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国立大学の規模と範囲の経済性 : パネル・データ 分析

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(1)

分析

著者 菅原 千織

雑誌名 經濟學論叢

巻 61

号 1

ページ 117‑151

発行年 2009‑07‑20

権利 同志社大學經濟學會

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000012478

(2)

【論 説】

国立大学の規模と範囲の経済性

―パネル・データ分析―

菅 原 千 織  

1 は じ め に

 わが国の国立大学は2004年に「国立大学法人法」に従い法人化された.そ の目的は,各国立大学の個性を生かしながら教育研究を一層発展させるため,

とされている1).国立大学には限られた予算のもとで,最大限の成果を生むこ とが厳しく求められている.これを裏付けるように国から国立大学に与えら れる運営交付金は法人化後も毎年削減されており,第 1 表に示したとおり国 立大学の再編・統合も進んでいる.

 こうした国立大学の状況を考えると,その費用構造を分析することの重要 性は明らかである.大学という教育機関においても,ミクロ経済学が想定す る企業と同様に,研究教育について一定の成果(すなわちアウトプット)を得る という制約のもとで,費用を最小にするような運営が行われていると考える ことができる.このフレームワークに従えば,費用効率の面からみた最適な 大学の規模や,大学が研究と教育という異なるアウトプットを生産すること

* 本稿の執筆にあたっては,同志社大学の河合宣孝教授,北坂真一教授,八木匡教授,徳岡一 幸教授,京都大学の森棟公夫教授をはじめ,日本経済学会2008年春季大会(東北大学)におい ては根本二郎教授(名古屋大学),妹尾渉講師(平成国際大学)ほか参加者の方々に多くの貴重 なコメントを頂いた.また本誌レフェリーからも多くの建設的なコメントを頂いた.ここに深 く感謝の意を表したい.なお,本稿における誤りは,すべて筆者に帰するものである.

1) 文部科学省のホームページ「国立大学の法人化をめぐる10の疑問にお答えします!」http://

www.mext.go.jp/a_menu/koutou/houjin/houjin.htmを参照.

(投稿受付 2008624日,

査読を経て掲載決定 2009113日)

(3)

の費用面のメリットについて検討できる.こうした考察は,現在進行中の国 立大学の再編・統合問題に対して直接的な判断基準を与えるとともに,今後 の国立大学のあり方についても重要な示唆を与える.

 大学における生産と費用の関係を実証的に分析するには,国立大学の費用 関数を推定し,そこから規模の経済や範囲の経済を計算することが有益であ る.ここで,規模の経済(Economies of Scale)とは,投入量(インプット)の増 加以上に生産量(アウトプット)が増加する割合であり,規模の経済が認めら れれば規模の拡大が平均費用の低下につながり,より効率的な生産が可能に なる.このことは大学の再編・統合に関して,例えば2つの大学が統合され て1つの大きな大学になることが費用効率の面から望ましいかどうかという 判断材料を与えてくれる.

 また,大学のように研究と教育,さらには学部教育と大学院教育というよ うに複数のアウトプットを生産している場合には,それらを別々に生産した 方が良いか,それとも同時に生産した方が良いかを,範囲の経済(Economies

of Scope)から判断できる.例えば,学部教育と大学院教育で範囲の経済が認

統合時期 統合後名称      統合前名称

2007/10/1 大阪大学 大阪大学     大阪外国語大学

2005/10/1 富山大学 富山大学  富山医科薬科大学  高岡短期大学

2003/10/1

東京海洋大学 東京商船大学   東京水産大学 福井大学 福井大学     福井医科大学 神戸大学 神戸大学     神戸商船大学 島根大学 島根大学     島根医科大学 香川大学 香川大学     香川医科大学 高知大学 高知大学     高知医科大学 九州大学 九州大学     九州芸術工科大学 佐賀大学 佐賀大学     佐賀医科大学 大分大学 大分大学     大分医科大学 宮崎大学 宮崎大学     宮崎医科大学

2002/10/1 筑波大学 筑波大学     図書館情報大学

山梨大学 山梨大学     山梨医科大学 第 1 表 統合が行われた国立大学法人

(4)

められるならば総合大学が,学部教育と大学院教育を分けて行った方が費用 効率の点で優るならば独立大学院(あるいは大学院大学)のような形態が推奨 される.

 今述べたような問題意識に沿って,米国では高等教育機関の計量分析がすで に数多く行われている2).中でも規模と範囲の経済を同時に計測できるMulti- Production Modelによる費用関数の推定はCohn, Rhine and Santos (1989)以降,

De Groot et al. (1991),Nelson and Hevert (1992),Koshal and Koshal (1999, 2000), Koshal, Koshal and Gupta (2001),Laband and Lentz (2003),Thomas (2004)をはじ め,米国や英国,オーストラリアなどを中心に数多くの研究がある.

 これに対し,わが国における研究は,データ入手が困難であったなどの理 由から多くはない.代表的なものを次に挙げる.Hashimoto and Cohn (1997) は,私立大学94校,1991年のデータを用いて2次関数の費用関数を推計し,

規模と範囲の経済がともに存在するという結果を得ている.妹尾(2004)は,

1999年の国立大学94校を対象に2次関数の費用関数を推計し,あらゆる規 模の大学で規模と範囲の経済が存在すること,さらにその最適な生産規模が 理系と文系で異なることを示している.中島ほか(2004)は,2000年と2001 年の国立大学76校のデータをプールした152標本により2次関数の費用関数 を推計し,非常に小さな規模の大学を除いて規模や範囲の経済が存在すると いう結果を得ている.山内研究室(2006)は,2004年と2005年の国立大学のデー タをプールした175標本により2次関数の費用関数を推計し,大規模大学を 除いて規模や範囲の経済が認められるという結果を得ている.またこの研究 では,集積地大学(近くに別の国立大学がある大学)について規模と範囲の経済 を計測し,個別大学統合の経済性をシミュレーションするなど,国立大学の 統合について具体的な提言を行っている.ちなみに,2007年10月に統合さ れた大阪大学と大阪外国語大学について,統合しても規模の経済が無いこと

2) 欧米における高等教育機関の規模や範囲の経済については,Cohn and Cooper (2004)やBrinkman and Leslie (1986)が幅広く議論している.

(5)

を指摘している3)

 以上のような先行研究を踏まえ,本研究では次の3つの改善を試みた.第 1に,費用に資本コストを含めることである.わが国における先行研究では,

国立大学の費用として,国立学校特別会計の支出額(妹尾,2004)や歳出決算 額(中島ほか,2004,山内研究室,2006)が用いられている.これらの費用は,

人件費や物件費を含むものであるが,費用関数の総費用として含まれるべき 資本コストを含んでいない.一部の国立大学は広大な校地や建物を所有して おり,潜在的に巨額の資本コストを要している.資本コストも考慮した場合,

規模や範囲の経済がどのように変わるのか興味深い.

 第2に,計量モデルについてパネル・データ分析を行った.わが国で行わ れた先行研究は,いずれもFFCQ (Flexible Fixed Cost Quadratic function)という2 次関数にいくつかのダミー変数を付けたモデルを推定している.これは単純 な2次関数よりも若干伸縮的ではあるが,個々の大学の特性を十分に考慮し ているとは言えない.本稿ではFFCQモデルに加え,より一般的なモデルと してパネル・データ分析で用いられる固定効果モデルや変量効果モデルを試 み,統計的基準に従ってモデル選択を行った.

