日本の超低金利政策 は早期 に 解 除すべ きであ る
日本の金利政策 は速や か にグローバ ル化 を 目指せ 白 井 進
目 次 はじめに
第1章 超低金利政策の経緯 と背景 第2章 超低金利政策の問題点
第3章 日本の目指すべき金融財政政策 おわ りに
は じ め に
世界金融市場 で希有 な 日銀 のゼ ロ金利政策 は発足後1年6カ月 を経 て,平 成12年8月,政府 の反対 を押 し切 って漸 く解除 された。政府,財界,学界 で
は時期 尚早 の意見が多いが筆者 は金利正常化 の第一歩 として歓迎 したい。
金利政策 は物価 の安定,景気 の調節 を行 う日銀 の有力 な武器 であるが, ゼ ロで はさらに引下 げがで きない点か ら半身不随の状態で あ り,た とえデフレ を回避 し,景気促進 のため とはいえ元来採 るべ き政策 で はなか ったので はな いか。バ ブル崩壊 とい う異常 な状況下で あって も他 の政策 を模索すべ きであ った とい うのが筆者 の見解であ る。 カネ を基本 として運営 され る高度 な資本
主義体制 の観点か らして も金利 ゼロ とい うのは金利機能 の否定 を意味 し,体 制 その ものの否定 につなが る矛盾 した政策 であった。
ゼロ金利 の背景 として無視 で きないのは1995年12月か ら長期 にわた って維 持 して きた公定歩合0.5%とい う世界金融史上 において例外 的 な超低金利政 策 である。 したが ってゼ ロ金利政策 を見 る場合, この異常 な超低金利政策が なぜ採 られたかの分析か ら検討す る必要が ある。
本稿 は超低金利政策 の背景,問題点 を考究 し, それ に基づ き日本経済 の正 常 な発展のた めの課題 とその重要 な一翼 を担 うべ き金利政策 を模索 し,提起 す るものである。結論 的 にい えば,経済 のグローバル化 の進行過程 に見合 う 金利 のグローバル化 を目指 し,早急 に欧米先進 国並の金利水準 に復帰すべ き である と提起 してい る。現在 の金融界,財界,学界 の主要 な意見か らすれ ば
「夢 の ような提起」 とい う批判 を承知 で将来 の 日本 の政治経済 の在 り方 を考 え広 い観点か ら提起 す る ものである。
経済政策 は単 な る経済現象のみか ら立案す る と大 きな過 ちを犯 す ことは犀 史が示 してい る。経済 は政治 と密接 な関係 にあ り,超低金利政策 も米 国の強 い影響下で進 め られて きた ことは無視 で きない。対米政策 を今後 どうす るか とい う戦後採 って きた 日本政府 の政策 の見直 しと,世界経済全体 の正常 な発 展 のために日本 は何 をすべ きかの観点か らの検討 を踏 まえない と超低金利 の 改善や 日本経済 の復活 の展望 は見 えて こない。本稿 はその視点か らあえて問 題提起 をす るものである。
本稿 の提起 す る課題 は広範 な視野か ら検討すべ きもので あ り,今後 さ らに 本格 的な考究 を発展 させ る必要がある。 その意味で本論 は序論 的な性格 の も のであ り,各位 の率直 な ご意見 を受 けて さ らに深 めたい と思 ってい る。
92 国際経営論集 No.20 2000
第1章 超低金利政策の経緯 と背景
(1) 日本の超低金利の実態
各国の公定歩合 は当該国の金利水準 を見 るバ ロメーターである。
現在 (2000年8月)の主要国の公定歩合 は次のようになってい る。
日 本‑‑0.50% (1995年12月 1.75%‑0.50%) 米 国‑‑6.00% (2000年5月 5.50%‑6.00%) 英 国・‑‑6.00% (2000年1月 5.75%‑6.00%) ユーロ・・・・・・4.25% (2000年6月 3.75%‑4.25%) 上記 よ り次の特徴が明 らかである。
●日本の公定歩合 は主要国に比 し,極端 に低 い。
●米国,英国,ユーロ ともいずれ も2000年 になって最近 にそれぞれ金利 の 引 き上 げを行 っているが, 日本 は1995年12月 よ り4年8カ月にわた り長 期間0.50%の低水準の まま据 え置かれている。
しか も, 日本 は1999年2月 よ り日銀のゼロ金利政策 によ り,市中コール レ ー トは0.01%と限 りな くゼロに近 く他 の国に比 し,次の ようにレー トの格差 はさらに開いている (2000年8月現在比較。 日銀 「海外主要経済指標」 によ る)0
日 本‑‑0.01%
米 国‑‑6.50% (FFレー ト) 英 国‑‑5.81%
ユーロ‑‑・4.42%
上記数字 を見 ると日本が この1年6カ月の間,いか に国際的 に見て も異例 な金利水準であるかが分か る。
なぜ,長期 にわたって こんなに極端 な状態で推移 しているのか, その原因 について政府 も日銀 も正式 には明 らかに説明 していない。
あえて挙 げれば,本年5月に日本銀行金融研究所がデ ィスカ ッシ ョンペー パー ・シ リーズで,金融研究所 スタ ッフお よび外部研究者 による研究成果 の
発表 とい う形式で発表 された次の2つの論文である程度 うかが うことがで き るが, これ とて 日本銀行 の公式見解ではない.
