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〈論 説 〉
低 成 長 経 済 下 の企 業 財 務 の 動 向
小 林 康 宏
目 次 1は,じ めに
H低 成 長経済 下の財務構 造 α)収 益構造 の変化
② 安全 性比率 の改善 (3)金 融 費用 の削減 皿 資本調達構造 の変化
11)資 本調達構造 の概 観
② 資本調達の 多様化,国 際化 N資 本運 用の特徴
〔1)手 元流動性比率の増加 と分散投 資 (2}金 融 収支 率の上 昇 と財務体質 の強化 V結 び にかえて
1は じめ に
わが 国経 済 が 昭和48年 の第1次 オ イル ・シ ョック,さ らには変 動 相場制 へ の 移行 な ど国際的 な経 済,金 融上 の変 動 を契機 に低 成 長経 済へ の転 換を 余儀 な く され た こ とは周知 の ことで あ る。 企業 経営 は この時期 か ら確 実 に低成 長経 済へ の対 応 を強 い られ・ 従来 か らの成 長主 義 的政 策 の修 正,さ らには経 営 体質 の一一 層 の減 量 化 を迫 られ る こ とにな った。
特 に企 業 の財務 政策 や財 務構 造 は,高 度 成長 期 と比べ て著 し く変 貌 を とげ て い る。 資 本構 成 の是 正は わが 国企業 財 務 の従来 か らの 課題 であ った が,昭 和50 年以 降か ら企 業 の 自己 金融 力,及 び 自己資本 比率 の増 大 に よって財 務体質 の改
2商 経 論 叢 第25巻 第1号
善 をは か り低 成 長経 済に 対 応 し よ うとい う方 向 が とられた。 そ して これ は,現 実資 本 の動 きの面 では減 量 化 の徹底 に よ り資本 の 回転率 をた かめ て収 益構 造 の 改善 を はか りr他 方 では擬 制 資本 の運 動 を利用 す るが,特 に 内外資 本市場 を 通 じて低 コス トで資本調 達 を行 ない 財務体 質 の充 実 をは か る とい う方 向であ った。
そ こで本稿 の課題 は,昭 和50年 代 の低 成 長経 済下 で の企業 の財 務政 策 と財 務 構 造 の変化 を 明 らかにす る こ とで あ る。 まず は じめ には現 実 資本 の運 動す なわ ち実 際 の企 業活 動に お け る収 益構 造 が高 度成長 期 と比 較 して どの よ うに変 化 し た か を 明 らか にす る。 そ の場 合 に減 量経 営 の下 で一 貫 して増 加傾 向にあ る 自己 資本比 率 に焦 点を あ てて検 討す る。 第2に は低 成長 経済 へ の移行 とと もに著 し く変 貌 を とげた資 本調 達 方法 の 問題 に つい て であ る。 特に近 年 の金 融 の 自由化, 国際 化 が進 む 中で企 業の 資本 調達 政策 は一 段 と多様 化,国 際化 の様 相 を強 め て い るが,そ れ らは企 業 の 自己 資本 の充 実 と無 関係 で はな い点 は強調 され ねば な らない 事柄 で あ る。 さ らに 第3に は低 成 長経 済下 で の企業 の手 元流 動性 の増 大, 余剰 資 金 の増 加は,低 金 利 の下 で有 利 な投 資機会 を 求め て よ り一 層,資 本 運用 上 の多 様 化を もた らし てい る こ とであ る。 金利選 好 色 を強 めた 短期 的 な金融 資 産 投 資 が,資 本市 場 の 国際化 の進 展す る中 で一 段 と活 発化 しつ つ あ る。 低成 長 経済 下 にお け る企 業 の財 務体 質 の改善 が 金融 の 自由化 や擬 制資 本 運動 の 国際的 展 開 の中 で促進 され てい る ことは特 に認 識 され ねぽ な らない こ とであ る。
皿 低成長経済下 の財務構 造
(1)収 益構 造 の変 化
現 実 の企業 活動 は,経 済 社 会に お い ては,た えず 激 しい企 業間 競争 の 中で営 まれ る。 従 って企業 はそ の競 争関 係 の中 で少 な くとも社 会 的 な平 均利 潤率 以上 の成 果 を あげ る ことが基 本原 則 とな る。 それ に は常 に生産 技術上 の優 位性 を 確 保 し大 規模 生産 体制 の確 立 をは か り,ま た市場 シ ェアの拡 大を はか らなけれ ば な らない。 さ らには信用 制 度 の利用 に よって一 層 の資本 の集 中を達成 しな けれ ば な らない。 これ らの企 業行動 は不 況 の時 期に は よ り強 くな るが,そ れ らは企 業 の総 合 的 な 目標 で あ る総 資本 利益 率 の増大 と結び つか な けれぽ意 味 が ない。
低成長経済下の企業財務の動向3
この総 資本 利 益率 とは既 に知 られ てい る よ うに 売上 高利 益 率 と資本 の回転 率か ら構成(両 者の積)さ れ てい るが,一 方 の売上 高利 益 率 は 企業 の 収益 力 を直 接 的 に表示 す るもの で あ り,他 方 の 資本 回転 率 は資本(総 資産)の 運用 効 率 を示
(1)
す 比率 であ る。 ソ胃モ ソ(So1。m・n)に よれば,こ の資本 利益 率 は将 来 の期待 収 益 の評価 を判 定す る基準 としては十 分 な もの では ない が,既 存 の投 資 の収益 性
または現 在 の業 績評 価 の基 準 としては有 効性 を もつ もの であ る。
そ こで まず は じめ に低 成長経 済 下 で減 量経 営 が実 施 され た時 期 に,企 業 の収 益構 造 が どの よ うに変 化 したか を それ らの比 率 の動 きを 中心 に み てお こ う。 高 度成 長 期 と比較 す る こ とに よってそ の変 化は 鮮 明 とな る。
第1図 は,わ が 国企 業(製 造業)の 昭和30年 以降 の 収益 率 の 動 きを示 した も のであ る(利 益はすべて経常利益を用いている)。
昭和40年 代 後 半か ら総 資 本利 益 率は 極度 に 減 少 し48年 の石 油 シ ョックを境 に して戦後 の 高度 成長 が終 り,50年 以降 か ら低 成 長 経済 へ転 化 した こ とが は っき
りと示 され てい る。 その 間 の各 比 率 には 著 しい変 化 がみ られ る。
高度成 長期 では,総 資本利 益 率 はそ の間 の各不 況 期 を除 い て平 均 して 高率 で あ った。 また 売上 高利 益 率は 経済 成 長 を反映 して総 資本 利 益率 を 上 まわ った 高 さで 推移 してい る こ とは 注 目され ね ば な らない。 しか しな が ら他方 では総 資本 回転 率 はそれ とは逆 に低 く1.0回 を下 まわ った低 率 であ った。 従 って高度 成長 期 の総 資本利 益 率 の高 さは,旺 盛 な設 備投 資 に支 え られた 売上 高 利益 率 の貢 献 に よる もの で あ った。
しか しな が ら低 成長 経済 へ の移 行 に よって収益 構 造は それ まで とは全 く様 変 りし,各 比 率 とも対 称 的 な変 化 を示 してい る。
例 えぽ総 資 本利 益 率 は 昭和48年 上 期 の6.13%を 境 に 下 落 し,50年 下期 で は 0.53%に ま で落込 み オ イル ・シ ョックの影 響 がは っ き りと表 われ てい る。 そ の 後 は55年 上 期 の5.86%の 回復 ま では低 迷 を続 けた 。そ し て第2次 オ イル ・シ ョッ クに よって58年 の3.59%に まで再 度低 下 し59年 と60年 上期 には5%を 越 えた も
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のの62年 まで停滞 を続 け た。 確実 に低成 長 経済 の定 着 した こ とが 明 らか であ る。
高 度成長 期 と比ぺ た 大 きな違 いは,売 上 高利 益率 が 常 に総 資 本利 益率 を 下 ま
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低成長経済下の企業財務の動向5
