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定義語からひく現代語辞典を構想する

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定義語からひく現代語辞典を構想する

著者 大島 中正

雑誌名 同大語彙研究

号 13

ページ 1‑8

発行年 2010‑09‑30

権利 同志社大学大学院日本語学研究会

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000012305

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1

定義語からひく現代語辞典を構想する

おおしま大島 中正 同志社女子大学学芸学部教員、同志社大学文学部非常勤講師

ちゅうせい

メールアドレス

キーワード

辞書、語義説明、定義語、関連語、日本語教育 1 はじめに

日本語非母語話者が日本語によって表現することをサポートするためには、次の(1)・(2)を可能にする辞典 が必要であろう。

(1)ある話題に関係する語彙的単位を、既習の単語をてがかりにしてみつけること。

(2)既習の単語をてがかりにしてみつけられた語彙的単位の用法をしること。

ある語彙的単位(単語のほかに接辞、慣用表現をふくむ)の用法をしることのできる辞典類は、質・量ともに充 実してきている。たとえば、小泉保他編(1989)『日本語基本動詞用法辞典』(大修館書店)や飛田良文・浅田秀子 著(1991)『現代形容詞用法辞典』(東京堂出版)、同(1994)『現代副詞用法辞典』(東京堂出版)、同(2002)『現代 擬音語擬態語用法辞典』(東京堂出版)、姫野昌子監修(2004)『日本語表現活用辞典』(研究社)、米川明彦・大谷伊 都子編(2005)『日本語慣用句辞典』(東京堂出版)をはじめ、類義語、対義語をあつかった辞典、逆引き辞典、慣 用表現辞典、意味分類体辞典等が多数刊行されている。

しかし、(1)を可能にする辞典としてはどのようなものがあるだろうか。たとえば、国立国語研究所編(2004)

『分類語彙表(増補改訂版)』(大日本図書)や柴田武・山田進編(2002)『類語大辞典』(講談社)のような意味分 類体の辞書類がある。これらは、上位・下位あるいは類義・対義の関係にある単語をしるのに有用である。このよ うな単語間の語彙的意味における関係を、コトバ典的類縁性とでも仮称するならば、コト典的類縁性とでも仮称し うる関係にある単語については、山内博之編(2008)『日本語教育スタンダード試案 語彙』(ひつじ書房)によっ てしることができるようになった。

タイトルにかかげた「定義語からひく現代語辞典」とは、上記の(1)と(2)の両方が可能な辞典である。こ の論文は、日本語学習者の表現をサポートするための「定義語からひく現代語辞典」を構想するうえで、どのよう なことが問題になるのかを論じようとするものである。

なお、この論文で引用する語義説明は、大島(2002)・(2008)で調査対象とした『例解新国語辞典』(編修代表:

林四郎、発行所:三省堂)による。

2 定義語からひくと何がわかるか

「定義語からひく現代語辞典」とは、普通の1言語辞書における見出し語と語義説明の部分を逆にして、語義説

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明の部分からひけるようにしたものである。たとえば、下記の(3)~(6)は普通の1言語辞書の見出し語と語 義説明である。この4単語の語義説明に共通していることは「パン」という単語が使用されていることである。

(3)青黴=餅やパンなどの食べ物に生えるかび。青みがかった緑色をしている。

(4)黒パン=ライムギが原料の黒いパン。

(5)ジャム=くだものに砂糖をくわえて煮つめた食品。パンなどにつけて食べる。

(6)食パン=箱の形に焼きあげた主食用のパン。

「定義語からひく現代語辞典」においては「パン」という1つの見出し項目のもとに、これらの単語があつめられ ることになる。つまり、「パン」という単語を定義語にもつ単語とその語義説明とが一覧できるようになるのである。

