因を明らかにすること、ま た、母親を介護する息子が子どもの頃に抱いていた母親のイメージや、その後介護に至る までの母親を含めた家族との関係が介護にどのような影響を及ぼすのかを示したものであ る。

今後、息子介護者が増加することが予想されること、養護者による高齢者虐待の約 40%

が息子であることから、在宅で母親を介護する息子介護者の心理的プロセスを明らかにし た本論文の社会的意義は高い。

研究方法は、先行研究および主に公的機関が公表している統計データの分析に基づき、

本論文の独自性および新規性を明確にし、2つの面接による質的調査、質問紙による量的調 査を実施している。資料やデータの収集、分析やデータ解析も適切に行われている。

本論文では、母親を介護する息子の心理状態を一時点で捉えるのでなく、介護前からの プロセスとして捉えていること、また、「育てる-育てられる」関係から「介護する-介護 される」という関係に変化する母親と息子の関係に着目し、子どもの頃の母親のイメージ やその後の関係性が介護に与える影響を明らかにした点で、新たな知見を導き出している と認めることができる。

参照

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