アンビエントな情報提示手法を用いたソーシャルインタフェースの提案
—ソーシャルアウェアネスの支援を目的として—
A Proposal of the Social Interface using Ambient Information Presentation Method -For purpose of social awareness supporting-
1W08038-2 石倉 一誠 指導教員
ISHIKURA Issei
長 幾朗 教授 Prof. CHOH Ikuro
概要: 今日、パーソナルコンピュータなどを初めとした情報機器を介して、人々はドキュメント作成や機械操作 に留まらず、ソーシャルネットワーキングサービスやマイクロブログなどにログインし、仮想的な社会空間へ参加 している。情報機器の進化に伴ってインタフェース研究は発展し、人間工学・認知工学・感性工学を巻き込んで学 際的に研究されてきたが、社会とのインタフェース、つまりはソーシャルインタフェースとしての研究は数少ない。
また近年では「アンビエント・コンピューティング」は、ユビキタス・コンピューティングを体現したものとして 語られることが多いが、その概念は多様であり、その成果も一貫性のないものとなっている。そこで本研究ではソー シャルインタフェースを有効な手段として提起すると共に、「アンビエント・コンピューティング」の概念を問い、
さらに具体的なアプリケーションの提案を通して、その課題や今後の展望を明らかにした。
キーワード:ソーシャルインタフェース、アンビエントコンピューティング、アウェアネス支援 Keywords: socail interface, ambient computing, awareness supporting
1. 社会とのインタフェース
現代に至るまでの道具と人間の関係と情報機器 の大きな進歩に伴い、インタフェースやその研究 も大きく発展した。今日、人々は情報機器を用い てソーシャルネットワーキングサービスなどを介 して、さらに仮想の社会空間へ参加するに至っ た。このような現状において、インタフェースに 関する研究は、従来の観点だけでは不足であろ う。旧来のコンピューティングでは、ドキュメン ト作成や機械操作としてのインタフェースが研究 され、具現化されてきたが、今後は社会とのイン タフェースとしての研究が必要となろう。
2. 情報と環境
インタフェースの概念を大きく前進させた認知 理論にアフォーダンスがある。ギブソンの基本的 概念に基づいたアフォーダンスは、「環境が有す る、生物の行為を可能にする情報」と解釈でき る。アフォーダンスの概念は、実際の機器やコン ピュータなどの操作に関して、ノーマンは「その ものをどのように使うことができるかを決定する 最も基礎的な特徴」とし1、これらのデザインに 応用した。アフォーダンスから知覚する要素や現 象は知覚者によって異なるため、一つの要素から 生じるアフォーダンスは一様ではなく、また環境 には無限に存在する。また、アフォーダンスの他 にも人間は自身の状態をも視覚を介して得た情報 に頼っている。リーによって開発された「揺れる 部屋」では、「壁の動きによって生じる光学的流 動から、知覚者は自身の姿勢の傾きの情報を知覚 して、それを保証するように姿勢が傾く」という
視覚性運動制御が確認されている2。このように 我々は常に環境から無限の情報を受け取っている が、その際に「今情報を収集している」と意識し ていることはなく、全て意識下において情報を獲 得している。このように情報を環境に埋め込むこ とにより、ユーザはその存在を意識せずに、その 恩恵を受けることが出来よう。このような環境の 実現を目指す概念がアンビエント・コンピュー ティングである。
3. アンビエント・コンピューティング
今日におけるアンビエント・コンピューティン グの解釈は様々で、その研究成果も多様であるた め、本研究では、まずアンビエント・コンピュー ティングの概念を整理し定義を行った。よりこの 概念に近接するため、周辺の概念と構成要素につ いて精査した。アンビエント・コンピューティン グは、しばしばユビキタス・コンピューティング の発展した概念と言われる。ワイザーが提唱した ユビキタス・コンピューティングの概念は、日々 の生活環境と区別がつかなくなるほどに溶け込 んだ情報環境を指す3。しかしユビキタス・コン ピューティングの現状は、ワイザーの概念は誤解 され、ワイザー自身がユビキタスという言葉の使 用を控えるまでに齟齬が生じている。アンビエン トな情報提示において多く用いられるのが周辺視 を利用した情報提示である。周辺視とは網膜の周 辺部を用いた視覚であり、情報を捉える範囲が広 く無意識のうちに情報を捉えているため、目の疲 労度・認知的な負担が非常に少ないという長所が ある。また、アンビエント・コンピューティング 1
