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血栓止血誌 24(1):38~44, 2013 特集 : 動脈硬化性疾患の抗血栓療法 2013 末梢動脈閉塞症 (Peripheral arterial disease:pad) に対する最新の治療戦略 Latest treatment strategy for peripheral arteria

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(1)

1.

はじめに

我が国における慢性動脈閉塞症患者数の推移 をみると,1970 年半ばまでは閉塞性血栓血管炎

(Buerger 病:TAO)が半数以上を占めていた.

しかし,その後の食生活や生活様式の欧米化,高 齢社会の出現により閉塞性動脈硬化症(Arterio- sclerosis obliterans:ASO)が増加し,末梢動脈 疾 患(Peripheral arterial disease:PAD) 患 者 の 90%以上を占め,欧米と同様に PAD イコール ASO と考えて良い時代となった.

PAD の治療方針の決定には「下肢閉塞性動脈 硬化症の診断・治療指針」(TASC II)および ACC/AHA の PAD 患者管理ガイドラインが有用

である1)2)

2007 年に発表された TASC II は血管外科,血 管内科,循環器,放射線領域関連 16 学会による 合意文書であり,現在の PAD 治療のスタンダー ドと考えて良い.また,2005 年に発表された AHA/ACC のガイドライン(以下,“2005 年ガイ ドライン”)は新たな evidence に基づき 2011 年 に改訂がされた3)

本稿では,その改訂されたガイドラインを含め PAD に対する最新の治療戦略について解説する.

2. Fontaine

分類と

Rutherford

分類 下肢虚血の分類には Fontaine 分類と Ruther-

名古屋大学大学院血管外科〔〒 466-8550 名古屋市昭和区鶴舞町 65〕

Nagoya University, Vascular Surgery

〔65, Tsurumai-cho, Showa-ku, Nagoya, Aichi 466-8550, Japan〕

Tel: 052-744-2215  Fax: 052-744-2230  e-mail: [email protected]

末梢動脈閉塞症(Peripheral arterial disease:PAD)に対す る最新の治療戦略

Latest treatment strategy for peripheral arterial disease(PAD)

古 森 公 浩 Kimihiro KOMORI

❖要旨❖

食生活や生活様式の欧米化ならびに高齢化により閉塞性動脈硬化症(arteriosclerosis obliterans:

ASO)が増加し,末梢動脈疾患(Peripheral arterial disease:PAD)患者の 90%以上を占め,欧 米と同様に PAD イコール ASO と考えて良い時代となった.PAD に対する国際的な診断,治療の 標準化のため 2000 年に欧米の関連 14 学会により一定の consensus document として「Trans Atlan- tic Inter-Society Consensus:TASC」が発表された.その後,2007 年にその改訂版として,今度 は日本を含めた国際的な 16 学会で構成された working group により TASC II が発表された.

PAD に対する治療は,運動療法や薬物による内科的治療と,血行再建術として血管内治療およ び外科的バイパス術があり,Fontaine の分類に沿って治療方針を決定するのが原則である.Fon- taine II 度で運動療法や薬物療法で症状改善がみられない場合や,Fontaine III 度,IV 度の重症虚 血肢(CLI)が血行再建術(血管内治療と外科的バイパス術)の適応である.本稿では PAD に対 する診断と最新の治療戦略について解説する.

Key words:

PAD,TASC II,閉塞性動脈硬化症,跛行肢,重症虚血肢

◆特集:動脈硬化性疾患の抗血栓療法 2013 ◆

(2)

る(表

1)

5).Rutherford 分 類 で は 4 つ の grade と 6 つの category に分類されているが,grade は Fontaine 分類とイコールである.Grade 0 が無症 状で,トレッドミルテストでも下肢虚血症状が出 ないこととされていおり,grade I は category が 3 つに分けられ,それぞれ間欠性跛行が 3 段階に 分類されている.Grade II は category 4 のみで,

安静時疼痛を示しており,grade III は category 5 と 6 に分けられ,限局性の組織欠損と広範囲の 組織欠損の 2 つに分類されている.CLI は Fon- taine 分類では III と IV に,Rutherford 分類では grade II~III,category 4~6に分類されている.