① 「資産価格 バ ブル と金融政策 :1980年代後半 の 日本 の経験 とその教 訓
」
一翁 邦雄 ・白川方明 ・白塚重典 ‑② 「日本 にお けるバ ブル崩壊後 の調整 に対す る政策対応 :中間報告」
一白塚重典 ・田口博雄 ・森 成城 一
両論文 については,5月31日付 日本経済新聞 は
,
「利上 げ,遅 れが原 因, 日銀論文で認 める」 とい う表題 で報 じ,同 日付朝 日新聞 は,
「バ ブル時の金 融政策反省,円高阻止が 『国論』,不良債権見通せず, 日銀 リポー トで総括」と報 じているが,更 につつこんだ報道 はない。
両論文 ともかな りの資料 に基づいて分析 はしているが隔靴掻痔の感 を免れ ず,今一つ超低金利 に至 った経緯 について明確 な説明 に乏 しい。
特 に(参の方 はまさに低金利 に入 った期間の分析であるが,中間報告 と断っ ているだけに, どのような理由 とどのような過程で超低金利が決定 され,維 持 されたかについての分析 は不十分であった。次項では筆者 な りにその背景 について分析 をす ることとしたい。
(2) 日本の超低金利の背景 1 ゼロ金利政策の経緯 と背景
ゼロ金利政策 は長年続 けた超低金利政策 に もかかわ らず景気 は良 くな らず, 金融機関の不良債権問題 も依然厳 しく,ゼネコン他バ ブル後遺症企業 におけ
る経営危機が いっそ う深 まる状況下
,
「緊急避難的措置」 として1999年2月 導入 された。 日銀 の公式 な発表文では政策変更 に至 った背景 となる金融経済 情勢 につ き,次の2点 を指摘 している。① 企業や消費者 の心理 は依然慎重 な ものに とどまってお り,民間経済活 動が停滞 を続 けていること
② 長期金利が大幅 に上昇 し,為替相場 も円高気味の展開が続 いているこ 94 国際経営論集 No.20 2000
と
筆者 は当時の状況か らみて 日銀 の採 った背景 としては,次の諸点が挙 げ ら れ ると思 う。
① 日本経済の深刻 な不況
超低金利政策 にかかわ らず景気 はいっ こうに回復 しない状況下で, 日銀 は さらにいっそ うの金融緩和措置 を採 る必要 に迫 られた。
景気低迷 の原因 としては次の ことが考 えられ る。
A.バ ブル崩壊の後遺症が予想以上 に大 きか った。
B.金融機関の大 口不良債権先への資金負担増,大手取引先 の資金需要 減退,貸 し渋 り等で貸付減少 による景気不振
C.長期 の超低金利,健康保険,年金制度改悪, リス トラ等 に起 因す る 消費者 の消費抑制 による消費支出の低迷
② 政府 による大量 の国債発行
金融機関 に対す る巨額 の公的資金導入,景気対策 としての公共投資の増加 等 による多額 の赤字国債発行 を支 えるために銀行 に対 しタダのカネを供給 し て国債 を買わせている。
日銀資料 によると本制度発足後,2000年3月 までの間に銀行 の公共債残高 は64兆円 も増加 している (表1参照)0
この数字 はこの間 に発行 された国債増発分 について政府 はタダのカネで銀 行 に買わせて処理 し,国債 の利息相 当分 を銀行 に支払 い, それが銀行 の利益
表 1 銀行の国債 ・地方債購入残高推移 (単位 :兆円) 1998年12月 2000年3月 差 引 政府短期証券 25ー7 40ー9 15.2
国 債 275.0 318.6 43.6 地方債 45.4 50.6 5,2
合 計 346.1 410.1 64ー0 (注) 日銀調査局 「資金循環速報」 に よ る
になっていることを示 している。
さらに国債 の現在 の利 回 りを見 た場合,米 国 は6.15%, ドイ ツが5.3%に 対 し,世界一 の赤字財政 の 日本が1.655%とい う低水準 を維持 で きるのは こ の仕組 みが大 き く貢献 しているか らである。
2000年8月, 日銀がゼロ金利政策解除決定 の際 に,政府の代表の大蔵省が 新 日銀法 に基づ き決議延期 を要請 したが,表面では景気対策 を理 由にしてい
るものの,背景 にはこの仕組 みがあることが十分推測 され る。
③ ゼネコン等大企業のバ ブル後遺症的巨額債務
ゼネコン,不動産,流通業界 はバ ブル後遺症的巨額債務 を抱 えてお り,政 府 ・日銀 はそれ を救済す るために超低金利 で負担軽減 を図ったが,依然 とし て関係業者 の債務 は解消 されず,重 い負担 となってお り,救済のためにはゼ ロ金利政策 とい うさらに金利負担軽減の政策が必要であった。バ ブル時の乱 脈経営 による巨額 の投資の結果招いた過重 な負債 は,超低金利政策で も救 え なかった。
2000年7月, 日銀がゼロ金利解除の発表 を予定 していた時 に,突発的 にそ ごう問題が政治課題 となった。 そごうの当初計画では取引金融機関の債権放 棄6,300億 円を前提 に,国が国有化 した旧長期信用銀行 を継承 した新生銀行 か らそごう向 け不良債権2,040億 円の買い戻 しを了承 した ところ,多 くの国 民の反対やそれに基づ くマスコ ミの総反撃で実現せず,結局民事再生法 によ
る破綻 とい うこととなった。
日銀 はこの影響 を注視す るために, そごう問題 を理 由にゼロ金利解除 を延 期 した。
この ことはゼロ金利政策が景気対策 の他 に大企業の巨額債務 の軽減 を図 る 意味 も持 っていた ことを物語 っている。
また, 日銀がゼロ金利政策解除決定後 も,経団連, 日経連等の多 くの財界 首脳 は 「ゼロ金利解除 は建設,流通,中小企業等の経営 に大 きな打撃 となる