 第3に,規模や範囲の経済の指標について信頼区間を計算することで,そ の妥当性を統計学的に検証する.わが国で行われた研究はもちろん,米国で 行われた研究も含めて,我々が知るいずれの先行研究も規模や範囲の経済の 点推定値を計算しているだけで,その信頼区間の計測や仮説検定は行ってい ない.費用関数のパラメータ推定値から計算される2つの指標は,ある確率 分布を伴う確率変数である.したがって,その信頼区間を考慮した上でなけ れば統計的に意味のある判定はできない.同様の問題は生産要素の代替の弾 力性や価格弾力性の計測に関してAnderson and Thursby (1986)らも指摘して いる.規模や範囲の経済の信頼区間を計算するにはその確率分布が必要にな

3) ここで紹介した研究以外に,わが国の高等教育機関の経済分析については,小塩(2002)や

 小塩・妹尾(2005)を参照.

(6)

るが,それは一般に未知であるため,本稿ではブートストラップ法を使って 標準誤差や信頼区間を計算する.

 以下,本稿の構成は次のとおりである.まず第2節ではモデルと分析方法につ いて説明する.第3節では,実証分析に用いるデータについて説明する.そして,

第4節では計算結果を示しその考察を行う.最後に第5節でまとめを述べる.

2 モデルと分析方法

 規模や範囲の経済の指標を算出するには,まず費用関数を推計しなければ ならない.大学のように複数の生産物を生産する企業の費用関数は次のよう に示される.

    CC(w, y) (1)  

ここで,Cは総費用,wは生産要素の価格ベクトル,yは生産物ベクトルであ る.費用関数は生産関数と同様に企業の持つ生産技術に関する経済的情報を集 約したものである.総費用Cは,右辺の生産要素価格や生産量を所与として,

企業の費用最小化行動の結果達成される最小の費用の大きさを表している.

 先行研究の多くは,単年度のクロスセクション・データか2,3年の短い期 間のパネル・データを用い,各大学が共通の生産要素価格に直面すると考え ることで費用関数から要素価格を省略している.また大学の生産物ベクトル yについても,Cohn, Rhine and Santos (1989)をはじめ多くの先行研究で,学部 教育Yuと大学院教育Yg,研究活動Yrの3種類を用いている.これらを踏ま えると,分析の対象は次のようなMulti-Production Modelの費用関数になる.

    C=C(Yu, Yg, Yr) (2)  

 実証分析を行うためには,この費用関数に特定の関数型を仮定しなければな らない.Multi-Production Modelの費用関数の分析には,その関数型の伸縮性 からLau (1974)の2次形式モデルやChristensen, Jorgenson and Lau (1973)によ るトランスログ・モデルが広く使われてきた.トランスログ・モデルは比較的 良好な推定結果の得られることがよく知られているが,大学の実証分析ではし

(7)

ばしばゼロアウトプットが観察されるために単純なトランスログ・モデルを使 うことができない.そこで,この分野では2次形式モデルが広く用いられてき た.Cohn, Rhine and Santos (1989)は,Mayo (1984)に従い次のようなFFCQと呼 ばれる計量モデルを大学の分析に用いている.

    C=a0

i aiFi

i biYi+1 / 2

i

j cijYiYj  i, j=u, g, r (3)  

 この費用関数は基本的に(2)式の2次近似式であるが,Fiという生産量が ゼロでなければ「1」をとるダミー変数を含むことで,固定費用に伸縮性を与 えている.わが国における先行研究は,いずれもこのFFCQタイプのモデル を推定している.

 本稿では先行研究と同様に(3)式の推定に加え,パネル・データ分析で行 われる大学固有の事情を考慮したモデルを考える.このうち固定効果モデル は,FFCQモデルをその特殊タイプに含むより一般的なモデルで,次のよう に表すことができる.

    C=

k akDk

i biYi+1 / 2

i

j cijYiYj  i, j=u, g, r k=1, …, n(4)  

 ここで,Dkは個別大学のダミー変数であり,nは分析対象となる大学の数 である.さらに本稿では,(4)式のような非確率的な個別大学ダミー変数では なく,大学固有の事情を確率的にとらえる変量効果モデルも推定する.

 費用関数が推定されると,そのパラメータから規模と範囲の経済が計算で きる.単一生産物の場合,1%の費用の増加が1%以上の生産量の増加をもた らすときに規模の経済があると定義される.これは弾力性の概念であるから,

次のように平均費用ACと限界費用MCの比から計算できる.

    dY/Y

dC/CC/Y dC/dYAC

MC (5)  

 Multi-Production Modelの場合,平均費用の定義は単純ではないが,それに 対応する概念としてBaumol, Panzar and Willing (1982)は次のような平均増分費 用(AIC:average incremental cost)を提示した.

(8)

    AICuC(Yu, Yg, Yr)-C(0, Yg, Yr)

Yu (6)  

AICuは学部の平均増分費用であるが,同様に他の財についても定義でき る.このAICを用いて第i財に関する規模の経済(Product-specific Economies of

Scale)は以下のように表すことができる.

    SCiAICi

MCi  i=u, g, r (7)  

ここで,MCiは第i財の限界費用で,MCi=∂C/∂Yiである.SCi>1であれ ば,第i財について規模の経済があると言える.

 また全体の規模の経済(Ray Economies of Scale)は,特定財の規模の経済を拡 張することで次のように定義できる.

    SRY= C (Yu, Yg, Yr)

YuMCu+YgMCg+YrMCr (8)  

このとき,SRY>1であれば,全体の規模の経済があると言える.

 Multi-Production Modelでは,複数の財を別々の企業が生産するよりも,1 つの企業で行った方が費用を節約できるという効果を計測できる.その指標 が範囲の経済であり,ここではBaumol, Panzar and Willing (1982)に従い次のよ うに定義する.

     CPG=C(Yu, 0, 0)+C(0, Yg, 0)+C(0, 0, Yr)-C(Yu, Yg, Yr)

C(Yu, Yg, Yr) (9)  

ここで,CPG>0であれば,全体の範囲の経済(Global Economies of Scope)が あると言える.

 さらに範囲の経済は,特定の財についても考えることができる.それは他 の財と組み合わせて生産することによる費用削減の効果として次のように定 義する.

    CPuC(Yu, 0, 0)+C(0, Yg, Yr)-C(Yu, Yg, Yr)

C(Yu, Yg, Yr) (10)  

(9)

ここで,CPuは学部教育に関する範囲の経済であり,CPu>0ならば学部教育 について範囲の経済があるといえる.また大学院や研究についても同様に定 義できる.大学における範囲の経済の源泉としては,Dundar and Lewis (1995) が指摘するように学部教育,大学院教育,研究について大学教員や職員が同 時に貢献することや,教室や図書館,情報インフラなどを共有できることな どが考えられる.

 ところで,このように定義される規模や範囲の経済の指標は,推定された費 用関数のパラメータから上記の定義に従って計算できるが,これらはいずれも 推定値から計算される確率変数であり,確率をともなって実現する推定値に過 ぎない.先行研究では,推定値を計算しているのみで,その標準誤差や検定統 計量,あるいは信頼区間を示していない.推定値が計算され,例えばSRY>1 という結果が得られても,そのSRYが有意に「1」と異ならなければ統計学的 に規模の経済があるとは言えない.あるいは,区間推定の考え方に従えば,信

頼係数95%で考えるとき上下2.5%の信頼限界で示される信頼区間が「1」を

超える領域に収まらなければ統計学的には規模の経済があるとは言えない.