Rutherford 分類では跛行,CLI がそれぞれ 3 分 類となっているので使いやすい.

Fontaine 分類は側副血行路の機能を考慮した 問診からの重症度分類と言える.一方,これらを 客観的,定量的に明らかにしたのが Rutherford 分類である.

3. PAD

の診断 a)問診と身体所見

問診が重要であり,痛み,冷感,しびれ,間欠 性跛行などの有無を聴取する.間欠性跛行では脊 柱管狭窄症などの整形外科疾患に因るものとの鑑 別が臨床的に必要となるため,跛行の症状,運動 負荷や体位による症状の変化についての聴取が重 ford 分類の 2 つの分類がよく用いられている4)5)

a)Fontaine 分類

末 梢 動 脈 疾 患(Peripheral arterial disease:

PAD)の症状の分類として Fontaine 分類が知ら れている(表

1).

Fontaine I 度とは病変はあるが代償されており 代償無症候性の下肢虚血である.間欠性跛行は PAD 患者の訴えとしてよく見られる症状で,動 脈の閉塞部位に応じて,腓腹部・大腿部・臀部の 痛みや “脚のつった感じ” が一定の距離の歩行時 に出現し,休息により症状が消失することが特徴 である.跛行患者では安静時血流は正常であるが,

運動負荷により下肢の筋肉への酸素需要が高まっ た状態では動脈の狭窄や閉塞による酸素需要不足 のため疼痛を生じる.

症状の進行により虚血が増悪すると歩行時の みならず安静時にも痛みが出現し,更には組織 の壊疽・欠損が見られる,いわゆる重症虚血肢

(Critical limb ischemia:CLI)に至る.間欠性 跛行のみでは肢の予後は良好であるが,重症虚血 肢では肢の切断を余儀なくされる場合もしばしば であり,また生命予後も不良となる1)6)

b)Rutherford 分類

Rutherford 分類は臨床症状に足関節血圧(An- kle pressure:AP) や 足 趾 収 縮 期 血 圧(Toe pressure:TP),トレッドミル負荷試験による 歩行距離など客観的な基準が取り入れられてい

1

 虚血肢の重症度分類―Fontaine 分類と Rutherford 分類との対比

Fontaine 分類 Rutherford 分類

重症度 重症度 細分類 臨床所見 客観的基準

I 0 0 無症状―有意な閉塞性病変なし 運動負荷試験は正常

IIa

I

1 軽度の間欠性跛行 運動負荷試験は可能;負荷後 AP は 50mmHg 未満 で血圧より 25mmHg 以上低下

IIb 2 中等度の間欠性跛行 細分類 1 と 3 の間

3 重症の間欠性跛行 運動負荷試験は終了できず.

負荷後 AP は 50mmHg 未満

III II 4 安静時痛 安静時 AP は 40mmHg 未満,足関節部や足背部で

PVR はほとんど平坦,TP は 30mmHg 未満

IV III

5 小範囲の組織欠損―足部全体の虚血

に難治性潰瘍,限局性壊死を伴う 安静時 AP は 60mmHg 未満,足関節部や足背部で PVR はほとんど平坦,TP は 40mmHg 未満 6 広範囲の組織欠損―中足骨部に及び

足部の機能回復は望めない 細分類 5 と同様

AP:足関節圧,PVR:pulse volume recording, TP:趾動脈圧

運動負荷試験:12%の勾配で毎時 2 マイルの速さで 5 分間歩く. 〔参考文献 2)より一部改変〕

(3)

要となる6)‐8)

身体所見では末梢血管(大腿動脈・膝窩動脈・

足背動脈・後脛骨動脈)の拍動の触診が不可欠で ある.足背動脈および後脛骨動脈の拍動が両方と も触知できない場合,PAD の存在が強く示唆さ れる.聴診では血管雑音(bruit)の有無をチェッ クする.

