[研究ノート] 環境税の最適税率と厚生効果の一般 均衡分析
その他のタイトル Optimal Taxation and Welfare Impacts of Environmental Taxes : a General Equilibrium Analysis
著者 村田 安雄, 鎌苅 宏司
雑誌名 關西大學經済論集
巻 52
号 2
ページ 267‑287
発行年 2002‑09‑15
URL http://hdl.handle.net/10112/4519
2 6 7
研究ノート環境税の最適税率と厚生効果の一般均衡分析
村 鎌
田 苅
安
宏 雄 司
要 約
本稿では、環境税の最適税率の導出とその増税による社会的厚生効果を、一般均衡分析 の枠組みにおいて分析する。まず第
2
節において、社会環境の品質が社会全体の汚染消費 財と汚染中間財の総量に依存する5
財モデルにおける家計と企業の主体的均衡条件が示さ れ、続く第3
節では、政府の最適環境税率を決定する条件が、労働賃金に対する所得税率 とともに示されるo第4
節では、労働所得税率の引き下げを同時に行う税収中立的な環境 税の増税が社会的厚生に及ぼす効果を検討する。ここで税収中立のための総費用が負であ れば、これは環境税のもたらす第2
配当と考えられ、二重配当と呼ばれる。さらに第5
節 では、環境税を中心とする税制改革に際して、財需要と労働供給の変化を一般均衡分析に よって解明する。このとき家計の効用関数は弱分離形を想定している。第6
節では、G o u l d e r
(19 9 5 )
に従い環境税の二重配当を中間形と強形に分け、強形の場合の汚染消費 財への環境税の新設、汚染中間財への増税、そしてこれら両財への環境税の増税を分析 し、そのすべてにおいて二重配当が否定されることを確認する。最後に第7
節では、環境 税の増税により税基盤の侵食が生じるとき、環境税率は最善ピグー税率よりも低くなる必 要があることから、環境税の導入に当たっては、最初は低い税率から始め、次第に税率を 上昇させることで社会全体の厚生を高めうることを示す。キーワード:環境汚染財;最善ピグー税率;税収中立;二重配当
経済学文献季報分類番号: 0 2 ‑ 2 6 ; 0 2 ‑ 3 3 ; 1 3 ‑ 1 1 ; 1 3 ‑ 1 5
(目次)
1 .
はじめに2 .
モデルの特性と分権的市場均衡3 .
最適環境税率の導出4 .
税収中立的厚生変化5 .
環境税率の税基盤への影響6 .
環境税の「二重配当J 仮説
7 .
結論一一厚生効果と最適税率一一2 6 8 関西大学『経済論集j第 5 2 巻第 2 号 ( 2 0 0 2 年 9 月)
1
.はじめに環境汚染を伴う消費や生産の活動に対して政府は高い税を課して、それらの活動を抑制す べきであろうか? 多くの人々はこの考えに賛成するであろう。汚染主体が環境税を支払う
という原則は全
OECD
の国々で承認されている。地球温暖化に対処するために、CO
2の排 出を減少させる手段として炭素税( c a r b o n
旬x e s )
の増税が国際的に論議されている。本稿は上述のような環境税について、その最適な税率とその増税による社会的厚生効果を 一般均衡分析の方法で解明する。モデルの特性が第
2
節で列挙された後に、市場経済での家 計と企業の均衡の分権的成立が説明される。ついで第3
節では政府が社会全体の効用を極大 化するように、労働賃金への所得税や汚染財への環境税の税率を算出する。他方、或る既存 の税体系が存在しているときに、環境税の税率を上昇させて、代わりに所得税の税率を引き 下げて、全体の税収を不変に維持する税収中立において、社会的厚生がどの様に影響される かを第4
節で検討するo 特に環境税の増税がその税基盤と賃金所得税の税基盤に及ぼす影響 を第5
節で分析する。そして環境税の新設や増税によって、汚染物質の排出抑制という環境 改善効果のほかに、既存の税制度への構造改革という効果が生じるが、もし後者の効果が社 会的厚生にプラスとなれば、これは環境税の第2
の配当と考えられ、この二重配当の有無を 第6
節で解明する。その結果、二重配当は否定されることになるが、環境税が社会的厚生に 与える全効果がプラスになる可能性は十分にある。最終節ではその可能性を実現するため に、環境税の設定がどの様な水準で行われるべきかを、最適環境税との関連において論じ るoなお本稿は
Bovenberg
(19 9 7 )
