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カンボジアの熱帯環境に暴露した岩石の初期風化と 微生物侵入による影響

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─ ─9 ( )9 世紀の石造建築物であり,これまで遺跡の保存修復の観 点から,石材の劣化に関する研究が多数おこなわれてき た.例えば,石材の風化特性に着目した研究では,藁谷 (2005a)は桃色砂岩とラテライトのスレーキング実験を おこない,吸水−乾燥を繰り返す環境下では桃色砂岩よ りもラテライトの方が早く劣化することを示した.藁谷 (2007)では,遺跡を構成する砂岩ブロックの放射温度 測定から,温度勾配が小さいために破壊効果は大きくな いとしながらも,砂岩表面部での熱による膨張−収縮の 可能性を示した.また,内田(2007,2011)は,アンコー ル遺跡群の石材劣化に着目し,各種測定の結果から石材 強度や塩類風化,日射,生物活動等による影響を指摘し ている.さらに,石材を取り巻く風化環境との関係に着 目した例としては,藁谷(2004,2005b)による遺跡内の 温湿度測定の実施や,石柱の剥離深度測定(Andre, 2006;原・藁谷,2010;比企,2013)などが挙げられる. Ⅰ はじめに 熱帯気候下における岩石の風化プロセスについては研 究事例が少なく,詳細な風化プロセスや物理的風化速度 については未解明である.岩石の風化速度(特に物理的 風化速度)は松倉(1996)にまとめられているように, 建築年代が既知である人工構造物の風化・侵食量を用い て見積もられることが多い.しかし,これらから求めら れる風化速度は,人工構造物が数百∼数千年オーダーで 風化・侵食を被った結果であるため,風化期間中のプロ セスを知ることは難しい.そこで岩石の風化量あるいは 風化速度を求めるための方法として,岩石タブレットを 用いた野外風化実験が知られている(たとえば松倉, 2008).この手法は長期にわたる実験期間が必要なもの の,特定の風化環境下における岩石の風化特性を明らか にできる. 熱帯環境下に位置するアンコール・ワット遺跡は12

羽田 麻美・藁谷 哲也

In order to clarify the processes of rock weathering in tropical climate, a field experiment was carried out for 934 days at the Angkor Wat temple in Siem Reap, Cambodia. The experiment used 50 mm-sided cubic rock samples of sand-stone, laterite, tuff-breccia, marble, limesand-stone, granite, and gabbro. Rock samples were characterized semi-annually in terms of weight loss, colour value with a soil colour-meter, ultrasonic propagation velocity, magnetic susceptibility, rock hardness, and microscope observations. After this experiment, roughness of rock surfaces and SEM-EDS analyses were carried out. Weight loss of the samples increased in the following order: laterite, tuff-breccia, sandstone, limestone and marble, granite and gabbro. No significant changes were found in the ultrasonic propagation velocity, magnetic suscepti-bility, and rock hardness. With regard to biological weathering, results indicate the following: (1) Microorganisms invade the surface of tuff-breccia and sandstone samples, as they have larger porosity than the other rock types. (2) The roots of microorganisms penetrate into the spaces between minerals, resulting in the weakening of rock surfaces.

Keywords : field experiment, rock weathering, microorganisms, Cambodia

カンボジアの熱帯環境に暴露した岩石の初期風化と

微生物侵入による影響

Initial Weathering of Various Rock Samples Accompanied with Microorganisms

under a Tropical Climate: Cambodia

Asami HADA and Tetsuya WARAGAI

(Received November 17, 2014)

Department of Geography, College of Humanities and Sciences, Nihon University, 3−25−40, Sakurajosui, Setagaya−ku, Tokyo, 156−8550 Japan 日本大学文理学部地理学科:

〒156−8550 東京都世田谷区桜上水3−25−40 日本大学文理学部自然科学研究所研究紀要 No.50 (2015) pp.9−24

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羽田 麻美・藁谷 哲也 ─ ─12 ( )12 2.暴露試験と風化程度の分析方法 2.1.暴露試験 暴露試験に利用する試料は,後述するTICO やエコー チップによる測定限界を考慮して,一辺5 cm の立方体 供試体とした.岩石試料は,はじめにカッターを用いて 立方体に整形し,その後研磨機により表面を♯220 の研 磨剤で研磨した.さらに,設置時に天面となる1面のみ, ♯800 の研磨剤で磨き供試体とした.このような供試体 を各岩石試料につき2個,計14個準備し,試験の出発供 試体とした. 整形 供試体は,それぞれ ステンレス 製ネッ ト(φ 88 mm,D55 mm,メッシュ間隔 1 mm)に入れ,AMOS 露 場 内 の 西 側 に 置 い た 架 台(W600 mm × D240 mm× H210 mm)に載せ,防鳥用ネットをかけて設置された (写真1b).この架台は長辺が南北になるように配置さ れており,地上からの高さは32 cm である.設置期間は 2011年8月24日∼2014年3月15日(計 934日間)である. 2.2.風化程度の分析方法 経時的に供試体の風化程度を知るため,試験開始前と 終了後,および試験期間内の2012年3月16日(設置から 205日目),2012年8月3日(345日目),2013年3月16日 (570日目),2013年9月3日(741日目)にそれぞれ供試 体の物理的・力学的性質を分析した. 試験前・後における測定項目として重量,色彩値,帯 磁率,超音波伝播速度,反発強度,および表面粗さ(ラ フネス値)などを日本国内の実験室内で測定した.また, 現地における試験期間中は重量,色彩値,帯磁率,超音 波伝播速度,反発強度の測定とマイクロスコープを用い た表面観察などをカンボジア国内の作業室で行った.こ の現地測定では,供試体を一時的に回収し,洗浄・乾燥 後に重量などの各種測定項目を測定した.ここで,現地 の実験設備の都合上,洗浄には電気伝導度の低いミネラ ルウォーターを蒸留水の代用とし,乾燥にはドライヤー を用いた.このため,乾燥重量は定期的に供試体の重量 を測り,重量が変化しなくなった時点を絶乾状態とみな して計測した.これら測定に要した期間はおおむね1 週 間である. 風化程度の測定では,重量測定は電子天秤(新光電子 AJ-620JS,実目量0.001 g)を用いて測定した.色彩値は 色彩色差計(コニカミノルタ社製CR-200)を用いて,供 試体天面の色彩値を計測した.この色彩色差計では,1 つの色をL*ab値の3つの数値で表現し,Lが明度, a*bが色相と彩度をあらわす色度に対応する.この測 器は測定面が直径約0.8 cm あり,測定は天面を 4 分割し た計4 ヶ所でおこなった.また,磁性鉱物の風化による 変質を把握するため,帯磁率計(エキスポラニウム社製 KT-9)を用いた帯磁率の測定をおこなった.測定には, 設置した際の底面にあたる面を除く5 面をそれぞれ 1 回 ずつ測り,これらの平均を求めた.帯磁率の測定は,室 内における磁性物質の影響を避けるため,野外試験実施 場所でおこなった. 風化による供試体の力学的変化を示す指標として, TICO(プロセク社製)を用いて超音波伝播速度を計測し た.この測定に使用した面は,設置した際の側面2面(北 面・南面)である.また,エコーチップ硬さ試験機(プ ロセク社製Equotip3)を用いた反発強度を測定した.測 定には,超音波伝播速度試験に使用していない側面2 面 (東面・西面)を用いた.測定方法は,表層の風化状況 を把握することを目的とし,青木・松倉(2004)になら い単打法で1面につき4 ヶ所(すなわち,1時期の計測に つき計8 ヶ所)を測定した. 試験前後において,供試体表面の風化程度を把握する た め, 超 深 度 形 状 測 定 顕 微 鏡( キ ー エ ン ス 社 製 VK-8500)を用いて表面粗さ(ラフネス値)を測定した.ま た,試験期間中はマイクロスコープ(佐藤商事社製 MJ-302)を用いて試料天面の観察をおこなった. 灰 灰色色砂砂岩岩 ララテテラライイトト 斑斑レレイイ岩岩 花崗花崗岩岩 石石灰灰岩岩 大理大理石石 凝凝灰灰角角礫礫岩岩 採石地 シェムリアップ(カンボジア) シェムリアップ(カンボジア) 黒石山(福島) (福島)桧山 秋吉台(山口) 阿武隈(福島) 潜ヶ浦(宮城) 真比重 Gs 2.68 3.15 3.01 2.68 2.71 2.71 2.32 乾燥単位体積重量 γd (g/cm3) 2.28 2.32 3.00 2.65 2.68 2.67 0.95 湿潤単位体積重量 γw (g/cm3) 2.40 2.56 3.00 2.65 2.69 2.67 1.50 間隙率 n (%) 14.75 26.27 0.44 1.33 1.03 1.55 59.16 圧裂引張強度 (乾燥) Std (Mpa) 5.94 1.70 18.82 14.26 10.54 3.94 0.82 (飽和) Stsat (Mpa) 2.48 1.16 16.17 13.04 8.55 4.00 0.60 表1 試験に使用した7種の岩石の物性値