PAD が示唆された患者では以下に述べる客観 的検査を行うべきである.PAD が疑われる場合 の病歴聴取と診察の要点を表

2

にまとめた.

b)検査・診断法

術前検査の一覧を表

3

に示した.

i)ABI, TBI

足関節部収縮期圧を上腕動脈収縮期圧(左右 のうち高い方)で除した値である足関節血圧比

(Ankle brachial pressure index:ABI)は簡便に 測定可能で,また感度・特異度共に優れた検査法 である8).跛行症状の訴えがない患者であっても,

心血管系のリスクファクター(特に糖尿病,喫煙)

を有する 50 歳以上の患者ではスクリーニングと して ABI を測定することが TASC II をはじめと する各種ガイドラインにより推奨されている1)6) 正常では足関節血圧の方が若干高いため,ABI は 1.0 よりやや高値となる.ABPI<0.9 で PAD が疑われる.2005 年 ACC/AHA の PAD 患者管 理ガイドラインでは 70 歳以上の患者での ABI 測 定が推奨されていたが,ドイツでの大規模疫学 研究9)の結果に基づき,2011 年の新しいガイド ラインでは 65 歳以上へと対象年齢が引き下げら れた(エビデンスレベルは C から B へと上昇).

PAD 患者の虚血を重症化以前に早期発見し,適

切な治療が行われることが期待されている.また,

新たに ABI の基準値が示された.ABPI 1.00~

1.40 が正常,0.91~0.99 をボーダーライン,0.90 以 下 を 異 常 と し,>1.40 は “noncompressible”

と定義された.

糖尿病患者や慢性腎不全・血液透析患者などで 動脈壁の石灰化が見られる場合,マンシェットで 加圧しても下腿動脈の内腔が圧迫されず,見かけ 上,ABI が上昇を示すことがある.このような 場合には ABI の代わりに石灰化を免れることの 多い趾動脈の圧を測定(TBI:Toe brachial pres- sure index)することで血行動態の評価が可能で ある.通常,足趾血圧は足関節血圧より 30mmHg 程度低く,TBI<0.60 を異常値とする.

ii)トレッドミル

跛行患者では臨床症状から PAD による間欠性 跛行が強く疑われる症例であっても,安静時に は ABI が正常であることもしばしば経験される.

このような場合,運動負荷による ABI の低下が 誘発されれば,PAD による下肢の相対的虚血の 存在を診断しうる.

iii) 経皮的酸素分圧(transcutaneus PO2:tcPO2)

皮膚表面にセンサーを貼付し,無侵襲的に皮膚 から拡散してくる酸素分圧を測定する方法であ る.間欠性跛行症例での診断的有用性は少ない が,Fontaine III・IV 度の重症虚血の評価目的で は頻用される.安静時足背部の tcPO2 が臥位で 10mmHg 以下,座位で 45mmHg 以下の重症虚血 肢では保存的治療による症状の改善は困難とされ

2

 PAD が疑われる場合の病歴聴取と診察1)

3

 客観的検査法

・ PAD のリスクファクター,労作時の下肢症状,ま たは下肢機能の低下が見られる患者では,跛行の 症状,あるいは歩行能力を制限する他の下肢症状 について評価するために,血管の病歴を聴取する べきである.

・ PAD リスクのある患者,または下肢機能の低下が 見られる患者では,末梢の拍動を評価する血管検 査を行うべきである.

・ PAD の病歴がある,もしくは診察で PAD が示唆 された患者は,足関節上腕血圧比(ABI)を含む 客観的検査に進むべきである.

a.血液検査 b.無侵襲検査法

1)ABI(Ankle brachial pressure index)

  =下肢足関節部収縮期血圧/上肢収縮期血圧 2)TBI(Toe brachial pressure index)

  =足趾収縮期血圧/上肢収縮期血圧 3)サーモグラフィー

4)皮膚灌流圧(Skin perfusion pressure:SPP)

5)経皮的酸素分圧 6)近赤外分光法 c.CT(3DCT)

d.MRA e.血管撮影

(4)

に推奨項目が設けられた.

症候性の下肢 PAD 患者に対する抗血小板剤投 与は引き続き Class I の推奨項目である.aspirin に関してはエビデンスレベルは A から B へと下 げられた.

症候性の患者に対する aspirin の代替薬とし ての clopidogrel 単独投与は推奨度に変化はな い.今回,心血管リスクの高い症候性 PAD 患者 に対する出血リスクを考慮した上での aspirin と clopidogrel の 2 剤併用投与が Class IIb の推奨項 目として記載された.