ので時期 尚早」 との意見 を述べていることはそれ を象徴 している。
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④ 米国,G7等外部圧力
1985年 ドル高是正のためのプラザ合意以降, 日本 の金利,為替政策 は日本 単独での決定 は困難であ り,米国,
G
7等の外部圧力の影響 を受 けて きた。ゼロ金利 について も次の事例がそれ を象徴 している。
A.米国の現在 の好景気 は株価 の高騰 に依存 してい るが, その大 きな要因 は日本 の超低金利 で調達 した資金が米国の証券市場 に投資 されているか らである。米国は日本 の円金利 が上がれば この仕組 みが影響 を受 け,樵 価が暴落 す ることを懸念 してお り
,
「世界 同時不況 を惹起 す る」 と常時 圧力 をか けて きている。B.1998年12月,当時米国のルー ビン財務長官,サマーズ副長官が訪米 中 の加藤元 自民党幹事長 に 「日銀の国債引受」 を提案 し, それに基づ き政 府 は日銀 に打診 したが, 日銀 は日銀法か らもで きない と拒否 した経緯が ある。 その代替案 としてゼロ金利政策 を急速決定 した とい う意見 を言 う 人が多い。
C.2000年1月,来 日中の米国サマーズ財務長官が記者会見 で
,
「健全 な 経済政策 と構造改革が必要」 と述べたあ と,
「積極的 な財政政策 とゼロ 金利政策 の維持」 を求 める見解 を発表 した。D.2000年4月 ワシン トンでのG 7における,共同声明で 「日本 は民需の 確実 な回復 を依然達成 してない」 とし
,
「ゼ ロ金利政策 はデフレ懸念 の 払 しょくまで継続すべ き」 と強調 し, 日銀総裁 も会議場 でゼロ金利継続を約束 させ られた。
2 日本の超低金利政策の経緯 と背景
日本 の超低金利 の出発点 は1985年9月のプラザ合意 に始 まる。関係国が ド ル高是正のために為替 レー トの調整 と関連 した金融政策 を協力 して推進す る ことが合意 された。 ドル高是正 のためには金利 の引下 げ策 を促進す る必要が あった。
プラザ合意後 の金利引下 げ状況 は表2の とお りである。
これ によ り次 の特徴 が見 出だせ る。
A .日本 は1985年9月か ら1987年2月 まで僅 か 1年5カ月 の間 に,5.0%
か ら2.5%と引下率50%の引下 げ を行 い3カ国の 中で は最低 の金利 とな った。
B.米 国 は 日本 と同 じ2.5%引 き下 げたが引下率 は31%と低 い上 に, 日本 よ り3%高 い水準 を維持 してい る。
表2 日銀公定歩合推移 (1985年9月〜1987年2月) 年 月 日銀公定歩合 米 国 ドイツ 1985年9月 5.0% 8.0% 4.5%
1986年1月 4.5% 7.5% 4.0%
1986年3月 4.0% 7.5% 4.0%
1986年4月 3.5% 7.5% 4̲0%
1986年10月 3.0% 7.5% 4̲0%
表3 日銀公定歩合推移 (1987年12月〜2000年8月)
年 月 日銀公定歩合 米 国 ドイツ
1987年12月 2.5% 6.0% 2.5%
1988年12月 2.5% 6.5% 3.5% 1989年12月 4.75%(バ ブル調整期) 7.0% 6,0%
*1990年12月 6.0% (バ ブル調整期 ) 6.5% 6.0%
1991年12月 4.5% 3.5% 8.0%
1992年12月 3.25% 3.0% 8.25%
1993年12月 1.75% 3.0% 5.75%
1994年12月 1.75% 4.75% 4.5%
*1995年12月 *0.5% *5.25% *3.0%
*1996年12月 *0.5% *5.0% *2̲5%
*1997年12月 *0.5% *5̲0% *2ー5%
*1998年12月 *0.5% *4.5% *2̲5%
*1999年12月 *0.5% *5.0% *3̲00/o(ユー ロ)
(荏) 本 データは日本銀行 国際局発行 「海外主要経済指標」 による 98 国際経営論集 No.20 2000
C.
ドイツは1.0%しか引 き下 げず,引下率 も22%と低 い上, 日本 よ りも 1%高い水準 を維持 している。この特徴か ら見 ると, 日本が一番忠実 に引下 げを実行 している。 さらにこ の特徴 はその後 のバ ブル時期 お よびその崩壊過程 で はさ らに強 まってい る (表3参照)0
表3のデー タによれば,1995年以降の 日銀公定歩合 の0.5%が米 国や ドイ ツに比 し,いかに異常 な低金利であるかが歴然 としている。 これについての 政府や 日銀か らの正式 な説明 はな く, その背景 については想像す るしかない が, 日本銀行金融研究所 のデ ィスカ ッシ ョンペーパー ・シ リーズ 「日本 に浴 けるバ ブル崩壊後 の調整 に対す る政策対応 一中間報告」で は次の ように当時 の事情 を説明 している。
(∋ 1990年代 の 日本経済
「失われた10年」 といわれ, 日本経済 の成長率 は80年代 の3.8%か ら1.6%
とな り,特 に1992‑99年 は平均1%に落 ち込 んでお り, デフレ回避 のために 大規模 な金融 ・財政政策が発動 された。金融政策面で は短期金利がほぼゼロ にまで低下 した。 また財政政策面で も相次 ぐ経済対策 の発動 によ り,財政赤 字 は先進国の中で最大 となった。
90年代 の長期 にわたる景気低迷の特徴 を纏 めると, A.資産価格 の大幅な下落
B.長期 にわた る実質経済成長率 の停滞
C.