たとえば、(7)のように提示することがかんがえられる。

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パン 黒パン=ライムギが原料の黒いパン。

食パン=箱の形に焼きあげた主食用のパン。

青黴=餅やパンなどの食べ物に生えるかび。青みがかった緑色をしている。

ジャム=くだものに砂糖をくわえて煮つめた食品。パンなどにつけて食べる。

「パン」を定義語にもつ単語は上記の4語につきるものではないが、一例として提示した(7)だけからでも、

定義語「パン」と「パン」を定義語にもつ個々の単語との関係が一様でないことがわかる。定義語すなわち「定義 語からひく現代語辞典」における見出し語である「パン」に対して「黒パン」・「食パン」は下位語となり、「パン」

は「黒パン」の上位語でもあり、「食パン」の上位語でもある。辞書の使用者が「パン」にはどのような種類のもの があり、それらが日本語では何と命名されているのかをしりたいとおもうときに「黒パン」「食パン」という単語を えることができるのである。それでは、「青黴」・「ジャム」はどうであろうか。これらは、「パン」に対する上位語 でも下位語でもない。「青黴」というモノは「パン」に生じうるモノであり、「ジャム」というモノは「パン」につ けるモノであるとでもいうしかないであろう。このような単語間の関係をすでにのべたように「コト典的類縁性」

とでも仮称するならば、このタイプの類縁性によってむすびつく単語を日本語学習者がしることは、既存の意味分 類体の辞書類からもしることができる「コトバ典的類縁性」によってむすびつく単語をしることと同じぐらい意味 のあることであろう。さらに「定義語からひく現代語辞典」の使用者は、その語義義説明によって「青黴がパンに 生える」「ジャムをパンにつける」というコロケーションをしることになるであろう。

本節では、定義語からひく辞典によってわかることとして、次の(8)・(9)の2つをとりあげ、その具体例を いくつかのタイプにわけて列挙してみることにする。

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(8)定義語とコトバ典的類縁性によってむすびつく単語がわかる (9)定義語とコト典的類縁性によってむすびつく単語がわかる

2.1 定義語とコトバ典的類縁性でむすびつく単語がわかる

ここで、コトバ典的類縁性について検討しておこう。コトバ典的類縁性と仮称する関係とは、単語と単語との語 彙的な意味(=辞書的な意味)において認められる関係である。上位語・下位語の関係と同位語間の関係(類義的 関係、対義的関係)とが考えられる。このタイプの類縁性のある単語間においてはパラディグマティックな関係が 成立する。

このタイプの類縁性をかんがえるにあたって、品詞の転成をどうあつかえばよいのだろうか。難しい問題である。

たとえば、第一形容詞「暑い」と名詞「暑さ」には共通の意味特徴≪気温が高い≫があるとかんがえられるが、城 田(1991:212)が例示する「ひどく暑くて、病気になる。」と「ひどい暑さで、病気になる。」のような場合は、「暑 い」と「暑さ」にパラディグマティックな関係が成立しているようにおもえる。しかし、名詞の「つゆ」と陳述副 詞の「つゆ」の間にそのような関係は認められない。

コトバ典的類縁性というものは、当該の単語間に語形と意味特徴との両面において共通点がみとめられれば、パ ラディグマティックな関係が成立しなくとも、みとめられるものとかんがえてもよいようにおもわれる。名詞の「つ ゆ」と陳述副詞の「つゆ」には、語形が共通しているばかりでなく、≪わずかである≫とでもいうべき意味特徴が 共通にそなわっているとかんがえられるので、コトバ典的類縁性がみとめられることになろう。

このように、コトバ典的類縁性は、広義にかんがえれば、動詞「暮れる」と名詞「暮れ」のペアのみならず、動 詞「暮れる」と形容詞「暗い」、自動詞「暮れる」と他動詞「暮らす」のような単語間にもみとめられることになる。

定義語からひく辞典では、語義説明の方法にくふうをくわえれば、当該の1つの単語とあらゆるタイプのコトバ 典的類縁性によってむすばれる単語がえられることになろうが、以下では、上位語・下位語の関係と同位語の関係 にのみ注目することにする。