 こうしたパラメータ推定値から計算される非線形の指標の標準誤差や信頼 区間を計算する方法としては,デルタ・メソッドとブートストラップ法が知 られている.本稿では,乱数を1万回発生させて生成した仮想的なパラメータ・

ベクトルから非線形関数の信頼区間を計算するブートストラップ法を用いた.

ブートストラップ法やデルタ・メソッドについては,Davidson and MacKinnon (2004) Ch5が詳しい.

3 デ ー タ

 本研究で用いるデータについて説明する.分析対象とするのは,国立大学 法人法により設立され,社団法人国立大学協会に正会員および特別会員とし て参加している86の国立大学法人と4つの大学共同利用機関法人である.そ の一覧は第 2 表に示されている.データの期間は法人化後の2004年度から

(10)

第 2 表 分析対象とする国立大学法人と大学共同利用機関法人

1 北海道大学 2 北海道教育大学 3 室蘭工業大学 4 小樽商科大学 5 帯広畜産大学 6 北見工業大学 7 旭川医科大学

8 弘前大学

9 岩手大学

10 東北大学

11 宮城教育大学

12 秋田大学

13 山形大学

14 福島大学

15 茨城大学

16 筑波大学

17 宇都宮大学

18 群馬大学

19 埼玉大学

20 千葉大学

21 東京大学

22 東京医科歯科大学 23 東京外国語大学 24 東京学芸大学 25 東京農工大学 26 東京芸術大学 27 東京工業大学 28 お茶の水女子大学 29 電気通信大学

30 一橋大学

31 東京海洋大学

32 横浜国立大学

33 新潟大学

34 長岡技術科学大学 35 上越教育大学

36 富山大学

37 金沢大学

38 福井大学

39 山梨大学

40 信州大学

41 岐阜大学

42 静岡大学

43 浜松医科大学 44 名古屋大学 45 愛知教育大学 46 名古屋工業大学 47 豊橋技術科学大学

48 三重大学

49 滋賀大学

50 滋賀医科大学

51 京都大学

52 京都教育大学 53 京都工芸繊維大学

54 大阪大学

55 大阪外国語大学 56 大阪教育大学

57 神戸大学

58 兵庫教育大学 59 奈良教育大学 60 奈良女子大学 61 和歌山大学

62 鳥取大学

(11)

2006年度の3年間であり,形式的にパネル・データとなっている4)

 (3)式や(4)式の推定には,まず説明変数として学部教育,大学院教育,

研究の生産物に関するデータが必要になる.ここでは多くの先行研究に従い,

学部教育については学部学生数(GAKU),大学院教育については大学院生数

(INSE),研究については科学研究費補助金額(KENN)を用いる.科学研究 費補助金は,本来ならば研究成果を生み出すためのインプットでありアウト プットとは言えない.しかし,科研費の採択は主にその業績などから決まる ことで,大学の研究成果(アウトプット)を表す代理変数とみなすことがで きる.他に適切なデータを収集することが困難であることから,わが国の先 行研究ではいずれも科研費補助金が研究のアウトプットとして用いられてい

4) この期間中,第1表にあるように200510月に富山大学と富山医科薬科大学,高岡短期大

学が統合された.このため富山大学については,費用のようなフローのデータは半期単位で公 表されている統合前と統合後の富山大学のデータを合算し,ストックのデータは当期と次期の 値を平均して用いた.統合前の富山医科薬科大学と高岡短期大学は分析対象としていない.

63 島根大学

64 岡山大学

65 広島大学

66 山口大学

67 徳島大学

68 鳴門教育大学

69 香川大学

70 愛媛大学

71 高知大学

72 福岡教育大学

73 九州大学

74 九州工業大学

75 佐賀大学

76 長崎大学

77 熊本大学

78 大分大学

79 宮崎大学

80 鹿児島大学 81 鹿屋体育大学

82 琉球大学

83 総合研究大学院大学 84 政策研究大学院大学 85 北陸先端科学技術大学院大学 86 奈良先端科学技術大学院大学 87 人間文化研究機構

88 自然科学研究機構

89 高エネルギー加速器研究機構 90 情報・システム研究機構

注) 国立大学法人法により設立され,社団法人国立大学協会に正会員および特別会員として参加し ている86の大学と4つの大学共同利用機関法人(上記表のシャドー部分)

(12)

5).出所は,学生数について各大学のホームページに掲載されている各年 の事業報告書と『大学ランキング』(朝日新聞,各年号)を用いた.科学研究 費補助金については文部科学省のホームページに掲載されている「科学研究 費補助金機関別採択件数・配分額一覧」の各年版に依拠した.

 (3)式や(4)式の被説明変数は国立大学の総費用であり,大学の損益計算書 と貸借対照表から作成した2種類の費用を考える.COST1は(経常費用+臨時 損失),COST2は(COST1+資本コスト)である.ここで,COST1の経常費用は,

主に教員や職員の人件費や教育・研究の経費から構成され,わが国の先行研 究はいずれもこの費用を用いている.しかし,ミクロ経済学の想定する費用 関数は資本コストを含む総費用を対象にしており,COST1では不十分である.

 そこで,各大学の貸借対照表から有形固定資産を取り出し,その機会費用 を資本コストとして算出し,COST2を分析対象に加えた.資本コストの具体 的な計算方法は次のとおりである.

   資本コスト

   ={(land×plan)+(book×pbok)+((yuke-land-book)×pyuk)}×(intr+rdep)

(11)  

ここで,land:各大学の土地資産(貸借対照表),plan:大学所在地の都道府県地 価(国土交通省都道府県地価調査),book:各大学の書籍資産(貸借対照表),pbok:

消費者物価指数の書籍・その他印刷物(総務省統計局),yuke:各大学の有形固 定資産(貸借対照表),pyuk:国内企業物価指数(日本銀行),intr:全銀貸出約定 平均金利(日本銀行),rdep:減価償却率(貸借対照表の減価償却費から計算)である.

 以上で説明したデータの記述統計量が第 3 表に,またグラフが第 1 図から 第 5 図に示されている.

5) わが国では難しいが,例えばDe Groot et al. (1991)は,米国の広範なデータベースを利用し,

研究成果として研究論文数を使った分析を行っている.

(13)

変数名 変数の定義 平均 標準偏差 最小値 最大値

COST1 経常費用 27432.2 29985.9

(1.093) 2066.7

(7.53%) 184649.1

( 673%)

COST2 経常費用+資本コスト 32552.1 36047.7

(1.107) 2293.2

(6.36%) 240713.2

( 668%)

GAKU 学部学生数 4947.3 3646.4

(0.737) 0

(0.00%) 14888.0

( 301%)

INSE 大学院生数 1634.5 2194.1

(1.342) 0

(0.00%) 13600.0

( 832%)

KENN 科学研究費補助金 1310.4 2897.4

(2.211) 22.8

(1.74%) 22101.7

(1687%)

第 3 表 記述統計量

注) 値は3年間のデータをプールしたもので,費用・補助金の単位は100万円,学生数の単位は人.