マネーサプライの伸 び率低下D.企業等の資産劣化 と金融機関の不良債権問題 の発生 の4点 といえよう。
(参 円高急進 を受 けた政策対応
1995年 に入 り,急激 な円高が進行 (ピー クは4月19日の79.75円) した。
円高 は国内最終需要の回復力が弱い中で急速 に進行 したため,企業 の業況感
や株価 に対 して大 きなダメージを与 えた。
物価面 を見 ると,円高等の影響 で輸入物価 の下落か ら,卸売 り物価が下落 したほか,消費者物価が一時前年割れ を見た ことな どか らデフレ圧力の高 ま りが懸念 された。
こうした状況の下, 日本銀行 は1995年3月末の短期市場金利 の低下促進 に 続 き,4月には公定歩合 を0.75%引 き下 げた (1.75%‑1.0%)後,7月の 市場金利低 め誘導,9月の公定歩合引下 げ (1.0%‑0.5%)と立 て続 けに大 幅 な金融緩和 を行 った。
上記 は中間報告の形式 を とっている報告の一部であるが, なぜ公定歩合が 0.5%とい う世界金融市場 で例 がない超低金利政策 を採 らざるをえなか った かの背景 については,明確 な説明 を見出だす ことはで きなかった。
あえて背景 を見出す とすれば,次の点が挙 げ られ るのではないか。
① バ ブル時の必要以上の低金利 の持続 と金融緩和 の影響
バ ブル時 は,株式 と不動産 を中心 に狂乱的な資産高騰 をもた らす とともに, 多 くの企業 は実力以上 にキャピタルゲイ ンを目的に資金 を投下 した。銀行 は
これ ら企業 に自己資本でカバーで きないほ ど資金 をつ ぎこんだ.大蔵省や 日 銀 はその異常 さについて歓迎 こそすれ無警戒 ・無策であった (キャピタルゲ イ ンに基づ く税収 は楽 に増大 し,多 くの金融当局の幹部 は銀行か らカネを借 り, 自ら大企業の幹部並 に財 テクに走 った ことが新聞で報 じられている)。
② バ ブル崩壊過程での資産価格 の大幅 な下落 と対処方法の先のば し バ ブル崩壊過程 の株式暴落 と不動産価格 の暴落 はす さまじく,企業 は担保 不足 と多大の負債 を抱 え経営不振 に陥 り,資金 を注 ぎ込んだ金融機関では巨 額 の不良資産が発生 し,金融 システム危機が叫ばれた。 これに対 し政府 は巨 額 の公的資金 を投入 し, 日銀 は超低金利 と金融緩和 で関連企業 と金融機関に 対 して救済措置 を採 った。
この措置が企業 ・金融機関のモラルハザー ドを惹起 し,問題解決の先 のば 100 国際経営論集 No.20 2000
しとなった。 また,低金利政策 によ り土地 ・株 の値上が りによるバ ブルの再 現 を夢見 る企業経営者 も少な くな く,先送 りを助長 した。
その間に三洋証券,山一証券,北海道拓殖銀行, 日本長期信用銀行, 日本 債券信用銀行等の破綻等が発生 し,政策 当局 もその対策 に追われて ます ます 泥沼 に入 ってい く状況 となった。
1989年か ら1996年 まで7年間大蔵省銀行局長 であった現早稲 田大学教授西 村吉正氏 は, その著書 『金融行政 の敗因』の中で 「この7年間 はバ ブルの ピ ークか ら崩壊期 に当た る。バ ブルの発生 ・崩壊 を近頃 はや りの第2の敗戦 に た とえるな らば,私 は ミッ ドウェー海戦 の頃に戦線 に加わ り,ついぞ勝 ち戦 を知 らず,専 ら退却 と敗戦処理 を重ねて きた ことになる」 と述べているが, この間の金融当局が,いか に無策で方向性 をもたなか ったか を物語 っている。
③ 金融 ビッグバ ンの影響
1998年か ら始 まった金融 ビッグバ ンは当初 の夢 の ようなデザインとは異 な り,外資の東京市場での 自由奔放 な活動の場 を提供す る結果 となった。株式 市場や外国為替市場 は巨額 の外資の流出入で混乱 し, 日本長期信用銀行や 日 本債券信用銀行 は株式市場で外資 に翻弄 され,遂 に倒産 に追 い込 まれた (こ の結果, 日本長期信用銀行 は3兆 円強の支度金付 きで10億 円で米国の投資会 社 に身売 りされ,今多 くの問題が発生 している)0
金融 ビッグバ ンの評価 については神奈川大学経営学部 『国際経営 フォーラ ム』第9号,1998年 に掲載 の拙稿 「日本版 ビッグバ ンの背景,影響,問題点, 今後 の展開について」 と神奈川大学経営学部 『国際経営論集』第16・17合併 号,1999年 に掲載 の拙稿 の 「改正外為法実施 に伴 う影響 と今後 の展開」 を参 照 されたい。
さらにグローバル化 を目指 し,バ ブル後遺症 で悩む金融機関 に自己資本比 率の厳守,国際会計 の導入, その他 自由化諸施策 を強引 に推進 した結果, 日 本の銀行 と欧米一流銀行 との格差 は増大 し,対抗上,大手都銀の大型合併 と 中小金融機関の整理統合 を余儀 な くされ る結果 となった。 日本 の金融機関 を
取 り巻 く環境 はいっそう厳 しくなってお り,政府 も超低金利政策で救済せ ざ るをえない状況 になっている。
④ その他の背景
1999年2月 日銀 によ り金利政策の最後の手段であるゼロ金利政策が採 られ たが, その背景 については前述の 「1.ゼロ金利政策 の経緯 と背景」 を参照 されたい。