2.1.1 定義語の上位語または下位語がわかる

定義語からひく辞典があれば、定義語の上位語をしることができる。たとえば、(10)のように、「サーフィン」

という単語をしっている学習者がその上位語をしりたいとおもったときに「マリンスポーツ」という単語がえられ る。あるいは、「サーフィン」のほかに「スキューバダイビング」や「ジェットスキー」という単語をしっていて、

それらの総称をしりたいとおもったときに「マリンスポーツ」という単語がえられるわけである。もっとも、上位 語が存在すればという前提があり、上位語がかんがえられない場合は、その旨を明記するのがのぞましかろう。

(10)サーフィン→【マリンスポーツ】スキューバダイビング・ジェットスキー・サーフィンなど、海でする スポーツ。

(11)は、「スポーツ」という単語からその下位語の1つである「マリンスポーツ」がえられるということをしめ している。定義語からひく辞典には検索された単語の語義説明も掲載されるから、「スポーツ」の下位語の1つであ る「マリンスポーツ」から、さらに「マリンスポーツ」の下位語がえられることにもなるのである。

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4

(11)スポーツ→【マリンスポーツ】スキューバダイビング・ジェットスキー・サーフィンなど、海でするスポ ーツ。

2.1.2 定義語の同位語がわかる

(12)は類義語によるいいかえ型の語釈であり、(13)は対義語の否定表現による語釈であって、語義説明とはい いがたいが、定義語からひく辞典としては、同位語を検索できるものということになる。(10)・(11)の【マリンス ポーツ】は、すでにみたように「スキューバダイビング」「ジェットスキー」「サーフィン」といった同位語を列挙 しているため、(10)は、ただ定義語「サーフィン」の上位語「マリンスポーツ」をえるばかりでなく【マリンスポ ーツ】の語義説明によって「サーフィン」の同位語である「スキューバダイビング」「ジェットスキー」をしること ができることをしめしている。

(12)サーフィン→【波乗り】サーフィン (13)存在する→【ない】

存在しない。持っていない。

(14)は、曜日の語義説明をするために、「日曜」を起点として、1週間の中でのその位置をしめすという方法をと ったものである。

(14)日曜→【月曜】日曜からかぞえて、週の第二番めの曜日。月曜日。

同位語は現行の国語辞典をはじめ、類義語辞典・対義語辞典さらには意味分類体の辞典類から検索が可能である。

さらに、意味分類体の辞典類によれば、同位語のみならず、上位語・下位語も検索することができる。定義語から ひく辞典の有用性がもっとも発揮されるのは、次にとりあげる、定義語とコト典的類縁性によってむすびつく単語 をしりたいときである。

2.2 定義語とコト典的類縁性でむすびつく単語がわかる

下記の(15)と(16)はいずれも「スポーツ」が定義語として使用されている単語である。(15)の「スポーツ」

は「反則」という行為がおこなわれる分野であり、(16)の「スポーツ」は「サークル」という主体の目的であると かんがえられよう。(17)の定義語「グループ」は「ブレーンストーミング」という行為の主体であり、「ブレーン ストーミング」は「グループ」の目的ということになろう。(18)の定義語「ポンポン」は「チアガール」にとって 必需品であり、そのシンボルともいうべきものであろう。(19)の定義語「バレーボール」は「バレーボール」とい 球技のために欠かせないものである。ボールの名称と球技の名称が同一である点が興味ぶかい。(20)の定義語「ベ ルト」は「万歩計」を装着するための場所であり、物でもあろう。(21)の定義語「ゴール」は、球技における重要 な行為であるが、その行為にとって不可欠の場所が「ゴール」である。行為と場所とが同一名称である。(22)の定 義語「地震」は「津波」の原因と考えられる自然現象であり、(23)の定義語「きらきら(と)」は「ダイヤモンド」

の性質の1つである。

(6)