わ ってい る こ とで あ る。 そ して これ とは逆 に総 資本 回転 率が低 成 長経 済 へ の移 行 と同時 に上 昇 しは じめ,各 年 度 と もLO回 を越 え る よ うに な った こ とで あ る
。 つ ま り企 業は,50年 代 の減量 経営 の下 で売上 高 利益 率 の低 下 を資本 回転 率 を速 め る こ とに よって カバー し,そ の こ とに よって総資 本利 益 率 を支 えた とい
って よい であ ろ う。
さて投下 され た資 本は 資産 形態 で運用 され るか ら,こ の総 資本 回転 率は 固定 資産 回転 率 と流 動 資産 回転 率 に分 け られ る。 後 者 は さ らに棚 卸資産 回転 率 と売 上 債 権 を中 心 とした 当座 資産 回転 率 に分 け られ る。
松 本和 男氏 は,減 量 経営 の下 での 資 本 回転 率 の上 昇につ い て次 の よ うに述べ てい る。
固定 資産 回転 率 の上 昇 は 「第1次 オ イル ・シ3ッ ク以降 の需 要低 迷 で企 業 が 工場集 約 化,生 産 能 力 の縮 小 な ど減量 に努 め る一方,設 備投 資 も合 理 化,省 力 化や簸 品開発が中心にな り,総 じて能力増強投資は抑え られてき乱 ことに よる。 また 棚卸 資産 回転 率は 減 量化 へ の努 力 に よって固定 費比 率を 低下 させ, それ を背 景 として減産 へ の対 応 に よって在庫 の圧 縮 がは か られ,よ り厳 しい在 庫管 理 が コン ピ ュー タやOA機 器 の導 入 に よ り可能 とな って上 昇 した。 さらに 当座 資産 の 中で も主要 な 売 上 債権 回転率 の 上昇 も見 落 しえ な い。 企 業 は,「 減 速 経済 下 に おけ る貸 倒れ の多発 を 回避 す るた めに,売 上債 権 の 回収 を早 め,減 量経 営,効 率 経営 の追 求の 下 で売上 代 金 の早期 回収 」 を 行 ない ,ま た他 方 では
「原 材料 や 商品 の支払 いを 手形 か ら現金 に切 り換 え る ことで 仕 入 れ コス トの切
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下 げ を」 は か る こ とに よって資 本 の 回転 を早 めた といえ る。
わ が 国企 業 は,こ の よ うに して利 益 獲 得 の機会 が狭 隙化 した経済 状 況 にお い て人 件費 は もち ろ んの こ と製造 原価 の切 下 げ,更 に は金 融 費用 の 削減 をは か る な ど企 業全 体 の 固定 費を極 力 切 り下 げ る ことに よ って高度 成 長期 に 肥大化 した 企業 体 質 の構造 的 な改善 を はか った。 それ は具 体 的 には各 種 資産 の運用 効 率 を た かめ,そ の 回転 率 を加速 化 し投 下 資本 の 早期 回収 に 努 め る こ とに よって現実 資本 の循環 運動 を 早 め る こ とであ った が,こ の こ とは減 量経営 下 での企 業 財務 の 目標 が財 務 流動性 の維持 に置か れ てい た こ とを意味 してい る。
6商 経 論 叢 第25巻 第1号
② 安 全性 比率 の改 善
低成 長 経済下 での企 業 の減 量経営 す なわ ち効率 的経営 へ の努 力が財 務構 造 の 安全性 比 率に どの よ うに表 わ れ てい るか を検 討す る ことが ここでの課題 であ る。
第2図 は,わ が 国製造業(資 本金10億 円以上の上場企業及び非 上場の有力企業を含む 380社)の 安全 性 比率 を示 してい る(自 己資本比率は後に触れる)。
固定比率(一 習書舞 ×・)は 調 定資産が どれだけの 自己資本で賄われて い るか を表わ す基 準 であ り,自 己 資本 に 対す る固定 資産 の割 合 を示 した比率 で あ る。 通常 この比率 は100%以 下 が安全 基 準 とされ てい るが,し か しそれ は業 種 や企 業 規模 に よって異 な る。 固定 資産 は周 知 の如 くその 回転 期 間 が1年 を越 え長 期 に亙 る もの であ るか ら設備 投 資 な どの 固定 的 投 資は それだ け資 本 の回転 を遅 延 せ しめ る。 従 って 固定 資産 第2図 安全性比率(製 造業)
try
200
150
100
(130.03) (124.5)
(%)1
投 資 は で きるだけ 返済 義 務の ない 自己資本 で 充足 され るべ きであ る が,短 期 の流動 負債 で賄 われ る場 合 に は財 務流 動性 が阻害 され る と
い う事態 も生 じ る。 固定 比率 の推 移 を み る と54年 の185.92%か ら62
(%)年 に は124.55%)̀Yま で 改 善 さ れ て 400
300
200 {201.78)
90 80 70(75,22/
so
50」̲一̲̲L̲.⊥‑
H召禾iユ545556575859606162 53年
(資 料)
い る。40年 代後 半 には220%を 越 え ていた ことを考 えれ ぽ50年 代 の 改善 ぶ りがい かに 著 しか ったか が 明 らか と な る。 この 比 率 の 低下 (改善)は 自己 資本 の増 加を 意味 す るか ら,減 量経営 の下 でそれ だけ 資 本(自 己資本)の 質 的 な 充 実 が は か られ た といaる であ ろ う。
また瀬 比率(=流 動資産 ×1流動負債) 和騰 篠 継 腰 灘 営分析』昭 は5・年代:rし て緩やかではあ る
低成長経済下の企業財務の動向7
が上 昇傾 向を 辿 った。 この比 率は 企業 の 資金 繰 りや 支払 能 力を 判定 す る短 期 の 安全 性基 準 で あ る。 それ は200%以 上(流 動資産2;流 動負債1)が 望 ま しい とい われ てい るが,し か しそれ は あ くまで も理 想 の基 準 であ って200%を 越 え る企 業 はわ が国 では ほ とん どみ られ な い。1年 以 内 に支 払期 限 が到来 す る短 期 負債 を賄 うため の流 動 資産 が どれ だけ保 有 され て い るか を示 す基 準 であ るか ら多 い 方が 安全 性は 高 くなる。 昭和40年 代後 半 か ら50年 代 中 頃 ま では110%前 後 で推 移 してい るが58年 以降か ら上 昇傾 向を示 し62年 に は130.03%に まで高 ま った。
この上 昇 は,特 に50年 代 後半 か らの企業 の 手元 流動性 の増 大 と関係 が深 い。
安全性比率の中でも負債騨(一 晶 薮x…)眼 も著し咬 化を示して
い る。 これ は企 業 資本 に おい て 負債 が 自己 資本 の どの くらい の割 合 を 占め てい るかを表 わ した もの であ り資本 構成 の状 況 を示 した比 率 であ る。 これ は 理想 の 基 準100%以 下 とされ てい るが低 下傾 向に あ る こ とはsそ れ だけ利 子 負担 が 軽 減 され 自己 資本 の増 加 と と もに企業 の資本 蓄積 力 が増 大 した こ とを意 味 し てい る。 昭和40年 代後 半 には 借 入金偏 重 の財 務構 造 であ った為 に400%を 越iて い た 。特 に50年 に は501.97%に も達 してい た が そ の 後 急速 に 低 下 し,62年 に は 201.78%に まで改 善 され た こ とが示 され てい る。 減 量経営 下 でそれ だ け他 人資 本依 存 の財 務 体質 が 自己 資本 の増 加 と と もに改 善 され た ことが,比 率 の急 激 な 低下 の要 因 として指摘 す る ことが で きる。
固定長髄 鰹(一 自己讃 犠 簸 ×1・ ・)を ま凋 定資産 と長鯛 定的資本
