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- Executive Summary - 中国では大規模なショッピングセンターの開業が続いている 背景には 都市化の進展や商業不動産への 投資拡大などがあるが オープン当初の活況が長続きしないケースなどもある その中で成功しているショ ッピングセンターの戦略を紹介し 当面の課題についても検討する

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2014 年 1 月号

産 産業業調調査査 1 中国ショッピングセンター業界―急拡大、新しい運営モデルの模索― 産 産業・業・地地域政域政策策 5 環境・資源制約下の中国国土総合開発計画の制定・実施動向について ―地域版「主体機能区計画」の作成動向とその注目点を中心にー㊦ 中 中国国アアドバドバイザイザリリーーのの現場現場からから 9 合弁企業設立の投資手法∼主な投資手法および価値算定手法について∼ 中 中国戦国戦略略 13 中国の多国籍企業の台頭と中国内外への影響 法 法務務 19 「消費者権益保護法」の改正について 税 税務務会会計計 29 中国政府が改訂した租税条約(その 3) みず ほ銀 行 中国営業推進部 みずほ銀行(中国)有限公司 中国アドバイザリー部

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-産業調査 中国ショッピングセンター業界 中国では大規模なショッピングセンターの開業が続いている。背景には、都市化の進展や商業不動産への 投資拡大などがあるが、オープン当初の活況が長続きしないケースなどもある。その中で成功しているショ ッピングセンターの戦略を紹介し、当面の課題についても検討する。 産業・地域政策 環境・資源制約下の中国国土総合開発計画の制定・実施動向について㊦ 2010 年 12 月末に公表された国務院「全国主体機能区計画」の中で、各地域に対して地域版の「主体機能 区計画」の早期策定が求められていた。これをふまえて現在までに 19 の省・直轄市が地域版「主体機能区 計画」を公表している。本稿では前号に続いてこれらの動向を紹介し、その意義や課題とともに、国土開発 総合プランとしての適合性や影響度などについても検討する。 中国アドバイザリーの現場から 合弁企業設立の投資手法 昨今の日系企業の動きとして、中国国内市場の開拓を図るため中資系企業との合弁形態へ回帰する傾向 が見受けられる。しかし、中国企業買収には様々なリスクが存在するため、経験ある専門家の下、しっかり としたデューデリジェンスを実施し、対象会社の実態と企業価値を把握することが大切である。本稿では、 合弁企業設立時の主な投資手法および企業価値評価の概要を紹介する。 中国戦略 中国の多国籍企業の台頭と中国内外への影響 中国経済のグローバル化が進むにつれて、中国の多国籍企業が存在感を強めてきている。中国の多国籍 企業には、特徴的な経営スタイルや管理特性の問題があるが、その対外投資範囲は今後ますます拡大 し、投資対象産業も多様化するであろう。世界のグローバル企業は、中国の多国籍企業がもたらす競争環 境の変化に対応し、戦略を練り直す必要がある。 法務 「消費者権益保護法」の改正について 全人代常務委員会は 2013 年 10 月 25 日、「中華人民共和国消費者権益保護法」改正案を可決した。2014 年 3 月 15 日から施行される。消費者権益保護のため事業者責任を強化する内容となっており、主に「事業 者義務」「消費者組織」「紛争解決」「法律責任」において重要な改正が行われた。本稿では、事業者にとっ て重要な改正点に関して紹介する。 税務会計 中国政府が改訂した租税条約(その 3) 中国政府は、1983 年に初めて日本政府と日中租税条約を締結してから、2013 年 1 月までに 99 ヵ国(96 ヵ 国効力発生)と租税条約を締結し、香港とマカオの特別行政区とも租税協定を締結した。2007 年以降は、7 ヵ国と租税条約の改訂を行っている。租税条約改訂に関する第 3 回目の本稿では、キャピタルゲイン(財産 譲渡益課税)、役員報酬に関する最近の改訂内容を紹介する。

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産業調査

中国ショッピングセンター業界

急拡大、新しい運営モデルの模索

― 1.大量にオープンするショッピングセンター 2013 年 7 月 5 日、上海中心部に世界最大級のショッピングセンター(以下 SC)「環球港(Global Harbor)」がオープンした。ヨーロッパ風の建築スタイルで、地下 2 階∼地上 4 階、総建築面積 48 万㎡を誇り、オープンより 3 日間の来店客数は 50 万人を超えた。だが目下の中国では、SC の開業でこのような盛況を呈するのは珍しいことではない。上海を例に挙げてみると、2012 年 初から現在までに、宝山万達広場(WANDA PLAZA)、環貿 iapm 商場、新世界 K11、静安嘉里セン ター(Kerry Centre)など 10 ヶ所以上の SC が開業し、新規総営業面積は 100 万㎡超となって いる。これら SC は開業時に開幕イベントやセールを行い多くの人の注目を集めていた。 【図 1】「環球港」(外観) 【図 2】「環球港」(内部) (出所) 公開情報 (出所) 公開情報 しかし、このような過熱とも言える程の盛況は長く続かず、オープン当初にあった驚異的な 集客力は落ち着き、SC 経営は安定期に入る。この大きな温度差が、中国 SC 業界の現状である。 例えば、上海郊外の宝山万達広場では開業 3 日間の来店客数が 60 万人に達しており、週末など は周辺道路では渋滞が発生するほど混雑していたが、開業 1 年後には 1 日あたりの来店客数は 4 ∼5 万人前後で推移している。仲量聯行(Jones Lang Lasalle)のレポートによると、2012 年、 上海と北京では、安定期に入る店舗が増え、両地域の SC 売上伸び率は低下傾向が見られた。 SC はデパートの進化形として、ショッピング・飲食・レジャー・エンターテイメントなどの 機能を集め、消費者に「ワン・ストップ・サービス」を提供している。ハイエンド向けに品数 を豊富に揃え、都市部住民の高まる消費需要を満足させることができることから、小売業界に 占める割合が次第に高まっている。中購聯(Mall China)などの統計によると、2012 年末時点 で開業中の SC は計 3,100 ヶ所、営業延べ面積は 2 億㎡超であった。2012 年だけでも 325 ヶ所が 新規開業(過去 10 年間で年間平均約 19%増)した。一方、従来型のデパートは個性に欠け、規 模も小さく、外観や内装なども古いなどの理由で廃れつつある。例えば、かつて上海の繁栄を 代表する国営デパートであった「第一百貨、第二百貨、・・・第十二百貨」の 12 ヶ所のうち、現 在営業しているのは 3 ヶ所だけとなった。 瑞穂投資諮詢(上海)有限公司 研究部 王 穎華