およびB o v e n b e r g ; G o u l d e r( 2 0 0 2 )
の前半を中心に、一般 均衡分析の方法による彼等の諸式の導出を詳細に解説することにも力点を置いている。2
.モデ、ルの特性と分権的市場均衡本稿では代表的な家計と社会全体の生産を担う企業、および税率を決定する政府の
3
者が それぞれ分権的に市場経済の中で各自の役割を果たすものと想定する。モデルの特性はつぎ の通りである。( 1
)消費財は2
種類であって、一つは清浄財(c1e
釦g o o d )
で、他は汚染財( d i r t y g o o d )
であり、後者は消費に伴って環境を汚染する財を意味する。代表的家計の一戸当たりの清浄財需要量を
C
、汚染財需要量をD
と示し、各家計はこれらの需要量と余暇量H
を自 分の消費効用を極大化するように決定する。環境税の最適税率と厚生効果の一般均衡分析(村田・鎌苅)
府提供の公共財総量
G
と社会環境の品質E
とが含まれ、効用関数はul
はul=u ( C , D , H , G , E )
2 6 9
( 1 )
と表される。
G
は環境と無関係であると想定され、E
は社会全体の汚染量に依る。各家計の D消費による環境への影響は微小で、あるので、各家計の消費によってEは変化しないとそ の家計は考えるo ゆえに上記の効用関数の中に含まれるG
とE
は各家計にとっては与件と みなされる。( 3
)社会全体の家計の戸数をN
で示す。各家計の労働可能最大時間を1
として、実際の 労働時間をL
とすると、恒等式としてH+L= 1
( 2 )が成立する。社会全体の労働供給
NL
は清浄中間財の投入量X
と汚染中間財のそれR
を用 いて、社会全体の財を生産するが、その生産関数をF
として、F ( N L , X , R )
( 3 )は
1
次同次であると想定される。経済全体の物的財市場均衡式は下記の通りであるoF ( N L , X , R)=G+X+R+NC+ND (4 )
(4 )社会環境の品質EはRと
ND
の関数としてE=e(R , N D ) ( 5 )
と表され、
e
はR
またはND
の減少関数であると考えられるので、つぎのようになる。eR三
θ E/dR<O
eND
三θE /
θ( N D ) <
0( 6
a ) (6 b )
( 5
)各財は生産者価格が1
になるように単位が定められ、C.D.X.R
に課せられる単 位当たり税をそれぞれt c
・ら・t x
・らとするo 労働に支払う税引き賃金率をwと記し、賃金 率への従価税をでとするので、企業が支払う税込み賃金率 ωpはつぎのように定まるoWp
三(1+で) ω ( 7 )
もし
Wp
に労働所得税を課すとすれば、その税率をh
として、税引き賃金率は(1 ‑t L ) w p
に なり、このときのhとでの聞につぎの関係がある。2 7 0 関西大学
f経済論集 j 第 5 2 巻第 2 号 ( 2 0 0 2 年 9 月)
た=で
/(1+
で (8 )
( 6
)各家計の所得が労働所得のみであると想定すると、その予算制約式は (1+tdC+
(1+ら)D=wL
であるが、今後は
tc=O
と置いて税体系を基準化する( n o r m a l i z e )
。従って予算制約式はC+
(1+tD)D=wL
( 9 )となる。
さて各家計は(
9
)式の制約の下に(1
)の効用を極大にするようにC.D.L
を決定する が、その際、G
とE
は不変と考えるので、これらを省略して、間接効用U
をv
(1+t D , w ) =M
鉱c , D , du(C , D , l‑L)
IC+(l+t D )D‑wL=O}
(10) と書こう。所得の限界効用はこの場合には Cの限界効用Uc
に等しいので、ロワの恒等 式 一θ v / θ
(1+ら)=Duc
および‑av/ θ w=‑Luc
よりθ v / θ t D =‑uc D θv / θ ω=uc L
が得られる。(11a)
( l l b )
他方、企業は各生産要素の限界生産力をその要素価格に等しくなるように要素投入量を決 定する。生産関数
F
の偏導関数はO
次同次であるので、この利潤極大条件はつぎのようになるo
F
NL( l , X/NL , R/NL) =Wp
九( l , X/NL , R/NL)=l+tx FR( l , X/NL , R/NL) =1 + t R
F
K
三θ
IF/θ K (K=NL
,X
,R )
を意味するo (1
2b ,
c)式をX/NL
とR/NL