(自己資本+長 期負債)と の 関係 を示 した比 率 であ って100%以 下 が 望 ま し い。 固 定 資産 は既 に みた よ うに長 期性 資産 であ り長期 間 に亙 り現 金 を拘束 す る性 質 が あ るた め に,そ れ へ の投 下 資金 は 自己 資本,社 債 や長 期 借入 金 を充 当す る こ と が原 則 であ る。 この比率 が100%を 越 えた場 合に は短 期 負債 が投 下 され た こ と に な り,企 業 の財 務 流動 性 は著 し く悪 化 し財 務的 な危 険性 が 増大 す る。 従 って これ は資 本 の運用 と調 達 の適 合 関係 が 適切 に維 持 され てい るか否 か の基 準 で も あ る。 昭和40年 代 では88%前 後 で あ ったが,54年 には86.34%そ の後 は緩 や か に低 下 し62年 には75.22%に まで改 善 され てい る。(5l
以 上 の ことか ら各 安全 性比 率 はs低 成長 経 済 が本 格化 してい く50年 代 に おい
8商 経 論 叢 第25巻 第1号
て緩 やか では あ るが 改善 の 方 向へ と変化 した。 と くに53年 以降 か ら企業 の減 量 経営 の徹 底 と効率 的経 営 の 浸透 の効 果 が各 比率 に表 われ てい るが,と くに 負債 比率 は 高度成 長 期 と比較 すれ ば最 も改善 の著 しい比 率 であ った。 それ は各比 率 に も共 通 して言 え る こ とで あ るが,経 営 の減量 化 をすす め る中で 負債部 分 と く に金 融費用 の負担 が極 力 軽減 され た こと,同 時 に量産 投 資 のた め の設備 投 資 が 手控 え られ た こ とが 自己 資本 の増 加に 繋 った と考 え る ことが で きる。
(3)金 融 費用 の削 減
経営 の減 量 化 のい ま1つ の特 徴 は 金融 費用 の削減 であ った。 利益 率 が低下 傾 向を 辿 る中 では金 融 費用す なわ ち支 払金利 は加重 な負担 であ る ことは い うまで もな い。 特 に利 益 率 が利 子率 を下 まわ る状 況 にお い ては,金 融 費用 は 固定 費 の 増 加 を もた らす か らそ れだ け で資 金繰 りを 圧 迫す る。 資 本 の所 有 と機能 の矛 盾, 対立 が表面 化 して くるが,投 資 資 金 を負債 の返済 に まわ し金 利 負担 の軽 減 をは か る こ とに よって借 入 金偏 重 の財 務体 質か らの脱 却 とい う財 務面 での減 量化 が とられ た。 第3図 は金 融 負債 と総 資 本 との 関係 を示 した 比率 で あ るが,こ れ は 企業 の借入 金依 存度 を あ らわ してい る。昭和40年 代 及 び50年 代前 半 ま では,48年
のオ イル ・シ ョ ックの時期 を 除 き45%を 越 え るほ どであ った が,そ の後54年 か
第3図 金融負債対総資本 比率(借 入金 依存度)%(製 造業) (%)
000432
10 昭 和 46年 (資料)
4748495051525354555fi575859606162
日本 銀 行 調査 統 計 局 『主 要 企 業 経営 分析 』 昭和55年 版,62年 版 よ り作成 。
低成長経済下の企業財務の動向9
ら減 量 化 の効 果が あ らわれ 昭 和62年 には34.?8ま でに 改善 がす す ん だ ことが 示 され て い る。 この 借入 金依 存 度 の低 下 は 金融 負債 あ るい は 有利 子 負債 の圧 縮 を意 味 し てい るが,と くに短 期 ・長 期 の借 入 金の 削減 に よる ところが大 きい。 そ の こ とは 大企 業 の製造 業 に おい ては,資 本調 達 に 占め る借 入金 比 率が低 下 し融 資 関 係に おい ては企 業 の銀行 離 れ がそ れだ けす す ん でい る こ とを意 味 してい る。
また 次 の第4図 は 企業 の借 入金利 子 率(金 融費用対金融負債比率)を 示 し た も ので あ るが,第1次 オ イル ・シ ョ ック直後 の49年 に10.66%と ピ ー クに 達 し た後,減 量 経営 下 に おい て低 下 し 第2次 オ イル ・シ ョ ッ ク後 の55年 に は再 び 1α23%ま で増 加 した が,62年 の5.40%ま で低下 しつ づけ てい る。 特 に55年 以 降か らの比 率低下 は著 し く,第3図 と合 わせ て考}れ ば金 融 負債 の圧 縮 と金 利 負担 の 軽減 が一 段 とすす んだ こ とが 明 らか であ る。
以 上 の ことか ら低 成 長経 済 へ の移 行 と と もに収 益 力 の低下 に直面 したわ が 国 企 業 に と っては,高 度成 長 期 に肥大 化 した 借 入金 依存 の財 務構 造か らいか に脱 却 しxそ の財 務体 質 の 改善 をは か るか が緊 急 の課 題 であ った。 と りわ け製造 業 を中 心 とした大企 業 に おい ては 量的 拡 大 の固定 資産 投 資 を抑 え,合 理 化,省 工
第4図 金融費用対金融負債比率(製 造業) (%)
(5.40)
日召禾日47484950515253545556575859606162 46年
(資 料)第3図 と同 じ 資 料 よ り作 成 。
10商 経 論 叢 第25巻 第1号
ネ投資,新 製 品 開発 投資 へ ふ り替 え る こ とに よって,ま た投 資 の抑制 か ら在 庫 品等 の圧 縮 とFA化,OA化 に よるそれ らの合 理的 な管 理 を実施 す る ことに よ って,各 種 資産 の 回転 率を はや め投 下資 金 の早 期 回収 をは か るな どそ の財 務流 動 性 の維持 に努 め た。 と くに 金融 負債 と金 利 負担 の軽 減 に よる金 融費 用 の減少 は 自己資 本 比率 の増 加 に大 き く寄与 し,そ れ が企 業 の財 務体 質 の改善 す なわ ち 自己資 本比 率 と資本 蓄 積 力の増 加 に繋 った とい}る であ ろ う。 企業 の利益 率 が 減 速経 済へ の 移行 と同時 に低 迷 してい る中で,自 己 資本比 率 が上 昇 しは じめ る の も以上 の よ うな理 由か らであ る。 しか しなが ら この よ うに利益 獲 得 の機 会 が 狭 隙化 し,利 益 率 の増 加が 期待 で きな い収益 構造 の下 で の 自己 資本 比率 の増 大 が,果 して真 に財 務体 質 の改善 とい え るか ど うか は 問題 であ る。 本業 で の利益 が薄 く,利 益 が伸 びず に 自己 資本 だ け が上昇傾 向に あ る とい う財 務構 造 は,借 入金 偏重 の 財務体 質 か らの脱 却 とし て手放 しで評価 で きる ものでは な い。 自己 資 本比 率 の増加 を どの よ うに利 益 率 の 向上 に 結び つけ てい くか が今後 の財 務上
の課 題 で あ る。
さて この よ うな低 成長 経済 下 で の 自己資 本 の増 加 は,資 本 調達 構造 と関連 性 が深 い が その状 況を 次 に 明 らかに してお こ う。
皿 資本 調達構 造の変化
(1)資 本 調 達構 造 の概 観
わ が国大 企業 の企 業財 務 は,低 成 長 経済 の定 着 と と もに 大 き く変 貌 した。 既 に 知 られ てい る よ うに,資 本 調達 に おい ては,従 来か らの借 入依存 の間接 金融 か ら証 券 発行 に よる直 接 金融 と自己 金融体 制 へ の移行 であ る。 と くに企業 は近 年 の金融 の 自由化,国 際化 の進 展す る中 で内外 証券 市場 におい て低 コス トでの 資 本調達 を 可能 とし,ま た 高株 価状 況下 で時価 発 行増 資を行 な うな ど,資 本 市 場 へ の ウ ェイ トを 一 段 と強 めて い る。
他 方,資 本 運用 に おい ては 利 益率 の鈍 化 と企業 リス クの増大)/Y対応 して 「収 益 の安 定化 や 金利支 払能 力 を適 正 水準 に維 持す る よ うに・金 利 な どの固定 費 削
減 に努力 す るか たわ ら,金 利 選 好を 強め て金 融資産 運 用 の効率 化」 を 図 るな ど
低 成 長 経 済 下 の企 業 財務 の動 向11