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─ ─13 ( )13 カンボジアの熱帯環境に暴露した岩石の初期風化と微生物侵入による影響 灰 岩99.7%,大理石 99.8%,花崗岩 99.8%, 斑レイ岩 99.9%となり,特にラテライト,凝灰角礫岩でステンレ ス製ネット内に試料の砕片がみられる等,物理的風化の 様子が観察された.なお,砂岩では743 日後から 934 日 後にかけて,重量が0.25 g 増加する現象がみられた.砂 岩では物理的に破砕する過程がほとんど観察されなかっ たことから,増加の理由は本章4 節で述べるような微生 物の付着によるものと考えられる. Ⅳ 分析結果 1.重量損失量 設置時の重量を基準(100%)とし,基準値からの変化 を図3 に示した.重量変化の大きい順に並べると,ラテ ライト> 凝灰角礫岩 > 砂岩 > 石灰岩・大理石≧花崗岩・ 斑レイ岩となった.実験終了時の重量(2個の平均)は, ラテライト98.4%,凝灰角礫岩 98.9%,砂岩 99.7%,石 図3 岩種別の重量変化 注)砂岩①は743日目以降,表面観察のため一部カットした。したがって,以降の重量測定は欠測となっている。

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羽田 麻美・藁谷 哲也 ─ ─14 ( )14 2.色彩値 供試体天面の色彩値のうち,本研究ではL*値(明度 を示し,黒色の0 から白色の 100 までの 101 のデジタル 値に分割)に着目し,その平均値の変化を図4に示した. 図4をみると,大理石,石灰岩,花崗岩,ラテライト, 斑レイ岩はほぼ横ばいに推移し,顕著な変化はみられな い.しかし,凝灰角礫岩と砂岩については,L* 値の急速 な低下(すなわち黒色化)がみられる.凝灰角礫岩は設 置後からL*値の低下が始まり,572日後には全面が黒色 化し,以後L*値の低下はとどまった.砂岩は,572 日以 降L*値の低下が始まり,現在も黒色化が拡大しつつあ る.これらの供試体について,実験初期(2012年3月22 日)と実験終了時(2014年3月15日)の天面の様子を図 5 に示した.なお,砂岩と凝灰角礫岩における黒色化の 原因については,本章4 節に述べるような微生物の付着 が関係している. 3.超音波伝播速度,帯磁率,反発強度 超音波伝播速度には顕著な経年変化はみられず,実験 中の測定値を比較すると,砂岩2573 ∼ 3550 m/s,ラテ ライト2410 ∼ 2980 m/s,斑レイ岩 3800 ∼ 4547 m/s,花 崗岩3720 ∼ 4470 m/s,石灰岩 3650 ∼ 4470 m/s,大理石 3720 ∼ 4470 m/s,凝灰角礫岩1623 ∼ 1820 m/s の間を変 動する値が得られた.実験期間中,大幅な速度低下がみ られなかったことから,供試体内部での亀裂等の形成は ないものと推測された. 帯磁率の値には顕著な変化はみられなかったが,実験 前後の値を比較すると,砂岩①で2.71 から 2.03,砂岩② で2.71 から 2.68,ラテライト①で0.58 から 0.53,ラテラ イト②で0.58 から 0.56,斑レイ岩②で45.8 から 45.2,花 崗岩②で3.85 から 3.40,凝灰角礫岩①で1.57 から 1.48 に 若干低下した.また,磁性鉱物をほとんど含まない石灰 岩や大理石では,値は0.01 ∼ 0.02 の間を推移し,ほと んど変化がみられない.しかし,その他の磁性鉱物を含 む斑レイ岩①や花崗岩①,凝灰角礫岩②では3 ∼ 4%程 度の値の増加がみられ,前述した若干の低下は測定誤差 範囲であることも示唆され,ほとんど変化がないものと みなした. エコーチップ硬さ試験機による反発強度は,1 面につ き計4時期(2012年8月3日,2013年3月16日,9月3日, 2014 年 3 月回収後)の測定をおこなっているが,測定後 には微小な打撃痕が残っており,同一箇所の測定はおこ なっていない.測定結果からは,超音波速度と帯磁率同 様に顕著な変化はみられず,実験中の測定値(8 ヶ所の 平均値)を比較すると,砂岩481.4 ∼516.8HLD,ラテラ イ ト228.1 ∼ 426.3HLD, 斑 レ イ 岩 793.6 ∼ 840.3HLD, 花崗岩833.5 ∼ 878.9HLD,石灰岩 645.9 ∼ 680.3HLD,大 理 石548.0 ∼ 584.8HLD,凝 灰 角 礫 岩 207.4 ∼ 270.9HLD の間を変動する値が得られた. 図4 岩種別の色彩値L*の変化