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産業調査 【図 3】中国 SC 店舗数推移(2002∼2012 年) 【図 4】SC とデパートの比較 (店舗) 850 1,120 1,800 2,1102,270 2,522 2,775 3,100 1,440 650 550 0 500 1,000 1,500 2,000 2,500 3,000 3,500 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012(年) 中国SC店舗数 年平均 伸び率 約19% SC デパート 経営 形態 テナント出店 (ハイパーマーケット、 専門店、娯楽施設 など) テナント出店 (専門店など) サービス 内容 様々な機能を集約し ており、集客力が高 く、規模効果あり。 総合小売が中心。レ ジャーや飲食などの 業態が少ない。 目的 ショッピング+娯楽など ショッピングなど 時間 非常に長い 比較的長い 位 置 づ け 消 費 行 為 (出所) 中購聯 (出所) 公開情報に基づき瑞穂投資諮詢 (上海)有限公司作成 2.SC 業界急成長の背景 2.1 不動産業界の爆発的な成長による刺激 中国ショッピングセンター業界の誕生と 発展は、不動産業界と密接な関係がある。 2002∼2012 年は、不動産業界が急成長し、 開発投資額も 10 年間で約 10 倍増、家屋竣工 面積の年間伸び率は 180%を超えた。都市改 造や新たな住宅コミュニティの形成に伴い、 様々な消費者層が形成され、それに応える商 品やサービスが提供できるショッピング施 設への需要が高まった。 ショッピングセンターの開設は都会の商 業圏形成に役立ち、周辺の地価上昇にも寄与 している。2008、2009 年の中国商業不動産 投資額は年率 15%で伸びたが、その後、住 宅規制策により押し出された投資が商業不動産へ流れ、これにより 2010 年には伸び率が 30%以 上に達した。2013 年 10 月末時点での、建設中の商業不動産総面積は 7.3 億㎡を超えた。平均建 設期間を 2∼3 年とすると、これらは 2015 年前後に集中的に完成し、今後 3 年間の商業不動産 の供給量は増え続けることになる。 2.2 都市化及び消費者の生活様式の変化 中国は世界で最もハイスピードで都市化が進んでいる国であり、中心部人口が百万人を超え た都市は、2002 年には 102 都市であったが、2012 年末には 127 都市まで増加した。市街区面積 及び人口の持続的な増加は、中国消費者の生活様式と消費理念をも変えており、自家用車普及 台数も外食回数も増加し、商業施設の環境に対する要求も高まった。従来の小売は品揃えが単 調で施設空間が狭く、交通が不便などのデメリットがあったのに対し、ショッピングセンター は交通が便利で、「ワン・ストップ・サービス」や、快適な環境、十分な駐車スペースを提供す るため、若年層や中高所得者層に人気がある。 【図 5】不動産開発投資完成額伸び率推移 (2000∼2012 年) (%) 20 22 30 23 16 16 38 31 18 15 18 25 28 33 25 30 28 21 22 31 35 25 19 29 32 20 10 20 30 40 50 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 (年) 不動産開発投資完成額伸び率 商業不動産投資完成額伸び率 0 (出所) 国家統計局

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産業調査 3.中国における SC の成功モデル 3.1 万達広場の「体験型」モデル(二線都市を中心に展開) 「体験型」モデルとは、ショッピングセン ターの中で、店舗でのショッピングや飲食以 外の需要を意識し、映画館やアイススケート リンク、ゲームセンター、フィットネスジム 等を設けて、消費者に自ら参加できるオリジ ナルサービスや製品を提供することである。 現在、万達集団は中国の地方中核都市(二線 都市1)を中心に、50 以上の都市で 80 ヶ所超 の万達広場(WANDA PLAZA)を運営している が、テナント配置の際に、この「体験型」テ ナントを多く取り入れている。ファッション、 ジュエリー、化粧品等の比較的テナント料の高い小売業態の比率を 5 割以下に抑え、それに代 わりテナント料の低い「体験型」サービスを配置することで、他の SC や百貨店との差別化に成 功している。更に、現在、二線都市では大きくて、華やかなレストランでの食事が人気である ことから、このニーズに合わせ飲食店舗の配置にも工夫を凝らし、総営業面積の 2 割強を飲食 店エリアとし、最上階など集客しにくい位置に数千㎡規模のレストラン 1、2 店舗のほか、ピザ ハットや KFC などの人気店を配置している。これにより消費者を他のフロアにも誘導する効果 を狙っている。現在、多くの二線都市において万達広場はランドマーク的な存在となっている。 「体験型」ショッピングセンターの業態が1つの流れとなりつつある中、従来、テナントの 4 割を占めていたファッションや電化製品の割合が縮小し、飲食店の比率が高まっている。これ に加え近年は、アミューズメント施設の設置も増えている。2012 年、世聯地産(World Union Properties)が 102 ヶ所の SC を調査した結果、計 270 のアミューズメント施設が出店しており、 1ヶ所あたり 2.7 施設となっている。内訳はキッズコーナー23%、映画館 16%、ゲームセンタ ー11%で、その他スポーツジム、カラオケ店、アイススケートリンク等となっている。 3.2 上海 K11 購物芸術センターの「差別化」モデル(一線都市中心部で展開) 上海 K11 購物芸術センター(以下 K11)の前身である新世界購物広場は、上海市淮海中路とい う上海を代表する一大商圏にありながら、業態の位置づけが定まっておらず、商品も一昔前の ものばかりというイメージがあるため、ブランドの出店側からも消費者からも敬遠されていた。 2010 年、香港新世界グループはこの状況を打破すべく、「差別化」の手法を取り入れ、全面改 装と名称変更を実施し、これにより新たに建築面積 4 万㎡、芸術鑑賞・文化体験・自然保護・ ショッピングの機能を融合させた世界初の SC「上海 K11 購物芸術センター」が誕生した。 K11 は至るところに芸術作品を配置し、地下 3 階には専用の芸術活動エリアを設けている。館 内は芸術的、文化的な雰囲気が漂い、消費者に「ショッピングセンター」にいることを忘れさ せるような作りになっている。また K11 では、細部にこだわったサービスで競合相手と差別化 1 一般的な認識として、「一線都市」は政治や経済において全国に大きな影響を与える超大型都市(北京市、上海市、広州市、 深セン市)を、「二線都市」は地方中核都市のような経済や社会に対して大きな影響力をもつ大都市(天津市、南京市、武漢 市など)を、「三線都市」は戦略的な意義をもつ大中都市、経済規模が大きい小都市(温州市、珠海市、大慶市など)を指す。 【図 6】業態別テナント数構成推移 37 4 16 20 49 47 47 42 39 11 43 45 0 20 40 60 80 100 2000年以前 2001~2005年 2006~2010年 2011~2012年 (%) ファッション 飲食 その他(靴・鞄・時計・アクセサリー・化粧品など) (出所) 世聯地産

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産業調査 を図っており、優雅で快適な環境、程よい照明、プライベートショッピングガイド、豪華なト イレまで、他とは違うイメージを消費者に与えている。 差別化した業態の設定と経営モデルにより K11 は大きな成功を収めている。オープン半年前 の 2012 年 6 月時点で、すでに 97%のテナントが埋まっていた。現在の月平均来客数は 100 万人、 テナント料も近隣に比べ 5∼10%上昇し、約 100 元/㎡/日にまで高騰している。上海市以外にも 新世界グループは国内で 10 以上のプロジェクトを進めており、2018 年までには K11 プロジェク トを北京、広州、天津、青島、瀋陽などで 19 件展開する計画を打ち出している。 4.SC 業界の展望 4.1 当面続くオープンラッシュ 今後、都市化の影響と旺盛な商業不動産開 発により、一、二線ないし三線都市における ショッピングセンターの数は増加し続ける であろう。世界における建設中の SC 面積ラ ンキング上位 10 都市のうち 7 都市が中国に ある。予測では中国の SC は毎年 300 ヶ所の ペースで増え続け、2015 年には合計 4,000 ヶ所に達する。2011 年末時点で開業済の SC は 2,775 ヶ所、うち一線都市 815 ヶ所、二線 都市 1,420 ヶ所、三線都市 540 ヶ所であった。 今後 3 年間は二線都市が SC 建設の重点とな

り、仲量聯行(Jones Lang Lasalle)の予測では、2015 年末には一線都市の SC 面積は約 40% 増、二線都市は現在の 2 倍まで増加する見込みである。 4.2 SC の直面する課題 9 同質化 同質化は中国 SC 業界が抱える問題である。オープン当初こそ、物珍しさから多くの人が集ま ってくるが、その後は、各店舗とも運営スタイルが似ていることもあり、当初に比べ客足が減 る。今後数年で大量の SC が新規開業するなか、同質化を避け、魅力ある地元密着型経営を展開 し、盛況を維持していく努力が必要となる。上述のケースで見たような「体験型」、「差別化」 などの工夫が SC 経営者に求められている。 9 業界再編 中国の SC 業界は急成長段階にあり、市場参加者が玉石混淆の状態でパイを取り合っている。 今後、先行地域では拡張優先から経営効率改善へのシフトが予測され、更に業界内の統廃合が 必然の流れとなろう。 9 オンラインショッピングとの競争 インターネット及び情報技術がもたらしたオンラインショッピングは、店舗を構える小売業 企業にとって手ごわいライバルとなっている。如何にしてオンラインショッピングに立ち向か うか、如何にしてショールーミングへ対応していくかが、SC にとっての課題である。 以 上 【図 7】世界の建設中 SC 面積ランキング上位 10 都市 (2012 年) (万㎡) 245 218 189 100 99 97 95 93 92 90 0 50 100 150 200 250 300 天津 瀋陽 成都 アブ ダビ 武漢 ハノ イ 北京 上海 クア ラル ンプー ル 西安 (出所) 世聯地産