について解いた結果を(12a) (1
2 b )
(12 c )
環境税の最適税率と厚生効果の一般均衡分析(村田・鎌苅 2 7 1
X/NL=fx
(1+ら1 +t R )
(13 a ) R/NL=!R
(1+ら1 +t R )
(13 b )
と表し、これらを(12a)式へ代入したものを0(1 + t x , 1 +t R ) =Wp
(14 )
と表そうo利潤極大の状態における生産費用をrと記して、
r
=wpNL+
(1+tx)X+
(1+ t R ) R
(15 )
とするo この式の右辺のNL.X.R
はシェパードの補題によって、次の条件を満たす。θr
市θ r θ r θ u
争‑ j"fu, θ ( 1+ t x ) ‑ . n . , θ
(1+t R )
‑ 1 ¥(1
5 )
式が表す等費用線上では、(16 )
の条件も考慮に入れて、次式が成立する。θ r θ r θ r 0=
万五dwp+
万五d
(1+ら)十万五d
(1+ら)=N Ld w p +Xd
(1+t R ) +Rd
(1+t R )
さらに( 1 3 a
,b )
を考慮して、( 1 5 ' )
式からo =dwp+fxd
(1+ t x ) +kd
(1+t R )
が導出される。(1
7 )
式よりつぎの偏微分が得られる。θu
ト
f θ u炉 rθ
(1+ t x )
ー‑ J x , θ
(1+t R )
ー‑ J R
( 7 )式を考慮して、 (18)式よりつぎの関係を得る。
θω
一 一 よ ‑
θ卸p一 一
Xθ
ら‑1+
でθ
(1+ t x )
一(1+で)NL
θω ̲̲1 au争 一 ‑ Rθ t R ‑1+
でθ
(1+t R )
一(1+で)NL
(1
6 )
(15')
( 1 7 )
(1
8 )
( 1 9 a )
( 1 9 b )
2 7 2 関西大学『経済論集 j 第 5 2 巻 第 2 号 ( 2 0 0 2 年 9 月)
3 .最適環境税率の導出
政府は税率決定を社会全体の家計の効用を極大にするように行うものと想定するo いまや 各家計の効用関数はつぎのように表される。
U=U(v
(1+ t
D, ω) ,
G,
e(R, N D ) ) ( 2 0 )
政府は予算制約式で
wNL+
らND+txX+tRR=G ( 2
1) を満たしながらNU
を極大にするように各税率と公共財供給量Gを決定する。 これを家計 一戸当たりに換えると、政府は( 2
1)式の両辺をNで割った式を制約として、 ( 2 0 )
のUを
極大にすることである。したがってラグランジュ乗数をψとして、下記のラグランジュ関数¥11を定義して、その
1
階条件を求めればよい。¥11三
U+ ψ(
でw L + t D D + t x X / N + t R R / N ‑ G /
川( 2 2 )
まずGの決定は、1
階条件θ 甲 / θ G=O
によってUG= ψ /N
(23)を満たさなければならない。ここに的は Gの限界効用を示す。 (23)式より ψは
ψ =NuG
(23')となる。
つぎにでについての
1
階条件θ
¥11/ θ
で=0
を展開しよう。ここに UE三θ
U/θE
である。そして
一θ
v dw
,.̲ f θ R θ D θw ¥
I ̲,.1 θW 1̲.̲̲d L
θwO 一 百 万 ? + 叫 e R a γ+ Ne
N/j布 石) + ψ
卸' L + で L 百 + で W 一 百 万 ?
θDθ
W
I 1 θ' X
I 1 ‑ 'dR ¥ + t
D一一一一一一+一一
θw
θで Nt
"X一一一+一一
θで Nt
"R一
θ一 一
で/l( 7
)式よりw=
時/(1+で) となるのでθ ω / θ
で=‑w/
(1+で)を得る。また (1
3 a , b )
式を考慮して、つぎの偏微分が得られる。( 2 4 )
( 2 5 )
環境税の最適税率と厚生効果の一般均衡分析(村田・鎌苅)
θ
'.x ̲1I.Uθ L̲X θLθω
一 一 一 一 一 一θ
で‑ J .YJXθ
で ‑La w θ
でθ R
̲1I.Uθ L̲R θLθω
一 一 一 一 一 一θ
で J.YJRθ
でL a w θ
で2 7 3
(26a)
(26b) (24)
式 へ ( 1
1b)・(25)・(26a,b)の各式を代入すると、つぎのように整理されるo(1t
‑uc)L= [ ( U E e R +
長t
持+ψ(
'rW+tx
長) J
訪+( U E e N D N
坤t D )