金融 収益 の取 得 に,す なわ ち短 期 的 な金 融 資産 で の運用 にそ の比重 をたか め て い る。 そ して低 金利 状 況は 金 融資産 投 資 の一 層 の多 様化 を生 じ させ てい る。
そ こで まず は じめ にわ が 国 の資金 循 環構造 か ら各経 済 部門 と くに 法人 企業 部 門 の投 資状況 を 捉え てお こ う。 第5図 を み る と法 人 企業 部門 は,40年 代 には 最 大 の 資金 不足(投 資超過)に あ った が,第1次 オ イル ・シ ョ ック以後,縮 小 傾 向を 辿 った。 また海 外部 門 が50年 代 の後 半 か らの企 業 の海 外 進 出す なわ ち海 外 直接 投資 の急 増 に よ り資 金不 足 に 陥 り,と くに60年 代 に 入 っ てか らは最 大 の資 金 不足 部 門 とな ってい る ことは近 年 の特 徴 で あ ろ う。
さて40年 代 の 法人 企 業 部 門 の 資金 不足(投 資超過)は,景 気 拡 大 の中 で 旺盛 な民 間設備 投 資 と低金 利政 策 に よる ところが大 きか った。 そ のた め に企 業 の資 本 蓄積 は設 備 投資 の増 加 に追 いつ かず 銀 行借 入 金 で賄 った ことはわ れ われ の知 る ところであ る。 期待 利 益率 が 高 くまた 低金 利 政策 の下 での利 子 率 の低 下 は, 負 債 の レバ レ ッジ効果(負 債の利用に よる自己資本利益率の上昇)を もた らす か ら 借 入金依 存 の調達 構造 は 企業 に とって有 利 に作 用 していた こと もよ く知 られ て
い る。
しか し2度 にわ た るオ イル ・シ ョ ックに よ って本 格 化 した低 成 長経 済 と イン フ レ抑 制 のた めに とられ た高 金利 政策 は,企 業 の利 益 率 の鈍化 と借 入金利 子 率 の上 昇を もた らし金融 費用 の負担 を増 大 せ しめ た。 そ の こ とに よって企業 の支 払能 力 の不足 と資 金繰 りの逼 迫 が 財 務体 質 を悪 化せ しめた た めに,財 務流 動性 の維 持や 運転 資本 の管理 に努 め る こ とに よって各 種 資産 の 回転 率 を 加速 化 しそ の運 用 効率 を はか る こ とが財 務上 の 課題 に な った こ とは す で に述べ た と ころで
もあ る。
第6図 は低 成長 経 済 の下 で の収 益 率 と調達 金 利 の推 移 を示 してい るが,48年 以降 か ら借 入金 利子 率 が平 均 して利益 率 を越 え た状 況 が 明 らか で あ る。 この よ
うに期 待収 益率 が 金利 水 準を下 まわ る状 況 では,借 入れ 等 の外 部 負債 の増 加 を テ コに して利益 を 高め て い く負債 の レバ レ ッジ効果 は逆 に 作用 す るた め に,企 業 に とっては 負債 削減へ の イン セ ソテ ィブが 一 層強 く働 き,企 業経 営 の 安定 化 を はか るた め に負 債比 率 の低下=自 己資本 の充 実 とい う財 務体 質 の改善 の方 向
商 経 論 叢 第25巻 第1号 12
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低成 長経 済 下 の 企業 財務 の動 向13
第6図 自己資本 比率,収 益率,金 利 の動 向(製 造業)
殉35(
30
25
20
15 (%)11
10
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7
6
調達金利(利 子対有利子負債比率)
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㌔. 、
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5利 払前収 益率(利 払前総資本経常利益率)
運 用利 回 り(運用金 融収益対運 用金 融資産 比率)
4748495051525354555fi575859fiOfil62 昭 和 年 度
(出 所)臼 本 銀 行 調 査 統 計 局 『調 査 月 報 』 昭 和63年11月 号60ペ ー ジ 。
14商 経 論 叢 第25巻 第1号
灘 ま っ廻.こ の 間,自 己 資 本 比 率 膿 造 業 に お い て は5・年 に は ・9.34ま で
{g)
低 下 したが,そ の後 上 昇 しは じめ62年 度に は33.79%に まで高 ま った 。 自己 資 本比 率 の増 加 テ ソポは55年 以降 か らの調達 金 利 の傾 向的 な低下 と対応 して高 ま ってい るが,こ れ は それだ け 負債 比率 の低下 す なわ ち 負債 部分 の減 量二化 がす す ん だ こ との表わ れ と理 解す る こ とが で きる。 また 第6図 か ら明 らかな よ うに利 払前 収 益率 が昭 和62年 には 借 入金 利子 率 をわず かに上 まわ って上 昇に転 じた と は い え,昭 和55年 以来 の低 下傾 向に あ る中で 自己 資本 比率 の上 昇 が著 しい のは,
負債 の軽減 に も よるが 企業 の資本 市 場か らの資 本調達 に よる ところが大 きい。
これは,と くに企業 が事 業 再編 成や 新 規事 業分 野へ の積極 的 な展 開,さ らには 海 外 進 出を 図 るた め に経営 基 盤 の安定 化 の観点 か ら,自 己 資本 充実 の方 印に傾
(9)
斜 し て い る こ とを 示 唆 す る もの で あ ろ う。
② 資 本調 達 の 多様 化,国 際 化
わ が 国大 企業 の資本 調達 構造 は,低 成長 経済 へ の転 化 とと もに 自己資 本充 実 の イソセ ソテ ィブが働 く中 で資本 市場 重視 の 直接 金融,そ して 自己 金融 へ と移 行 した。 と くに 昭和50年 代 中頃 か らの金 融 の 自由化,国 際化 が展 開 され る中で 国内 ・外 資本市場 か らの資本 調達 が活 発 とな り,企 業 の外部 資金 調達 ルー トは 一 層 の多様 化 を示 してい る。 具 体 的に は企業 は で きるだけ低 コス トで の調 達を は か るた めに,銀 行借 入金 を一 貫 して減 少 させ つつ,時 価 発行 増 資や転 換社 債,
ワラソ ト債 の発 行に よって 自己 資本 充実 に結 びつ くエ ク イテ ィ物 の比重 をた か め る と ともに,さ らに 外債発 行 な ど海外 市場 で の起債 に よって外 貨調 達 を増 大
㈹
させ た こ と で あ る。
第1表 は,昭 和60年 代 初 期 の 法 人 企 業 部 門 の 資 本 調 達 を示 し て い るが,借 入 金 に つ い て は40年 代 後 半 に は 外 部 資 金 の 中 で83.9%を 占 め て い た が59年 に は 43.4%に ま で 低 下 し た 。 た だ し62年 に は 円 高 不 況 の 影 響 か ら65.0%と 一 時 的 に 増 加 し て い る が 高度 成 長 期 と比 べ れ ぽ 隔世 の 感 が あ る。 な お 「対 外 借 入 等 」 が 62年 度 に は 前 年 比14.8倍 の3兆 円]/YỲ.急増 し て い る が,こ れ は 邦 銀 海 外 支 店 か ら の 借 入 れ(ユ ーR円 イソパ ク トロー ソ)が 多 く含 まれ て い るた め で あ る。 ま た62年
低 成 長 経 済下 の 企 業 財務 の動 向15
第1裏 法人企業部門の資金調達
(単 位 ・千 億 円,%) 60年 61年 前年比
62年1徽 比 随 靴
資 金 調 達1297.71334.2
12.21426.8100.027.7
借 入 金
民 間 金 融 全国銀行 そ の 他 公 的 金 融
〔設 備 資 金〕
〔そ の 他〕
有 価 証 券 事 業 債
株 式
外 債
CP
対 外 借 入 等t
239.9 229.8 189.1 40.6 10.1 [58.1]
CI.81.7]
50.5 6.8 20.2 23,5
?.4
268.4 262.9 206.5 56.3 5.5 042.8]
[225.6]
63.?