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産業・地域政策

環境・資源制約下の中国国土総合開発計画の

制定・実施動向について―地域版「主体機能区

計画」の作成動向とその注目点を中心にー㊦

4.主要地域の「主体機能区計画」の比較にみる主な特徴と強調点(東・中・西・東北部の複数行政区を例に) 本稿第 3 節で広東省を例に主体機能区計画の特徴と強調点の概要を取り上げたが、本節では 引き続き直轄市を含む東部地域と西部地域の複数省および中部地域の湖北省と東北部の吉林省 における主体機能区計画の特徴と強調点を概観し、その適合性と問題点を考察する。 表 4 に 12 地域の主体機能区計画による地域開発の主要指標をまとめた。域内の国土開発水準 を示す主要指標である「開発強度」は東部の天津、山東、広東の諸地域が高いほか、中部の後 進地域である安徽省もすでに広東省を上回る。下段⑦∼⑫の西部 5 行政区と東北部の吉林省は 6%以下で、特に比較的人口 が少なく域内資源が豊富な 内蒙古自治区と新疆ウイグ ル自治区は開発強度が低く、 2020 年でも 2%未満と開発余 地が大きいようである。 本来、開発強度は地域内の 国土開発と利用の総合的な 指標値として、各地域(計画 制定済地域)とも全国版のよ うに計画冒頭に一覧表の形 で掲げるべきであるが、北京 市 1)や上海市など最も発展が進んだ地域は 同表を掲げず(計画文中でも「開発強度」 への言及はない。一方、同じ直轄市で且つ 既に非常に高い開発強度を示す天津市が一 覧表を掲示)、すでに最も高い開発強度水準 に至ったと示すことに消極的な姿勢がうか がえる。北京市と上海市は「最適化開発地 域」として広東省以上に、各主体機能区内 での主要な経済発展指標を時系列に表示し 今後の計画を示す形になっている。 図 7 に示す北京市の主体機能区総合区画 地図を見ると、地域機能を都心部から、① 「首都機能核心区」(図中オレンジ色の部 1)北京市「主体機能区計画」冒頭では、首都として範を示すべく、早くも 2005 年に同計画の制定に着手したと述べている。 なお、上海市と北京市では「最適化開発地域」としての主体機能区区分の名称は異なっており、天津市等の他の地域でも異な るところがあり、統一されていない。 みずほ銀行 中国営業推進部 研究員 邵 永裕 Ph.D. yongyu.shao@mizuho-cb.co.jp 指  標 2010年 2020年 2010年 2020年 2010年 2020年 2010年 2020年 2010年 2020年 2010年 2020年 開発強度 (%) 10.29 11.17 31.4 33.8 10.87 11.17 16.0 17.0 7.71 8.38 13.65 >15.0 都市空間 (k㎡) 6,659 9,130 1,460 1,750 5,450 6,977 7170 8450 1,619 2,209 - 5,000 農村住民区 域(k㎡) 7,922 6,100 850 750 11,298 11,025 12100 11624.0 7,120 6,941 - 10,000 耕地保有面 積(k㎡) 29,140 29,087 4,420 4,373 63,333 63,027 11,271 ☆ 11,000☆ 46,580 46,313 -569.33* 林地保有面 積(k㎡) 101,165 102,616 - - 71,800 73,900 - 14,497.0 84,900 86,067 - 490.73* 森林被覆率 (%) 57.00 58.00 21.3 25.0 26.0 35.0 - 30.0 38.4 43.5 - 35.00 指  標 2008年 2020年 2010年 2020年 2010年 2020年 2008年 2020年 2010年 2020年 2010年 2020年 開発強度 (%) 3.16 4.50 4.11 4.56 1.30 1.40 0.74 1.10 4.58 5.00 5.69 6.14 都市空間 (k㎡) 1,420 2,060 1,670 2,320 3,270 4,200 2,600 4,900 2135 3210 2,010 2,410 農村住民区 域(k㎡) 3,380 3,280 5,165 5,034 6,958 6,800 4,800 5,600 5514 4444 5,510 5,510 耕地保有面 積(k㎡) 44,900 43,700 39,907 38,913 71,486 69,773 41,200 40,300 44,076 42,080 55,300 55,193 林地保有面 積(k㎡) 8,000 88,100 1,228 1,242428,186 450,800 67,600 92,100 132,278 142,020 82,780 95,787 森林被覆率 (%) 40.00 50.00 41.40 45.00 37.7 48.0 4..06 4.60 55.67 60.0 43.6 45.0 ①広東省 ⑤湖北省 ⑥安徽省 ⑦貴州省 ⑫吉林省 表4 主体機能区計画にみる中国四大地域一部行政地域の開発計画指標の比較 ⑧陝西省 ⑪広西自治区 ②天津市 ③河北省 ⑩新疆自治区 ⑨内蒙古自治区 ④山東省 資料)中国国家発展改革委員会及び関連地域政府のWEBサイトより作成。注)ピックアップした12の行政区のうち、①~④は東部地域、⑤と⑥は中部地 域、⑦~⑪は西部地域、⑫は東北地域に属する。「* 」欄の単位は万ha、「☆」は万畝。 図7 首都北京市の主体機能区総合区画地図 資料)北京市政府公布の「主体機能区 計画」より引用。 注)北京市の主体機能区は「首都機能 核心区」(オレンジ部分)、「都市機能拡 張区」(黄色)、「都市発展新区」(緑色) 及び「生態涵養発展区」(青色)の4分類 に策定されている。

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産業・地域政策 分)、②「都市機能拡張区」(同黄色)、③「都 市発展新区」(同緑)、④「生態涵養発展区」(同 青)に 4 分類し、東南方面への都市部の拡大を 指向していることが分かる。北京市が「計画」 冒頭に掲載した表には各機能区の商品小売総 額のデータも盛り込まれ、環境資源保全より経 済発展促進という政策指向が強いように見受 けられる。この点に関しては、むしろ天津市の 「計画」の方が環境・生態系を重んじ、先進的 サービス産業の発展を推進し、また周辺地域と の連携発展に関するスタンスも示されている。 一方、主要工業省の1つである河北省の主体 機能区総合区画地図(図 8)では隣接する北京 市と天津市の経済波及効果を強く期待してい ることが読み取れる。「首都経済圏」の経済集 積機能や産業連関効果の一段の顕在化を前提 とするかのように、東南部を中心に「最適化開 発地域」(赤の部分)が示されるが、「国家重点 開発地域」(濃いオレンジ)は集中的に省都石 家荘市のある西南部に縦長に計画されている のに対し、別に「地域重点開発地域」(薄いオ レンジ)が散発的に設置されている。 実際、河北省のみならず、多くの地域版「計 画」でも国家レベル(「国家級」)重点開発地域 と行政区レベル(「省級」)重点開発地域がそ れぞれ設置されているのが地域版主体機能 区計画の1大特徴と言える。 例えば、広東省に隣接する西部の広西チワ ン族自治区(地域区画の細分化が顕著)と中 国の最貧困地域である貴州省の主体機能区 総合区画地図(図 9 と図 10)を見ても、臨 海部(広西自治区)や行政中心都市近辺に重 点開発地域(国家級、省級)を置く戦略が指 向される一方、立地展開がかなり分散的な印 象である。その背景には、もともと中西部地 域は都市分布や産業集積が遅れており、中西 部には多くの開発制限・開発禁止地域が指定 され、産業誘致・都市発展を中心とする重点開発地域の建設企画はこれらを避けなければなら ないという事情がある。しかし、結果的に開発地域が広がることになり、集約的な土地利用に よる効率化や経済合理性に基づく産業集積の高度化が難しくなる恐れがある。 図9 広西チワン族自治区の主体機能区総合区画地図 国家級重点開発区域 省級重点開発区域 省級開発規制区域(農産区) 国家級開発規制区域 省級開発規制区域(生態区) 国家級開発禁止区域 省級開発規制区域 【凡 例】 資料)広西チワン族自治区「主体機能区計画」。 貴   州   省 雲   南   省 広 東 省 湖    南    省 南寧市部 図8 河北省の主体機能区総合区画地図 最適化開発地域 国家級重点開発地域 省級重点開発地域 国家農産品生産区 国家重点生態機能区 省級重点生態機能区 天 津 市        北 京 市 山 東 省 山 西 省 内 蒙 古 自 治 区 河 南 省 資料)河北省政府公布の「主体機能区計画」より引用。 石家荘市 遼 寧 省 図10 貴州省の主体機能区総合区画地図   【凡 例】 国家級重点開発地域 省級重点開発地域 国家農産品主産区 国家重点生体機能区 貴州省重点生態機能区 資料)貴州省政府公布の「主 体機能区計画」より引用。 四   川   省 重  慶  市 広  西  自  治  区 湖 南 省 雲 南 省 貴陽市