無症候性患者に対しても,ABI 0.90 以下では 心血管イベント抑制目的での抗血小板療法が推奨 されている(Class IIa エビデンスレベル C).

一方,抗血小板療法にワーファリンを追加する 有害性はエビデンスが補強された(エビデンスレ ベル C から B へ).

b) 跛行肢に対する治療のアルゴリズム―薬物療 法と運動療法―

PAD 患者の 70~80%は間歇性跛行で受診す る.このことから間歇性跛行患者にどのように対 処するのかが,PAD の臨床に於いて重要なポイ ントとなる.図

1

に PAD 患者の転帰を示す1)6)

跛行症例に対する治療として,まず監視下での 運動療法プログラムが運動能力や歩行能力を改 善するとの多くのエビデンスが報告されている.

ている.また,虚血肢の切断レベルの決定にも有 用であり,多くの報告で tcPO2 が 30 ~ 40mmHg 以上の部位での切断ならば断端の良好な治癒が望 めるとされている.

iv)皮膚灌流圧(Skin perfusion pressure:SPP)

SPP の原理は,圧力カフと皮膚の間にレーザー センサーを置き,カフによる加圧・減圧による皮 膚の血液灌流の変化をセンサーによって測定・

定量化するものである.tcPO2 と同様,重症虚 血肢での治療方針決定に有用な検査法であり10) SPP>30 ~ 40mmHg を保存的治療による虚血性 潰瘍の治癒が望める閾値としている.

v)解剖学的評価

病態診断には最近では MRA,3D-CT,血管エ コーなどが用いられる.最終的に血行再建術を考 慮する場合に血管造影が施行される.

4. 治療

PAD に対する治療は,運動療法や薬物による 内科的治療と,血行再建術として血管内治療およ び外科的バイパス術があり,Fontaine の分類に 沿って治療方針を決定するのが原則である.

a)抗血小板剤・抗凝固薬について

2005 年ガイドラインからの変更点として,ま ず PAD 患者が症状の有無で分けられ,それぞれ

アテローム硬化による下肢

PAD

症候群の自然経過

PAD集団(50歳以上)

最初の臨床症状

他の下肢痛3040 典型的な跛行1035 重症虚血肢1~3%

無症候性PAD2050

1年のアウトカム

切断 30 両下肢切断のない生存

45 死亡率

25 5年のアウトカム

下肢の有病率

跛行の悪化 1020

持続性跛行7080 重症虚血肢 510

切断

心血管有病率と死亡率

死亡率 15~30%

非致死性心血管イベント

MIまたは脳卒中)20

CV以外が原因 CVが原因 25%

75%

ACC/AHAガイドラインより

機能障害

1

 5 年間にわたる跛行患者の転帰1)6)

(5)

よって,跛行患者の初期治療として “監視下” の 運動療法が大事である.また,跛行症状改善の 第一選択薬としては,トレッドミル運動能およ び QOL 改善のエビデンスがあるシロスタゾール の 3~6ヶ月の投与が推奨されている.運動療法,

薬物療法で改善がみられなかった症例で症状改善 を希望する患者に血行再建術が考慮される.

c)重症虚血肢に対する治療のアルゴリズム 重症虚血肢の定義は TASC II では,「客観的に 証明された動脈閉塞性疾患に起因する慢性虚血性 安静時痛,潰瘍あるいは壊疽を有するすべての患 者に用いるものとする.この用語は慢性状態を意 味するものであり,急性虚血肢とは区別すべきで ある」としている1)5)6)

2

に TASC II による重症虚血肢に対する評 価のアルゴリズムを示す1)6).重症虚血肢の患者 の転帰は非常に悪く,心血管疾患リスクファク ターの積極的な改善を行うべきである.重症虚血 肢に対する治療のゴールは痛みをとり,潰瘍を治 癒し,切断を防ぎ,患者の機能の改善ならびに生 存率の向上を図ることである.血行再建術が可 能な CLI 患者は早急に血管専門医に任せるべき であり,血行再建術は CLI の最適な治療である.