第 2章 超低金 利政策 の問題 点
1995年か ら発足 した公定歩合0.5%とい う超低金利政策 の経緯 と背景 につ いては第 1章で述べたが, それ を前提 にして超低金利政策の問題点 をさらに 深 めることとしたい。
(1) 異常な金融政策
公定歩合0.5%とい うのは国際金融市場 で も稀 な水準 であ り, ましてやゼ ロ金利政策 に至 ってはもはや金融政策 とはいえない。金利がゼロとい うのは もうそれ以上下 げ られない という意味で政策 の弾力性が失われてお り,政策 の形 をな していない。金利面で これ以上の金融緩和が行 えないのだか ら, 日 銀 は自らその主要な任務 である金利政策 を放棄 した ことになる。
高度 な資本主義社会 は余剰資金 を運用 し,適性 な運用利益 を得 るのが基本 であるが,中央銀行がゼロの資金 をジャブジャブ出す ようでは一般資本 の運 用利益の場 を奪 い,資本主義 の根底 を揺 るがす萌芽 とも言 える。
(2)企業,金融機関のモラルハザー ドの惹起
公的資金投入 とセ ッ トの超低金利政策 は,バ ブル期 の乱脈経営 によ り経営 破綻 した企業や金融機関の経営者 のモラルハザー ドを惹起 した。 その結果, 経営の構造改革 は先送 りとな り,救済のための公的資金増強,膨大 な財政赤
102 国際経営論 集 No.20 2000
字の累積 とな り, 日本全体 の経済運営 に大 きな障害 となった。不動産融資の 乱脈経営で破綻 した 日本長期信用銀行 や 日本債券信用銀行 の公的資金 の投入 はすで に7兆 円 を超 え,売却先 と政府 との鞍庇担保契約 に基づ く新 たな不 良 債権発生 に対 す る追加資金投入 も懸念 され る状況 はまさに末期 的である。経 営破綻 に瀕 したそ ごうや一部 ゼネ コンを救済す るために,融資銀行が揃 って 巨額 の債権 の放棄 をす るな どは,企業 と金融機 関双 方 のモ ラルハザー ドを助 勢す る もので決 して許 され るもので はない。 まして 1銀行 当た り約 1兆 円の 公的資金 を取 り入 れた大手都市銀行 は債権放棄 は絶対 すべ きで はない。債権 放棄 をす るな ら, その分 の資金 はまず政府 に公的資金借入返済資金 として返 還すべ きである。無駄 な公共投資 の温床 であるゼネ コン救済 の為 の債権放棄 な ど論外である。 ゼネ コンは半数 ぐらいに削減 した方が, 日本財政や経済 の 正常 な運営の為 には良い。
債権放棄 を放置す るばか りか, それ を是 として歓迎 す る政府,与党 の無責 任 な感覚 を疑 う。破綻すべ き企業や金融機 関 は自 らの責任 で処理すべ きであ ろう。 その くらいの改革 を しない と何時 まで も超低金利政策 は解除で きない だ ろう。
(3)財政赤字の補完機能
第 1章 で も述 べたが,ゼ ロ金利 や超低金利 は政府 の公共投資垂れ流 しや金 融機関援助資金 のための国債増発 を補完す る役割 を果た してい ることは大 き な問題 といわなけれ ばな らない。 もし, 日銀がゼ ロかゼ ロに近 い金利 で金融 機 関 に資金 を供給 すれ ば銀行 はその資金 で国債 を購入 し運用す るだ ろう。 ゼ ロ金利導入後銀行 の国債 ・地方債等 の購入残高が64兆 円 も増加 してい ること がその ことを如実 に物語 ってい る。 もし, 日銀 の公定歩合がユー ロ並 みにで もなった ら政府 は今 の1.655%の低 い金利 で は国債 の発行 がで きな くな り国 債増発 のブレーキ となる。 ゼ ロ金利 をめ ぐる東洋経済他金融雑誌 で多 くの学 者やエ コノ ミス トが もっ ともらし く 「ゼロ金利 を解除 し,金利 を上 げれ ば長
期金利 が上が り,金融機関の国債投資分が逆鞘 とな り,いっそ う金融機関の 不良債権 が増 える」 とい う理屈でゼ ロ金利解除反対 の意見 を述べていたが, 将来 あるべ き金利水準 の展望や金融全体 の包括 的な把握 もない きわめて近裸 眼的な意見 とい う他 はない。 そ うい う方々か ら今般 のゼ ロ金利解除後 の金融 政策 について改 めて意見 を聞 きたい と思 ってい る。
(4)消費支出抑制 によ る景気不振
筆者が銀行 を退職 した1990年 の時 は日銀 の公定歩合 は6%で大 口の特別定 期 は8%くらいであった。10百万 円の定期預金が あれ ば年80万 円 (税 引 き64 万 円)の金利収入が得 られた.人生計画で夫婦で年‑〜二度海外旅行 の予定 であったが,翌年 か ら公定歩合 の急減 に よ り金利 収入 は激減 し,5年 目の 1995年 には公定歩合 は超低金利 の0.5%にな ったた め, それか ら今 日まで定 期預金 の金利 は預金10百万 円に対 し,0.1‑0.2%で金利 も1‑ 2万 円に止 ま
る僅 かな ものになった。元金 の取崩 しは老後 の生活維持 のためにで きず,金 利 で は何 もで きず, ましてや海外旅行 もで きない状況 である。
これ は年金生活者 の一般 的な状況であ り,消費支出 は増大す るはずがない。
表4 個 人 資産 の種 別 推移