5 (15)スポーツ→【反則】スポーツ

(16)スポーツ→【サークル】文化活動や

などで、規則をやぶること。

スポーツ

(17)グループ→【ブレーンストーミング】個人の思いつきを自由に出し合って、独創的な考え方を引き出して いく討論の方法。何人かの

などをたのしむための集まり。

グループで

(18)ポンポン→【チアガール】はなやかなそろいの服で、

行ない、他の人の批判はしな い。「ブレインストーミング」ともいう。

ポンポンを (19)バレーボール→【バレーボール】

振ったりして応援する女子応援団員。

バレーボールで

(20)ベルト→【万歩計】ベルトなどにつけて、歩数を数える器具。商標名。

使うボール。

(21)ゴール→【ゴール】球技で得点するためにボールを入れるところ。また、そこ(=ゴール

(22)地震→【津波】

)にボールを入 れること。

地震などの影響で、

(23)きらきら(と)→【ダイヤモンド】炭素が高温高圧で結晶してできた、もっともかたい鉱物。多くは無色 海に高い波が起こって、陸地におしよせるもの。

透明。きらきらとかがやいてうつくしく、価値の高い宝石とされる。

人工的につくられたものは、工業用に使われる。す月の誕生石。金剛 石。略して「ダイヤ」ともいう。

以上、定義語とその定義語をもつ見出し語とがどのようなコト典的類縁性によってむすびつくかをみたわけであ るが、この数例の観察だけからでも、単語間のコト典的類縁性は、コトバ典的類縁性にくらべて、そのタイプが実 に多様であることに気づかされる。その多様なコト典類縁性をどうすれば系統的にとらえていくことができるので あろうか。この課題をもふくめて、3では、定義語からひける表現辞典をつくるために、留意すべき点を指摘する ことにしたい。

3 定義語からひける表現辞典をつくるために留意すべきこと

1つの定義語をてがかりにして、その関連語がひけ、ひけた関連語の用法がわかるという、日本語学習者の表現 をサポートするための辞典をつくるには、どのようなことに留意する必要があるだろうか。

3.1 定義語の選定

定義語すなわち定義語からひく辞典の見出し語はどのように選定すればよいのだろうか。選定されるべき単語の 条件として次の(24)・(25)2つがかんがえられよう。

(24)日本語学習者が初級レベルで習得するとかんがえられる単語であること。

(25)名詞であること。

(24)については、山内博之編(2008)『日本語教育スタンダード試案 語彙』の第1部に掲出されている「日本 語教育版分類語彙表」が参考になる。特に「4級」と「3級」の欄にみえる単語は、定義語の有力候補であろう。

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(25)の「名詞であること」とするのは、香坂順一編著(1988)『新しい方式の常用単語集 中国語関連語辞典』

(光生館)がのべるように「私たちが、なにか内容のあることをはなすばあい、つねに一つの題目(主語・主題)を 対象とする。(中略)題目が述べる対象となっている以上、それは私たちの頭の中で一つの「事物・人」として認識 されているものでなければならない。「事物・人」として認識されるものは、文法的な範疇では、それは名詞(体言)

に属する。私たちは名詞(体言)を題目・対象としてはなしを展開していく」(同書:8頁)とかんがえるからである。

「日本語教育版分類語彙表」に掲出の名詞が語義説明においてどのように使用されうるか検討して、定義語を選 定することが課題の1つとなるとかんがえられるのである。

3.2 定義語とコト典的類縁性のある単語を系統的にみいだすために

すでに(3)・(5)および(15)~(23)でみたように、定義語とその定義語をもつ見出し語との間にみいだし うるコト典的類縁性は多様であろうと予測される。その多様な関係をできるだけ系統的にとらえるにはどうすれば よいのであろうか。ここでは『例解新国語辞典(第七版)』において、名詞「夜」が定義語として使用されている見 出し語「夜空」「宵っ張り」「夜更かし」「更ける」「夜露」「夜食」「夜陰」「深夜」を例として、定義語と見出し語と のペアにどのようなタイプがあるかをかんがえてみたい。