努 (24')さらに
t x
についての1
階条件θ 甲 / θtx=O
を展開しよう。θ u θ ω / θ R θ D θ ω ¥ i ̲ ( θ L ¥ θ w θ D θ ω
0=3Z757+UEeR3E7+NeND3Z75)+ψL
'r ¥ L +w
a;;)・35+ら万五
F万五
X I
1 ' ‑
dX I1 θ R I
+一一 + N
I N~x θ tx: T t v 一一一+一一
IN t
~R θtx一一一│
Jところで (13a
,
b) 式を考慮すると、つぎの偏微分が得られる。θ X θ f θ L θ W
a i : =NL θ(lJb)+
栃否両,‑d t x
θ
~~\.R ̲ =NL
':H 1~.I/{....θ
'fR ¥ + I INfp~一一一一一I T1'θ L
dwθt x
一θ ( 1 + t x )
IH J R θωθt x
(27)式へ (28a
,
b)・(1
1b)・(1
9a)の各式を代入すると、下記のように整理できる。= NL
‑x(1+
で)「(日りL ' " ' c
I 'P ~I L+
LI Iψ f l
'Pで 肘
~ W I( ' " ue ' E
t;;R
A A K t IN " R I L
INL " x lA
Jθw+ 州 内 川 ω 努 J+
手+ψbL3t+ 叫 eR+ψ
ら)L3t
(27)
(28a)
(28b)
上式へ (24')式を考慮すると、角括弧内は ψ
L (1+
で)に等しくなるので、結局においてO=
1ttx 義 +(胸〆川ら)発
(27')に帰着するo (27')式の両辺を
ψ
で除し、 (23')式を考慮に入れて、次式が得られる。内 発 + い
3 ) 3 t
(29)ただしここに
t~=t:/ η ( 3 0 )
t ; = N U E ( ‑ e R ) / U C , η
三Nuc/uc ( 3 0 ' )
2 7 4 関西大学『経済論集 j 第 5 2 巻第 2 号 ( 2 0 0 2 年 9 月)
と置かれ、 dは
Rについての最善ピグー税率を表している(鎌苅=村田 ( 2 0 0 2 )
の( 3 8 )
式 を参照)。つぎにらについての
1
階条件θ 甲 / θtR=O
を展開しよう。θuθ w.
Iθ R θ D θ w ¥ r
IθL¥θωθDθw 0= ðw 万五~+
UE~ e R a t ;
+NeND 否両~ a~) + ψ ド ~L+w a ; ) a~ +t D
万五., d t R
R .
1 θ
R .1 .
dXl +一一+ N
I‑ ‑ N " i r
tR d 一 一 t 一+ R
I‑ ‑ N i r
t. X 一一一│ θ t R J
ところで(1
3 , a b )
式を考慮すると、つぎの偏微分が得られるoθ 1 ) ( ̲
U T. a ι θ L θ W
357=NLθ
(1ヂt;;J+栃dw d t R θR ̲
U T. a f
R I 7t.TL'θLθω 一 θt 一 一=NL' R
‑.lTLJθ ¥
(11~",J{ ~ 1+t R )
¥ + INf H J Rθwθt
,,‑';一一一一一 R
( 3
1)式へ( 3 2 a , b )・(1 1 b )・ ( 1 9 b )
の各式を代入すると、下記のように整理できる。R
r
I I .1. ̲ ¥ '1' Ir
.1. ̲ I fψ ¥ R ψ
X .1θL
=NL(11
でfL ( u c + ψ
加ψ i TW+
い的+すt R )
τ+可 t x J a ;
+
(UEe均附
E〆向 e
(31)
( 3 2 a )
( 3 2 b )
上式へ (α24どめ')式を考慮すると、角括弧内は
ψ L
(1+で)に等しくなるので、結局は次式に帰 着する。件
ψら3 t +
向 山 ら) 3 t
( 3 1 ' )
式の両辺をψで除し、( 2 3 ' )
式を考慮すると、同
3t+
い~)発が得られる。
( 2 9 )
式から( 3 3 )
式を辺々引き算することによって、同
( 3 5 一 発) +
(tR ‑ t 3 ) ( 発 ‑ 3 t )
の関係が導出されるo ところが一般には
d f x
...Ld f x d f R
占dk
‑ ‑ ‑ = 一 一 十 一
θt x . . . θt R ' θt x . ‑ θt R
となるので、
( 3 4 )
式より次式が成立しなければならない。( 3 1 ' )
( 3 3 )
( 3 4 )
環境税の最適税率と厚生効果の一般均衡分析(村田・鎌苅)