(単位 :兆円,カッコ内シェア) 1997年末 2000年3月 増 減
現金 .通貨制預金等 137 171 34 (ll̲3%) (12.5%) (21.4%)
定期性預金 628 624(内外貨預金31) ‑4 (52.0%) (45ー6%) (‑2.5%) 保険 .年金 303 377 74
(25.0%) (27.6%) (46.5%) 有価証券 141 196(内投資信託31) 55
(ll.7%) (14.3%) (34.6%)
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さらに最近 は若年定年制導入,企業 の リス トラによる解雇 ・収入減少,健 康保険の本人負担増,年金 の支給年齢繰上 げな ど一般国民 の不安 は増大 し, 総理府 の調査 で も60%の人 が将来 に不安 を抱 いてい る状況 で あ り,GDPの 6割 を占める消費支出の増大 は当分見込 めない状況 にある。 したが って景気 の回復 は超低金利が続 く限 り絶望的であろう。
金融 ビッグバ ンでバ ラ色 に描 いていた新 たな金融商 品で1200兆 円の個人資 産 の運用 によ り資産 の増加が期待 で きる と宣伝 されていたが, その結果 は一 部個人預金が外貨預金や投資信託,株式 に流れてい る程度 である。金額的 に は預金 に比べれ ば微々た る もの とい える。
預金全体 で は流動性 に一部定期預金か ら流れてい る ものの合計 で30兆 円増 えてお り,所得 を将来 のために貯蓄 す る傾 向にある (表4参照)0
第3章 日本 の 目指 すべ き金 融財政政策
第1章,第2章 で超低金利政策 の経緯,背景,問題点 を検討 して きたが, 現時点 に立 って今後 の金利政策 を含 めた金融 ・財政政策 について私見 を述べ たい。
(1)金利水準の グローバル化
現在 の 日本 の金利水準 は先進 国 に比 し, あ ま りに も低 す ぎる。 日本 は米 国 並 びにG7各 国やBISやIMF等か ら常時金融 のグローバ ル ・スタ ンダー ド の適用 を要請 されてい る。 その意味か らもす ぐには困難 だ ろうが,近 い将来 は金利 も欧米先進国並 み に引 き上 げるべ きで ある。企業 もます ますグローバ ル化傾 向 にあ り, 日本 だ けが特殊 な金利体系 を維持 す る ことは早晩許 されな
くなるだ ろう。
これ に関 し,為替 レー トと金利 の関係 で米 国経済 との従来 か らの しが らみ が あるが, これ について は後述す る。
私見ではあるが,2‑ 3年先 をメ ドに日銀公定歩合 を3%程度 に引上 げを 目指 し,段階的にスケジュール を立てて国民や関係国の理解 を得 なが ら推進 すべ きである。
神奈川大学の吉川元忠教授 は近著 『マネー戦略』の中で 「2002年4月 まで に公定歩合2.5%を目指す」 と提起 し, その2.5%について 「1998年 にバ ブル が膨 らんだ ときに日銀の引 き締 めが遅す ぎた として批判 された当時の レー ト であ り, その頃で も2.5%とい う水準 は異常 な低金利 とされていたのある
」
と解説 を加 えている。筆者の提起す る3%とい うのは,1985年 プラザ合意時 の金利 に戻す意味 とユー ロ水準 に近づ けるとい う意味 を兼ねた レー トを示 し てお り,期間 を2‑ 3年先 としているのは関係国,政府, 日銀,金融機関, 主要企業での真剣 な検討 を踏 まえて実施が望 ましいのでその結果如何 もあ り, 幅 を持たせてい る。但 し,可能であるな らば,なるべ く早 めに実現す ること が よ り効果的で ある。「金利 引上 げは銀行 の経営 を圧迫す る とか,住宅 ロー ン借入者の負担増 となるので反対」 とい う意見 も多いが,銀行 の不良債権処 理やゼネコン救済 に莫大 な公的資金 を投入す る資金があるな らば,む しろそ れ を停止 し, または回収 してその資金 を使 い,2‑ 3年の時限立法で金利補 給資金 を供給す る方が景気振興 に効果があるのではないか。 また, その可能 性 もあるのではないか。
(2) 財政の正常化
世界一の赤字財政 は次の諸点か ら早急 に正常化すべ きである。
(∋ 日本経済の評価 の低下
この ままさらに赤字垂れ流 しをしていけば日本全体 の評価 の低下 を斎 らし, それが 日本の金融機関や企業 の評価 の低下 を惹起 し, 日本経済の維持 ・発展 の大 きな阻害要因 となる。現 にムーデ ィは日本 の国債 に対 し, 1ランク格付 けを下 げてお り, さらに格下 げを検討 してお り予断 を許 さない状況 にある。
(診 将来の景気見通 しに悪影響 106 国際経営論集 No.20 2000
将来 にわたって大 きな税負担があることは国民の不安 を増大 し,消費生活 の引 き締 め傾向が強 ま り,将来の景気見通 しも悪化す る。
③ 適正 な金利水準が保 てない
膨大 な赤字国債 は超低金利が前提 になってお り,赤字国債 の増大が続 く限 り,金利水準の正常化 は難 し くなる。
④ 悪性イ ンフレの防止