単語をその語義に注目しておおきく類別すると、たとえば次の①~⑧のようになろう。

①時間をさししめす単語 ②空間をさししめす単語

③意志的行為・行動の主体をさししめす単語

④主体の能力・責任によって実現する動作・行為をさししめす単語

⑤主体の能力・責任によらず、他からの影響等によって生じる変化をさししめす単語 ⑥存在する物をさししめす単語

⑦人間が経験すること。たとえば、日課・冠婚葬祭・イベント・社会現象・自然現象等をさししめす単語 ⑧時間または空間における位置、主体・物・事の性質、運動の様子、性質・状態の程度等をさししめす単語

定義語「夜」はこの分類によるならば時間をさししめす単語(①)である。「夜空」は空間をさししめす単語(②)

で、「宵っ張り」は意志的行為の主体をさししめす単語(③)でもあり、主体の能力・責任によって実現する行為を さししめす単語(④)でもある。「夜更かし」は「宵っ張り」とはちがって、主体をさししめす単語(③)ではない が、主体の能力・責任によって実現する行為をさししめす単語(④)であるとかんがえられよう。動詞の「更ける」

は主体「夜」の能力・責任によらず、他からの影響等によって生じる変化をさししめす単語(⑤)とかんがえられ よう。「夜露」は存在するものをさししめす単語(⑥)、「夜食」は人間が経験することをさししめす単語(⑦)、「夜 陰」は「夜」という時間がもつ様子をさししめす単語(⑧)とかんがえられよう。そして「深夜」は「夜」とおな じ時間をさししめす単語(①)ということになり、「夜」と「深夜」には広義の上位語・下位語の関係がみとめられ、

コト的類縁性ではなく、コトバ典的類縁性をみとめるべきであるかもしれない。コトバ典的類縁性とコト典的類縁 性の連続性をみとめざるをえないのだろう。次の(24)~(31)は定義語と見出し語とその語義説明である。定義 語は格助辞のついた形式(ハダカ格をふくむ)でしめす。

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(24)夜→【夜食】夕食のあと、夜、おなかがすいたときにとる、かるい食事。

(25)夜(おそくまで)→【宵っ張り】夜おそくまで寝ないこと。また、それが習慣になっている人。

(26)夜(おそくまで)→【夜更かし】夜おそくまでねむらないこと。寝ないでなにかをしていること。

(27)夜が→【深夜】夜がすっかりふけたころ。

(28)夜の→【夜空】暗い、夜の空。

(29)夜の→【夜陰】夜の暗やみ。

(30)夜の(うちに)→【夜露】夜のうちに、草や木の葉などにおりた露。

(31)夜に(なって)→【更ける】夜になってから、かなりの時間がたつ。秋になってから、かなりの時間が たつ。

3.3 語義説明をおこなうときに留意すべきこと

語義説明にあたって留意すべきこととして、次の(32)~(35)をあげることができよう。

(32)コトバ典的類縁性に関する情報は、「上位語」「下位語」「類義語」「対義語」という表示のもとに該当す る単語を明記するようにする。

例【果物】上位語:食べ物。下位語:ミカン・イチゴ・モモ・リンゴ・バナナなど。 類義語 フ ルーツ。(作例)

(33)当該語が使用される分野がわかるようにする。

例【アフレコ】映画やテレビで、……。(『例解新国語辞典』)または【アフレコ】分野 映画・テ レビ。……。(作例)

(34)多義性のある表現の使用をひかえる。たとえば、「~によって」「~のために」「~のような」等より「~

が原因で」「~を目的として」「~に似ている」等を記述に使用する。

(35)当該の定義語と、定義語によって検出された見出し語とによるコロケーションがわかるように記述する。

たとえば、定義語「空」から見出し語「虹」が検出された場合、「虹」語義説明を「雨がやんだ空に見え る……。」とせずに「雨がやんだ空にかかる……。」とする。もちろん「虹が空に見える」というのもコ ロケーションであろうが、「虹が空にかかる」のほうがより基本的なコロケーションではないだろうか。