275o d
一 一 一 一
‑q
吾川市
( 3 5 ) ( 3 6 )
これらは中間財への課税の最適税率で、特に清浄中間財を無課税とし、汚染中間財へは最善 ピグー税率を
η
で除した値が最適税率であると結論付ける。これらの最適税率を (24') 式へ挿入し、その両辺を
ψ
で除すると、つぎのようになるo( 1 ー が
L=でω
子+(日, g ) ヂ
一 一一 ←ー
( 3 7 )
ただし
η
とdは下記のように定義されている。t g
三t ; / η
t;=NUE( ‑ e N D ) / U C , η
三N u c / u c
( 3 8 ) ( 3 8 ' )
dは
ND
についての最善ピグー税率である。最後にらに関する 1階条件 θW/θら=0を展開しようo
/ θ D θ R ¥ I θ D θ
L
I 1 .LdX
I 1 θRl
0=
一
θ一+uElN
ら E ¥e N N D D
θ~~ ら+e一
Rθ一 t D J
)+I ψ'PI'L
D+t 一一+で~一+~ I ~D θら dらN : ‑ . t
~X θら一一+:
N ~R θら」‑ . t 一一│
ところで(I
3a , b )
式を考慮すると、つぎの偏微分が得られる。dX
̲AUθL̲X
θL 一 一 一 一 一 一θら‑lVX
θら L θら( 3 9 )
( 4 0 a )
θ
R
̲AUθL̲R
θL 一 一 一 一 一θら‑lVR
θら L θら( 3 9 )
式ヘ(I1 a )
・( 4 0 a
,b )
の各式を代入して、つぎのように整理される。阿 ψ
‑uc)D+[ ( u E e R + 会 t R ) そ
+ψでw+ 悲 t X J 先
+( u E e N D N +
ψtD)32この式へ
( 3 5 )
・( 3 6 )
・( 3 8 )
の各式を代入し、両辺をψ
で除すると、( 4 0 b )
( θ L
士-l)D=
でW7+(
いQ ~)θ
aD
Inが導出される。
( 3 7 )
と( 4
1)の両式は連立方程式として、でと(ら‑ t g )
について解カ亙れる。その解はつ( 4 1 )
ぎの通りである。
(42)
関西大学『経済論集j 第5 2 巻第 2 号 ( 2 0 0 2 年 9 月)
(
1
ーす)(D努+L完)で
2 7 6
(43)
唯 一
ω 一 伽
低 一 伽
泣 一 長
ら
‑ t g 完
(43') (42)式を (43)式へ考慮すると、
/ θ
L
I FdL ¥
( D
苑 +L万五iら=おーでW\~ θD I Fθ
n l
\~
θ
w'Uθ
ら/と書き換えられる。 (42)のでと (43')のらは最適税率を表し、特に (43')式右辺第 2項 ((43)式の右辺)はらのラムゼイ成分である。
(43)式または (43')式は鎌苅=村田 (2002)の (56)式に相当する。後者の式の右辺第
1
項は前者のそれに一致することが判明する。後者の式の右辺第2
項ら叫はラムゼイ成分でこれは下記のように書き換えられる((
8
)式の九を用いて)。L一D
‑
UB
九 干
一
DD
百U
あり、
(44) そして (43')式のラムゼイ成分 (t%と記す)は、
wp=l
と置いて、 (8)式を考慮すると、(44') つぎのように書ける。
{D 先+L3~\
t E = ‑ t L ¥
一 一 一 .‑̲. ~θD I Fふ l
\~θw' Úθら/
ここで補償需要の変化として偏微係数を把えると、
θLー θL̲ c' ̲ C' dD θD ̲c
一一θら 此
=Sω=‑S
'θw一一一一Sm. D L '
~~=S θら‑ o JD D
(45)であるので、 (44')式の右辺は (44)式の右辺に等しくなるo したがって、 (43')式の税率 らは、補償需要の変化のみを考慮すると、生産面を抜きにした汚染消費財への環境税率にー 致することが判明する。
(42)式に (45)の偏微係数を代入し、(7 )式において
wp=l
と置き、 (8)式を また(42') 考慮すると、
4 ーム̲‑‑.L
¥DSDL+LS D D
ーいη
環境税の最適税率と厚生効果の一般均衡分析(村田・鎌苅)
277 が得られる。( 4 2 ' )
式は鎌苅=村田( 2 0 0 2 )
の( 5 5 )
式に対比されるが、もし後者の中のν
から所得効果の項を除けば、ν
は1 / η
に等しくなる。ゆえに、所得効果を除いて補償需要 の変化のみを考慮すれば、これらの2
式は完全に一致する。4 .