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産業・地域政策 中西部の多くの主体機能区計画に基づく都市化戦 略にも同様な問題が見られる。中部地域の湖北省と 東北部の吉林省の都市化戦略の配置図が代表的であ る。湖北省はその交通上の優位性や省内で発展して いる諸都市圏の集積・波及効果を生かし三角形の配 置によるダイナミックな都市化戦略を指向している が、その範囲は広く全域に及び実現可能性には疑問 符がつく(図 11)。比較的経済発展が遅れている吉 林省は「両区 4 軸」(省都の長春市と吉林市から成る 一体化都市区と延吉・龍井・琿春諸都市集合区およ び4本の経済発展軸)という戦略を打ち出している が、中核・大都市の数不足と都市立地の分散という ハンディを克服しながら広域な都市化戦略を実現し ようとする姿勢である(図 12)。湖北省の開発強度 はすでに相当高く(2010 年は 7.71%、2020 年は 8.38%を目指す)域内の資源開発の制約が高まって いるのに対して、東北部の吉林省や黒龍江省(2020 年の開発強度は 3.64%)は西部の多くの地域と同様 に比較的土地や森林資源に恵まれ、地域間の資源・ 環境協力が求められる。 5.地域版「主体機能区計画」制定意義とその課題および将来展望(結びに代えて) 紙幅の制限上、上記ではごく簡単に東・中・西および東北部の計 10 数地域の主体機能区計画 指標と主要区画地図を通じてその特徴と強調点を捉えてみたが、個別計画のより詳細な内容に まで立ち入ることができなかった。にもかかわらず、先進地域をはじめ各地域とも所在地域の 経済成長と都市発展を最も重視し、また都市空間の開発利用に開発強度の目標を設けて 2020 年 までの地域発展を図っていることが分かる。また多くの地域、特に中西部の経済後進地域にお いて資源環境の保全と有効利用を念頭に詳細な地域版環境・資源関連の地図データを整備し、 将来の青写真を描き出したことが分かる。つまり環境・資源の制約を強く意識しながらも持続 可能な経済発展と地域開発を目指すことが中央と地方のコンセンサスになってきたと言える。 新中国建国から 60 年以上を経て、初めて中央と地域の二つのレベルで国土・地域総合開発プ ランが制定され、これまでの行政区分や地理的区分とは別の「主体機能」によって新たに全土 を 4 種類(最適化開発地域、重点的開発地域、開発制限地域、開発禁止地域)に分類し、各地 域における経済開発と環境保全について指針や政策的要求が示されたことは評価に値し、その 意義は大きい。特に、各地域版計画では地域の現状に対する詳しい分析と今後の発展戦略の策 定がなされ、そのための基礎調査と準備作業に多大な努力が払われたこと自体が有意義である。 国土開発計画制定の主要な参考対象国の一つである日本の経験 2)から見て、計画効果はその制 2)日本は 1962 年から 1998 年までの 36 年間に 5 回ほど「全国開発総合計画」を制定し(「5 全総」、各時期の経済発展と地域 開発の状況に応じて異なる目標と開発方式を制定し、一定の政策効果を挙げてきた。それは比較的強力な行政指導、戦後 5 年 の 1950 年の「国土総合開発法」整備によるところが大きい。なお日本も当初都道府県レベルの国土総合開発計画の制定を予 定していたが、結果的に実施できなかった(町田博『地域開発序論』多賀出版、1999 年)。 図12 吉林省の主体機能区都市化戦略配置図 資料)吉林省政府公布の「主体機能区計画」より引用。 白城区域 長春吉林一体化都市区 延龍図・琿春都市集合区 長春市 吉林市 四平区域 都市区・都市集合 経済発展軸 主要都市化地区 遼源区域 通化区域 図11 湖北省の主体機能区都市化戦略配置図 資料)湖北省政府公布の「主体機能区計画」より引用。 襄十随都市群 武漢都市圏 武漢市 宜荊荊都市群 湖 南 省 江 西 省 重 慶 市 陝 西 省 河 南 省 安 徽 省

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産業・地域政策 定の遅きに失した点が多いとも考えられ るが、世界一の人口規模と広大な国土に関 して全国と地域(まだ 10 未満の地域が未 制定だが)の両面で「計画」作成ができた ことは一大壮挙とも言える。 ただ、計画自体の完全性の問題を除いて も、多岐の経済社会分野にわたる政策運営 (表 5)に対し、全国版計画と地域版との 整合性や協調性を保ちながらその二段構 えの開発計画をいかに効果的に実施し、 2020 年までに国土総合開発利用の目標実 現を保障できるかが最大の課題である。 最近の動向を見ると、2013 年 12 月 26 日に安徽省の計画公布が報じられ、残りの地域も続く ことが見込まれる。中央政府も同計画の制定実施について断固とした姿勢を新たに表明してい る。「全国主体機能区計画」公布から 2 年半経った 2013 年 6 月 18 日、主管庁の国家発展改革委 員会は、「主体機能区戦略の貫徹実施と主体機能区の建設推進に関する若干の意見」【発改規画 2013-1154 号】を公布し、政策の方向性と実施重点および計画実現のための保障措置を改めて表 明した。特に「主体機能区計画」を地域開発のための「戦略配置」として言及、東部の「最適 化開発区」の国際競争力向上、中西部などで の「重点開発区の新型の工業化・都市化過程 の促進」に加え、農産品主産区における農産 物の供給力アップと重点生体機能区での生 態保全機能の強化など、地域開発と環境保全 の両立を図る政策スタンスを強調している。 工業企業の東部沿海地域偏在(図 13)と 土地の不法利用問題の多発(図 14)という 現状を見ても、中西部の内陸部地域の「計画」 で重要視されている企業誘致と土地資源の 効率利用の実現は並大抵のことではない。中 央と地方双方にわたる強力なガバナンス 体制の構築に加え、「国土開発法」の早期 制定や資源と環境の協力・補償を主とする 地域間協力体制の構築が必要であり、これ に付随する一連の土地政策、外資政策、人 口政策などの政策調整が求められる。様々 な障害や多大な行政コストも生じるであ ろう。また、外資展開を含む企業活動が「主 体機能区計画」の実施により何らかの制約 や影響を受ける可能性があり、今後の政策 推移に留意したい。 以 上 図14 近年の中国土地利用違法件数と関連面積の推移 0 20,000 40,000 60,000 80,000 100,000 120,000 2008年 2009年 2010年 2011年 2012年 違 法 件 数 ( 件 ) 0 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000 70,000 関 連 土 地 面 積 ( h a ) 土地面積 うち耕地面積 違法件数 資料)中国国土資源部「2012中国 国土資源公報」より作成。 図13 中国各地域の工業企業の立地状況 (2011年) 江 西 湖 湖南 福 建 河北 遼 寧 河南 浙江 山東 江蘇 広東 球の大きさ: 従業員数=1451万人 四川 上海 天津 陝西 重慶 0 20,000 40,000 60,000 80,000 100,000 120,000 140,000 0 10,000 20,000 30,000 40,000 50,000 60,000 企業数(社) 売 上 高 ( 億 元 ) 資料)『中国統計年鑑 (2012)』より作成。 ・財政政策(移転給付の能力と地域対応支援の強化) ・投資政策(政府投資の専門化と民間投資の奨励) ・産業政策(産業構造調整と外資投資目録などの改定) ・土地政策(差別的な土地利用・管理制度で工業用地の規制強化) ・農業政策(主要農業生産地域への投融資・補助支援策の傾斜) ・人口政策(重点開発地域での積極的な人口受け入れ政策の実施) ・民族政策(各種開発地域の少数民族の生活改善と困難解決の重視) ・環境政策(地球環境対策を含む総合的な環境資源政策の実施) ・実績考課制度(科学的な地域開発を考課・評価するシステムの樹立) ・考課結果の活用システム(考課に見られた良い事例の推奨と交流) ・国務院関連部署の職責の明確化(計画・科技・工業情報・観察・財政  ・国土・環境など諸部門) ・省級の地方政府の職責(省クラスの主体機能区規画の作成、同規画  の実施推進および所轄下級地域の規画実施の指導と検査) ・全国統一のモニター・評価システム(全国統一の動態的モニタリング  システムの樹立と運営)      表5  全国主体機能区計画実施のための保障措置枠組       資料)「「全国主体機能区規画の公布発行に関する国務院通知」より作成。 実 施 対 策 関 連 政 策 関 連 措 置