の関連研究としてアウェアネス支援研究が挙げら れる。アウェアネス支援とはグループウェア研究 のひとつでアウェアネス ( 気づき ) を補完する概 念である。このアウェアネスの多くは不可視、か つ非物理的である。しかし同期・対面環境では当 然として存在しているアウェアネスが、情報ネッ トワークを利用したコミュニケーションでは著し く不足していることが指摘されており4、アウェ アネスを補完することにより自然なアンビエント 情報環境を構築することが可能となろう。
アンビエント・コンピューティングに関連した 先行研究を検証した結果、「アンビエント情報社 会基板創成拠点」が提案するアンビエントインタ フェースでは、室内に設置されたカメラやセンサ 等がユーザの目の動きや脈拍などをセンシング し、ユーザの疲労度や体温の変化に応じて BGM や 照明が作用し、状況に即して柔軟に対応する部屋 などを挙げている5。石井が提案したアンビエン ト・ルームは、多数のアンビエント・ディスプレ イを設置した部屋である。アンビエント・ディス プレイの特徴として「特定の情報ソース表示に特 化した専用性と、周辺感覚を利用してユーザーの 認知負荷を抑えるデザイン、そして特別な操作(イ ンタラクション)をしなくとも一瞥するだけで必 要な情報を入手できるシンプルさ」を挙げてい る6。本研究では、石井のアンビエント・ディス プレイを主として参考とし、アンビエント・コン ピューティングについて以下のように定義した。
1) 情報は常に存在するが、ユーザの意識下にあ り、必要に応じて意識のフォアグラウンドへ移動 する。
2) 容易なインタラクションでアクセスでき、な おかつユーザの行動を限定しない情報提示 3) 汎用的環境よりも、より特化した専門的なシ ステム
以上の概念を基に、ソーシャルインタフェース として提案を行った。
4. アプリケーションの提案
前述の概念の実現性を考察し、その課題を探 すためにアンビエントな情報提示手法を用いた ソ ー シ ャ ル イ ン タ フ ェ ー ス“CURTAIN” を 提 案 し、設計した。
CURTAIN は、PC のデスクトップの背景として表示 され、外観は街並を模している。この街並におけ る家やビルの明かりが登録したメンバーのプレゼ
ンスを表すソーシャルアウェアネス支援とした。
ユーザの行動を限定せず、かつプライバシーに配 慮し、プレゼンスは抽象的なものに限定している。
図 1 CURTAIN 使用イメージ
建物の明かりとしてのメタファーは、一瞥して情 報を得ることを可能にすることと対応付けが容易 であると予測したためである。
5. 結論
概念から具体的な形態として設計することによ り、ソーシャルインタフェース設計の必要性とそ の課題について確認し得た。また今日ではタブ レット端末などのタッチユーザインタフェースを 採用した情報機器も多く登場しているため、これ らの情報機器に応じた検討も課題である。本研究 では、アンビエント・コンピューティングに関し ておおよその定義とその表現についてガイドライ ンを示せたことの意義があろう。ユビキタスのよ うに解釈の齟齬が起こらないように、今後はより 具体的な方法論にまで昇華したものとしての定義 が必要であろう。具現化の段階での課題として、
アンビエントな情報提示手法が実際に機能するの かを実証する必要性が挙げられる。今後は環境心 理学などの知見も利用して、情報提示に適した表 現方法を模索する必要があるだろう。
1.Donald A. Norman『誰のためのデザイン?』
( 新曜社、1990)
2.David N Lee, 佐々木正人『アフォーダンス-新しい 認知の理論』( 岩波書店、1994) より
3.Mark Weiser『21 世紀のコンピュータ』(1991) 4. 国藤進『知的グループウェアによるナレッジマネジ メント』( 日科技連出版社、2001)
5. 村田正幸『アンビエント情報社会の実現に向けた取 組み』( 電子情報通信学会、2010)
6. 石井裕『アンビエントディスプレー』
( アスキー・メディアワークス、2007) 図 1. 石倉 (2012)
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