税収中立的厚生変化本節では税収額を不変に保った状態において、労働と財需要の変動による厚生変分が環境 に関連する成分とそれ以外とに区分される。
政府が政策評価の対象とする一家計当たりの効用 Uは
U=U(C , D , H , G , e(R , ND)) ( 4 6 )
である。( 4 6 )
式の全微分をとると、税収不変(dG=O)
のとき下記のようになるodU= ucdC+ uDdD ‑uHdL + uEeRdR+ NUEeNDdD ( 4 7 )
ここに限界効用がUK三
θ
U/θ K (K=C , D , H , E ) ( 4 8 )
と記されている。家計の効用極大は
( 1 0 )
式右辺の示すように行われるが、その極値条件はUc=U D /
(1+ら)=UH/W ( 4 9 )
とまとめられる。( 4 9 )
の関係を( 4 7 )
式ヘ代入してU c
で除すると、次式が得られる。dU ̲
.Jr'l I { 1 I .L ¥.JT'¥ ̲ ̲.JT IN U E e R
.Jn, N i
で ァ
=dC+
(1+tn)dD‑wdL+ 一一
F;f:iRdR+
ー竺E
f:iN DdD
U c U c ‑ ‑ ‑ U c ( 5 0 )
他方、財市場均衡式(4
)の全微分をとり、(12 a .b . c )
の利潤極大条件を代入すると、Nw
pdL+tx dX +tRdR=NdC+NdD ( 5 1 )
が得られる。( 5 1 )
式を代入して( 5 0 )
式からdC
を消去すると、( 3 0 ' )
のdと( 3 8 ' )
のdの定義を用いて、次式が導出されるo
d U 立=でwdL+( c ' I N U
.AJ'"
ら' D " ‑t[;)dD+( D I U
L / I"
ら' R " ‑ t : R ) I N
{~+t
I"X y ~互N ( 5 2 ) ( 5 2 )
式は労働供給、中間財需要および消費の変化に伴う厚生効果を表し、それらは既存の 税制によって左右されるO 特にらとらがそれらの最善ピグー税率より大きい場合にのみ、汚染財需要の増加は厚生を増大させるo
2 7 8 関西大学『経済論集 j 第 5 2 巻第 2 号 ( 2 0 0 2 年 9 月)
( 5 2 )
式を再調整して、環境の質の変化による厚生効果と税基盤(旬x ‑ b a s e )
の変化によ る効果とに区分して表現したものが次式であるodU ̲ NUE
r { ̲ ¥ JT¥ I { ̲ ¥dR
l I r ̲ ̲̲̲J T I ... JT¥ 1...dR
1...dX
l五=一ず
I (‑eND)dD+ ( ‑ e R ) N 1 + 1
でwdL+ 同 +tR N +tx N I
ω)( 5 3 )
式右辺の第1
項は環境の質の変化による厚生効果で、D
とRの減少に対しては正値を とり、それは第1
配当と呼ばれる。そして右辺第2
項は税収中立性を維持するために必然的 に生ずる税基盤の変動による厚生変化であり、この項の(‑1)倍を税収中立のための総費 用と言い、その符号が負であれば、第2
項は正値となるので、それは第2
配当と考えられ、「二重配当J
( d o u b l e d i v i d e n d )
と名付けられる。( 5 3 )
式右辺第2
項は利潤極大の状態においてdR
1...dX
wdL+tDdD+~ 一一 +t 一一 =Ldw-Dd,らR N I ~x N となることを証明しようo
( 5 4 )
〔証明〕政府予算制約式
( 2 1 )
を全微分して、dG=O
と置き、Nで除した結果はつぎの通
りである。dR
1...dX ̲ ̲
T .J. ̲̲ ̲ ̲̲ T J ̲ T¥ J...R
J...X
rwdL+
らdD+t R
Nー +tx
N =ーでLd w‑w Ld
で‑Ddt D‑ N d
ら‑N d t x ( 2
1') ところで(15 ' )
式の両辺をN
で除して、dwp= wd
(1 +で)+
(1+で)dw
を考慮すると、次式が得られる。X ̲ h I R
O=w Ld
で+L
(1+で)dw+
一一Nd
I,.t
,.X y+
I 一一Nd " " t "
RR
( 7 ' )
(1
5 " )
(15 " )
式は利潤極大のときの等費用線上で成立する関係であり、これを( 2 1 ' )
式へ代入す ると( 5 4 )
式が導出される。(証明了)( 5 4 )
式右辺は税引き賃金率変動による労働所得変分から、汚染消費財の税率上昇による 納税増分を差し引いたもので、いわば家計の私的実質所得の変分を意味する。税収中立の維 持のための総費用は( 5 4 )
式 右 辺 の (‑1)倍となる。すなわち税収中立の総費用
=DdtD‑ Ld w ( 5 4 ' )
( 5 4 )
式を( 5 3 )
式へ代入すると全厚生変化の式はつぎのように表される。環境税の最適税率と厚生効果の一般均衡分析(村田・鎌苅) 2 7 9
dU Nu
ーr