標準偏差下の( )内は変動係数,最大値・最小値下の( )内は平均値に対する比率.

第 1 図 学部学生数

注) グラフは各大学の学部学生数の3年分を横に並べたもので,横軸の番号は第2表に掲載されて いる各大学の番号に対応している.

(14)

第 2 図 大学院生数

注) グラフは各大学の大学院生数の3年分を横に並べたもので,横軸の番号は第2表に掲載されて いる各大学の番号に対応している.

第 3 図 科学研究費補助金額

注) グラフは各大学の科学研究費補助金額の3年分を横に並べたもので,横軸の番号は第2表に掲 載されている各大学の番号に対応している.

(15)

第 4 図 経常費用(臨時損失を含む)

注) グラフは各大学の経常費用の3年分を横に並べたもので,横軸の番号は第2表に掲載されてい る各大学の番号に対応している.

第 5 図 資本コスト

注) グラフは各大学の資本コストの3年分を横に並べたもので,横軸の番号は第2表に掲載されて いる各大学の番号に対応している.

(16)

4 推定結果の考察

 ここでは推定結果を考察する.はじめに,先行研究にならい費用をCOST1 として,FFCQモデルを推定した結果を第 4 表に示す.ここでFFCQモデル は(3)式に示したように生産量がゼロでなければ「1」をとるダミー変数を加 えるところに特徴がある.本稿では生産物を学部学生数,大学院生数,科研 費補助金の3つでとらえたが,対象となる全大学・機関が科研費補助金を受 けており,研究をしていない法人はひとつもない.また,大学院生を持たな い機関は情報・システム研究機構に限られる.そこで,生産物ダミーは学部 学生を持つ場合に「1」,持たない場合に「0」となるダミー変数DGAKだけ を含めることとした.その推定結果が第4表のモデル1である.

 第4表で,直接的に解釈が可能なパラメータは生産物の交差項である6).費 用関数から求められる交差限界費用は,

    MCij2C

∂Yi∂Yj,  i≠j (12)  

となり,MCij>0であれば第i財と第j財は費用代替的,MCij<0 であれば費 用補完的となる.すなわち,交差限界費用の係数が正であれば結合生産が費 用増加的となり,負であれば費用削減的になる.第4表のモデル1で学部生

(GAKU)と院生(INSE)は有意に費用代替的,学部生(GAKU)と研究(KENN)

は有意に費用補完的,院生(INSE)と研究(KENN)はプラスの値で推定され ているが統計的に有意ではない.学部生と院生が費用代替的で学部生と研究 が費用補完的という結果は,符号だけをみれば妹尾(2004)や中島ほか(2004), 山内研究室(2006)と同様である.

 次に,第4表のモデル2では,対象となるデータセットがパネル・データ

6) 説明変数の1次の項の符号については,Hashimoto and Cohn (1997),Koshal and Koshal (2000),

妹尾(2004),山内研究室(2006)など,内外の多くの先行研究で正・負いずれかの場合やすべ ての符号が負の場合などが計測されているが,特に議論はされていない.本稿でも先行研究と 同様に,個別に考察の対象とはしない.

(17)

モデル1 モデル2 モデル3

C 0.0560 0.0605 0.0861

(2.77) (2.73) (5.06)

DGAK 0.0034 0.0036 -0.0482

(0.12) (0.12) (-2.80)

GAKU 0.2864 0.2860 0.2048

(3.05) (3.05) (3.76)

INSE -0.5718 -0.5711 -0.3630

(-5.43) (-5.42) (-5.17)

KENN 1.0809 1.0837 0.8208

(10.40) (10.42) (11.42)

GAKU×GAKU -0.0292 -0.0327 -0.3062

(-0.08) (-0.09) (-1.73)

GAKU×INSE 1.0814 1.0964 0.9294

(2.06) (2.09) (3.13)

GAKU×KENN -0.9075 -0.9189 -0.6655

(-2.93) (-2.97) (-3.59)

INSE×INSE -0.4987 -0.5439 -0.1463

(-0.44) (-0.48) (-0.24)

INSE×KENN 0.1625 0.1856 -0.0240

(0.32) (0.36) (-0.08)

KENN×KENN 0.0160 0.0054 0.1073

(0.07) (0.02) (0.90)

D2005 -0.0135 -0.0128

(-1.07) (-1.68)

D2006 -0.0006 -0.0021

(-0.04) (-0.27)

DHOS 0.1813

(24.59)

自由度調整済み決定係数 0.9417 0.9416 0.9792

SBIC(シュワルツのベイズ統計量) -257.4080 -252.5700 -389.9090

第 4 表 FFCQモデルのパラメータ推定値(COST1)

注) 推定値下の( )内はt値.なお,t値の計算にはWhiteheteroscedastic-consistent standard errorsを用いた.

(18)

であることを考慮して時点ダミーを加えている.D2005は2005年度に「1」

をとり,D2006は2006年度に「1」をとるダミー変数である.いずれの係数 推定値も有意性は低いもののマイナスで計測されており,経常費用に削減の 圧力が働いていることが窺われる.交差限界費用の係数はモデル1の結果と 同じで変化は無い.

 最後にモデル3として,付属病院ダミー(DHOS)を加えたモデルを推定し

た.このDHOS は付属病院を持つ大学について「1」をとるダミーである.

付属病院の経費は大学全体の経費の中でかなりの割合(付属病院を持つ大学で平 均25%)を占めている一方で,本稿のモデルのように大学の生産物を学生数 や研究費でとらえると,病院経費の生産への貢献は直接的ではないことが予 想される.実際に推定してみるとモデル3の結果が示すように,付属病院ダ ミーの係数推定値は有意にプラスで計測された.すなわち,付属病院の経費は,

その生産物以上に経常費用を大きく押し上げていることが分かる.モデル3 においても,時点ダミーはモデル2の場合と同様にマイナスで計測され,交 差限界費用は院生と研究の交差項を除くと変化は無い.全体的に見ると,モ デル3で学部教育ダミーDGAKが有意にマイナスになったことを除くと,係 数推定値に大きな変化はない.

 こうして推定された費用関数のパラメータから計算された規模の経済の指 標が第 5-1 表に示されている.ここでは第4表の推定値の中で,最も自由度 修正済み決定係数が高く,SBICも小さいFFCQモデル3の推定値に基づく結 果をみる7).規模の経済の指標は(7)式や(8)式で示したように全体の規模の 経済SRY>1や個別の規模の経済SCi>1のように該当する指標が「1」より も大きいかどうかが問題になる.しかし,仮説検定をするには回帰モデルのt 値のように帰無仮説を「0」とするのがよい.そこで,ここではいずれの指標 もSRY-1>0やSCi-1>0のように両辺から「1」を引いて指標がゼロより も有意に大きいかどうかで規模の経済を判定できるようにした.

7) モデル1やモデル2から計算した規模や範囲の経済についても,基本的な結果は大差ない.