15.8 22.1 25.9
2.0
11.9 14.4 9.2 3$.6
‑‑45 .2
〔‑26.5〕
[24.2]
26.3 2.3倍 9.3
×0.3
‑・一?2.5
277.3 257.7 162.1 95.6 19.6
〔81.0〕
〔196.2〕
102.5 23.6 41.2 s7.s 17.0 30.0
65.0 60.4 38.O X2.4 4.6 [19.4]
〔46.0〕
24.0 5.5 9.7 8.8 4.0 7.0
3.3
‑2 .0
‑21 .5
69.8 3.5倍
〔89.5〕
〔一].3.0〕
.1 49.7 s7.0 45.3
14.8倍
(注)(1)株 式による資金調達の増加には,増 資のほか転換社債の転換分を含む。
(出所)日 本銀行調査統計局 『調査月報』昭和63年6月 号の11ページ第3表 の1部 抜粋。
11月 に はCP市 場 が 創 設 さ れ,そ の 年 度 末 発 行 残 高 は1兆7,000億 円 に 達 し 外 部 資 金 調 達 の4%を 占 め た。
外 部 資 金 調 達 に お い て 増 加 率 が 著 し い の は 有 価 証 券 の 発 行 で あ る。 例 え ぽ 事 業 債 は62年 度 で は2兆3,600億 円(60年 では6,800億 円)に 達 し61年 度 と 比 ぺ て 49.7の 増 加 で あ った 。 ま た 外 債 は 起 債 額3兆7,600億 円,前 年 比45.3%の 増 加 で あ り外 部 資 金 調 達 の8.8%を 占め た こ とが 示 され てい る。
さ らに 株 式 は,高 株 価 状 況 下 で の 時 価 発 行 増 資 に よ っ て4兆1,200億 円,前 年 比87.0%と 最 も高 い 増 加 を 示 し て い る。 この よ うに 近 年 に お い て は,金 融 の 緩 和 が 一 段 と進 み 証 券 市 場 の 好 環 境 の 中 で 資 本 調達 ル ー トが 多 様 化 され て お りs 証 券 市 場 主 導 の 調 達 構 造 が 創 出 さ れ て い る と い え る 。
そ こ で 次 に 内 外 証 券 市 場 に お け る 発 行 状 況 に つ い て み て お こ う。
第2表 は 証 券 発 行 に よ る資 本 調 達(外 部資金調 達)に つ い て 国 内 市 場 と海 外 市 場 の 状 況 を 示 し て い る。 まず 国 内 市 場 に つ い て み る と普 通 社 債,転 換 社 債 ・ワ
16商 経 論 叢 第25巻 第1号
第2表 上場企業 の内外証券市 場 を通ず る資金調達
(単位 ・億 円,%)
59年 「 厩
60年 睡 成比 6'㌔ 構成比62年 隊 比睡 比
国 内 市 場128,2・1154.729,3s247.539,2・5151・2【fig,45260.377.1
債,債資
社 弊
通換ラ普転ワ増7,fi50 11,615
$,93fi
14.8 22.5 17.3
5,895 17,985 5,482
9.5 29.1 8.9
6,150 26,475 6,5$0
8.4 34.&
8.fi
8,2007.1 46,0404a.a
15,211113.2
33.3 73.9 2.3倍
海 外 醐123,36545.332,42652.5137コ3$548.845,783139.?22.5
普 通 社 債 転 換 社 債 ワラ ン ト債
6,053 12,851 4,461
11.7 24.9 8.7
14,380 11,325 6,?21
23.3 18.3 10.9
15,550 2,7?6 i9,059
20.3 3.6 24.9
i1,27'1 3,943 30,569
9.8 3.4 26.5
一27 .5 42.0 60.4
内 外 醐 制51,56fi10Q.・161・7881100.・17⑤59・1m・115,23411・0.・150.5
(注)1.金 融,保 険業による社債発行,増 資は含まない。
2片 道の発行額で集計 してお り,資 金循環勘定の計数とは一致しない。
3.増 資には ワラソ ト権の行使による株式発行を含む。
(資料)東 京証券取引所 「証券統計年報」。 (出所)第1表 と同じ。
ラ ン ト債,増 資 と もに 増 加 し て い るが,そ の 中 で 転 換 社 債 ・ワ ラ ソ ト債 は59年 で は 起 債 額1兆1,615億 円 で あ った が,62年 で は4兆6,040億 円 に 急 増 し61年 度
と比 べ て73.9%の 伸 び 率 で あ った 。 内 外 市 場 合 計 で 最 も多 くそ の シ ェア ー は40
%に 達 して い る。 ま た 株 式 に つ い て み る と,59年 で は8,936億 円 で 内 外 市 場 合 計 の17.3%で あ った が,60年,61年 と発 行 額 は 減 少 し た 。 し か し62年 に は1兆 5,211億 円 に 増 加 し前 年 比 の2.3倍 に 達 し て お り,内 外 市 場 合 計 の13.2%を 占
め て い る。 こ の よ うに み て くる と勿 論,普 通 社 債 も発 行 量 は 漸 次 増 加 傾 向 に あ る が,今 日の 高 株 価 状 況 を 反 映 し て 転 換 社 債 ・ワ ラン ト債,増 資 とい った 直 接 に 自己 資 本 充 実 に 結 びつ くエ ク イテ ィ物 の 証 券 発 行 が 著 し い こ とが 明 ら か で あ る。 投 資 家 に と っ て 安 全 性 に 投 機 性 を 加 味 し た社 債 の株 式 化(証 券 の多様化)が 企 業 の 高 株 価 経 営 の も とで 促 進 さ れ て い る とい え る で あ ろ う。
次 に 海 外 市 場 に つ い て み て み よ う。
海 外 で の 発 行 額 は 企 業 の 海 外 進 出並 び に 金 融 の 自由 化,国 際 化 の 中 で そ の 増 加 の テ ン ポは 著 し く,59年 で は2兆3,365億 円 に 達 し 資 金 調 達 全 体 の45.3%を 占 め て い た。60年 度 は さ ら に 増 加 し52.5%に 達 し 国 内市 場 を 上 ま わ った 。 た だ
低 成 長 経 済 下 の企 業 財 務 の動 向17
61年 度,62年 度は構 成 比 では 若 干低 下 した もの の発 行 額は 増 加 し62年 度 は4兆 5,783億 円 に達 して い る。 こ の よ うにわ が 国企業 の 外債 発 行 が増 え た理 由は, 昭和55年 の改 正 外為 法 の施 行 に よ り,そ の発 行 が許 可制 か ら事前 届 出制 に変 更 され た ことか らであ る。
普 通社 債(SB)に つ い てみ る と60年 以降 か らは 国 内市場 を上 まわ った増 加 を 示 してい る。 また 転換 社 債(CB)は59年 度 で は その発 行額 は1兆2 ,851億 円に 達 し・ 内外市場 合計 で24・9%を 占め最 も高 い比率 であ った。 その後61年 と62年 に は かな りの減 少を示 す が これ は,国 内 の適 債基 準 が緩 和 され ,無 担保 で発行 しやす くな った こ と,ま た 国 内金 利 の低 下 に よって 内外 転換 社 債 の表面 利率 が 接近 した こ と,さ らには 国 内の 流通 市場 が 整備 され 質 ・量 と もに投 資家 に対 し て 瀬 性(;tiコrrの機 会)を 提 供 で き る よ うに な った こ とか9,国 内醐 へ 励 替 え られ た た め と考 え られ る 。
ワ ラ ン ト債(WB)は61年 か ら 急 増 し は じ め62年 に は3兆569億 円 と海 外 市 場 で は 最 も多 く,内 外 市 場 合 計 で は26.5%の 割 合 を 占め て い る。 ま た 前 年 比 で は60.4%の 伸 び 率 で あ っ た 。 ワ ラ ソ ト債 は,海 外市 場 で の 発 行 が 常 に 多 く国 内 市場 を 上 まわ っ て い る。 国 内 市 場 が 低 調 な 理 由は,「 現 在 の 発 行 基 準 で はCBよ
り発 行 コス トが 割 高 な こ と,国 内 投 資 家 のWBに 対 す る な じみ も薄 い こ と ,