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中国アドバイザリーの現場から

合弁企業設立の投資手法

∼主な投資手法および価値算定手法について∼ 1.はじめに 中国は 1979 年の改革開放以降、外貨呼び込み、先進技術摂取、自国産業保護・育成のため、 外国企業(外資)による直接投資を奨励してきました。従前からの業種による参入規制、合弁 企業への優遇税制や、1992 年の南巡講話以降の更なる外資優遇策の推進、追加的な開放政策等 の要因により、1993∼1995 年は合弁企業設立ラッシュとなりました。 当初は、中国事情を熟知した中国側パートナーを求めていた外国企業でしたが、中国側パー トナーとの利害対立や規制緩和の影響もあって独資形態を志向するようになり、2012 年末の中 国における外資系企業の進出形態は、独資形態が約 80%、合弁形態が約 20%と大部分が独資企 業となっています(図 1)。一方、昨今の日系企業の動きとしては、中国国内市場開拓を図るた め、パートナーとして中資系企業を活用する動きが再燃しており、合弁形態への回帰傾向も見 受けられます。 本稿では、合弁企業を設立する際の投資手法および企業価値算定手法についてご紹介します。 出所:商務部、国家統計局各種データより中国アドバイザリー部作成 2.合弁企業設立投資手法 合弁企業設立の投資手法は主に、①新規合弁企業設立と、②既存中国企業に対する資本参加 として②−1 持分譲受および②−2 第三者割当増資の引受などに分けることができます(図 2)。 以下、投資手法別の概要をご説明します。 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 198 3 198 4 198 5 198 6 198 7 198 8 198 9 199 0 199 1 199 2 199 3 199 4 199 5 199 6 199 7 199 8 199 9 200 0 200 1 200 2 200 3 200 4 200 5 200 6 200 7 200 8 200 9 201 0 201 1 201 2 合弁 合作 独資 (単位:万社) 【 図 1 】外資企業の進出形態 【外資企業の進出形態(全世界)】 みずほ銀行(中国)有限公司 中国アドバイザリー部 國浦 祥子 sachiko.kuniura@mizuho-cb.com

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中国アドバイザリーの現場から ① 新規合弁企業設立 中国企業および日本企業がそれぞれ出資をして、新規に合弁企業を設立する投資手法です。 通常、日本企業は現金を出資することが一般的ですが、中国企業は土地や建物等を現物出資す ることもあります。新規に会社設立をするため、中国企業に対するデューデリジェンスや企業 価値評価は必要ありません。投資額については、当該プロジェクトでの必要投資額を算出し、 中国企業と合意した出資比率に応じて出資すればよいことになります。 また、既存中国企業に対する資本参加(持分譲受および第三者割当増資の引受)に際して実 施したデューデリジェンスで中国企業に重大な瑕疵を発見し、資本参加を断念せざるを得ない 場合でも、新設合弁であれば当該瑕疵を引き継がずに合弁企業を設立することが可能です。た だし、オーナーや中国企業からの資金負担(現金・現物)が生じることから、相手方の同意を 得ることができない場合もあります。 また、現物出資を受ける場合や資産を譲受ける場合は、中国で資格を有する資産評価会社の 資産評価が必要な点、および不要な資産や瑕疵のある資産を譲受けないよう事前に選別するこ とが必要な点等の留意事項があります。なお、中国側で余剰土地や余剰設備を保有していない 場合は、一から当該資産を手当てしなくてはなりません。 ② 既存中国企業に対する資本参加 以下、既存中国企業に対する資本参加について、持分譲受と第三者割当増資の引受に分けて ご紹介します。 ②−1 持分譲受 既存中国企業のオーナーから持分を譲受け、既存中国企業を中外合弁企業にする投資手法で す。持分譲受対価は既存中国企業のオーナーに支払われるため、合弁企業で新規投資が必要な 場合はニューマネーを投資する必要があります。また、資本参加になるため、基本的には既存 中国企業の債権債務(簿外債務を含む)を合弁企業が全て引き継ぐこととなります。よって、 事前にデューデリジェンスを行い、対象会社のリスクをきちんと洗い出すことが大切です。そ 資産負債は全て引継ぐ 資産負債は全て引継ぐ 引継がない (現物出資・資産譲渡を受 ける場合は注意が必要) 資産負債の引継 ライセンス引継 日本企業出資額の 再投資性 DD/Valuation スキーム 必要 必要 不要 可能 不可能 可能 基本的に可能 (外資規制等の制約により 不可能な場合有) 基本的に可能 (外資規制等の制約により 不可能な場合有) 不可能 ②−2 第三者割当増資の引受 ②−1 持分譲受 ② 既存中国企業に対する資本参加 ① 新設合弁 資産負債は全て引継ぐ 資産負債は全て引継ぐ 引継がない (現物出資・資産譲渡を受 ける場合は注意が必要) 資産負債の引継 ライセンス引継 日本企業出資額の 再投資性 DD/Valuation スキーム 必要 必要 不要 可能 不可能 可能 基本的に可能 (外資規制等の制約により 不可能な場合有) 基本的に可能 (外資規制等の制約により 不可能な場合有) 不可能 ②−2 第三者割当増資の引受 ②−1 持分譲受 ② 既存中国企業に対する資本参加 ① 新設合弁 中国企業 日本企業 新設合弁 中国企業 日本企業 新設合弁 中国企業 中国 オーナー 日本企業 増資 引受 中国企業 中国 オーナー 日本企業 増資 引受 中国企業 中国 オーナー 日本企業 譲受対価 持分 中国企業 中国 オーナー 日本企業 譲受対価 持分 【 図 2 】