(19)

全体の規模の経済(SRY-1)

% SRY-1 標準誤差 t値 下側2.5% 上側 2.5%

10 4.429 1.154 3.838 2.527 7.034

25 1.738 0.425 4.086 0.992 2.665

50 0.833 0.181 4.597 0.500 1.213

100 0.367 0.088 4.187 0.196 0.540

150 0.201 0.092 2.196 0.033 0.390

200 0.111 0.112 0.987 -0.075 0.368

300 0.008 0.166 0.049 -0.197 0.425

学部の規模の経済(SC1-1)

% SC1-1 標準誤差 t値 下側 2.5% 上側 2.5%

10 0.035 0.032 1.084 -0.008 0.058

25 0.090 0.045 2.008 -0.018 0.153

50 0.190 0.097 1.959 -0.033 0.346

100 0.428 0.250 1.709 -0.052 0.927

150 0.735 0.700 1.049 -0.091 2.403

200 1.145 249.671 0.005 -0.193 9.338

300 2.592 185.989 0.014 -36.074 31.912

大学院の規模の経済(SC2-1)

% SC2-1 標準誤差 t値 下側 2.5% 上側 2.5%

10 -0.006 0.028 -0.229 -0.062 0.048 25 -0.019 0.085 -0.225 -0.191 0.147 50 -0.059 0.319 -0.186 -0.721 0.451

100 1.385 143.498 0.010 -22.151 24.626

150 0.152 0.764 0.199 -1.578 1.307

200 0.105 0.460 0.228 -0.945 0.881

300 0.080 0.338 0.237 -0.644 0.695

研究の規模の経済(SC3-1)

% SC3-1 標準誤差 t値 下側 2.5% 上側 2.5%

10 -0.002 0.002 -0.880 -0.006 0.002 25 -0.004 0.005 -0.878 -0.015 0.005 50 -0.010 0.011 -0.872 -0.032 0.011 100 -0.025 0.028 -0.868 -0.081 0.030 150 -0.050 0.057 -0.881 -0.167 0.059 200 -0.105 0.137 -0.761 -0.406 0.132

300 1.176 44.941 0.026 -7.675 7.594

第 5-1 表 FFCQモデル3の推定値から計算された規模の経済

(20)

 (7)式から(10)式で示された規模や範囲の経済の指標は,係数推定値とと もに各説明変数の値にも依存する.そこで,各生産物の平均値を基準(100%)

にしてその大きさを10%から300%の範囲で7段階にわけて仮想的な値を計 算している.第5-1表で100%の行は学部,大学院,研究のすべてがサンプル の平均値を取る仮想的な大学の規模と範囲の経済を示している.

 これをみると,全体の規模の経済(SRY-1)はその生産規模にかかわらずす べての点推定値がプラスとなり,先行研究と同様に規模の経済を示唆してい る.t値は生産規模が200%を超える大規模大学を除いて値が大きく,95%信

頼区間も200%を超える大学を除くとプラスの領域に収まっている.したがっ

て,大規模大学を除くと規模の経済の存在が統計的にも支持される.

 個別の規模の経済については,点推定値だけをみると学部教育について全 領域で,大学院については平均規模以上の領域で,研究については300%以 上の大規模大学で符号がプラスで計測されている.しかし,t値や信頼区間を みると有意に正で計測されることは無く,統計学的には必ずしもはっきりと したことは言えない.わが国の国立大学に関する先行研究も,平均的な規模 以下の大学では全体の規模の経済が存在する点で一致するものの,個別の規 模の経済についてはデータによりまちまちの結果となっており,ここではそ れを統計学的に裏付ける結果となっている.

 次に第 5-2 表で範囲の経済をみると,全体の範囲の経済は200%を越える大 規模大学を除いてプラスで計測されており,範囲の経済の存在が示唆されてい る.t値や信頼区間をみても平均以下の規模の大学では統計学的に範囲の経済 が存在することが支持されている.個別の範囲の経済については,大学の規模 に関わらず統計学的にも研究面で範囲の経済の存在が支持されている.これは 妹尾(2004)や山内研究室(2006)と同様の傾向である.また学部や大学院の 範囲の経済は,平均ないしは50%以下の規模の小さな大学で認められること が示されている.

 以上のように,ここでは先行研究と同様に経常費用を対象にFFCQモデル

(21)

全体の範囲の経済(CPG)

% CPG 標準誤差 t値 下側 2.5% 上側 2.5%

10 1.629 0.086 18.897 1.419 1.754

25 1.258 0.124 10.135 0.975 1.467

50 0.874 0.131 6.676 0.601 1.118

100 0.448 0.153 2.923 0.151 0.754

150 0.188 0.213 0.883 -0.214 0.619

200 -0.003 0.286 -0.012 -0.571 0.550 300 -0.295 0.444 -0.664 -1.151 0.580 学部の範囲の経済(CP1)

% CP1 標準誤差 t値 下側 2.5% 上側 2.5%

10 0.812 0.043 18.965 0.708 0.876

25 0.618 0.060 10.242 0.484 0.720

50 0.405 0.063 6.393 0.269 0.522

100 0.143 0.080 1.774 -0.014 0.303

150 -0.039 0.121 -0.323 -0.271 0.203 200 -0.186 0.169 -1.102 -0.505 0.159 300 -0.431 0.263 -1.637 -0.931 0.107 大学院の範囲の経済(CP2)

% CP2 標準誤差 t値 下側 2.5% 上側 2.5%

10 0.805 0.043 18.593 0.702 0.871

25 0.584 0.070 8.361 0.428 0.703

50 0.307 0.099 3.101 0.105 0.495

100 -0.111 0.187 -0.595 -0.479 0.260 150 -0.454 0.300 -1.514 -1.040 0.143 200 -0.762 0.417 -1.827 -1.558 0.078 300 -1.313 0.654 -2.008 -2.608 -0.052 研究の範囲の経済(CP3)

% CP3 標準誤差 t値 下側 2.5% 上側 2.5%

10 0.824 0.041 20.097 0.724 0.885

25 0.674 0.058 11.658 0.543 0.769

50 0.570 0.059 9.695 0.446 0.677

100 0.565 0.063 8.947 0.445 0.692

150 0.652 0.083 7.870 0.493 0.819

200 0.772 0.109 7.100 0.562 0.987

300 1.038 0.171 6.082 0.718 1.383

第 5-2 表 FFCQモデル3の推定値から計算された範囲の経済

(22)

を使って規模や範囲の経済を計測した.その結果は,平均的な規模より小さ な国立大学に限ると,全体の規模や範囲の経済が認められる,というもので あった.こうした結果は,サンプル期間やその対象が微妙に異なる先行研究 とほぼ同様のものである.

 次に従来のFFCQモデルをパネル・データ分析で用いられる固定効果モデ ルや変量効果モデルに拡張すると,結果はどのように変わるであろうか.第 6-1 表には,第4表の場合と同様に被説明変数をCOST1(経常費用+臨時損失)

として,FFCQモデル,固定効果モデル,変量効果モデルを推定した結果を 示している.ここでFFCQモデルは比較のために示しているだけで,第4表 のモデル3と同じである.固定効果モデルはすべての大学に大学固有の費用 要因があることを考慮して個別大学ダミーを付けたものであるから,学部ダ ミー(DGAK)や付属病院ダミー(DHOS)をつけたFFCQモデルをその特殊ケー スとするより一般的なモデルと見ることができる.そこで,FFCQモデルを 帰無仮説,固定効果モデルを対立仮説とする仮説をF統計量で検定すると,

第6-1表下段に示されたように固定効果モデルが支持される.また,自由度 修正済み決定係数やSBICをみても固定効果モデルの方が良好である.こう した結果は,学生数や科研費でみた生産物や学部ダミー,付属病院ダミーと いった説明変数だけでは十分に反映されない大学固有の事情が大学の費用に 大きく影響していることを意味している.