CLI における薬物療法は効果が限定されるため 推奨されない1)6)10).しかしながら症例によって は血行再建術が困難な症例があり,内科的治療に 頼らざるをえない.

d)血行再建術

血行再建術は外科的バイパス術と血管内治療の 2 つに分けられる.

i)外科的バイパス術

外科的血行再建術には,血栓内膜除去術やバイ パス術があるが,代用血管を用いたバイパス術が

最も多く行われる.代用血管としては,人工血管 と自家静脈が主に用いられている.自家静脈とし ては,大伏在静脈が主に使用されている.

血行再建後の遠隔成績は,閉塞部位(大動脈・

腸骨動脈領域か,大腿動脈以下か),手術適応(間 歇性跛行か,救肢か),宿主動脈の狭窄性病変な どに影響されるが,特に,閉塞部位で大きく異な る.従って,閉塞部位ごとに術式を論じる.

1)大動脈腸骨動脈

大動脈腸骨動脈領域については,外科的バイパ ス術の長期成績は極めて良好である.特に解剖学 的バイパス術(大動脈−大腿動脈バイパス術ある いは腸骨−大腿動脈バイパス術)の 5 年開存率は 95%以上で(図

3)

11)‐13),この領域の病変に対し ては解剖学的バイパスを行うことが望ましい.し かしながら,ハイリスク症例や救肢あるいは感染 のために腋窩−大腿動脈バイパスや大腿−大腿交 叉動脈バイパス術のような非解剖学的バイパス術 を余儀なくされることもある.近年,実際の臨床 の現場では,特に腸骨動脈領域の病変において,

後述する様に,閉塞例に対しても血管内治療が行 われており,また成績も良好である13)14) 2)鼠径部以下へのバイパス術

大腿・膝窩動脈領域の外科的バイパス術の成績 は,大動脈・腸骨動脈領域の血行再建術の成績に は劣る.大腿膝窩動脈バイパス術(膝上)のグラ フト材料としては自家静脈と人工血管が用いられ る.膝上バイパスでは両者の開存率にはあまり差 がないため人工血管を使用する施設が多く,その 5 年開存率は 70%前後である(図

3)

11)12)15)16).

膝下膝窩動脈以下へのバイパス術は原則として 重症虚血肢に施行される.移植血管としては自家

CLIの確認

血行再建術の対象

適宜,血行再建術 画像診断

(超音波,血管造影,MRACTA

血行再建術の対象外

持続性疼痛と病変 耐え難い疼痛,

感染の拡がり

内科療法 切断

3 5

100

0 (%) 50

F-P (n=162) Ax-F (n=55)F-F (n=41) A-F (n=193)

96.6% 92.7%

90.7% 90.7%

81.0% 81.0%

71.5% 68.5%

術 後 年 数

1 2 4

(年)

2

 重症虚血肢(CLI)評価のアルゴリズム1)6)

3

 血行再建術の開存率7)(1985~2001, n=451)

(6)

応で血管内治療を行ってもよいと思われる13) 2)Outflow の治療

流入路に対する治療のみでは症状改善が不十分 な場合,あるいは鼠径靱帯以下の流出路の動脈病 変が主体である場合は,流出路の治療が必要となる.

これまで鼠径靱帯以下の動脈病変に対しては血 管内治療では腸骨動脈病変ほどの長期開存性が得 られなかった.よって血管内治療を第一選択とす ることには否定的な意見が支配的であり,耐術能 に問題がなければバイパス手術を優先すべきとさ

れてきた20)21).しかしながら,近年シロスタゾー

ル併用によるステント長期開存の報告もあり22) 少なくとも TASCA,B に関しては血管内治療が 第一選択の治療と考える.

3)膝窩動脈以下への治療

TASC II では膝窩動脈以下の病変に対する血 管内治療は CLI に対する救肢目的のみに限って 施行されるべきであるとされ,跛行症例では適応 とされない1)6).最も注意すべき点は,安易な血 管内治療で,外科的バイパス術の機会が奪われ,

救肢できた可能性のある下肢が切断になる危険性 もあるので,血管外科専門医に早急に受診をする ことが重要である.

2010 年に BASIL trial の 2 年半後のフォロー 解析結果23)が発表された.CLI 患者に対してバ イパス手術と血管内治療のいずれを初めに行った 場合でも overall survival と amputation-free sur- vival に有意差は認めなかった.しかし,治療後 2 年以上生存した患者に限っての解析ではバイパ ス手術により overall survival の有意な延長を認 め,amputation-free survival も改善する傾向に あることが確認された.また,人工血管を使用し てのバイパス手術は CLI 患者では成績が極めて 不良であることも示された.