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中国アドバイザリーの現場から して、発見されたリスクは企業価値に反映させることでヘッジ可能なのか、または本件実行を 中止させるディールブレーカーになるのかを判断する必要があります。ヘッジが可能な場合は、 会社の企業価値を把握し、当該瑕疵部分について持分譲受価格に反映して交渉することが重要 です。 ②−2 第三者割当増資の引受 既存中国企業が行う第三者割当増資を日本企業が引き受ける投資手法です。この手法は合弁 企業の資本金が増額するため、当該増資金を新規投資に使用することができるというメリット があります。一方で、中国オーナーにおいては自身の保有持分の価値が希薄化する上に、日本 側出資金も手元に入ってこないことから、当該スキームのみを利用した合弁企業設立について は、中国オーナーから同意を得られない場合もあります。②−1 持分譲受と組み合わせることに より、同意を得やすいものと考えられます。その他の留意点(資産負債の引継)等については、 上述の持分譲受と同様です。 既存中国企業への資本参加や資産買収は、買収に伴うリスクが発生し得るため、そのリスク を十分に把握する必要があります。特に中国企業は、日本企業では考えられない瑕疵が存在す る場合が散見されます。例えば、二重帳簿、社会保険料の未払、違法建築、オーナーによる会 社資金の使込等です。投資者のコンプライアンス遵守の観点もさることながら、中資系企業で あれば問題が表面化しないものでも、外商投資企業になった途端に当局から指摘されることも あります。従って、中国企業に対する経験がある専門家の下、しっかりとしたデューデリジェ ンスを実施し、対象会社の実態および企業価値を把握することが大切です。 3.企業価値算定手法 企業価値とは、企業の本業の事業から生み出される事業 価値に非事業用資産を加えたものを言います。この企業価 値は債権者および株主双方に帰属する価値であるため、企 業価値からネットデットを控除し、株主に帰属する株主価 値を算出します。合弁企業設立に当たり議論になる価値は この株主価値になります(図 3)。 企業価値の算定手法には、主に①ディスカウントキャッ シュフロー法(以下、「DCF 法」という)、②マルチプル法、 ③修正純資産法があります(図 4)。1 つの算定手法により価値を算定するのではなく、案件ご とに適した手法を複数選び、算定結果を総合的に勘案して企業価値を算定します。 以下、企業価値算定手法の概要をご説明します。 事業 価値 非事業 資産 ネット デット 株主 価値 企業 価値 【 図 3 イメージ図 】 マルチプル法 コスト アプローチ マーケット アプローチ マーケット アプローチ インカム アプローチ 評価概念 貸借対照表 損益計算書および 貸借対照表 損益計算書および 貸借対照表 損益計算書 財務諸表 時価 M&A市場 株式市場 キャッシュフロー 評価基準 修正純資産法 類似取引比較法 類似企業比較法 DCF法 マルチプル法 コスト アプローチ マーケット アプローチ マーケット アプローチ インカム アプローチ 評価概念 貸借対照表 損益計算書および 貸借対照表 損益計算書および 貸借対照表 損益計算書 財務諸表 時価 M&A市場 株式市場 キャッシュフロー 評価基準 修正純資産法 類似取引比較法 類似企業比較法 DCF法 【 図 4 】

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中国アドバイザリーの現場から ① DCF 法 DCF 法は、企業の将来キャッシュフローを適切な割引率で現在価値に割り引いて価値を算出 する手法になります。具体的には、事業計画期間のフリーキャッシュフロー、および事業計 画期間後の残存価値の現在価値を算出します。DCF 法は、企業が今後も継続するという前提に 立ち、将来その企業が生み出すキャッシュフローに基づき価値を算出する方法ですので、そ の他の算定手法に比べて高い価値評価になることが多くあります。そのため、算出の基礎と なる事業計画をより確度の高いものにするためにも、対象会社の事業や財務内容について詳 細な分析と理解が必要です。 ② マルチプル法 マルチプル法には、類似企業比較法と類似取引比較法があります。類似企業比較法とは、 対象会社と類似する上場企業を選定し、当該類似企業の株価および財務指標をベースに対象 会社の株式価値を算定する手法です。また、類似取引比較法とは、類似する過去の買収案件 における EBIT、EBITDA 等の財務諸表マルチプルを、対象会社の財務指標に乗じることで価値 を算定する手法です。類似企業比較法および類似取引比較法は、それぞれ何をもって類似と するのかという基準の選定に留意が必要です。 類似企業比較法は、株式市場で取引される株価(=少数株主価値)を基にしているため、 対象企業のマジョリティの買収を想定している場合、経営権相当分としてコントロールプレ ミアムを上乗せして勘案する必要があります。一方で、類似取引比較法においては、経営権 取得を目的とした過去の買収案件を基に算出した価値であれば、買収対象企業そのものの価 値に加えて、買い手が売り手に支払ったプレミアムが反映されているため、コントロールプ レミアムを勘案する必要はありません。 ③ 修正純資産法 修正純資産法は、時価に修正した資産・負債および貸借対照表に計上されていない簿外債 務を考慮して価値(純資産=資産総額−負債総額)を算定する手法です。 節税対策等で損益計算書の信頼性が低い企業や赤字経営の企業等を評価するためには有効 な手法である一方、企業全体としての価値を反映していない点、客観的な無形資産の評価が 困難な点、コントロールプレミアムが反映されていない点等に留意が必要です。 4.最後に 本稿では、合弁企業設立時の主な投資手法および企業価値評価の概要をご紹介しました。た だし、中国企業においては、前述のようなコンプライアンス違反のリスクを保有していること が多々あります。デューデリジェンスで発見された様々なリスク・ファクターによって、当初 想定していた投資手法での合弁企業設立が困難になり、別の手法を検討しなければならなくな るケースも実務ではよく見られます。その際は、合弁企業を設立する意義、中国側パートナー に求めるもの、許容リスクとリターンの程度等の投資判断基準に立ち返り判断する必要があり ます。 以 上

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中国戦略

中国の多国籍企業の台頭と

中国内外への影響

日々進む中国経済のグローバル化。それが企業レベルでどのような現象を引き起こしている のかを理解することの重要性が高まっています。国有企業、民間企業ともに、多数の中国企業 がわずか数年で事業の国際化を成功させています。 海外で上場を目指す企業や、外国企業と合弁会社を設立したり提携契約を結ぶ企業もあれば、 M&A やグリーンフィールド投資、その他の対外直接投資(ODI)を通じて海外進出を果たす企業 もあります。こうして、世界のビジネス界に新しい現象が生まれました。それは中国発の多国 籍企業(Multi-National Company=MNC)の出現です。 中国の多国籍企業の台頭 過去 30 年間、中国政府は経済改革と経済不均衡是正に向けた政策を推進し、こうした背景の 中で中国企業もまた進化を遂げてきました。大型民間企業が続々と誕生し、最大規模を誇る国 有企業でさえ大きな変化を経験しました。しかし、大手中国企業の多くは、国内需要が堅調で、 人件費や変動費等のコストが比較的低く、競争が限定的または制限されていて、かつ市場価格 を自分で決められる自国の環境の中で発展してきました。 こうした国内市場の条件と、中国市場そのものの規模の大きさが、中国企業の成長を後押し してきました。その結果、いくつかの中国企業が突如として世界の企業ランキングに躍り出て、 世界で最も規模が大きく業績が良い企業の上位に名を連ねるようになりました。 右のグラフから分かるように、世 界企業ランキング「フォーチュン・ グローバル 500」にランクインした 中国企業は、2010 年の時点で 42 社 でしたが、2013 年には 2 倍以上の 85 社に達しています。このランキ ングによれば、中国はすでに日本 (62 社)を追い越し、132 社でトッ プの米国に次いで第 2 位となりま した。 KPMG Advisory (China) 編 厚谷 禎一 訳・監 www.kpmg.com.cn www.kpmg.or.jp/jp/china フォーチュン・グローバル500にランクインした 中国企業 1996∼2013年 単位:社 出典:Fortune China. http://www.fortunechina.com/fortune500/c/2013-07/08/2013G500.htm