 次に,固定効果モデルと変量効果モデルの選択を行う.帰無仮説を変量効 果モデル,対立仮説を固定効果モデルとするハウスマン検定の結果,第6-1 表下段にあるように固定効果モデルがはっきりと支持される.固定効果モデ ルの年次ダミーD2005やD2006をみると,FFCQモデルの場合よりも明確に 費用削減の力が働いていることが検出されている.

 モデル選択で支持された固定効果モデルについて,交差限界費用をみると,

いずれも統計的有意性は低いものの,学部生(GAKU)と院生(INSE),学部生

(GAKU)と研究(KENN),院生(INSE)と研究(KENN)はいずれもマイナス

(23)

FFCQ(トータル)

モ デ ル 固定効果

モ デ ル 変量効果 モ デ ル

C 0.0861 0.0900

(5.06) (4.35)

DGAK -0.0482

(-2.80)

GAKU 0.2048 1.5541 0.0679

(3.76) (3.00) (0.67)

INSE -0.3630 0.0858 -0.0384

(-5.17) (0.45) (-0.32)

KENN 0.8208 0.1379 0.3694

(11.42) (2.27) (4.95)

GAKU×GAKU -0.3062 -1.2969 0.7205

(-1.73) (-1.56) (2.92)

GAKU×INSE 0.9294 -0.0074 0.0302

(3.13) (-0.02) (0.12)

GAKU×KENN -0.6655 -0.2286 -0.0567

(-3.59) (-1.00) (-0.39)

INSE×INSE -0.1463 0.0725 0.6204

(-0.24) (0.16) (1.78)

INSE×KENN -0.0240 -0.2280 -0.2693

(-0.08) (-1.07) (-1.72)

KENN×KENN 0.1073 0.1575 0.1030

(0.90) (1.85) (1.56)

D2005 -0.0128 -0.0104 -0.0134

(-1.68) (-5.05) (-6.81)

D2006 -0.0021 -0.0050 -0.0059

(-0.27) (-2.01) (-2.92)

DHOS 0.1813

(24.59)

自由度調整済み決定係数 0.9792 0.9986 0.9206

SBIC(シュワルツのベイズ統計量) -389.909 -569.791

F検定H0:FFCQモデル,H1:固定効果モデル:F(89,167)=41.320,p値=[0.0000]

ハウスマン検定H0:変量効果モデル,H1:固定効果モデル:CHISQ (9)=140.54,p 値=[0.0000]

第 6-1 表 パネル・モデルのパラメータ推定値(COST1)

注)推定値下の( )内はt値,F統計量・CHISQ統計量右側の( )内は自由度.

   FFCQモデルと固定効果モデルのt値の計算にはWhiteheteroscedastic-consistent standard errorsを用いた.

(24)

FFCQ(トータル)

モ デ ル 固定効果

モ デ ル 変量効果 モ デ ル

C 0.0874 0.0970

(2.72) (4.35)

DGAK -0.0618

(-1.78)

GAKU 0.2539 -0.5943 0.0943

(2.58) (-0.65) (0.83)

INSE -0.32.5 -0.5137 -0.3914

(-2.84) (-1.64) (-2.71)

KENN 0.8695 -0.0082 0.5591

(5.91) (-0.05) (5.63)

GAKU×GAKU -0.5374 2.3270 0.8310

(-1.67) (1.55) (2.73)

GAKU×INSE 1.3021 -0.4014 -0.2126

(2.36) (-0.69) (-0.65)

GAKU×KENN -0.9352 0.0553 -0.120

(-2.82) (0.10) (-0.060)

INSE×INSE -0.6614 2.6400 2.185

(-0.57) (2.23) (4.21)

INSE×KENN 0.3289 -0.8117 -0.8172

(0.64) (-1.33) (-3.512)

KENN×KENN -0.0520 0.4700 0.3145

(-0.23) (2.16) (3.19)

D2005 0.0040 0.0052 0.0041

(1.54) (2.42) (1.34)

D2006 0.0320 0.0256 0.0282

(6.76) (6.64) (9.07)

DHOS 0.1841

(13.77)

自由度調整済み決定係数 0.9782 0.9972 0.9330

SBIC(シュワルツのベイズ統計量) -359.459 -450.996

F検定H0:FFCQモデル,H1:固定効果モデル:F(89,167)=20.575,p値=[0.0000]

ハウスマン検定H0:変量効果モデル,H1:固定効果モデル:CHISQ (9)=53.483,p 値=[0.0000]

注)推定値下の( )内はt値,F統計量・CHISQ統計量右側の( )内は自由度.

   FFCQモデルと固定効果モデルのt値の計算にはWhiteheteroscedastic-consistent standard errorsを用いた.

第 6-2 表 パネル・モデルのパラメータ推定値(COST2)

(25)

で計測され費用削減的であることが示唆される.

 第 7-1A 表には,第6-1表の固定効果モデルから計算した規模の経済が示さ れている.この結果は第5-1表のFFCQモデルの場合とは大きく異なってい る.特に,全体の規模経済(SRY-1)は多くの場合に点推定値がマイナスとな り,プラスで計測されている中規模の大学でもt値や信頼区間をみると統計 学的に規模の経済は支持されない.個別の規模の経済については,t値や信頼 区間まで考慮すると中規模以下の大学で学部教育の規模の経済が認められる が,他の規模の経済は認められない.

 第 7-1B 表には,第6-1表の固定効果モデルから計算された範囲の経済が示 されている.範囲の経済も第5-2表のFFCQモデルとは大きく異なり,規模

が平均10%以下のごく小さな大学に限り全体も個別も範囲の経済が認められ

るが,他はt値や信頼区間を含めて考えると範囲の経済は認められない.

 これまでは費用として経常費用を用いてきたが,資本コストを含む場合の 推定が,第 6-2 表に示されている.これをみると,F検定や自由度修正済み 決定係数,あるいはSBICでFFCQモデルとの比較で固定効果モデルが支持 され,変量効果モデルとの比較ではハウスマン検定により固定効果モデルが 選択される.

 第6-2表の固定効果モデルについて,その交差限界費用をみると,学部生

(GAKU)と院生(INSE),院生(INSE)と研究(KENN)の推定値がマイナスで 計測され費用削減的であることが示唆される.ただし,いずれも統計的有意 性は低い.