既 に海 外 で成熟 したWB市 場 が存 在す る」 こ とな どを指摘 す る こ とが で きる。
この よ うにわ が国企 業 は,国 内,海 外市場 にお い て時価 発 行増 資 や転 換社 債, ワラン ト債 とい った エ クイテ ィ物 を 主体 に そ の調達 ル ー トを 多様 化 させ なが ら
, 低 コス トでの資 本調 達 を 行 ない 自己 資本 の充 実 をは か って きた。 と くに海 外 市 場 ではす で にみ た よ うに転 換社 債や ワラソ ト債 の発 行 が 目立 ってい る。 これ は 海 外市 場 では 企業 内容 の開示 な どで手 続 きが 簡便 で あ る こ とや低 金利 のた めに 発 行 コス トが 割安 な こ と,さ らには わ が国 の 高株 価状 況 と円高 のた めに エ ク イ テ ィ物 へ の投 資需 要 が強 い ため に増 加 した と考 え る ことが で ぎる。
特 に ワラソ ト債 の増 加は,「 ① 償 還 金額 が 確定 してい るた め 為 替 ス ワ ップな ど為 替 リス クの 回避 が可能 ・②CBと 同様 の低 クー ポ ンで 権利 行 使(株 式構入) 時 に再 び 資金 が調達 で きる,③ 分離 型 ワラン ト債 の国 内持 込み解 禁に よ り換金
18商 経 論 叢 第25巻 第1号
報 が多様 化 し,投 蠕 要 が 拡発」 した こ とな どの馳 か らで あ る.と く'G:
外 で の ワ ラ ソ ト債 は ユ ー ロ ドル 市 場,転 換 社 債 は ス イス フ ラ ソ市 場 で の 発 行 比 率 が 多 い 。 そ の 他 ル クセ ソ ブ ル グ市 場 な ど ヨー ロ ッパ を 中 心 に 国 際 的 な 規 模 で 拡 大 し て い る と と もに,通 貨 も ドイ ツ マ ル ク,イ ギ リス ポ ソ ド,オ ラ ソ ダ ギ ル
ダー ユー ロ円,ECU(欧 州通貨単位)な どの発 行 が多 くみ られ る。 この ことか ら企 業 の資 本調 達政 策 に おい て ます ます 国際 資本市 場 の比 重 が高 まってい る こ
とが 明 らか であ る。
しか しなが ら国内,海 外 市場 ともに この よ うな株 式 と関連す る債券 の 大量 発 行,す な わ ち資本 調達 構造 に おけ るエ ク イテ ィ物 へ の偏重 は ・ 株式 市場 の盛 衰 に左 右 され るだ けに 株価 低 迷に 転化 した時 に はそ れだ け 負債 を抱 え込 む こ とに な る。 償還 期 には 一 度に それ だ け元利 返済 が重む た め[y資 本構 成 は逆 に影 響 を 強 く受 け るで あ ろ う。 また投 機性 の強 い証 券 の増 加は ・M&Aを 誘 発す る こ と はい うまで もない が証券 市場 全 体 が投 機化 す る危 険 もた えず生 じる こ とに な る。
前節 で触れ た わ が国企 業 の 自己 資 本比 率 の増 加=財 務体質 の改善 は・ 以上 の よ うに偏 在 化 した 資本調 達構 造 か ら形成 され てお り,そ れ は既 に指 摘 した よ うな 危険 と常 に隣 合 わせ で あ る とい うこ とは 認 識 され ねば な らな いで あ ろ う。 資本 の運 用 と調 達 の適 正 な維 持 をは か る よ うな資本 調 達構 造 のバ ランスが 必要 で あ る。
W資 本 運用の特徴
(1)手 元 流動 性比 率 の増 加 と分散 投資
高 度成 長期 には 設備 投 資を は じめ実 物資産 投 資 が旺盛 であ りsし か も重化 学 工業 中心 の産 業構 造 であ った た めに投 資額 も巨額 で あ り余裕 資金 の生 じる余地 な どは なか った。 しか し5⑪年 以 降 の低 成 長経 済下 に おい て企 業 の有利 な投 資機 会 の 喪失,営 業利 益 の低 下 に よって実物投 資が 抑制 され る中で 企業 の金 余 り現 象 が鮮 明に な った。 また 昭和61年1月 か ら62年2月 までに わ が国 の公 定歩合 は 5回 にわ た る引下 げ に よって2.5%と 歴 史的 に みて最 も低 い 水準 にな った が, この よ うな近年 の 金融緩 和基 調 が企 業 の金余 り現 象 に拍 車を かけ た こ とも事実
低成長経済下の企業財務の動向19
といえ るであ ろ う。 また この よ うな低 金利 に 加 え て高株 価 状況 は,企 業 が 資本 市場 か ら実 物資 産投 資 を遽 かに 越 えた資 本 を エ クイテ ィ ・フ ァイナ ンスに よっ て調達 し・ それ を短 期 的な 金 融資産 の運 用 に ま わ し本 業(営 業利益)を 上 まわ るほ どの金 融収 益を 取得 す る,い わゆ る財 テ ク投 資 を活発 に行 な う素地 を つ く
り出 した ことは よ く知 られ て い る。 また それは 折 か らの 金融 の 自由化,国 際化 の進展 に よって一段 と多様 化 しつ つ あ る こ とが その特 質 で もあ る。
第7図 は50年 代 中 頃か らの企 業 の手元 流 動性 比 率 の推 移 を示 してい る。 この 手元流 動性 とは・ 企 業 が所 有 して い る現 金,預 金 と短 期有 価証 券 それ に 関係 会 社 の株 式 ・社 債 を除 い た投 資有 価 証券 の残 高 合計 で あ り,こ れ が企業 の 運用 資 金 とな る。 この 手元 流動 性 が 月商 の何 倍か を示 した比 率が 手元 流 動性 比 率 であ
ロロ
り企 業 の 資 金 繰 りの 余 裕 度 を 示 す 尺 度 と し て 用 い ら れ る。
第7図 を み る と製 造 業 は 高 い 水 準 で 推 移 し て お り,特 に62年 に は2.97カ 月 に ま で 高 ま っ て い る。 一 方,非 製 造 業 に つ い て は60年 ま で は 低 い 推 移 で あ っ た が そ の 後 上 昇 し62年 に は1・36ヵ 月 に ま で達 し資 金 的 な 余 力 が 生 じ て い る こ とが 明 らか で あ る。 従 っ て全 産 業 と も手 元 流 動 性 比 率 は60年 か ら増 加 し62年 に は2.20 カ 月 に達 し,過 去 最 も高 か った 昭 和47年12月 の1.78ヵ 月 を 大 き く上 ま わ った 水
第7図 手元流動性比率の推移
(月)
(1.36) to.91}
(1.36)
B召牙…日56575859606162 55年
(資 料)日 本 銀 行 調 査 統 計 局 『主 要 企 業 経 営 分 析 」 昭 和62年 版12ペ ー ジ よ り作 成 。
20商 経 論 叢 第25巻 第1号
第3表 法 人企業部 門の資金運用(単 位 ・千億 円,%)
60年 61年1 前年比 62年1
轍 比 挿 年比
資 金 運 用}268.51333.924.41347.51goo,・i4.・
通 貨 x2.4 4$.1 3.9倍 一一一14 .2 一一4 .Z 一
定 期 性 預 金 107.3 1.04.7 一一2 .5 177.9 51.2 70.0 譲 渡 性 預 金 7.6 7.0 一一8 .1 1.5 o.4 一一一?8 .9
〔現 預金CD計 〕 〔127.3〕 [159.7] X25.5] [165.1] 〔47.5〕 [3.4]
信 託 ・投 信 25.3 91.8 3.6倍 113.5 32.7 23.6
有 価 証 券 19.3 一2 .1 一 一一12 .9 一一3 .7 一 う ち 債 券 X6.9 一一一5.0 一 一53 .3 一153 一
株 式 2.3 2.9 24.2 40.4 11.6 13.8倍
CP 一 一 一 0.9 0.3 一
対 外 信 用 96.6 844 一12 。6 8α8 23.3 一一4 .3 うち証券投資 76.3 57.6 一24 .5 50.8 1くL6 一11 .9 (注)11)定 期牲預金には外貨預金を含む。
(出所)第1表 と同じ。