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─ ─23 ( )23 カンボジアの熱帯環境に暴露した岩石の初期風化と微生物侵入による影響 用いて暴露実験終了後の供試体天面について,EDXによ る面分析をおこなった.測定の結果,微生物の主な組成 は炭素であり,他に窒素,ナトリウム,マグネシウム, アルミニウム,微量元素としてケイ素やカルシウム等を 含むことがわかった.なお,天面と供試体内部の状態を 比較するため,天面から約6 mm 下でカットし,新鮮な 岩石内部も同様の元素分析をおこなった.天面にしかみ られない元素としては,微量ではあるが塩素と鉄が検出 された.ただし,これらの微量元素は観察した面におい て一様に分布しており,微生物活動との関連はみられな かった. Ⅵ まとめ 以上,熱帯環境における7種の岩石の暴露実験により, 微生物活動による岩石の風化初期段階の様子が観察され た.設置後2 年半の実験では,物理的に岩石が破砕され るほどの風化は生じず,微生物が岩石表面に選択的に付 着し,それらが鉱物間に侵入していく.この過程では, 岩石のもつ間隙率の大きさと鉱物組成が,微生物の侵入 しやすさに関与している.また,微生物が岩石に及ぼす 影響としては,根の侵入により表層の鉱物を剥離・破壊 していくという物理的風化過程が考えられた.今後は, 侵入した微生物の生物学的な特性を踏まえ,岩石風化に 与える影響を検討していく必要がある. 謝辞 本研究の実施に際しては,石澤良明教授(上智大学アジア 文化研究所),故片桐正夫教授(日本大学名誉教授),三輪悟 氏(上智大学アジア人材養成センター)をはじめとする,上 智大学アンコール遺跡国際調査団によるご支援を頂いた.遺 跡内における調査については,APSARA(the Authority for the Protection and Management of Angkor and the Region of Siem Reap)より許可を頂いた.また,日本大学文理学部地球シス テム科学科の竹村貴人先生には電子顕微鏡をお借りした.同 物理学科の橋本拓也先生にはSEM-EDX 装置をお借りし,同 化学科助手の杉本隆之氏には使用方法をご教示頂いた.使用 した供試体の作成には比企祐介氏(当時,日本大学大学院理 工学研究科・院生)の,物性試験には前田拓志氏(日本大学 大学院理工学研究科・院生)の協力を頂いた.以上の方々に, ここに記して深く御礼申し上げます. なお本研究は,文部科学省科学研究費補助金(2010 ∼2013 年度,基盤研究B,課題番号22401005,研究課題:カンボジ ア・アンコール遺跡における石材の風化量の定量化とその寿 命に関する研究,研究代表者:藁谷哲也)による助成を受け た. 2.微生物による風化の実態 これまで述べた微生物の付着に伴い,基物となる岩石 にはどのような影響が及んでいるのかを検討した.すな わち,微生物の侵入は岩石内部に及んでいるのか,物理 的風化の可能性について,卓上型電子顕微鏡(日立社製 TM-1000 Miniscope)を用いて岩石表層の観察をおこ なった. 観察に用いた試料は,野外実験で使用した試料(凝灰 角礫岩・砂岩)と,比較のためにアンコール・ワット遺 跡を構成する砂岩から剥離した原位置不明の小岩片であ る.これらの試料について,岩石カッターを用いて垂直 方向に切断し,表面から内部にかけての断面を電子顕微 鏡で確認した. 写真6 に示した凝灰角礫岩では,微生物が厚さ 100μm 程でマット状に付着し,微生物下部では,岩石の空隙を 侵入していく様子がうかがえた.特に写真6b では,微 生物が侵入した際に生成されたとみられる,長さおよそ 20μm以下の微細岩片が顕著に観察できる. 砂岩の内部の様子は,写真7 に示した.野外実験に用 いた供試体では,写真7a の青枠内にみられるように, ごく表層の40μm程度の凹みに微生物がポケット状に入 り込んでいるに過ぎない.しかし,遺跡を構成していた 砂岩片(写真7b ∼c)では,鉱物の粒子間に微生物が入 り込む様子が観察できる.例えば,写真7b では,大き さ約150 ∼200μmの粒子間に,線状の微生物が侵入し, 粒子間の剥離を促している.写真7c では,厚さ 500μm 程の微生物が付着し,その微生物の内部にはおそらく岩 石表層から分離したであろう砕片が抱え込まれている. この様子は,McCarroll and Viles(1995)が論じた,岩 石の割れ目から侵入した地衣類が生息域を拡大し岩石の 破片を取り込んでいくという風化モデルに類似する.ま た写真7d では,砂岩に含まれる雲母が剥がれ,表層を マット状に覆う線形の微生物がその雲母を抱え込んでい る様子が観察できる.これまでAndre et al.(2011)にお いてアンコール遺跡を構成する各種砂岩のうち,本研究 でも使用した灰色砂岩がもっとも耐久性が低く,それは 灰色砂岩に多く含まれる黒雲母の層状構造が一要因とし て挙げられている.写真7d で観察された黒雲母の剥離 は,Andre et al.(2011)による結果を裏付けるものであ ろう. また,付着した微生物や周辺鉱物の化学組成を調べる ため,SEM-EDX(JEOL社製,JCM-5700,JED-2300)を