 また費用に資本コストを含むことで,第6-1表ではマイナスで計測されて いた時点ダミーD2005とD2006の係数推定値が,第6-2表ではプラスに変化し,

しかも,はっきりと有意である.これは,経常費用に対しては費用削減の圧 力が働いているものの,資本コストを含めるとむしろ費用増加の傾向がある ことを示している.校地面積に大きな変化が無く,金利や地価もここ数年に 大きな変化が無いとすれば,資本コストの変化は減価償却の積み増しでもた

(26)

全体の規模の経済(SRY-1)

% SRY-1 標準誤差 t値 下側2.5% 上側 2.5%

10 -2.115 5.483 -0.386 -4.448 -1.368 25 -0.857 0.501 -1.711 -1.867 -0.535 50 -0.383 1.036 -0.369 -0.949 -0.186

100 0.031 0.187 0.165 -0.424 0.278

150 0.585 0.701 0.834 -0.179 1.993

200 2.995 393.154 0.008 -35.166 36.874

300 -1.812 81.871 -0.022 -11.053 7.828 学部の規模の経済(SC1-1)

% SC1-1 標準誤差 t値 下側 2.5% 上側 2.5%

10 0.020 0.010 1.925 0.001 0.029

25 0.053 0.029 1.854 0.003 0.079

50 0.121 0.070 1.733 -0.001 0.188

100 0.328 0.150 2.196 -0.001 0.590

150 0.770 0.602 1.280 0.011 2.206

200 2.354 318.737 0.007 -29.415 32.505

300 -2.228 2725.937 -0.001 -15.716 11.204 大学院の規模の経済(SC2-1)

% SC2-1 標準誤差 t値 下側 2.5% 上側 2.5%

10 -0.012 1.227 -0.010 -0.383 0.357 25 -0.034 219.967 0.000 -1.001 0.910 50 -0.077 11.554 -0.007 -2.376 2.284 100 -0.217 33.503 -0.006 -7.419 6.846 150 -0.555 115.423 -0.005 -12.716 13.325 200 -2.494 864.869 -0.003 -16.439 17.086

300 1.000 110.634 0.009 -12.480 10.829

研究の規模の経済(SC3-1)

% SC3-1 標準誤差 t値 下側 2.5% 上側 2.5%

10 -0.015 1.019 -0.015 -0.168 0.092 25 -0.046 5.998 -0.008 -0.451 0.329 50 -0.133 5.741 -0.023 -1.569 1.504 100 -2.498 1712.608 -0.001 -4.714 4.804

150 0.505 33.944 0.015 -3.899 4.322

200 0.315 13.208 0.024 -1.573 2.462

300 0.229 6.631 0.035 -0.331 1.251

第 7-1A 表 COST1の固定効果モデルの推定値から計算された規模の経済

(27)

全体の範囲の経済(CPG)

% CPG 標準誤差 t値 下側 2.5% 上側 2.5%

10 3.831 1.576 2.430 2.562 7.696

25 -12.725 4335.361 -0.003 -85.229 103.711

50 -1.643 76.657 -0.021 -9.480 -0.750 100 -0.616 3.527 -0.175 -1.876 -0.332 150 -0.357 1.122 -0.318 -1.028 -0.089 200 -0.207 0.272 -0.761 -0.838 0.220

300 0.108 4.841 0.022 -1.295 1.733

学部の範囲の経済(CP1)

% CP1 標準誤差 t値 下側 2.5% 上側 2.5%

10 1.915 0.746 2.568 1.278 3.799

25 -6.349 1052.128 -0.006 -48.196 47.490 50 -0.814 585.015 -0.001 -4.802 -0.341 100 -0.296 0.791 -0.374 -1.057 -0.095 150 -0.159 0.577 -0.275 -0.654 0.137 200 -0.073 0.308 -0.236 -0.669 0.441

300 0.133 4.670 0.029 -1.264 2.004

大学院の範囲の経済(CP2)

% CP2 標準誤差 t値 下側 2.5% 上側 2.5%

10 1.916 0.803 2.386 1.288 3.805

25 -6.374 1295.827 -0.005 -52.429 37.133 50 -0.828 18.094 -0.046 -4.638 -0.362 100 -0.318 1.006 -0.316 -1.056 -0.136 150 -0.195 0.353 -0.553 -0.675 0.051 200 -0.129 2.488 -0.052 -0.749 0.270 300 -0.011 2.879 -0.004 -1.594 1.158 研究の範囲の経済(CP3)

% CP3 標準誤差 t値 下側 2.5% 上側 2.5%

10 1.913 1.071 1.787 1.289 3.750

25 -6.311 1864.959 -0.003 -45.169 43.142 50 -0.794 23.421 -0.034 -4.391 -0.349 100 -0.262 4.057 -0.065 -0.754 -0.147 150 -0.104 0.122 -0.853 -0.308 0.004

200 0.012 0.121 0.099 -0.170 0.240

300 0.349 22.825 0.015 -0.101 1.748

第 7-1B 表 COST1の固定効果モデルの推定値から計算された範囲の経済

(28)

全体の規模の経済(SRY-1)

% SRY-1 標準誤差 t値 下側2.5% 上側 2.5%

10 -7.933 1142.991 -0.007 -76.122 76.787 25 -3.844 337.069 -0.011 -42.294 33.536 50 -2.889 81.024 -0.036 -27.001 25.215

100 0.318 20.952 0.015 -5.796 5.906

150 -0.538 3.244 -0.166 -1.627 0.428 200 -0.600 0.318 -1.888 -0.997 0.154 300 -0.597 2.294 -0.260 -0.760 -0.080 学部の規模の経済(SC1-1)

% SC1-1 標準誤差 t値 下側 2.5% 上側 2.5%

10 0.107 3.494 0.031 -0.556 0.706

25 0.377 19.953 0.019 -1.944 2.356

50 2.374 54.585 0.043 -7.735 7.699

100 -1.437 220.061 -0.007 -25.067 16.269 150 -0.936 0.547 -1.712 -2.104 0.016 200 -0.797 0.341 -2.336 -1.310 0.011 300 -0.694 0.474 -1.464 -0.976 0.023 大学院の規模の経済(SC2-1)

% SC2 標準誤差 t値 下側 2.5% 上側 2.5%

10 0.078 1.069 0.073 0.011 0.449

25 0.220 5.868 0.037 -0.279 1.427

50 0.558 23.692 0.024 -1.133 3.624

100 2.439 316.366 0.008 -15.974 22.061

150 -19.786 623.730 -0.032 -101.143 90.734 200 -3.561 171.620 -0.021 -25.312 14.658 300 -1.957 59.413 -0.033 -9.961 -0.409 研究の規模の経済(SC3-1)

% SC3-1 標準誤差 t値 下側 2.5% 上側 2.5%

10 0.338 1.787 0.189 -0.702 0.771

25 0.475 10.304 0.046 -1.973 1.739

50 0.550 52.082 0.011 -3.780 3.165

100 0.597 139.663 0.004 -4.565 5.544

150 0.615 29.501 0.021 -5.249 5.373

200 0.624 996719.657 6.25×10-7 -5.603 6.245

300 0.633 1230.081 0.001 -5.980 6.161

第 7-2A 表 COST2の固定効果モデルの推定値から計算された規模の経済

(29)

全体の範囲の経済(CPG)

% CPG 標準誤差 t値 下側 2.5% 上側 2.5%

10 2.313 0.312 7.413 1.857 3.065

25 2.893 19.671 0.147 1.653 9.597

50 4.102 172.413 0.024 -36.225 41.037

100 5.084 149.799 0.034 -42.268 43.959

150 3.236 484.204 0.007 -28.227 34.489

200 1.991 48.821 0.041 -5.200 15.279

300 1.085 0.626 1.734 0.178 2.619

学部の範囲の経済(CP1)