準 に 達 し て い る。 この 手 元 流 動 性 とは 既 に み た よ うに 実 物 投 資 に は 向 か わ な い 余 裕 資 金 残 高 で あ る か ら,そ れ だ け 金 融 資 産 投 資 が 膨 ら ん で い る こ とを 意 味 し て い る。 換 言 す れ ば そ れ だ け 金 融 資 産 形 態 で の 資 金 運 用 が 活 発 化 し て い る こ と の あ らわ れ で あ る。
第3表 か ら企 業 の 資 金 運 用 の 状 況 を み て み よ う。
わ が 国 の 金 融 ・資 本 市 場 は 昭 和60年 か ら そ の 自 由化 と弾 力 化 の 進 展 が 著 しい が,そ れ に よ っ て 定 期 性 預 金,特 金 ・投 信,株 式 で の運 用 比 率 が 高 くな っ て い る。 そ の 中 で も定 期 性 預 金 の増 加 率 が 高 い のは,60年 以 降 か ら 自 由 化 と弾 力 化 措 置 が と られ た 大 口定 期 預 金(金 利 自由)が 含 ま れ て い る こ とか らで あ る。 大
口定 期 預 金 は 最 底 預 入 額 が60年10月 の10億 円 か ら し だ い),Y小 口化 され,63年4 月 に5,000万 円 に ま で 引 下 げ られ た こ と,ま た 期 間 も3か 月 〜2年 か ら1か 月
〜2年 に 緩 和 され た こ とか ら増 加 し た とい え よ う。 そ の こ とに よ って 定 期 性 預 金 は62年 で は 前 年 比70%増 の17兆7,900億 円 に 達 し 運 用 全 体 で51.2%と 最 も多
い 。 次 い で ハ イ リタ ー ン 指 向 を 反 映 し て 信 託 ・投 信 が62年 に は 前 年 比23.6%増 の11兆3,500慮 円,運 用 全 体 で32.7%を 占め て い る。 ま た 株 式 へ の 投 資 は 時 価
低 成 長 経 済下 の企 業 財 務 の動 向21
第4表61年 の金融収 支黒字 額 ラ ンキ ンヴ
(郵三麟 声盤 緩)
(出 所)日 本 経 済 新 聞,昭 和62年4月14日 付 。
ロの
発 行 増 資 の 引受 やNTT株 の 購 入 等 もあ っ て,62年 に は 前 年 比13.8倍 の4兆400 億 円 に も達 し た。 これ は 運 用 全 体 の11.6%に あ た る。 また 前 年 比 で は 伸 び 率 が 低 下 は した が 運 用 額 の 大 き い もの に 対 外 信 用(8兆800億 円)が あ る。 そ の 中 で 対 外 証 券 投 資 の 割 合 は 高 く5兆800億 円 で 運 用 全 体 の14.6%を 占 め て い た。
と くに 昭 和59年(1984年)4月 か ら外 国 為 替 取 引 に お い て 実 需 原 則 の 撤 廃 措 置 が と られ て か ら為 替 ・資 本 取 引 の 自由 化 が 一 段 と加 速 化 され た が,こ れ に よ
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1234567891011121314151617181920212223242522商 経 論 叢 第25巻 第1号
っ て 企 業 の 外 貨 建 て 債 券 へ の 投 資(外 債投 資)も 多 様 化 し,そ の 投 資 運 用 に お い て も ス ワ ップ取 引 や リス ク ・ヘ ッジ を 行 な うな ど精 緻 な 方 法 が とられ て い る。
そ の 運 用 は 外 債 発 行 に 伴 な う外 貨 建 て 債 務 の た め の 為 替 リス ク ・ヘ ッジや キ ャ ピ タ ル ・t̲vイソを 目的 と し た もの が 多 く,と くlyVユR市 場 で の 投 資 は 変 動 利 付 債 や デ ュア ル ・カ レ ソ シ ー 債 へ の 投 資 も多 い 。 通 貨 別 で は 外 債投 資 の約80%
が 米 ドル 建 て 債 券 で あ った が,近 年 の ドル 安 傾 向 か ら為 替 リス ク回 避 の た め に ECU,ヵ ナ ダ ドル,ス ター リソ グ な ど多 通 貨 分 散 投 資 が す す ん だ こ と もそ の 特
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徴 で あ る。
以 上 の如 くわ が 国大企 業 は,昭 和60年 以降 の金 融 自由化 の進展 や 資本市 場 の 国際 化 が進 む 中 で 自由金利 商 品や 対 外証 券へ の 分散 投 資を 行な うな どそ の資本 運用 の多 様化 を 強 めた。 す で にみ た よ うにそ れ は,大 口定 期預 金や 信託 ・投信 へ の運用,ま た 株 高状 況下 で の株 式 投 資 さ らに対外 証券 投 資 とい った 金融 資産 投 資へ の比 重 を高 め る ことに よって,企 業 の利益 額 に 占 め る 金融 収 益(営 業外 収益)の 比 重 を増 大 させ てい る。
第4表 は,昭 和61年 度 の金 融収 支黒 字 の 企業 ラ ン キ ソ グ(銀 行 ・証券 ・保険を 除 く上・場企業1,547社)を 示 した もの であ るが,金 融収 支 が 黒 字 の会 社 数は10年 前 と比べ て2.6倍 の473社 とな り全 体 の3割 が黒 字会社 とな った。 黒 字額 の 第
1位 は前年 に ひ きつ づい て トヨタ 自動 車 であ り前年 よ りも128億 円増 の1,236億
円に達 した。 これ は経常 利 益 の4分 の1の 相 当額 で あ る。 これ は,受 取 利 息 と 配 当金 か ら支払 利 息を差 引いた 純金 利 負担 の減 少や転 換 社債 発 行等 か ら調達 コ ス トが低 下 す る一 方 で,余 裕 資金 を金 融 資産へ 分 散投 資 す る財 テ ク活動 の展 開 に よる もの とい}る 。
従 って昭和62年 には全 産 業 で の 資本 運用 額 は対 売上 高比 率3.4%(61年 度2.1
ゆ
%)と 極 め て高 水準 に達 してお り,そ の運 用対 象は 既 にみ た よ うに,62年10月 の株 価 暴落 の影響 か ら伸 び 率 では低 下は したが株 式,短 期 所有 の有 価証 券へ の 投 資 と,他 方 では大 口定期 預金 な どの 定期性 預 金,そ して海外 証券投 資に おい て急増 した。 そ し て これ らの短期 的 な金 融資産 投 資か らの金融 収益 が,企 業 の 本 業 の不 振 を支 え経 常利益 の増 大 を もた らした とい え る。
低 成 長 経 済 下 の企 業 財 務 の動 向23
② 金融収 支率 の上昇 と財務 体 質 の強 化
実物 資産 投 資 が手控 え られ る中 でド ー方 では低 金利 下 での 資本調達 と他 方 で は 金融 資産 へ の分 散投 資 が企 業収 益 を 改善 させ た こ とは既 に み て きた こ とで あ る。 と くに 金融 緩 和が続 く中 での 金利 の低 下 が 企業 の金 融 費用 を軽 減 させ 財 務 体 質 を改善 させ た こ とは よ く知 られ てい るが,そ の こ と もあ っ て 営 業 外 損益 (営業外収益 と営業外費用 との差額)は ・ 製造 業 全 体(石 油精製を除 く)で は昭 和26 年 以来61年 度 に初 め て輸 出業種 を中心 に収益超 とな り今 日まで 続 いて い る。 ま た それ は 現在 のわ が 国企 業 の経 常利 益 率増 大 の大 きな要 因 に もな ってい る
。 営 業 外 損益 の中心 的 位置 を 占め る金 融収 支 率(金 融収益/金 融費用)を み てみ よ う。 金 融収 益 とは 受取 利 息 ・割 引料 ・配 当金 の合 計 であ り,金 融費用 とは 支 払利 息 ・割 引料(社 債利息を含む)そ れ に 加 えて社 債 発行 差 金償 却 お よび社 債発 行費 償 却 の合計 額 であ る。 従 って,金 融 収支 率=受 取利 息 ・割 引料 ・配 当金
¢¢ 金 融 費用
x100で 表 わ す ことが で きる。
金 融収 支率 の推 移 を全 産 業 でみ る と昭 和50年 代 で は55年 の43 .51%を 最 底 に, 以来 上 昇 し62年 には60.71%に まで 高 ま った。 第8図 をみ る と製造 業 では 昭 和 55年 度(45.?1%)以 後 か ら上 昇 し62年 度 に は84.02%に 達 した。 他 方,非 製造