赤字国債の解消のためのインフレ策 は終戦直後の 日本 で経験済みであるが, 最近 インフレターゲ ッ ト論,為替介入資金の非不胎化論, デノ ミ論 な ど赤字 国債債務 の安易 な解消 を目指す傾 向の無責任 な理論が強 まっている。悪性 イ ンフレは債務者 に とっては有利であるが金利生活者,賃金労働者 に とっては 死活 の問題であることは戦後の苦 しい経験か ら明 らかである。悪性 イ ンフレ 防止の観点か らも赤字国債 の削減 は焦眉 の急 を要す る課題 である。
(3) モラルハザー ドの克服
バ ブル崩壊対処 の過程 で政財界での不祥事件が雨後 の符 の ように続 出 した。
主な ものを列挙す ると次の とお り。
① 証券業界 の不祥事件
野村讃券の総会屋癒着事件,山一証券の赤字飛 ばしとその処理が問題化 し ての倒産
② 銀行 の不祥事件
第一勧業銀行 の総会屋 に対す る多額 の不正融資事件,富士銀行や東洋信用 金庫 (三和銀行 の系列信金)の偽造預金証書事件,大和銀行 ニ ュー ヨーク支 店 の多額 のデ ィー リング損失 をめ ぐる不明朗 な処理 とその結果のニ ュー ヨー ク支店営業停止, 日本長期信用銀行や 日本債券信用銀行 の不動産関係不良貸 金の幽霊子会社への隠蔽工作等, また,公的資金導入 を薦措 していた大手都 銀の経営者が政府か ら責任 を棚上 げす るとの約束で多額 の公的資金 を導入 し た例
③ 大蔵省 ・日銀の不祥事
大蔵省, 日銀幹部の銀行検査 をめ ぐる接待汚職の続 出
④ 自民党政治家の業者癒着問題
元建設大臣の在職時代 のゼネコン会社 との大 口癒着事件他事例 を挙 げれば きりがないが,特 に金融再生委員長が業者 との癒着発覚 によ り短期間の間 に 3人 も代わ る状況 は,政府首脳 の金融行政軽視 の現れ として非難 されている。
これ らの不祥事 は企業や役所 の中枢 の人のモラルハザー ドのひ どさを象徴 してお り,徹底的な粛正 と監視が必要である。 この ことの徹底 な くしては日 本経済再生 も低金利解除 も不可能である。
(4)対米政策の見直 し
戦後一貫 して 日本 の財政金融政策 は米国の影響下 にあ り,独 自で決定 した ものはほ とん どない といって も過言ではない。
特 に最近 の金融 ビッグバ ンの要請 に始 ま り,為替 レー ト・金利 ・財政 ・貿 易等 について,米国か らの木 目の細 かい要請や圧力 は枚挙 に暇がない。
日本 の総理の交替 の際米国大統領 を表敬訪問 し,お土産 として課題 を持 ち 帰 る慣習 はまず改 める必要がある。
最近の為替対策,ゼロ金利政策,金融緩和 な どについて一々介入 し,それ に対 し, 日本国政府当局 もなるべ く意向に沿 うような姿勢で対処 して きたが, これが現在 の金融 ・財政 の混乱の大 きな要因 となっている。
日本 もそろそろ自立 の方向で米国 に対 して強 い姿勢で対応す る時期 ではな いだろうか。 それでなけれ ば現在の財政 ・金融危機 は解消で きないのではな いか。米国の赤字財政援助 の為の米国債購入等 はまず見直すべ き課題であろ
う。
(5) 円の国際化推進
ビッグバ ンで東京市場 の活性化 と円の国際化 を謡 ってか ら今 日までの経過 108 国際経営論集 No.20 2000
を見 る と,円の国際化 はむ しろ低下傾 向 にあ る。
米 ドル依存 の金融政策運営で は為替 レー トの安定 は難 しい。
ユーロ通貨 は1999年1月発足後,一応安定 して推移 してお り,加盟 国通貨 の廃止後 は米 ドル に対抗 す る通貨 とな ることが予測 されてい る。
それに対 し, 円は日本 と歴史的 に も経済的 に も密接 な関係 にあるアジア諸 国で国際通貨 として利用 され る状況 にはない。 アジア通貨圏のテーマが会議 に出た ことが あったが,米国の強 い反対 で中絶 の状態 にあ る。
これか らの 日本経済 の発展 を考 える とアジアを中心 に幅広 い経済協力が望 まし く, それ を通 じて円の国際化 を推進 す るか, もし くは新 た にアジア共通 通貨創設 を推進す ることに貢献 すべ きで はなか ろうか。 それ にはまず民族間 の信頼 と友好関係 の樹立が急務 である。
第2次大戦 中に日本 が国家 の名 において犯 した戦争犯罪 について は誠意 を 持 って対応 す る とともに, アジアの国 を攻撃対象 とす る日米安保条約や 日米 ガイ ドライ ン等の軍事 同盟等 も早期 に解消す ることが求 め られ よう。政治的 信頼 関係がな くて正常 な経済関係 は期待 で きない。 その意味 で は円の国際化 は日本 自体 の政治姿勢 の大 きな転換が必要 になって くる。避 けて通れない重 要 な問題 である。
(6)東京金融市場の正常 な発展
現在 の東京金融市場 はきわめて不正常であ る。
株式相場 や外国為替市場 での短期取引 にお ける外資,特 にヘ ッジファン ド の動 向が相場 を決定 す る異常 な市場 となってい る。各金融機関のチー フエ コ ノ ミス トやチー フデ ィー ラーが 日々の変動や予想 を新聞で発表 してい るが, それぞれが まち まちの意見 を述べてお り,市場 の実態が把握 で きない。外 国 為替取引の98%が実需 に基づかない賭博 的取引であ り, かつ大 口資金 を動 か す胴元が有利 な取引がで きるマーケ ッ トであ る。