I ̲ ¥ J T'¥ I I ̲ ¥dR
lつァ=一
τI""EI(‑eND)dD+ ( ‑ e R )
す I+ (Ldw ‑D d t D )
" ' c
腸C L ~~ ~( 5 3 ' )
これは家計の効用極大と企業の利潤極大の状態において成立することを改めて確認してお
5
.環境税率の税基盤への影響環境税を中心に税制改革を行うとき、一般均衡分析によって財需要や労働供給の変動を解 明するのが本節のテーマであり、 まず汚染消費財への環境税らの上昇による影響を検討し
ょう。
本節では家計の消費財需要
C
とD
は余暇H
とは弱分離な( w e a k l ys e p a r a b l e )
関係にあっ て、C
とD
を包含するのは相似拡大的(homo 出 e t i c )
な副次的効用関数jであると想定され る。さらに家計の全効用関数Uの中で、C・D.H
はその他の変数C'Eとは弱分離されて いるものと扱われるので、 Uは下記の形をとるOU=U (M(J(C
,D)
, H),C
, E)( 5 5 )
ここにUは狭義の準凹関数
( s t r i c t l yq u a s i ‑ c o n c a v e f u n c t i o n )
である。いま変数iについての 効用関数Q
の限界効用をQ ;
と記すと、uc=uMM
,J c
,uD=u Ml
叫んH=uMM H , u
,=uMM
,になる。
J
関 数 の 性 質 に 基 い て 、C
とD
の 比 率k (
三C/D)
( 5 6 a ) ( 5 6 b )
は そ れ ら の 限 界 代 替 率
ω(
三 一d C / d D = J D / J C )
に一意に対応し、C
のD
に対する代替弾力性句はつぎのように表さ れる(村田=鎌苅( 2 0 0 0 )
,p . 3 0
とp. 8 7
を参照)。~_ d k ω一 dl o g h一 d log(C/D ) ̲
C‑DU
, ‑ d ω h 一 d l o g ω 一 dlog( 〆 . J
lc)一九一九
ここで下記の相対的変化率が使用されている。C
三dC/C
,n三dD/D
,九 三d J D
l.l
ρ,I c = d J c / J c
( 4 9 )
の極値条件の一つは、( 5 6 a )
式を考慮して、JD/Jc=l+
らと表されるので、 これの対数をとり全微分すると、
( 5 7 )
2 8 0 関西大学 f 経済論集j第5 2 巻第 2 号 ( 2 0 0 2 年 9 月)
dtD ‑ 7
ÏD一九=1平石三~ (5~
が得られ、
( 5 8 )
式を( 5 7 )
式へ代入して、C‑D=句ら
( 5 9 )
が導出される。
他方、余限の限界効用の均等式は
( 4 9 )
よりUH/UC=W ( 6 0 a )
となる。これと同様に、消費財バスケットの効用
J ( C , D )
からの限界効用めは、その消費財 バスケットの理想的消費者物価指数をfうとして、u/uc=l
う( 6 0 b )
の均等式を保持するo ゆえに
( 5 6 b )
を考慮して、( 6 0 a .b )
より次式が得られる。MH/M
,=w/l
う( 6 1 )
物価fうに対応する「実質的」合成消費を
Z
と示して、H
とZ
の代替弾力性をaM
と記すと、n 一 d
l o g ( H / Z ) fi‑z
U M =
d l o g (
略/MH)一死ヨ広 ( 6 2 )
となる。ここで下記の相対的変化率が用いられている。
fi=dH/H ,
Z三dZ /Z , M ,
三dM/M" MH=dMH/MH
いま実質賃金率を叫と記し、W
r三w / l
う( 6 3 )
と定義すると、
( 6 1 )
式の対数をとり全微分することによって次式が得られる。MH-~=Wr
( 6 4 )
ここに ι三
d w r / w r
である。( 6 4 )
式を( 6 2 )
式へ挿入して、H‑Z=‑aMW r ( 6 5 )
環境税の最適税率と厚生効果の一般均衡分析(村田・鎌苅) 2 8 1
R= ‑dL/
(1‑L) ( 6 6 )
となる。ま た 乃
Z
は家計の予算制約式(9
)に対して乃
Z=c+
(1+tD)D=wL ( 6 7 )
の関係をもつので、( 6 3 )
の定義式を考慮して、Z=w
,+dL/L
(68)となる。 (66)式と (68)式を (65)式へ代入すると、
dL/L=
(1‑L)
(OM一1)必F (65') が導出されるol三d L / L
および εL三 (1‑L) ( o M ‑ l )
と記すことによって、 (65')式は次 式に書き換えられる。L=eLW
,( 6 9 )
かくして
ε L=L/w
r( 6 9 ' )
は労働供給の実質賃金率弾力性を意味する。
つぎに
( 6 7 )
の第2
等式(家計の予算制約式)を全微分して両辺をwL
で除すると、dC
L (1+ t D ) dD+ Dd~D ̲ dw ̲ ' ‑dL