第8図 金融収支率(金 融収益/金 融費用)の 推移 1}
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内 需 型 業 種 47484950515253545556575859606162
昭 和 年 度
(出 所)日 本 銀 行 調 査 統 計 局 『調 査 月 報 』 昭 和63年11月 号43ペ ー ジ。
24商 経 論 叢 第25巻 第1号
業 の金 融 収 支 率 が62年 度 の45.51%ま で40%代 前 半 で 推 移 し 低 調 ぎみ で あ るが, 実 物 資 産 へ の 投 資 増 を 考 慮 し て も改 善 が み られ ず,そ の 格 差 が 明 瞭Yyな っ て い
る。 業 種全 体 で み る と内 需 拡 大 経 済 へ の 転 換 もあ り内 需 型 業 種 の 改 善 割 合 が 大 き く(61年 度58.1%→62年 度 ・i・%),と くに食 品 分 野 は 増 収 益 に よ る 運 用 資 金 増 か ら53年 度50.89%か ら62年 度131.48%へ と大 幅 な 改 善 が す す ん だ 。 そ の 中 で も ビ ー ル 業 種 は53年 度 の68.59%か ら62年 度 セこは20α92%と 増 加 率 は 最 も著 し か った 。 一 方,こ れ ま で の 円 安 局 面 に お い て 自己 資 本 増 や 借 入 金 返 済 な どの 効 果 か ら 高 水 準 で あ った 輸 出 型 業 種 に お い て も昭和62年 度 に は95.9%と 一 段 と上
⑳
昇 した。
この よ うにみ て くる と製 造業 に 比べ て非 製 造業 種 で の停滞 ぶ りが 目立 ってい る。 そ して製造 業 及 び輸 出型,内 需 型業 種 の金融 収 支率 が55年 度か ら大 幅 な改 善 傾 向にあ る ことが 明 らか で あ るが,こ の状況 は そ の ま ま企業 の 自己 資本 比率 さらに は財務 体 質 に反 映 され てい る。 金 融収 益 超 を中心 とした営 業 外収 益 の増 加 が経 常利 益 を押 し上 げ 内部 留保 の 積増 しを加速 させ た が,そ れ が 自己 資本 比 率 の改 善 と財 務体 質 の強化 に 対 し て もつ 効果 は 大 きい。
第9図 は 各業 種の 自己 資本 比率 の推 移を あ らわ してい る。 輸 出型,内 需 型 業 種 と もに50年 か ら上 昇 し62年 度 に は両 業種 ともに30%を 越え た 高水準 に な って い る。 自己 資本 は利 益 の 内部 留保 と資本 金 等か ら構成 され てい るが,内 部 留保 の増 大は,経 常 利益 の増加 に よる もの であ る こ とは い うまで もな いが,そ れ に 加 え て企業 の配 当負担 の 軽減 が大 きい。 周 知 の如 く戦 後 のわ が国 証券 市場 に お い ては著 しい ほ どに 配 当 の利 子 化現 象 が進 行 し,企 業 の配 当金 が利 子程 度 に ま で押s込 まれ てい るが,そ の こ とが企 業 の 内部留 保 の積増 しに寄与 してい る こ とは 事実 であ る。 また 他方 では近 年 の 高株価 状 況 が企業 の資本 金等 を増 大 させ て 自己 資本比 率 改善 の条 件 をつ く り出 してい る。
戦後 のわが 国証 券市 場 はs個 人持 株比 率 の傾 向的 な減少 に 対応 して法人 持株 比 率 の増 大が 進 行 し二 重構造 の様 相 を 呈 してい るが,そ の よ うな株 式所 有 の 法 人 化 ・機 関 化現 象 が折 か らの世 界 的 な低金 利 も加わ って高株 価状 況 をつ く り出 し,さ らに外 国為 替市 場 で の円 高基調 に よ り外 人投 資 も手伝 って株 価は 高 水準
低 成 長 経 済下 の企 業 財 務 の動 向 25
第9図 自己資本比率の推移 (%)
30
20
30 Q 日召禾日4748
年 度 (%)
30
zo
x4
(1>製 造 業
4950515253545556575859606162
(参考〉 自己資本比率 の輸 出型 ・内需型業種別内 訳
昭 和47 年 度 (%)
2a
10 0
罰召不0474849 年 度
輸 出型業種
(2)非製 造 業
内需型業種
50515253545556575S5960616?
(注)内 部 留 保=利 益準 備 金+そ の 他 の剰 余 金 一配 当 金 ・役 員賞 ㌻金 資 本金 等=資 本金+新 株 式 払 込 金+資 本 準 備 金
(出所)第8図 と同 じ,59ペ ー ジ。
26商 経 論 叢 第25巻 第1号
で 維 持 され て い る。 わ が 国 企 業 に 時 価 発 行 増 資 が 定 着 し た の も この よ うな 状 況 を 背 景 に して お りfそ れ を 利 用 し た 企 業 の 高株 価 経 営 す な わ ち 時 価 フ ァ イナ ソ
ス が 近 年 の 自己 資 本 の 増 大 に 大 き く寄 与 し て い る とい え る で あ ろ う。
自己 資 本 比 率 の 推 移 を 日本 銀 行 の 調 査(主 要企 業経 営分 析 ・昭和62年 版)か らみ る と 全 産 業 で は,昭 和53年 度17.29%で あ り,58年 度 に20.32%へ 上 昇 し た 後,62年 度 に は24.96に 達 し て い る。 特 に 第9図 に 示 さ れ て い る よ うに 製 造 業 で は と くに 高 く33.14%に 達 し て い る。 そ の 中 で も食 料 品(37.62%),繊 維(30.29%),化 学(32.55%),ゴ ム(34.99%),窯 業(36.09%),金 属 製 品
(31.43%),一 般 機 械(40.71%),電 気 機 械(40.93%),輸 送 用 機 械(36.36%), 精 密 機 械(49%)な どが 自己 資 本 比 率30%を 越 え た 業 種 で あ る。 製 造 業 の 中 で
も加 工 業 種 が39.08%と 素 材 業 種(25.27%)に 比 べ て 高 くな って い る の が 特 徴 で あ る。
し か し な が らそ れ に 対 し て 非 製 造 業 の 自己 資 本 比 率 は全 体 的 に低 く62年 度 ま で20%を 越 え る こ とは な か った 。 ガ ス(39.38%)と サ ー ビ ス(34.85%)の み が 高 い が これ は こ の 業 種 が 大 企 業 で しか も優 良 企 業 で あ る こ とか らで あ る。 こ の よ うに み て くる と近 年 の わ が 国 企 業 が,自 己 資 本 比 率 が 欧 米 並 み1y増 加 し財 務 体 質 が 強 化 さ れ た と言 っ て もそ れ は 製 造 業 に つ い て の こ とで あ り・ 全 体 と し て
は む し ろ そ の 傾 向 は二 極 化 しそ の 格 差 も大 き く開 きつ つ あ る とい え る で あ ろ う。
従 っ て低 成 長 経 済 下 で の 自己 資 本 比 率 の 増 大 が,す で に み た よ うに 企 業 収 益 を 支 え る 金 融 投 資 か ら の 収 益 の 高 さ と資 本 市 場 を 利 用 した 増 資 や 株 式 と連 動 し た 債 券 発 行 な どの エ ク イテ ィ ・フ ァ イナ ソ ス に よ る と こ ろ が 大 き い こ とは と くに 強 調 され ね ぽ な ら な い こ とで あ る。
V結 び に か え て
低 成長 経済 下 であ るに もか かわ らず わ が 国企業 の 自己資 本比 率 が改 善 され 財 務体 質 が強 化 され た要 因を 探 る ことが本 稿 の課題 で あ った。 第1次 オ イル ・シ ョック以 降 の不況 期に コス ト意 識 をた かめ た企 業 は,一 方 では現 実 資本 の循環 運 動 にお い ては実 物資 産投 資 を抑 制 しな が ら投 下 資本 の 回転 を早 め,資 本 の運