上記の留意点のほかに、語義記述に際して使用する単語の範囲を限定するのか否かといった問題や語義説明文の 文型の問題があるが、このようなより基本的な問題は、定義語からひく表現のための辞典を構想するといった具体 的な目標を設定することによって、より具体的にかんがえやすくなるものとおもわれる。

4 おわりに

以上、日本語非母語話者が日本語によって表現することをサポートするための定義語からひく辞典を構想する場 合に問題になることを提示した。印刷媒体か電子媒体かによって問題になる事項がちがってくることもあろうが、

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今回はその点には留意していない。媒体の差異をこえて問題になる基本事項をとりあげたつもりである。また、学 習者は母語と目標言語である日本語との対訳辞典によって未習語をしることが通常であろうが、ここでは目標言語 である日本語のみによって未習の単語や表現を検索する場合を想定している。

「定義語からひく現代語辞典」とふかくかかわるのが、レベル別にしめされるトピックシラバスであろう。トピ ックごとに必要な語彙と文型とが具体的に提示されているシラバスである。ある話題について日本語でかたるには どんな語彙と文型とが必要か。最低限どんなものが必要で、より具体的かつ詳細にかたるためには、基本的な語彙・

文型のうえに、どのような語彙・文型をつみあげていけばよいのか。このようなこと検討することが、「定義語から ひく現代語辞典」の記述の質をたかめることにもつながるのではないかとおもわれる。

【参考文献】

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柏野和佳子(2006)『分類語彙表』の特徴と位置づけ」『日本語科学』19国立国語研究所 国立国語研究所(2009)『新「ことば」シリーズ22 辞書を知る』ぎょうせい

国広哲弥(1984)「辞書の中の文化」『言語生活』388筑摩書房

‐‐‐‐(1993)「辞書における連想の記述」『日本語学』12-9明治書院

‐‐‐‐(1998)「現代日本語辞典の将来像」『日本語学』17-14明治書院

宮島達夫(1997)「ヒト名詞の意味とアスペクト・テンス」川端善明・仁田義雄編『日本語文法 体系と方法』ひつじ書房 村木新次郎(1989)「現代語辞典の輪郭」『国文学 解釈と鑑賞』54-1至文堂

‐‐‐‐‐(1991)「単語の意味の体系性」『国文学 解釈と鑑賞』56-1至文堂

大島中正(2002)「語釈にはどのような音象徴語が使用されているか―――『例解新国語辞典(第四版)』を調査資料として―――」玉村文 郎編『日本語学と言語学』明治書院

‐‐‐‐(2004)「語釈用語から何がわかるか―――西洋外来語「スポーツ」を例として―――『同志社国文学』61

‐‐‐‐(2008)「語釈にはどのような外来語が使用されているか―――『例解新国語辞典(第七版)』を調査資料として―――『同志社女 子大学日本語日本文学』20

‐‐‐‐(2009)「定義語からひく現代語辞典を構想する」『2009年度日本語教育学会研究集会-第7回-(関西地区)<予稿集>』

佐治圭三(1996)「日本語教育と語彙」『國文学 解釈と教材の研究』41-11學燈社 城田 俊(1991)『ことばの縁 構造語彙論の試み』リベルタ出版

砂川有里子(1998)「日本語学習者のための表現辞典」『日本語学』17-14明治書院 玉村文郎(1995)「外国人のための日本語辞書の構想」『月刊言語』24-6大修館書店

‐‐‐‐(2002)「現代日本語の意味構造」『現代日本語講座 第4 語彙』明治書院

【付記】この論文は、2009年9月26日開催の2009年度日本語教育学会研究集会(第7回、関西地区、独立行政法人日本学生支援 機構大阪日本語教育センターにて)における口頭発表の内容に加筆・修正をほどこしたものである。

参照

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