一 一 一 ‑wL
IwL ‑ w
IL
になる。ここで
y
を全消費のうちの Cの割合として、y
三C / ( w L )
,l‑y = = ( 1
+t D ) D/ ( w L )
と置けば、( 7 0 )
式はつぎのように書き換えられる。y e +
(1‑ y ) ( n +
忌)=必+1
( 7 0 )
( 7 0 ' )
た だ し 必
= = d w / ω
である。( 5 9 )
式からD
を( 7 0 ' )
式ヘ代入して、C
について解いたものが 次式である。2 8 2 関西大学『経済論集 j 第 5 2 巻第 2 号 ( 2 0 0 2 年 9 月)
c=L+
必+(1‑y)(
句一1)九( 7
1) ところで( 6 7 )
の第1
等式において C・ D ・ Zは実質値であるので、乃の変化率は(1+ら)
の変化率にウエイトの(1‑y)
を掛けたものに等しい。すなわち次式が成立する。月=(1‑y) tD
( 7 2 )
( 7 2 )
式を( 7
1)式へ代入して、( 6 3 )
の定義を考慮に入れると、次式が得られる。c=L+
ふ+(1‑y ) O
,t D ( 7 3 )
最後に、( 7 3 )
式を( 7 0 ' )
式へ代入して( 7 2 )
式を考慮すれば、下式が導出されるoD=L+wr‑yo
,t
D( 7 4 )
我々には0 , > 0
を想定するので、( 7 3 )
と( 7 4 )
より汚染消費財への環境税の上昇はD の需要減少とC
の需要増大をもたらすことが明らかとなるo また労働供給曲線は実質賃金 率上昇に沿って右上がりであると想定するので、 (69')にてε L>O
(したがってOM>
1) と なる。環境税の労働供給への影響を考察するに当たって、清浄中間財は非課税
( t x = O )
と想定 しておこうo これはその最適税率がゼロとなったという第3
節で、の命題に沿っているo ゆえ に( 1 3 b )
式は本節ではR/NL=k
(1+t
R)( 7 5 )
と表現される。
( 7 5 )
式の対数をとり全微分すると、R=dR/R
と記して、次式が得られる。R‑L=
必必いま
R
の価格弾力性をεRと記すと、それはε =̲dR
1.土主R一 θら R
である。
( 7 5 )
式を考慮すると、dk
一θ R 1 d J R
一 角d t R
k
一万石刃
L kー ー とR! 平石
となるので、
( 7 7 )
式を( 7 5 ' )
式へ代入して、次式が導出される。( 7 5 ' )
( 7 6 )
( 7 7 )
環境税の最適税率と厚生効果の一般均衡分析(村岡・鎌苅) 2 8 3
R=L ーら t R ( 7 8 )
汚染中間財の需要はその環境税と労働供給にも依存することを
( 7 8 )
式が示している。他方、財需給均等の変分式
( 5
1)式にてtx=O
と置いたものが下式である。NWpdL+tRdR=NdC+ NdD
(79)式の両辺をFで除すと、ωL三
wpNL/F
,ωR=
(1+tR)R/F
。 L=で/(1+で), B R
三t R /
(1 +t R )
, B
D三t
D/(1+ら)
の記号を用いて、つぎのように表現できる。
ω
LL+BR
ωRR=
(1‑BL )
ωL [ yC+
(1‑y)
(1‑B
D)DJ(79)
( 8 0 a ) ( 8 0 b )
( 8 1 )
そして
( 7 8 )
式のR
,(73)式のC
および( 7 4 )
式のD
を( 8 1 )
式ヘ代入して、 zについて解いた結果はつぎのように整理される。
Z = E L ( S Y O J t
D+ B R ω ' R e R t R )
eL(S+B R
ω' R + B [
,ωL ) +S
一(1‑B L )
ωL( 8 2 )
ただしここにS
は下記のものである。S三(1‑
y ) B
D (1 ‑B
L)ωL( 8 3 ) ( 8 2 )
式は労働供給がらとらの変化に反応する仕方を描いている。もし当初に環境税が無 かったならば(ら=t R=0)
、( 8 2 )
式右辺はゼロになるので、新たに環境税を課すとしても、それは労働供給に何の影響も及ぼさない。したがって
( 8 2 )
式はらまたはらの少くとも一 つが正値である状態において有効である。ら
>0
,tR=O
の場合には( 8 2 )
式は次式に帰するoZ = E L S Y O J t
De L
(1 ‑y ) B
D (1‑t L ) Y O J t
D(S+B L 叫 )
ε(L+
1)一ωL
{(1‑y)B
D(1‑t L ) +td(
εL+
1)‑1 ( 8 4 )
ここでは (8)式よりB
L=t
Lであることを考慮に入れて、上式最右辺が得られた。またら
=0
,tR>O
の場合には( 8 2 )
式は次式に帰するoL=
‑ εLB R
ω1 R e R t R
εL(B
R
ω'R+BLω~) 一 (1-BL
) ωL( 8 5 )
ところで