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中国戦略 市場メカニズムの変化に乗る中国の多国籍企業 中国は長い間、海外からの直接投資(FDI)による恩恵を受けてきました。しかし近年は、中 国からの対外直接投資(ODI)が注目を集めています。ODI は中国企業が、中国国外に拠点を置 く外国企業の株式や資産に直接投資する意欲と能力を持っていることを示します。長年にわた って海外の多国籍企業(MNC)の最大の投資先であった中国が、最近は ODI を FDI とほぼ同規模 にまで伸ばしてきています。 この傾向は、2007 年から 2008 年にかけての世界金融危機の発生によって、顕著になり始めま した。世界金融危機とその後に起きた欧州債務危機によって、株式と実物資産の両方で市場価 格が下落しました。中国国内では、国内経済に対するこれらの影響を緩和するために、政府が 政策調整と構造改革を進める一方で、様々な景気刺激策を通じて国内需要を喚起しました。こ のような政策のバックアップを得て、中国企業は安く抑えられた市場価格で物品を購入するこ とができたのです。 中国政府は同時に、中国の通貨である人民元(RMB)を徐々にではありますが切り上げること を認めてきました。人民元切り上げは中国の輸出業者に、また結果として中国の純輸出の貿易 収支にも明らかな影響を与えましたが、対外投資を考える中国企業にとってはより魅力的な環 境を整えつつあります。他の通貨に対して元の購買力が高まるからです。 この 5 年間は、このような様々な要因が組み合わさり、対外投資を計画する中国企業に追い 風が吹いてきました。すなわち、彼らが海外資産購入の投資決定を下した理由は、世界的に国 内資産の市場価格が落ち込んだからだけではなく、元が若干上昇したこともその背景にあった のです。 こうした状況は数字に表れており、今 後もこの傾向が継続する可能性を明確 に示しています。1970 年代後半の中国 の ODI はゼロに近く、2002 年になって もわずか 27 億米ドルにとどまっていま した1。しかし、たった 10 年でこの数字 は急上昇し、2012 年には過去最高の 878 億米ドルに達しました2。これは、毎年 18%ずつ増加していることを意味して います。 1

Perkowski, Jack.「Get ready for more China overseas investment(増大する中国の対外投資に備える)」Forbes 2012 年 3 月 10 日

http://www.forbes.com/sites/jackperkowski/2012/10/03/get-ready-for-more-china-overseas-investment/

2「China 2012 ODI hits record high(中国の 2012 年 ODI、過去最高を記録)」Xinhuanet 2013 年 9 月 9 日

http://news.xinhuanet.com/english/china/2013-09/09/c_132704494.htm

出典:「中国対外直接投資統計広報 2012」

中国の対外投資 2005∼2012年 単位:10億米ドル

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中国戦略 中国は改革開放以来初めて、世界市場で対外投資大国トップ 3 に入りました3。従って、中国 の ODI が FDI(2012 年 1,117 億米ドル4)を「超えるかどうか」はもはや問題ではなく、むしろ 「いつ超えるか」が注目されています。 特徴的な中国の多国籍企業 日本、韓国、台湾など過去に短期間に急成長を遂げたアジアの多国籍企業や、最近台頭して きたインド、ブラジル、ロシアの多国籍企業と同じように、中国の多国籍企業も世界のビジネ ス界の競争環境に大きな影響を与えることは間違いありません。人材、資本、資源、消費者、 イノベーションのすべてを巡る獲得競争がますます激化するでしょう。 中国の多国籍企業による諸外国への影響を考えるとき、彼らの多くが現在の地位を築くまで にたどってきた道筋が、海外の多国籍企業のそれとは異なっているという点が重要です。多く の中国有力企業は国からの多大な支援を受けており、豊富なリソース、コントロールされた競 争環境、低い変動費によって運営されてきました。2 年前までは中国国外で誰も名前を知らなか ったような企業が、今では日常的に国際ニュースの見出しを飾るようになり、それぞれの分野 の業界リーダーにもなりつつあります。 また、中国企業は対外投資先として、多様な産業、部門を選択しています。つい最近まで、 中国企業はエンジニアリングや契約プロジェクト、エネルギーや電力、金属や採鉱、自動車、 金融サービスなど、海外の限られた業種にしか投資しないとされていました。 しかし、最近の 中国多国籍企業は範囲を大きく広げてきました。消費財、サービス、不動産、農業関連ビジネ スといった発展中の産業分野でも巨額の対外投資が行われています。例えば、中国の大手民間 企業「大連万達集団(Dalian Wanda Group)」は最近、米映画館チェーンの AMC エンターテイメ ント(AMC Entertainment)を約 26 億米ドルで買収し、この取引によって世界最大の映画館チ ェーン企業となりました5 中国の多国籍企業の問題点とその対応 中国多国籍企業の国際舞台での成功事例は数多くありますが、多国籍企業の中には M&A 取引 で諸外国の反対にあった企業もあります。この実現しなかったケースの中には、企業経営の透 明性を疑問視する、現地の政治的反対に起因するものもありました。中国の国内市場では、資 金調達が容易で、規模が大きく、そして一部の産業では事実上独占状態という地位を与えられ、

3 Wang, Yanlin.「China among top-3 global investors(中国が世界三大投資国の仲間入り)」ShanghaiDaily

2013 年 9 月 10 日 http://www.shanghaidaily.com/Business/finance/China-among-top3-global-investors/

4「FDI inflow to China dropped by 3.7% in 2012 to USD111.7 billion, first time since 2009(中国への 2012 年海外

直接投資が 3.7%減少し 1,117 億米ドルに。2009 年以降初)」Current Affairs Business News 2013 年 1 月 17 日

http://currentaffairs-businessnews.com/2013/01/17/fdi-inflow-to-china-dropped-by-3-7-in-2012-to-usd-111-7-bil lion-first-time-since-2009/

5 Voigt, Kevin.「China firm buys AMC to form world’s largest cinema chain(中国企業が AMC を買収。世界最大の映画

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中国戦略 競争上優位な立場にある中国の多国籍企業ですが、対外投資となると、買収先企業の所在国の 法律や規制、企業の透明性基準などに従わなければなりません。 このような経営スタイルや管理特性の問題に加え、中国の多国籍国有企業の世界進出を阻む 要因は他にもあるようです。例えば、中国のメガカンパニーが国内で輝かしい成長を遂げたと しても、各分野における影響力や強いブランド力を世界的に評価されている企業は実はあまり ありません。インターブランド社の「ベスト・グローバル・ブランド・トップ 100」2012 年の リストには、まだ中国のブランドは入っていません。これに対し、スペインのサンタンデール 銀行(Santander Bank)、メキシコのコロナビール(Corona)など、中国よりも経済規模が小さ い国や新興経済国の企業、ブランドの名前が多数挙がっています6 実際、中国企業は世界的なメジャーブランドを生み出すことができず、イノベーションや創 造性が不足していると評価されています。フォーブス誌「世界で最も革新的な企業」のランキ ング上位 100 社に入った中国企業は、テンセント(騰訊)、チャイナオイルフィールドサービス (中海油田服務)、三一重工(Sany)、ズームライオン(中聯重科)の 4 社のみでした7。また、 フォーチュン誌「世界で最も賞賛される企業 2013」のランキングでは、上位 50 社に中国企業は 入っていません。 真の意味でグローバルな中国の「ブランドネーム」はまだ世界に登場していないかもしれま せんが、中国企業は着実に前進しています。格力電器(Gree Electric Appliances)は 70 ヶ国 以上で空調製品を販売しています。また、自動車メーカーの奇瑞自動車(Chery Automobile) は 50 ヶ国以上に自動車を輸出しています。世界が中国の画期的製品を認知するのも、そう遠い 先のことではないでしょう8 また、中国の多国籍企業は、グローバルビジネスを運営した経験がほとんどありません。中 国国内で巨大事業を運営することには非常に長けていますが、多国籍事業やグローバル事業を 運営するには、それとは全く異なる経営スキルが必要となります。グローバル企業になるため の「心構え」ができていない企業は、国内の事業運営と同じ手法でグローバルビジネスを進め ようとする傾向があります。外国の労働組合との交渉等の問題を含め、海外での日々の業務運 営は中国人経営者にとって難しいと言われています。加えて、中国の多国籍企業は、自国と異 なる法的環境やコンプライアンス環境に取り組みながら、カルチャーギャップを埋めるのに苦 労しました。 中国の多国籍企業は、グローバルビジネスをより有効に運営するために、社内の経営体制に 調整を加えると同時に、対外的な対応戦略をも探っていくことになるでしょう。社内での調整