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羽田 麻美・藁谷 哲也 ─ ─24 ( )24 青木 久・松倉公憲(2004):エコーチップ硬さ試験機によ る青島砂岩の表面風化層の強度把握.地形,25(4), 371-382. 内田悦生(2007):アンコール遺跡の石材と非破壊調査.物 理探査,60(3),223-234. 内田悦生(2011);『石が語るアンコール遺跡−岩石学からみ た世界遺産−』,早稲田大学出版部,254p. 朽津信明(2008):カンボジア・タ・ネイ遺跡における蘚苔 類の繁茂と砂岩の風化.保存科学,47,111-120. 原 正剛・藁谷哲也(2010):カンボジア・アンコール遺跡 に見られる砂岩ブロックの風化形態と風化深度.地理誌 叢,51(2),30 ∼37. 比企祐介(2013):アンコール・ワット回廊部を構成する砂 岩柱の風化環境と風化プロセスに関する研究.平成24 年度日本大学大学院理工学研究科地理学専攻修士論文, 107p. 前田正男・松尾嘉郎(1974):『図解 土壌の基礎知識』.農 山漁村文化協会,9-10. 松倉公憲(1996):石造文化財の保存:岩石・石材における 風化作用とその速度.土と基礎,44(9),59-64. 松倉公憲(2008):『地形変化の科学―風化と侵食―』.朝倉 書店,242p. 藁谷哲也(2004):アンコール・ワットにおける石材の風化 に関わる温・湿度の年変化.日本大学文理学部自然科学 研究所研究紀要,39,59-67. 藁谷哲也(2005a):アンコール・ワットを構成する砂岩およ 参考文献 びラテライトの風化環境と風化プロセス.地形,26(3), 239-257. 藁谷哲也(2005b):アンコール・ワット第一,第三回廊の位 置による風化環境の差異.地理誌叢,46(1),28−38. 藁谷哲也(2007):アンコール・ワットにおける砂岩柱の劣 化に与える岩石表面温度の効果.日本大学文理学部自然 科学研究所研究紀要,42,15-26.

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McCarroll, D. and Viles, H. (1995): Rock-weathering by the Li-chen Lecidea auriculata in an Arctic Alpine environment.

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