% CP1 標準誤差 t値 下側 2.5% 上側 2.5%

10 1.156 0.154 7.493 0.926 1.528

25 1.445 18.783 0.077 0.830 4.840

50 2.042 847.022 0.002 -18.266 21.628

100 2.503 2375.472 0.001 -20.660 20.923

150 1.571 178.890 0.009 -14.317 17.633

200 0.953 64.677 0.015 -3.665 8.326

300 0.508 0.574 0.886 -0.311 1.908

大学院の範囲の経済(CP2)

% CP2 標準誤差 t値 下側 2.5% 上側 2.5%

10 1.159 0.155 7.473 0.926 1.532

25 1.464 25.867 0.057 0.838 5.083

50 2.147 289.558 0.007 -21.797 21.953

100 2.963 190.334 0.016 -24.142 23.734

150 2.127 62.604 0.034 -19.194 22.237

200 1.452 177.405 0.008 -3.559 9.747

300 0.913 0.561 1.627 -0.078 2.155

研究の範囲の経済(CP3)

% CP3 標準誤差 t値 下側 2.5% 上側 2.5%

10 1.156 0.157 7.352 0.928 1.548

25 1.446 7.070 0.205 0.824 4.992

50 2.050 124.258 0.016 -17.613 22.670

100 2.535 144.156 0.018 -18.816 22.327

150 1.610 251.963 0.006 -16.537 16.727

200 0.988 28.432 0.035 -1.349 7.751

300 0.536 0.286 1.878 0.152 1.244

第 7-2B 表 COST2の固定効果モデルの推定値から計算された範囲の経済

(30)

らされる.このことは,対象期間において国立大学で建物などの新設が相次 いだ可能性を窺わせるものであり,この面では必ずしも費用削減は行われて いないことになる.

 第 7-2A 表には,第6-2表の固定効果モデルから計算した規模の経済が示 されている.これをみると,全体も個別も統計的有意性まで含めて考えると,

大学院の規模の経済について規模10%の小規模大学に関しては認められる可 能性はあるものの,他については認められない.

 第 7-2B 表には,第6-2表の固定効果モデルから計算した範囲の経済が示さ れている.全体と個別のいずれについてもすべての点推定値はプラスで計測 されている.しかし,統計的有意性まで含めて考えると,大学の規模が平均

の10%ないしは25%以下の小規模な大学において全体と学部,大学院,研究

の範囲の経済が認められ,全体と研究の範囲の経済については300%の大規 模な大学においても認められる.

5 ま と め

 本稿では,国立大学法人法により設置された90の国立大学法人と大学共同 利用機関法人の2004年度から2006年度のデータを対象に費用関数を推定し,

規模と範囲の経済を計測した.先行研究に対して,本研究では3つの新たな 試みを行った.第1に費用のデータについて,従来のような経常費用ととも に資本コストを含む分析を行った.第2に従来用いられてきたFFCQモデル とともに,パネル・データ分析で用いられる固定効果モデルや変量効果モデ ルを試みた.第3に規模や範囲の経済を計算するだけではなく,ブートスト ラップ法を応用してその標準誤差や信頼区間も計算し,統計学的に支持され るかどうかを検証した.

 はじめに,本研究が対象とするサンプルデータについて,従来と同じ経常 費用とFFCQモデルを用いると先行研究とほぼ同様の結果を得ることを確認 した.すなわち,全体の規模の経済は平均の150%以上の大規模な国立大学

(31)

を除いて存在し,全体の範囲の経済も平均規模の大学までは存在する,とい うものである.

 しかし,先に述べたようにモデルをより一般的なものに拡張し,データに 資本コストを含めると結果は大きく変化した.費用の定義に関係なく,FFCQ モデル,固定効果モデル,変量効果モデルの3つの中から仮説検定により固 定効果モデルが選択された.費用を経常費用+臨時損失とするCOST1の固定 効果モデルでは,次のような結果を得た.

 (1) 全体の規模の経済は,大学の規模に関係なく存在しない.

 (2) 個別の規模の経済は,学部教育について中規模以下の大学で存在する 可能性があるが,それ以外は存在しない.

 (3) 範囲の経済は,全体・個別ともに非常に小規模な大学にだけ存在する.

 さらに,費用に資本コストを加えたCOST2の固定効果モデルでは,次のよ うな結果を得た.

 (4) 全体の規模の経済は,COST1の場合と同様に大学の規模に関係なく 存在しない.

 (5) 個別の規模の経済は,大学院教育について非常に小規模な大学で存在 する可能性があるが,それ以外は存在しない.

 (6) 範囲の経済は,一部の例外を除くと全体・個別ともに小規模な大学に だけ存在する.

 (7) 資本コストを費用に含むCOST2では,経常費用を主とするCOST1 で観察された時点ダミーによる費用削減圧力が消え,逆に2005年度,

2006年度と費用増大の傾向がみられる.

 したがって,FFCQモデルを使って計測されたわが国の国立大学の規模と

(32)

範囲の経済の存在は特定化の誤りによる可能性がある.FFCQよりも一般化 され,仮説検定によって支持された固定効果モデルの結果によると,全体の 規模の経済はどのような規模の大学においても存在せず,範囲の経済につい ても非常に規模の小さな大学にだけ存在する可能性が高い,という結果を得 た.

 ただし,固定効果モデルの結果については,その解釈にあたり十分な注意 を要する8).第1図から第5図でもみたように,わが国の国立大学はその規模 に関して非常に格差が大きい.このような状況では,固定効果が大学間の費 用の違いの大半を吸収し,費用関数における説明変数の影響を分析しにくく している可能性がある.この点からは,固定効果を考慮した本稿の推定が規 模の経済性について否定的な結果を導いたことはある程度予想できる.本稿 では,固定効果モデルかそれを考慮しない従来のFFCQモデルか,という問 題に対して,統計学的なモデル選択の検定により固定効果モデルを選択した.

 この結果の裏を返せば,規模の経済性を計測した従来の研究は,個々の大 学に固有の歴史や伝統,立地など有形・無形の大学固有の特性を十分に反映 していない可能性を指摘できる.もしそうだとすれば,たとえそうしたモデ ルで規模の経済性が計測されたとしても,特定の大学の規模をそのまま大き くしても,計測どおりの経済性は発揮されないことになる.

 本稿の結果は,従来の研究で計測された大学の規模の経済の存在と,それ を根拠とする大学の統合や大規模化といった政策的対応に疑念を投げかける ものである.また,近年指摘されている国立大学への歳出削減の圧力は経常 費用に関しては認められるものの,資本コストまで含めるとむしろ費用増大 の方向が2005年度,2006年度と観察されたことも興味深い.

 しかし,残された課題も多い.第1は,大学固有の要因をさらに特定化す ることである.いくつかの先行研究が行っているように,理系・文系といっ た大学の学部構成や都市部とその他地域のような立地を特定化できる変数を

8) ここで述べる固定効果モデルの問題点については,レフェリーにご指摘いただいた.

(33)

加えることが考えられる.第2は,他の関数型について試みることである.個々 のパラメータの有意性を高め,多重共線性を避けて推定の精度を高めるため に,トランスログ型費用関数やCES型費用関数など他の関数型を試みること も考えられる.第3は,生産物の質を考慮することである.教育成果や研究 成果の質をはかるということは,それ自体が難問である.しかし,そこを敢 えて行うならば,入試の難易度や研究については論文数や引用頻度などを代 理変数としてモデルに組み込むことも考えられよう.こうした問題を,今後 の研究で改善したい.

【参考文献】

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参照

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