6「Best Global Brands 2012(ベスト・グローバル・ブランド 2012)」Interbrand

http://www.interbrand.com/en/best-global-brands/2012/Best-Global-Brands-2012.aspx

7

「The World’s Most Innovative Companies(世界で最も革新的な企業)」Forbes

http://www.forbes.com/innovative-companies/list/

(最新の情報では、百度、テンセント、双匯、貴州茅台、チャイナオイルフィールドサービスの 5 社)

8 Flannery, Russell.「China Mobile tops best Chinese brands list(中国ブランドリストの第 1 位は China Mobile)」Forbes

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中国戦略 には、現地の問題に対処するためにローカル人材を採用し、つなぎとめるための方針や、その 国のやり方に合わせたトレーニング、国際的な異動プログラムの実施、あるいは政府や地域と の関係に対応する能力の確立等が含まれます。対外的な対応戦略としては、コンプライアンス に対する現地政府の要求事項を知り、それを管理するための体系的プロセス、業界団体や地域 行政機関などの現地組織との連携、カルチャーギャップの解消、その他の現地に特有な業務上 の問題への対応などが挙げられます。 世界の舞台における中国の民間企業および国有企業の未来 今後 10 年ほどの間に、中国の対外投資が世界中の幅広い企業、産業、地域に流れ込むように なるでしょう。投資家は、民間企業(Privately Owned Enterprise=POE)と国有企業(State Owned Enterprise=SOE)で構成されます。過去に「新聞の見出しを飾った」対外投資の多くは、その 背後に国有企業がいましたが、今後は民間企業がより積極的な役割を果たすことになるでしょ う。国有企業と比べて民間企業は、市場主導型で柔軟性と効率が高く、意思決定が速やかです。 また、明確なオーナーシップとインセンティブの構造を持っています。 投資の対象となる産業もますます多様化するでしょう。天然資源(石油、天然ガス、石炭、 鉄鉱石、鉱物資源等)の分野では大型海外直接投資取引の波が続くと思われますが、今後中国 の多国籍企業は他の業種にも進出していくでしょう。エネルギー・資源分野は主に国有企業が 占め、国内市場において独占的地位を与えられています。そして、このような国有企業は、資 源確保という国家戦略の実施に責任を負っています。これに対し、製造、科学技術、サービス 業分野の企業は、国内市場でも競争環境の中で事業を営んでおり、政府による制約や強制はそ れほど厳しくありません。また、これらの企業は、経営において核となるコア・コンピタンス を伸ばし、海外のビジネスパートナーとの付き合いを通じて世界市場に関する知識を蓄積して います。 中国人民銀行貨幣政策委員会の邢毓静秘書長は「中国人民銀行は、クロスボーダー取引による 資産や株式購入に対する人民元高を支持する」と言及しました。元高は中国の国有企業と民間 企業に、更なる国際的チャンスをもたらすでしょう。さらに、中国商務部の李金早副部長は「中 国の対外投資額は 5 年後に 5,000 億米ドルに達するだろう」と予想しています9 中国の多国籍企業が台頭し、全世界で存在感を強めてきていることは明らかです。彼らが諸 外国の多国籍企業と同じ軌跡をたどるかどうか分かりませんが、他の多国籍企業の経験をまね るのではなく、自らの成功と失敗を土台にして前進する可能性が高いと思われます。 中国多国籍企業の動機と行動を理解することで、世界のビジネス界が彼らとより良く協働し、 結果的に世界経済全体が恩恵を受けることになるでしょう。世界経済の発展を促すためには、 この新しいグローバル市場参入者と交流し、協力していくための効果的な戦略フレームワーク

9「Economy, ODI and currency bring opportunities(経済、ODI、通貨がチャンスをもたらす)」Xinhuanet

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中国戦略

を開発することが不可欠です。世界のグローバル企業は、中国多国籍企業がもたらす競争環境 の変化に対応し、戦略を練り直す必要がありそうです。

厚谷 禎一

KPMG Advisory (China) Limited ディレクター 東京工業大学理学部卒業・同大学理工学部修士課程修了(情報科学専攻) 米国ペンシルバニア大学ウォートン校経営学修士(財務専攻) これまで 20 年以上にわたり、日本、米国、カナダ、英国、韓国にて経営コンサル ティング会社及び会計事務所に勤務、各国企業顧客に戦略・M&A・オペレーション 等の分野でのアドバイザリー・サービスを提供。 2003 年より KPMG LLP(米国)ニューヨーク事務所に勤務、主に日本企業顧客に対 して事業デュー・ディリジェンスを中心とした M&A 支援サービスを提供。 2008 年より現職、KPMG 中国の上海事務所にて同じく日本企業顧客に対して M&A 支 援サービスを提供。 専門は市場評価、事業計画の精査、M&A 実施後の統合支援等を含む事業デュー・ ディリジェンスだが、日本企業顧客に対しては広く、財務・税務デュー・ディリジ ェンス、企業価値評価、不正調査、リストラクチャリング支援等を含む、M&A 支援 サービス全般のプロジェクト・マネジメント・サービスを提供する。 +86 10 8508 7111 teiichi.atsuya@kpmg.com

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法務

「消費者権益保護法」

の改正について

1.はじめに 2013 年 10 月 25 日付、第 12 回全国人民代表大会常務委員会の第 5 回会議により、「中華人民 共和国消費者権益保護法」の改正案が可決され、同改正は 2014 年 3 月 15 日から施行されるこ とが決まりました。 「中華人民共和国消費者権益保護法」(以下、「本法」といいます。また、改正後のものを「改 正法」、改正前のものを「旧法」といいます)は、1994 年 1 月 1 日から施行され、既に 20 年が 経ちました。この間、中国人の消費方式や理念などに大きな変化があり、特にインターネット の爆発的な発展という世界的な流れによって、インターネット通販ビジネスが目覚ましい発展 を遂げました。また、商品・サービスが豊かになり、消費レベルも高くなってきたため、旧法 の規定では現状に合致しない点が多くなってきました。この 20 年間の現実の消費活動の変化に 伴い、旧法の規定を大幅に増減・調整したのが改正法です。 改正法は、旧法と同じく「総則」、「消費者権利」、「事業者義務」、「国家の消費者合法権益に 対する保護」、「消費者組織」、「紛争解決」、「法律責任」及び「附則」という章立てになってお り、重要な改正点は主に「事業者義務」、「消費者組織」、「紛争解決」及び「法律責任」におい て行われています。 本稿では、事業者にとって重要と思われる改正点に関して紹介いたします。 2.事業者義務 事業者義務では、主に「安全保障義務」、「商品・サービスの欠陥に対する対応責任」、「瑕疵 に関する立証責任の転換」、「三包責任の拡大」、「クーリングオフ権」、「事業者の情報開示義務」 及び「個人情報の保護」に関する改正が施されています。以下、これらの内容に関して、それ ぞれ検討します。 (1)安全保障義務 安全保障義務という概念は、法律の面では「不法行為責任法」(2010 年 7 月 1 日施行)におい て初めて導入されました。同法第 37 条第 1 項では、ホテル、マーケット、銀行、駅、娯楽場等 の公共の場所の管理人又は集団活動の組織者は安全保障義務を十分に果たしていないために他 人に損害を与えた場合、不法行為責任を負わなければならないと規定されています。 この不法行為責任法の規定に呼応する内容として、改正法ではホテル、マーケット、レスト ラン、銀行、空港、駅、港湾、劇場などを営む事業者は消費者に対して安全保障の義務を尽く さなければならないと規定されました(改正法第 18 条第 2 項)。 金杜法律事務所 上海事務所 パートナー中国弁護士 陳青東 E-mail:donald.chen@cn.kwm.com URL:http://www.kwm.com

参照

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