今,米国 を中心 とした大手ヘ ッジファン ドとそれ を利用 した一部欧米大銀
行が東京マーケ ッ トのみな らず,世界 の主要市場で 自由自在 (勝手気 まま) に取引 を独 占 している状況 にある。特 に最近 の東京マーケ ッ トではゼロ金利 で安 い投機資金 を調達 し, その運用の場 としてマーケ ッ トを利用 しているの で相場 の乱高下が激 し く,一般 の取引者 は明 日の相場 について も見通 しがつ かない状況 にある。
東京市場の正常化のためには実需 に基づかない大 口短期資金の動向 をチ ェ ックし,必要 に応 じた規制 を行 うべ きである。 また,G7その他発展途上国 を含 めた国際会議 な どで,経済の混乱 を防 ぐためのルールの確立 を提起すべ きである。マ レー シアが1998年 に採 った短期資金規制 の実績が国際的 に も市 民権 を得ている状況 はその可能性 を示唆 している。
アメ リカンスタンダー ドのグローバル化 を目指す米 国金融資本 とその代弁 者である米国金融 当局 は,資本主義 の原則 を盾 にこの方向に反対 の動 きをす るだろうが,昨年のWTO総会 における世界 のNGOの動 きに見 られ るよう に, もはや米国だけでは世界 を動かせない状況が生 まれて きてお り, カジノ 資本主義の克服 に日本 も動 くべ き時である と思 う。
お わ り に
本論文 のテーマは, これ まで検討 して来た とお り,単 なる金融政策 として 採 り上 げては到底解決で きるもので はな く, ましてや,現在 の大蔵省や 日銀
に任せ られ るものではない。
日本の超低金利 の解消 には,今後 日本のめざすべ き政治的,経済的諸課題 と密接 な関係 にあ り,幅広 い層 の意見 や力 の結集 が不可欠 で あろ う。特 に GDPの 6割 を占める消費者層の意向の反映 は必要不可欠である。
本論文 は本来 な らば共同研究のテーマであろう。
したがって,本論文 は筆者が本間題 を取 り上 げる視点 を描 いた試作的論文 として理解 していただ きたい。
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ただ し,本 テーマ は 日本が避 けて通れ ない喫緊の課題 であ り,各位 の ご意 見 をいただいて さらに考究 を深 めたい と思 っている。
その意味で各位 の率直 な ご意見 を期待 してい る。
なお,誌面 の都合や各位 に読 みやすい ようにす るた めに 「注」 を省略 した ので ご了承 いただ きたい。
参考 文献 1. 新聞
日本経済新聞 日経金融新聞 朝 日新聞 2.雑誌
金融財政事情 (社団法人金融財政事情研究会) エコノ ミス ト (毎 日新聞社)
TheEconomist(ロン ドンEconomist社) ダイヤモ ン ド (ダイヤモ ン ド社)
金融 ジャーナル (金融 ジャーナル社) 経済 (新 日本出版社)
3.政府刊行物
日銀各種統計月報 (日本銀行) 経済 白書 (経済企画庁) 4.著書
岩田規久男 (編)F金融政策の論点』東洋経済新報社,2000年 岩田規久男 Fゼロ金利の経済学iダイヤモン ド社,2000年 西村吉正 F金融行政の敗因j文牽春秋,1999年
吉川元忠 『マネー敗戦』文肇春秋,1998年 吉川元忠 『マネー戦略jPHP,2000年 金融再生研究会 F金融監督庁』宝島社,1999年 加野忠 F金融再編』文牽春秋,1999年
日本の超低金利政策は早期 に解除すべ きである 111
日本経済新聞社 (編)Fどうなる金融 ビッグバ ン』 日本経済新聞社,1997年 大槻久志 『金融恐慌 とビッグバ ン』新 日本出版社,1998年
山田弘 ・野田正穂 F現代 日本の金融j新 日本出版社,1997年 内橋 克人 F浪費なき成長』光文社,2000年
ジョージ ・ソロス (大原進訳)『グローバル資本主義の危機』 日本経済新聞 社,1999年
須 田慎一郎 F長銀破綻』講談社,1998年 井 口俊英 『告 白』文垂春秋,1997年
日本経済新聞社 (編)F金融迷走 の10年j 日本経済新聞社,2000年 5.論文 ・レポー ト
翁邦雄 ・白川方明 ・白塚重典 『資産価格バ ブル と金融政策 :1980年代後半 の 日本の経験 とその教訓j 日本銀行金融研究所,2000年
白塚重典 ・田口博雄 ・森成城 『日本 におけるバ ブル崩壊後 の調整 に対 す る 政策対応 :中間報告』 日本銀行金融研究所,2000年
篠塚栄子 (日本銀行審議委員)「日本経済 と日本銀行」 日本銀行,2000年 (日本金融学会 にて発表)
鐘 ケ江毅 「中央銀行 の本質 と新 日本銀行法の問題 点」中央大学 F経済学論 叢』第11号,2000年
白井進 「日本版 ビッグバ ンの背景,影響,問題点,今後 の展開 について」
神奈川大学経営学部 F国際経営 フォーラム』第8号,1998年
白井進 「改正外為法実施 に伴 う影響 と今後 の展 開」神奈川大学経 営学部
『国際経営論集』16・17合併号,1999年
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