今回の ACC/AHA の改訂ガイドラインでは以 上の結果を踏まえた新たな推奨項目が設けられ,

予測生命予後が 2 年以下の患者では血管内治療

(balloon angioplasty)が,2 年以上の患者では自 家静脈を用いてのバイパス手術が,血行再建の第 一選択とされた(Class IIa エビデンスレベル B).

但し,2 年以上の生命予後が予測される場合で あってもグラフトに適した自家静脈が存在しない 場合は,血管内治療が推奨されている.

静脈の開存率が他のいかなるグラフトと比較して も優れている.バイパス成功の成否は使用する 自家静脈の質により,直径が 3mm 以上あれば問 題ないとされている.術前に超音波検査(duplex scan)により大伏在静脈(GSV)の径,主な分 枝を検査し移植血管としての適否を決定しておく ことが大事である.GSV1 本を用いたバイパス術 が理想的であるが,症例によってグラフトの長さ が不足する場合には小伏在静脈もしくは上肢静脈 などをつなぎ合わせて使用することもある.

大腿膝上膝窩動脈バイパス術の 5 年開存率は 静脈グラフト使用の場合は,跛行症例では 80%,

CLI 症例の場合では 66%,PTFE 使用の場合,

跛行では 75%,CLI では 47%との報告がある.

また大腿膝下膝窩動脈バイパス術では静脈使用の 場合 70%,PTFE 使用では 65%であった1)6) ii)血管内治療

近年,血管内治療が広く行われるようになっ た.血管内治療の長所は低侵襲かつ速やかに施行 可能であり,全身麻酔に伴うリスクを避けられる こと,在院日数が短縮されること,手術に比べ mortality,morbidity に優れることなどが挙げら れる17)18)

最近ではデバイスの進化とともに徐々にその適 応は拡大されてきており,治療対象となる病変部 位も骨盤内から大腿,そして下腿へと広がっている.

1)Inflow の治療

血管内治療の成績を外科的バイパス手術と比較 すると,流入路(大動脈−腸骨動脈領域)の病変 に関しては血管内治療(PTA およびステント留 置術)の有効性は確立しており,跛行症例よりも 開存率が悪いとされる CLI 症例であっても腸骨 動脈病変へのステント留置術の 3 年開存率は狭窄 症例で 70%,閉塞症例でも 56%と報告されてい 19).この領域の病変に対する外科的バイパス術 の侵襲の大きさを考えると,流入路病変に対して 血管内治療を第一選択とすることは妥当であり,

既に多くの施設で行われている.名古屋大学でも 大動脈腸骨領域におけるバイパス術の 5 年二次開 存率は 93.4%であった.同領域の血管内治療の 初期成功は 98.5%,1 年開存率は 97%と良好で あった.同領域では TASC II のタイプ D 病変で も長期成績は良好で,TASC II の推奨以上の適

(7)

5. おわりに

PAD の診断と治療,特に血行再建術,外科的 バイパス術と血管内治療を解説した.血管内治療 の適応の拡大で,血管内治療と外科的バイパス術 を組み合わせたハイブリッド治療が今後増加して いく可能性が高いと思われる.病態を十分に評価 して,その病態にあった適切な治療戦略の選択が 大切である.

Disclosure of Conflict of Interest

The author indicated no potential conflict of interest.

文  献

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Society for Vascular Surgery;Society for Cardiovascular An- giography and Interventions;Society for Vascular Medicine and Biology;Society of Interventional Radiology;ACC/AHA Task Force on Practice Guidelines;American Association of Cardio- vascular and Pulmonary Rehabilitation;National Heart, Lung, and Blood Institute;Society for Vascular Nursing;TransAt- lantic Inter-Society Consensus;Vascular Disease Foundation:

ACC/AHA 2005 Guidelines for the Management of Patients with Peripheral Arterial Disease(lower extremity, renal, mesenteric, and abdominal aortic). J Am Coll Cardiol 47:1239-1312, 2006.

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参照

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